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特許7547496降伏強度500MPa以上で降伏比が0.83以下の耐候性橋梁用鋼
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  • 特許-降伏強度500MPa以上で降伏比が0.83以下の耐候性橋梁用鋼 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】降伏強度500MPa以上で降伏比が0.83以下の耐候性橋梁用鋼
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20240902BHJP
   C22C 38/50 20060101ALI20240902BHJP
   C21D 8/02 20060101ALI20240902BHJP
   B22D 11/00 20060101ALI20240902BHJP
   B22D 11/124 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C22C38/00 301A
C22C38/50
C21D8/02 B
B22D11/00 A
B22D11/124 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022559635
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(86)【国際出願番号】 CN2020089132
(87)【国際公開番号】W WO2021196343
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】202010240576.0
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519226115
【氏名又は名称】南京鋼鉄股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】黄 一新
(72)【発明者】
【氏名】楚 覚非
(72)【発明者】
【氏名】王 軍
(72)【発明者】
【氏名】崔 強
(72)【発明者】
【氏名】陳 林恒
(72)【発明者】
【氏名】▲デン▼ 偉
(72)【発明者】
【氏名】孟 令明
(72)【発明者】
【氏名】唐 春霞
(72)【発明者】
【氏名】王 青峰
(72)【発明者】
【氏名】趙 麗洋
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101876032(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101845602(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102021494(CN,A)
【文献】特開2006-322019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 1/00-11/00
B22D 11/00
B22D 11/124
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
降伏強度500M以上で降伏比が0.83以下の耐候性橋梁用鋼であって、質量百分率で、C:0.04~0.09%、Si:0.15~0.30%、Mn:1.40~1.50%、P:0.009~0.015%、S:≦0.002%、Nb:0.020~0.050%、Ti:0.010~0.020%、V:0.010~0.030%、Cu:0.30~0.40%、Ni:0.30~0.45%、Cr:0.45~0.60%、Mo:0.08~0.15%、Alt:0.02~0.04%、残量のFe及び不可避不純物からなり、金属組織は焼戻しベイナイトであり、
質量百分率で、耐大気腐食性指数I=26.01(%Cu)+3.88(%Ni)+1.20(%Cr)+1.49(%Si)+17.28(%P)-7.29(%Cu)(%Ni)-9.10(%Ni)(%P)-33.39(%Cu) を定義すると、I≧6.5の耐候性を有することを特徴とする降伏強度500M以上で降伏比が0.83以下の耐候性橋梁用鋼。
【請求項2】
請求項1に記載の降伏強度500M以上で降伏比が0.83以下の耐候性橋梁用鋼であって、厚さ8~80mmの鋼板であることを特徴とする降伏強度500M以上で降伏比が0.83以下の耐候性橋梁用鋼。
【請求項3】
請求項1に記載の降伏強度500M以上で降伏比が0.83以下の耐候性橋梁用鋼であって、質量百分率で、C:0.06~0.09%、Mn:1.40~1.46%であることを特徴とする降伏強度500M以上で降伏比が0.83以下の耐候性橋梁用鋼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性鋼に係り、具体的に500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼及びその製造方法に係る。
【背景技術】
【0002】
