(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】遮光フィルム、遮光部材、及び光学部品
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20240902BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20240902BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20240902BHJP
【FI】
G02B5/02 C
G02B5/00 B
G02B7/02 D
G02B7/02 A
(21)【出願番号】P 2023001951
(22)【出願日】2023-01-10
(62)【分割の表示】P 2021036983の分割
【原出願日】2021-03-09
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 一晃
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-367767(JP,A)
【文献】国際公開第2021/028974(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0234098(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00 - 5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮光性を有し且つ樹脂フィルムである、シート状の基材と、
前記基材に重ねて配置され、前記基材とは反対側の表面に凹凸が形成され、前記基材よりも透明な、少なくとも1つの光沢防止層と、を備え、
前記光沢防止層は、バインダ樹脂と、前記バインダ樹脂中に分散されたフィラー粒子と、前記バインダ樹脂中に分散された着色成分と、を含み、
JIS Z 8518に規定される明度である黒味(L
*)が、15以下の範囲の値に設定され、又は、顕微分光測定により測定した明度である黒味(L
*)が、3.1以下の範囲の値に設定され、
且つ、JIS K 5600:1999に準拠した方法で測定される鉛筆硬度がH又はFに設定され、
光学部品のシャッター
間、絞り部材間、及び、複数のレンズ間のうちの少なくともいずれかの間に配置されるギャップ調整部材である、遮光フィルム。
【請求項2】
前記基材は、フィルム部材と、前記フィルム部材よりも高い遮光性を有し、前記フィルム部材に重ねて配置される少なくとも1つの遮光層とを含み、
前記フィルム部材と前記遮光層とのうち、前記遮光層が前記光沢防止層側となるように配置される、請求項1に記載の遮光フィルム。
【請求項3】
前記基材の両面に重ねて配置された一対の前記光沢防止層を備え、
前記基材は、前記フィルム部材の両面に重ねて配置された一対の前記遮光層を含む、請求項2に記載の遮光フィルム。
【請求項4】
前記フィラー粒子の平均粒径が、2.0μm以上5.0μm以下の範囲の値である、請求項1~3のいずれか1項に記載の遮光フィルム。
【請求項5】
前記光沢防止層の前記着色成分の含有量が、0wt%よりも多く5wt%以下の範囲の値である、請求項1~4のいずれか1項に記載の遮光フィルム。
【請求項6】
前記着色成分が、前記フィラー粒子よりも高い光吸収性を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の遮光フィルム。
【請求項7】
前記バインダ樹脂は、全光線透過率が70%以上100%未満の範囲の値である、請求項1~6のいずれか1項に記載の遮光フィルム。
【請求項8】
波長380nm以上780nm以下の範囲の値におけるOD値が、5以上の範囲の値である、請求項1~7のいずれか1項に記載の遮光フィルム。
【請求項9】
総厚みが、40μm以下の範囲の値である、請求項1~8のいずれか1項に記載の遮光フィルム
。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の遮光フィルムを含む、遮光部材。
【請求項11】
請求項
10に記載の遮光部材を備える、光学部品。
【請求項12】
複数の光学部材と、
前記複数の光学部材と前記遮光部材とを収容する筐体と、を備え、
前記遮光部材が、前記複数の光学部材のうち、隣接する光学部材間に、前記複数の光学部材の光軸を囲むように配置されている、請求項
11に記載の光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遮光フィルム及び遮光部材に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやデジタルビデオカメラ等が備える光学部品のシャッター、絞り部材、又は複数のレンズ間に配置されるギャップ調整部材として、例えば特許文献1に開示されるような遮光部材が用いられる。遮光部材は、例えば、シート状の基材と、基材の表面に重ねて配置された遮光層とを備える遮光フィルムを用いて製造される。遮光層の表面には、微細な凹凸が形成される。遮光層は、光学部品に外部から入射した入射光を散乱させて写り込みを防止すると共に、入射光を遮光する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学部品の小型化に伴い、遮光部材には、例えば、厚みが薄くても優れた遮光性を有することが求められる。また遮光フィルムは、例えば、複数の材料を準備した後、各材料を重ね、表面を硬化して形成される。このため、遮光性に優れる遮光部材を効率よく製造することが望まれている。
