(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】金型
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20240902BHJP
B29C 33/04 20060101ALI20240902BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20240902BHJP
B29C 49/42 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C33/04
B29C45/00
B29C49/42
(21)【出願番号】P 2023165906
(22)【出願日】2023-09-27
(62)【分割の表示】P 2022133196の分割
【原出願日】2018-09-07
【審査請求日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2017173440
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹花 大三郎
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-502500(JP,A)
【文献】特開2011-156728(JP,A)
【文献】特開2006-068956(JP,A)
【文献】特開2016-179700(JP,A)
【文献】特開2010-253792(JP,A)
【文献】特開平08-290466(JP,A)
【文献】特開昭59-039510(JP,A)
【文献】特開2000-202897(JP,A)
【文献】特開平11-213457(JP,A)
【文献】特開2006-015728(JP,A)
【文献】特開2019-072903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器のプリフォームを射出成形するための射出キャビティ型を含む金型であって、
凹部が形成された射出キャビティブロックと、
前記凹部に嵌め込まれたインナー部材と、
を備えており、
前記射出キャビティブロックは、前記凹部に連通する冷却媒体の供給管と排出管とを備えており、
前記インナー部材は、
樹脂材料が注入されるキャビティを規定する部分を有しているインナーキャビティと、
前記インナーキャビティが配置される空洞を区画する内壁を有しており、当該内壁と前記インナーキャビティの外面との間に前記キャビティを冷却するための冷却媒体を流通させるための冷却流路を規定するキャビティリングと、
を備えている、
金型。
【請求項2】
前記インナーキャビティは、
第一方向に前記空洞と連通するゲート部と、
前記第一方向に前記ゲート部と連通して前記キャビティの一部を規定する内壁面と、
を備えており、
前記冷却流路を規定する複数の溝部が、前記第一方向に並ぶように前記外面に形成されている、
請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記キャビティリングの前記内壁には、
前記インナーキャビティの第一部分と当接する第一当接部と、
前記インナーキャビティにおける前記第一部分よりも第一方向に離れた位置にある第二部分と当接する第二当接部と、
前記第一部分と前記第二部分の間において前記冷却流路を形成するように前記第一方向に延びている溝部と、
が形成されている、
請求項1に記載の金型。
【請求項4】
前記インナーキャビティは、
前記外面から前記第一方向と交差する第二方向へ突出する胴張出部と、
前記胴張出部よりも前記ゲート部に近い位置において前記外面から前記第二方向へ突出する脚部と、
前記胴張出部よりも前記ゲート部から離れた位置において前記外面から前記第二方向へ突出する肩部と、
を備えており、
前記胴張出部の前記第二方向に沿う幅寸法は、前記脚部の前記第二方向に沿う幅寸法よりも大きく、前記肩部の前記第二方向に沿う幅寸法よりも小さい、
請求項2に記載の金型。
【請求項5】
前記キャビティリングは、
前記空洞と前記供給管を連通する第一開口部と、
前記空洞と前記排出管を連通する第二開口部と、
前記内壁に設けられた複数の段差部と、
を備えており、
前記第二開口部は、前記第二当接部および前記段差部の一部を切り欠くように形成されている、
請求項3に記載の金型。
【請求項6】
前記インナーキャビティは、
前記第一方向に前記空洞と連通するゲート部と、
前記外面から前記第一方向と交差する第二方向へ突出する胴張出部と、
前記胴張出部よりも前記ゲート部に近い位置において前記外面から前記第二方向へ突出する脚部と、
前記胴張出部よりも前記ゲート部から離れた位置において前記外面から前記第二方向へ突出する肩部と、
を備えており、
前記肩部は、前記第二当接部に当接し、
前記胴張出部と前記脚部は、前記複数の段差部に当接している、
請求項5に記載の金型。
【請求項7】
前記射出キャビティ型に型締めされるネック型を含んでおり、
前記インナーキャビティは、
第一方向に前記空洞と連通するゲート部と、
前記外面から前記第一方向と交差する第二方向へ突出する胴張出部と、
前記胴張出部よりも前記ゲート部に近い位置において前記外面から前記第二方向へ突出する脚部と、
前記胴張出部よりも前記ゲート部から離れた位置において前記外面から前記第二方向へ突出しており、前記インナーキャビティに当接しつつ前記ネック型による型締め圧力を受ける肩部と、
を備えており、
前記肩部の前記第一方向に沿う厚み寸法は、前記胴張出部と前記脚部の前記第一方向に沿う厚み寸法よりも大きい、
