(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ロボットハンドおよび容器のハンドリング方法
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20240902BHJP
B25J 15/06 20060101ALI20240902BHJP
B65G 47/91 20060101ALI20240902BHJP
B65B 43/46 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B25J15/08 Q
B25J15/06 A
B65G47/91 D
B65B43/46 Z
(21)【出願番号】P 2023104638
(22)【出願日】2023-06-27
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】514074382
【氏名又は名称】カワダロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 稔
(72)【発明者】
【氏名】大谷 優
(72)【発明者】
【氏名】山口 遼
(72)【発明者】
【氏名】村井 伸行
(72)【発明者】
【氏名】力石 直也
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-142411(JP,A)
【文献】特開2013-180366(JP,A)
【文献】特開2020-078867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/08
B25J 15/06
B65G 47/91
B65B 43/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横倒しの容器の側面を吸着する吸着手段と、
吸着手段を水平軸に対し回転させて前記容器を直立させる直立手段と、
直立した前記容器の開口部を把持する把持手段と、
を備え
、
前記把持手段が、受動ローラを有する、
ロボットハンド。
【請求項2】
前記吸着手段が、吸着パッドと、前記吸着パッドの伸縮機構と、を有する、請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
ロボットハンドの回転軸と、前記容器の対称軸とが一致するように配置されている、請求項1または2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記吸着手段と前記直立手段との複数組が前記把持手段を挟んで対称に配置されている、請求項1または2に記載のロボットハンド。
【請求項5】
さらに、前記容器の側面に吸着する前の状態で、前記吸着手段を垂直軸に対し回転させる回転手段を備えた、請求項1または2に記載のロボットハンド
【請求項6】
ロボットハンドを用いて容器をハンドリングする方法であって、
横倒しの容器を吸着手段によりピッキングする吸着ステップと、
吸着した前記容器を直立手段で直立させる直立ステップと、
直立した前記容器の開口部を把持手段
の有する受動ローラで把持する把持ステップと、
把持した前記容器から吸着手段を解離したうえで前記容器を収容治具に収容する収容ステップと、
を含む、容器のハンドリング方法。
【請求項7】
前記吸着ステップでは、前記容器の側面の所定位置に吸着パッドを配して吸着し、
前記把持ステップでは、前記吸着手段の有する伸縮機構により前記容器の開口部が把持手段の所定位置に来るように伸縮する、請求項
6に記載の容器のハンドリング方法。
【請求項8】
前記吸着ステップでは、前記容器の開口部上面位置から前記容器の軸方向で一定の位置に吸着する、請求項
7に記載の容器のハンドリング方法。
【請求項9】
前記把持ステップでは、前記容器の対称軸を中心に回転させて前記容器を所定の方向に向ける、請求項
6ないし
8のいずれか1項に記載の容器のハンドリング方法。
【請求項10】
前記吸着ステップでは、ロボットハンドの有する複数の吸着手段のうちのいずれか一つを用いて前記容器を吸着する、請求項
6ないし
8のいずれか1項に記載の容器のハンドリング方法。
【請求項11】
前記吸着ステップでは、前記容器の吸着前に前記吸着パッドを垂直軸に対し回転し前記容器の向きに揃える、請求項
6ないし