【0005】
そこで本開示は、遮光性に優れる遮光部材を効率よく製造可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る遮光フィルムは、遮光性を有するシート状の基材と、前記基材に重ねて配置され、前記基材とは反対側の表面に凹凸が形成され、前記基材よりも透明な光沢防止層と、を備える。前記光沢防止層は、バインダ樹脂と、前記バインダ樹脂中に分散されたフィラー粒子と、前記バインダ樹脂中に分散された着色成分と、を含む。この遮光フィルムは、JIS Z 8518に規定される明度である黒味(L*)が、15以下の範囲の値に設定されている。
【0007】
上記構成によれば、外部から入射した入射光を光沢防止層の表面の凹凸で散乱させるアンチグレア性を遮光フィルムに付与できる。また、光沢防止層中に入射した入射光が、フィラー粒子の表面で反射して光沢防止層の表面から出射するのを、着色成分により抑制できる。また遮光フィルムは、JIS Z 8518に規定される明度である黒味(L*)が、15以下の範囲の値に設定される。また光沢防止層は、基材よりも透明に構成される。このため、光沢防止層を通じて基材の遮光性を外部に発揮できる。その結果、明度が低く且つ優れた遮光性を有する遮光フィルムを実現できる。
【0008】
また光沢防止層は、例えば、バインダ樹脂前駆体、フィラー粒子、及び着色成分を含む塗工液を基材の表面に塗工して硬化することで形成できる。また、光沢防止層中の着色成分の含有量を上記範囲に設定することで、着色成分によって光沢防止層の遮光性が過度になるのを抑制できる。よって、バインダ樹脂前駆体に例えば紫外線硬化性樹脂等の光硬化性樹脂を用いても、外部からバインダ樹脂前駆体に光照射することで、バインダ樹脂を硬化できる。これにより、光沢防止層を効率よく形成できる。よって、遮光フィルムを用いて遮光部材を効率よく製造できる。
【0009】
前記光沢防止層の前記フィラー粒子の含有量が、10wt%以上25wt%以下の範囲の値であってもよい。これにより、光沢防止層の表面に凹凸を形成し易くできる。また前記光沢防止層の前記着色成分の含有量が、0wt%よりも多く5wt%以下の範囲の値であってもよい。これにより、フィラー粒子の表面で反射した反射光を着色成分により抑制し易くできる。
【0010】
前記着色成分は、前記フィラー粒子よりも粒径が小さい顔料微粒子を含んでいてもよい。これにより、光沢防止層中においてフィラー粒子の周辺に複数の顔料微粒子を配置することで、光沢防止層中に入射した入射光がフィラー粒子の表面で反射して光沢防止層の表面から出射されるのを顔料微粒子により一層抑制し易くできる。
【0011】
波長380nm以上780nm以下の範囲の値におけるOD値が、5以上の範囲の値であってもよい。これにより、より一層良好な遮光フィルムの遮光性が得られる。
【0012】
総厚みが、40μm以下の範囲の値であってもよい。このように総厚みを薄くした遮光フィルムを用いれば、例えば光学部品の大型化を抑制しながら、光学部品内に優れた遮光性を有する遮光部材をコンパクトに配置できる。
【0013】
前記基材は、フィルム部材と、前記フィルム部材よりも高い遮光性を有し、前記フィルム部材に重ねて配置される遮光層とを含み、前記フィルム部材と前記遮光層とのうち、前記遮光層が前記光沢防止層側となるように配置されてもよい。また前記基材は、遮光性を有するフィルム部材を含んでいてもよい。これにより、遮光フィルムの設計自由度を向上できる。
【0014】
本開示の一態様に係る遮光部材は、遮光性を有するシート状の基材と、前記基材に重ねて配置され、前記基材とは反対側の表面に凹凸が形成され、前記基材よりも透明な光沢防止層と、を備え、前記光沢防止層は、バインダ樹脂と、前記バインダ樹脂中に分散されたフィラー粒子と、前記バインダ樹脂中に分散された着色成分と、を含み、顕微分光測定により測定した明度である黒味(L*)が、3.1以下の範囲の値に設定されている。
【0015】
上記構成によれば、外部から入射した入射光を光沢防止層の表面の凹凸で散乱させるアンチグレア性を遮光部材に付与できる。また、光沢防止層中に入射した入射光が、フィラー粒子の表面で反射して光沢防止層の表面から出射するのを、着色成分により抑制できる。これにより、光沢防止層の表面の明度を良好に低減できる。顕微分光測定により測定した明度である黒味(L*)が、3.1以下の範囲の値に設定される。また光沢防止層は、基材よりも透明に構成される。このため、光沢防止層を通じて基材の遮光性を外部に発揮できる。その結果、明度が低く且つ優れた遮光性を有する遮光部材を実現できる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の各態様によれば、遮光性に優れる遮光フィルムを効率よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る遮光フィルムの断面図である。
