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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ヒトIL-15変異体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240902BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20240902BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20240902BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240902BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240902BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240902BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240902BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240902BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240902BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240902BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20240902BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240902BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240902BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240902BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K14/54 ZNA
C07K14/705
C07K16/28
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/20
A61K47/68
A61K48/00
A61K35/12
C12N15/62 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022570565
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 CN2021094167
(87)【国際公開番号】W WO2021233260
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】202010417427.7
(32)【優先日】2020-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110483653.X
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523079059
【氏名又は名称】山▲東▼先声生物制▲薬▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shandong Simcere Biopharmaceutical Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.1,Heilongjiang Road,Yantai Economic and Technological Development Zone,Yantai,Shandong 264006,China
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【弁理士】
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】トン、チン
(72)【発明者】
【氏名】ルー、シーチアン
(72)【発明者】
【氏名】劉 楊
(72)【発明者】
【氏名】曹 卓暁
(72)【発明者】
【氏名】唐 任宏
(72)【発明者】
【氏名】レン、チンション
【審査官】大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/165453(WO,A1)
【文献】特表2019-533443(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107973854(CN,A)
【文献】QUEMENER, Agnes et al.,Journal of Cell Science,2020年03月,Vol. 133, No. 5,pp. 1-13,DOI: 10.1242/jcs.236802
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 1/00- 7/08
C12N 15/00-15/90
C12P 1/00-41/00
A61K 38/00-51/12
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)野生型IL-15のAsp8、His105、Val3またはIle6に対応する1つ以上のアミノ酸残基に変異を含む、IL-15変異ポリペプチド
(2)IL-15変異ポリペプチドに融合した免疫グロブリン分子またはその一部、および
(3)IL-15変異ポリペプチドに融合したIL-15Rα
のドメインを含み、
前記IL-15変異体のアミノ酸配列が、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45または配列番号47に示す通りであり、
前記ポリペプチドが、
(イ)野生型IL-15の増殖/発現より低いヒトCD8 T細胞の増殖/発現を媒介し、および/または
(ロ)野生型IL-15の増殖/発現より低いヒトNK細胞の増殖/発現を媒介する、
活性を有し、
前記野生型IL-15が配列番号1に示すアミノ酸配列を有し、
前記IL-15変異ポリペプチドが、リンカーペプチドを用いて免疫グロブリン分子またはその一部に融合し、もしくは、
前記IL-15変異ポリペプチドが、リンカーペプチドを用いてIL-15Rαに融合するかまたはIL-15Rαと非共有結合する、タンパク質
【請求項2】
前記変異がAsp8Ser(D8S)、Asp8Gly(D8G)、Asp8Glu(D8E)、Asp8Gln(D8Q)、Asp8Arg(D8R)、Asp8Val(D8V)、Asp8Ile(D8I)、Asp8Leu(D8L)、Asp8Thr(D8T)、His105Lys(H105K)、His105Asn(H105N)、Val3Leu(V3L)、Ile6Asp(I6D)、および/またはIle6Pro(I6P)の群のアミノ酸置換から選択され、請求項1に記載のタンパク質
【請求項3】
前記タンパク質の個々のドメインがN末端からC末端に
(1)抗体分子または前記免疫グロブリンFc領域、前記IL-15Rα、および前記IL-15変異ポリペプチド、
(2)抗体分子または前記免疫グロブリンFc領域、前記IL-15変異ポリペプチド、および前記IL-15Rα、
(3)前記IL-15変異ポリペプチド、前記IL-15Rα、および抗体分子または前記免疫グロブリンFc領域、または
(4)前記IL-15Rα、前記IL-15変異ポリペプチド、および抗体分子または前記免疫グロブリンFc領域、
の順に連結してる、請求項に記載のタンパク質。
【請求項4】
(1)免疫グロブリン重鎖、
(2)免疫グロブリン軽鎖、
(3)IL-15Rα、および
(4)L-15変異ポリペプチド
を含請求項1~3のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項5】
(1)免疫グロブリンFc領域、
(2)IL-15Rα、および
(3)L-15変異ポリペプチド、
を含請求項1~4のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項6】
前記免疫グロブリンが抗PD-L1抗体または抗原結合断片から選択され、請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項7】
前記抗PD-L1抗体または前記抗原結合断片が1.8×10-9 M以下の酸解離定数(KD)でヒトプログラム死配位子1(PD-L1)に結合し、前記抗PD-L1抗体が9.4×10-10 M以下の酸解離定数(KD)でカニクイザルプログラム死配位子1(PD-L1)に結合し、
ルPD-L1に結合してもしなくてもよく、または
ウスPD-L1に結合してもしなくてもよ
求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載のタンパク質をコードする単離核酸分子。
【請求項9】
請求項に記載の単離核酸分子を含現ベクターまたは宿主細胞。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項に記載の単離核酸分子、請求項に記載の発現ベクターまたは宿主細胞、および薬学的に許容される担体を含薬組成物。
【請求項11】
個体における疾患の予防および/または治療のための医薬の製造における、請求項1~のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項に記載の単離核酸分子、請求項に記載の発現ベクターまたは宿主細胞、または請求項10に記載の医薬組成物の使用であ、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2021年5月17日に出願されたPCT/CN2021/094167号であり、これは2020年5月18日に出願された中国特許出願第2020104174277号明細書および2021年4月30日に出願された中国特許出願第202110483653号明細書を基礎とする優先権を主張するものであり、全ての目的のためにその開示の全てをここに取り込む。
【0002】
本発明は、ヒトIL-15変異体、それをコードする核酸、融合タンパク質およびIL-15変異体および複合変異を含む医薬組成物、ならびに腫瘍を治療するための医薬組成物の関連する使用に関する。
【背景技術】
【0003】
インターロイキン-15(IL-15)は、1994年にサル腎皮内細胞株CV-1/EBNAの培養上清を検出する際にグラブスタインによって発見され、命名された重要な可溶性サイトカインである。IL-15は、単球/マクロファージ、リンパ球、上皮細胞などの様々な細胞および組織において発現される。
【0004】
IL-15の生物学的活性
IL-15媒介シグナル伝達経路
【0005】
インターロイキン15受容体(IL15R):IL15Rは、造血因子スーパーファミリーに属し、α、β(CD122としても知られる)、およびγ(CD132、共通γ鎖、γcとしても知られる)の3つのサブユニットから構成される。IL2およびIL15はβ鎖受容体を共有する。IL2、IL4、IL7、IL9、IL15およびIL21はγ鎖受容体を共有する。IL2およびIL15に対する受容体はβ鎖およびγc鎖を共有するが、IL2およびIL15はそれぞれの特異的α受容体鎖を有する。ヒトIL15Rαは、I型膜貫通タンパク質である。IL2RαおよびIL15Rαのいずれも保存タンパク質結合モチーフ(sushiドメイン)を有する。IL15はIL15Rα(Kd~10-11M)に対して高親和性を示すが、その結合はシグナルを伝達しない。IL15はIL15βγヘテロ二量体(Kd~10-9M)に対して中程度の親和性を示し、それらの結合はシグナルを伝達することができ、IL15およびIL15αβγヘテロ三量体の親和性はIL15βγヘテロ二量体(Kd~10-9M)の親和性と同様であり、それらの結合はシグナルを伝達することができる。IL2およびIL15の受容体はβ鎖およびγ鎖を共有するので、IL2は、T細胞およびNK細胞の増殖を促進するなど、IL15と同様の多くの生物学的機能を有する。
【0006】
