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特許7547550自己修復樹脂組成物及びそれで製造された人工皮革
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】自己修復樹脂組成物及びそれで製造された人工皮革
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20240902BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20240902BHJP
   D06N 3/14 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C08L75/04
C08K5/00
D06N3/14 102
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023070565
(22)【出願日】2023-04-24
(65)【公開番号】P2024110890
(43)【公開日】2024-08-16
【審査請求日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】112103762
(32)【優先日】2023-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】曹 俊哲
(72)【発明者】
【氏名】廖 仁▲ユウ▼
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-065991(JP,A)
【文献】国際公開第2020/196845(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0223127(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0022990(US,A1)
【文献】特開2018-167574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08G18/00- 18/87
D06N 3/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコールモノマー及びジイソシアネートモノマーを含む主樹脂35重量部~110重量部と、
環状構造を有するシロキサン及び下記式(I)に示した成分の中の少なくとも1つを含む自己修復成分10重量部~30重量部と、
硬化剤と、
艶消し剤と、
溶媒と、を含み、
前記グリコールモノマーは、ブタンジオール、ヘキサンジオール、及びポリカーボネートジオールを含み、
前記環状構造を有するシロキサンは、酸素原子及びケイ素原子で構成された八員環(octatomic ring)を含むことを特徴とする自己修復樹脂組成物
【化1】
(式(I)中、Rは第1のイソシアネートで形成され、Rは第2のイソシアネートで形成され、Rは下記式(II)に示す基であり(式(II)中、n1は3~50の整数であり、n2は3~50の整数である)、xは3~50の整数であり、yは3~50の整数であり、mは3~50の整数である)。
【化2】
【請求項2】
前記環状構造を有するシロキサンは、ビス(ヘプタメチルシクロテトラシロキサニル)エタン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の自己修復樹脂組成物。
【請求項3】
前記主樹脂は、ブタンジオール5重量部~20重量部と、ヘキサンジオール10重量部~30重量部と、ポリカーボネートジオール10重量部~30重量部と、を含む、請求項に記載の自己修復樹脂組成物。
【請求項4】
前記ジイソシアネートモノマーは、ジフェニルメタンジイソシアネートを含む、請求項1に記載の自己修復樹脂組成物。
【請求項5】
前記主樹脂は、ジフェニルメタンジイソシアネート10重量部~40重量部を含む、請求項に記載の自己修復樹脂組成物。
【請求項6】
前記自己修復樹脂組成物100重量部に基づいて、前記艶消し剤の添加量は0.1重量部~3重量部である、請求項1に記載の自己修復樹脂組成物。
【請求項7】
前記第1のイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートからなる群から選択され、
前記第2のイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートからなる群から選択される、請求項1に記載の自己修復樹脂組成物。
【請求項8】
レザーレイヤーと、
前記レザーレイヤーに設置された自己修復フィルム層と、を備え、
前記自己修復フィルム層は、請求項1~のいずれか一項に記載の自己修復樹脂組成物で形成される、人工皮革。
【請求項9】
前記自己修復フィルム層の厚みは10μm~100μmである、請求項に記載の人工皮革。
【請求項10】
前記自己修復フィルム層のヘイズ値は3%~20%である、請求項に記載の人工皮革。
【請求項11】
前記レザーレイヤーはポリウレタンレザーレイヤー又はポリ塩化ビニルレザーレイヤーである、請求項に記載の人工皮革。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及びそれで製造された人工皮革に関し、特に、自己修復樹脂組成物及びそれで製造された人工皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の市販されている人工皮革は、表面の耐スクラッチ性が不十分で、使用中に永久的な傷がつきやすく、外観に影響を与える。人工皮革の寿命を延ばすために、一般に人工皮革の表面に保護層をコーティングして耐用年数を延ばす。
【0003】
