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特許7547491タンデム太陽電池、およびタンデム太陽電池システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】タンデム太陽電池、およびタンデム太陽電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/043 20140101AFI20240902BHJP
【FI】
H01L31/04 510
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022550401
(86)(22)【出願日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2021028595
(87)【国際公開番号】W WO2022059366
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/035259
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩川 美雪
(72)【発明者】
【氏名】山下 勝也
(72)【発明者】
【氏名】戸張 智博
(72)【発明者】
【氏名】五反田 武志
(72)【発明者】
【氏名】齊田 穣
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08569613(US,B1)
【文献】米国特許第06353175(US,B1)
【文献】国際公開第2008/059593(WO,A1)
【文献】特表2017-534184(JP,A)
【文献】特開平08-226210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した光を光電変換することで発電すると共に、前記入射した光の一部を通過させるトップセルモジュールと、
前記トップセルモジュールと積層され、前記トップセルモジュールを通過した光を光電変換することで発電するボトムセルモジュールと、を備え、
前記トップセルモジュールは、直列、並列、または直列と並列の組み合わせで互いに接続された複数のトップセルを含み、
前記ボトムセルモジュールは、直列、並列、または直列と並列の組み合わせで互いに接続された、前記トップセルの数と同じ数の複数のボトムセルを含み、
前記複数のトップセルの間を繋ぐ電極は、平面視で前記ボトムセルに重ならない位置にある、
タンデム太陽電池。
【請求項2】
前記複数のトップセルは、第1方向に並ぶ複数のトップセルを含み、
前記複数のトップセルと前記複数のボトムセルは平面視で一対一に対向するように配置され、
前記複数のトップセルのそれぞれは、前記複数のボトムセルのうち対向する前記ボトムセルに対して、平面視で前記第1方向に直交する第2方向に張り出す部分を有し、
前記張り出す部分に、前記第1方向に並ぶ複数のトップセルを並列に接続する第1電極が設けられている、
請求項1記載のタンデム太陽電池。
【請求項3】
前記第1電極を接続する第2電極は、平面視で前記複数のトップセルよりも前記第1方向に関して外側に張り出している、
請求項2記載のタンデム太陽電池。
【請求項4】
前記複数のトップセルの接続形態と前記複数のボトムセルの接続形態は、前記トップセルと前記ボトムセルの電流比率に整合するように設定されている、
請求項1記載のタンデム太陽電池。
【請求項5】
前記トップセルモジュールの正極端子が前記タンデム太陽電池の正極端子であり、
前記ボトムセルモジュールの負極端子が前記タンデム太陽電池の負極端子であり、
前記トップセルモジュールの負極端子が前記ボトムセルモジュールの正極端子に接続されている、
請求項4記載のタンデム太陽電池。
【請求項6】
請求項5記載の複数のタンデム太陽電池を備え、
前記複数のタンデム太陽電池は少なくとも一方向に関して互いに隣接するように配置され、互いに隣接する前記複数のタンデム太陽電池の接続箇所において、
前記一方向に関して互いに隣接する前記複数のタンデム太陽電池のうちの一方の前記正極端子と、互いに隣接する前記複数のタンデム太陽電池のうちの他方の前記負極端子とが接続されている、
タンデム太陽電池システム。
【請求項7】
前記トップセルモジュールの正極端子が前記タンデム太陽電池の第1正極端子であり、
前記トップセルモジュールの負極端子が前記タンデム太陽電池の第1負極端子であり、
前記ボトムセルモジュールの正極端子が前記タンデム太陽電池の第2正極端子であり、
前記ボトムセルモジュールの負極端子が前記タンデム太陽電池の第2負極端子である、
請求項4記載のタンデム太陽電池。
【請求項8】
