IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハンファ ソリューションズ コーポレーションの特許一覧

<>
  • 特許-トレイ型蒸留装置 図1
  • 特許-トレイ型蒸留装置 図2
  • 特許-トレイ型蒸留装置 図3
  • 特許-トレイ型蒸留装置 図4
  • 特許-トレイ型蒸留装置 図5
  • 特許-トレイ型蒸留装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】トレイ型蒸留装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 3/18 20060101AFI20240902BHJP
   B01D 3/14 20060101ALI20240902BHJP
   B01D 3/32 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B01D3/18 C
B01D3/14 A
B01D3/32 A
B01D3/32 D
B01D3/32 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022540682
(86)(22)【出願日】2020-11-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 KR2020016577
(87)【国際公開番号】W WO2021137435
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2019-0177408
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】リム ドンウク
(72)【発明者】
【氏名】イ シンボム
(72)【発明者】
【氏名】ソン ジュンヒェ
(72)【発明者】
【氏名】アン ウヨル
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヒョジン
(72)【発明者】
【氏名】ハン キド
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録実用新案第20-0372878(KR,Y1)
【文献】特開2014-097966(JP,A)
【文献】特表2001-513701(JP,A)
【文献】特開2002-085902(JP,A)
【文献】特開2003-103106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01B 1/00-1/08
B01D 1/00-8/00
B01J 10/00-12/02
B01J 14/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部で蒸留対象物質と気体が反応するボディ部と、
前記ボディ部の上部に備えられ、前記蒸留対象物質が投入される蒸留対象物質供給部と、
前記ボディ部の下部に備えられ、前記気体が投入される気体流入部と、
前記ボディ部の上部に備えられ、前記蒸留対象物質と前記気体が反応して分離された揮発性物質を排出する排出部と、
前記ボディ部の下部に備えられ、前記蒸留対象物質から前記揮発性物質が除去された結果物質を回収する回収部と、
前記ボディ部の内部に複数備えられ、それぞれに複数のホールが備えられるトレイと、
前記トレイそれぞれの一側に備えられ、前記ボディ部の上部から下部に前記蒸留対象物質が移動する通路を形成するダウンカマー(downcomer)と、
を含み、
前記蒸留対象物質供給部は、前記ボディ部の周縁に沿って120°間隔で3個設けられ、前記ボディ部に導入された前記蒸留対象物質が各前記蒸留対象物質供給部から最上段のトレイに分散されて供給され、
前記3個の蒸留対象物質供給部は、前記ボディ部の外周面を垂直に貫通した後、下方に位置する前記最上段のトレイの方向へ曲がり、供給口が前記最上段のトレイに面するように配置され、
前記3個の蒸留対象物質供給部は、前記蒸留対象物質供給部の前記供給口の中心から前記最上段のトレイの前記ダウンカマーまでの水平距離が近いほど、小さい流量で前記蒸留対象物質を供給することを特徴とする蒸留装置。
【請求項2】
前記トレイに複数備えられ、ジグザグ状に配置され、前記トレイの上部から降りてきた前記蒸留対象物質が前記トレイ上で前記ダウンカマーまで移動する経路を形成するバッフル(baffle)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の蒸留装置。