IL15の受容体への結合:IL15Rαは、主にDCおよび単球において発現される。ほとんどの場合、IL15/IL15Rαは、トランス提示形態で受容体に結合する。すなわち、IL-15およびIL-15Raが同じ細胞内で発現された後、IL-15は膜表面に輸送される前に細胞内で高い親和性でIL-15Rαのsushiドメインに結合し、次いで、その反応性細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)の膜表面上のβγヘテロ二量体複合体またはαβγヘテロ三量体複合体に結合する。βおよびγ受容体はそれぞれ下流側のJak1およびJak3を活性化し、STAT-3およびSTAT-5の活性化をもたらし、カスケードを活性化し、特異的遺伝子発現を誘導することができる。IL15が自己分泌型のエフェクター細胞に作用すると、IL15はシス型のIL15受容体と相互作用し、下流のシグナルを活性化してエフェクター機能を生成することができる。
【0007】
IL-15の免疫調節効果
【0008】
IL-15は広範な免疫調節効果を有し、様々な免疫細胞の活性、増殖および機能の調節に関与する。(1)T細胞に対する調節効果:IL-15はT細胞の活性化および増殖を促進し、メモリーCD8T細胞の産生を促進し、また、in vivoでメモリーCD8T細胞の個数を維持するのに重要な役割を果たす。Treg細胞の存在下であっても、IL-15はCD8T細胞の機能および個数を十分に維持することができる。(2)NK細胞に対する調節効果:IL-15はNK細胞の活性化および増殖において重要な役割を果たし、NK細胞のADCC殺傷能力を向上することができる。(3)他の免疫細胞に対する調節効果:IL-15はまた、DCおよびマクロファージの機能的成熟において重要な役割を果たす。IL-15はDCによる共刺激因子およびIFN-γの発現を促進し、DCの活性を向上してCD8T細胞およびNK細胞を活性化することができる。さらに、IL-15は好中球増殖を促進することができる。
【0009】
IL-15の抗腫瘍効果
IL-15は複数の免疫細胞を増殖および活性化するその能力に基づいて抗腫瘍効果を実現し、臨床研究において優れた抗腫瘍効果を実証した。しかし、野生型IL-15の半減期が短く、分子サイズが小さく、腎クリアランスが高いため、1日に数回皮下注射することは極めて不便である。したがって、野生型組換えIL-15単独の使用もまた、腫瘍治療において制限される。T細胞およびNK細胞増殖に対するIL-15の活性を低下させると、その毒性を低下させながらIL-15の半減期を増加させることができることがわかる。さらに、IL-15および腫瘍関連抗原を標的とする抗体から構成される融合タンパク質はIL-15の特異性を増加させ、腫瘍微小環境中のIL-15の濃度を増加させ、IL-15の毒性を減少させることができる。したがって、活性が低下したIL-15変異体を開発することは腫瘍の治療におけるIL-15の用量応答関係を向上し、IL-15の臨床的抗腫瘍適用を拡大する可能性を有し、これは社会的および経済的に非常に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、IL-15変異体、前記変異体をコードする核酸、融合タンパク質および前記変異体を含む医薬組成物、ならびに腫瘍細胞を死滅させるためのそれらの機能、ならびに腫瘍を治療するためのそれらの使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様において、本発明は野生型IL-15のVal3、Ile6、Asp8、またはHis105に対応する1つ以上のアミノ酸残基に変異を含む、IL-15変異ポリペプチドを提供する。
【0012】
第2の態様において、本発明はIL-15変異体を含み、野生型IL-15のVal3、Ile6、Asp8、またはHis105に対応する1つ以上のアミノ酸残基に変異を含むポリペプチドを提供する。
【0013】
一実施形態において、前記IL-15変異ポリペプチドは少なくともVal3、Ile6、Asp8、またはHis105における2、3、または4個のアミノ酸残基に変異を含む。
【0014】
一実施形態において、前記変異は置換、挿入または欠失である。
【0015】
特定の実施形態において、前記変異はVal3Leu(V3L)、Ile6Asp(I6D)、Ile6Pro(I6P)、Asp8Glu(D8E)、Asp8Gln(D8Q)、Asp8Arg(D8R)、Asp8Ser(D8S)、Asp8Val(D8V)、Asp8Gly(D8G)、Asp8Ile(D8I)、Asp8Leu(D8L)、Asp8Thr(D8T)、His105Asn(H105N)、および/またはHis105Lys(H105K)の群のアミノ酸置換から選択される。
【0016】
特定の実施形態において、前記IL-15変異ポリペプチドは(1)Asp8Glu、(2)Asp8Gln、(3)Asp8Arg、(4)Asp8Ser、(5)Asp8Val、(6)Val3Leu、(7)Ile6Asp、(8)His105Lys、(9)His105Asn、(10)Asp8Gly、(11)Asp8Ile、(12)Asp8Leu、(13)Ile6Pro、(14)Asp8Thr、(15)Asp8GluおよびVal3Leu、(16)Asp8GluおよびIle6Asp、(17)Val3LeuおよびIle6Asp、(18)Ile6AspおよびHis105Lys、(19)Asp8SerおよびHis105Lys、(20)Asp8SerおよびHis105Asn、または(21)Val3Leu、Ile6AspおよびHis105Lysの変異または変異の組合せをを含む。
【0017】
特定の実施形態において、前記IL-15変異体はヒト野生型IL-15に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する。
【0018】
特定の実施形態において、前記IL-15変異体のアミノ酸配列は配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45または配列番号47に示す通りである。
【0019】
特定の実施形態において、前記IL-15変異ポリペプチドまたは前記IL-15変異体を含むポリペプチドは(1)ヒトCD8T細胞の増殖を媒介する、(2)ヒトNK細胞の増殖を媒介する、および/または(3)腫瘍増殖を抑制する活性を有する。
【0020】
特定の実施形態において、前記IL-15変異ポリペプチドまたは前記IL-15変異体を含むポリペプチドは野生型IL-15を含むポリペプチドよりも低いCD8T細胞および/またはNK細胞の増殖/拡大を媒介する活性を有する。
【0021】
特定の実施形態において、前記野生型IL-15は配列番号1に示すアミノ酸配列を有する。
【0022】
第3の態様において、本発明は前記IL-15変異ポリペプチドまたは前記IL-15変異体を含むポリペプチドを含み、IL-15変異体に融合した免疫グロブリン分子またはその一部、および/またはIL-15変異体に融合したIL-15Rαをさらに含むタンパク質を提供する。
【0023】
一実施形態において、前記免疫グロブリン分子は抗体または抗原結合断片であり、前記免疫グロブリン分子の一部は免疫グロブリンFc領域である。
【0024】
一実施形態において、前記抗体または前記抗原結合断片は(1)キメラ抗体またはその断片、(2)ヒト化抗体もしくはその断片、または(3)完全ヒト化抗体もしくはその断片から選択される。
【0025】
特定の実施形態において、前記抗体または前記抗原結合断片はF(ab)2、Fab'、Fab、Fv、scFv、二重特異性抗体、ナノボディおよび抗体最小限認識ユニットのうちの1つ以上から選択される。
【0026】
特定の実施形態において、前記免疫グロブリンFc領域はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgEまたはIgDのいずれか1つのFc領域から選択され、好ましくはヒトまたはマウスIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体の定常領域を含む配列であり、好ましくは前記免疫グロブリンFc領域は配列番号73に示すアミノ酸配列を有する。
【0027】
別の実施形態において、前記IL-15変異体はリンカーペプチドを用いてもしくは用いずに免疫グロブリン分子またはその一部に融合する、もしくは、前記IL-15変異体はリンカーペプチドを用いてもしくは用いずにIL-15Rαに融合し、好ましくはリンカーペプチドを使用し、好ましくは配列番号65、配列番号67、配列番号69、または配列番号71に示すリンカーペプチドを使用する。
【0028】
別の実施形態において、前記IL-15変異体はIL-15Rαに融合され、それから免疫グロブリン分子又はその一部にリンカーペプチドを用いてもしくは用いずに融合され、好ましくは、リンカーペプチドを使用し、好ましくは、配列番号65、配列番号69、または配列番号71に示すリンカーペプチドを使用する。
【0029】
特定の実施形態において、個々のドメインはN末端からC末端に
(1)前記免疫グロブリンタンパク質分子またはその一部、前記IL-15Rα、および前記IL-15変異体、
(2)前記免疫グロブリン分子またはその一部、前記IL-15変異体、および前記IL-15Rα、
(3)前記IL-15変異体、前記IL-15Rα、および前記免疫グロブリン分子またはその一部、
(4)前記IL-15Rα、前記IL-15変異体、および前記免疫グロブリン分子またはその一部、
(5)前記IL-15変異体および前記免疫グロブリン分子またはその一部、
(6)前記免疫グロブリン分子またはその一部、および前記IL-15Rα、
(7)前記IL-15Rαおよび前記免疫グロブリン分子またはその一部、
(8)前記IL-15変異体および前記IL-15Rα、または
(9)前記IL-15Rαおよび前記IL-15変異体
の順に連結する。
【0030】
別の実施形態において、前記IL-15Rαまたは前記IL-15変異体が前記免疫グロブリン分子に融合する際、前記IL-15Rαまたは前記IL-15変異体は免疫グロブリン分子の重鎖の可変領域のN末端または免疫グロブリンFc領域のC末端に融合し、前記IL-15Rαまたは前記IL-15変異体が前記免疫グロブリンFc領域に融合する際、前記IL-15Rαまたは前記IL-15変異体は免疫グロブリンFc領域のN末端またはC末端に融合する。
【0031】
第4の態様において、本発明は
(1)免疫グロブリン重鎖、
(2)免疫グロブリン軽鎖、
(3)IL-15Rα、および
(4)第1または第2の態様に記載のIL-15変異ポリペプチド
を含むタンパク質または抗体融合構築物/複合体を提供する。
【0032】
一実施形態において、前記IL-15Rαはリンカーペプチドを用いてもしくは用いずに前記免疫グロブリン重鎖の可変領域のN末端または免疫グロブリンFc領域のC末端に融合する。
【0033】
一実施形態において、前記IL-15変異ポリペプチドは前記IL-15Rαに非共有結合的に連結する、もしくは、前記IL-15変異体はリンカーペプチドを用いてもしくは用いずに前記IL-15Rαの他端に融合する。
【0034】
特定の実施形態において、前記タンパク質は(1)~(4)から構成される単量体を含むホモ二量体である。
【0035】
第5の態様において、本発明は
(1)免疫グロブリンFc領域、
(2)IL-15Rα、および
(3)第1または第2の態様に記載のIL-15変異ポリペプチド
を含むタンパク質またはFc融合構築物を提供する。
【0036】
一実施形態において、前記IL-15Rαはリンカーペプチドを用いてもしくは用いずに前記IL-15変異ポリペプチドのN末端またはC末端に融合し、次いで、リンカーペプチドを用いてもしくは用いずに免疫グロブリンFc領域のN末端またはC末端に融合する。
【0037】
特定の実施形態において、タンパク質は(1)~(3)から構成される単量体を含むホモ二量体である。
【0038】
別の好ましい実施形態において、免疫グロブリンは抗PD-L1抗体から選択され、好ましくは、前記抗PD-L1抗体はテセントリク、KN-035、または794-h1-71である。
【0039】
特定の実施形態において、前記抗PD-L1抗体は重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域はそれぞれ配列番号99および配列番号100に示す配列を有するか、または配列番号99および配列番号100に示す配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の同一性を有する配列を有する、または前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域がそれぞれ配列番号97および配列番号98に示す配列を有するか、または配列番号97および配列番号98に示す配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の同一性を有する配列を有する。
【0040】