【
図3】第2実施形態に係る遮光フィルムの断面図である。
【
図4】第2実施形態に係る遮光フィルムのTEM(透過型電子顕微鏡)で撮影した断面を示す図である。
【
図5】第3実施形態に係る光学部品の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、各実施形態等について、図面を参照して説明する。本開示におけるwt%とは質量パーセントである。質量パーセントは、重量パーセント、略してwt%、又は重量-重量パーセントとして表すこともできる。質量パーセントは質量[g]/質量[g]の濃度の百分率表記であり、質量濃度(kg/m
3)とは異なる。
(第1実施形態)
[遮光フィルム]
図1は、第1実施形態に係る遮光フィルム1の断面図である。
図2は、
図1の遮光フィルム1の部分拡大図である。
図1及び2に示される遮光フィルム1は、一例として、光学部品の遮光部材の製造に用いられる。遮光フィルム1は、遮光性を有するシート状の基材2と、基材2に重ねて配置された少なくとも1つ(ここでは一対)の光沢防止層3とを備える。基材2は、一対の光沢防止層3よりも高い遮光性を有する。言い換えると、光沢防止層3は、基材2よりも透明である。即ち光沢防止層3は、全光線透過率が基材2よりも高い。
【0019】
本書で言う全光線透過率とは、JIS K 7375:2008に準拠する方法で測定された透過率を指す。遮光フィルム1では、光沢防止層3を通じて、基材2の遮光性が発揮される。遮光フィルム1の総厚みは、一例として40μm以下の範囲の値である。別の例では、遮光フィルム1の総厚みは、50μm以下の範囲の値である。また別の例では、遮光フィルム1の総厚みは、25μm以下の範囲の値である。
【0020】
基材2は、光沢防止層3を支持すると共に、遮光フィルム1に遮光性を付与する。本実施形態の基材2は、遮光性を有するフィルム部材を含む。一例として、基材2は、着色成分(ここでは黒色成分)と、樹脂成分とを含む樹脂フィルムである。黒色成分としては、カーボンブラックを例示できるが、これに限定されない。樹脂成分としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)のうちの1種以上を例示できるが、これに限定されない。基材2の厚みは、遮光フィルム1の総厚みを考慮した上で適宜設定可能である。一例として、基材2の厚みは、4.5μm以上25μm未満の範囲の値である。また別の例では、基材2の厚みは、50μm以下の範囲の値である。基材2の波長380nm以上780nm以下の範囲の値におけるOD(光学濃度)値は、一例として4以上の範囲の値である。
【0021】
光沢防止層3は、基材2に重ねて配置される。光沢防止層3は、基材2とは反対側の表面に凹凸が形成されている。この凹凸は、光沢防止層3に外部から入射する入射光を散乱する。遮光フィルム1が光沢防止層3を備えることで、遮光フィルム1はアンチグレア性を有する。
【0022】
光沢防止層3は、全光線透過率が70%以上100%未満の範囲の値であるバインダ樹脂30と、バインダ樹脂30中に分散されたフィラー粒子31と、バインダ樹脂30中に分散された着色成分32とを含む。光沢防止層3の表面の凹凸は、複数のフィラー粒子31がバインダ樹脂30中に分散されて配置されると共に、フィラー粒子31が光沢防止層3の基材2とは反対側に突出してバインダ樹脂30の表面を隆起させることで形成されている。フィラー粒子31は、一例として無機粒子である。この場合、フィラー粒子31としてはシリカ粒子を例示できる。フィラー粒子31は無機材料を含む構成に限定されず、有機材料を含む構成であってもよい。
【0023】
フィラー粒子31の平均粒径は、適宜設定可能である。本実施形態のフィラー粒子31の平均粒径は、2.0μm以上5.0μm以下の範囲の値である。フィラー粒子31の平均粒径は、2.5μm以上4.5μm以下の範囲の値であることがより望ましい。またフィラー粒子31の平均粒径は、2.7μm以上3.5μm以下の範囲の値であることが、一層望ましい。
【0024】
本実施形態の着色成分32は、フィラー粒子31よりも高い光吸収性を有する。
図2に示すように、着色成分32は、一例として顔料微粒子を含む。この顔料微粒子は、フィラー粒子31よりも粒径が小さい。光沢防止層3中では、複数の顔料微粒子がフィラー粒子31の周囲に分散して配置されている。これにより光沢防止層3では、光沢防止層3中に外部から光が入射した場合でも、フィラー粒子31の表面で反射した反射光が、再び光沢防止層3の表面から外部に出射されるのが顔料微粒子により抑制される。複数の顔料微粒子は、各々が分離した一次粒子状に配置されていてもよいし、ある程度の数で凝集した二次粒子状に配置されていてもよい。
【0025】
着色成分32としては、例えば顔料や染料を例示できるが、これに限定されない。また着色成分32としては、例えば、カーボンブラック、ランプブラック、バインブラック、ピーチブラック、骨炭、カーボンナノチューブ、酸化銀、酸化亜鉛、マグネタイト型四酸化三鉄、銅とクロムの複合酸化物、銅、クロム、亜鉛の複合酸化物、黒色ガラス等の少なくともいずれかを例示できる。本実施形態の着色成分32は、顔料微粒子としてカーボンブラック(炭素微粒子)を含む。
