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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】低エミッション吸着体
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/20 20060101AFI20240902BHJP
   F02M 25/08 20060101ALI20240902BHJP
   B01J 20/08 20060101ALI20240902BHJP
   B01J 20/06 20060101ALI20240902BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20240902BHJP
   B01J 20/12 20060101ALI20240902BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20240902BHJP
   B01J 20/24 20060101ALI20240902BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20240902BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B01J20/20 A
F02M25/08 Z
B01J20/08 A
B01J20/06 A
B01J20/08 C
B01J20/10 A
B01J20/10 C
B01J20/12 A
B01J20/12 C
B01J20/18 A
B01J20/18 E
B01J20/20 D
B01J20/24 A
B01J20/28 Z
B01J20/30
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022532830
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 US2020062896
(87)【国際公開番号】W WO2021113367
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】62/942,615
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516107826
【氏名又は名称】インジェヴィティ・サウス・カロライナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン・アイ・トムソン
(72)【発明者】
【氏名】マルタ・レオン・ガルシア
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0207611(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0363594(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28
B01J 20/30-20/34
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着体組成物であって、
~50wt%の活性化吸着材料と、
3~40wt%のガラスマイクロスフェアと、
5~50wt%の粘土バインダーと、
100wt%までの差分量の少なくとも一つの添加材と、
を含み、
ハニカムモノリスの形態である、吸着体組成物。
【請求項2】
前記活性化吸着材料が、活性炭、炭化木炭、ゼオライト、粘土、多孔性ポリマー、多孔性アルミナ、多孔性シリカ、分子ふるい、カオリン、チタニア、セリア、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の吸着体組成物。
【請求項3】
前記活性化吸着材料が、活性炭粉末を含む、請求項に記載の吸着体組成物。
【請求項4】
前記活性化吸着材料が、木、木材粉塵、木粉、コットンリンター、泥炭、石炭、ココナッツ、亜炭、炭水化物、石油ピッチ、石油コークス、コールタールピッチ、フルーツピット、フルーツストーン、ナッツシェル、ナッツピット、おがくず、ヤシ、野菜、合成ポリマー、天然ポリマー、リグノセルロース材料、またはそれらの組み合わせ、のうちの少なくとも一つに由来する、請求項に記載の吸着体組成物。
【請求項5】
前記活性炭が、1グラムあたり600~2200、または800~1800、または1000~1600平方メートルの窒素B.E.T.表面積を特徴とする、請求項に記載の吸着体組成物。
【請求項6】
前記添加材が、(i)有機バインダー、仮焼バインダー、鉱物フラックス、もしくはそれらの組み合わせの少なくとも一つ、(ii)ボール粘土を除く、または(iii)(i)および(ii)の組み合わせ、を含む、請求項に記載の吸着体組成物。
【請求項7】
前記鉱物フラックスが、長石鉱物である、請求項に記載の吸着体組成物。
【請求項8】
前記鉱物フラックスが、霞石閃長岩である、請求項に記載の吸着体組成物。
【請求項9】
前記有機バインダーが、セルロース、セルロース誘導体、またはそれらの組み合わせを含む、請求項に記載の吸着体組成物。
【請求項10】
前記有機バインダーが、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、芳香族スルホン酸塩の結晶性塩、ポリフルフリルアルコール、ポリエステル、ポリエポキシド、ポリウレタンポリマー、ポリビニルアルコールまたはそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つを含む、請求項に記載の吸着体組成物。
【請求項11】
前記粘土バインダーが、ゼオライト粘土、ベントナイト粘土、モンモリロナイト粘土、イライト粘土、フレンチグリーン粘土、パスカライト粘土、レドモンド粘土、テラミン粘土、リビング粘土、フラー土粘土、オーマライト粘土、バイタルライト粘土、レクトライト粘土、コージライト、ボール粘土、カオリンまたはそれらの組み合わせを含む、請求項に記載の吸着体組成物。
【請求項12】
前記粘土バインダーが、含水カオリンである、請求項に記載の吸着体組成物。
【請求項13】
前記仮焼バインダー材料が、仮焼されたカイヤナイト、ムライト、コージライト、粘土シャモット、シリカ、アルミナ、および他の仮焼されたもしくは非プラスチックの耐熱性セラミック材料、またはそれらの組み合わせを含む、請求項に記載の吸着体組成物。
【請求項14】
前記ガラスマイクロスフェアが500マイクロメートル未満の平均直径を有する、請求項に記載の吸着体組成物。
【請求項15】
請求項に記載の吸着体組成物を含む、蒸発エミッション制御キャニスターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「Low Bleed Emission Adsorbent」と題する2019年12月2日出願の米国仮特許出願第62/942,615号の優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、様々な態様および実施形態における、吸着材料およびそれを含む蒸発エミッション制御システムに関する。
【背景技術】
【0003】
自動車の燃料システムからのガソリン燃料の蒸発は、炭化水素の大気汚染の主な潜在源である。これらの燃料蒸気のエミッションは、車両が走行中、給油中、またはエンジンを停止した状態で駐車している時に発生する。このようなエミッションは、燃料システムから排出される燃料蒸気を吸着するために活性炭を使用するキャニスターシステムによって制御されることができる。特定のエンジン動作モードでは、キャニスターシステムを周囲空気でパージして活性炭から燃料蒸気を脱着させることにより、吸着された燃料蒸気が活性炭から定期的に除去される。そして再生された炭素は、別の燃料蒸気を吸着する状態にある。
【0004】
この用途のためのより空間効率の良い活性炭吸着体は、高い蒸気分圧に向かって急勾配の吸着容量を有するn-ブタン蒸気吸着等温線を特徴とすることは当技術分野で周知である(米国特許第6,540,815号)。このように、吸着体は、ガソリン燃料に存在する蒸気のタイプの比較的高濃度で高い容量を有し、吸着体は、低蒸気濃度または分圧にさらされた場合、例えばパージ中に、これらの捕集された蒸気の放出を促進する。これらの高性能活性炭は、「小さなメソ細孔」として大量の細孔容積を有し(例えば、SAE Technical Papers902119および2001-03-0733、ならびにBurchell 1999、pp.252-253)、これは、窒素吸着等温線の分析のBJH法(例えば、米国特許第5,204,310号)によって測定される場合、サイズが約1.8nm~約5nmであることが好ましい。(IUPAC分類によると、これらは2nm未満のマイクロ細孔サイズ範囲内の約1.8~2nmサイズの細孔と、2~50nmメソ細孔サイズ範囲内の約2~5nmサイズの細孔である。) 小さなメソ細孔は、凝縮相として蒸気を捕集するのに十分に小さいが、低分圧の蒸気にさらすると容易に空になる。したがって、これらの細孔内の容積は、ガソリン作業容量(GWC)として知られる、キャニスター容積内の吸着体による回収可能な蒸気容量と線形に相関し、同様に、参照により本明細書に組み込まれる標準ASTM 5228法によって測定される、吸着体のASTMブタン作業容量(BWC)と線形に相関する。一般的に、この用途の市販の活性炭製品のASTM BWCの範囲は、約3~約17g/dLであり、キャニスターシステムの燃料蒸気源に向かう作業容量、および大気ポートまたはベント側に向かう一つまたは複数の後続の容積(つまり、ベント側吸着容積)で使用されるより低いBWC炭素には、9+g/dLのBWC炭素が適している。
【0005】
環境問題の高まりは、炭化水素エミッションの厳格な規制を推進し続けている。日中加温(すなわち、昼間の加温)中に車両が暖かい環境に駐車される場合、燃料タンク内の温度が上昇し、その結果、燃料タンク内の蒸気圧が上昇する。通常、車両から大気中への燃料蒸気の漏れを防止するために、燃料タンクは、燃料蒸気を一時的に吸着できる好適な燃料吸着材料を含むキャニスターへ導管を通って排気される。キャニスターは、車両が静止している場合、流体の燃料蒸気が燃料タンクから燃料タンク導管を通り、一つまたは複数の吸着容積を通り、大気に開放されたベントポート外に出るように、蒸気または流体の流路を画成する。燃料タンクからの燃料蒸気および空気の混合物は、キャニスターの燃料蒸気入口を通ってキャニスターに入り、燃料蒸気が一時貯蔵域で吸着される吸着容積中へ拡散し、浄化された空気は、キャニスターのベントポートから大気に放出される。エンジンが作動すると、周囲空気がキャニスターのベントポートを通ってキャニスターシステム中に引き込まれる。パージ用空気は、キャニスター内の吸着容積を通って流れ、吸着容積に吸着した燃料蒸気を脱着してから、燃料蒸気パージ導管を通って内燃エンジンに入る。パージ用空気は、吸着容積に吸着された燃料蒸気の全てを脱着するわけではなく、結果として、大気に放出される可能性のある残留炭化水素(「ヒール」)が生じる。
【0006】
さらに、気相と局所的に平衡状態にあるヒールは、燃料タンクからの燃料蒸気がエミッションとしてキャニスターシステムを通って移動することも可能にする。このようなエミッションは、通常、車両が駐車され、数日間にわたって日中の温度変化を受ける場合に発生し、これは、一般的に「ダイアーナルブリージングロス」(DBL)エミッションと呼ばれる。カリフォルニア州の低公害車規制により、キャニスターシステムからのこれらのDBLエミッションは、2003モデルイヤー以降の多くの車両では10mg未満(「PZEV」)であり、2004モデルイヤー以降の多くの車両では50mg未満、通常は20mg未満(「LEV-II」)であることが望ましいとされている。
【0007】
現在、カリフォルニア州の低公害車規制(LEV-III)および米国連邦規格Tier 3基準は、California Evaporative Emissions Standards and Test Procedures for 2001、およびSubsequent Model Motor Vehicles,2012年3月22日に記載されているように、Bleed Emissions Test Procedure (BETP) にしたがってキャニスターのDBLエミッションが20mgを超過しないことを義務づけている。さらに、DBLエミッションに関する規定は、特にパージ空気のレベルが低い場合に、蒸発エミッション制御システムに課題を出し続けている。例えば、DBLエミッションの可能性は、パワートレインが内燃エンジンと電気モーターの両方である車両(「HEV」)、および内燃エンジンを自動的にシャットダウンして再始動するアイドリングストップシステムを備えてエンジンがアイドリングに費やす時間を短縮し、それによって燃料消費量とテールパイプエミッションを削減する車両を含むハイブリッド車両の場合、より深刻になる可能性がある。
【0008】
このようなハイブリッド車両では、車両操作中の時間のほぼ半分は内燃エンジンが停止になる。吸着体に吸着される燃料蒸気は、内燃エンジンが動作中の場合にのみパージされるため、ハイブリッド車のキャニスター内の吸着体は、従来の車両と比較して半分未満の時間で、しばしば55BV~100BVの範囲内で新鮮な空気でパージされる。ここで、「BV」は、パージ流量の総量のキャニスターシステム内の吸着体の容積に対する比率である。それでも、ハイブリッド車両は従来の車両とほぼ同じ量の蒸発燃料蒸気を発生させる可能性がある。ハイブリッド車両の低いパージ頻度と低いパージ体積は、キャニスター内の吸着体から残留炭化水素ヒールを除去するには不十分である可能性があり、その結果、DBLエミッションが高くなる。最適な駆動性能、燃料効率、テールパイプエミッション用に設計されている場合、他のパワートレインも同様に、キャニスターをリフレッシュするための高レベルのパージを提供することが課題であり、エンジンに最適な混合気と速度を提供することが課題である。これらのパワートレインには、ターボチャージャー付きまたはターボアシストエンジン、スタート/ストップ、ハイギアトランスミッション、およびガソリン直噴(「GDI」)エンジンが含まれる。
【0009】
対照的に、世界的には、蒸発エミッション規制は米国より厳しくなかったが、現在では、米国がとった道に沿って規制がより厳しくなる傾向にある。特に、軽量車の使用が急速に増加しており、空気の質の問題が緊急の注意を必要とする地域では、車両燃料のより良い使用とよりクリーンな空気のためのより厳密な制御の利点の認識が高まっている。注目すべき例として、中華人民共和国環境保護省は、2020年に実施するために、燃料蒸気エミッションの制限を含む規制を2016年に発表した(「China 6」としても知られている「Limits and Measurement Methods for Emissions from Light-Duty Vehicles,GB 18352.6-2016、を参照)。この規格は、通常温度および低温での排ガスエミッション、リアルドライビングエミッション(RDE)、クランクケースエミッション、蒸発エミッションおよび給油時エミッション用の強制点火エンジン、を搭載するハイブリッド電気車両を含む、小型車両の制限および測定方法、技術的要件、ならびに公害防止装置の耐久性測定方法、ならびに車載診断システム(OBD)を規定する。蒸発エミッション制御に加えて、車搭載型燃料供給時蒸気回収装置(ORVR)が必要である。蒸発エミッションは、自動車の燃料(ガソリン)システムから排出される炭化水素蒸気として定義され、(1)燃料タンク内の温度変化によって生じる炭化水素エミッションである燃料タンクブリージングロス(ダイアーナルロス)、および(2)一定期間の運転後に停車中の車両の燃料システムから発生する炭化水素エミッションである、ホットソーク損失を含む。車両全体のテストのテストプロトコルとエミッション制限は規制で規定されているが、総エミッションに寄与する構成要素(例えば、蒸発エミッション制御キャニスターシステム、燃料タンクの壁、ホース、チューブ等)の設計限界については、自動車メーカーによる割り当てに余裕がある。割り当てのうち、蒸発エミッション制御キャニスターシステムの限度は、一般的に、燃料システムおよび車両設計プロセスにおいて、China6規制の全体的な車両要件を満たすための設計バランスの一部として、2日目のDBLエミッションが100mg未満と設定される。
【0010】
しかし、高い作業容量性能と規制範囲内の燃料エミッションのためのシステムの設計の必要性に直面して、当技術分野で周知のように、GWC性能およびBWC特性が増加するにつれて、ブリードエミッション性能が不均衡に増加する。例えば、SAE Technical Paper 2001-01-0733、および米国特許第6,540,815号の表(11 BWC対15 BWCの活性炭の比較および発明データ)を参照されたい。
【0011】
高い作業容量と低いDBLエミッション性能という明らかに相反するニーズを満たすために、いくつかの方法が報告されている。一つの方法は、パージガスの容積を大幅に増やして、吸着容積から残留炭化水素ヒールの脱着を促進することである。米国特許第4,894,072号を参照のこと。しかし、この方法には、パージ工程中にエンジンへの燃料/空気混合物の管理が複雑になるという欠点があり、テールパイプエミッションに悪影響を及ぼす傾向があり、このような高レベルのパージは特定のパワートレイン設計では利用できない。設計および設置の費用はかかるが、エンジンの負圧のみに依存する場合、エンジンの負圧を補完し、エンジン性能とテールパイプ排出制御に関するいくつかの問題を回避する手段として、蒸発エミッション制御システム内のある場所で補助ポンプを使用して、パージの流量または体積を補足、支援、または増加させることができる。