別の好ましい実施形態において、前記IL-15RαはIL-15Rα-sushiから選択され、好ましくは前記IL-15Rα-sushiは配列番号49、配列番号51、配列番号53、または配列番号55に示すアミノ酸配列を有する。
【0041】
第6の態様において、本発明はPD-L1に特異的に結合することができ、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、好ましくは、前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域がそれぞれ配列番号99および配列番号100に示す配列、または配列番号99および配列番号100に示す配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の同一性を有する配列を有する抗体または抗原結合断片を提供する。
【0042】
特定の実施形態において、前記抗体または前記抗原結合断片は1.8×10-9M以下の解離定数(KD)でヒトプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)に結合し、前記抗体または前記抗原結合断片は9.4×10-10M以下の解離定数(KD)でカニクイザルプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)に結合し、前記抗体または前記抗原結合断片は、任意に、サルPD-L1に結合してもしなくてもよく、前記抗体または前記抗原結合断片は、任意に、マウスPD-L1に結合してもしなくてもよい。
【0043】
特定の実施形態において、前記抗PD-L1抗体はPD-L1またはそのエピトープに競合的に結合し、
(1)組換えPD-L1タンパク質およびPD-L1を発現する細胞に特異的に結合し、
(2)PD-1タンパク質へのPD-L1の結合を遮断し、
(3)細胞表面に発現したPD-L1へのPD-1の結合を阻害し、
(4)T細胞活性を増強し、または/および
(5)腫瘍増殖を阻害する
活性を有する。
【0044】
好ましい態様において、前記抗PD-L1抗体はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgEまたはIgDのいずれか1つに由来する定常領域を含み、好ましくは、ヒトまたはマウスIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体の定常領域を含む塩基配列である。
【0045】
別の好ましい実施形態において、前記抗PD-L1抗体はF(ab)、Fab'、Fab、Fv、scFv、および二重特異性抗体のうちの1つ以上から選択される。
【0046】
第7の態様では、本発明は前記第1~第6の態様のいずれか1つに記載のポリペプチド、タンパク質、抗原または抗原結合断片をコードする単離核酸分子を提供する。
【0047】
第8の態様において、本発明は第7の態様の単離核酸分子を含む発現ベクターを提供する。
【0048】
第9の態様において、本発明は第7の態様の単離核酸分子または第8の態様の発現ベクターを含み、好ましくは、真核細胞または原核細胞であり、より好ましくは、哺乳動物、酵母、昆虫、大腸菌および/または枯草菌に由来し、より好ましくは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞から選択される、宿主細胞を提供する。
【0049】
第10の態様において、本発明は第9の態様の宿主細胞を適切な条件下で培養する工程と、ポリペプチドまたはタンパク質を単離する工程とを含む、ポリペプチドまたはタンパク質を調製する方法を提供する。
【0050】
第11の態様において、本発明は前記第1~第6の態様のいずれか1つに記載のポリペプチド、タンパク質、抗原または抗原結合断片、前記第7の態様の単離核酸分子、前記第8の態様の発現ベクター、前記第9の態様の宿主細胞、または前記第10の態様の方法によって調製された生成物、および薬学的に許容される担体を含み、好ましくは、追加抗腫瘍剤をさらに含む、医薬組成物を提供する。
【0051】
第12の態様において、本発明は個体における疾患の予防および/または治療のための医薬の製造における、前記第1~第6の態様のいずれか1つのポリペプチド、タンパク質、抗原、または抗原結合断片、前記第7の態様の単離核酸分子、前記第8の態様の発現ベクター、第9の態様の宿主細胞、第10の態様の方法によって調製された生成物、または第11の態様の医薬組成物の使用を提供し、前記疾患は好ましくは腫瘍である。
【0052】
第13の態様において、本発明はそれを必要とする患者に、前記第1~第6の態様のいずれか1つのポリペプチド、タンパク質、抗原または抗原結合断片、前記第7の態様の単離核酸分子、前記第8の態様の発現ベクター、前記第9の態様の宿主細胞、前記第10の態様の方法によって調製された生成物、または前記第11の態様の医薬組成物を投与する工程含む個体における疾患を予防および/または治療する方法を提供し、前記疾患は好ましくは腫瘍である。
【0053】
用語と定義
特に明記しない限り、本明細書で使用される用語は、当業者によって一般に理解される意味を有する。本明細書で明示的に定義される用語について、そのような用語の意味は、本明細書で定義される通りであるものとする。
【0054】
本明細書において、「IL-15」、「IL15」または「インターロイキン-15(IL-15)」はT細胞、B細胞およびNK細胞を活性化し、これらの細胞の増殖および生存を媒介する多面的サイトカインを指す。さらに、IL-15は、CD8記憶T細胞を活性化、維持および拡大することができる。本発明による「IL-15」または「IL-15ペプチド断片」または「IL-15ポリペプチド」は、任意のIL-15(インターロイキン15)またはその変異体、例えばヒトIL-15または非ヒト哺乳動物IL-15または非哺乳動物IL-15であり得る。非ヒト哺乳動物は、例えば、ブタ、ウサギ、サル、オランウータン、マウスなどであり、非哺乳動物は、例えば、ニワトリなどである。好ましくは、ヒトインターロイキン15成熟分子であり、データベースUniProtKB、Login ID P40933、49-162aaを参照されたい。
【0055】
本明細書において、「IL-15野生型」または「野生型IL-15」は、天然源または非ヒト哺乳動物IL-15または非哺乳動物IL-15由来のヒトIL-15を指し、それはまた、当技術分野で一般的に使用されているIL-15ポリペプチドを指し得る。
【0056】
本明細書において、「IL-15変異体」はIL-15受容体に対する親和性が増加もしくは減少しているか、またはT細胞もしくはNK細胞増殖における活性が増加もしくは減少している、および特定の細胞株を刺激する際にサイトカイン放出する変異体分子を指し、前記変異体分子は1つ以上のアミノ酸の置換、付加、または欠失によって得られる。
【0057】
本明細書において、「IL-15Rα」は、ヒトIL-15Rαまたは非ヒト哺乳動物IL-15Rαまたは非哺乳動物IL-15Rαなどの任意の種のIL-15Rαまたはその機能的断片を指し得る。非ヒト哺乳動物は、例えば、ブタ、ウサギ、サル、オランウータン、マウスなどであり、非哺乳動物は、例えば、ニワトリなどである。好ましくは、ヒトIL-15Rαであり、好ましくはIL-15RαECDと呼ばれるヒトインターロイキン15受容体α細胞外ドメイン断片であり、好ましくはIL-15Rα-sushiであり、詳細については表1を参照されたい。
【0058】
本明細書において、「IL-15Rα変異体」はIL15などのリガンド分子に結合する能力を有するIL-15Rα上の1つ以上のアミノ酸欠失、挿入または置換変異によって形成される機能的変異体を指し、好ましくはヒトIL15Rα分子であり、より好ましくは短縮型のヒトIL-15Rα細胞外ドメイン断片、すなわち、細胞外ドメイン断片のC末端からの1つ以上のアミノ酸欠失変異によって得られるヒトインターロイキン15受容体α活性を有する分子であり、好ましくは65~120個のアミノ酸が保持された欠失変異型であり、より好ましくはIL-15Rα-sushiなどの65~102個のアミノ酸が保持された短縮型の欠失変異であり、より好ましくはIL-15Rα-sushiであり、好ましくはIL-15Rα-sushiであり、詳細については表3(表3-1~表3-3)を参照されたい。
【0059】
本明細書において、「免疫グロブリンFc領域」は免疫グロブリン鎖の定常領域、特に免疫グロブリン重鎖の定常領域のカルボキシル末端またはその一部を指し、これは抗原結合活性を有さず、抗体分子がエフェクター分子および細胞と相互作用する部位である。本発明の「免疫グロブリンFc領域」は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物に由来する任意のFcまたはその変異体であり得る。例えば、免疫グロブリンFc領域は、免疫グロブリンヒンジ領域と組み合わせて重鎖CH1、CH2、CH3、CH4の2つ以上のドメインを含み得る。Fcは、異なる種、好ましくはヒト免疫グロブリンに由来し得る。重鎖定常領域のアミノ酸配列によれば、免疫グロブリンは、主に5つのタイプの免疫グロブリン(IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM)を含む異なるクラスに分けることができる。これらのいくつかは、IgG-1、IgG-2、IgG-3、IgG-4、IgA-1およびIgA-2などのサブクラス(アイソタイプ)にさらに分けることができる。「Fc領域」は、好ましくは少なくとも1つの免疫グロブリンヒンジ領域、ならびにIgGのCH2およびCH3ドメインを含む。より好ましくは、IgG1のCH2ドメイン、CH3ドメインおよび免疫グロブリンヒンジ領域を含み、ヒンジ領域の開始アミノ酸位置を変更することができる。
【0060】
本明細書において、「Fc変異体」という用語はFc上の適切な部位での1つ以上のアミノ酸置換、挿入または欠失変異によって引き起こされるFc構造または機能の変化を指す。「Fc変異体間の相互作用」は変異によって設計されたFc変異体間で形成される空隙充填効果、静電誘導、水素結合、疎水性相互作用などを指す。Fc変異体間の相互作用は、安定なヘテロ二量体タンパク質の形成に寄与する。好ましい変異誘発設計は、「Knob-into-Hole」形態のものである。
【0061】
Fc変異体の変異設計技術は二重特異性抗体またはヘテロ二量体Fc融合タンパク質を調製するために、当技術分野で広く使用されている。代表例はCater et al.(Protein Engineering vol. 9 no. 7 pp. 617-621, 1996)によって提案された「Knob-into-Hole」形態、静電誘導(Electrostatic Steering)(米国特許出願公開第20100286374号明細書)を用いてAmgenの技術者によって形成されたFc含有ヘテロ二量体形態、Jonathan HDavis et al.(Protein Engineering、Design&Selection pp.1-8、2010)によって提案されIgG/IgA鎖交換によって形成されたヘテロ二量体形態(SEED bodies)、Genmab’s DuoBody(Science、2007.317(5844))プラットフォーム技術によって形成されたバイスペシフィック分子、Xencor社の技術者によって構造計算およびFcアミノ酸変異を組み込み、変化作用様式を組み込むことによって形成されたヘテロ二量体タンパク質形態(mAbs 3:6,546-557;November/December 2011)、Alphamab社の電荷回線網(中国特許出願第2011104591007号明細書)に基づくFc形質転換方法によって得られたヘテロ二量体タンパク質形態、ヘテロ二量体機能性タンパク質の遺伝子工学を実現するためのFcアミノ酸変化または機能的形質転換に基づく他の方法が挙げられる。本発明のFc変異体断片におけるKnob/Hole構造は、2つのFc断片のそれぞれの変異を指し、変異後に「Knob-into-Hole」の形態で組み合わせることができるCater et al.の「Knob-into-Hole」モデルを使用してFc領域における部位変異工学を実施するすることが好ましく、その結果、第1のFc変異体および第2のFc変異体を「Knob-into-Hole」の形態で組み合わせて、ヘテロ二量体を形成することができる。特定の免疫グロブリンクラスおよびサブクラスからの特定の免疫グロブリンFc領域の選択は、当業者の範囲内である。ヒト抗体IgG1、IgG2、IgG3、IgG4のFc領域が好ましく、ヒト抗体IgG1のFc領域がより好ましい。第1のFc変異体または第2のFc変異体の一方を無作為に選択してノブ変異を施し、他方にホール変異を施す。