【0026】
光沢防止層3のフィラー粒子31の含有量は、10wt%以上25wt%以下の範囲の値である。光沢防止層3のフィラー粒子31の含有量の下限値を10wt%とすることで、光沢防止層3の表面の光沢を抑制して光沢防止層3に黒味を付与し易くできる。光沢防止層3のフィラー粒子31の含有量の上限値を25wt%とすることで、フィラー粒子31により光沢防止層3の明度(L*)が上昇するのを抑制できる。
【0027】
光沢防止層3の着色成分32の含有量は、0wt%よりも多く5wt%以下の範囲の値である。光沢防止層3の着色成分32の含有量の下限値は、1wt%又は2wt%のいずれかでもよい。光沢防止層3の着色成分32の含有量の下限値を1wt%とすることで、光沢防止層3に適度な黒味を付与し易くできる。また光沢防止層3の着色成分32の含有量の上限値を5wt%とすることで、光沢防止層3の表面粗さ(Ra)を適切に保持し、着色成分32により光沢防止層3の黒味が低下するのを防止し易くできる。
【0028】
本実施形態のバインダ樹脂30は、光沢防止層3への用途を考慮して、一例として、全光線透過率が70%以上100%以下の範囲の値である。また一例として、バインダ樹脂30は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂の少なくともいずれかを含む。このため、バインダ樹脂30として幅広い樹脂を選択できる。これにより遮光フィルム1において、バインダ樹脂30に用いた樹脂の各機能を発揮させることができる。
【0029】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フッ素樹脂、セルロース誘導体、ポリウレタン系樹脂等のうち1種以上を例示できる。このうち強度の観点では、例えば、環状ポリオレフィン、ポリアルキレンアリレート(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等)、ポリメタクリル酸メチル系樹脂、ビスフェノールA型ポリカーボネート、セルロースエステルが好適である。
【0030】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン等のうち1種以上を例示できる。このうち強度の観点では、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタンが好適である。
【0031】
光硬化性樹脂としては、例えば、光硬化性ポリエステル、光硬化性アクリル系樹脂、光硬化性エポキシ(メタ)アクリレート、光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート等のうち1種以上を例示できる。このうち強度の観点では、光硬化性アクリル系樹脂、光硬化性ウレタン(メタ)アクリレートが好適である。なお、ここで言う「光硬化性」は、特定波長の光により重合及び硬化する特性を指す。
【0032】
光沢防止層3は、波長380nm以上780nm以下の範囲の値におけるOD値が、2以下の範囲の値である。これにより、光沢防止層3に適度な黒味を付与しつつ、光沢防止層3を通じて基材2の遮光性を外部に発揮し易くできる。
【0033】
遮光フィルム1は、JIS Z 8518:1998に規定される明度(L*)が、15以下(一例として14以下であり、別の例では13.7以下、又は、13.2以下)の範囲の値である。また遮光フィルム1は、光沢防止層3の基材2とは反対側の表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.2以上0.8μm以下の範囲の値である。この表面の算術平均粗さ(Ra)としては、0.4以上0.6μm以下の範囲の値がより好ましい。また遮光フィルム1は、光沢防止層3の基材2とは反対側の表面の入射角60度における光沢度が、0.5以下の範囲の値である。
【0034】
ここで、JIS Z 8518に規定される明度である黒味(L*)を測定する場合、例えば試料に光を照射し、試料からの反射光により測定する反射測定を行う。積分球方式によれば、試料表面から反射された光により積分球の内部を明るくし、検出器にてその光量を測定できる。この場合、測定値は、反射基準(標準白板)の反射率を100%とした場合の反射率(相対反射率)となる。測定方式は、測定する試料の種類や形状、測定する目的や用途に応じて使い分ける必要がある。積分球方式において、試料表面の黒味(L*)を定量化するためには、正反射光と拡散反射光とを全て測るSCI(正反射光含む)方式が適している。本書では、分光光度計((株)日立ハイテクサイエンス製「U-3900H」)を用い、SCI方式に基づき、波長380nm以上780nm以下の範囲での反射率に基づいて黒味(L*)を算出した。
【0035】
またOD値は、光学濃度計(ビデオジェット・エックスライト(株)製「X-Rite
341C」)を用い、試料に垂直透過光束を照射して、試料が無い状態との比をlog(対数)で表すことで測定できる。この場合の光束幅は、直径2mmの円形として測定できる。また、光沢防止層3のOD値は、例えば、遮光フィルム1の全体のOD値から基材2のOD値を差し引いた値を、光沢防止層3の数で割ることで算出することが可能である。