【0012】
別の方法は、既存のキャニスターの寸法を再設計すること、または好適な寸法の補助ベント側キャニスターを設置することのどちらかにより、キャニスターのベント側の断面積が比較的小さくなるようにキャニスターを設計することである。この方法は、パージ用空気の強度を高めることにより、残留炭化水素ヒールを低減する。こうような方法の一つの欠点は、比較的小さい断面積がキャニスターに過度の流量制限を与えることである。米国特許第5,957,114号を参照のこと。
【0013】
パージ効率を高めるための別の方法は、パージ用空気、もしくは燃料蒸気を吸着した吸着容積の一部、またはその両方を加熱することである。しかし、この方法では、制御システム管理の複雑さが増し、いくつかの安全上の懸念が生じる。米国特許第6,098,601号および第6,279,548号を参照のこと。
【0014】
別の方法は、大気に放出する前に、流体流中の燃料源の近傍に位置する燃料側吸着容積を通して、そして燃料側吸着体の下流に位置する少なくとも一つの後続の(すなわち、ベント側)吸着容積を通して、燃料蒸気を送ることであり、燃料側の吸着容積(ここでは、最初の吸着容積)は、後続の(つまり、ベント側の)吸着容積よりも、増分吸着容量として定義される等温線の傾きが大きくなる。米国再発行特許第RE38,844号を参照のこと。米国再発行特許第RE38,844号が、吸着、パージ、およびソークサイクル中の蒸気流路に沿った蒸気および吸着質濃度勾配の動力学に従って、高BWC吸着体に存在する吸着等温線の高勾配特性の必然的な結果として、BWCによるDBLブリードエミッション性能のトレードオフを考慮していることは注目に値する。この方法には、低エミッションを可能にするために様々な特性を備える直列の複数の吸着容積が必要であるという欠点があり、これにより、システムのサイズ、複雑さ、および設計と製造のコストが増加する。
【0015】
低レベルのパージしか利用できない場合、特に有用な別の方法は、増分吸着容量、BWC、特定のg-総BWC容量のウィンドウ、および流路断面全体でほぼ均一な空気および蒸気の流れ分布を促進する実質的に均一な構造で構成される少なくとも一つの後続の(つまり、ベント側の)吸着体を通して、燃料蒸気を送ることである。米国特許第9,732,649号および米国特許出願第2016/0271555A1号を参照のこと。
【0016】
したがって、高作業容量の炭素に対する過剰なDBLブリードエミッションのジレンマが認識され、通常、追加の吸着体、例えば比較的低いBWCを有する吸着容積を備える補助チャンバーの追加によって対処される。米国特許9,657,691号を参照のこと。しかし、このようなシステムの欠点の一つは、追加の吸着容積を備えることの追加費用である。例えば、製造の複雑さにより、製造速度および製造期間が制限される。
【0017】
したがって、低レベルのパージエアが使用される場合でも、またはキャニスター内の吸着体がより少ない頻度でパージされる場合、例えばハイブリッド車やスタート/ストップ車、もしくはその両方の場合でも、必要な低ダイアーナルブリージングロス(DBL)エミッションを提供するために、可能な限り低コストで、シンプルで、コンパクトな蒸発エミッション制御システムが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】米国特許第6,540,815号
【文献】米国特許第5,204,310号
【文献】米国特許第4,894,072号
【文献】米国特許第6,098,601号
【文献】米国特許第6,279,548号
【文献】米国再発行特許第RE38,844号
【文献】米国特許第9,732,649号
【文献】米国特許出願第2016/0271555A1号
【文献】米国特許第9,657,691号
【文献】米国特許出願第15/656,643号
【文献】米国特許第6,472,343号
【発明の概要】
【0019】
現在説明されているのは、車両のエミッション制御キャニスターに組み込まれた場合、驚くべきことに予想外に望ましいエミッション性能を示し、同時に、従来のハニカム吸着体と比較していくつかの製造上の利点をもたらす吸着材料である。例えば、記載の吸着材料はより軽く、驚くべきことに、より高い速度で押出し成形されることができ、押出しダイの摩耗が少ない。したがって、記載される吸着材料は、従来の吸着材料と同等またはそれよりも良好に機能する一方で、製造するのにより安価である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
したがって、一態様では、本明細書は、
約10~約50wt%の活性化吸着材料と、
約3~約40wt%のガラスマイクロスフェアと、
100wt%までの差分量の少なくとも一つの添加材と、を含む、吸着体組成物を提供する。
【0021】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、添加材は、有機バインダー、無機バインダー、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つを含む。本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、有機バインダーは、セルロース系バインダーである。本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、無機バインダーは、粘土、シリカ、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つである。いくつかの実施形態では、シリカは、シリカゾル材料を含む。
【0022】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、本明細書は、
約10~約50wt%の活性化吸着材料、例えば、活性化吸着粉末を含む、または本質的にそれからなる材料と、
約2~約10wt%の有機バインダーと、
約2~約50wt%の無機バインダー(例えば、粘土、シリカ、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つ)と、
約3~約40wt%のガラスマイクロスフェアと、を含む吸着体組成物を提供する。
【0023】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、本明細書は、約0~約5wt%のシリカゾルを含む吸着体組成物を提供する。
【0024】
別の態様では、本明細書は、(a)(i)約10~約50wt%の活性化吸着材料、例えば、活性化吸着粉末を含む活性化吸着体組成物、(ii)約3~約40wt%のガラスマイクロスフェア、および(iii)100wt%までの差分量の少なくとも一つの添加材、を混合して、吸着体組成物を形成する工程と、(b)吸着体組成物を押出しおよび必要に応じて乾燥させて、押出し成形吸着体組成物を製造する工程と、を含む工程による、押出し成形吸着体組成物を調製するための方法を提供する。任意の態様または実施形態では、添加材は、有機バインダー、無機バインダー、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つを含む。本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、有機バインダーは、セルロース系バインダーである。本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、無機バインダーは、粘土、シリカ、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つである。いくつかの実施形態では、シリカは、シリカゾル材料を含む。記載の態様または実施形態のいずれかでは、ハニカムダイは、押出し工程で使用され、ハニカム構造を有する押出し成形された吸着材料を製造する。本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、本明細書に記載のように製造される吸着体組成物または押出し成形吸着体組成物のバインダーは、粘土バインダー、仮焼バインダー、鉱物フラックス、水またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つを含む。本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、本明細書に記載のように製造される吸着体組成物または押出し成形吸着体組成物は、約5~約50wt%の粘土バインダー、約5~約45wt%の仮焼バインダー、約2~約20wt%の鉱物フラックスまたはそれらの組み合わせを含む。
【0025】
記載の態様または実施形態のいずれかでは、本明細書は、(a)(i)約10~約50wt%の活性化吸着材料、例えば、活性化吸着粉末を含む活性化吸着材料と、(ii)約2~約10wt%の有機バインダーと、(iii)約5~約50wt%の粘土バインダーと、(iv)約5~約45wt%の仮焼粘土バインダーと、(v)約2~約20%の鉱物フラックスと、(vi)約0~約5wt%のシリカゾルと、(vii)約3~約40wt%のガラスマイクロスフェアと、を混合して吸着体組成物を形成する工程と、(b)吸着体組成物を押出し、押出し成形吸着体組成物または物品を形成する工程と、を含む工程によって製造される押出し成形吸着体組成物または物品を提供する。いくつかの実施形態では、ハニカムダイは、押出し工程で使用され、ハニカム構造を有する押出し成形吸着体組成物を製造する。
【0026】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、押出し成形可能な吸着体組成物は、活性化吸着粉末を含む約10~約50wt%の活性化吸着材料と、約2~約10wt%のポリマー有機バインダーと、約5~約50wt%の粘土バインダーと、約5~約45wt%の仮焼バインダーと、約2~約20%の鉱物フラックスと、約0~約5wt%のシリカゾルと、約3~約40wt%のガラスマイクロスフェアと、を含む。
【0027】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、押出し成形可能な吸着体組成物または押出し成形吸着体物品は、本明細書に記載の0.05~1マイクロメートルの細孔容積の0.05~100マイクロメートルの細孔容積に対する比が、約70%を超える、または約75%を超える、約80%を超える、または約90%を超える。
【0028】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、押出し成形可能な吸着体組成物または押出し成形吸着体物品は、本明細書に記載の0.05~0.5マイクロメートルの細孔容積の0.05~100マイクロメートルの細孔容積に対する比が、約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%を超える。
【0029】
別の態様では、本開示は、少なくとも一つの燃料側吸着容積および少なくとも一つのベント側吸着容積を備える蒸発エミッション制御キャニスターシステムを提供し、少なくとも一つの燃料側または少なくとも一つのベント側吸着容積のうちの少なくとも一つは、本明細書に記載の押出し成形吸着体組成物を含む。
【0030】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、キャニスターシステムは、均一なセル構造を有する一つまたは複数のベント側吸着容積を備え、すなわち、吸着容積内のほぼ全てのセルが同じサイズである。
【0031】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、本明細書に記載の押出し成形吸着体組成物は、100mg以下の2日間のダイアーナルブリージングロス(DBL)エミッションを示し、例えば、2012 California Bleed Emissions Test Procedure (BETP)によって測定された40g/時ブタン充填工程後に適用された指定量のパージ空気量で約5mg~約100mgである。
【0032】
別の態様では、本明細書は、蒸発エミッション制御システムにおける燃料蒸気エミッションを低減するための方法を提供し、方法は、燃料蒸気を、本明細書に記載の押出し成形吸着体組成物を含む本明細書に記載の蒸発エミッション制御システムと接触させることを含む。
【0033】
有用性に関する前述の全般的な記載は、例示の目的でのみ提示するものであり、本開示および添付の請求の範囲を限定することは意図されない。本発明の組成物、方法、およびプロセスに関連する別の目的および利点は、本発明の特許請求の範囲、詳細な説明、および実施例の観点から当分野の当業者には明らかであろう。例えば、本発明の様々な態様および実施形態は多くの組み合わせで使用することができ、それらすべてが本明細書により明示的に予期される。こうしたさらなる利点、目的及び実施形態は、本発明の範囲内に明文で含まれる。本発明の背景を解説するために、および特定の場合には実施に関して追加の詳細を提供するために使用される公表文献および他のマテリアルは参照により組み込まれる。
【0034】
この明細書に組み込まれてその一部を形成する添付の図面は、本発明のいくつかの実施形態を図示するものであり、この説明と共に、この発明の原理を説明するのに役立つ。図面は、本発明の実施形態の解説の目的のためのみであり、本発明を限定すると解釈されるものではない。この発明の例示的な実施形態を示す添付の図面とあわせて、以下の発明を実施するための形態から、この発明のさらなる目的、特徴及び利点が明らかになることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本明細書に記載の吸着容積(例えば、PPAV)が利用されることができる、可能な位置を例示する、例示的な蒸発エミッション制御キャニスターシステムの断面図である。
図2図2は、本明細書に記載の吸着容積(例えば、PPAV)が利用されることができる、別の可能な位置を例示する、例示的な蒸発エミッション制御キャニスターシステムの断面図である。
図3図3は、本明細書に記載の吸着容積(例えば、PPAV)が利用されることができる、可能な位置を例示する、例示的な蒸発エミッション制御キャニスターシステムの断面図である。
図4図4は、本明細書に記載の吸着容積(例えば、PPAV)が利用されることができる、可能な位置を例示する、例示的な蒸発エミッション制御キャニスターシステムの断面図である。
図5図5は、メインキャニスターに二つの吸着容積のみがあり、直列補助ベント側キャニスター内に二つのPPAVハニカムが存在する場合の、比較例および本発明の例のDBLエミッション性能が測定されたシステムを例示した例示的な蒸発エミッション制御キャニスターシステムの断面図である。
図6図6は、直列補助ベント側キャニスター内に二つのPPAVハニカムが存在する場合の、比較例および本発明の例のDBLエミッション性能が測定されたシステムを例示した例示的な蒸発エミッション制御キャニスターシステムの断面図である。
図7図7は、二つの異なるサンプルサイズの例示的配合物および比較の配合物の、最大の日のエミッション(mg)の比較である。
図8図8は、本明細書に記載の例示的な配合物と比較した比較例のダイ摩耗に及ぼす効果である。
図9図9は、本明細書に記載の例示的な配合物と比較した比較例のダイ摩耗に及ぼす効果である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
ここで、以下に本開示をより詳細に説明するが、本開示の全ての実施形態が示されるわけではない。本開示は例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、その要素を均等物で置き換えることができることを当業者は理解するであろう。さらに、本開示の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の構造または材料を本開示の教示に適合させるために、多くの修正を加えることができる。
【0037】
出願に添付されている図面は、例示のみを目的としている。それらは、本出願の実施形態を限定することを意図していない。また、図面は正確な縮尺率ではない。図の間で共通の要素は、同じ数字表示を保つ場合がある。
【0038】
値の範囲が提供される場合、その範囲および別の記載された範囲の上限と下限の間にある各値、およびその記載された範囲内にある値は本発明に含まれることが理解される。これらのより小さな範囲の上限および下限が独立してより小さな範囲に含まれてもよく、これも本発明内に包含され、指定範囲中の任意の具体的に除外される境界値となる。指定範囲が境界値の一つまたは両方を含む場合、それら含まれる境界値のいずれか、両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0039】
以下の語を、本発明を説明するために用いる。本明細書において用語が具体的に定義されていない場合、その用語は、本発明の説明においてその使用に関連して当該用語を適用する当業者により当分野において認識されている意味が与えられる。
【0040】