【請求項3】
前記蒸留対象物質は、懸濁重合(suspension polymerization)またはエマルジョン重合(emulsion polymerization)により製造される高分子であることを特徴とする、請求項1に記載の蒸留装置。
【請求項4】
内部で蒸留対象物質と気体が反応するボディ部と、前記ボディ部の上部に備えられ、前記蒸留対象物質が投入される蒸留対象物質供給部と、前記ボディ部の下部に備えられ、前記気体が投入される気体流入部と、前記ボディ部の上部に備えられ、前記蒸留対象物質と前記気体が反応して分離された揮発性物質を排出する排出部と、前記ボディ部の下部に備えられ、前記蒸留対象物質から前記揮発性物質が除去された結果物質を回収する回収部と、前記ボディ部の内部に複数備えられ、それぞれに複数のホールが備えられるトレイと、前記トレイそれぞれの一側に備えられ、前記ボディ部の上部から下部に前記蒸留対象物質が移動する通路を形成するダウンカマー(downcomer)と、を含み、前記蒸留対象物質供給部は、複数備えられ
前記蒸留対象物質供給部は、前記ボディ部の周縁に沿って120°間隔で3個設けられ、前記ボディ部に導入された前記蒸留対象物質が各前記蒸留対象物質供給部から最上段のトレイに分散されて供給され、
前記3個の蒸留対象物質供給部は、前記ボディ部の外周面を垂直に貫通した後、下方に位置する前記最上段のトレイの方向へ曲がり、供給口が前記最上段のトレイに面するように配置されることを特徴とする蒸留装置を用いた蒸留方法であって、
前記蒸留対象物質を前記3個の蒸留対象物質供給部に分散投入するステップと、
前記気体流入部に気体を提供し、前記蒸留対象物質と前記気体を反応させ、前記蒸留対象物質に含まれた前記揮発性物質を除去するステップと、
を含み、
前記3個の蒸留対象物質供給部は、前記蒸留対象物質供給部の前記供給口の中心から前記最上段のトレイの前記ダウンカマーまでの水平距離が近いほど、小さい流量で前記蒸留対象物質を供給することを特徴とする蒸留方法。
【請求項5】
前記蒸留対象物質は、懸濁重合(suspension polymerization)またはエマルジョン重合(emulsion polymerization)により製造される高分子であることを特徴とする、請求項に記載の蒸留方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸留装置に関し、より詳しくは、蒸留対象物質から目的の揮発成分を分離することで高純度の製品を回収する蒸留装置に関し、トレイ(tray)を備えたカラム状の蒸留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トレイ型蒸留装置は、PVC(poly vinyl chloride)重合工程で残留モノマー(VCM)ストリップに用いられる装置である。
【0003】
この際、気-液接触によりフォームまたはバブルが形成され得、これは、重合過程で含まれた分散剤、乳化剤、懸濁剤などと呼ばれる界面活性剤系成分により強化され得る。このようなフォームまたはバブルは、PVCスラリーが圧力の高い配管から真空運転される蒸留装置に注入されて速く減圧されることにより最も多く発生することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このようなフォームまたはバブルの発生を緩和させるための蒸留装置および蒸留方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような目的を達成するために、本発明に係る蒸留装置は、内部で蒸留対象物質と気体が反応するボディ部と、前記ボディ部の上部に備えられ、前記蒸留対象物質が投入される蒸留対象物質供給部と、前記ボディ部の下部に備えられ、前記気体が投入される気体流入部と、前記ボディ部の上部に備えられ、前記蒸留対象物質と前記気体が反応して分離された揮発性物質を排出する排出部と、前記ボディ部の下部に備えられ、前記蒸留対象物質から前記揮発性物質が除去された結果物質を回収する回収部と、前記ボディ部の内部に複数備えられ、それぞれに複数のホールが備えられるトレイと、前記トレイそれぞれの一側に備えられ、前記ボディ部の上部から下部に前記蒸留対象物質が移動する通路を形成するダウンカマー(downcomer)と、を含み、前記蒸留対象物質供給部は、前記蒸留対象物質を分散投入できるように複数備えられることを特徴とする。