【0062】
本明細書において、「抗体(Ab)」は標的抗原に特異的に結合するか、または抗体のポリクローナル、モノクローナル、遺伝子操作および他の修飾形態(キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト化抗体、異種結合抗体(例えば、二重特異性、三重特異性および四重特異性抗体、ダイアボディ、トリボディおよびテトラボディ、ならびに抗体接合体を含むが、これらに限定されない)および抗体の抗原結合断片(例えば、Fab’、F(ab’)2、Fab、Fv、rIgGおよびscFv断片を含む)を含むが、これらに限定されない)を含む免疫反応性を有する免疫グロブリン分子を指す。さらに、別段の定義がない限り、「モノクローナル抗体」(mAb)は標的タンパク質に特異的に結合することができるインタクトな抗体分子ならびに不完全な抗体断片(例えば、インタクトな抗体のFc断片を欠く(動物循環からより迅速に洗浄される)ためにFc媒介性エフェクター機能を欠くFabおよびF(ab’)2断片)を含むことが意図される(Wahl et al.、J.Nucl.Med.24:316、1983を参照されたい。その含有量は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0063】
本明細書において、「ヒト化抗体」は、そのアミノ酸配列がヒト抗体の配列との相同性を増加させるように改変されている、遺伝子操作された非ヒト抗体を指す。典型的にはヒト化抗体のCDR領域の全部または一部が非ヒト抗体(ドナー抗体)に由来し、非CDR領域(例えば、可変FRおよび/または定常領域)の全部または一部はヒト免疫グロブリン(受容体抗体)に由来する。ヒト化抗体は一般に、抗原特異性、親和性、反応性、免疫細胞活性を増加させる能力、免疫応答を増強する能力などを含むが、これらに限定されない、ドナー抗体の期待される特性を保持するか、または部分的に保持する。
【0064】
「抗体接合体」は、直接またはリンカーを介してのいずれかでの抗体分子の別の分子への化学結合によって形成されるカプレット/接合体を指す。例えば、薬物分子が別の分子である抗体-薬物接合体(ADC)が記載されている。
【0065】
「モノクローナル抗体」は単一クローン(任意の真核生物、原核生物、またはファージクローンを含む)に由来する抗体を指すが、抗体の産生方法は限定されない。
【0066】
本明細書において、「融合タンパク質」は2つ以上の遺伝子のコード領域を遺伝子組換え法、化学的方法または他の適切な方法によって連結し、同じ調節配列の制御下で組換え遺伝子を発現させることによって得られるタンパク質生成物を指す。本発明の融合タンパク質において、2つ以上の遺伝子のコード領域は、ペプチドリンカーまたはリンカーペプチドをコードする配列によって、1つまたはいくつかの位置で融合され得る。ペプチドリンカーまたはリンカーペプチドもまた、本発明の融合タンパク質を構築するために使用され得る。本発明の「融合タンパク質」は抗体/Fc融合タンパク質構築物/複合体、または非共有結合手段によって形成される抗体/Fc融合タンパク質構築物/複合体の成分をさらに含み、例えば、本発明に記載される融合タンパク質は、以下の構造として示すことができる:
(1)2つの単量体を含むホモ二量体であるIL-15融合タンパク質。前記単量体は抗体重鎖、抗体軽鎖、IL-15およびIL-15Rαsushiを含み、例えば、前記抗体重鎖FcはIL-15Rαsushiに融合し、前記抗体軽鎖およびIL-15-WT(野生型)またはIL-15変異体と共発現して、その結果、IL-15およびIL-15Rαsushiは非共有結合を形成する
(2)2つの単量体を含むホモ二量体であるIL-15融合タンパク質。前記単量体は抗体重鎖、抗体軽鎖、IL-15およびIL-15Rαsushiを含み、例えば、前記抗体重鎖FcはIL-15RαsushiおよびIL-15-WT(野生型)またはIL-15変異体とリンカーによって融合および連続して発現し、前記抗体軽鎖と共発現する
(3)2つの単量体を含むホモ二量体であるIL-15融合タンパク質。前記単量体はFc、IL-15、およびIL-15Rαsushiを含み、例えば、IL-15-WTまたはIL-15変異体はリンカーによってIL15Rαsushiに連結し、次いでIL15RαsushiはリンカーによってFcに連結する、または
(4)2つの単量体を含むホモ二量体であるIL-15融合タンパク質。前記単量体はFc、IL-15およびIL-15Rαsushiを含み、例えば、IL15RαsushiはリンカーによってIL-15-WTまたはIL-15変異体に連結し、次いで、IL-15はリンカーによってFcに連結する。
【0067】
本明細書において、「ペプチドリンカー/リンカーペプチド/リンカー」はタンパク質の正しいフォールディングおよび安定性を確実にするために、IL-15を別のタンパク質分子またはタンパク質断片と連結するために本発明で使用されるペプチドを指す。前記別の分子としてはIL-15Rα、Fc、Fc変異体、抗体などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の「リンカー」は好ましくは(GGGGS)であり、ここで、nは0、1、2、3、4、5またはそれ以上であり得、好ましくはnは2~4であり、または好ましくはSGGSGGGGSGGGSGGGGSLQである。リンカー配列が短すぎる場合は2つのタンパク質の高次構造のフォールディングに影響を及ぼして互いに干渉する可能性があり、リンカー配列が長すぎる場合はリンカー配列自体が新しい抗原であるため、免疫原性の問題を伴うと考えられる。
【0068】
本明細書において、「ヘテロ二量体タンパク質」は、2つの異なる単量体タンパク質を組み合わせることによって形成されるタンパク質を指す。本発明において、2つの異なる単量体タンパク質はそれぞれ、Fc断片またはFc変異体断片を含有し、Fc断片またはFc変異体断片の相互作用によってヘテロ二量体タンパク質を形成する。
【0069】
本明細書において、「ホモ二量体タンパク質」は、2つの同一の単量体タンパク質を組み合わせることによって形成されるタンパク質を指す。本発明において、2つの同一の単量体タンパク質はそれぞれ、Fc断片またはFc変異体断片を含有し、Fc断片またはFc変異体断片の相互作用によってホモ二量体タンパク質を形成する。
【0070】
本発明におけるヘテロ二量体タンパク質またはホモ二量体タンパク質を構成する「単量体タンパク質」は、融合タンパク質であっても非融合タンパク質であってもよい。
【0071】
本明細書において、「PD-L1」はCD279(分化クラスター279)としても知られるプログラム細胞死リガンド-1を指し、これは重要な免疫抑制分子である。PD-L1は、好ましくはヒトPD-L1である。
【0072】
本明細書において、「抗プログラム細胞死リガンド-1抗体」、「プログラム細胞死リガンド-1抗体」、「抗PD-L1抗体」、「PD-L1抗体」、「抗PD-L1抗体部分」および/または「抗PD-L1抗体断片」などは、PD-L1に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子の少なくとも一部(例えば、重鎖または軽鎖またはリガンド結合部分の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、重鎖または軽鎖可変領域、重鎖または軽鎖定常領域、フレームワーク領域またはその任意の部分を含むがこれに限定されない)を含む任意のタンパク質またはペプチド含有分子を指す。前記PD-L1抗体はまた、抗体のCDRに構造および溶媒接近性が類似するBC、DEおよびFG構造ループを含む抗体様タンパク質足場(第10フィブロネクチンIII型ドメイン(10Fn3)など)を含む。10Fn3ドメインの三次構造はIgGの重鎖可変領域の三次構造に類似しており、当業者は、10Fn3のBC、DEおよびFGループの残基を、前記PD-L1モノクローナル抗体由来のCDR-H1、CDR-H2またはCDR-H3領域の残基と置き換えることによって、例えば、前記PD-L1モノクローナル抗体のCDRをフィブロネクチン足場に移植することができる。
【0073】
本明細書において、「共発現」は、細胞内での複数の遺伝子の共同発現およびそれらの生成物の同時出現を指す。これらの遺伝子は共存し、制御下で個々にまたは共同して発現され得る。本発明において、2つの遺伝子は、好ましくは1つの真核細胞において共発現される。共発現によって得られる遺伝子発現生成物は複合体の効率的かつ単純な形成に有利であり、本発明では、ヘテロ二量体タンパク質またはホモ二量体タンパク質の形成に有利である。
【0074】
本明細書において、「配列同一性パーセント(%)」は配列をアラインメントし、必要であれば隙間を導入して最大の配列同一性パーセントを達成した後の、参照配列のアミノ酸(または核酸)残基と同一である候補配列のアミノ酸(または核酸)残基のパーセンテージを指す(例えば、最適なアラインメントのために候補配列および参照配列の一方または両方に隙間を導入することができ、比較目的のために非相同配列を無視することができる)。配列同一性パーセントを決定する目的でのアラインメントは当業者に周知の様々な方法で、例えば、BLAST、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを行うために必要な任意のアルゴリズムを含むアラインメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。例えば、候補配列と比較するためにアラインメントされた参照配列は、候補配列が候補配列の全長または候補配列の連続するアミノ酸(または核酸)残基の選択された部分に対して50%~100%の配列同一性を示すことを示してもよい。比較目的のためにアラインメトされた候補配列の長さは、例えば、参照配列の長さの少なくとも30%(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%)であり得る。候補配列中の位置が参照配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基によって占められる場合、分子は、その位置で同一である。
【0075】
本明細書において、「特異的結合」は、例えば、抗体またはその抗原結合断片によって特異的に認識されるタンパク質および他の生体分子の不均一な集団における抗原の存在を判定する結合反応を指す。抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、100nM未満のKDで抗原に結合する。例えば、抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は最大100nM(例えば、1pM~100nM)のKDで抗原に結合する。特定の抗原またはそのエピトープに対して特異的結合を示さない抗体またはその抗原結合断片はその特定の抗原またはそのエピトープに対して100nMを超える(例えば、500nM、1μM、100μM、500μMまたは1mMを超える)KDを示す。様々なイムノアッセイ法を用いて、特異的タンパク質または炭水化物に対する特異的免疫応答を示す抗体を選択することができる。例えば、固相ELISAイムノアッセイは、タンパク質または炭水化物に対する特異的免疫応答を示す抗体を選択するために日常的に使用される。特定の免疫反応性を判定するために使用できるイムノアッセイの方法と条件について説明しているHarlow & Lane、Antibodies、ALabortory Manual、Cold Spring Harbor Press、NewYork(1988)and Harlow & Lane、Using Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、NewYork(1999)を参照されたい。
【0076】
本明細書において、「ベクター」はDNAベクター(例えば、プラスミド)、RNAベクター、ウイルス、または他の適切なレプリコン(例えば、ウイルスベクター)などの核酸ベクターを含む。外来タンパク質をコードするポリヌクレオチドを原核細胞または真核細胞に送達するために、様々なベクターが開発されている。本発明の発現ベクターは、例えば、タンパク質を発現するための、および/または哺乳動物細胞のゲノムにこれらのポリヌクレオチド配列を組み込むための、ポリヌクレオチド配列およびさらなる配列要素を含有する。本発明の抗体および抗体断片を発現させるために使用することができる特定のベクターは、遺伝子転写を指令する調節配列(プロモーター領域およびエンハンサー領域など)を含有するプラスミドを含む。抗体および抗体断片を発現するための他の有用なベクターは、これらの遺伝子の翻訳速度を増強するか、または遺伝子転写によって産生されるmRNAの安定性もしくは核出力を向上するポリヌクレオチド配列を含む。これらの配列要素には、例えば、5’および3’非翻訳領域、内部リボソーム侵入部位(IRES)、および発現ベクターによって運ばれる遺伝子の有効な転写を指令するためのポリアデニル化シグナル部位が含まれる。本発明の発現ベクターはまた、そのようなベクターを含有する細胞を選択するためのマーカーをコードするポリヌクレオチドを含有してもよい。適切なマーカーの例としては、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシンまたはノウルセオトリシンなどの抗生物質に対する耐性をコードする遺伝子が挙げられる。