本明細書において使用される場合、「a」および「an」という冠詞は、文脈により明白に別段の示唆が無い限り、当該冠詞の文法的客体のうちの一つまたは一つ以上(すなわち少なくとも一つ)を指すように本明細書において使用される。一例として、「要素」は一つの要素または複数の要素を意味する。
【0041】
本明細書および請求の範囲において本明細書に使用される場合、「および/または」という語句は、そのように結合される要素のうちの「いずれか、または両方」を意味すると理解されたい。すなわち、一部の例では要素は結合して存在し、他の例では結合せずに存在する。「および/または」を用いて列記された複数の要素は、同じように解釈されるべきである。すなわち、要素の「一つ以上」がそのように結合されている。「および/または」条項により具体的に特定された要素以外の他の要素が、それら具体的に特定された要素との関連性の有無に関係なく、任意に存在し得る。したがって、非限定的な例として、例えば、「含む」などのオープンエンド型の文言と併せて使用される場合、「Aおよび/またはB」という言及は、一つの実施形態では、Aのみを指すことがある(任意で、B以外の要素を含む);別の実施形態では、Bのみを指すことがある(任意で、A以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、AとBの両方を指すことがある(任意で、他の要素を含む);など。
【0042】
本明細書および請求の範囲において本明細書で使用される場合、「または」は、上記に定義される「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を分離するときに、「または」または「および/または」は包括的なものとして解釈されるものとする。すなわち、多くの要素、または要素のリストのうちの少なくとも一つを含むが、複数も含み、そして任意で列記されていない追加の項目も含む。例えば「~の内のただ一つ」、または「~の内の正確に一つ」、または請求項において使用される場合には「~からなる」など、反対を明確に示唆される用語のみが、多くの要素、または要素のリストのうちの正確に一つの要素の含有を指す。概して本明細書に使用される場合、「または」という用語は、例えば「いずれか」、「~のうちの一つ」、「~のうちの一つのみ」、または「~のうちの正確に一つ」などの排他的な用語が先行する場合にのみ排他的な選択肢(すなわち「一つまたはその他であるが、両方ではない」)を示すものと解釈されるべきである。
【0043】
請求の範囲、ならびに上述の明細書において、「含む(comprising)」、「含有する(including)」、「担持する(carrying)」、「有する(having)」「含有する(containing)」、「関与する(involving)」、「保持する(holding)」、「構成される(composed of)」などの全ての移行句は、非限定である、すなわちそれらを含むが限定されないことを意味すると理解されたい。移行句「~からなる(consisting of)」及び「本質的に~からなる(consisting essentially of)」のみについては、米国特許審査便覧第10版(the 10 United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures)のセクション2111.03に記載されているとおり、それぞれ、クローズドの移行句、セミクローズドの移行句であるものとする。
【0044】
本明細書において使用される場合、明細書および請求の範囲において、一つ以上の要素のリストに関し、「少なくとも一つ」という語句は、要素リスト中のいずれか一つ、または複数の要素から選択される少なくとも一つの要素を意味すると理解されるべきであるが、必ずしも要素リスト内に具体的に列記される全ての要素のうちの少なくとも一つを含むものではなく、要素リスト中の要素の任意の組み合わせを除外するものではない。さらにこの定義は、「少なくとも一つ」という語句が指す要素リスト内で具体的に特定された要素以外にも、具体的に特定されたそれら要素の関連性の有無にかかわらず、任意で要素が存在し得ることを許容する。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも一つ(または同等に、「AまたはBのうちの少なくとも一つ」、もしくは同等に、「Aおよび/またはBのうちの少なくとも一つ」)とは、一つの実施形態では、Bが存在しない(および任意でB以外の要素を含む)、任意で複数のAを含む、少なくとも一つを指すことがあり;別の実施形態では、Aが存在しない(および任意でA以外の要素を含む)、任意で複数のBを含む、少なくとも一つを指すことがあり;さらに別の実施形態では、任意で複数のAを含む、少なくとも一つ、および任意で複数のBを含む、少なくとも一つ、(および任意で他の要素を含む)を指すことがある。など。明確に別の説明がない限り、一つ以上の工程または動作を含む本明細書で請求するあらゆる方法において、その方法の工程または動作の順序は、列挙されているその方法の工程または動作の順序に必ずしも限定されないということも理解されたい。
【0045】
本明細書で使用する用語「流体」、「ガス」または「ガスの」および「蒸気」または「蒸気の」は、一般的な意味で使用され、文脈から判断して明らかに他の意味に解釈すべき場合を除いて、交換可能であることが意図される。
【0046】
「Particulate Adsorbent Material and Methods of Making the Same」と題する、2017年7月21日に出願の米国特許出願第15/656,643号、米国特許公開第2016/0271555A号、米国特許第9,732,649号、および米国特許第6,472,343号は、参照によりその全体が全ての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0047】
現在説明されているのは、従来の車両のエミッション制御キャニスターに組み込まれた場合、驚くべきことに予想外に望ましいエミッション性能を示し、同時に、従来のハニカム吸着体と比較していくつかの製造上の利点をもたらす吸着材料である。例えば、記載の吸着材料はより軽く、より高い速度で押出し成形されることができ、押出しダイの摩耗が少ない。したがって、記載の吸着材料は、製造するのにより安価である。
【0048】
したがって、一態様では、本明細書は、
約10~約50wt%の活性化吸着材料と、
約3~約40wt%のガラスマイクロスフェアと、
100wt%までの差分量の少なくとも一つの添加材と、を含む、吸着体組成物を提供する。
【0049】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、添加材は、有機バインダー、無機バインダー、鉱物フラックス、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つを含む。本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、有機バインダーは、セルロース系バインダーである。
【0050】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、本明細書は、
約10~約50wt%の活性化吸着材料、例えば、活性化吸着粉末を含む、または本質的にそれからなる材料と、
約2~約10wt%の有機バインダーと、
約2~約50wt%の無機バインダー(例えば、粘土、シリカ、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つ)と、
約3~約40wt%のガラスマイクロスフェアと、を含む吸着体組成物を提供する。
【0051】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、本明細書は、約0~約5wt%のシリカゾルを含む吸着体組成物を提供する。
【0052】
記載の態様または実施形態のいずれかでは、本明細書に記載のように製造される吸着体組成物または押出し成形吸着体組成物の無機バインダーは、粘土バインダー、仮焼バインダー、鉱物フラックス、水またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つを含む。本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、無機バインダーは、粘土、シリカ、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つである。いくつかの実施形態では、シリカは、シリカゾル材料を含む。本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、本明細書に記載のように製造される吸着体組成物または押出し成形吸着体組成物は、約5~約50wt%の粘土バインダー、約5~約45wt%の仮焼バインダー、約2~約20wt%の鉱物フラックスまたはそれらの組み合わせを含む。
【0053】
本明細書に記載の吸着体組成物および押出し成形吸着体組成物は、揮発性有機化合物および他の化学物質を吸着する。当業者によって理解されるように、様々な吸着材料、例えば、活性炭を本発明で使用することができる。最も好適な吸着材料は、意図される用途、特に吸着される揮発性の種の性質に依存する。したがって、本明細書に記載の吸着体組成物および押出し成形吸着体組成物の物理的特性、例えば表面積および細孔構造は、用途により異なる場合がある。
【0054】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、活性化吸着材料は、活性炭、炭化木炭、ゼオライト、粘土、多孔質ポリマー、多孔質アルミナ、多孔質シリカ、モレキュラーシーブ、カオリン、チタニア、セリア、およびそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、活性化吸着材料は、活性炭である。活性炭は、多孔性(すなわち、単位体積当たり多数の細孔を有する)となるように加工されており、これは高い表面積を与える。活性炭は様々な材料から生成できるが、市販されているほとんどの活性炭は、泥炭、石炭、亜炭、木材、ココナッツの殻から作られている。原料に基づいて、炭素は、異なる細孔サイズ、灰分含量、表面状態、および/または不純物プロファイルを有することができる。ココナッツの殻ベースの炭素は、主にミクロポーラスの細孔径を有しているが、木材ベースの化学的な活性炭はメソポーラスサイズの範囲内でかなりの細孔容積を含んでいる。好ましい実施形態では、活性化吸着材料は、活性炭粉体である。
【0055】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、活性化吸着材料の前駆体は、木材である。活性化吸着材料の前駆体は、吸着材料の前駆体を加熱し、酸化剤、例えば、外因的に添加された活性化(すなわち酸化)剤、例えば二酸化炭素、酸素、酸または過熱蒸気を添加して処理することにより活性化されることができる。例示的な活性化吸着材料には、木材に由来し、リン酸で活性化されるNUCHAR(登録商標)(Ingevity South Carolina、LLC、SC)が挙げられる。
【0056】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、吸着体組成物は押出し成形される。本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、吸着体組成物は、それぞれ吸着体組成物の総重量に基づいて、約10~約50wt%、または約10~約45wt%、約10~約40wt%、約10~約35wt%、約10~約30wt%、約10~約25wt%、または約10~約20wt%、または約15~約30wt%、または約15~約25wt%、または約15~約30wt%、約15~約35wt%、約15~約40wt%、約15~約45wt%、または約15~約50wt%の活性化吸着材料を含む。
【0057】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、活性化吸着材料は、活性炭、炭化木炭、ゼオライト、粘土、多孔質ポリマー、発泡体、多孔質アルミナ、多孔質シリカ、モレキュラーシーブ、カオリン、チタニア、セリア、またはそれらの組み合わせを含む。本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、吸着材料は、活性炭である。活性化吸着材料は、活性化吸着材料前駆体に由来することができる。非限定的な例として、活性化吸着材料前駆体は木、木材粉塵、木粉、コットンリンター、泥炭、石炭、ココナッツ、亜炭、炭水化物、石油ピッチ、石油コークス、コールタールピッチ、フルーツピット、フルーツストーン、ナッツシェル、ナッツピット、おがくず、ヤシ、野菜、例えばもみ殻もしくはわら、合成ポリマー、天然ポリマー、リグノセルロース材料、またはそれらの組み合わせであってもよい。さらに、活性化吸着材料は、化学的活性化、熱的活性化、またはそれらの組み合わせを含む様々なプロセスを用いて製造されてもよいが、これらに限定されない。
【0058】
一般的に、活性化吸着材料の表面積が大きいほど、その吸着能力は大きくなる。例えば、活性炭の利用可能な表面積は、その細孔容積に依存する。個々の細孔サイズが大きくなると単位容積あたりの表面積が減少するため、一般的に、非常に小さい寸法の細孔の数を最大化すること、および/または非常に大きい寸法の細孔の数を最小にすることによって、大きな表面積が最大化される。
【0059】
Brunauer-Emmet-Teller(B.E.T.)表面積法は、材料の特定の表面積を特徴付けることができる。好ましくは、活性化された吸着材料は、約600~約2000、約800~約1800、または約1000~約1600m/グラムの窒素B.E.T.表面を有する。好適な活性炭はまた、活性炭の40重量%超が325メッシュスクリーンを通過するような粒子径を有することによって、およびより望ましくは、活性炭の65重量%超が325メッシュスクリーンを通過するような粒子径を有することによって、特徴付けられることができる。
【0060】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、活性化された吸着粉末、例えば、活性炭粉末は、少なくとも約50g/100gのブタン活性(pBACT)を有する。いくつかの実施形態では、活性化吸着体の前駆体のpBACTは、少なくとも約50g/100g、55g/100g、60g/100g、65g/100g、70g/100g、75g/100g、80g/100g、85g/100g、90g/100g、95g/100gまたはそれ以上であり、その間の全ての値を含む。いくつかの実施形態では、活性化された吸着粉末、例えば、活性炭粉末のpBACTは、約50g/100g~約95g/100g、約50g/100~約90g/100g、約50g/100g~約85g/100g、約50g/100g~約80g/100g、約50g/100g~約75g/100g、約50g/100g~約70g/100g、約50g/100g~約65g/100g、約50g/100g~約60g/100gであり、間の全ての重複範囲、包含範囲、および値を含む。
【0061】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、吸着体組成物または押出し成形吸着体組成物は、約2~約10wt%の有機バインダーを含む。本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、有機バインダーはポリマーバインダーを含む。本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、ポリマーバインダーは、セルロース系、例えば、セルロース、セルロース誘導体、またはそれらの組み合わせである。本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、ポリマーバインダーは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルヒドロキシエチルセルロース、およびエチルヒドロキシエチルセルロース、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つを含む。本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、ポリマーバインダーはセルロースエーテルである。本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、セルロースエーテルはメチルヒドロキシエチルセルロースである。本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、セルロースエーテルは、吸着体の仮焼中に昇華する。