【0006】
ここで、前記蒸留対象物質供給部は、3個備えられることができる。
また、前記蒸留対象物質供給部は、前記ボディ部の周縁に沿って120°間隔で配置されることができる。
【0007】
また、本発明の一実施形態に係る蒸留装置において、前記トレイに複数備えられ、ジグザグ状に配置され、前記トレイの上部から降りてきた前記蒸留対象物質が前記トレイ上で前記ダウンカマーまで移動する経路を形成するバッフル(baffle)をさらに含むことができる。
【0008】
一方、前記蒸留対象物質は、懸濁重合(suspension polymerization)またはエマルジョン重合(emulsion polymerization)により製造される高分子であってもよい。
【0009】
本発明の一実施形態に係る蒸留方法は、内部で蒸留対象物質と気体が反応するボディ部と、前記ボディ部の上部に備えられ、前記蒸留対象物質が投入される蒸留対象物質供給部と、前記ボディ部の下部に備えられ、前記気体が投入される気体流入部と、前記ボディ部の上部に備えられ、前記蒸留対象物質と前記気体が反応して分離された揮発性物質を排出する排出部と、前記ボディ部の下部に備えられ、前記蒸留対象物質から前記揮発性物質が除去された結果物質を回収する回収部と、前記ボディ部の内部に複数備えられ、それぞれに複数のホールが備えられるトレイと、前記トレイそれぞれの一側に備えられ、前記ボディ部の上部から下部に前記蒸留対象物質が移動する通路を形成するダウンカマー(downcomer)と、を含み、前記蒸留対象物質供給部は、複数備えられることを特徴とする蒸留装置を用いた蒸留方法であって、前記蒸留対象物質を前記複数の蒸留対象物質供給部に分散投入するステップと、前記気体流入部に気体を提供し、前記蒸留対象物質と前記気体を反応させ、前記蒸留対象物質に含まれた前記揮発性物質を除去するステップと、を含むことができる。
【0010】
ここで、前記蒸留対象物質を前記複数の蒸留対象物質供給部に分散投入するステップは、前記蒸留対象物質供給部それぞれに前記蒸留対象物質を同一の流量で投入することができる。
【0011】
この際、前記蒸留対象物質は、懸濁重合(suspension polymerization)またはエマルジョン重合(emulsion polymerization)により製造される高分子であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る蒸留装置および蒸留方法によると、複数の蒸留対象物質供給部が備えられることで蒸留対象物質を分散投入することができるため、ボディ部の内部と蒸留対象物質供給部との間の圧力差が減り、フォームまたはバブルが発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来のトレイ型蒸留装置を示した図である。
図2】本発明の一実施形態に係るトレイ型蒸留装置の概略図である。
図3】蒸留装置が蒸留対象物質から揮発性物質を分離する動作を示したものである。
図4】本発明の一実施形態に係るトレイ型蒸留装置において、蒸留対象物質供給部および最上段トレイを示した平面図である。
図5図4のB-B’断面図を示したものである。
図6】トレイ型蒸留装置において、気体-液体(スラリー)の流量に応じて正常運転が可能な範囲を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る蒸留装置について詳しく説明する。添付図面は、通常の技術者に本発明の技術的思想が十分に伝達できるようにあくまでも例示的に提供されるものであって、本発明は、以下に提示される図面に限定されず、他の形態にいくらでも具体化できるものである。
【0015】
図1は、従来のトレイ型蒸留装置1を示した図である。
図1を参照すると、従来のトレイ型蒸留装置1は、上部20から流入する蒸留対象物質がトレイ30に流れ、下部40から流入する高温の気体がトレイ30の底に備えられた複数のホールを通してトレイ30の底面と垂直方向に上昇しつつ、蒸留対象物質に含まれた揮発性物質を分離する装置である。
【0016】
以下、図2図5を参照して、本発明の一実施形態に係るトレイ型蒸留装置について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係るトレイ型蒸留装置の概略図である。
【0017】