【0077】
本明細書において、「対象」および「患者」は本明細書に記載されるように、癌または感染性疾患などの特定の疾患または状態の治療を受ける生物を指す。対象および患者の例としては、細胞増殖性障害、例えば癌または感染性疾患などの疾患または状態の治療を受けている、例えばヒト、霊長類、ブタ、ヤギ、ウサギ、ハムスター、ネコ、イヌ、モルモット、ウシ科のメンバー(例えば家畜牛、バイソン、バッファロー、エルク、ヤクなど)、ヒツジおよびウマなどの哺乳動物が挙げられる。
【0078】
本明細書において、「治療」は外科的または治療的処置を指し、その目的は細胞増殖性障害(例えば、癌または感染性疾患)の進行などの、治療の対象における望ましくない生理学的変化または病変の進行を予防、軽減(低減)することである。有益なまたは所望の臨床転帰には検出可能であるかまたは検出不可能であるかにかかわらず症状の軽減、疾患重症度の低減、疾患状態の安定化(すなわち、悪化なし)、疾患進行の遅延または寛解、疾患状態の改善または緩和、および、緩解(部分的であるか完全であるかにかかわらず)が含まれるが、これに限定されない。治療される対象は、疾患または条件に既に罹患している対象、および疾患または条件に罹患しやすい対象、または疾患または疾患を予防しようとする対象を含む。軽減、低減、緩和、寛解、緩解などの用語を指す場合、その意味には、消失、消失、および非発生も含まれる。
【0079】
本明細書において、「免疫障害」は例えば、病的炎症、炎症性障害および自己免疫障害または疾患を含む。「免疫障害」はまた、感染、持続感染、ならびに増殖性障害、例えば、癌、腫瘍、および血管新生を指す。「癌性障害」は例えば、癌、癌細胞、腫瘍、血管新生、および前癌状態、例えば異形成を含む。
【0080】
本明細書において、「医薬組成物」は、本明細書に記載される化合物の1つ以上、またはその生理学的/薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグと、他の化学成分、ならびに生理学的/薬学的に許容される担体および賦形剤などの他の成分とを含む混合物を指す。医薬組成物の目的は生物への投与を容易にし、活性成分の吸収を促進してその生物学的活性を発揮することである。
【0081】
本明細書において、「サイズ排除クロマトグラフィー、SEC」は、試験されるcvn成分の分子サイズに従って分離するのための液体クロマトグラフィー技術を指す。クロマトグラフィーカラム充填剤の表面には、異なるサイズの細孔が分布している。サンプルがクロマトグラフィーカラムに入った後、サンプル中の異なる成分が、それらの分子サイズに従って対応する細孔サイズの細孔に入る。全ての空隙サイズより大きい分子は充填剤粒子に入ることができず、短い保持時間でクロマトグラフィープロセス中に保持されず、全ての空隙サイズより小さい分子はクロマトグラフィーカラムにおいてより長い保持時間で充填剤の表面上の全ての空隙サイズの細孔に自由に入ることができ、その結果、より長い保持時間が得られ、他の分子は分子サイズに従って順番に溶出される。
【0082】
「任意の」または「任意に」はその後に記載される事象または環境が起こり得るが、必ずしも起こらないことを意味し、その記載は事象または環境が起こるまたは起こらない場合を含む。例えば、「任意に1~3個の抗体重鎖可変領域を含む」は、抗体重鎖可変領域が存在し得るが存在する必要はないことを意味し、抗体重鎖可変領域が存在する場合、それらのうちの1、2または3個が存在し得る。
【0083】
本発明に記載の組換えDNAを用いて宿主細胞を形質転換する工程は、当業者に周知の従来技術を用いて実施することができる。得られた形質転換体を従来の方法によって培養して、本発明の遺伝子によってコードされるポリペプチドを発現することができる。使用する宿主細胞にしたがって、培養に使用される培地は、様々な従来の培地から選択することができる。宿主細胞は、宿主細胞の増殖に適した条件下で培養される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
本発明の前述および他の態様は、以下の詳細な説明および本発明の図面によって明確に示される。本明細書の図面は本発明のいくつかの好ましい実施形態を例示することを意図しているが、本発明は開示された特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。
【0085】
図1図1は、ポジティブコントロールがテセントリクである、ヒト化PD-L1抗体によるPD-L1およびPD-1の結合の遮断の結果を示す。
図2図2は、ポジティブコントロールがアベルマブである、FACSによって測定された細胞レベルでのPD-L1に対するヒト化PD-L1抗体の結合能力を示す。
図3図3は、ポジティブコントロールがアベルマブである、ジャーカット-PD-1/CHO-PD-L1-NFATシステムを用いて試験したPD-L1/PD-1を遮断するヒト化PD-L1抗体の能力を示す。
図4図4は、ネガティブコントロールが抗Hel抗体であり、ポジティブコントロールがアベルマブである、ヒト化抗PD-L1抗体により促進された混合リンパ球反応におけるIFN-γ分泌の結果を示す。
図5図5は、IL-15融合タンパク質の2つの構造を示す。 A:IL-15野生型または変異体とIL-15Rαsushiを共発現し、非共有結合によって構築する。 B:IL-15野生型または変異体とIL-15Rαsushiを融合し、リンカーによってタンデムに構築して発現させる。 C:IL-15野生型または変異体をリンカーによってIL-15Rαsushiに連結し、次いで、IL-15RαsushiとFcを融合し、リンカーによってタンデムに構築して発現させる。 D:IL-15RαsushiをリンカーによってIL-15野生型または変異体に連結し、次いで、IL-15野生型または変異体とFcを融合し、リンカーによってタンデムに構築して発現させる。
図6図6A~6Dは、IL15変異体がMo7e細胞増殖を促進することを示す。融合タンパク質の構造は図5Aに示す通りであり、テセントリクはIL-15Rαsushiに融合され、IL15変異体はIL-15Rαsushiにリンカーによって連結せずに非共有結合的に連結される。
図7図7A~7Nは、IL-15変異体がCD8T細胞増殖を誘導することを示す。 図7A:融合タンパク質の構造は図5Aに示す通りであり、テセントリクはIL-15Rαsushiに融合され、IL15変異体はIL-15Rαsushiにリンカー連結せずに非共有結合的に連結される。 図7B~7Gおよび7M~7N:融合タンパク質の構造は図5Bに示す通りであり、自己開発PD-L1モノクローナル抗体をIL-15RαsushiとIL15変異体に融合し、IL15変異体とIL-15Rαsushiとをリンカーにより連結してタンデム発現させる。薬物0は、タンパク質を反応系に添加しないネガティブコントロールを表す。 図7H~7K:融合タンパク質の構造は図5Dに示す通りであり、IL-15RαsushiをリンカーによってIL-15野生型または変異体に連結し、次いで、IL-15野生型または変異体とFcを融合し、リンカーによってタンデムに構築して発現させる。 図7L:融合タンパク質は図5Cに示す通りであり、IL-15野生型または変異体は、はじめにリンカーによってIL-15Rαsushiに連結し、次いで、IL-15RαsushiとFcを融合し、リンカーによってタンデムに構築して発現させる。
図8図8A~8Mは、IL-15変異体がNK細胞増殖を誘導することを示す。 図8A:融合タンパク質の構造は図5Aに示す通りであり、テセントリクをIL-15Rαsushiに融合し、IL15変異体をリンカー連結せずにIL-15Rαsushiに非共有結合的に連結する。 図8B~8Fおよび8L~8M:融合タンパク質の構造は図5Bに示す通りであり、自己開発PD-L1モノクローナル抗体をIL-15RαsushiとIL15変異体に融合し、IL15変異体をリンカーによりIL-15Rαsushiと連結してタンデム発現させる。薬物0は、タンパク質を反応系に添加しないネガティブコントロールを表す。 図8G~8J:融合タンパク質の構造は図5Dに示す通りであり、IL-15RαsushiをリンカーによってIL-15野生型または変異体に連結し、次いで、IL-15野生型または変異体とFcを融合し、リンカーによってタンデムに構築して発現させる。 図8K:融合タンパク質は図5Cに示す通りであり、IL-15野生型または変異体をリンカーによってIL-15Rαsushiに連結し、次いで、IL-15RαsushiとFcを融合し、リンカーによってタンデムに構築して発現させる。
図9図9A~9Cは、hPBMC-A375マウスにおけるin vivo薬学的有効性を示す。融合タンパク質は図5Bに示す通りである。
図10図10A~10CはhPBMC-A375マウスにおけるin vivo薬学的有効性を示す。融合タンパク質は図5Cまたは図5Dに示す通りである。 図10D:投与後のhPBMC-A375マウスにおける体重の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0086】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明し、本発明の利点および特徴を以下の説明により明らかにする。実施例において特定の条件が示されていない場合、それは、従来の条件または製造業者によって推奨される条件に従って実施される。製造業者の指示なしに使用される試薬または器具は、市場から購入することができる従来の製品である。
【0087】
本発明の実施例は、例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の技術的解決策の詳細および形態は本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく修正または置き換えることができ、これらの修正および置き換えはすべて、本発明の保護範囲内に入ることを当業者は理解されたい。
【0088】
実施例1 抗体のヒト化
第1に、古典的な「CDR移植」を用いることによって抗体をヒト化し、すなわち、最も高い配列相同性を有するヒト抗体を選択して抗体フレームワーク領域(FR)を提供し、Kabat命名法に基づく標的抗体の抗原結合断片相補性決定領域(CDR)を前者に移植してヒト化抗体を形成した。第2に、抗体の活性および親和性をより良好に維持するために、抗体構造に基づくモデリング分析にMOEソフトウェアを使用した1)。VH-VLインターフェースに位置し、CDRと近いまたは抗体のフレームワーク領域のCDRと直接相互作用するアミノ酸残基を、復帰突然変異のために選択したが、そのようなアミノ酸残基は、CDRの立体構造を維持するためにより重要であった2)。免疫原性を考慮して、タンパク質に埋め込まれたアミノ酸を、復帰突然変異のために可能な限り選択した3)。抗体の安定性および発現レベルを考慮すると、分子エネルギー還元変異が好ましかった。マウスPD-L1抗体と同等またはより良好な親和性、抗体特性、および活性機能を有するヒト化抗体を、異なる変異を含むヒト化抗体とヒトPD-L1および表面上にPD-L1を発現する細胞との結合親和性を検出することによってスクリーニングした。
【0089】
これらのうち、マウスPD-L1抗体(PDL1-794)のヒト化後の好ましい候補抗体分子(794-h1-71)の重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列情報を以下の表1に示す。
【0090】
[表1]マウスおよびヒト化抗PD-L1抗体の重鎖および軽鎖可変領域の特異配列情報
【0091】
実施例2 ヒト化抗体の発現および精製
2.1 ヒト化抗体の発現
【0092】