【0062】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、バインダーは、当該技術分野で一般的に公知であるか、または公知となる任意の好適なバインダーを含むことができる。本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、吸着体組成物または押出し成形吸着体組成物は、ナイロン、ポリアクリル、フルオロポリマー(PVDF)から選択されるポリマーバインダーを含むことができる。当業者は、いくつかのタイプのバインダーが、本明細書で明示的に企図されるミクロ多孔性またはナノ多孔性のモノリシック炭素質物品に特に有用であることを認識するであろう。例えば、いくつかの実施形態では、バインダーは、メチルセルロース、メチルセルロースエーテル、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその誘導体およびその金属塩(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、テフロン(登録商標)、ノボラックフェノール樹脂、フミン酸由来ナトリウム塩、グアーガムセルロース、デンプン、リグニン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、スチレンブタジエン樹脂(SBR)、フェノール樹脂、ポリスチレンアクリル酸樹脂、ポリアクリル酸とグリセリン、ポリビニルアルコール、リグニン、およびヒドロキシエチルセルロースの群から選択されるポリオールとの反応生成物、ならびにそれらの誘導体および混合物、芳香族スルホン酸塩の結晶性塩、ポリフルフリルアルコール等、のうちの少なくとも一つである。水性バインダーの代替品は、いくつかの非可溶化非水性バインダー、例えば、粘土、フェノール樹脂、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)等の使用である。いくつかの実施形態では、本開示の非水性バインダーは、フルオロポリマー(例えば、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、またはパーフルオロアルコキシアルカン)、ポリアミド(例えば、ナイロン-6,6’またはナイロン-6)、ポリアミド、フィブリル化セルロース、高性能プラスチック(例えば、ポリフェニレンサルファイド)、フルオロポリマーとのコポリマー、ポリアミドとのコポリマー、ポリイミドとのコポリマー、高性能プラスチックとのコポリマー、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つのバインダーである。
【0063】
いくつかの実施形態では、バインダーは、熱硬化性ポリマーバインダー、ホットメルトポリマーバインダー、またはそれらの組み合わせを含む。熱硬化性ポリマーバインダーは、周囲温度で液体または固体である熱硬化性樹脂、特に、尿素-ホルムアルデヒド、メラミン-尿素-ホルムアルデヒド、またはフェノール-ホルムアルデヒドタイプの熱硬化性樹脂をベースにした組成物であり、メラミン-尿素-ホルムアルデヒドタイプの樹脂が好ましく、ならびにラテックスフォーム中の熱硬化性(コ)ポリマーのエマルジョンである。架橋剤は、混合物中に組み込まれることできる。架橋剤の例として、塩化アンモニウムを挙げることができる。ホットメルトポリマーバインダーは、一般的に周囲温度で固体であり、ホットメルトタイプの樹脂に基づく。ポリマーバインダーとして、ピッチ、タールまたは他の任意の既知のポリマーバインダーを使用することもできる。
【0064】
記載の態様または実施形態のいずれかでは、吸着体組成物または押出し成形吸着体組成物はさらに、フェノール樹脂、リグニン、リグノスルホン酸塩、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)等、フルオロポリマー、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ二塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアミド(例えば、ナイロン-6,6’もしくはナイロン-6)、高性能プラスチック(例えば、硫化ポリフェニレン)、ポリケトン、ポリスルホン、および液晶ポリマー、フルオロポリマーとのコポリマー(例えば、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン、またはパーフルオロアルコキシアルカン)、ポリアミドとのコポリマー(例えば、ナイロン-6,6’もしくはナイロン-6)、ポリイミドとのコポリマー、高性能プラスチックとのコポリマー(例えば、硫化ポリフェニレン)またはそれらの組み合わせから選択されるポリマーバインダーを含むことができる。
【0065】
記載態様または実施形態のいずれかでは、本明細書に記載の吸着体組成物または押出し成形吸着体組成物は、粉砕前駆体活性炭材料のポリマーバインダー架橋から生成され、粉砕活性炭材料は粉末の形態である。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の押出成形可能な組成物は、粉末活性炭材料を使用し、米国第6,472,343号の架橋ポリマーバインダー技術を適用することによって製造される。
【0066】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、ポリマーバインダーは、それぞれ吸着体組成物または押出し成形可能な吸着体組成物の総重量に基づいて、約1wt%、約2wt%、約3wt%、約4wt%、約5wt%、約6wt%、約7wt%、約8wt%、約9wt%、または約10wt%の量で含まれ、その間の全ての値および範囲を含む。
【0067】
記載の態様または実施形態のいずれかでは、ポリマーバインダーの量は、それぞれ押出し成形可能な吸着体組成物の総重量に基づいて約10wt%未満、例えば、約0.05wt%~約10wt%、約0.1wt%~約10wt%、約0.5wt%~約10wt%、約1.0wt%~約10wt%、約1.5wt%~約10wt%、約2.0wt%~約10wt%、約2.5wt%~約10wt%、約3.0wt%~約10wt%、約3.5wt%~約10wt%、または約4.0wt%~約10wt%であり、その間の全ての値を含む。記載の態様または実施形態のいずれかでは、ポリマーバインダーはメチルヒドロキシエチルセルロースであり、それぞれ吸着体組成物または押出し成形可能な吸着体組成物の総重量に基づいて約10wt%未満、例えば、約0.05wt%~約10wt%、約0.1wt%~約10wt%、約0.5wt%~約10wt%、約1.0wt%~約10wt%、約1.5wt%~約10wt%、約2.0wt%~約10wt%、約2.5wt%~約10wt%、約3.0wt%~約10wt%、約3.5wt%~約10wt%、または約4.0wt%~約10wt%の、その間の全ての値を含む量で存在する。請求項に記載の量のポリマーバインダーで、得られた押出し成形された材料は、驚くべきことにそして予想外に有利なBWCならびに比較的低いDCLを提供することが観察された。
【0068】
従来の組成物は、かなりの割合の本質的にプラスチックである成形可能な無機バインダー材料を含み、したがって、液体と混合される場合、形状に成形または押出し成形されることができ、乾燥および焼成によってその形状を維持する。従来の組成物で使用される成形可能な無機バインダー材料の例は、ボール粘土、例えば市販のOLD MINE#4ボール粘土(Kentucky-Tennessee Clay Company 、Mayfield,KYから入手可能)である。しかし、望ましくないことに、従来の組成物で必要とされるボール粘土などの材料の高い添加量は、押出しダイの摩耗を増加させ、製造コストを増加させる可能性がある。
【0069】
有利なことに、本開示の吸着材料および組成物は、ボール粘土の使用を最小化または排除し、したがって、押出しプロセスで使用される押出しダイの摩耗を低減する。
【0070】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、吸着材料または吸着体組成物は、無機バインダーを含む。本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、無機バインダーは、粘土バインダーを含む、または粘土バインダーである。本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、粘土バインダーは、ゼオライト粘土、ベントナイト粘土、モンモリロナイト粘土、イライト粘土、フレンチグリーン粘土、パスカライト粘土、レドモンド粘土、テラミン粘土、リビング粘土、フラー土粘土、オーマライト粘土、バイタルライト粘土、レクトライト粘土、コージライト、ボール粘土、カオリンまたはそれらの組み合わせ、のうちの少なくとも一つを含んでもよい。好ましくは、粘土フィラーは、含水カオリンである。含水カオリンは、その微細な粒子径、板状またはラメラー状の粒子形状および化学的不活性によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、粘土フィラーは、ボール粘土を含まない。例示的な含水カオリンは、Rogers Kaolin(Imerys Kaolin,Incから市販されている)である。
【0071】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、吸着体組成物は、約5~約50wt%の粘土バインダーを含む。本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、粘土バインダーは結晶性シリカが比較的少ない(例えば、約5%未満)。本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、摩耗を減らし、生産設備、例えば押出しダイの耐用年数を延ばすために、粘土の量を最小限に抑える。
【0072】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、吸着体組成物または押出し成形吸着体組成物は、例えば、粘土および/またはシリカゾルを含む、約5~約45wt%の仮焼バインダー材料を含む。本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、仮焼粘土バインダーは、微細な粒子と中サイズの粒子との組み合わせである。本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、カオリン粘土バインダーは、仮焼カオリン粒子の微細なサイズと中サイズとの組み合わせである。例えば、GLOMAX(登録商標)カオリン(Imerys Kaolin,Inc.,GA)は、中粒子径の仮焼カオリンである。仮焼バインダー材料は、仮焼されたカイヤナイト、ムライト、コージライト、粘土シャモット、シリカ、アルミナ、および他の仮焼または非可塑性耐火セラミック材料ならびにそれらの組み合わせを含むことができる。本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、仮焼バインダー材料は、仮焼カオリン粘土、例えば、GLOMAX LL(Imerys Kaolin,Inc.,GA)を含む。
【0073】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、仮焼バインダー材料は、吸着体組成物または押出し成形可能な吸着体組成物中に、それぞれ組成物の総重量に基づいて、約5~約45wt%、約5~約40wt%、約5~約35wt%、約5~約30wt%、約5~約25wt%、約2~約20wt%、約2~約15wt%、約2~約10wt%、約2~約8wt%、または約5~約10wt%の量で存在する。
【0074】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、吸着体組成物または押出し成形吸着体組成物は、約2~約20wt%の鉱物フラックスを含む。いくつかの実施形態では、鉱物フラックスは長石鉱物を含む。いくつかの実施形態では、鉱物フラックスは、霞石閃長岩であり、天然に存在するシリカ欠乏のナトリウム-カリウムアルミノシリケート、例えばMINEX(登録商標)(Covia Canada、Ltd.、Ontario、CA)である。MINEXには、1パーセントの10分の1未満の遊離結晶質シリカが含まれている。
【0075】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、吸着体組成物または押出し成形可能な吸着体組成物は、約0~約5wt%の無機バインダー、例えば、シリカゾルを含む。記載の態様または実施形態のいずれでは、シリカゾルはケイ酸ナトリウムであり、これは、乾燥しているが未焼成の押出し成形品および焼成された押出し成形品の両方の強度を高め、フラックス材料として機能する。記載の態様または実施形態のいずれかでは、シリカゾルは、それぞれ吸着体組成物または押出し成形可能な吸着体組成物の総重量に基づいて、約0~約5wt%、約0~約4wt%、約0~約3wt%、約0~約2.5wt%、約0~約2wt%、約0~約1.5wt%、または約0~約1.2wt%の量で存在する。好適な市販のシリカゾルは、アモルファスSiO(例えば、Akzo Nobelから入手可能なBindzil 2040 NH4)である。いくつかの実施形態では、押出し成形可能な吸着体組成物はケイ酸ナトリウムを含まない。
【0076】
記載の態様または実施形態のいずれかでは、吸着体組成物または押出し成形可能な吸着体組成物は、ガラスマイクロスフェアを含む。いくつかの実施形態では、ガラスマイクロスフェアは、非中空または中空のガラスマイクロスフェア(例えば、「ガラスバブル」)であり、押出しの速度および容易さを向上させ、より費用効果の高いプロセスを提供するというさらなる利点を提供する。
【0077】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、吸着体組成物または押出し成形可能な吸着体組成物のガラスマイクロスフェアは、約500マイクロメートル未満、約450マイクロメートル未満、約400マイクロメートル未満、約350マイクロメートル未満、約300マイクロメートル未満、約250マイクロメートル未満、約200マイクロメートル未満、約150マイクロメートル未満、約100マイクロメートル未満、約50マイクロメートル未満、約40マイクロメートル未満、約30マイクロメートル未満、約25マイクロメートル未満、約20マイクロメートル未満、約15マイクロメートル未満、10マイクロメートル未満、約5マイクロメートル未満、または、約10マイクロメートル~約100マイクロメートル、約10マイクロメートル~約50マイクロメートル、約10マイクロメートル~約40マイクロメートル、約10マイクロメートル~約30マイクロメートル、約10マイクロメートル~約25マイクロメートル、もしくは10マイクロメートル~約20マイクロメートルの平均直径を有する。
【0078】
態様または実施形態のいずれかでは、ガラスマイクロスフェアはガラス球である。「ガラスマイクロバブル」、「中空ガラスマイクロスフェア」、または「中空ガラスビーズ」としても一般的に知られる「ガラスバブル」は、重量を低減し、ならびに組成物の処理、寸法の安定性、および流動性を改善するために有用であることができる。一般的に、ガラスバブルは、押出し成形中に粉砕または破損されることを避けるために強いことが望ましい。有用な中空ガラス粒子には、3M Co.(St.Paul,Minn.)が「3M GLASS BUBBLES」という商品名で販売するもの(例えば、グレード--S32、K37、S38、S38HS、S38XHS、K46、D32/4500、 H50/10000、S60、S60HS、およびiM30K)、Potters Industries,Valley Forge,Pa.(PQ Corporationの関連会社)が「Q-CEL HOLLOW SPHERES」および「SPHERICAL HOLLOW GLASS SPHERES」という商品名で販売するガラスバブル、ならびにSilbrico Corp.,Hodgkins,Illが「SIL-CELL」という商品名で販売する中空ガラス粒子が含まれる。例示的なガラスバブルとしては、中粒子径(18μm)、密度0.6g/cc、27kpsiの破砕強度(90%残存)を有するソーダライムホウケイ酸ガラスバブル(中空球)が挙げられる。
【0079】
ガラスマイクロスフェアは、組成物の重量を低減し、処理、寸法の安定性、および流動性を改善するのに役立つことができる。いくつかの実施形態では、ガラスマイクロスフェアは、研磨バインダー、例えばボール粘土の必要性を最小限に抑えるか排除するために、フィラーおよび/または希釈剤として使用される。いくつかの実施形態では、ガラスマイクロスフェアは、BWCを減少させる。
【0080】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、吸着体組成物または押出し成形可能な吸着体組成物は、約10~約50wt%の活性化吸着材料(例えば、活性炭)、約2~約10wt%のポリマーバインダー、(例えば、メチルセルロース、セルロースエーテル(METHOCEL))、約5~約10wt%の粘土バインダー(例えば、Rogers kaolin)、約5~約45wt%の仮焼粘土バインダー(例えば、GLOMAX LL)、約2~約20wt%の鉱物フラックス(例えば、MINEX、The Cary Company)、約0~約5wt%のシリカゾル、および約5~約40wt%のガラスマイクロスフェア(例えば、iM30Kガラス気泡、3M)を含む。
【0081】