図2を参照すると、本発明の一実施形態に係るトレイ型蒸留装置1000は、ボディ部100、蒸留対象物質供給部200-1~200-3、気体流入部300、排出部400、回収部500、トレイ600、およびダウンカマー700を含む。
【0018】
ボディ部100は、内部で蒸留対象物質と気体が反応する円筒形チャンバであり、内部に複数のトレイ600およびダウンカマー700を収容し、蒸留対象物質がボディ部100の上部から流入し、気体(ガスまたは蒸気)がボディ部100の下部から流入する。
【0019】
蒸留対象物質供給部200-1~200-3は、蒸留対象物質が投入される配管であり、蒸留対象物質が上部から流入し、重力により下部方向に移動できるように、ボディ部100の上部に備えられる。
【0020】
より具体的には、蒸留対象物質供給部200-1~200-3は、最上段トレイ600aよりも上側に備えられ、投入された蒸留対象物質が最上段トレイ600aに落下するようにする。
【0021】
この際、本発明のトレイ型蒸留装置1000において、蒸留対象物質供給部200-1~200-3は、蒸留対象物質が分散投入できるように複数備えられる。
【0022】
一方、本発明の一実施形態においては、蒸留対象物質としてPVCを例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。蒸留対象物質がPVCである場合、PVCスラリーまたはラテックス状であり、suspension、micro-suspension、emulsion polymerizationなどによるPVC solid particleが10~60wt%含まれている。この際、PVCは、単一モノマー製品であってもよく、コポリマー製品であってもよい。
【0023】
気体流入部300は、気体が投入される構成であり、蒸留対象物質の流入方向とは逆に、下部から上部方向に気体が上昇できるように、ボディ部100の下部に備えられる。
【0024】
さらに、ボディ部100の上部には、残留気体および蒸留対象物質と気体が反応して分離された揮発性物質を蒸留装置1000の外部に排出するための排出部400が備えられ、ボディ部100の下部には、蒸留対象物質から揮発性物質が除去された結果物質である高純度の製品(product)を回収するための回収部500が備えられる。
【0025】
また、ボディ部100内部には、トレイ600がそれぞれ所定の間隔で複数備えられる。それぞれのトレイ600には、複数のホール(hole)が備えられることができる。
【0026】
トレイ600それぞれの一側にはダウンカマー(downcomer)700が備えられ、ボディ部100の上部から下部に蒸留対象物質が移動する通路を形成するが、ダウンカマー700は、トレイ600を水平移動した蒸留対象物質が下部に位置した後にトレイ600に移動する通路であるため、n-1番目トレイの一端にダウンカマーが備えられた場合、n番目トレイの他端にダウンカマーが備えられ、n+1番目トレイの一端にダウンカマーが備えられる方式で配置される。
【0027】
すなわち、ダウンカマー700を通して降りてきた蒸留対象物質は、トレイ600上で水平移動し、反対側に位置したダウンカマー700を通して次のトレイ600に移動することができる。
【0028】
一方、本発明の一実施形態に係るトレイ型蒸留装置1000において、バッフル(baffle)800をさらに含むことができる。
バッフル800は、それぞれのトレイ600に複数備えられ、ジグザグ状に配置され、トレイ600の上部から降りてきた蒸留対象物質がトレイ600上でダウンカマー700まで移動する流路を形成する。
【0029】
バッフル800が備えられると、蒸留対象物質と気体が反応できる移動経路が長くなって気-液反応時間を長く確保できるという効果があり、トレイ600上で蒸留対象物質が一方向に移動できるようにする。
【0030】
図3は、本発明の一実施形態に係るトレイ型蒸留装置1000が蒸留対象物質から揮発性物質を分離する動作を示したものである。
図2および図3をさらに参照してより詳しく説明すると、n-1番目トレイ600aの蒸留対象物質は、ウィアー(weir)60aからあふれ、n-1番目トレイ600aとn番目トレイ600bにわたって垂直に設けられたダウンカマー(downcomer)70aに流入した後、n番目トレイ600bを水平に流れ、n番目トレイ600bのウィアー(weir)60bからあふれ、n+1番目トレイ600cに降りて行く。
【0031】