請求項7記載の複数のタンデム太陽電池であって、光の入射する側から見て前記トップセルモジュールの正極端子が第1隅に存在する一以上の第1種類のタンデム太陽電池と、光の入射する側から見て前記トップセルモジュールの正極端子が前記第1隅に隣接する第2隅に存在する一以上の第2種類のタンデム太陽電池と、を備え、
前記第1種類のタンデム太陽電池と前記第2種類のタンデム太陽電池が配列方向に関して交互に配置され、互いに隣接する前記第1種類のタンデム太陽電池と前記第2種類のタンデム太陽電池の接続箇所において、
前記第1種類のタンデム太陽電池の前記第1正極端子と前記第2種類のタンデム太陽電池の前記第1負極端子が接続されていると共に前記第1種類のタンデム太陽電池の前記第2正極端子と前記第2種類のタンデム太陽電池の前記第2負極端子が接続されており、或いは、
前記第1種類のタンデム太陽電池の前記第1負極端子と前記第2種類のタンデム太陽電池の前記第1正極端子が接続されると共に前記第1種類のタンデム太陽電池の前記第2負極端子と前記第2種類のタンデム太陽電池の前記第2正極端子が接続されている、
タンデム太陽電池システム。
【請求項9】
前記複数のトップセルは、第1方向と、平面視で前記第1方向に直交する第2方向とにそれぞれ複数配列されており、
前記複数のトップセルと前記複数のボトムセルは平面視で一対一に対向するように配置され、
前記複数のトップセルの少なくとも一部が、前記第1方向において第1電極で接続され、
前記複数のトップセルの少なくとも一部が、前記第2方向において第2電極で接続され、
前記第1電極および前記第2電極は、平面視で前記ボトムセルに重ならない位置にある、
請求項1記載のタンデム太陽電池。
【請求項10】
前記第1電極は、前記複数のトップセル上において、平面視で前記トップセルに重ならない位置に設けられており、
前記ボトムセルは、平面視で前記第1電極の間に位置するように配置されている、
請求項9記載のタンデム太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、タンデム太陽電池、およびタンデム太陽電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トップセルモジュールとボトムセルモジュールを含むタンデム太陽電池が知られている。タンデム太陽電池では、互いに異なる光の吸収帯を持つ材料で生成されたトップセルモジュールとボトムセルモジュールを組み合わせることで、小面積で効率的に発電を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-53669号公報
【文献】特表2017-534184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タンデム太陽電池において、トップセルモジュールが複数のトップセルを含み、ボトムセルモジュールが複数のボトムセルを含むように構成されることが想定される。しかしながら、従来の技術では、複数のトップセルを繋ぐ電極が平面視でボトムセルに重なることで、ボトムセルの発電量が低下してしまう場合があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ボトムセルの発電量の低下を抑制することができるタンデム太陽電池、およびタンデム太陽電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の太陽電池は、トップセルモジュールと、ボトムセルモジュールとを持つ。トップセルモジュールは、入射した光を光電変換することで発電すると共に、前記入射した光の一部を通過させる。ボトムセルモジュールは、前記トップセルモジュールと積層され、前記トップセルモジュールを通過した光を光電変換することで発電する。前記トップセルモジュールは、直列、並列、または直列と並列の組み合わせで互いに接続された複数のトップセルを含む。前記ボトムセルモジュールは、直列、並列、または直列と並列の組み合わせで互いに接続された、前記トップセルの数と同じ数の複数のボトムセルを含む。前記複数のトップセルの間を繋ぐ電極は、平面視で前記ボトムセルに重複しない位置にある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る太陽電池1の構成図。
図2】トップセルモジュール100の構成をZ方向から見た図。
図3】トップセル110の積層構造の一例を示す斜視図。
図4】トップセル110の積層構造の一例を示す側面図。
図5】トップセルモジュール100の等価回路図。
図6】ボトムセルモジュール200の構成をZ方向から見た図(その1)。
図7】ボトムセルモジュール200の構成をY方向から見た図(その1)。
図8】ボトムセルモジュール200の構成をZ方向から見た図(その2)。
図9】ボトムセルモジュール200の構成をY方向から見た図(その2)。
図10】ボトムセルモジュール200の等価回路図。