技術の発展及び自己修復材料(self-healing material)の発見により、業界は自己修復材料を人工皮革に適用し始めた。このように、外力により人工皮革に傷がついた場合、人工皮革の表面を加熱することにより元の外観に戻すことができる。しかし、既存の自己修復材料はいずれも光沢度が高く、艶消しフィルム層の形成には適していない。
【0004】
自己修復材料のヘイズを改善するために、先行技術では、自己修復材料にマット処理を行い、自己修復材料に散乱粒子を添加する技術的手段を提供する。しかし、マット処理は自己修復材料自体の特性を壊してしまい、散乱粒子を添加した後に散乱粒子が落ちてしまうという問題も起こりやすいため、成分を設計・改良することにより、自己修復樹脂組成物を調製することは、本事業の解決しようとする重要な課題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、自己修復樹脂組成物及びそれで製造された人工皮革を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、自己修復樹脂組成物を提供する。前記自己修復樹脂組成物は、主樹脂35重量部~110重量部と、自己修復成分10重量部~30重量部と、硬化剤と、艶消し剤と、溶媒と、を含む。主樹脂は、グリコールモノマー及びジイソシアネートモノマーを含む。自己修復成分は、環状構造を有するシロキサン及び下記式(I)に示した成分の中の少なくとも1つを含む。
【化1】
式(I)中、R1は、第1のイソシアネートで形成され、R2は第2のイソシアネートで形成され、R3は下記式(II)に示す基であり、xは3~50の整数であり、yは3~50の整数であり、mは3~50の整数である。
【化2】
式(II)中、n1は3~50の整数であり、n2は3~50の整数である。
【0007】
一つの実施形態において、環状構造を有するシロキサンは、ビス(ヘプタメチルシクロテトラシロキサニル)エタン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、又はそれらの組み合わせを含む。
【0008】
一つの実施形態において、グリコールモノマーは、ブタンジオール、ヘキサンジオール及びポリカーボネートジオールを含む。
【0009】
一つの実施形態において、主樹脂は、ブタンジオール5重量部~20重量部と、ヘキサンジオール10重量部~30重量部と、ポリカーボネートジオール10重量部~30重量部と、を含む。
【0010】
一つの実施形態において、ジイソシアネートモノマーは、ジフェニルメタンジイソシアネートを含む。
【0011】
一つの実施形態において、主樹脂は、ジフェニルメタンジイソシアネート10重量部~40重量部を含む。
【0012】
一つの実施形態において、自己修復樹脂組成物100重量部に基づいて、艶消し剤の添加量は0.1重量部~3重量部である。
【0013】
一つの実施形態において、第1のイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートからなる群から選択される。第2のイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートからなる群から選択される。
【0014】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、人工皮革を提供する。人工皮革は、レザーレイヤーと、レザーレイヤーに設置された自己修復フィルム層を備え、自己修復フィルム層は前記自己修復樹脂組成物で形成される。
【0015】
一つの実施形態において、自己修復フィルム層の厚みは10μm~100μmである。
【0016】
一つの実施形態において、自己修復フィルム層のヘイズ値は3%~20%である。
【0017】
一つの実施形態において、レザーレイヤーはポリウレタンレザーレイヤー又はポリ塩化ビニルレザーレイヤーである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の有利な効果として、本発明に係る自己修復樹脂組成物及びそれで製造された人工皮革は、「自己修復成分、環状構造を有するシロキサン及び式(I)に示した成分の中の少なくとも1つを含む」といった技術特徴によって、自己修復樹脂組成物の自己修復効果を向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る人工皮革の側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0021】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明の実施形態の「自己修復樹脂組成物及びそれで製造された人工皮革」を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0022】
本発明は、人工皮革の製造に応用することができる自己修復樹脂組成物を提供すると共に、自己修復樹脂組成物が硬化して自己修復材料を形成することができる。自己修復材料は、自己修復機能を有する。80℃~130℃の温度において、自己修復材料は分子の間の作用力によって、亀裂を修復する硬化を果たせる。よって、本発明の自己修復樹脂組成物を人工皮革に塗布させることによって、人工皮革の表層に自己修復フィルム層(自己修復材料)を形成させる。
【0023】
本発明において、成分の選択、分子構造の設計及び官能基の改質によって、自己修復材料に自己修復機能を与える。また、本発明に係る自己修復樹脂組成物は、高いヘイズ値を有する自己修復フィルム層の形成に用いられ、従来の技術における高い光沢度を有する自己修復フィルム層と区別することができる。
【0024】
本発明の自己修復樹脂組成物は、主樹脂35重量部~110重量部と、自己修復成分10重量部~30重量部と、硬化剤5重量部~40重量部と、艶消し剤1重量部~3重量部と、溶媒60重量部~400重量部と、を含む。