この際、蒸留対象物質がトレイ600の底面においてバッフル800が形成した流路に沿って水平に流れる間、トレイ600の底面に備えられた複数のホールを通して上昇する気体と接触しつつ熱および物質の伝達がなされることになり、これにより、蒸留対象物質に含まれた揮発性物質が分離される。
ここで、ダウンカマー70aは、上側トレイ600aから流れ落ちる蒸留対象物質を下側トレイ600b上に流すダムと類似した役割をする。
【0032】
上述したように、従来のトレイ型蒸留装置1においては、上部20から蒸留対象物質を注入するが、初期注入時に狭い配管状の注入口を通して高い圧力で注入され、内部が真空であるボディ部10に注入されることに伴い、急激な減圧が起こることになる。
【0033】
この際、PVC(poly vinyl chloride)重合工程である場合、VCM(Vinyl Chloride Monomer)蒸発量が極大化され、フォーム(foam)が発生することになる。フォームが発生すると、隣接する上側トレイに達して正常流れおよび運転を妨害するか、または気-液接触面積を減少させて物質の伝達影響を弱化させ得、特にボディ部10の内部の最上段で発生するフォームは、後段工程に排出されて工程を汚染させるか、または以後にスケール(scale)に発達して製品の品質および物性を悪化させ得る。
【0034】
図4は、本発明の一実施形態に係るトレイ型蒸留装置1000において、蒸留対象物質供給部200-1~200-3および最上段トレイ600aを示した平面図であり、図5は、図4のB-B’断面図を示したものである。
【0035】
本発明に係るトレイ型蒸留装置1000は、上述した問題を解決するために、複数の蒸留対象物質供給部200-1~200-3を備えており、蒸留対象物質、例えば、PVCは、複数の蒸留対象物質供給部200-1~200-3に分散投入される。従来と同一の直径を有する配管を蒸留対象物質供給部200-1~200-3として設計する場合、複数の蒸留対象物質供給部200-1~200-3にPVCが分散投入されると、1つの蒸留対象物質供給部200-1に投入されるPVCの流量は、蒸留対象物質供給部200-1~200-3の個数に反比例して減ることになる。したがって、ボディ部100の内部と蒸留対象物質供給部200-1~200-3との間の圧力差が減り、フォームまたはバブルが発生するのを防止することができる。
好ましくは、蒸留対象物質供給部200-1~200-3は、2個~5個備えられることができる。
【0036】
一方、トレイ型蒸留装置には、気体-液体(スラリー)の流量に応じて正常運転が可能な範囲が存在する。図6は、それを示した図である。投入されるPVCの流量が所定の臨界値以下になると、PVCがトレイ600を水平移動することができずに沈降する。流れることができずに沈降するPVCは、溜まってスケールに変わる恐れがあり、トレイ600のホールを塞がって蒸留装置の効率を低下させ得る。
【0037】
複数の蒸留対象物質供給部200-1~200-3に同一流量のPVCが投入される場合、上述した臨界値流量よりも大きい流量を供給しながらもフォームまたはバブルが発生しないようにするためには、従来の1個の蒸留対象物質供給部に投入される流量の1/3だけ分散投入しなければならない。したがって、本発明に係るトレイ型蒸留装置1000において、蒸留対象物質供給部200-1~200-3は、3個備えられることが最も好ましい。この際、蒸留対象物質供給部200-1~200-3は、ボディ部100の外部面の周縁に沿って120°間隔で配置されることができる。
【0038】
以下、本発明の一実施形態に係る蒸留方法を説明する。
本発明の一実施形態に係る蒸留方法の各ステップは、前述したトレイ型蒸留装置1000を介して行われることができ、蒸留対象物質を複数の蒸留対象物質供給部200-1~200-3に分散投入するステップ(S100)と、気体流入部300に気体を提供し、蒸留対象物質と気体を反応させ、蒸留対象物質に含まれた揮発性物質を除去するステップ(S200)と、を含む。
【0039】
蒸留対象物質は、懸濁重合(suspension polymerization)またはエマルジョン重合(emulsion polymerization)により製造される高分子であってもよい。
【0040】