図11】第1の実施形態に係る太陽電池システムの構成図。
図12】第2の実施形態の太陽電池2の構成図。
図13】第2の実施形態に係る太陽電池システムの構成図。
図14】太陽電池1または2の平面図である。
図15図14における15-15線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の太陽電池、および太陽電池システムを、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る太陽電池1の構成図である。太陽電池1は、トップセルモジュール100と、ボトムセルモジュール200とを有する。トップセルモジュール100と、ボトムセルモジュール200のそれぞれは、例えば、矩形面を有する平板状の形状をしており、トップセルモジュール100とボトムセルモジュール200は、それぞれの厚さ方向に積層されている。以下、トップセルモジュール100と、ボトムセルモジュール200の矩形面における一辺の方向をX方向、他の一辺の方向をY方向、厚さ方向をZ方向と定義して説明を行う。図中の矢印Dは、光(太陽光)の入射方向を示している。後述する図3、4、7、9、11においても同様である。太陽電池1は、トップセルモジュール100におけるボトムセルモジュール200の側と反対側の矩形面に光が入射するように設置される。
【0010】
トップセルモジュール100は、入射した光を光電変換することで発電すると共に、入射した光の一部を通過させる。ボトムセルモジュール200は、トップセルモジュール100を通過した光を光電変換することで発電する。トップセルモジュール100の正極端子100Pは、太陽電池1の正極端子1Pを兼ねる。トップセルモジュール100の負極端子100Nは、ボトムセルモジュール200の正極端子200Pと接続されている。ボトムセルモジュール200の負極端子200Nは、太陽電池1の負極端子1Nを兼ねる。このように、第1実施形態において、トップセルモジュール100と、ボトムセルモジュール200は、太陽電池1の正極端子1Pと負極端子1Nの間に直列に接続されている。
【0011】
トップセルモジュール100は、直列、並列、または直列と並列の組み合わせで互いに接続された複数のトップセル110(後に図示)を含み、ボトムセルモジュール200は、直列、並列、または直列と並列の組み合わせで互いに接続された複数のボトムセル210(後に図示)を含む。後に説明するが、複数のトップセル110の接続形態と複数のボトムセル210の接続形態は、トップセル110とボトムセル210の電流比率に整合するように設定されていてもよい。電流比率とは、想定される成分の光が入射したときに、トップセル110とボトムセル210のそれぞれが発電する電力の比率である。以下、電流比率(トップセルの出力電流:ボトムセルの出力電流)を1:αで表す。通常、ボトムセル210の方が多くの電流を出力するため、α>1となる。
【0012】
図2は、トップセルモジュール100の構成をZ方向から見た図である。トップセルモジュール100は、例えば、複数のトップセル110-1~mと、正側セルインターコネクタ120Pと、負側セルインターコネクタ120Nと、ストリングコネクタ130と、ダイオード140とを有する。mは2以上の任意の自然数であり、図ではm=20である。いずれのトップセルであるか区別しないときは、単にトップセル110と称する。負側セルインターコネクタ120Nは、X方向に並ぶトップセル110のn電極111(後に図示)を共通して接続する導電体である。正側セルインターコネクタ120Pは、X方向に並ぶトップセル110のp電極114(後に図示)を共通して接続する導電体である。従って、図2の構成では、4つのトップセル110が並列に接続されている。ダイオード140は、並列に接続された4つのトップセル110ごとに設けられるバイパスダイオードである。ダイオード140は、対応する4つのトップセル110が日陰に入ったり故障した場合に、4つのトップセル110に流れる電流をバイパスさせる。トップセルモジュール100は、封止材を含む樹脂、密着フィルム等を介してボトムセルモジュール200と接合されている。
【0013】