8のいずれか1項に記載の容器のハンドリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡素な構造で複数品種のボトル等の容器のハンドリングが可能であり、品種変更にも容易に対応できる、ロボットハンドおよび容器のハンドリング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボトル等の容器は、日用品・食品・工業製品など様々な業界において包装資材として用いられている。容器、たとえば、ボトルに入った製品を生産する場合、空のボトルへの内容品の充填や閉栓作業は、一般的に専用機械などで自動化されている。しかしながら生産過程において、向きや姿勢が定まっていないバラ置きの状態からボトル自体を個々にハンドリングするような作業が伴う場合がある。とりわけ複数品種の製品を多品種少量生産する場合は、異なる品種のボトルを効率よく、ハンドリングする手法が求められる。
【0003】
ボトル容器は、品種によって容器の形状やサイズに大きな差があるが、それに対して開口部は径のサイズ差はあるものの、閉栓部材が取り付くために、共通した円柱状の形状をしている。このワークの特性を活かすことで、複数品種のボトル容器のハンドリングが可能と考えられる。
【0004】
特許文献1には、ボトル状のワークのハンドリングを行うロボットハンドとして、ボトルの頭部を掴む把持機構とボトルの側面を吸着する吸着機構とが一体化したものが開示されている。そのロボットハンドを用い、箱に整列された状態のボトルの頭部を把持し、横向きに姿勢変更を行いコンベアへ排出するためのものである。
【0005】
特許文献2には、ロボットのハンドに、容器等の物品をハンドリングする物品案内部材を備える物品取扱具及びその物品案内部材の成形方法が開示されている。物品案内部材は形状記憶部材として、多様な形状に対応するとともにボトルの本体側面を吸着ピックし、ボトル開口部側面を支持する形状を付加した構造が提案されている。
【0006】
特許文献3には、簡素な機構のハンドで、ワークの姿勢変更ができるロボットハンドとして、爪先に備えた自由に回転する機構でワークの姿勢を変更し、一定以上の力を加えるとローラ部の回転を止める構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平09-142411号公報
【文献】特開平11-254373号公報
【文献】特開2012-171018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術には以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術では、ボトルのピック時の姿勢が一定の立っている状態でしかピックができないことや、ボトルの向きの変更、つまり、対称軸を回転軸とする回転が難しいなどの問題があった。
【0009】
また、特許文献2に記載の技術では、ボトルの品種が変わった際に、吸着パッドの位置や形状部分の変更が必要となるほか、ボトルの向きの合わせ、つまり、対称軸を回転軸とする回転も難しい問題があった。
【0010】
また、特許文献3に開示の構造では、ハンド爪先内でのワークの姿勢が均一に定まりにくく精密な作業において作業不良を起こす問題があった。
【0011】
それゆえ、本発明では、簡素な構造で複数品種のボトル容器のハンドリングが可能であり、品種変更にも容易に対応できるロボットハンドおよび容器のハンドリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を有利に解決する本発明のロボットハンドは、横倒しの容器の側面を吸着する吸着手段と、吸着手段を回転させて前記容器を直立させる直立手段と、直立した前記容器の開口部を把持する把持手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
なお、本発明のロボットハンドは、
(a)前記吸着手段が、吸着パッドと、前記吸着パッドの伸縮機構と、を有すること、
(b)前記把持手段が、受動ローラを有すること、
(c)ロボットハンドの回転軸と、前記容器の対称軸とが一致するように配置されていること、
(d)前記吸着手段と前記直立手段との複数組が前記把持手段を挟んで対称に配置されていること、
などが好ましい実施態様になり得る。