大型の鋼構造の橋梁が大スパン、重負荷、全溶接構造の方向に発展するにつれて、橋梁構造の安全と信頼性の要求は、ますます厳しくなっている。これは、設計者に対してより高い要求を提起し、同時に鋼板の品質に対してより高い基準を求める。即ち、鋼板には、構造の軽量化要求を満たすために高強度が求められるだけでなく、橋梁のより大きいスパン、より重い負荷の労働条件を満足するために、優れた可塑性、低温靭性、溶接性、耐腐食性能などを有するべきである。従って、高強度、高靭性、高可塑性、高耐候性の橋梁用鋼の応用は、橋梁構造の自重を低減し、橋梁工事の設計、製造、施工難度などを低減することができるのみならず、使用寿命を高めることもできる。
【0003】
しかし、鋼の強度が高くなるにつれて、鋼の降伏比は、一般的に高くなり、0.93以上になることもある。降伏比が高いため、部材に過負荷が発生すると、例えば地震などの条件下で速やかに鋼種限界強度に達し、事故につながる。従って、高い降伏比は、高強度構造鋼の橋梁工事への適用を制限する。地震の頻発とそれによる壊滅的な結果は、橋梁の耐震性に対する外国からの高い関心を引き起こし、いくつかの構造設計規範の中で関連規定が作られている。低降伏比、高強度、高靭性、高可塑性、高耐候性の橋梁用鋼は、橋梁建設の発展傾向である。
【0004】
公開番号CN101892431Aの発明は、熱延状態降伏強度500MPaレベルの耐候性橋梁用鋼及びその製造方法を公開したものであり、Mo含有量が0.15~0.35%に達し、レアアース処理が必要であり、コストが高い。出願番号CN201811494831.3の発明には、Q550qENH及びその生産方法が紹介されているが、厚さの規格が12~60mmであり、個別の厚さの規格では鋼板の降伏比が0.87に達している。公開番号CN103103458Aの発明は、高強度の耐候性鋼及びその製造方法を公開しているが、C含有量が0.01~0.05%であり、超低炭素鋼に属し、制錬難度が大きく、Mn含有量が1.5~2.0%であり、鋳造スラブに簡単に中心偏析が発生し、しかも完成品が薄い規格のロール板であるため、大きい厚さ、広い規格という近代的な橋梁構造建設のニーズを満足することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の目的は、従来技術の欠陥を克服するために、低降伏比、高低温靭性及び高延性の特長を併せ持っている500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼を開示することである。
【0006】
本発明の他の目的は、上述した500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼は、質量百分率で、C:0.04~0.09%、Si:0.15~0.30%、Mn:1.40~1.50%、P:0.009~0.015%、S:≦0.002%、Nb:0.020~0.050%、Ti:0.010~0.020%、V:0.010~0.030%、Cu:0.30~0.40%、Ni:0.30~0.45%、Cr:0.45~0.60%、Mo:0.08~0.15%、Alt:0.02~0.04%、残量のFe及び不可避不純物からなる。
【0008】
本発明の成分配合率の決定は、いくつかの元素の含有量を変更し、材料の力学的性能を強化して改善できる合金元素を加えることによって達成される。多価少量の原則に従い、圧延制御冷却制御+焼戻しの方法を採用し、厚さ規格8~80mm、かつ降伏比≦0.83の鋼を得て、その納品状態がTMCP+焼戻し処理である。
【0009】
具体的に言えば、本発明の成分の中では、鋼の中の炭素含有量が高くなりなりすぎることが望まれず、同時に硫黄、ガスの不純物を低減して耐食元素のリンの含有量を制御して、鋼の清浄性と強い靱性を確保する。本発明の焼戻しベステナイトを主とする組織タイプにより、低降伏比、高低温靱性、高延性を実現する。各成分及び含有量の説明は、以下の通りである。
Cは、鋼の強度及び硬度を高めるために不可欠な元素であり、鋼組織への影響が大きい。Cは、基体に溶融して間隙固溶体を形成し、固溶強化の役割を果たし、基体の強度を著しく増加させる。炭素含有量の増加に伴い、鋼の引張強度と降伏限界が向上する一方、伸び率、切れ目衝撃靱性が低下する。鋼材中のC含有量が高くなると、冷割れを悪化させやすいので、本発明は、超低炭素設計を採用する。少量のCは、鋼中に微合金元素炭化物を形成し、第二相強化及び結晶粒微細化の役割を果たす。本発明におけるCの百分率は、0.04~0.09%に設定される。
Mnは、鉄鋼の主要元素であり、材料の強度を高めることができる。C含有量やCrの向上も、強度を高められる。しかし、炭素が多すぎると、成型性や溶接線に影響する。Crは、価格が高く、埋蔵量が限られ、コスト低減に不利である。Mnは、鋼の熱間脆化を防止する主要元素である。総合的に考えて、マンガンの含有量を上限まで増加させる。本発明におけるMnの百分率が1.40~1.50%に設定される。
Siは、主に強い固溶強化の形で鋼の強度を高め、製鋼における脱酸に不可欠な元素であり、耐大気腐食性を向上させることができるが、鋼の可塑性と靭性を大幅に低下させ、鋼の表面めっき性能を著しく低下させる。従って、強度、靭性、可塑性などの要因を総合的に考慮し、本発明におけるSiの百分率は、0.15~0.30%に設定される。