【0036】
また平均粒径は、例えば、フィールドエミッション走査電子顕微鏡(日本電子(株)製「JSM-6700F」)により10万倍に拡大した粒子表面の写真を撮影する。その拡大写真を必要に応じて更に拡大し、50個以上の粒子について定規やノギス等を用い、拡大倍率で除して粒子径を算出する。その算出した各値の平均値として、平均粒径を算出できる。
【0037】
また入射角60度における光沢度(JIS Z 8741:1997に準拠する測定方法に基づく鏡面光沢度)は、グロスメーターを用いて測定できる。また算術平均粗さ(Ra)は、中心線平均表面粗さであり、JIS B 0601:1994の定義により算出される。全光線透過率は、JIS K 7361:1997に準拠する測定方法に基づいて測定できる。
【0038】
次に遮光フィルム1の製造方法について例示する。本実施形態の遮光フィルム1の製造方法は、基材2に重ねて配置される光沢防止層3を形成する形成ステップを有する。この形成ステップでは、バインダ樹脂前駆体、フィラー粒子31、及び着色成分32を含む塗工液を、シート状の基材2の表面に塗布して付着させた状態で、バインダ樹脂前駆体からバインダ樹脂30を生成する。これにより、バインダ樹脂30中にフィラー粒子31及び着色成分32が分散され、基材2に重ねて配置される光沢防止層3を形成する。
【0039】
形成ステップでは、バインダ樹脂30の全光線透過率が70%以上100%未満の範囲の値であるバインダ樹脂前駆体を用い、光沢防止層3において、光沢防止層3のフィラー粒子31の含有量が、10wt%以上25wt%以下の範囲の値であり、光沢防止層3の着色成分32の含有量が、0wt%よりも多く5wt%以下の範囲の値となるように、溶剤にて希釈調製された前記塗工液を用いる。
【0040】
具体例としてオペレータは、光沢防止層3の材料となる前記塗工液を調製する。次にオペレータは、この塗工液を基材2の表面に塗布する。その後オペレータは、塗工液中のバインダ樹脂前駆体を反応させて、バインダ樹脂30を生成させてもよい。ここでバインダ樹脂30が光硬化性樹脂を含む場合、オペレータは、塗工液を光照射して、バインダ樹脂30を生成する。バインダ樹脂30が熱硬化性樹脂を含む場合、オペレータは、塗工液から溶剤を除去した残余の樹脂前駆体を加熱して、バインダ樹脂30を生成する。
【0041】
このように本実施形態の製造方法では、光照射又は加熱により、バインダ樹脂30を生成する。光沢防止層3の表面形状は、フィラー粒子31により形成される。これにより、遮光フィルム1が製造される。この方法によれば、塗工液が基材2表面に塗布された状態で光沢防止層3が形成される。このため、遮光フィルム1の製造工程数を低減できる。また、例えば光沢防止層3の表面に凹凸形状を転写する転写部材が不要である。このため、遮光フィルム1を連続的且つ効率よく製造できる。
【0042】
以上説明したように、遮光フィルム1によれば、外部から入射した入射光を光沢防止層3の表面の凹凸で散乱させるアンチグレア性を遮光フィルム1に付与できる。また、光沢防止層3中に入射した入射光がフィラー粒子31の表面で反射して光沢防止層3の表面から出射するのを、着色成分32により抑制できる。また遮光フィルム1は、JIS Z 8518に規定される明度である黒味(L*)が、15以下の範囲の値に設定される。また光沢防止層3は、基材2よりも透明に構成される。このため、光沢防止層3を通じて基材2の遮光性を外部に発揮できる。その結果、明度が低く且つ優れた遮光性を有する遮光フィルム1を実現できる。
【0043】
また、このような光沢防止層3は、例えば、バインダ樹脂30の前駆体、フィラー粒子31、及び着色成分32を含む塗工液を基材2の表面に塗工して硬化することで形成できる。また光沢防止層3中の着色成分32の含有量を上記範囲に設定することで、着色成分32によって光沢防止層3の遮光性が過度になるのを抑制できる。よって、バインダ樹脂前駆体に例えば紫外線硬化性樹脂等の光硬化性樹脂を用いても、外部からバインダ樹脂前駆体に光照射することで、バインダ樹脂30を硬化できる。これにより、光沢防止層3を効率よく形成できる。よって、遮光フィルム1を用いて遮光部材を効率よく製造できる。
【0044】
また、本実施形態の光沢防止層3は、フィラー粒子31の含有量が、10wt%以上25wt%以下の範囲の値である。これにより、光沢防止層3の表面に凹凸を形成し易くできる。また、光沢防止層3の着色成分32の含有量が、0wt%よりも多く5wt%以下の範囲の値である。これにより、フィラー粒子31の表面で反射した反射光を着色成分32により抑制し易くできる。
【0045】
また、光沢防止層3の全光線透過率が、10%以上40%以下の範囲の値である。これにより、光沢防止層3に適度な黒味を付与しつつ、光沢防止層3を通じて基材2の遮光性を外部に発揮し易くできる。また、バインダ樹脂前駆体に例えば紫外線硬化性樹脂等の光硬化性樹脂を用いても、光沢防止層3を一層効率よく形成できる。
【0046】
また遮光フィルム1は、一例として、フィラー粒子31の平均粒径が、2.0μm以上5.0μm以下の範囲の値である。これにより、光沢防止層3の表面の凹凸を適切に形成し、より優れた光分散性を得ることができる。
【0047】