【0014】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる容器のハンドリング方法は、ロボットハンドを用いて容器をハンドリングする方法であって、横倒しの容器を吸着手段によりピッキングする吸着ステップと、吸着した前記容器を直立手段で直立させる直立ステップと、直立した前記容器の開口部を把持手段で把持する把持ステップと、把持した前記容器から吸着手段を解離したうえで前記容器を収容治具に収容する収容ステップと、を含むことを特徴とする。
【0015】
なお、本発明にかかる容器のハンドリング方法は、
(e)前記吸着ステップでは、前記容器の側面の所定位置に吸着パッドを配して吸着し、前記把持ステップでは、前記吸着手段の有する伸縮機構により前記容器の開口部が把持手段の所定位置に来るように伸縮すること、
(f)前記吸着ステップでは、前記容器の開口部上面位置から前記容器の軸方向で一定の位置に吸着すること、
(g)前記把持ステップでは、前記容器の対称軸を中心に回転させて前記容器を所定の方向に向けること、
(h)前記吸着ステップでは、ロボットハンドの有する複数の吸着手段のうちのいずれか一つを用いて前記容器を吸着すること、
などが好ましい実施態様になり得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかるロボットハンドおよび容器のハンドリング方法によれば、簡素な構造で複数品種のボトル等の容器のハンドリングが可能であり、容器の品種変更にも容易に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるロボットハンドの構造を示す斜視図である。
【
図2】上記実施形態にかかるロボットハンドの三面図であって、(a)は正面図を表し、(b)は上面図を表し、(c)は右側面図を表す。
【
図3】上記実施形態にかかるロボットハンドを用いて容器のハンドリングを行う様子を表す模式斜視図である。
【
図4】(a)~(g)は上記実施形態にかかるロボットハンドを用いて行う容器のハンドリング方法の手順を示す模式側面図である。
【
図5】上記実施形態にかかるロボットハンドを用いて容器の吸着操作を行う様子を示す模式側面図であって、(a)は吸着パッドを容器の側面に接触させた状態を示し、(b)は吸着パッド用コンプライアンスを伸縮させて容器を所定位置に配置した状態を示す。
【
図6】上記実施形態にかかるロボットハンドの吸着パッド用コンプライアンスの動作を表す模式図であって、(a)は背面側斜視図を表し、(b)および(c)はそれぞれコンプライアンスの解放状態および拘束状態を表す背面拡大図である。
【
図7】上記実施形態にかかるロボットハンドを用いて容器の開口部を把持する様子を表す模式拡大図であって、(a)は受動ローラによる把持の状態を表す正面斜視図であり、(b)はその後押し当てパッドにより容器の開口部を拘束した状態を表す左上から見下ろした斜視図である。
【
図8】本発明の他の実施形態にかかるロボットハンドを表す斜視図である。
【
図9】本発明の別の実施形態にかかるロボットハンドを表す斜視図であって、(a)は右上から見下ろした斜視図を表し、(b)は右下から見上げた斜視図を表す。
【
図10】上記実施形態で取り扱う容器の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、この発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための部材や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。ここに、
図1は本発明の一実施形態にかかるロボットハンドの構造を示す斜視図である。
図2は上記実施形態にかかるロボットハンドの三面図であって、(a)は正面図を表し、(b)は上面図を表し、(c)は右側面図を表す。
図3は上記実施形態にかかるロボットハンドを用いて容器のハンドリングを行う様子を示す斜視図である。
図10は上記実施形態で取り扱う容器の一例を示す斜視図である。
【0019】
本実施形態にかかるロボットハンドの作業対象物(ワーク)は、
図10に示すように略円筒形状の開口部6bを持ち、その開口部6bに接合された本体部6aの側面が吸着手段によって保持可能な面を持つ、たとえば、ボトル状の容器6である。この容器6は、品種によって、開口部6bの径の大きさや長さ、本体部6aの断面形状や寸法、長径短径比や大きさ、長さが異なる。なお、容器6の対称軸は、開口部6bを円筒相当としての中心軸に置く。
【0020】
本実施形態のロボットハンド1は、