トランスフェクションの前日に、ExpiCHO-S細胞(Thermo fisher社、A29127)を、新鮮なExpiCHO発現培地(Invitrogen社、A29100-01)に、2.5×10~4×10細胞/mLの密度で播種し、振盪機上で一晩培養した。トランスフェクション当日に、一晩培養したExpiCHO-S細胞懸濁液を計数したところ、細胞生存率は95%を超え、細胞密度は、7×10~10×10生細胞/mLであった。所望の細胞懸濁液を、ExpiCHO発現培地(Invitrogen社、A29100-01)で6×10細胞/mLの密度に希釈し、振盪機上に置いてさらに使用した。調製したヒト化抗体発現用プラスミドを培地で希釈し、遠心管で穏やかに振盪してよく混合し、OptiPRO(商標)SFM-DNA希釈剤(Invitrogen社、12309-019)を加え、遠心管を穏やかに振盪してよく混合した後、室温で1~5分間静置した。上記プラスミド複合体を、トランスフェクトする細胞懸濁液にゆっくりと滴下し、滴下中にフラスコを振盪した。トランスフェクション後、細胞を振盪機上で一晩培養した。トランスフェクション後1日目の細胞に、細胞体積0.6%のExpiFectamine(商標)CHO Enhancer(Invitrogen社、A29129)および細胞体積16%のExpiCHO(商標)Feed(Invitrogen社、A29129)を添加し、添加中にフラスコを穏やかに振盪し、細胞を振盪機に移して4日間培養した。トランスフェクション後5日目に、トランスフェクトした細胞に細胞体積16%のExpiCHO(商標)Feed(Invitrogen社、A29129)を添加し、添加中にフラスコを穏やかに振盪した。トランスフェクション後12日目に、9,000gの培養培地を採取し、10分間遠心分離した後、上清を回収した。
【0093】
2.2 ヒト化抗体の精製
【0094】
実施例2.1で回収した細胞培養物の上清を高速で遠心分離し、0.45μm+0.22μmのフィルター膜を通過させた。精製の第一段階は、アフィニティークロマトグラフィーを用いて行った。クロマトグラフィー媒体はFcと相互作用するプロテインA充填剤Mbaselect Sure(GE社、17543803)とし、平衡化緩衝液はPBS(2.5g/L NaHPO・12HO、0.408g/L NaHPO、8.76g/L NaCl、pH7.2)とした。カラムを4倍カラム容量のPBSでバランシングした後、細胞上清を充填し、カラムと合わせ、カラム上のサンプルの保持時間が5分以上になるように流速を制御した。サンプルを装填した後、A280UV吸光度がベースラインに低下するまで、カラムをPBS(pH7.2)で洗浄した。次いで、カラムを20mMのPB+1MのNaCl(pH6.0)のカラム容量で2回洗浄した。次いで、A280UV吸光度および導電率がベースラインに達するまで、カラムをPBS(pH7.2)で洗浄した。最後に、カラムを20mMクエン酸(pH3.4)の溶出緩衝液で洗浄し、溶出ピークをA280UV吸収ピークに基づいて収集した。回収した溶出サンプルを1MのTris-HCl(pH9.0)で中和した。
【0095】
実施例3 KDアッセイにより分析したヒトおよびカニクイザルPD-L1組換えタンパク質への抗体の結合
ヒトおよびカニクイザルPD-L1-Hisタンパク質に対するPD-L1抗体の結合親和性を決定するために、Biacore T200(GE Healthcare社)を使用した。抗ヒトIgG Fc(Genway社、CatGWB-20A705)をCM5チップ(GE Healthcare社、CatBR-1005-30)上に25℃で固定化した。抗ヒトIgG Fcを、pH5.0のacetate(GE Healthcare社、BR-1003-51)で20μg/mLに希釈した。固定化にはアミン系固定化法を用いた。あるいは、市販のプロテインA(GE Healthcare社、カタログ番号:29127556)チップを検出に使用することができる。抗原に対する抗体の親和性を、25℃でのマルチサイクルカイネティクスを用いて判定した。各サイクルにおいて、試験される抗体をまず固定CM5チップ上に捕捉し、次いで組換えヒトPD-L1-Hisタンパク質(Novoprotein社、カタログ番号:315)およびカニクイザルPD-L1-Hisタンパク質(Sino Biological社、カタログ番号:90251-C08H)を注入し、最後にpH1.5のグリシン(HUSHI社、カタログ番号:62011516)を再生のために使用した。移動相は、流速30μL/分および結合時間は300秒にて、HBS-EP+緩衝液(GE Healthcare社、カタログ番号:BR-1006-69)とした。再生のための流量および時間は、30μL/分および30秒とした。実験データは、Biacore T200 Evaluation Software(バージョン3.0)を用いて、1:1結合モデルで解析し、抗体および抗原の平衡解離定数(KD)をフィッティングし、会合速度定数(ka)および解離速度定数(kd)を決定した。
【0096】
以下の表2に示すように、結果から試験したPD-L1抗体がヒトPD-L1組換えタンパク質およびカニクイザルPD-L1組換えタンパク質との結合に対してnMレベルまたはより高い親和性を示すことが分かる。
【0097】
[表2] Biacoreによるヒト化PD-L1抗体の結合親和性(KD)の結果
【0098】
実施例4 IC50アッセイにより分析された抗体によるPD-L1とPD-1との間の相互作用の遮断
PD-L1タンパク質のPD-1タンパク質への結合を遮断する抗PD-L1抗体のIC50を、競合ELISAによって判定した。ヒトPD-L1組換えタンパク質(Sino Biological社、カタログ番号:10084-H05H)を炭酸緩衝液で希釈し、最終濃度1μg/mLで96ウェルELISAプレートに添加した。3%BSAを含むPBSにてブロッキングし、勾配希釈した抗PD-L1抗体(40nM~0.02nM)およびヒトPD-1-His組換えタンパク質(Sino Biological社、カタログ番号:10377-H08H)と共インキュベートした後、HRP標識抗Hisタグ抗体(MBL、カタログ番号:D291-7)およびTMB(Thermo社、カタログ番号:34029)を添加して発色し、1M硫酸で終止した後にOD値(二波長450nm-630nm)を読み取った。試験した抗体の競合的結合曲線は抗体濃度をOD値に一致させることによって描くことができ、IC50値を計算することができた。図1は、ヒトPD-L1組換えタンパク質に対する抗PD-L1抗体の競合結合曲線を示す。結果は、試験した抗体(794-h1-71)がヒトPD-L1タンパク質とヒトPD-1タンパク質との間の相互作用を0.8488nMのIC50で効果的に遮断することができ、ポジティブコントロールであるテセントリク(Genetech社、ロット:H172)のIC50は0.8486nMである。
【0099】
実施例5 FACSアッセイによって検出された細胞表面上のPD-L1に結合するPD-L1抗体のEC50
勾配濃度(抗体濃度:10000ng/mL~0.1ng/mL)で検出される抗体を、細胞表面上にPD-L1が高発現するCHO-PD-L1細胞(Nanjing Yongshan Biotechnology社、10細胞/ウェル)と共に、30分間、4℃でインキュベートした。インキュベーション後、希釈した(1:250)抗ヒトIgG PE蛍光抗体(eBioscience、カタログ番号:12-4998-8)を上記培養物に添加し、4℃で30分間インキュベートした。産生された蛍光抗体は、検出したい抗体のFcセグメントと特異的に結合した。細胞表面上に高度に発現されたPD-L1タンパク質に結合する検出される抗体の能力を、FACSによってPE蛍光強度のレベルを検出することによって分析した。図2の結果は794-h1-71抗体のEC50が38.44ng/mLであることを示し、これは、この実験におけるポジティブコントロールであるアベルマブ(EC50は約72ng/mLである)のものと類似する。アッセイは、細胞表面上のPD-L1標的に対する794-h1-71抗体の用量依存的結合能を定量的に確認する。平均蛍光強度倍率(MFI倍率)=実験群のMFI値/薬剤(抗体)を添加しないコントロール群のMFI値。
【0100】
実施例6 PD-1/PD-L1-NFATレポーター遺伝子により分析された抗PD-L1抗体によるPD-1:PD-L1の結合およびシグナル伝達の阻害
PD-1/PD-L1タンパク質相互作用およびそのシグナル伝達経路に対するPD-L1抗体の拮抗作用を、PD-1で安定的にトランスフェクトされたジャーカット細胞株(GenScript社、カタログ番号:00612)およびPD-L1で安定にトランスフェクトされたCHO細胞株(GenScript、カタログ番号:M00613)を用いて比較した。阻害シグナル伝達経路が阻害されると、NFAT制御発光レポーター遺伝子の発現が増強され、それに伴って発光シグナル値が増加した。PD-L1に対する抗体のブロッキング効果は、発光読み取り値の強度(相対発光量、RLU)によって反映された。
【0101】
PD-L1を安定にトランスフェクトされたCHO細胞株を、40,000細胞/ウェル(100μl/ウェル)の密度で96ウェルホワイトボトムプレートに播種し、インキュベーター内で一晩培養した。翌日、プレート内の培養培地を廃棄し、試験されるPD-1(16,000細胞/ウェル)およびPD-L1抗体(勾配希釈、各用量を3回)で安定してトランスフェクトされた細胞株を、100μl/ウェルのインキュベーション容量および6時間のインキュベーション時間で、共インキュベーションのために添加した。インキュベーションが完了したら、等しい体積(100μl)の発光検出試薬をプレートに加え、値を読み取った。検出値に従い、各抗体のEC50値を得るために、グラフパッドを用いて4パラメーター分析を行うことにより回帰曲線を作成した。図3は、抗体794-h1-71(166.2ng/mL)のEC50がポジティブコントロールであるアベルマブ(184.3ng/mL)のEC50と類似していたことを示す。このアッセイは抗体(794-h1-71)が細胞表面上のPD-1:PD-L1相互作用に対して用量依存的阻害能を示し、それによってジャーカット細胞におけるレポーター遺伝子の活性が用量依存的に増強することを定量的に確認する。
【0102】
実施例7 ELISA法により検出された混合リンパ球反応においてT細胞により分泌されたIFN-γ
PD-L1モノクローナル抗体によって増強されたT細胞活性を、混合リンパ球反応(MLR)によって判定した。CD4単球を健常ヒトドナー1の末梢血単核細胞(PBMC)から単離し、組換えヒト顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、Peprotech社、カタログ番号:300-03)および組換えヒトインターロイキン4(rh IL-4、Peprotech社、カタログ番号:200-04)を用いてインビトロで樹状細胞(DC)への分化を誘導した。培養6日目にLPS(Sigma、カタログ番号:L4516)を添加してDCを刺激して成熟させた。7日目に、ドナー1由来のDCを、健常ドナー2(DC:CD4が1:10)、試験される抗体、ネガティブコントロール抗体(抗Hel、Biointron社が合成)およびポジティブコントロール抗体、およびアベルマブ(抗体濃度:7nM~0.28nM)のPBMCから濃縮したCD4T細胞と4日間共培養した。4日後、細胞培養上清を回収し、上清中のIFN-γの含有量をELISAにより検出した。図4に示すように、抗Helモノクローナル抗体(ネガティブコントロール群)と比較して、794-h1-71およびポジティブコントロール抗体であるアベルマブはMLR試験においてCD4T細胞のIFN-γ分泌能を有意に高め、PD-L1抗体の薬物濃度の低下に伴い、IFN-γ分泌を増加させる活性も低下する。このことから、抗体(794-h1-71)は用量依存的にT細胞機能を増強することが示唆された(T検定、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001)。
【0103】
実施例8 IL-15融合タンパク質の構築
MOEソフトウェアを用いて、ヒトIL-15とそれに対応する受容体βγ鎖(それぞれ、D8、V3、I6、およびH105)との相互作用のための重要なアミノ酸部位をシミュレートした。MOEソフトウェアのシミュレーションは、以下のIL-15変異体配列を設計し、合成した。アミノ酸配列の詳細を表3に示し、コード核酸配列の詳細を表4(表4-1~表4-11)に示す。
【0104】
IL-15融合タンパク質(抗体/Fc融合構築物/複合体)を4つの様式で構築した:
(1)図5Aに示す構造:IL-15融合タンパク質は2つの単量体を含有するホモ二量体であり、前単量体は抗体重鎖、抗体軽鎖、IL-15、およびIL-15Rαsushiを含み、IL-15Rαsushiは抗体重鎖のFc末端に融合し、モノクローナル抗体およびIL-15-WT(野生型)またはIL-15変異体の軽鎖と共発現して、IL-15をIL-15Rαsushiに非共有結合する。