Pは、さび層の非晶質変態を促進し、一般に、CuとPの複合が最も耐候効果が高く、比較的経済的な耐食元素である。Pが低温脆性や割れ感受性の原因となることを考慮すると、重要な溶接構造用の耐候性鋼には、Pの含有量は、一般に制限される。本発明におけるPの百分率は、0.009~0.012%の狭い範囲に制御される。
Cuは、主に鋼の固溶強化の役割を果たし、適量の銅は、靭性を低下させることなく強度を向上させ、鋼の耐食性を向上させることができる。本発明におけるCuの百分率は、0.30~0.40%である。
Crは、実際の工業生産で広く使用され、鋼の降伏強度を向上させるには、炭素に次ぐものであり、降伏比を下げるには不利である。さらに、わが国では、クロム元素の埋蔵量が少ないため、クロムの含有量を減らし、Mn及びSiで代替する。本発明におけるCrの百分率は、0.45~0.60%である。
Moは、強力な固溶強化元素であり、焼入れ性を強力に向上させ、熱間脆性を大幅に向上させ、焼戻し安定性を向上させ、焼戻し脆性を大幅に低減することができる。本発明におけるMoの百分率は、0.08~0.15%である。
Vは、中程度の炭化物形成元素であり、単純な立方晶構造を有する合金炭化物VCを形成し、セメンタイトに入り込み、セメンタイトの安定性を改善し、焼き戻し安定性を改善することができる。本発明におけるVの百分率は、0.010~0.030%である。
Tiは、Cカーブを右にシフトさせることができる。チタンは、強度を大幅に改善し、結晶粒を微細化し、鋼の靭性を改善することができる。適切な量のTiは、第二相の質点を形成し、金属の靭性を改善することができる。本発明におけるTiの百分率は、0.010~0.020%である。
【0010】
さらに、この鋼の耐大気腐食性指数I≧6.5である。ここで、耐大気腐食性指数I=26.01(%Cu)+3.88(%Ni)+1.20(%Cr)+1.49(%Si)+17.28(%P)-7.29(%Cu)(%Ni)-9.10(%Ni)(%P)-33.39(%Cu)
【0011】
上述した500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼に対応し、本発明の製造方法に用いられる技術手段は、制錬、連続鋳造、均熱、圧延、弛緩、冷却及びオフライン焼戻しの工程を含む。ここで、均熱工程では、連鋳スラブを中心温度1130~1230℃に加熱する。圧延工程は、脱リン後の連鋳スラブに対して再結晶領域の圧延と未再結晶領域の圧延を行い、前記再結晶領域の圧延の累積変形量が連鋳スラブの厚さの50%以上である。中間スラブの待機温度を800℃~990℃とし、待機温度厚さが2~4倍の完成品の厚さであり、温度に達してから前記未再結晶領域の圧延を行い、最終圧延温度を790~830℃に制御する。弛緩工程では、冷却開始温度730℃~760℃まで弛緩する。冷却工程は、前記冷却開始温度から層流冷却を行い、自己焼戻し温度を420~600℃に制御し、その後、室温まで空冷する。オフライン焼戻し工程では、焼戻し温度が450~550℃であり、この温度で20~40min保温し、保温時間が完成品の厚さに比例し、その後、室温まで自然に冷却される。
【発明の効果】
【0012】
従来技術と比較して、本発明は、科学的な成分設計及び適合した圧延制御冷却制御+焼戻しの製造方法により、低降伏比、高靭性及び高延性を有する500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼を得る。その降伏強度が545MPa以上であり、引張強度が682MPa以上であり、完成品の鋼の降伏比が0.83以下であり、-40℃Akvが180J以上であり、延伸率≧20%であり、総合性能が良く、橋梁構造の適用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例2における製品の光学500倍の金相組織図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体的な実施例に関連してさらに説明する。
【0015】
実施例1の成分は、質量百分率で、C:0.04%、Si:0.28%、Mn:1.50%、P:0.014%、S:0.0010%、Nb:0.020%、Ti:0.015%、V:0.010%、Ni:0.30%、Cu:0.40%、Cr:0.45%、Mo:0.08%、Alt:0.02%であり、残量がFe及び不可避不純物である。原料は、制錬、精錬、合金化、カルシウム処理を経て鋼水を得る。鋼水の上でスラブ連続鋳造し、鋳造スラブの厚さが150mmであり、耐大気腐食性指数Iが6.51である。連続鋳造スラブのスラブ冷却を24時間以上とし、スラブを1230℃で均熱し、温度均一性が20℃未満であり、150min加熱してから脱リンし、その後、2段階の圧延を行う。再結晶領域の圧延温度が1080℃であり、全体の変形量が79%である。中間スラブの厚さは、完成品の厚さの4倍に制御する。未再結晶領域圧延の圧延開始温度が990℃であり、最終製品の厚さ8mmに達し、最終圧延が830℃である。
【0016】
最終圧延の後に、冷却開始温度730℃に弛緩し、冷却開始温度下の鋼板に対して層流冷却を行い、自己焼戻し温度が600℃であり、その後、室温まで空冷し、それから鋼板に対して焼戻しを行い、焼戻し温度が550℃であり、この温度下で20min保温する。
【0017】