図3に示すように様々な角度で供給された横倒しのボトル6の本体部6aをピッキングするための吸着手段である吸着機構4を備える。吸着後に、ボトル6の姿勢を90°回転させて直立させるための直立手段である角度変更機構5を備える。そして、ボトル6の開口部6bを把持するための把持手段であるチャック3を備える。
【0021】
本実施形態にかかるロボットハンド1の上部には、たとえば、多関節ロボット9のアームと接続するためのツールチェンジャ2が備えられており、ツールチェンジャ2は、チャック3と併せて固定用金具2aに固定されている。また、吸着機構4が回動可能に固定用金具2aに固定されている。さらに、角度変更機構5が揺動可能に固定用金具2aに固定されている。
【0022】
チャック3は、一対の把持板3aと、受動ローラ3bと、押し当てシリンダ3cと、チャック用コンプライアンス3dと、押し当てパッド3eと、を有する。把持板3aは、たとえば、L字形の一対の金具であり、同期して水平方向に近づいたり遠ざかったりするように構成される。受動ローラ3bは軸内にベアリングが搭載されて、それぞれの把持板3aに支持されており、自由に回転する。受動ローラ3bは容器6の開口部を安定して把持できるように3個以上持つことが好ましい。4個以上持つことがより好ましい。押し当てシリンダ3cは、受動ローラ3bの回転を抑制するため、押し当てパッド3eと受動ローラ3bを接触させる機能を持つ。チャック用コンプライアンス3dはばね構造を持ち、チャック3で把持したワーク6をプレイスする際に変形し、位置ずれ・角度ずれを吸収する。もって、ワーク6を損傷することなくプレイスできる。なお、本実施形態では、チャックを一対の把持板3aで構成したが、把持板3aは3個以上であってもよい。
【0023】
吸着機構4は、吸着パッド4a本体と、吸着パッド4a本体を支持する固定部材4bと、吸着パッド4a本体を伸縮させる伸縮機構としての吸着パッド用コンプライアンス4cと、吸着パッド用コンプライアンス4cの固定機構4dと、を有する。初期状態では、吸着パッド4aは上面視で容器6の対称軸方向に沿うように複数を一列に配置されていることが好ましい。吸着パッド用コンプライアンス4cは、シリンダ機構を持つ。吸着パッド用コンプライアンス4cは、吸着パッド4a本体に力が加わっていないときには吸着パット4a本体を固定部材4bに対し既定の高さに維持する。吸着パッド用コンプライアンス4cは、吸着パッド本体4aが被吸着物たる容器6の本体部6aに押し当てられて垂直方向の力が加えられたときには吸着パット4a本体の位置を被吸着物との位置関係に応じて固定部材4bに対し変位させる。たとえば、シリンダ機構は、吸着機構4が90°回転して容器6が直立したときに容器6の対称軸がロボットハンド1の回転軸に一致するような位置に変位するように伸縮する。また、固定機構4dは、吸着パッド本体4aへの押し付け力が消失した場合にも吸着パッド用コンプライアンス4cのシリンダ機構の変位量を維持するため、シリンダ機構の可動部を挟んで拘束し摩擦力で保持する。
【0024】
角度変更機構5は、エアシリンダ5aと、エアシリンダ5aの伸縮により吸着機構4を回転させるリンク機構5bと、を有する。エアシリンダ5aは揺動可能に固定用金具2aに支持されている。リンク機構5bは固定用金具2aを挟み一端を回動可能に支持されて一対有しており、それぞれが吸着機構4の固定部材4bに固定されている。リンク機構5bの他端どうしをつなぐ棒状部材はエアシリンダ5aの可動部と接続されており、可動部の伸縮によって、吸着機構4の角度を変えられるようになっている。エアシリンダ5aは図示しないエア制御器からエアを供給される。
【0025】
多関節ロボット9の図示しない撮像手段や外部の撮像手段と画像解析装置とを組み合わせて、
図3に示すようなピックテーブル7上のワーク6の配置や向きを把握して、ピックアンドプレイスの最適な作業手順を構築することが好ましい。
【0026】
次に、上記実施形態にかかるロボットハンド1を用いた容器6のハンドリング方法について説明する。
図3に一例を示すように、ロボットハンド1は、たとえば、多関節ロボット9の先端のエンドエフェクタとして取り付けられている。ピックテーブル7の上にボトル6が様々な方向で横向きの状態で供給されている。そのとき、多関節ロボット9により任意のボトル6の位置および向きに合わせて、ロボットハンド1を移動させて、回転して吸着機構をボトル6の軸に平行に合わせ、ピッキング動作を行う。ピッキング後に、ボトル6を90°回転して直立させ、その開口部6bが上向きになるようにする。その後、ボトル6を運んで、セット用治具8のくぼみ8aに、ボトル本体部6aを挿入する。このセット用治具8は、ボトル6の中に入れる製品を、ボトル6に充填するための自動機にボトル6を整列供給するための治具であり、挿入作業後に空のセット用治具8が順次多関節ロボット9の前に供給される。