(2)図5Bに示す構造:IL-15融合タンパク質は2つの単量体を含有するホモ二量体であり、前記単量体は抗体重鎖、抗体軽鎖、IL-15、およびIL-15Rαsushiを含み、抗体重鎖のFc末端、IL-15Rαsushi、およびIL-15-WTまたはIL-15変異体は、リンカーによって連続的にタンデムで融合して発現し、抗体軽鎖と共発現する。
(3)図5C(V5として定義される)に示す構造:前記IL-15融合タンパク質は2つの単量体を含有するホモ二量体であり、前記単量体はFc、IL-15、およびIL-15Rαsushiを含み、前記IL-15-WTまたはIL-15変異体はリンカーによってIL15-Rαsushiに連結し、次いで、前記IL15-RαsushiはリンカーによってFcに連結する。
(4)図5D(V9として定義される)に示す構造:前記IL-15融合タンパク質は2つの単量体を含有するホモ二量体であり、前記単量体はFc、IL-15、およびIL-15Rαsushiを含み、前記IL15-RαsushiはリンカーによってIL-15-WTまたはIL-15変異体に連結し、次いで、前記IL-15はリンカーによってFcに連結する。
【0105】
PD-L1抗体およびIL-15融合タンパク質の命名規則は以下の通りである。「抗体頭字語-IL-15(野生型/変異体)-融合タンパク質構築様式」。例えば、「T-IL15-xx-1」の場合、「T」はテセントリクを示し、「IL15-xx」はIL15-WTまたはIL15変異体を示し、「1」は図5Aに示す構造様式を示す。例えば、「794IL15-xx-2」の場合、「794」は794-h1-71モノクローナル抗体を示し、「IL15-xx」はIL15-WTまたはIL15変異体を示し、「2」は図5Bに示す構造様式を示す。
【0106】
様々なIL-15融合タンパク質の設計を表5(表5-1~表5-2)および表6に示す。上記4つの構築様式に従って、融合タンパク質をコードする核酸配列を、それぞれpTT5プラスミド中に構築した。
【0107】
[表3-1] IL-15融合タンパク質のアミノ酸配列情報
【0108】
[表3-2]
【0109】
[表3-3]
【0110】
[表3-4]
【0111】
[表3-5]
【0112】
注:IL-15変異体融合タンパク質の命名規則は以下の通りである。例えば、「T-IL15-xx-1」の場合、「T」はテセントリクを示し、「IL15-xx」はIL15-WTまたはIL15変異体を示し、「1」は図5Aに示す構造様式を示す。例えば、「794-IL15-xx-2」の場合、「794」は794-h1-71mAbを示し、「IL15-xx」はIL15-WTまたはIL15変異体を示し、「2」は図5Bに示す構造様式を示す。
【0113】
[表4-1] IL-15融合タンパク質をコードする核酸の配列情報
【0114】
[表4-2]
【0115】
[表4-3]
【0116】
[表4-4]
【0117】
[表4-5]
【0118】
[表4-6]
【0119】
[表4-7]
【0120】
[表4-8]
【0121】
[表4-9]
【0122】
[表4-10]
【0123】
[表4-11]
【0124】
[表5-1] PD-L1-IL-15融合タンパク質の分子組成
【0125】
[表5-2]
【0126】
注:IL-15変異体融合タンパク質の命名規則は以下の通りである。例えば、「T-IL15-xx-1」の場合、「T」はテセントリクを示し、「IL15-xx」はIL15-WTまたはIL15変異体を示し、「1」は図5Aに示す構造様式を示す。例えば、「794-IL15-xx-2」の場合、「794」は794-h1-71mAbを示し、「IL15-xx」はIL15-WTまたはIL15変異体を示し、「2」は図5Bに示す構造様式を示す。
【0127】
[表6] IL-15-Fc融合タンパク質の分子組成
【0128】
実施例9 IL-15融合タンパク質の発現
ExpiCHO発現系を用いて、一過性タンパク質発現を行った。宿主細胞、ExpiCHO-S(カタログ番号:A29127)、ExpiCHOTM Expression Medium(カタログ番号:A2910001)を適切な密度に希釈し、振盪機(100rpm、37℃、8%のCO)上に置き、トランスフェクションの準備をした。融合タンパク質をコードする核酸配列を運ぶベクターをOptiPRO(商標)SFM(カタログ番号:12309019)培地に0.5~1.0μg/mLの最終ベクター濃度となるように添加した。DNAを含むOptiPRO(商標)SFM培地に適量のExpiFectamine(商標)CHO試薬(カタログ番号:A29129)を加えてDNA-ExpiFectamine(商標)CHO試薬複合体を形成し、これを室温で1~5分間静置した後、トランスフェクションする細胞懸濁液にゆっくりと滴下した。トランスフェクション後1日目に、一定量のExpiFectamine(商標)CHO Enhancer(カタログ番号:A29129)およびExpiCHO(商標)Feed(カタログ番号:A29129)を懸濁液に添加し、それを32℃に冷却して培養を継続した。トランスフェクション後4~6日目に、一定量のExpiCHO(商標)Feed(カタログ番号:A29129)をさらに添加した。トランスフェクション後10~12日目に、上清を5000gで30分間の遠心分離によって回収した。
【0129】
実施例10 IL-15融合タンパク質の精製
変異体融合タンパク質を磁気ビーズによって精製した。適切な量の磁性ビーズ懸濁液(GenScript、カタログ番号:NO.L00695)を発酵上清に添加し、回転ミキサー中で2時間インキュベートして、磁性ビーズに結合したIL-15融合タンパク質を確保した。上清を廃棄した後、ビーズをPBSで3回洗浄した。IL-15融合タンパク質をpH3.0のクエン酸塩で溶出し、1MのTris-HClで中和した。IL-15融合タンパク質の濃度を、NanoDrop Oneによって測定した。
【0130】
実施例11 サイズ排除クロマトグラフィーによって測定されるIL-15融合タンパク質の純度
本発明のIL-15変異体融合タンパク質の純度は、TSKgel G3000SWXLカラム(TOSOH社、0008541)およびプレカラムTskgel guard columnSWXL(TOSOH社、0008543)を使用するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定した。移動相(50mMのPB、300mMのNaCl、pH6.8)を使用して、1mL/分の流速でクロマトグラフィーカラムを平衡化した。紫外線検出波長は280nmであった。結果を表7に示す。
【0131】
[表7] サイズ排除クロマトグラフィーによって測定されるIL-15融合タンパク質の純度
【0132】
実施例12 IL-15変異体融合タンパク質により誘導されたMo7e細胞の増殖アッセイ
Mo7eは、細胞増殖活性に対するIL-15の効果を検討するために使用することができるヒト巨核球性白血病細胞株(Cobioer社、CBP60791)である。IL-15変異体融合タンパク質を、1640~10%のFBS(RPMI1640、Gibco社、72400047;FBS、Gibco社、10099141)で勾配濃度(最終濃度:100000pM~1.28pM、5倍希釈)に希釈した。Mo7e細胞を1640~10%のFBSで10細胞/mLに希釈した。変異培地50μlおよびMo7e細胞懸濁液50μlを96ウェルU底プレートに加え、混合し、37℃、5%のCOでインキュベートした。72時間後、培養プレートを取り出し、100μlのCell Titer Glo発光細胞生存検出試薬(Promega社、G7571)を加えて、細胞増殖能に比例する蛍光強度を検出した。
【0133】
結果を図6A~6Dに示す。T-IL15-7-1、T-IL15-8-1およびT-IL15-9-1変異体はT-IL15-WT-1と比較して有意に活性が低く、T-IL15-7-1のEC50は5735pMで、T-IL15-WT-1のEC50は133.3pMである(図6A)。T-IL15-10-1、T-IL15-11-1およびT-IL15-26-1変異体はT-IL15-WT-1と比較して有意に活性が低く、T-IL15-10-1のEC50は28076pM、T-IL15-26-1のEC50は290.9pM、およびT-IL15-WT-1のEC50は143.3pMである(図6B)。T-IL15-29-1およびT-IL15-42-1変異体はT-IL15-WT-1と比較して活性の低く、それぞれEC50が285.2pMおよび194.5pMであり、T-IL15-43-1変異体はT-IL15-WT-1と比較して活性が高く、T-IL15-43-1変異体のEC50は103.2pMでT-IL15-WT-1のEC50は150.7pMである(図6C)。T-IL15-com1-1およびT-IL15-com2-1を組み合わせた変異体はT-IL15-WT-1と比較して活性が低く、テセントリクコントロールがMo7e細胞増殖に対して効果を有さず、すなわち、抗PD-L1抗体はMo7e細胞に対して増殖誘導活性を有さず(図6D)、細胞増殖活性に対する効果はIL-15によって生じる。
【0134】
実施例13 IL15変異体融合タンパク質によって誘導されるCD8T細胞増殖
ヒトPBMC(Allcells社、ロット:1911150123)におけるCD8T細胞の増殖を刺激することに対するIL-15変異体融合タンパク質の効果を検出するために、Ki67を増殖マーカーとして本実施例において使用し、ヒトPBMCをIL-15変異体融合タンパク質で3日間異なる濃度で刺激した後のCD8T細胞の増殖割合を検出した。まず、ヒトPBMCを、10%のFBS(Gibco社、カタログ番号:10099141)および1%のペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco社、カタログ番号:15140122)を含有するRPMI1640培地(Gibco社、カタログ番号:72400047)に懸濁した。細胞密度を2×10細胞/mLに調整した後、細胞懸濁液を96ウェルU底プレート(Corning社、カタログ番号:3799)に100μl/ウェルで添加した。次いで、IL-15変異体融合タンパク質を500nMから4倍勾配で希釈し、計11の勾配とし、その後、各濃度の100μl/ウェルのサンプルを、ヒトPBMCでコーティングされた96ウェルU底プレートに添加し、均等に混合し、インキュベーター中で5%のCOおよび37℃で3日間培養した。培養細胞を、LIVE/Dead Fixable Violet Dead Cell Stain Kit(Invitrogen社、カタログ番号:L34964)およびCD3-AF700(BD社、カタログ番号:557943)、CD8-FITC(BD社、カタログ番号:555366)、およびAPC-Ki67(Biolegend社、カタログ番号:350514)抗体で染色し、次いでフローサイトメトリーを用いて、異なる濃度のIL-15変異融合タンパク質で刺激したCD3+CD8T細胞中のKi67+細胞の割合を検出した。図7A~7Nは、ヒトPBMCを勾配希釈したT-IL15-7-1、T-IL15-8-1、T-IL15-9-1、T-IL15-10-1、T-IL15-11-1、T-IL15-26-1、T-IL15-29-1、T-IL15-42-1、T-IL15-43-1、794-IL15-7-2、794-IL15-com1-2、794-IL15-com3-2、794-IL15-com4-2、794-IL15-com5-2、794-IL15-com6-2、794-IL15-com7-2、V9-IL15-61、V9-IL15-62、V9-IL15-63、V9-IL15-com6、794-IL15-65-2、794-IL15-64-2、V5-IL15-WTおよびP22339で3日間刺激した後のCD8T細胞の増殖割合、ならびに、各変異体によって刺激された増殖のEC50値を示す。これらの中で、T-IL15-8-1、T-IL15-9-1およびT-IL15-11-1は、プラットフォームに到達しないCD8T細胞の増殖能力に対する効果を有意に低下させるため、曲線をフィットしてEC50を計算することができず、794-IL15-com4-2、794-IL15-com5-2、794-IL15-com6-2、794-IL15-com7-2、V9-IL15-61、V9-IL15-62、V9-IL15-63、V9-IL15-com6および794-IL15-65-2は、プラットフォームに到達しないため、EC50値が正確にフィットしないが、結果はこれらの変異体の組合せが、794-IL15-WT-2またはP22339と比較してCD8T細胞の増殖能力に対する効果を有意に低下させることを示す。T-IL15-WT-1および794-IL15-WT-2は野生型IL-15コントロールであり、P22339は変異体IL-15コントロールであり、794-h1-71モノクローナル抗体は抗PD-L1抗体コントロールであり、薬物0はタンパク質を添加しないネガティブコントロールである。野生型IL-15コントロールと比較して、IL15変異体は、CD8T細胞の増殖に対する効果が弱い。794-h1-71mAbコントロール群はCD8T細胞増殖に対して効果を有さず、すなわち、抗PD-L1抗体はCD8T細胞に対して増殖誘導活性を有さず(図7B)、細胞増殖活性に対する効果はIL-15によって生じる。