また、本実施形態の着色成分32は、フィラー粒子31よりも粒径が小さい顔料微粒子を含む。これにより、光沢防止層3中においてフィラー粒子31の周辺に複数の顔料微粒子を配置することで、光沢防止層3中に入射した入射光がフィラー粒子31の表面で反射して光沢防止層3の表面から出射されるのを顔料微粒子より一層抑制し易くできる。
【0048】
また遮光フィルム1は、一例として光沢防止層3の波長380nm以上780nm以下の範囲の値におけるOD値が、2以下の範囲の値である。これにより、光沢防止層3を通じて、基材2の遮光性を外部により発揮し易くできる。
【0049】
また遮光フィルム1は、一例として、基材2の波長380nm以上780nm以下の範囲の値におけるOD値が、4以上の範囲の値である。これにより、基材2の遮光性をより一層向上させることができる。
【0050】
また遮光フィルム1は、一例として、波長380nm以上780nm以下の範囲の値におけるOD値が、5以上の範囲の値である。これにより、より一層良好な遮光フィルム1の遮光性が得られる。
【0051】
また本実施形態の遮光フィルム1は、一例として総厚みが40μm以下の範囲の値である。このように遮光フィルム1の総厚みを薄くした遮光フィルム1を用いれば、例えば光学部品の大型化を抑制しながら、光学部品内に優れた遮光性を有する遮光部材をコンパクトに配置できる。
【0052】
また遮光フィルム1は、フィラー粒子31が無機粒子である。またバインダ樹脂30は、光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の少なくともいずれかを含む。また基材2は、遮光性を有するフィルム部材を含む。これにより、遮光フィルム1の設計自由度を向上できる。以下、その他実施形態について、第1実施形態との差異を中心に説明する。
【0053】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係る遮光フィルム101の断面図である。
図3に示すように、遮光フィルム101の基材20は、フィルム部材21と、フィルム部材21に重ねて配置された遮光層22、23とを含む。フィルム部材21は、例えば全光線透過率が80%以上100%未満の範囲の値である。フィルム部材21は、一例として、PETやPI等の樹脂成分を含む樹脂フィルムである。遮光層22、23は、バインダ樹脂と、着色成分とを含む。この着色成分は、例えば第1実施形態と同様に顔料微粒子を含む。遮光層22、23は、フィルム部材21よりも高い遮光性を有する。フィルム部材21は、遮光層22、23より薄くてもよいし、厚くてもよい。
【0054】
遮光フィルム101では、フィルム部材21と遮光層22、23とのうち、遮光層22、23が光沢防止層3側となるように配置される。遮光フィルム101の基材20は、少なくとも1つの遮光層を有していればよい。具体例として、本実施形態の遮光フィルム101は、一例として、一対の遮光層22、23と、一対の光沢防止層3とを備える。遮光フィルム101は、フィルム部材21の両面側において、フィルム部材21の表面が遮光層22、23により覆われ、遮光層23のフィルム部材21とは反対側の表面が光沢防止層3に覆われている。基材20の全体の遮光性は、基材2と同等に設定されている。
【0055】
上記構成を有する遮光フィルム101でも、遮光フィルム1と同様の効果が得られる。また、フィルム部材21と遮光層22、23とを機能分離できる。これにより、遮光フィルム101の設計自由度を向上できる。
【0056】
図4は、第2実施形態に係る遮光フィルム101のTEM(透過電子顕微鏡)で撮影した断面を示す図である。
図4に示すように、TEMを用いることで、遮光フィルム101の基材20におけるフィルム部材21と遮光層23とを明瞭に区別して確認できる。フィルム部材21と遮光層23とは、一例として、遮光層23に含まれるカーボンブラック等の顔料微粒子による比較的濃い着色により、明瞭に確認できる。また遮光層23と光沢防止層3とは、それぞれに含まれるカーボンブラック等の顔料微粒子による着色濃度の違いにより、明瞭に確認できる。なお図示しないが、第1実施形態の基材2と光沢防止層3とについても同様に、それぞれに含まれるカーボンブラック等の顔料微粒子による着色濃度の違いにより、明瞭に確認できる。
【0057】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態に係る光学部品40の分解図である。
図5に示すように、光学部品40は、複数の遮光部材F1~F6、複数の光学部材(ここではレンズL1~L6)、及び遮光部材F1~F6と光学部材とを収容する筐体(鏡筒)41を備える。遮光部材F1~F6は、一例として、隣接する光学部材間に、光学部材の光軸Rを囲むように配置される。光学部品40が備える遮光部材の枚数、及び光学部材の個数は限定されない。
【0058】
遮光部材F1~F6は、第1実施形態の遮光フィルム1と同様の断面構造を有する。即ち遮光部材F1~F6は、遮光性を有するシート状の基材2(又は基材20)と、光沢防止層3とを備える。光沢防止層3は、バインダ樹脂30と、バインダ樹脂30中に分散されたフィラー粒子31と、バインダ樹脂30中に分散された着色成分32とを含む。遮光部材F1~F6は、顕微分光測定により測定した明度である黒味(L*)が、3.1以下の範囲の値に設定されている。