別の態様では、本明細書は、(a)(i)約10~約50wt%の活性化吸着材料、例えば、活性化吸着粉末を含む活性化吸着体組成物、(ii)約3~約40wt%のガラスマイクロスフェア、および(iii)100wt%までの差分量の少なくとも一つの添加材、を混合して、吸着体組成物を形成する工程と、(b)吸着体組成物を押出して、押出し成形吸着体組成物を製造する工程と、を含む工程による、押出し成形吸着体組成物を調製するための方法を提供する。任意の態様または実施形態では、添加材は、有機バインダー、無機バインダー、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つを含む。本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、有機バインダーは、セルロース系バインダーである。本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、無機バインダーは、粘土、シリカ、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つである。いくつかの実施形態では、シリカは、シリカゾル材料を含む。記載の態様または実施形態のいずれかでは、ハニカムダイは、ハニカム構造を有する押出し吸着材料を製造するために押出し工程で使用される。
【0082】
当業者によって理解されるように、押出し成形吸着体組成物の乾燥成分は、押出し成形および乾燥前に、湿らされてペーストを形成する。つまり、本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、押出し工程(b)の前に、水が構成要素(i)~(ii)に添加されて、湿らされた塊またはペーストを形成する。
【0083】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、本明細書に記載のように製造される吸着体組成物または押出し成形吸着体組成物のバインダーは、粘土バインダー、仮焼バインダー、鉱物フラックス、水またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つを含む。本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、本明細書に記載のように製造される吸着体組成物または押出し成形吸着体組成物は、約5~約50wt%の粘土バインダー、約5~約45wt%の仮焼バインダー、約2~約20wt%の鉱物フラックスまたはそれらの組み合わせを含む。
【0084】
記載の態様または実施形態のいずれかでは、本明細書は、(a)(i)約10~約50wt%の活性化吸着材料、例えば、活性化吸着粉末を含む活性化吸着材料と、(ii)約2~約10wt%の有機バインダーと、(iii)約5~約50wt%の粘土バインダーと、(iv)約5~約45wt%の仮焼粘土バインダーと、(v)約2~約20%の鉱物フラックスと、(vi)約0~約5wt%のシリカゾルと、(vii)約3~約40wt%のガラスマイクロスフェアと、を混合して吸着体組成物を形成する工程と、(b)吸着体組成物を押出し、押出し成形吸着体組成物を形成する工程と、を含む工程によって製造される押出し成形吸着体組成物を提供する。いくつかの実施形態では、ハニカムダイは、押出し工程で使用され、ハニカム構造を有する押出し成形吸着体組成物を製造する。
【0085】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、押出し成形組成物は、活性化吸着粉末を含む約10~約50wt%の活性化吸着材料と、約2~約10wt%のポリマー有機バインダーと、約5~約50wt%の粘土バインダーと、約5~約45wt%の仮焼バインダーと、約2~約20%の鉱物フラックスと、約0~約5wt%のシリカゾルと、約3~約40wt%のガラスマイクロスフェアと、を含む。
【0086】
記載の態様または実施形態のいずれかでは、記載の吸着体組成物または押出し成形可能な吸着体組成物は、従来の配合物よりも速い速度で押出されることができる。従来の配合物でより速い押出しを試みると、摩擦により温度が上昇し、押出された部分が機能しなくなるほど硬くなる。記載の態様または実施形態のいずれかでは、本明細書に記載の吸着体組成物は、従来の組成物よりも少なくとも約40%速く押出されることができる(約3.5in/秒)。
【0087】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、押出し成形可能な吸着体組成物または押出し成形吸着体物品は、本明細書に記載の0.05~1マイクロメートルの細孔容積の0.05~100マイクロメートルの細孔容積に対する比が、約70%を超える、または約75%を超える、約80%を超える、または約90%を超える。
【0088】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、押出し成形可能な吸着体組成物または押出し成形吸着体物品は、本明細書に記載の0.05~0.5マイクロメートルの細孔容積の0.05~100マイクロメートルの細孔容積に対する比が、約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%を超える。
【0089】
本明細書に記載の吸着体組成物または押出し成形可能な吸着体組成物から、異なるタイプの押出し成形吸着体物品を調製することができる。これらには、顆粒、ペレット(例えば、円筒形のペレット)、球、シート、リボン、トリローブ、およびモノリスが含まれ(しかしこれらに限定されない)、それを通って延在する平行な内部通路(すなわち、平行な通路の吸着容積またはPPAV)を有する物品、例えば、ハニカム、例えば均一または不均一なハニカムが含まれる。原則として、押出し形成される物品の任意の所望の形状は、適切な成形装置で形成されることができる。したがって、形状、例えば、モノリス、ブロック、および他のモジュラー形状も想定され、均一な形状の微粒子媒体、不均一な形状の微粒子媒体、押出形成形状の構造体媒体、巻回状形状の構造体媒体、折り畳まれた形状の構造体媒体、プリーツ状の構造体媒体、波形状の構造体媒体、流し込み形態の構造体媒体、接着形態の構造体媒体、不織布、織物、シート、紙、発泡体、中空円筒形、星形、ねじれらせん形、アスタリスク、形成されたリボン、またはそれらの組み合わせを含む。本明細書に記載の配合物は、PPAV、例えば、ハニカムタイプの吸着体物品の押出し成形に特に有用である。
【0090】
別の態様では、本開示は、少なくとも一つの燃料側吸着容積および少なくとも一つのベント側吸着容積を備える蒸発エミッション制御キャニスターシステムを提供し、少なくとも一つの燃料側または少なくとも一つのベント側吸着容積のうちの少なくとも一つは、本明細書に記載の吸着体組成物または押出し成形吸着体物品を備える。
【0091】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、蒸発エミッション制御キャニスターシステムは、均一なセル構造を有する一つまたは複数のベント側吸着容積を備え、すなわち、吸着容積内のほぼ全てのセルが同じサイズである。
【0092】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、本明細書に記載のベント側押出し成形吸着体物品を備える蒸発エミッション制御キャニスターシステムは、100mg以下の2日間のダイアーナルブリージングロス(DBL)エミッションを示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のベント側押出し成形吸着体物品を備える蒸発エミッション制御キャニスターシステムは、100、90、80、70、60、50、40、30または20mg以下の2日間のダイアーナルブリージングロス(DBL)エミッションを示す。
【0093】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、本明細書に記載の押出し成形吸着体組成物は、100mg以下の2日間のダイアーナルブリージングロス(DBL)エミッションを示し、例えば、2012 California Bleed Emissions Test Procedure (BETP)によって測定された40g/時ブタン充填工程後に適用された指定量のパージ空気量で約5mg~約100mgである。本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、蒸発エミッション制御システムは、加熱ユニットをさらに備えてもよい。
【0094】
別の態様では、本明細書は、蒸発エミッション制御システムにおいて燃料蒸気エミッションを低減するための方法を提供し、方法は、燃料蒸気を、本明細書に記載の押出し成形吸着体物品を備える本明細書に記載の蒸発エミッション制御システムと接触させることを含む。
【0095】
いくつかの別の実施形態では、本明細書に記載の吸着体組成物または押出し成形可能な吸着体組成物は、ほぼ均一なセルまたは幾何学的構造、例えば、後続の吸着容積を通ったほぼ均一な空気または蒸気の流れ分布を許容または促進するハニカム構造、を有するマトリックスを備える構造に形成される。別の実施形態では、吸着材料は、前述のいずれかの組み合わせを含む構造に形成される。
【0096】
押出し成形吸着体組成物または物品は、上記特徴のうちの任意の一つまたは複数を含んでもよく、上記特徴は、本記載に従ってあらゆる方法で組み合わせられてもよく、本明細書中に明示的に意図されている。
【0097】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、押出し成形吸着体物品、例えば、吸着体ハニカム構造は、構造の亀裂を防止するような方法で乾燥される。亀裂を軽減するために、押出されたハニカム構造全体で実質的に同じ速度で水が除去されるように、押出しハニカム構造は乾燥される。好ましい乾燥方法には、真空乾燥、凍結乾燥、マイクロ波乾燥、無線周波数(RF)乾燥、および湿度制御乾燥が含まれる。さらに従来の乾燥方法を使用して、本発明の押出し成形ハニカム構造体を乾燥させることができるが、商業的にはあまり実用的ではない。このような従来の方法は、プラスチックで包まれたモノリスを用いた誘電乾燥および温風乾燥を含む。
【0098】
押出し成形ハニカム構造体の真空乾燥は、真空チャンバー内が最初は周囲の室温および大気圧である真空チャンバー内に押出し成形モノリスを配置することと、押出し成形ハニカム構造体内の水を急速に凍結するのに十分な速度でおよびレベルまで真空チャンバー内の圧力を下げることと、押出し成形ハニカム構造体が乾燥するまで、押出し成形ハニカム構造体内の凍結水を昇華させるのに十分な時間、真空チャンバー内で減圧を維持することと、含む。押出し成形ハニカム構造体が凍結された後、この乾燥サイクルを一時的に中断して、押出し成形ハニカム構造体を別のチャンバーに移すことができる。押出し成形ハニカム構造体内の水の凍結は、水を固定し、押出し成形ハニカム構造体のサイズおよび形状を安定させる。初期真空は、望ましくは、押出し成形ハニカム構造体を迅速かつ均一に凍結するための深真空である。真空は、押出し成形ハニカム構造体が大気圧の低温チャンバー内で凍結された場合よりも、押出し成形ハニカム構造体をより均一に凍結する。そして凍結後、押出し成形ハニカム構造体は、第一のチャンバーほど深い真空を必要としない第二のチャンバーに移されることができる。昇華は、この第二のチャンバーで完了することができる。望ましくは、真空乾燥中に、真空チャンバー内の圧力は、約1分以内に、大気圧から約1torr未満の圧力に、そして望ましくは30マイクロメートル~1torrの範囲内に低下する。あるいは、この第二のチャンバーは、大気圧および氷点下の温度にすることができ、凍結した押出し成形ハニカム構造体は、再循環する除湿空気で乾燥させることができる。
【0099】
押出し成形ハニカム構造体の凍結乾燥は、真空乾燥と同じ方法で実行されるが、ただし構造体が昇華による乾燥のために真空チャンバー内に入れられる前に急速冷凍される。湿った押出し成形ハニカム構造体は、液体窒素または当業者に公知の別の手段によって冷却された超低温チャンバー内に湿った押出し成形ハニカム構造体を配置することによって凍結される。あるいは、押出し成形ハニカム構造体を凍結するために、押出し成形ハニカム構造体を、超低温液体、例えば液体窒素で溢れさせるか、または浸漬させてもよい。
【0100】
押出し成形ハニカム構造体が真空中におかれる凍結乾燥または真空乾燥の乾燥段階中、押出し成形ハニカム構造体の温度は、乾燥中に独立して、放射、伝導、対流、またはRFもしくはマイクロ波エネルギーによるエネルギーの印加によって変化されることができ、水の除去を促進させる。真空乾燥に使用される真空レベルと同様の真空レベルが使用される。押出し成形ハニカム構造体の温度は、不均一な水の損失および亀裂を避けるために、最大32°F以下に維持される必要がある。
【0101】
湿った押出し成形ハニカム構造体の湿度制御乾燥には、最初に少なくとも92パーセントのチャンバー内の相対湿度を有するチャンバー内に湿った押出し成形ハニカム構造体を配置することと、押出し成形ハニカム構造体が乾燥するまで、チャンバー内の相対湿度を徐々に低下させることと、が含まれる。望ましくは、チャンバー内の初期相対湿度レベルは98パーセント以上である必要がある。チャンバー内の湿度を段階的に下げて、各乾燥段階の間、押出し成形ハニカム構造体全体に実質的に均一な水分蒸発をもたらすことができる。湿度調整された空気は、乾燥チャンバーおよびハニカム押出し成形ハニカム構造体の通路を通って循環され、押出し成形ハニカム構造体全体にわたって均一な水分除去速度を確実にもたらす。チャンバー内の温度は、乾燥作用を高めるために変えることができる。
【0102】
記載の態様または実施形態のいずれかでは、乾燥工程の後、乾燥された押し出しハニカム押出し成形ハニカム構造体は、窒素もしくは他の非酸化性またはわずかに還元性の雰囲気中で、約500~約1150℃、または約1000~約1150℃の温度で焼成または仮焼される。押出し成形ハニカム構造体は、セラミック成形材料を一緒に反応させて、活性炭を保持し、かつ押出し成形のハニカム形状を維持するためのマトリックスを作製するのに十分な温度で焼成される必要がある。焼成によって形成された結合は、意図された用途、例えばゼログラフィックデバイス用のオゾンフィルター、自動車の空気取り入れシステムの燃料吸着装置、または触媒担体、での押出し成形ハニカム構造体の取り扱いおよび使用に耐えることができる強度を有するマトリックスを作製するのに十分でなければならない。触媒担体として使用される場合、本発明の押出し成形ハニカム構造体は、従来のコーティング方法を使用して、従来の触媒コーティングでコーティングされることができる。本発明の押出し成形ハニカム構造体を形成する材料の比較的大きい表面積は、触媒担体として望ましい。
【0103】
記載の態様または実施形態のいずれかでは、本明細書に記載の押出し成形吸着体物品は、1g/dL~約10g/dLのBWCを有する。本明細書に開示の吸着体組成物の構成要素は、様々な混合、成形、および熱処理装置と協働することができる。様々な混合装置、例えば低せん断ミュラー、中せん断パドル混合器、および高せん断ピン混合器は、後続の成形に好適な材料を作製することが実証されている。用途に応じて、成形装置、例えば、オーガー押出機、ラム押出機、造粒機、ローラーペレタイザー、スフェロナイザー、およびタブレット成形機が好適である。湿った炭素体の乾燥および硬化は、様々な異なる装置、例えば対流トレイオーブン、振動流動床乾燥機、およびロータリーキルンを用いて、270℃未満の温度で実行されることができる。対照的に、粘土結合およびフェノール樹脂結合炭素の熱処理には、通常はロータリーキルンを使用して、約500~1200℃の高温が用いられることができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の吸着体組成物および物品は、0.05~1マイクロメートルの細孔容積の0.05~100マイクロメートルの細孔容積に対する比が、約70%を超える、約75%を超える、または約80%を超え、その間の全ての値を含む。いくつかの実施形態では、0.05~1マイクロメートルの細孔容積の0.05~100マイクロメートルの細孔容積に対する比は、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、または約80であり、その間の全ての値を含む。いくつかの実施形態では、0.05~1マイクロメートルの細孔容積の0.05~100マイクロメートルの細孔容積に対する比は、70~80%、または75~80%であり、その間の全ての重複範囲、包含範囲、および値を含む。
【0105】
いくつかのの実施形態では、本明細書に記載の吸着材料および組成物は、0.05~0.5マイクロメートルの細孔容積の0.05~100マイクロメートルの細孔容積に対する比が、約90%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、または約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満であり、その間の全ての値を含む。いくつかの実施形態では、0.05~0.5マイクロメートルの細孔容積の0.05~100マイクロメートルの細孔容積に対する比は、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、または約60%以上である。いくつかの実施形態では、0.05~0.5マイクロメートルの細孔容積の0.05~100マイクロメートルの細孔容積に対する比は、約20~90%、約20~85%、約20~80%、約20~75%、約20~70%、約20~65%、約20~60%、約20~55%、約20~50%、約20~45%、約20~40%、約20~35%、約20~30%、または約20~25%であり、その間の全ての重複範囲、包含範囲、および値を含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、押出し成形材料は、さらに、(i)本明細書に記載の0.05~1マイクロメートルの細孔容積の0.05~100マイクロメートルの細孔容積に対する比が、例えば、約70%を超える、(ii)本明細書に記載の0.05~0.5マイクロメートルの細孔容積の0.05~100マイクロメートルの細孔容積に対する比が、例えば、約20%を超える、または(iii)それらの組み合わせ、のうちの少なくとも一つを有する。いくつかの実施形態では、成形工程は押出し成形によって実施される。