【0025】
本発明において、主樹脂は、グリコールモノマー及びジイソシアネートモノマーを含む。異なるモノマーの使用によって、硬化した自己修復樹脂組成物(自己修復材料)は比較的に多い水素結合を有する。外力を受けて変形が発生する際に、自己修復材料は適切の温度で元の形状に戻ることができる。
【0026】
例えば、グリコールモノマーは、ブタンジオール、ヘキサンジオール及びポリカーボネートジオールを含む。ジイソシアネートモノマーは、ジフェニルメタンジイソシアネートを含む。グリコールモノマーとしてブタンジオール、ヘキサンジオール及びポリカーボネートジオールを用い、更にジフェニルメタンジイソシアネートを組み合わせることで、他の種類のジイソシアネートモノマーを採用するものに比べて、主樹脂で形成されたポリウレタンエラストマーに、より優れた回復力を与えることができる。
【0027】
一つの示範例において、主樹脂は、ブタンジオール5重量部~20重量部と、ヘキサンジオール10重量部~30重量部と、ポリカーボネートジオール10重量部~30重量部と、ジフェニルメタンジイソシアネート10重量部~40重量部を含む。
【0028】
本発明において、自己修復成分の添加によって、材料を元の状態に戻すという役目を果たす。材料が外力によって亀裂又は変形した後に、適切に加熱することによって、熱膨張で元の状態に戻る(物理的修復)か、若しくは、熱膨張で破断された結合が再び接触して結合することができる(化学的修復)。
【0029】
本発明において、自己修復成分は、環状構造を有するシロキサン及び式(I)に示した自己修復成分の中の少なくとも1つを含む。
【0030】
環状構造を有するシロキサンは、大量のシラン共有結合を提供するため、加熱で修復する効果を果たすことができる。
【0031】
環状構造を有するシロキサンは、酸素原子及びケイ素原子で構成された八員環(octatomic ring)を含む。具体的に説明すると、環状構造を有するシロキサンは、ビス(ヘプタメチルシクロテトラシロキサニル)エタン(bis(heptamethylcyclotetrasiloxanyl)ethane)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(octamethylcyclotetrasiloxane)、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0032】
一つの示範例において、自己修復成分が環状構造を有するシロキサンのみを含む際に、ブタンジオール5重量部~15重量部と、ヘキサンジオール5重量部~20重量部と、ポリカーボネートジオール10重量部~30重量部と、ジフェニルメタンジイソシアネート10重量部~20重量部と、環状構造を有するシロキサン30重量部~40重量部とで、自己修復樹脂組成物を調製することができる。
【0033】
式(I)に示した自己修復成分は、比較的に多いフェノールカルバメート(N-C(=O)-O-Ph,phenol carbamate)を含むため、材料が変形又は損傷を受けた際に、フェノールカルバメートとの特徴的単位によって修復することができる。
【化3】
【0034】
式(I)において、R1は、第1のイソシアネートで形成され、R2は第2のイソシアネートで形成され、R3は下記式(II)で表される基であり、xは3~50の整数であり、yは3~50の整数であり、mは3~50の整数である。
【化4】
式(II)中、n1は3~50の整数であり、n2は3~50の整数である。
【0035】
一つの実施形態において、第1のイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate,HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4,4′-diisocyanato dicyclohexylmethane,H12MDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(methylene diphenyl diisocyanate,MDI)及びイソホロンジイソシアネート(isophorone diisocyanate,IPDI)からなる群から選択されてもよい。第2のイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートからなる群から選択される。即ち、第1のイソシアネート及び第2のイソシアネートは、同一のイソシアネートであってもよい。
【0036】
一つの示範例において、自己修復成分が式(I)に示した自己修復成分のみを含む際に、ブタンジオール5重量部~15重量部と、ヘキサンジオール10重量部~20重量部と、ポリカーボネートジオール10重量部~30重量部と、ジフェニルメタンジイソシアネート10重量部~20重量部と、式(I)に示した自己修復成分10重量部~30重量部とで、自己修復樹脂組成物を調製することができる。
【0037】
特筆すべきことは、環状構造を有するシロキサン及び式(I)に示した自己修復成分は、お互いに相乗効果を達成し、より優れた修復効果を果たせる。
【0038】
式(I)に示した自己修復成分の合成方法は後述する。
【0039】
ヘイズ値の高い自己修復フィルム層を形成するために、本発明で用いた主樹脂及び自己修復成分自体は高いヘイズ値を有する。このように、艶消し剤の使用量を低減することができる。また、自己修復成分の添加は、艶消し剤の自己修復樹脂での安定性を向上させて、長時間用いた後も艶消し剤の脱落を回避することができる。
【0040】