【0135】
実施例14 IL15変異融合タンパク質によって誘導されるNK細胞増殖
ヒトPBMC(Allcells社、ロット:1911150123)におけるNK細胞の増殖を刺激することに対するIL-15変異体融合タンパク質の効果を検出するために、Ki67を、増殖マーカーとして本実施例において使用し、ヒトPBMCをIL-15変異体融合タンパク質で3日間異なる濃度で刺激した後のNK細胞の増殖割合を検出した。まず、ヒトPBMCを、10%のFBS(Gibco社、カタログ番号:10099141)および1%のペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco社、カタログ番号:15140122)を含有するRPMI1640培地(Gibco社、カタログ番号:72400047)に懸濁した。細胞密度を2×10細胞/mLに調整した後、細胞懸濁液を96ウェルU底プレート(Corning社、カタログ番号:3799)に100μl/ウェルで添加した。次に、IL-15変異体融合タンパク質を500nMから4倍の勾配で希釈し、計11の勾配とし、その後、各濃度の100μl/ウェルのサンプルを、ヒトPBMCをコーティングした96ウェルU底プレートに添加し、均等に混合し、インキュベーター中で5%のCOおよび37℃で3日間培養した。培養細胞を、LIVE/DEAD Fixable Violet Dead Cell Stain Kit(Invitrogen社、カタログ番号:L34964)およびCD3-AF700(BD社、カタログ番号:557943)、CD56-PE(BD社、カタログ番号:555516)、およびAPC-Ki67(Biolegend社、カタログ番号:350514)抗体で染色し、次いでInvitrogen Attune NxTフローサイトメーターを使用して、異なる濃度のIL-15変異融合タンパク質で刺激したNK細胞中のKi67+細胞の割合を検出した。図8A~8Mは、ヒトPBMCを勾配希釈したT-IL15-7-1、T-IL15-8-1、T-IL15-9-1、T-IL15-10-1、T-IL15-11-1、T-IL15-26-1、T-IL15-29-1、T-IL15-42-1、T-IL15-43-1、794-IL15-7-2、794-IL15-com1-2、794-IL15-com4-2、794-IL15-com5-2、794-IL15-com6-2、794-IL15-com7-2、V9-IL15-61、V9-IL15-62、V9-IL15-63、V9-IL15-com6、794-IL15-65-2、794-IL15-64-2、V5-IL15-WTおよびP22339で3日間刺激した後のNK細胞(CD3CD56)の増殖割合、ならびに、各変異体によって刺激された増殖のEC50値を示す。これらの中で、T-IL15-8-1、T-IL15-9-1、T-IL15-11-1、V9-IL15-com6、V9-IL15-62およびV9-IL15-63は、プラットフォームに到達しないNK細胞の増殖能に対する効果を有意に低下させるため、EC50値が正確にフィットしないが、これらの変異体の組合せはT-IL15-WT-1またはP22339コントロール群と比較して、NK細胞の増殖活性に対する効果を有意に低下させることを示す。T-IL15-WT-1および794-IL15-WT-2は野生型IL-15コントロールであり、P22339は変異体IL-15コントロールであり、794-h1-71モノクローナル抗体は抗PD-L1抗体コントロールであり、薬物0はタンパク質を添加しないネガティブコントロールである。野生型IL-15コントロールと比較して、IL-15変異体は、NK細胞の増殖に対する効果が弱い。794-h1-71mAbコントロール群はNK細胞増殖に対して効果を有さず、すなわち、抗PD-L1抗体はNK細胞に対する増殖誘導活性を有さず(図8B)、細胞増殖活性に対する効果はIL-15によって生じる。
【0136】
実施例15 マウスにおけるヒト化抗PD-L1抗体-Il15二機能性M分子/融合タンパク質のin vivo薬学的有効性
ヒト黒色腫A375細胞(Beina Bio社;BNCC100266)を5×10細胞/100μLでNPGマウスの右背中に皮下接種した。A375を接種した翌日、凍結保存したPBMC(ALLCELL社、図 PB005F-C)を蘇生し、NPGマウス(5~6週齢、雌;Beijing Vitalstar Biotechnology社から購入)に尾静脈を介して5×10細胞/200μlの用量で注射した。PBMC接種の6日後、40μlの血液を採取してhCD45+細胞の割合を検出した。腫瘍が約80mmに成長した後、体重、hCD45+細胞の割合、および腫瘍体積が大きすぎるか小さすぎるマウスは除外した。腫瘍体積に応じて、マウスをPBS群、テセントリク群(10mg/kg)、794-IL15-WT-2群(1mg/kg)および794-IL15-com6-2群(4mg/kg)を含む4群に無作為に分け、各郡8匹、合計32匹のマウスを用いた。794-IL15-WT-2群(1mg/kg)および794-IL15-com6-2群(4mg/kg)において合計1用量の薬剤を週1回腹腔内投与し、PBS群およびテセントリク群(10mg/kg)において合計5用量の薬剤を週2回投与した。腫瘍体積を週3回測定し、データを記録した。腫瘍体積(長径×短径/2)および腫瘍増殖抑制率(TGITV(%)、TGITV(%)=[1-(Ti-T0)/(Vi-V0)]×100%を計算した。Tiは処置i日目の処置群の平均腫瘍体積を示し、T0は処置0日目の処置群の平均腫瘍体積を示し、Viは処置i日目の溶媒コントロール群の平均腫瘍体積を示し、V0は処置0日目の溶媒コントロール群の平均腫瘍体積を示す。群投与14日目、薬剤投与群はいずれも腫瘍体積に対して、統計学的に有意な差が認められる有意な阻害効果を有し(P<0.05)、794-IL15-WT-2群および794-IL15-com6-2群はテセントリク群と比較して腫瘍体積に対して有意な阻害効果を有した(P<0.05)。図9A~9Cおよび表8を参照のこと。
【0137】
[表8] 免疫再構成NPGマウスにおけるA375腫瘍体積に対する試験薬剤の効果
【0138】
注:a:平均±標準誤差、b:群投与14日目の薬剤投与群と媒体コントロール群(PBS)間の腫瘍体積の統計比較、二元配置分散解析、P<0.05、P<0.01、P<0.001、P<0.0001、c:群投与14日目の薬剤投与群とテセントリク(陽性薬剤)群間の腫瘍体積の統計比較、二元配置分散解析、P<0.05、P<0.01、P<0.001、P<0.0001。
【0139】
上記の結果は、794-IL15-WT-2および794-IL15-com6-2(ヒト化抗PD-L1抗体-IL15二機能性分子/融合タンパク質)の両方が皮下異種移植A375腫瘍の増殖に対して有意な阻害効果を有することを示し(P<0.0001)、794-IL15-WT-2および794-IL15-com6-2群はテセントリク群と比較して、腫瘍体積に対して有意差が認められる強い阻害効果を有する(P<0.05)。
【0140】
実施例16 マウスにおけるIL15-Fc融合タンパク質のin vivo薬学的有効性
ヒト黒色腫A375細胞(Beina Bio社;BNCC100266)を5×10細胞/100μLでNPGマウスの右背中に皮下接種した。A375を接種した翌日、凍結保存したPBMC(ALLCELL社、図PB005F-C)を蘇生し、NPGマウス(5~6週齢、雌;Beijing Vitalstar Biotechnology社から購入)に尾静脈を介して5×10細胞/200μlの用量で注射した。PBMC接種の6日後、40μlの血液を採取してhCD45+細胞の割合を検出した。腫瘍が約69mmに成長した後、体重、hCD45+細胞の割合、および腫瘍体積が大きすぎるか小さすぎるマウスは除外した。腫瘍体積に応じて、マウスをPBS群、ALT803群(0.2mg/kg)、V9-IL15-61群(1mg/kg)、V9-IL15-61群(5mg/kg)、V9-IL15-com6群(1mg/kg)、V9-IL15-com6群(5mg/kg)およびV5-IL15-WT群(2mg/kg)を含む7群に無作為に分け、各群8匹の、合計56匹のマウスを用いた。薬剤は、群に応じて合計3回、週1回腹腔内投与された。腫瘍体積を週3回測定し、データを記録した。腫瘍体積(長径×短い径/2)および腫瘍増殖抑制率(TGITV(%)、TGITV(%)=[1-(Ti-T0)/(Vi-V0)]×100%を計算した。Tiは処置i日目の処置群の平均腫瘍体積を示し、T0は処置0日目の処置群の平均腫瘍体積を示し、Viは処置i日目の溶媒コントロール群の平均腫瘍体積を示し、V0は処置0日目の溶媒コントロール群の平均腫瘍体積を示す。群投与21日目、薬剤投与群はいずれも、PBSコントロール群と比較して、腫瘍体積に対して統計的に有意な差が認められる有意な阻害効果を有し(P<0.05)、ALT803(ポジティブ薬剤)群およびV9-IL15-com6群は腫瘍体積に対して同様の阻害効果を有した(P>0.05)。図10A~-10Cおよび表9を参照のこと。
【0141】
[表9] 免疫再構成NPGマウスにおけるA375腫瘍体積に対する試験薬剤の効果
【0142】
注:a:平均±標準誤差、b:群投与14日目の薬物投与群と溶媒コントロール群(PBS)との間の腫瘍体積の統計比較、二元配置分散分析、P<0.05、P<0.01、P<0.001、P<0.0001、c:21日目の腫瘍体積を、外れ値を同定することによって分析し、V9-IL15com56mpk群における1つのデータが異常に大きかったので、除外した。
【0143】
実験動物は、投与中、良好な活動状態および摂食状態にある。投与後、ALT803およびV5-IL15-WT群のマウスは体重が有意に減少し、死亡に至るマウスもおり、これは、マウスがこの用量および頻度でALT803およびV5-IL15-WTに対して不耐性であることを示す。動物はV9-IL15-61(5mpk)群およびV9-IL15-com6(1mpk)群において死亡するが、貧血などのGVHD条件は死亡前に観察される。マウスの死亡はGVHDによって引き起こされ、薬剤とは無関係であると推測される。図10D、表10、および表11を参照のこと。
【0144】
[表10] 免疫構成A375腫瘍のNPGマウスの体重に対する試験薬剤の効果
【0145】
注:a:平均±標準誤差、b:群投与21日目の薬物投与群と溶媒コントロール群との体重の統計比較、二元配置分散分析。
【0146】
[表11] 免疫構成A375腫瘍のNPGマウスの生存に対する試験薬剤の効果
【0147】
注記:a:平均±標準誤差、b:群投与後に死亡したマウス、1は1匹のマウスがその日に死亡したことを表し、0は1匹のマウスがその日に死亡したが、死亡前に貧血、黄疸および他の症状が観察されたことを表す。
【0148】
上記の結果は、IL15-Fc融合タンパク質(V9-IL15-61およびV9-IL15-com6の両方)が皮下異種移植されたヒト免疫再構成A375腫瘍の増殖に対して有意な阻害効果を有することを示す。V9-IL15-com6(5mg/kg)はポジティブコントロール抗体ALT803(0.2mg/kg)と比較して、同等のレベルのTGI(腫瘍増殖阻害率)を示すが、より良好な安全性を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図7I
図7J
図7K
図7L
図7M
図7N
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図8I
図8J
図8K
図8L
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図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図10D
【配列表】
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