圧延制御冷却制御+焼戻し後の試料金相組織を観察したところ、微小組織タイプは、「焼戻しベステナイト」組織であり、材料の降伏強度が575MPaであり、引張強度が693MPaであり、完成鋼の降伏比が0.83であり、-40℃Akvが180Jであり、伸び率Aが20%であった。
【0018】
実施例2の成分は、質量百分率で、C:0.06%、Si:0.30%、Mn:1.46%、P:0.010%、S:0.0015%、Nb:0.040%、Ti:0.020%、V:0.020%、Ni:0.35%、Cu:0.30%、Cr:0.60%、Mo:0.10%、Alt:0.04%であり、残量がFe及び不可避不純物である。原料は、制錬、精錬、合金化、カルシウム処理を経て鋼水を得る。鋼水の上でスラブ連続鋳造して、スラブの厚さが320mmであり、耐大気腐食性指数Iが6.70である。連続鋳造スラブのスラブ冷却を48h以上とし、スラブを1160℃で均熱、温度均一性が20℃未満であり、352min加熱してから脱リンし、その後、2段階の圧延を行う。再結晶領域の圧延温度が1070℃であり、全体の変形量が53%である。中間スラブの厚さは、完成品の厚さの2.5倍に制御する。未再結晶領域圧延の圧延開始温度が850℃であり、最終製品の厚さ60mmに達し、最終圧延温度が810℃である。
【0019】
最終圧延の後に、弛緩処理を冷却開始温度750℃まで行い、冷却開始温度下の鋼板に対して層流冷却を行い、自己焼戻し温度が480℃であり、その後、室温まで空冷し、それから鋼板に対して焼戻しを行い、焼戻し温度が500℃であり、この温度下で35min保温する。
【0020】
図2に示すように、圧延制御冷却制御+焼戻し後の試料金相組織を観察したところ、微小組織タイプは、「焼戻しベステナイト」組織であり、材料の降伏強度が556MPaであり、引張強度が682MPaであり、完成鋼の降伏比が0.82であり、-40℃Akvが225Jであり、伸び率Aが21%であった。
【0021】
実施例3の成分は、質量百分率で、C:0.09%、Si:0.15%、Mn:1.40%、P:0.0090%、S:0.0020%、Nb:0.035%、Ti:0.018%、V:0.030%、Ni:0.45%、Cu:0.37%、Cr:0.50%、Mo:0.15%、Alt:0.02%であり、残量がFe及び不可避不純物である。原料は、制錬、精錬、合金化、カルシウム処理を経て、鋼水を得る。鋼水の上でスラブ連続鋳造し、スラブの厚さが320mmであり、耐大気腐食性指数Iが6.53である。スラブのスラブ冷却を48h以上とし、スラブを1130℃で均熱、温度均一性は20℃未満であり、320min加熱してから脱リンし、その後、2段階の圧延を行う。再結晶領域の圧延温度が1040℃であり、粗延の総変形量が50%である。中間スラブの厚さは、完成品の厚さ2.0倍に制御する。未再結晶領域圧延の圧延開始温度が800℃であり、最終製品の厚さ80mmに達し、最終圧延温度が790℃である。
【0022】
最終圧延の後に、弛緩処理を冷却開始温度760℃まで行い、冷却開始温度下の鋼板に対して層流冷却を行い、自己焼戻し温度が420℃であり、その後、室温まで空冷し、それから鋼板に対して焼戻しを行い、焼戻し温度が450℃であり、この温度下で40min保温する。
【0023】
圧延制御冷却制御+焼戻し後の試料金相組織を観察したところ、微小組織タイプは、「焼戻しベステナイト」組織であり、組織構造の均一性が良く、材料の降伏強度が545MPaであり、引張強度が673MPaであり、完成鋼の降伏比が0.81であり、-40℃Akvが216Jであり、伸び率Aが22%だった。
【0024】
実施例4の成分は、質量百分率で、C:0.05%、Si:0.20%、Mn:1.45%、P:0.015%、S:0.0012%、Nb:0.050%、Ti:0.010%、V:0.018%、Ni:0.40%、Cu:0.38%、Cr:0.48%、Mo:0.12%、Alt:0.025%であり、残量がFe及び不可避不純物である。原料は、制錬、精錬、合金化、カルシウム処理を経て、鋼水を得る。鋼水の上にスラブ連続鋳造し、スラブの厚さが260mmであり、耐大気腐食性指数Iが6.59である。スラブのスラブ冷却を36h以上とし、スラブを1200℃で均熱し、温度均一性が20℃未満であり、286min加熱してから脱リンし、その後、2段階の圧延を行う。再結晶領域の精延温度が1100℃であり、粗延の総変形量が63%である。中間スラブの厚さは、完成品の厚さの3.0倍に制御する。未再結晶領域圧延の圧延開始温度が870℃であり、最終製品の厚さ32mmに達し、最終圧延温度が810℃である。
【0025】
最終圧延の後に、弛緩処理を冷却開始温度740℃まで行い、冷却開始温度下の鋼板に対して層流冷却を行い、自己焼戻し温度が550℃であり、その後、室温まで空冷し、それから鋼板に対して焼戻しを行い、焼戻し温度が480℃であり、この温度下で30min保温する。
【0026】
圧延制御冷却制御+焼戻し後の試料金相組織を観察したところ、微小組織タイプは、「焼戻しベステナイト」組織であり、材料の降伏強度が571MPaであり、引張強度が713MPaであり、完成鋼の降伏比が0.80であり、-40℃Akvが332Jであり、伸び率Aが21%であった。
【0027】