図3は、トップセル110の積層構造の一例を示す斜視図である。図4は、トップセル110の積層構造の一例を示す側面図である。トップセル110は、例えば、亜酸化銅太陽電池であり、負側セルインターコネクタ120Nのある側から順に、例えば、n電極111、n-化合物層112、p-光吸収層113、p電極114、基板115が積層された構成となっている。図3および図4に示す構成は、あくまで一例であり、入射した光を光電変換することで発電すると共に、入射した光の一部を通過させることが可能な構成であれば、如何なる構成が採用されてもよい。トップセル110としては、例えば、亜酸化銅(CuO)太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜系太陽電池、ペロブスカイト太陽電池などが採用される。また、図3および図4に示す構成に加えて、保護フィルム、封止材などが適宜追加されてよい。発電層へ光を導入しやすくする目的で、n-化合物層112の上に反射防止膜が形成されてもよい。n電極111およびp電極114は、例えば透明導電膜やメッシュ状に形成された電極であり、メッシュの間隙に光を透過させる。基板115は、例えばガラスやPET等の透明フィルムであり、光透過率が高いほどよい。トップセル110は、n-化合物層112とp-光吸収層113の間に電圧を発生させる。発生した電圧は、n電極111とのp電極114との間の電圧となり、その電圧が負側セルインターコネクタ120Nおよび正側セルインターコネクタ120Pによって取り出される。図5は、トップセルモジュール100の等価回路図である。図示するように、トップセルモジュール100は、トップセル110が4並列5直列で接続された回路構成となっている。
【0014】
ボトムセル210は、例えばバックコンタクト型太陽電池セルである。この場合における構成例を図6および図7に示す。図6は、ボトムセルモジュール200の構成をZ方向から見た図(その1)である。ボトムセルモジュール200は、例えば、複数のボトムセル210-1~mと、セルインターコネクタ230と、ダイオード240とを有する。いずれのボトムセルであるか区別しないときは、単にボトムセル210と称する。セルインターコネクタ230は、互いに隣接するボトムセル210の間に設けられ、m個のボトムセル210を直列に接続する導電体である。ダイオード240は、直列に接続された4つのボトムセル210ごとに設けられるバイパスダイオードである。ダイオード240は、対応する4つのボトムセル210が日陰に入ったり故障したりした場合に、ボトムセル210に流れる電流をバイパスさせる。
【0015】
図7は、ボトムセルモジュール200の構成をY方向から見た図である(その1)。図示するように、ボトムセル210は、例えば、トップセルモジュール100の側から順に、反射防止膜211、n型半導体212、p+拡散層213およびn+拡散層214が積層されている。p+拡散層213及びn+拡散層214は、各ボトムセル210のY方向に関して、交互に配置されている。また、図7に示す構成に加えて、保護フィルム、封止材などが適宜追加されてよい。ボトムセル210は、p+拡散層213とn+拡散層214との間に電圧を発生させる。発生した電圧は、p電極215とn電極216との電圧となる。p電極215とn電極216もY方向に関して、交互に配置されている。一つのボトムセル210における複数のp電極215は一つに束ねられており、一つのボトムセル210における複数のn電極216もまた一つに束ねられている。両者の電圧は、セルインターコネクタ230によって隣接する他のボトムセル210におけるpnが逆の電極と接続されることで、ボトムセル210が互いに直列に接続される。
【0016】
ボトムセル210は、結晶系Si太陽電池セルなど、他の態様の太陽電池セルであってもよい。この場合における構成例を図8および図9に示す。図8は、ボトムセルモジュール200の構成をZ方向から見た図(その2)である。この例におけるセルインターコネクタ235は、互いに隣接するボトムセル210の表面側(図面における手前側)と裏面側(図面における奥側)を接続することで、m個のボトムセル210を直列に接続する導電体である。
【0017】
図9は、ボトムセルモジュール200の構成をY方向から見た図である(その2)。図示するように、ボトムセル210は、例えば、トップセルモジュール100の側から順に、n電極221、反射防止膜220、n型半導体222、p型半導体223、およびp電極224が積層されている。ボトムセル210は、p型半導体223pとn型半導体222との間に電圧を発生させる。発生した電圧は、p電極224とn電極221との間の電圧となる。この電圧は、セルインターコネクタ235によってボトムセル210が直列に接続されることで昇圧されて取り出される。ボトムセルモジュール200としては、他にも例えば、単結晶、多結晶、ヘテロ接合型、アモルファス等のシリコン系太陽電池や、CIS系、CIGS系の化合物太陽電池などが採用され、更にセル電極構造(p電極、n電極)としてメタルラップスルー構造や両面受光構造が組み合わされてもよい。メタルラップスルー構造とは、図9に示す構造において、n電極221をボトムセル210の厚さ方向に貫通させて裏面側に持ってきた電極構造である。両面受光構造とは、図9に示す構造において、p電極224がボトムセル210の裏面の全面に配置されている構造ではなく、n電極221のようにバスバーによって配線されている電極構造である。
【0018】