【0059】
第3実施形態によれば、外部から入射した入射光を光沢防止層3の表面の凹凸で散乱させるアンチグレア性を遮光部材F1~F6に付与できる。また、光沢防止層3中に入射した入射光が、フィラー粒子31の表面で反射して光沢防止層3の表面から出射するのを、着色成分により抑制できる。これにより、光沢防止層3の表面の明度を良好に低減できる。顕微分光測定により測定した明度である黒味(L*)が、3.1以下の範囲の値に設定される。また光沢防止層3は、基材2(又は基材20)よりも透明に構成される。このため、光沢防止層3を通じて基材2(又は基材20)の遮光性を外部に発揮できる。その結果、明度が低く且つ優れた遮光性を有する遮光部材F1~F6を実現できる。
【0060】
この黒味(L*)の測定方法としては、例えば顕微分光測定機として、オリンパス(株)製 近赤外顕微分光測定機「USPM-RU-W」を用い、対物レンズ倍率40倍、光源D65、測定NA0.24、測定範囲17.5μm、及び、測定波長380nm以上1050nm以下の範囲とする設定条件にて測定できる。
【0061】
また、遮光フィルム1及び遮光部材F1~F6が備える光沢防止層3中の着色成分32の含有量は、例えば以下の方法により確認できる。まず、対象とする遮光フィルム1及び遮光部材F1~F6の断面の撮像画像をTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて得る。次に、この撮影画像中の各着色成分32の面積を測定する。そして、この面積値に基づいて、着色成分32を球体粒子と見立てた場合の光沢防止層3中の着色成分32の総体積を算出する。この体積値と既知の着色成分32の密度とに基づいて、前記含有量を算出する。
【0062】
(確認試験)
次に、確認試験について説明するが、本開示は以下に示す実施例に限定されるものではない。遮光フィルム101を実施例1として作製した。厚みが4.5μmで全光線透過率が87.6%のPETフィルム(東レ(株)製PETフィルム)をフィルム部材21として用いた。ウレタン系バインダ樹脂(東洋紡(株)製「バイロン40SS」)、遮光層23に対する重量割合が12wt%のカーボンブラック(御国色素(株)製「MHIブラック#273」)を含む材料をフィルム部材21の両面に塗工し、熱硬化により、乾燥後の厚みが1.5μmの一対の遮光層23を形成した。これにより、波長380nm以上780nm以下の範囲の値におけるOD値が5.3の基材20を形成した。
【0063】
また、以下の手順で光沢防止層3を形成した。バインダ樹脂30である熱硬化性バインダ樹脂(公進ケミカル(株)製「KDC-03」)、フィラー粒子31である無機(シリカ)粒子(富士シリシア(株)製「サイリシア420」平均粒子径2.9μm)、及び、光沢防止層3に対する重量が9wt%の着色成分32であるカーボンブラック(御国色素(株)製「MHIブラック#273」平均粒子径0.15μm)を含む材料を基材20の両面に塗工し、乾燥及び硬化させた。乾燥後の各厚みが4.0μmの一対の光沢防止層3を形成した。以上により、総厚みが25μm以下(具体的には15μm以上16μm以下)の範囲の値である実施例1の遮光フィルム101を作製した。
【0064】
また、光沢防止層3の作製において、熱硬化性バインダ樹脂(公進ケミカル(株)製「KDC-03」)を用いない代わりに紫外線硬化性樹脂(横浜ゴム(株)製「HR-370-192」)を用いたこと以外は実施例1と同様の実施例2の遮光フィルム101を作製した。また、基材2として、厚みが12μmの黒色PETフィルム(南亜(NANYA)(株)製黒遮光PET)を用いた以外は実施例1と同様の実施例3の遮光フィルム1を作製した。また、基材2として、厚みが12μmの遮光耐熱性の練込黒PIフィルム(タイマイド・テクノロジー(株)製PIフィルム)を用いた以外は実施例1と同様の実施例4の遮光フィルム1を作製した。
【0065】
また、基材として、厚みが4.5μmで全光線透過率が87.6%のPETフィルム(東レ(株)製PETフィルム)の透明基材を用いた以外は実施例3と同様の比較例1の遮光フィルムを作製した。また、光沢防止層3に対応する表面層の作製において、熱硬化性バインダ樹脂(公進ケミカル(株)製「KDC-03」)とカーボンブラック(御国色素(株)製「MHIブラック#273」)との比率を比較例1と異ならせた以外は比較例1と同様の比較例2の遮光フィルムを作製した。
【0066】
ここで表面層の作製において、熱硬化性バインダ樹脂(公進ケミカル(株)製「KDC-03」)を用いない代わりに紫外線硬化性樹脂(横浜ゴム(株)製「HR-370-192」)を用いたこと以外は比較例2と同様の比較例3の遮光フィルムを作製しようとしたところ、表面層が形成できないことが確認された。
【0067】
また、基材として実施例1と同様の基材を用い、表面層の作製において、富士シリシア(株)製「サイリシア420」、熱硬化性バインダ樹脂(公進ケミカル(株)製「KDC-03」)、及びカーボンブラック(御国色素(株)製「MHIブラック#273」)の比率を比較例1と異ならせた比較例4の遮光フィルムを作製した。
【0068】