【0107】
いくつかの別の実施形態では、方法は、押出し成形吸着体組成物または物品を乾燥、硬化、または仮焼する工程(e)を含む。いくつかの実施形態では、乾燥、硬化、または仮焼工程は、約30分~約20時間実施される。いくつかの実施形態では、乾燥、硬化、または仮焼工程は、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、または約20時間実行され、その間の全ての値を含む。いくつかの実施形態では、乾燥、硬化、または仮焼工程は、約100℃~約650℃の範囲の温度で実行される。いくつかの実施形態では、乾燥、硬化、または仮焼工程は、約100℃、約110℃、約120℃、約130℃、約140℃、約150℃、約160℃、約170℃、約180℃、約190℃、約200℃、約250℃、約300℃、約350℃、約400℃、約450℃、約500℃、約550℃、約600℃、約650℃、約700℃、または約750℃、または約800℃、または約850℃、または約900℃、または約950℃、または約1000℃、または約1050℃、または約1100℃の温度で実行される。
【0108】
いくつかの態様では、本明細書に記載の押出し成形吸着体組成物または物品は、キャニスターに備えられる。押出し成形吸着体組成物または物品がキャニスターシステムに備えられる場合、キャニスターは、2012BETPによって測定される40g/時のブタン充填工程後に適用される特定の体積のパージで、約100mg以下、約90mg以下、約80mg以下、約70mg以下、約60mg以下、約50mg以下、約40mg以下、約30mg以下、約20mg以下、約10mg以下、の2日間のDBLブリードエミッション性能(2日目のダイアーナルブリージングロス(DBL)エミッション)を示す。任意の態様または実施形態では、押出し成形吸着体組成物または物品は、キャニスターシステムに備えられ、キャニスターは、約100mg以下、約90mg以下、約80mg以下、約70mg以下、約60mg以下、約50mg以下、約40mg以下、約30mg以下、約20mg以下、または約10mg以下、の2日間のDBLブリードエミッション性能(2日目のダイアーナルブリージングロス(DBL)エミッション)を示す。本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、システムは、2012BETPによって測定される40g/時のブタン充填工程後に適用される315Lを超えるパージで、2012BETPによって測定される40g/時のブタン充填工程後に適用される約315リットル(すなわち、ベースキャニスターの呼び容積に基づいて約150BV)以下のパージで、または2012BETPによって測定される40g/時のブタン充填工程後に適用される210リットル(すなわち、100BV)以下のパージで、パージされる。
【0109】
いくつかの実施形態では、パージ量は、約150ベッド体積(BV)より大きく、約25BV~約150BV、約35~約150BV、約40BV~約150BV、約50BV~約150BVであり、その間の全ての重複範囲および値を含む。別の実施形態では、パージ量は、約25BV~約140BV、約25BV~約130BV、約25BV~約120BV、約25BV~約110BV、約25BV~約100BV、約25BV~約90BV、約25BV~約80BV、約25BV~約70BV、約25BV~約60BV、約25BV~約50BVであり、その間の全ての重複範囲および値を含む。いくつかの実施形態では、上記のパージ体積は、2.1リットルのキャニスターシステムに基づく。
【0110】
いくつかの実施形態では、押出し成形吸着体組成物または物品は、本明細書に記載されるように、2.1リットルのキャニスターに備えられ、40g/時のブタン充填工程後に適用される十分なパージ体積で100mg以下の2日間のダイアーナルブリージングロス(DBL)エミッションを有する。いくつかの実施形態では、押出し成形吸着体組成物または物品は、本明細書に記載の2.1リットルのキャニスターに備えられ、2012 California Bleed Emissions Test Procedure(BETP)によって測定される40g/時のブタン充填工程後に適用される150ベッド体積(BV)のパージで、100mg以下の2日間のダイアーナルブリージングロス(DBL)エミッション、または、2012BETPによって測定される40g/時のブタン充填工程後に適用される150ベッド体積のパージで90mg以下のDBL、または、2012BETPによって測定される40g/時のブタン充填工程後に適用される150ベッド体積のパージで80mg以下のDBL、または、2012BETPによって測定される40g/時のブタン充填工程後に適用される150ベッド体積のパージで70mg以下のDBL、または、2012BETPによって測定される40g/時のブタン充填工程後に適用される150ベッド体積のパージで60mg以下のDBL、または、2012BETPによって測定される40g/時のブタン充填工程後に適用される150ベッド体積のパージで50mg以下のDBL、または、2012BETPによって測定される40g/時のブタン充填工程後に適用される150ベッド体積のパージで40mg以下のDBL、または、2012BETPによって測定される40g/時のブタン充填工程後に適用される150ベッド体積のパージで30mg以下のDBL、または、2012BETPによって測定される40g/時のブタン充填工程後に適用される150ベッド体積のパージで20mg以下のDBL、を有し、その間の全ての値を含む。
【0111】
いくつかの態様では、蒸発エミッション制御キャニスターシステムは、少なくとも一つの燃料側吸着容積および少なくとも一つの後続の(すなわち、ベント側)吸着容積を備え、少なくとも一つの燃料側吸着容積または少なくとも一つの後続の吸着容積のうちの少なくとも一つは、本明細書に記載の押出し成形吸着体組成物または物品を備える。
【0112】
いくつかの実施形態では、蒸発エミッション制御キャニスターシステムは、2012 California Bleed Emissions Testによって測定される40g/時のブタン充填工程後に適用される特定のパージ体積で、約100mg以下、約95mg以下、約90mg以下、約85mg以下、約80mg以下、約75mg以下、約70mg以下、約65mg以下、約60mg以下、約55mg以下、約50mg以下、約45mg以下、約40mg以下、約35mg以下、約30mg以下、約25mg以下、約20mg以下、約15mg以下、約10mg以下の2日間のダイアーナルブリージングロス(DBL)エミッションを有する。いくつかの実施形態では、パージ体積は、2012 California Bleed Emissions Testによって測定される40g/時のブタン充填工程後に適用される、約315リットル以下、約310リットル以下、約300リットル以下、約290リットル以下、約280リットル以下、約270リットル以下、約260リットル以下、約250リットル以下、約240リットル以下、約230リットル以下、約220リットル以下、約210リットル以下、約200リットル以下、約190リットル以下、約180リットル以下、約170リットル以下、約160リットル以下、約150リットル以下、約140リットル以下、約130リットル以下、約120リットル以下、約110リットル以下、約100リットル以下、約90リットル以下、または約80リットル以下、のパージである。いくつかの実施形態では、2012BETPによって測定される上記の2日間のDBLエミッションをもたらすパージ体積は、約50リットル~約315リットル、約75リットルから約315リットル、約100リットル~約315リットル、約125リットル~約315リットル、約150リットル~約315リットル、約175リットル~約315リットル、約200リットル~約315リットル、約210リットル~約315リットル、約220リットル~約315リットル、約230リットル~約315リットル、約240リットル~約315リットル、または約250リットル~約315リットルであり、重複する、包含する、およびその間の全ての値と範囲を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、蒸発エミッション制御キャニスターシステムは、2012 California Bleed Emissions Testによって測定される40g/時のブタン充填工程後に適用される約150BV以下、約145BV以下、約140BV以下、約135BV以下、約130BV以下、約125BV以下、約120BV以下、約115BV以下、約110BV以下、約105BV以下、約100BV以下、約95BV以下、約90BV以下、約85BV以下、約80BV以下、約75BV以下、約70BV以下、約65BV以下、約60BV以下、約55BV以下、約50BV以下、約45BV以下、または約40BV以下、のパージで、約100mg以下、約95mg以下、約90mg以下、約85mg以下、約80mg以下、約75mg以下、約70mg以下、約65mg以下、約60mg以下、約55mg以下、約50mg以下、約45mg以下、約40mg以下、約35mg以下、約30mg以下、約25mg以下、約20mg以下、約15mg以下、または約10mg以下、の2日間のダイアーナルブリージングロス(DBL)エミッションを有する。
【0114】
用語「燃料側吸着容積」は、燃料蒸気源に近接し、したがって、必然的にベントポート(ここでは、「ベント側吸着容積」)近くに配置される後続の吸着容積と比較して、燃料蒸気流路の早い段階にある吸着材料の体積に関連して使用される。当業者が理解するであろうように、パージサイクル中に、ベント側または後続の吸着容積が、パージ空気流路の早い段階で接触する。便宜上、燃料側吸着体は、ベント側または後続の吸着容積に対して燃料蒸気流路の上流に配置されるため、「最初の吸着容積」と呼ばれる場合があるが、最初の吸着容積は必ずしもキャニスター内の最初の吸着容積である必要はない。
【0115】
図1は、単一のキャニスター101内に直列の吸着容積を有する蒸発エミッション制御キャニスターシステム100の一実施形態を例示する。キャニスターシステム100は、スクリーンまたはフォーム102、隔壁103、燃料タンクからの燃料蒸気入口104、大気に通じるベントポート105、エンジンへのパージ出口106、燃料側または最初の吸着容積201、およびベント側または後続の吸着容積202を備える。スクリーンまたはフォーム102は、吸着容積を収容および支持するだけでなく、吸着容積内への蒸気流の分配も行う分配器として機能する。吸着容積201および202を収容する二つのチャンバーは、隔壁103によって分離され、キャニスタープレナムと呼ばれる通路107によって支持スクリーン102の下方の連続的な蒸気流のために連結される。エンジンが停止している場合、燃料タンクからの燃料蒸気は、燃料蒸気入口104を通ってキャニスターシステム100に入る。燃料蒸気は、キャニスターシステムのベントポート105を通って大気に放出される前に、燃料側または最初の吸着容積201内に、そして、ベント側または後続の吸着容積202内に拡散または流入し、これらが一緒になって空気および蒸気流路を画成する。エンジンが作動すると、周囲空気がベントポート105を通ってキャニスターシステム100内に引き込まれる。パージ空気は、キャニスター101内の容積202を通って、最後に、燃料側または最初の吸着容積201を通って流れる。このパージ流は、パージ出口106を通って内燃エンジンに入る前に、吸着容積202を通って吸着容積201に吸着された燃料蒸気を脱着する。本明細書に記載の蒸発エミッション制御キャニスターシステムの実施形態のいずれかでは、キャニスターシステムは、二つ以上のベント側または後続の吸着容積を備える場合がある。例えば、図2に示すように、ベント側吸着容積201は、プレナム107の上方の支持スクリーン102の前に、別のまたは複数のベント側吸着容積202を備えてもよい。別のベント側吸着容積203および204は、隔壁の反対側にあってもよい。
【0116】
さらに、別の実施形態では、キャニスターシステムは、独立して選択することができる、および/または一つまたは複数の容器内に設けられる、複数のタイプのベント側吸着容積を備えることができる。例えば、図3に示すように、ベント側吸着容積301を収容する補助チャンバー300は、複数の吸着容積を収容するメインキャニスター101と空気流および蒸気流に関して直列で、連結ホースまたはシュノーケル108によって蒸気流用に連結されてもよい。図4に示すように、補助チャンバー300は、直列に二つのベント側吸着容積301および302を収容することができる。吸着容積301および302は、図4の単一チャンバー300ではなく、直列チャンバーまたは補助キャニスター内に収容される場合もある。
【0117】
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、蒸発エミッション制御システムは、加熱ユニット、または電気抵抗もしくは熱伝導によって熱を加える手段をさらに備えてもよい。
【0118】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、キャニスターシステムは、燃料蒸気流路の端部にまたはその近くに均一なセル構造を有する一つまたは複数のベント側吸着容積を備える。
【0119】
いくつかの実施形態では、少なくとも一つの燃料側または最初の吸着容積および少なくとも一つのベント側または後続の吸着容積(または複数の容積)は、蒸気またはガス連通しており、それを通る空気および蒸気の流路を画成する。空気および蒸気の流路は、キャニスターシステム内のそれぞれの吸着容積間の方向性のある空気または蒸気の流れもしくは拡散を、可能にするか、または促進する。例えば、空気および蒸気の流路は、少なくとも一つの燃料側または最初の吸着容積から少なくとも一つのベント側または後続の吸着容積(または複数の容積)への燃料蒸気の流れまたは拡散を促進する。
【0120】
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、少なくとも一つの燃料側または最初の吸着容積、および少なくとも一つのベント側または後続の吸着容積は、単一のキャニスター、別個のキャニスター、または両方の組み合わせ内に配置されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、システムは、燃料側または最初の吸着容積、および一つまたは複数のベント側または後続の吸着容積を備えるキャニスターを備え、ベント側または後続の吸着容積は、燃料側の最初の吸着容積に連結し、それらは蒸気またはガス連通して蒸気流路を形成し、空気および/または蒸気がそこを通って流れるまたは拡散することを可能にする。いくつかの態様では、キャニスターか、空気または燃料蒸気が吸着容積と連続的に接触することを可能にする。
【0121】
別の実施形態では、システムは、最初の吸着容積を備えるキャニスターと、少なくとも一つの別の後続の吸着容積を備える一つまたは複数の別個のキャニスターに連結する一つまたは複数の後続の吸着容積と、を備え、後続の吸着容積は、最初の吸着容積に連結し、それらは蒸気またはガス連通して蒸気流路を形成し、空気および/または燃料蒸気がそれを通って流れるまたは拡散することを可能にする。
【0122】
いくつかの実施形態では、システムは、燃料側または最初の吸着容積を備えるキャニスターと、少なくとも一つの別の後続の吸着容積を備える一つまたは複数の別個のキャニスターに連結する一つまたは複数のベント側または後続の吸着容積と、を備え、一つまたは複数のベント側吸着容積および少なくとも一つの別の後続の吸着容積は最初の吸着容積に連結し、それらは蒸気またはガス連通して蒸気流路を形成し、空気および/または燃料蒸気がそれを通って流れるまたは拡散することを可能にし、システム内の吸着容積のうちの少なくとも一つは、約1g/dL~約10g/dLのBWCを有する本明細書に記載の押出し成形吸着材料である。
【0123】
いくつかの実施形態では、システムは、燃料側または最初の吸着容積を備えるキャニスターと、少なくとも一つの別の後続の吸着容積を備える一つまたは複数の別個のキャニスターに連結する一つまたは複数のベント側または後続の吸着容積と、を備え、一つまたは複数のベント側吸着容積および少なくとも一つの別の後続の吸着容積は燃料側最初の吸着容積に連結し、それらは蒸気またはガス連通して蒸気流路を形成し、空気および/または燃料蒸気がそれを通って流れるまたは拡散することを可能にし、システム内の吸着容積のうちの少なくとも一つは本明細書に記載の押出し吸着材料である。
【0124】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、燃料側または最初の吸着容積は、第一および/または第二の吸着容積であり、したがって、ベント側または後続の吸着容積は、同じもしくは別個のキャニスター、またはその両方であるかどうかにかかわらず、ベントポートに向かう流体流路の下流のものである。