【0027】
ピッキング時の詳細動作を
図4に示し、以下に説明する。
(i)吸着位置への移動(
図4(a))
多関節ロボット9が、ピックテーブル7上のボトル6の位置姿勢に合わせて、ロボットハンド1を吸着位置の上空まで移動し、ロボットハンド1を回転させて所定の方向に吸着機構4を配置する。そのとき、一列複数の吸着パッド4aがボトル本体部6aの上方に置かれ、上面視でボトル6の対称軸に沿うようにすることが好ましい。
【0028】
(ii)吸着動作(
図4(b))および吸着パッド用コンプライアンスの伸縮動作(
図4(c))
吸着パッド4aがボトル本体部6aに触れるよう、ロボットハンド1をピックテーブル7に向けて下げるように動作させて、エアによる吸着を行う。この後、ボトル6を起立させた際にチャック6が把持可能な位置に開口部6bを配置するため、吸着動作の段階において吸着パッド4aの位置は次の2方向に対して定められる。詳細を
図5に示す。
図5(a)は、吸着パッド4aが各種形状のボトル6の本体部6a側面に触れた瞬間を表す。
図5(b)は吸着パッド4aをボトル6の本体部6a側面に押し付けてロボットハンド1を押し下げ所定の高さに固定したときの状態を示す。
【0029】
(方向1:水平方向)
図5(a)や(b)に示すように、ボトル6に対して水平方向、つまり、対称軸の方向の吸着位置6dは、ボトル開口部形状とボトル本体の接合位置6cから一定の距離Lとなる位置に定められる。この距離Lは、ボトルの品種に寄らず一定の距離とすることで、後段の姿勢変更時の位置関係を所定の配置に保つことができ、多品種のボトルをハンドリングすることが可能となる。また、この距離Lは、ロボットハンド1の設計に依存する。
(方向2:垂直方向)
ロボットハンド1を押し下げたとき、
図5(b)に示すように、ロボットハンド1とボトルの対称軸6eとの間の距離6fは、ボトル6の形状によらず一定に定められる。この距離は、ロボットハンド1の設計に依存する。
【0030】
なお、ロボットハンド1の垂直方向の位置決め時に吸着パッド4aはボトル本体部6aの側面に押し付けられる。そのとき、吸着パッド用コンプライアンス4cが吸着パッド4aの押し込み量に応じて縮む。また、ボトル6の開口部中心軸6eに対してロボットハンド1の高さを決める際、固定機構4dで吸着パッド用コンプライアンス4cの長さを固定して拘束する。
図6に固定機構4dの動作を模式的に示す。
図6(b)は吸着パッド用コンプライアンス4cの伸縮動作時の拡大背面図であり、固定機構4dが解放状態になっている。
図6(c)は同じく固定機構4dが吸着パッド用コンプライアンス4cの可動部を拘束した状態になっている。
【0031】
(iii)ボトルの姿勢変更(
図4(d))
多関節ロボット9がロボットハンド1を上方に持ち上げるように動作する。そして、角度変更機構5のエアシリンダ5aが伸長方向に動作すると、リンク機構5bを介して、固定部材4bが90°回転し、ボトル6を直立状態とする。この時、チャック3は開いた状態となっており、一対の把持板3aの間にボトル開口部6bが入る。水平方向吸着位置6dとボトル6の対称軸からの距離6fを所定の値とすることにより、ボトルサイズが異なる場合でもボトル開口部6bはチャック3が把持できる位置に移動する。
【0032】
(iv)ボトルの位置出しおよび角度変更機構の戻り(
図4(e))
チャック3を閉じて、把持板3aに取り付けられた、自由駆動が可能な受動ローラ3bがボトル開口部6bの4点を支えるように把持することにより、ロボットハンド1に対する開口部6bの位置決めが行われる。
図7(a)は受動ローラ3bがボトル開口部6bを把持した状態を表す正面斜視図である。この位置決め後に、吸着機構4のエアを解除し容器6を解放して、角度変更機構5のエアシリンダ5aを収縮方向に動作させ、リンク機構5bを介して、吸着機構4を初期位置に戻す。
【0033】
(v)位相変更
ボトル6の品種により、本体部6aに図示しない印字などがあり、セット用治具8に挿入する際の向きがある場合は、ボトル6の対称軸と一致させたロボットハンド1の回転軸を多関節ロボット9で動作することによりボトル6の向きを調整する。このときのみ押し当てシリンダ3cを動作させ、押し当てパッド3eを押し込むことで、受動ローラ3の回転を抑制し、位相合わせのための回転時のボトルの位置ズレを少なくする。