一つの実施形態において、硬化剤は、過酸化ベンゾイル(benzoyl peroxide)であってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。艶消し剤は、ビス(テトラメチルアンモニウム)オリゴジメチルシロキサンジオール(bis(tetramethylammonium)oligodimethylsiloxanediolate)であってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。溶媒は、ブタノン、N,N-ジエチルホルムアミド(N,N-diethylformamide,DEF)又はそれらの組み合わせであってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例
【0041】
[実施例1]
実施例1での自己修復成分は、式(I)に示した自己修復成分のみ含む。
【0042】
式(I)に示した自己修復成分を合成する方法については、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とブタンジオールとを100℃の温度で2時間プレ反応を行った後に、ビスフェノールAを更に導入して100℃の温度で1時間反応を行ったことによって、式(I)に示した自己修復成分を製造した。そのうち、ジフェニルメタンジイソシアネート:ブタンジオール:ビスフェノールA(モル比)は、5:3:2であった。
【0043】
次に、式(I)に示した自己修復成分を用いて、自己修復樹脂組成物を調製した。
【0044】
表1の成分比に基づいて、室温において、ブタノンとN,N-ジエチルホルムアミドとで構成された混合溶媒を用いて、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ポリカーボネートジオール、及びジフェニルメタンジイソシアネートを溶解すると共に、式(I)に示した自己修復成分、過酸化ベンゾイル及びビス(テトラメチルアンモニウム)オリゴジメチルシロキサンジオールを添加することによって、樹脂混合物を形成した。樹脂混合物での各成分が均一に混合された後に、100℃に加熱して、樹脂混合物に3時間反応させることによって、本発明に係る自己修復樹脂組成物を得た。
【0045】
[実施例2]
実施例2での自己修復成分は、ビス(ヘプタメチルシクロテトラシロキサニル)エタン及びオクタメチルシクロテトラシロキサン(環状構造を有するシロキサン)のみ含んだ。
【0046】
環状構造を有するシロキサンを用いて、自己修復樹脂組成物を調製した。表1の成分比に基づいて、室温において、ブタノンとN,N-ジエチルホルムアミドとで構成された混合溶媒を用いて、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ポリカーボネートジオール、及びジフェニルメタンジイソシアネートを溶解すると共に、ビス(ヘプタメチルシクロテトラシロキサニル)エタン及びオクタメチルシクロテトラシロキサン、過酸化ベンゾイル及びビス(テトラメチルアンモニウム)オリゴジメチルシロキサンジオールを添加することによって、樹脂混合物を形成した。樹脂混合物での各成分が均一に混合された後に、100℃に加熱して、樹脂混合物に3時間反応させることによって、本発明に係る自己修復樹脂組成物を得た。
【0047】
図1に示すように、本発明に係る自己修復樹脂組成物は、レザーレイヤー1に応用することができる。自己修復樹脂組成物をレザーレイヤー1に塗布して、乾燥すれば自己修復フィルム層2を形成することができる。人工皮革として、ポリウレタン人工皮革又はポリ塩化ビニル人工皮革であってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0048】
自己修復フィルム層2の修復効果を測定するために、前記実施例1、2に係る自己修復樹脂組成物を用いて、レザーレイヤー1に厚みが10μm~100μmの自己修復樹脂組成物を塗布した。60℃~120℃の温度で2分~5分乾燥した後に、レザーレイヤー1の表面に自己修復フィルム層2が形成され、測定しようとするサンプルを得た。
【0049】
ヘイズメーターで測定しようとするサンプル表面のヘイズ値を測定し、その結果は、表1に示すとおりである。
【0050】
次に、銅ブラシで測定しようとするサンプルの表面にスクラッチを形成した後に、傷がついたサンプルを80℃の環境で2分放置させた。次に、サンプルを取り出した後に、自己修復フィルム層2の表面状態を観察し、サンプルのスクラッチ修復効果を評価し、その結果は、表1に示すとおりである。
【0051】
【表1】
【0052】
表1の結果によれば、本発明に係る自己修復材料は、修復効果を有し、傷がついたサンプルを80℃の環境で2分加熱した後、肉眼では元のスクラッチを観察することができなかった。また、本発明に係る自己修復フィルム層は高いヘイズ値を有し、従来の技術における光沢度が高い自己修復材料と区別することができる。
【0053】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係る自己修復樹脂組成物及びそれで製造された人工皮革は、「自己修復成分、環状構造を有するシロキサン及び式(I)に示した成分の中の少なくとも1つを含む」といった技術特徴によって、自己修復樹脂組成物の自己修復効果を向上する。
【0054】
更に説明すると、本発明において、特定のグリコールモノマー及びジイソシアネートモノマーを用い、このように、硬化した自己修復樹脂組成物(自己修復材料)は比較的に多い水素結合を有し、外力を受けて変形が発生する際に、自己修復材料は適切の温度で元の形状に戻れられる。また、特定の主樹脂を用いることによって、艶消し剤の添加量を低減すると共に、艶消し剤をより良好に自己修復樹脂組成物に分散させることができる。
【0055】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1…レザーレイヤー
2…自己修復フィルム
図1