【0125】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、キャニスターシステムは、(i)5vol%~50vol%のn-ブタンの蒸気濃度で、1グラムのn-ブタン/L~35グラム未満のn-ブタン/Lの25℃における有効増分吸着容量、(ii)3g/dL未満のBWC、(iii)20グラム未満のg-総BWC、または(iv)それらの組み合わせ、のうちの少なくとも一つを有するベント側吸着容積として本明細書に記載の少なくとも一つの押出し成形吸着容積を備える。いくつかの実施形態では、キャニスターは、5vol%~50vol%のn-ブタンの蒸気濃度で、25℃で、約35、約34、約33、約32、約31、約30、約29、約28、約37、約36、約35、約34、約23、約22、約21、約20、約19、約18、約17、約16、約15、約14、約13、約12、約11、約10、約9、約8、約7、約6、約5、約4、約3、約2、または約1g/L、の増分吸着容量を有する本明細書に記載の少なくとも一つのベント側吸着材料を備える。
【0126】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、キャニスターシステムは、5vol%~50vol%のn-ブタンの蒸気濃度で、25℃で、1リットルあたり約35グラム(g/L)を超える~約90g/Lのn-ブタンの、または、5vol%~50vol%のn-ブタンの蒸気濃度で、1リットル当たり約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約51、約52、約53、約54、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、もしくは約90グラム(g/L)以上のn-ブタンの、有効増分吸着容量を有する、少なくとも一つの燃料側吸着容積を備える。本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかでは、キャニスターシステムは、5vol%~50vol%のn-ブタンの蒸気濃度で、25℃で、1リットルあたり約35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90を超える、またはより多いグラム(g/L)~約90g/Lのn-ブタンの、有効増分吸着容量を有する、少なくとも一つの燃料側吸着容積を備える。
【0127】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、キャニスターシステムは、5vol%~50vol%のn-ブタンの蒸気濃度で、25℃で、1リットルあたり、約35グラム(g/L)未満のn-ブタンの、または5vol%~50vol%のn-ブタンの蒸気濃度で、1リットルあたり約34、約33、約32、約31、約30、約19、約18、約17、約16、約15、約14、約13、約12、約11、約10、約9、約8、約7、約6、約5、約4、約3、約2、もしくは約1グラムのn-ブタン(g/L)の、有効増分吸着容量を有する、本明細書に記載の少なくとも一つのベント側吸着材料を備える。
【0128】
いくつかの実施形態では、蒸発エミッション制御システムは、燃料を貯蔵するための燃料タンクと、空気導入システムを有し、燃料を消費するように構成されるエンジンと、一つまたは複数のキャニスターを備える蒸発エミッション制御キャニスターシステムと、燃料タンクからキャニスターシステムへの燃料蒸気入口導管と、キャニスターシステムからをエンジンの空気導入システムへの燃料蒸気パージ導管と、エンジンがオフの場合、キャニスターシステムをベントし、エンジンがオンの場合、キャニスターシステムにパージ空気を吸気するためのベント導管と、を備える。蒸発エミッション制御キャニスターシステムは、燃料蒸気入口導管から、少なくとも一つの後続の吸着容積およびベント導管に向かう最初の吸着容積への燃料蒸気流路によって、および、ベント導管から、最初の吸着容積および燃料蒸気パージ導管に向かう少なくとも一つの後続の吸着容積への空気流路によって、画成される。いくつかの実施形態では、最初の吸着容積および少なくとも一つの後続の吸着容積は単一のキャニスター内に配置されるか、または最初の吸着容積および少なくとも一つの後続の吸着容積は、燃料蒸気が連続的に接触できるように連結された別個のキャニスターに配置される。いくつかの実施形態では、蒸発エミッション制御キャニスターシステムは、40g/時のブタン充填工程後に適用される十分なパージ空気量で、20mg以下の2日間のダイアーナルブリージングロス(DBL)エミッションを有する。
【0129】
本開示の蒸発エミッション制御システムは、低いパージ条件下でも低いダイアーナルブリージングロス(DBL)エミッションを提供する。本開示の蒸発エミッション制御システムの蒸発エミッション性能は、California Bleed Emissions Test Procedure(BETP)で定義される規制限界以内であることができ、それは低いパージ条件下でも20以下である。
【0130】
本明細書で使用する用語「低パージ」は、40g/時のブタン充填工程(すなわち、2.1リットルの吸着体構成要素システムに対して100ベッド体積)の後に適用される210リットル以下のパージレベルを指す。
【0131】
蒸発エミッション制御システムは、40g/時のブタン充填工程後に適用される210リットル以下でパージされた場合でも、低いダイアーナルブリージングロス(DBL)エミッションを提供することができる。いくつかの実施形態では、蒸発エミッション制御システムは、40g/時のブタン充填工程後に適用される157.5リットル以下でパージされてもよい。
【0132】
別の態様では、本明細書に記載の吸着体組成物または押出し成形吸着体組成物は、流体分離システムに組み込まれる。任意の態様または実施形態では、流体分離システムは、成形吸着体、例えば、顆粒、ペレット、モノリス、またはハニカムを利用する任意の気相もしくは液相分離または精製用途を含む。例えば、非限定的な例として、本明細書に記載の吸着体組成物または押出し成形吸着体組成物は、空気、または他のガス、例えば炭化水素(例えば、メタン、天然ガス、プロパン、ブタン、エチレン、溶媒)、および非炭化水素(例えば、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、希ガス)、ならびに水、非水処理液体および未処理液体を精製するためのシステムに組み込まれる。
【実施例
【0133】
特に明記しない限り、各成分の量は、組成物の総重量に基づく重量パーセント(wt%)である。
【0134】
【表1】
【0135】
表1の配合物E1~E10は、プラウミキサーで乾燥成分を混合し、続いて液体成分および押出し成形可能なペーストを作るのに十分な水を加えることによって調製された。全ての材料が揃ったら、プラウミキサーでさらに混合して、全ての材料を確実に分散させる。次に、得られた湿った混合物を、シグマブレードミキサー内もしくは一軸押出機内で、またはニーダーで、多穴ダイプレートを通して押出しながら集中的に混合して、ペーストを形成した。次に、ペーストを、ハニカムダイを備える一軸押出機を通して押出した。押出されたパーツは、不活性雰囲気中で高温まで乾燥および仮焼するために粗く切断され、続いて試験のために正確な長さに切断された。C1およびC2はそれぞれ、市販のハニカムNuchar(登録商標)HCA-LBEおよびNuchar HCA(登録商標)(Ingevity(登録商標)、North Charleston,SC,USA)の配合物である。これらの配合物はいずれもガラスマイクロスフェアを含有しない。
【0136】
見かけ密度、BWC、および粉末ブタン活性の測定
【0137】
標準方法ASTM D 2854(以下「標準法」)を用いて、微粒子吸着体、例えば燃料システムの蒸発エミッション制御に通常使用されるサイズと形状の粒状およびペレット状吸着体の呼び容積の見掛け密度を測定することができる。
【0138】
標準方法ASTM D5228を用いて、微粒子粒状および/またはペレット状の吸着体を含有する吸着容積の呼び容積ブタン作業容量(BWC)を測定することができる。ブタン保持力は、容積ブタン活性(つまり、g/ccの見掛け密度にg/100gのブタン活性を掛けたもの)とg/dL BWCとの差として、g/dLを単位にして計算される。
【0139】
押出し成形用の粉末化活性炭成分については、粉末ブタン活性(「pBACT」)は、その値、すなわち、25℃で温度自動調整された試料について、1.00atmのn-ブタン分圧にさらされた場合のオーブン乾燥粉末試料の平衡グラム重量容量を確認するために同等であると認識されている当業者に公知の任意の方法によって測定されることができる。例えば、pBACTの好適な代替案の一つは、米国特許出願公開第2019/0226426A1号に記載されているASTM5228法に基づくもので、参照により本明細書に組み込まれる。
【0140】
ASTM D5228方法の修正版を用いて、微粒子、ハニカム、モノリス、および/またはシート吸着容積の呼び容積ブタン作動容量(BWC)を測定することができる。修正版は、微粒子吸着体にも用いることができ、微粒子吸着体には、充填剤、空隙、構造要素、または添加物が含まれる。さらに、ASTM D5228方法の修正版は、微粒子吸着体が標準方法ASTM D5228と適合性がない、例えば試験の試料管中に16.7mLの代表的な吸着体試料を満たすのが容易でない場合に用いられる。
【0141】
ハニカムの呼びBWCを決定するために、ASTM D5228方法の修正バージョンを以下のように使用した。吸着体試料を、110±5℃で最低8時間オーブン乾燥し、次いで乾燥器に配置して冷却する。吸着体試料の乾燥質量を記録する。空の試験アセンブリの質量を測定してから、吸着体試料を試験アセンブリへ組み立てる。次に、試験アセンブリを流通装置内に設置して、25℃、1気圧において500mL/分のブタン流量で最低25分(±0.2分)間、n-ブタンガスを充填する。次に、試験アセンブリをBWC試験装置から取り出す。試験アセンブリの質量を測定し、0.001グラム単位で記録する。このn-ブタン充填工程を、一定質量が達成されるまで、5分間連続して流す期間を繰り返す。例えば、直径35mm×長さ150mmのハニカムの総ブタン充填時間は87~92分であった。呼び容積が完全なまま取り出されて試験され得る場合には、試験アセンブリはハニカム部品またはモノリス部品のための容器であってよい。あるいは、呼び容積は、キャニスターシステムの一部分であるか、または内容物がガス流れに対して好適に向けられた状態で、あるいはキャニスターシステム内で遭遇するように呼び容積が好適に再構成される必要があってもよい。
【0142】
試験アセンブリを試験装置に再実装し、25℃、1気圧において2.00リットル/分の空気で、式:パージ時間(分)=(719×呼び容積(mL))/(2000(mL/分))に従って選択された設定パージ時間(±0.2分)パージする。
【0143】
BWC試験における空気パージ流の方向は、キャニスターシステムで適用されるパージ流と同じ方向である。パージ工程の後、試験アセンブリをBWC試験装置から取り出す。試験終了後15分以内に試験アセンブリの質量を測定し、0.001グラム単位で記録する。
【0144】
次式を用いて、吸着体試料の呼び容積のブタンブタン作業容量(BWC)を求める。
【0145】
呼び容積BWC(g/dL)=パージされたブタンの量(g)/呼び吸着容積(dL)、ここで、パージされたブタンの量=充填後の試験アセンブリの質量-パージ後の試験アセンブリの質量である。
【0146】
本明細書で使用する用語「g-総BWC」は、パージされたブタンのg-量を指す。
【0147】
呼び吸着容積(mL)は、V=(πD L/4)/1000で計算され、ここで、Do=平均吸着体直径(mm)およびL=平均吸着体長さ(mm)である。
【0148】
呼び見掛け密度(g/mL)は、呼び容積(mL)/吸着体の質量(g)として計算される。
【0149】
ブタン活性(g/100g)は、BACT(g/100g)=ブタンの装填量(g)/(100×吸着体の質量(g))として計算される。
【0150】
ブタンパージ比(%)=BPR(%)は、ブタンのパージ量(g)/ブタンの装填量(g)×100として計算される。
【0151】
BETP試験による、ダイアーナルブリージングロス(DBL)エミッションの測定
【0152】
【表2】
【0153】
【表3】
【0154】
実施例の蒸発エミッション制御システムは、以下を含む手順によって試験された。タイプ#1キャニスターシステムを使用した試験の場合、DBLエミッションデータの生成に使用された定義された2.1Lキャニスターは、図5に例示されたタイプであった。二つのペレットのベッド体積501および202は、メインキャニスター101内に配置され、それぞれ1.40Lおよび0.70LのNuchar(登録商標)BAX 1100 LDペレット(Ingevity(登録商標)、N.Charleston,SC,米国)を収容する。図5に例示するように、直列に二つの補助キャニスターがあった。第一の補助キャニスター300は、吸着容積502としてPPAVハニカムを収容し、直列の第二の補助キャニスター503は、吸着容積504としてPPAVハニカムを収容し、二つのPPAVハニカムの各端部にO-リングシール(図示せず)および非吸着体開放気泡発泡体ディスク102を備える。
【0155】
タイプ#2キャニスターシステムを使用した試験の場合、DBLエミッションデータの生成に使用された定義された2.1Lキャニスターは、図6に例示されたタイプであった。3つのペレットのベッド体積501、203、および204は、メインキャニスター101内に配置され、それぞれ1.40L、0.40L、および0.30Lのペレットを収容する。先と同様に、二つの補助キャニスターは直列であった。第一の補助キャニスター300は、吸着容積502としてPPAVハニカムを収容し、直列の第二の補助キャニスター503は、吸着容積504としてPPAVハニカムを収容し、二つのPPAVハニカムの各端部にO-リングシール(図示せず)および非吸着体開放気泡発泡体ディスク102を備える。タイプ#2のシステムでは、プレナム107の上方に位置する支持スクリーン102の上方に約19.5cmの高さを有する吸着容積501として1.40LのNuchar(登録商標)BAX1500(Ingevity(登録商標)、North Charleston,South Carolina,米国)、加えて、プレナム107の上方に位置する支持スクリーン102の上方に約11.1cmの高さを有するBAX1500の0.40Lの吸着容積203、加えて、吸着容積203と204の間の支持スクリーン102の上方に約8.4cmの高さを有するNuchar(登録商標)BAX LBE(Ingevity(登録商標)、N.Charleston,SC,米国)の0.30L吸着容積204があった。吸着容積501は、隔壁103からキャニスターの右側壁までの平均幅が9.0cmであり、吸着容積203および204は、隔壁103からその左側側壁までの平均幅が約4.5cmである。吸着容積501、203、および204は、8.0cmの同様の(図6のページの中への)奥行きであった。ペレットの各吸着体ベッドは、それぞれの体積目標を満たすであろう見掛け密度によって決定される乾燥質量で充填された(質量充填=AD×体積目標)。
【0156】
各実施例のキャニスターシステムは、認定されたTier 3燃料(8.7~9.0 RVP、10 vol%エタノール)およびメインキャニスターに基づく22.7 LPMでの300呼びベッド体積の乾燥空気パージ(例えば、2.1 Lメインキャニスターの場合は630リットル)を用いる、ガソリン蒸気吸着の反復サイクリングにより、均一にあらかじめ調整(エージング)された。(米国再発行特許第RE38,844号の作業は、認定TF-1燃料を用いて行われた。)ガソリン蒸気の充填速度は40g/時であり、炭化水素組成物は50vol%であり、2リットルのガソリンを約38℃まで加熱し、200ml/分で空気を通してバブリングすることによって生成されたものである。燃料の2リットルの一定分量は、FID(水素炎イオン化検出器)または赤外線検出器によってブタンが検出される5000ppmの破過まで、1時間55分ごとに新しいガソリンに自動的に交換された。バージンキャニスタでは、最低25のエージングサイクルが用いられた。ガソリン作業容量(GWC)は、最後の2~3サイクルのパージされた蒸気の充填された蒸気の平均重量増加および損失として測定され、キャニスターシステムの吸着容積1リットルあたりのグラム数として報告される。ブリードエミッション性能の測定をさらに進める、GWCエージングサイクル後に、単一のブタン吸着/空気パージ工程が続いた。この工程では、ブタンを40g/時で、1気圧の空気中に50vol%の濃度で5000ppmの破過まで充填し、1時間保持し、その後、乾燥空気で21分間、その期間に好適な一定の空気パージ速度を選択することにより得られる総パージ体積を用いて、パージした。次に、キャニスターシステムを、ポートを密閉した状態で、約25℃で約14~18時間浸漬した(浸漬時間の要件は12~36時間である)。上記の単一ブタン吸着充填後の総パージ体積は210Lであり、例えば、存在する全ての吸着容積、例えば定義されたキャニスター2.1Lの吸着容積の充填、加えて、後続の補助キャニスター300に配置されるベント側活性炭ハニカム吸着体502、または後続の直列補助キャニスター300および503に配置される二つの活性炭ハニカム吸着体502および504、を含む完全なキャニスターシステムについては、約92~94BVに相当する。これらの構成では、画成されたメインキャニスター内の吸着体ペレット容積に加えられる容積は、補助キャニスター300内に存在する活性炭ハニカムのキャリパー実測寸法容積、加えて、存在する場合、直列補助キャニスター503内の第二の活性炭ハニカムのキャリパー実測寸法容積であった。