上記実施例から分かるように、中厚板圧延機で生産したこの500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼は、その成分設計の上に、圧延制御冷却制御+オフライン焼戻しの製造工程を補助とし、耐候性橋梁用鋼の降伏比を効果的に低減し、完成品鋼の降伏比≦0.83を確保することができる。
【0028】
(付記)
(付記1)
500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼であって、質量百分率で、C:0.04~0.09%、Si:0.15~0.30%、Mn:1.40~1.50%、P:0.009~0.015%、S:≦0.002%、Nb:0.020~0.050%、Ti:0.010~0.020%、V:0.010~0.030%、Cu:0.30~0.40%、Ni:0.30~0.45%、Cr:0.45~0.60%、Mo:0.08~0.15%、Alt:0.02~0.04%、残量のFe及び不可避不純物からなることを特徴とする500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼。
【0029】
(付記2)
付記1に記載の500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼であって、金相組織が焼戻しベステナイトであることを特徴とする500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼。
【0030】
(付記3)
付記1に記載の500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼であって、厚さ8~80mmの鋼板の降伏比≦0.83であることを特徴とする500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼。
【0031】
(付記4)
付記3に記載の500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼であって、耐大気腐食性指数I≧6.5であることを特徴とする500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼。
【0032】
(付記5)
付記1に記載の500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼であって、質量百分率で、C:0.06~0.09%、Mn:1.40~1.46%であることを特徴とする500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼。
【0033】
(付記6)
付記1~5のいずれか1つに記載の500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼の製造方法であって、
制錬、連続鋳造、均熱、圧延、弛緩、冷却及びオフライン焼戻しの工程を含み、
均熱工程では、連鋳スラブを中心温度1130~1230℃に加熱し、
圧延工程は、脱リン後の連鋳スラブに対して再結晶領域の圧延と未再結晶領域の圧延を行い、前記再結晶領域の圧延の累積変形量が連鋳スラブの厚さの50%以上であり、
中間スラブの待機温度を800℃~990℃とし、待機温度厚さが2~4倍の完成品の厚さであり、温度に達してから前記未再結晶領域の圧延を行い、最終圧延温度を790~830℃に制御し、
弛緩工程では、冷却開始温度730℃~760℃まで弛緩し、
冷却工程は、前記冷却開始温度から層流冷却を行い、自己焼戻し温度を420~600℃に制御し、その後、室温まで空冷し、
オフライン焼戻し工程では、焼戻し温度が450~550℃であり、この温度で20~40min保温し、保温時間が完成品の厚さに比例し、その後、室温まで自然に冷却することを特徴とする500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼の製造方法。
【0034】
(付記7)
付記6に記載の製造方法であって、厚さ8~80mmの完成品を製造するために用いられる連鋳スラブの厚さが150~320mmであることを特徴とする500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼の製造方法。
【0035】
(付記8)
付記7に記載の製造方法であって、連続鋳造工程では、連鋳スラブのスラブ冷却が24h以上であり、かつ、連鋳スラブの厚さが増すにつれてスラブ冷却の時間が増大し、320mmの連鋳スラブのスラブ冷却時間が48h以上であることを特徴とする500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼の製造方法。
【0036】
(付記9)
付記8に記載の製造方法であって、連鋳スラブの均熱工程における温度均一性が20℃未満であることを特徴とする500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼の製造方法。
【0037】
(付記10)
付記9に記載の製造方法であって、均熱工程では、加熱時間≧連鋳スラブの厚さ*1min/mmであることを特徴とする500Mpaレベルの低降伏比の耐候性橋梁用鋼の製造方法。
図1