図10は、ボトムセルモジュール200の等価回路図である。図示するように、ボトムセルモジュール200は、ボトムセルが1並列20直列で接続された回路構成となっている。
【0019】
このように構成された太陽電池1は、トップセルモジュール100の方がボトムセルモジュール200よりも並列数が大きく、トップセルモジュール100の出力電流は一つのトップセル110の出力電流よりも大きくなる。ここで、仮にトップセルモジュール100とボトムセルモジュール200の並列数を同じにした場合は、前述した電流比率に起因してトップセルモジュール100の出力電流がボトムセルモジュール200の出力電流の1/αとなり、トップセルモジュール100とボトムセルモジュール200の電流が整合しないため、これらを直列に接続するのが難しくなってしまう。この点、実施形態の太陽電池1ではトップセルモジュール100の並列数を大きくすることでトップセルモジュール100の出力電流がボトムセルモジュール200の出力電流の差を解消することができ、電流整合された状態に近付けることができる。この結果、トップセルモジュール100とボトムセルモジュール200を直列に接続することができ、トップセルモジュール100とボトムセルモジュール200の発電する電力を効率的に利用させることができる。また、太陽電池1の正極端子1Pと負極端子1Nのそれぞれを一つに絞ることができるため、太陽電池1の軽量化を図ることができる。
【0020】
トップセルモジュール100の並列数をボトムセルモジュール200の並列数で除算した値βは、特性値であるαと一致することが望ましいが、βが1よりもαに近く(すなわち電流整合するように並列数が作用し)、且つ上限値(例えば1.5×α程度)を超えない限り、αと多少異なってもよい。上記例示した実施形態ではβ=4であるため、α=4となるようにトップセル110とボトムセル210の材料が選択されるとよい。
【0021】
以上説明した第1の実施形態によれば、複数のトップセル110の接続形態と複数のボトムセル210の接続形態(すなわち除算値β)は、トップセル110とボトムセル210の電流比率αに整合するように設定されているため、トップセルモジュールとボトムセルモジュールの発電する電力を効率的に利用させることができる。
【0022】
このような構成の太陽電池1は、例えば、以下のような態様で使用される。図11は、第1の実施形態に係る太陽電池システムの構成図である。太陽電池1は、幾何的構成として、1つの隅にトップセルモジュール100の正極端子100P(すなわち太陽電池1の正極端子1P)及びボトムセルモジュール200の負極端子200N(すなわち太陽電池1の負極端子1N)が配置されている。図11において、上側の太陽電池1をZ軸回りに180度回転させると下側の太陽電池1に一致するため、これらは等価である。
【0023】
図11に示すように、太陽電池1は、互いに隣接するように配置され、X方向に関して互いに隣接する太陽電池1の正極端子1Pと負極端子1Nとが接続されている。
【0024】
係る構成によって、複数の太陽電池1を直列に接続した太陽電池系統が生成される。太陽電池系統による発電電力は、PCS(Power Conditioning System)300の入力端子310に入力され、出力端子320から出力される。
【0025】
以上説明した第1の実施形態によれば、4端子モジュールを接続する従来の太陽電池システムと比較して、配線長を低減させて効率的に複数の太陽電池1を直列配置することができる。
【0026】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。図12は、第2の実施形態の太陽電池2の構成図である。太陽電池2は、第1の実施形態の太陽電池1と比較すると、トップセルモジュール100の負極端子100Nが、ボトムセルモジュール200の正極端子200Pと接続されておらず、トップセルモジュール100の正極端子100Pが太陽電池2の第1正極端子2P#1、トップセルモジュール100の負極端子100Nが太陽電池2の第1負極端子2N#1、ボトムセルモジュール200の正極端子200Pが太陽電池2の第2正極端子2P#1、ボトムセルモジュール200の負極端子200Nが太陽電池2の第2負極端子2N#1を兼ねる点で相違する。すなわち、第2の実施形態の太陽電池2は、トップセルモジュール100とボトムセルモジュール200をそれぞれ独立した太陽電池として機能させる。トップセルモジュール100とボトムセルモジュール200の内部構成については第1の実施形態と同様であり、再度の説明を省略する。
【0027】