懸濁重合工程により製造される高分子は、例えば、ポリ塩化ビニル(poly(vinyl chloride)、PVC)、ポリメチルメタクリル酸(Poly(methyl methacrylate)、PMMA)、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroetylene、PTFE)、ポリスチレン(polystyrene、PS)などが該当することができる。
【0041】
エマルジョン重合工程により製造される高分子は、例えば、ポリ塩化ビニル(poly(vinyl chloride)、PVC)、ポリメチルメタクリル酸(Poly(methyl methacrylate)、PMMA)、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroetylene、PTFE)、ポリビニルアルコール(Poly(vinyl alcohol)、PVA)などが該当することができる。
【0042】
本発明の一実施形態においては、蒸留対象物質としてPVCを例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。蒸留対象物質がPVCである場合、PVCスラリーまたはラテックス状であり、suspension、micro-suspension、emulsion polymerizationなどによるPVC solid particleが10~60wt%含まれている。この際、PVCは、単一モノマー製品であってもよく、コポリマー製品であってもよい。
【0043】
蒸留対象物質を複数の蒸留対象物質供給部200-1~200-3に分散投入するステップ(S100)において、PVCは、それぞれの蒸留対象物質供給部に同一の流量で投入されることができる。この際、それぞれの蒸留対象物質供給部に投入されなければならない流量は、1つの蒸留対象物質供給部だけが備えられているときの1/3であって、これは、上述したように蒸留装置が正常運転できる最小流量である。
【0044】
また、PVCを複数の蒸留対象物質供給部200-1~200-3に分散投入するステップ(S100)において、蒸留対象物質供給部200-1~200-3の位置に応じて投入される流量が異なるようにすることができる。例えば、図4を参照すると、ダウンカマー700から最も遠い蒸留対象物質供給部200-1に供給されるPVCの流量だけを最小流速(1つの供給部だけが備えられている従来の蒸留装置と比べて1/3)よりも大きくなるようにし、ダウンカマー700に近い蒸留対象物質供給部200-2、200-3であるほど、益々小さい流量を供給して最小流速に近づくようにする方式で、PVCを分散投入することができる。
【0045】
この際、流量が異なるように投入することは、蒸留対象物質供給部200-1~200-3の配管の直径を変更するか、またはノズルを設ける方法により行うことができる。
【0046】
ダウンカマー700との距離が遠いほど、トレイ600上でさらに長い流路を移動しなければならないため、流速がさらに速いべきであり、よって、さらに大きい流量のPVCを投入する必要があり、ダウンカマー700との距離が近いほど、トレイ600上でダウンカマー700を通して下部のトレイ600に降りて行くまで短い流路だけを移動することになるため、流速を徐々にして気体との反応時間を長くする必要がある。この際にも最小流速以上を満たす流量が投入されなければならないことはいうまでもない。
【0047】
すなわち、ダウンカマー700から遠い蒸留対象物質供給部200-1に投入されるPVCの流量は、最小流速よりも大きくなるように調節することで、PVCが流路に沿って流れて沈降するのを防止することができ、ダウンカマー700から最も近い蒸留対象物質供給部200-3に投入されるPVCの流量は、最小流速に調節することで、PVCと気体との反応時間を最大限長くし、揮発性物質の分離効率が低くなるのを防止することができる。
【0048】
以上、限定された実施形態と図面により本発明を説明したが、本発明の説明のために例示として挙げた実施形態は本発明が具体化される1つの実施形態にすぎず、本発明の要旨が実現されるために多様な形態で組み合わせが可能である。したがって、本発明は、上記の実施形態に限定されず、以下の請求範囲で請求するように、本発明の要旨から逸脱することなく、当該発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば誰でも多様な変更実施が可能な範囲まで本発明の技術的特徴を有するといえる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6