図7(b)は押し当てパッド3eによりボトル開口部6bを拘束した状態を表す左上から見下ろした斜視図である。
【0034】
(vi)治具へセット(
図4(g))
多関節ロボット9を動作させ、セット用治具8のくぼみ8aに、ボトル6の本体部6aを挿入する。この時、チャック用コンプライアンス3dを用いて押し付けながら挿入を行う。セット用治具8の奥までボトル6を挿入した後にチャック3を外側に動作させ、ボトル6を解放して、ロボットハンド1を上方へ退避することで作業が完了する。また、受動ローラ3bにより、くぼみ8aとボトル本体6aの位置にややズレがあった場合でも、ズレを吸収しながら挿入することができる。
【0035】
ロボットハンド1の他の実施形態として、
図8に示すように一対の吸着機構4と対応する一対の角度変更機構5を、チャック3を挟んで対称に両側に設置してもよい。こうすることで、手順(i)吸着準備位置への移動において、多関節ロボット9の移動量を減らすことができ、サイクルタイムの短縮効果が見込める。
【0036】
ロボットハンド1の別の実施形態として、
図9に示すように一対の吸着機構4を吸着回転軸4eに対し回転させるためのロータリーアクチュエータ11を設置しても良い。ロータリーアクチュエータ11は、エア駆動し、ロータリーアクチュエータ回転軸11aとベルト11bとプーリ機構11cを介して、吸着機構4を吸着回転軸4eに対し回転させて、吸着機構4の向きを容器6の向きに対し適切に揃えることができる。こうすることで、手順(i)吸着準備位置への移動において、多関節ロボット9の移動量を減らすことができ、サイクルタイムの短縮効果が見込める。
【産業上の利用可能性】
【0037】
かくして、本発明にかかるロボットハンドおよび容器のハンドリング方法は、簡素な構造で、ボトル容器のピッキング・姿勢変更が歩留まりよく行える。また、チャックの可動範囲内であれば、共通のハンドで複数品種のボトル容器のハンドリングが可能となる。異なる可動範囲のチャックに付け替えることで、対応可能な品種の拡大を容易に行う事が可能である。したがって、作業効率が向上し生産性が増大するので、産業上有用である。また、本発明におけるロボットハンドの吸着機構やチャックの形状を変更することで、ボトル以外のワークにおいて、ピッキングと姿勢変更を伴うハンドリングにも用いることができる。本発明におけるロボットハンドは、多関節ロボットだけでなく、自動機に取り付けることでも使用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 ロボットハンド
2 ツールチェンジャ
2a 固定用金具
3 チャック(把持手段)
3a 把持板
3b 受動ローラ
3c 押し当てシリンダ
3d チャック用コンプライアンス
3e 押し当てパッド
4 吸着機構(吸着手段)
4a (吸着)パッド(本体)
4b 固定部材
4c 吸着パッド用コンプライアンス
4d 固定機構
4e 吸着回転軸
5 角度変更機構(直立手段)
5a エアシリンダ
5b リンク機構
6 ボトル(ワーク、容器)
6a (容器、ボトル)本体部
6b (容器、ボトル)開口部
6c (開口部と本体部との)接合位置
6d (本体部側面の)吸着位置
6e (容器、ボトル)対称軸、(開口部の)中心軸
6f (ロボットハンドと対称軸との)距離
7 ピックテーブル
8 (セット用)治具
8a くぼみ
9 多関節ロボット
10 両側構成
11 ロータリーアクチュエータ
11a (ロータリーアクチュエータの)回転軸
11b ベルト
11c プーリ機構
【要約】
【課題】簡素な構造で複数品種の容器のハンドリングが可能であり、品種変更にも容易に対応できるロボットハンドおよび容器のハンドリング方法を提供する。
【解決手段】横倒しの容器の側面を吸着する吸着手段と、吸着手段を回転させて前記容器を直立させる直立手段と、直立した前記容器の開口部を把持する把持手段と、を備えた、ロボットハンドである。ロボットハンドを用いて容器をハンドリングする方法であって、横倒しの容器を吸着手段によりピッキングする吸着ステップと、吸着した前記容器を直立手段で直立させる直立ステップと、直立した前記容器の開口部を把持手段で把持する把持ステップと、把持した前記容器から吸着手段を解離したうえで前記容器を収容治具に収容する収容ステップと、を含む、容器のハンドリング方法である。
【選択図】
図1