このような構成の太陽電池2は、例えば、以下のような態様で使用される。図13は、第2の実施形態に係る太陽電池システムの構成図である。太陽電池2は、幾何的構成としてタイプAとタイプBの2つのタイプのいずれかとして形成され得る。太陽電池2(タイプA)は、光の入射する側(プラスZ側)から見てトップセルモジュール100の正極端子100P(すなわち太陽電池2の第1正極端子2P#1)が第1隅に存在するものである。第1隅とは、右上または左下であり、太陽電池2をZ軸回りに180度回転させると右上と左下に区別は無いため、これらは等価である。太陽電池2(タイプB)は、光の入射する側(プラスZ側)から見てトップセルモジュール100の正極端子100P(すなわち太陽電池2の第1正極端子2P#1)が第2隅に存在するものである。第2隅とは、第1隅に隣接する隅であり、右下または左上である。なお太陽電池2が正方形の形状を有している場合、タイプAとタイプBの間に違いは無くなるが、そうでは無いものとする。太陽電池2(タイプA)は「第1種類の太陽電池」の一例であり、太陽電池2(タイプB)は「第2種類の太陽電池」の一例である。
【0028】
図13に示すように、太陽電池2(タイプA)と太陽電池2(タイプB)は、配列方向(X方向)に関して交互に配置され、互いに隣接する太陽電池2(タイプA)と太陽電池2(タイプB)の接続箇所において、太陽電池2(タイプA)の第1正極端子2P#1と太陽電池2(タイプB)の2N#1が接続されていると共に太陽電池2(タイプA)の2P#2と太陽電池2(タイプB)の2N#2が接続されており(図中(1))、或いは、太陽電池2(タイプA)の2N#1と太陽電池2(タイプB)の2P#1が接続されると共に太陽電池2(タイプA)の2N#2と太陽電池2(タイプB)の第2正極端子2P#2が接続されている(図中(2))。
【0029】
係る構成によって、複数の太陽電池2のトップセルモジュール100を直列に接続したフロントセル太陽電池系統と、複数の太陽電池2のボトムセルモジュール200を直列に接続したボトムセル太陽電池系統と、が生成される。フロントセル太陽電池系統による発電電力と、ボトムセル太陽電池系統による発電電力のそれぞれは、PCS(Power Conditioning System)300の第1入力端子310#1と第2入力端子310#2のそれぞれに入力され、PCS300において電流整合などの処理が行われて一本化された電力が出力端子320から出力される。
【0030】
以上説明した第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる他、図13に例示したように、2タイプの太陽電池を用いることで、1タイプの太陽電池のみ用いる場合に比して、配線長を低減させて効率的に複数の太陽電池2を直列配置することができる。
【0031】
図6および図8の構成において、セルインターコネクタ230および235のうちY方向に隣接するボトムセル210同士を接続するものの配置を模式的に表現したが、実際には、X方向に関してボトムセル210よりも外側に張り出すように配置されてよい。
【0032】
(トップセルモジュール100における電極の配置について)
以下、実施形態の太陽電池における電極の配置について、より詳細に説明する。これまでに説明したとおり、ボトムセルモジュール200は、トップセル110の数と同じ数の複数のボトムセル210を含む。複数のトップセル110は、第1方向(X方向)に並ぶ複数のトップセル110を含み、複数のトップセル110と複数のボトムセル210は平面視で一対一に対向するように配置される。図2の例では、トップセル110-1~110~4など、X方向に並ぶ1セットのトップセル110が、「第1方向(X方向)に並ぶ複数のトップセル110」に該当する。
【0033】
ここで、複数のトップセル110の間を繋ぐ電極は、平面視でボトムセル210に重ならない位置にある。これによって、ボトムセルの発電量の低下を抑制することができる。以下、これについて説明する。
【0034】
[Y方向に関して]
複数のトップセル110のそれぞれは、複数のボトムセル210のうち対向するボトムセル210(例えばハイフン以下の符号が同じボトムセル210)に対して、平面視で第1方向(X方向)に直交する第2方向(Y方向)に張り出す部分を有し、この張り出す部分に、第1方向に並ぶ複数のトップセル110を並列に接続する第1電極が設けられている。「平面視で」とは、例えば、「Z方向から見た場合に」という意味である。また、「平面視で」とは、「想定される光の入射方向Dの方向から見た場合に」と換言することができ、「太陽電池1または2の最も広い平面部に直交する方向から見た場合に」と換言することもできる。「張り出す」とは、Y方向に関するボトムセル210の両側の端部(外縁線)よりも外側にトップセル110の端部が存在することをいう。第1電極には、正側セルインターコネクタ120Pと、負側セルインターコネクタ120Nとが含まれる。
【0035】
[X方向に関して]