【0157】
その後、DBLエミッションは、実施例のタンクポートをCARB LEV III燃料(6.9-7.2 RVP、10%エタノール)で満たされた燃料タンクに取り付けることによって発生された。(米国再発行特許第RE38,844号の作業は、CARB Phase II燃料を用いて行われた。)メインキャニスターにBAX1500カーボンとして存在するペレットの大部分を備えるキャニスターシステムの例は、6.2ガロンの液体燃料(13.8ガロンのアレージ)で満たされた20ガロン(総容量)のタンクに連結された。メインキャニスターにBAX 1100 LDを備えるキャニスターシステムの例は、4.0ガロンの液体燃料(11ガロンのアレージ)で満たされた15ガロン(総容量)のタンクに連結された。
【0158】
取り付ける前に、充填された燃料タンクは、ベント中に18.3℃で18~20時間安定していた(ここで、ベント中の浸漬時間の要件は12~36時間である)。タンクおよびキャニスターシステムは、CARBの2日間の温度プロファイルによる温度サイクルにかけられ、毎日、11時間かけて温度を18.3℃から40.6℃まで上昇させ、次に13時間かけて18.3℃まで戻された。エミッション試料は、加熱段階中の6時間と12時間に実施例のベントからカイナー(Kynar)バッグ中に収集された(タンク内の燃料がピーク温度に達するようにするため)。カイナーバッグを、圧力に基づいて既知の総容量まで窒素で充填し、そしてFID中に排気して炭化水素濃度を求めた。FIDは、約5000ppmの濃度の正確に既知のブタン標準で較正された。カイナーバッグの容積、エミッション濃度、および理想的なガスを仮定して、エミッションを(ブタンとして)計算した。毎日、6時間と12時間の排出量が加えられた。CARBの手順に従って、総エミッションが最大の日は「2日間のエミッション」として報告された。全ての場合、最大のエミッションは2日目に得られた。この手順は、概ねR.S.WilliamsおよびC.R.Clontzによる、「Impact and Control of Canister Bleed Emissions」と題するSAE Technical Paper 2001-01-0733に、ならびにCARB’s LEV III BETP手順(California Evaporative Emissions Standards and Test Procedures for 2001 and Subsequent Model Motor Vehicles,March 22,2012のD.12節)に記載されている。
【0159】
実施例および比較例1~2は、BAX 1100 LD(呼びBWC>11g/dLおよび呼びIAC>35g/L)で充填された2.1Lメインキャニスターおよび15ガロンの総容量燃料タンクを使用した。実施例および比較例3~4は、1.8L BAX 1500(呼びBWC>14.8g/dLおよび呼びIAC>35g/L)および0.3L BAX LBE(呼びBWC 5~7.5g/dLおよび呼びIAC<35g/L)が充填された2.1Lのメインキャニスターおよび20ガロンの総容量燃料タンクを使用した。
【0160】
各実施例では、メインキャニスターの後に、最初に呼びBWC≧3g/dLおよび呼びIAC<35g/L(Nuchar(登録商標)HCA、Ingevity(登録商標)、N.Charleston、SC、米国)を有する市販のハニカムを備え、その後、より低い容量のハニカム(呼びBWC<3g/dLおよび呼びIAC<35g/L)を備えた。比較例の場合、より低い容量のハニカムはNuchar(登録商標)HCA-LBE(Ingevity(登録商標)、N.Charleston、SC、米国)であり、一方、実施例では、より低い容量のハニカムは本明細書に記載されるとおりであった。用語29×100-200および35×150-200は、直径(mm)×長さ(mm)-押出成形セル密度(平方インチ当たりのセル)としての呼びハニカム寸法を表す。
【0161】
表2および3の結果は、実施例ならびに比較例1および2が、実施例ならびに比較例3および4と同様の最大の日のエミッションをもたらしたことを示した。これは図7にも示されている。図8および図9に示すように、押出機のダイの寿命が大幅に同時に増加するとすれば、実施例と比較例との間のエミッションの結果の類似性は驚くべきものであり、予想外である。
【0162】
図8は、PPAV吸着体を押出し成形するために使用されるダイの寿命を、例示的な配合物と比較の配合物の両方におけるバインダーの量の関数として示す。比較配合物のバインダー含有量が減少するにつれて寿命は幾分増加するが、ガラスマイクロスフェアを使用するため、例示的な配合物の寿命は驚くほど非常に長い。同じことが、図9の炭素含有量の関数としても見ることができる。押出機のダイの寿命は、バインダー含有量の減少により、炭素含有量とともにいくらか増加する。しかし、例示的な配合物の場合、ガラスマイクロスフェアの使用により、ダイの寿命が大幅に延びる。図8および図9の両方で、使用された例示的な配合物はE1であった。
【0163】
表面積の測定
【0164】
表面積は、Micromeritics ASAP 2420(Norcross、GA)のISO 9277:2010に従ってBrunauer-Emmet-Teller(BET)法を使用して窒素物理吸着によって測定された。試料の前処理手順は、250℃で少なくとも2時間脱気し、通常は試料を分離して2μmHg未満の安定した真空にすることであった。窒素吸着等温線を、0.1g試料に対して77Kで記録し、以下の圧力、0.04、0.05、0.085、0.125、0.15、0.18、0.2、0.355、0.5、0.63、0.77、0.9、0.95、0.995、0.95、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.45、0.4、0.35、0.3、0.25、0.2、0.15、0.12、0.1、0.07、0.05、0.03、0.01を対象とした。実際の点は、それぞれ5mmHgまたは5%のいずれか厳しい方の絶対または相対圧力許容値範囲内で記録された。平衡化中の連続する圧力測定値間の時間は10秒であった。非理想係数は0.0000620であった。密度変換係数は0.0015468であった。熱蒸散剛体球の直径は3.860Åであった。分子断面積は0.162nmであった。窒素吸着等温線の相対圧力0.05~0.20の範囲のデータを使用して、BETモデルを適用した。
【0165】
細孔容積の測定
【0166】
0.05マイクロメートル~100マイクロメートルの範囲の細孔容積は、水銀圧入ポロシメトリー法ISO 15901-1:2016によって測定された。実施例に使用した装置は、Micromeritics Autopore V(Norcross,GA)であった。用いた試料のサイズは約0.4 gで、105℃のオーブンで少なくとも1時間前処理された。Washburnの式に用いられる水銀の表面張力と接触角は、それぞれ485dynes/cm、130°であった。
【0167】
増分吸着容量の測定
マイクロメリティックス法 当技術分野で公知のように、吸着容量は、体積法、重量法、および動的(流れ)法を含む、多数の手段によって等価に測定されてもよい。
【0168】
「マイクロメリティックス法」は、吸着気相圧の変化に曝される場合の公知の体積および温度の吸着体試料含有システムの気相質量バランスに基づく体積法である。本明細書の実施例では、Micromeritics model ASAP 2020A拡張ユニット(Micromeritics Instrument Corporation、Norcross、GA 米国)を使用した。この方法によって、初期状態として、吸着ガスは既知の温度、圧力、および容積の一つの容器に入れられ、吸着ガスは既知の容積および温度、ならびに既知の異なる圧力の第二の吸着体収容容器に入れられる。次に、連結バルブを開くことにより、二つの容器が流体接触する 最終状態に平衡化した(すなわち、安定した連結システム圧力によって証明されるように、吸着体試料による熱平衡化および平衡化された吸着物の取り込みに十分な時間)後、初期状態と最終状態の間の気相吸着物のマスバランスの差は、吸着体試料によって吸着された吸着物の質量変化である。ここで報告されているすべての実施例で、吸着物はn-ブタンであることに留意されたい。
【0169】
IACを決定するための最初の工程は、試料調製である。代表的な吸着体試料を、110℃で3時間超オーブン乾燥する。見かけ密度値の測定に、その質量の分子に不活性バインダー、充填剤、および構造要素の質量が同等に含まれる場合、吸着体試料は、吸着体要素の呼び容積に代表量の不活性バインダー、充填剤、および構造成分を含むものとする。逆に、見かけ密度の値が分子内に不活性バインダー、充填剤、構造要素の質量を同等に除外する場合、吸着体試料はこれらの不活性バインダー、充填剤、構造要素を除外する。普遍的な概念は、呼び容積内にブタンに対する吸着特性を容量ベースで正確に定義することである。
【0170】
ゴム栓を備えた石英試料管を計量し、重量を記録する(WO)。約0.1gの吸着体試料を、風袋を量った試料管内に装填し、ゴム栓を戻した。ゴム栓を外し、充填した試料管を脱気ポートの下に配置し、温度を10℃/分の速度で250℃まで上昇させる。 試料は250℃で約2時間脱気される。試料を冷却し、チューブを窒素で充填する。ゴム栓を戻し、脱気したチューブの重さを計量する(W)。乾燥試料重量は、W-WOで計算される。手順の第二の工程は、試料分析である。水浴は25±0.1℃に設定される。 機器の試料圧力は、10μmHg未満(通常は1μmHg未満)に排気される。機器のプラグおよび試料のゴム製ストッパーを取り外し、脱気したチューブを試料分析ポート内にセットした。試験を開始する。機器は、次の絶対圧力、10、20、30、40、45、150、300、350、400、450、600、800、600、500、450、400、350、300、150、50、45、40、35、30、25(mmHg)付近の平衡ブタン等温線データポイントを収集する。ここで報告されている1atm(3.8 mmHg)で0.5 vol%の質量吸着等温線データポイントは、10、20、30、および40 mmHg等温線データポイントの近似から導出されたべき乗則回帰(質量吸着=圧力)から計算された。
【0171】
IACは、25℃における5~50%のn-ブタンの増分吸着容量として定義されている。一つの雰囲気での5vol%のn-ブタン濃度(体積)は、38mmHgの試料管内の平衡圧力によって与えられる。一気圧における50vol%のn-ブタン濃度は、試料管の内部の380mmHgの平衡圧によって与えられる。正確に38mmHgと380mmHgでの平衡化は容易に得られない可能性があるため、5vol%のn-ブタン濃度および50vol%のn-ブタン濃度における吸着体試料の質量あたりの吸着n-ブタンの質量は、目標の38および380mmHgの圧力の近傍で収集されたデータポイントを使用してグラフから内挿される。本明細書で提供される実施例では、これは典型的には、等温線の脱着分岐上の約300~約450mmHgの圧力と約30~45mmHgの圧力との線形回帰を使用して行われた。n-ブタンの理想気体の法則と吸着体の見掛け密度を使用して、IACは、50vol%のn-ブタンにおける容量(g/g)から5vol%のn-ブタンにおける容量を引いたものにg/Lの見掛け密度を掛けて計算されることができる。
【0172】
McBain法は重量法である。吸着体試料を110℃で3時間超オーブン乾燥し、その後、試料管内のばねに取り付けられた試料パン上に装填する。次に、試料管を記載の装置に取り付ける。見かけ密度値の測定に、その質量の分子に不活性バインダー、充填剤、および構造要素の質量が同等に含まれる場合、吸着体試料は、吸着体要素の呼び容積に代表量の不活性バインダー、充填剤、および構造成分を含むものとする。逆に、見かけ密度の値が分子内に不活性バインダー、充填剤、構造要素の質量を同等に除外する場合、吸着体試料はこれらの不活性バインダー、充填剤、構造要素を除外する。普遍的な概念は、呼び容積内にブタンに対する吸着特性を容量ベースで正確に定義することである。
【0173】
試料管に1torr未満の真空を適用し、吸着体試料を105℃で1時間加熱する。次いで、カセトメーターを用いてばねの伸張量によって吸着体試料の質量を測定する。その後、試料管を25℃に温度制御された水浴に浸漬する。試料管内の圧力が10-4torrになるまで、試料管から空気を排気した。選択された圧力で平衡に達するまで、n-ブタンを試料管内に導入する。それぞれ約38torrおよび約380torrで取得された、四つの選択された平衡圧の二つのデータセットに対して試験を行なう。n-ブタンの濃度は、試料管内の平衡圧力に基づくものである。選択された平衡圧力での各試験の後、カセトメーターを用いたばねの伸張量に基づいて吸着体試料の質量を測定する。吸着体試料の増加した質量は、吸着体試料に吸着されたn-ブタンの量である。各試験について、様々なn-ブタン平衡圧で、吸着体試料の質量(グラム)当りの吸着されたn-ブタンの質量(グラム)を測定し、n-ブタンの濃度(容積%)の関数としてグラフにプロットする。一気圧における5vol%のn-ブタン濃度(容積濃度)は、試料管の内部の38torrの平衡圧によって与えられる。一気圧における50vol%のn-ブタン濃度は、試料管の内部の380torrの平衡圧によって与えられる。正確に38torrと380torrでの平衡化は容易に得られない可能性があるため、5vol%のn-ブタン濃度および50vol%のn-ブタン濃度における吸着体試料の質量あたりの吸着n-ブタンの質量は、目標の38および380torrの圧力の近傍で収集されたデータポイントを使用してグラフから内挿される。次に、IACは、ここに記載されるように計算される。
【0174】
有効容積特性の決定
【0175】
上記の方法は、吸着体の呼びBWC、ブタン活性、IAC、および密度特性を定義するために適用可能である。これに対して、吸着体の有効容積は、吸着体がない蒸気流路に沿った吸着体の呼び容積の間に挟まれたエアギャップ、空隙および他の容積を考慮に入れる。例えば、吸着体のないそれらの容積には、図4の吸着容積301と302の間の容積、ポート108とキャニスター101および300の間の連結導管とを含む図4の吸着体積204と301の間の容積、およびプレナム容積107を含む図4の吸着容積202と203の間の容積が含まれるが、これらに限定されない。したがって、吸着体の有効容積特性とは、蒸気流路に沿って吸着体がない吸着体の呼び容積間のエアギャップ、空隙、およびその他の容積を考慮した、吸着容積の容積平均特性を指す。これらの特性は、米国特許第9,732,649号に記載されるように決定され、参照によりここに組み込まれる。
【0176】
蒸気流路の所定の長さに対する有効容積(Veff)は、その蒸気経路長さに沿って存在する吸着体の呼び容積(Vnom,i)と、その蒸気流路に沿った吸着体を含まない容積(Vgap,j)との総和である。
【0177】
【数1】
【0178】
有効容積の容積吸着特性(Beff)、例えば増分吸着容量(g/L)、見掛け密度(g/mL)、およびBWC(g/dL)は、有効容積の一部と見なされる個々の呼び容積の各特性(Bnom,i)に各個々の呼び容積(Vnom,i)を掛けたものの総和を、次に総有効容積(Veff)で割ったものである。
【0179】
【数2】
【0180】
したがって、用語「有効増分吸着容量」は、各呼び増分吸着容量に各個々の呼び容積を掛けたものの総和を、次に総有効容積で割ったものである。
【0181】
用語「有効ブタン作業容量(BWC)」は、各BWC値に各個々の呼び容積を掛けたものの総和を、次に総有効体積で割ったものである。
【0182】
用語「有効見掛け密度」は、各見掛け密度の総計に各個々の呼び体積を掛け、次に総有効体積で割ったものである。
【0183】
用語「有効容積のg-総BWC」は、有効容積内の呼び容積のg-総BWCグラム値の総和である。
【0184】
当業者は、ほんのわずかな通例の実験により、本明細書に記載の発明の特定の実施形態についての多くの均等物を認識するであろうし、又は確かめることができるであろう。かかる均等物は、以下の請求項に包含されることが意図される。本明細書に記載される詳細な実施例および実施形態は、解説目的のための例示としてのみ提供され、決して本発明を限定するものとはみなされないことを理解されたい。その観点での様々な改変または変更は、当分野の当業者に提案されるものであり、本出願の主旨および範囲内に含まれ、添付の請求項の範囲内で考慮される。例えば、成分の相対量は、望ましい効果を最適化するために変更されてもよく、追加的な成分が加えられてもよく、および/または類似した成分が、記載される成分のうちの一つ以上と置き換えられてもよい。本発明のシステム、方法及びプロセスに関連するさらなる有利な特徴及び機能性が、添付の請求項から明らかになることとなる。さらに、本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかを集合的にまたは代替として組み合わせることができ、このようなすべての組み合わせは明示的に企図され、中間の一般論を表すものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9