また、基材として実施例3と同様の基材を用い、表面層の作製において、富士シリシア(株)製「サイリシア420」、熱硬化性バインダ樹脂(公進ケミカル(株)製「KDC-03」)、及びカーボンブラック(御国色素(株)製「MHIブラック#273」)を所定の比率で含む光沢防止層を有する比較例5の遮光フィルムを作製した。
【0069】
また、基材として実施例1と同様の基材を用いた以外は比較例5と同様の比較例6の遮光フィルムを作製した。また、表面層の作製において、富士シリシア(株)製「サイリシア420」、熱硬化性バインダ樹脂(公進ケミカル(株)製「KDC-03」)、及びカーボンブラック(御国色素(株)製「MHIブラック#273」)の比率を比較例6と異ならせた以外は比較例6と同様の比較例7、8の遮光フィルムを作製した。
【0070】
実施例1~4の光沢防止層3の表面、及び、比較例1、2、4~8の表面層について、グロスメーターを用いて、表面の入射角60度における光沢度を測定した。また実施例1~4及び比較例1、2、4~8について、JIS Z 8518に準拠する測定方法、及び、顕微分光測定に基づく測定方法により、遮光フィルムの明度(L*)を測定した。また実施例1~4及び比較例1、2、4~8について、光学濃度計を用いて、遮光フィルムの波長380nm以上780nm以下の範囲の値におけるOD値を測定した。また実施例1~4の光沢防止層3の表面、及び、比較例1、2、4~8の表面層について、表面粗さ計を用いて、表面の表面粗さ(Ra)を測定した。また実施例1~4の光沢防止層3の表面、及び、比較例1、2、4~8の表面層についての鉛筆硬度を、JIS K 5600:1999に準拠した方法で測定した。但し、荷重は500g荷重とした。実施例1~4及び比較例1~8の組成と、測定結果を表1~3に示す。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
表1~3に示されるように、実施例1~4については、良好な遮光性とOD値とを有する遮光フィルム1、101が得られることが確認された。また、光沢防止層3は光を透過可能に構成されるため、例えば実施例2のように、光沢防止層3の材料として紫外線硬化性樹脂を用いた場合でも、外部から材料中に十分な光量の紫外線を照射でき、優れた硬度を有する光沢防止層3を形成できることが確認された。また実施例1~4は、光沢防止層3の表面が、比較例1~2、4~8の表面層の表面と比べて同等以上の鉛筆硬度(HBよりも高い鉛筆硬度)を有することが確認された。これにより実施例1~4は、光沢防止層3が十分な硬度を有することが確認された。
【0075】
これに対して比較例1は、基材に上記透明基材を用いた結果、明度(L*)及びOD値が共に実施例1~4と比較して劣る結果となり、十分な遮光性が得られないことが確認された。また比較例2のように、実施例の光沢防止層に相当する表面層の黒色成分(カーボンブラック)の添加量を比較例1よりも増大させると、遮光性は向上するものの、表面層の表面粗さが低下し、表面層の表面の光沢度が増大することにより、明度(L*)が高くなることが確認された。
【0076】
また比較例3のように、表面層の黒色成分(カーボンブラック)の添加量が多いと、表面層の材料として紫外線硬化性樹脂を用いた場合、外部から材料中に十分な光量のUVを照射できないために紫外線硬化性樹脂を硬化できず、表面層を形成できないことも判明した。これにより比較例3では、紫外線硬化性樹脂を例えばバインダ樹脂として機能させることは困難であることが確認された。
【0077】
また比較例4の結果から、基材に実施例1と同様のものを用いた場合でも、表面層の黒色成分の添加量が少ないと、遮光フィルムの明度(L*)が高くなることが確認された。また比較例5、6の結果から、遮光フィルムの基材に基材2(練込PET)や、基材20(遮光層/フィルム部材/遮光層の3層構造)のいずれを用いても、表面層の黒色成分の添加量が多すぎると、表面層の表面粗さが低下し、表面層の表面の光沢度が増大することにより、明度(L*)が18よりも高くなることが確認された。
【0078】
また比較例7の結果から、表面層へのフィラー粒子(富士シリシア(株)製「サイリシア420」)の添加量が少なすぎると、表面層の表面のマット性が得られず、当該表面の光沢度が高くなり、遮光フィルムの黒味が低下することが確認された。また比較例8の結果から、表面層へのフィラー粒子(富士シリシア(株)製「サイリシア420」)の添加量が多すぎると、表面層の表面の光沢度は低下するが、粒子の白味が加わることにより、遮光フィルムの黒味が低下することが確認された。以上により、実施例1~4の優位性が確認された。
【0079】
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の趣旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。また、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0080】
F1~F6 遮光部材
L1~L6 レンズ
1、101 遮光フィルム
2、20 基材
3 光沢防止層
21 フィルム部材
22、23 遮光層
30 バインダ樹脂
31 フィラー粒子
32 着色成分
40 光学部品
41 筐体