また、第1電極を接続する第2電極(ストリングコネクタ130)は、平面視で複数のトップセル110よりも第1方向(X方向)に関して外側に張り出している。つまり、第1電極は、X方向に関して、X方向に並ぶトップセル110のうち両端部に位置するトップセル110の端部(外縁線)よりも外側まで延びており、その第1電極の端部同士を第2電極が接続している。例えば後述する図14の例では、正側セルインターコネクタ120Pはトップセル110-4のX方向端部よりも先まで伸びており、負側セルインターコネクタ120Nはトップセル110-8のX方向端部よりも先まで伸びており、ストリングコネクタ130は、それらの先端部同士を接続している。他の箇所に関しても同様である。これらの構成によって、複数のトップセル110の間を繋ぐ電極(少なくとも第1電極を含み、第2電極を含んでもよい)は、平面視でボトムセル210に重ならない位置となる。
【0036】
図14は、太陽電池1または2の平面図である。図15は、図14における15-15線における断面図である。これらの図においては、図7に例示した構成と図9に例示した構成を区別せず、セルインターコネクタ230やセルインターコネクタ235を省略して示している。また、寸法や縮尺は図の通りでなく、任意に変更されてよい。ここで、各部の素材等について補足する。n-化合物層112は、光吸収層とpn接合を作るような半導体であり、亜酸化銅の場合は酸化物半導体が用いられる。n-化合物層112は、透過率が高いものであることが好ましい。p-光吸収層113は、太陽電池の光吸収層であり、光吸収層で吸収される波長以外の光をボトムセル210に透過させるために透過率が高い方が好ましい。例えば、亜酸化銅CuOがp-光吸収層113として用いられる。基板115のハッチングを「樹脂」に対応するものとしたが、前述したように基板115はガラスであってもよい。セルインターコネクタ120N、120Pは、例えば、はんだめっき銅線、導電性テープ、あるいは導電性接着剤と銅箔を組み合わせたもの、銅箔の片側に樹脂等を接着したもの等である。導電性テープは、例えば、Sn等でめっきした銅箔と樹脂系接着剤とを組み合わせたものである。
【0037】
図15に示すように、トップセル110にはY方向に関してボトムセル210の端部よりも外側に張り出した張り出し部110hP、110hNが設けられており、張り出し部110hPに収まるように正側セルインターコネクタ120Pが、張り出し部110hNに収まるように負側セルインターコネクタ120Nとが、それぞれ配置される。張り出し部110hP、110hNのそれぞれの幅は、例えば0~10[mm]程度であり、より好ましくは0~3[mm]程度である。このように構成されることで、トップセル110の発電面積とボトムセル210の発電面積が略一致することになる。なお、図4においては正側セルインターコネクタ120Pがp電極114に接するように配置されるものとしたが、図15では、正側セルインターコネクタ120Pはp電極114上に設けられ、Y方向に関してメインの積層構造に対して間隙をもって配置される、隔離されたn電極111(意味的にはp電極と称するべきであるが)に接するように配置される。この場合、電流は負側セルインターコネクタ120Nからn電極111、n-化合物層112、p-光吸収層113、p電極114を通り、更に、隔離されたn電極111を通って正側セルインターコネクタ120Pに至る。張り出し部110hPと張り出し部110hNの間はX方向に複数個所スクライブされた構造を取ってもよい。
【0038】
このように例示される構成によって、複数のトップセル110の間を繋ぐ電極は、平面視でボトムセル210に重ならない位置となる。
【0039】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、入射した光を光電変換することで発電すると共に、入射した光の一部を通過させるトップセルモジュール100と、トップセルモジュール100と積層されトップセルモジュール100を通過した光を光電変換することで発電するボトムセルモジュール200と、を備え、トップセルモジュール100は、直列、並列、または直列と並列の組み合わせで互いに接続された複数のトップセル110を含み、ボトムセルモジュール200は、直列、並列、または直列と並列の組み合わせで互いに接続された、トップセル110の数と同じ数の複数のボトムセル210を含み、複数のトップセル110の間を繋ぐ電極は、平面視でボトムセル210に重ならない位置にある。これにより、電極の影がボトムセル210上にかかることによるボトムセル210の発電量の低下を抑制することができる。
【0040】
各実施形態の太陽電池、または太陽電池システムは、省スペースで効率的に発電をすることができるため、航空機の翼面などの種々の制約が多い箇所に好適に取り付けることができる。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15