請求項1に記載の金型。
【請求項8】
前記射出キャビティ型と型締めされることにより、前記プリフォームの形状に対応する成形空間を形成する射出コア型を含んでいる、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の金型。
【請求項9】
前記キャビティへ前記樹脂材料を注入するホットランナーを含んでいる、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の金型。
【請求項10】
前記射出キャビティ型は、複数のキャビティ列を含んでおり、当該複数のキャビティ列の各々においては、複数の前記キャビティが配列されている、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形用の金型に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、給水口と排水口とを1つずつ設けた8列式の成形板の冷却システムが開示されている。具体的には、1本の回路を一時的に2本にして射出キャビティ2列分を同時冷却した後に再び一本化させるという構成を、4回順次繰り返す冷却システムを開示している。また、特許文献2には、2列式のネック型の列間の距離を変換するピッチ変換機構を備える回転搬送型のブロー成形機、及び当該ブロー成形機に使用される2列式の金型が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2006/0263466号明細書
【文献】日本国特開2011-194865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の冷却システムでは、給排口が少なく作業性は良いが、単一の回路で8列分の成形板の冷却を行うため、1列目と8列目との水温差がかなり大きくなり冷却条件に差が生じてしまう。
【0005】
また、特許文献2に開示のピッチ変換機構がある回転搬送型のブロー成形機では、3列以上の金型を用いることで、省スペースながら生産性を高くすることができる。しかしながら、当該ブロー成形機ではピッチ変換機構が備えられていることにより、給水口及び排水口を設ける部分が制限され、従来の技術では3列以上の金型の内側の列と外側の列とを同様の条件で冷却することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、高い冷却能力を確保でき、また冷却条件を均一に近づけることができる射出成形用の金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することのできる本発明の金型は、
複数のキャビティが形成されたキャビティ列を3列以上備え、前記キャビティを冷却する冷却媒体を流通させる冷却流路を備える射出成形用の金型であって、
前記冷却流路は、少なくとも1つ以上の供給口と、前記供給口と連通された分配管と、前記分配管と連通された供給管と、前記供給管と連通され前記キャビティの外周に設けられたキャビティ冷却部と、前記キャビティ冷却部と連通された排出管と、前記排出管と連通された集約管と、前記集約管と連通された少なくとも1つ以上の排出口と、により形成され、
前記供給管及び前記排出管は、前記キャビティ列に平行に、かつ前記キャビティ列毎にそれぞれ少なくとも1つずつ形成されている。
【0008】
上記構成によれば、高い冷却能力を確保でき、また冷却条件を均一に近づけることができる射出成形用の金型を提供することができる。
【0009】
本発明の金型において、
前記供給管及び前記排出管はそれぞれ前記キャビティ列毎に2つずつ形成され、
1つの前記供給管により前記キャビティ列の半分の前記キャビティ冷却部に前記冷却媒体が供給されると好ましい。
【0010】
上記構成によれば、冷却条件を更に均一に近づけることができる金型を提供することができる。
【0011】
本発明の金型において、
前記分配管及び前記集約管はそれぞれ前記供給口及び前記排出口毎に形成され、
各前記分配管及び各前記集約管はそれぞれ独立して形成されていると好ましい。
【0012】
上記構成によれば、冷却媒体を安定して供給及び排出することができ、冷却を安定して実施できる。
【0013】
本発明の金型において、
ネック型の列間の距離を変換するピッチ変換機構を備える成形機用の金型であって、
前記ピッチ変換機構との非干渉部に前記供給口及び前記排出口が形成されていると好ましい。
【0014】
上記構成によれば、ピッチ変換機構を備える成形機に用いた場合に好適に金型を冷却することができる。
【0015】
本発明の金型において、
前記キャビティは、前記金型の凹部に嵌めこまれたインナーキャビティおよびキャビティリングの二つの部材から構成されるインナー部材により規定されていると好ましい。また、前記インナーキャビティは、前記キャビティを規定する内壁面と、射出成形時にネック型と当接する肩部と、を備え、前記キャビティリングは、前記キャビティリングが配置される空洞を内側に有する部材であり、前記肩部と当接する上面部を備え、前記インナーキャビティおよび前記キャビティリングの間に形成される流路が、前記キャビティ冷却部を構成するとさらに好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高い冷却能力を確保でき、また冷却条件を均一に近づけることができる射出成形用の金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】実施形態に係る金型の断面図であり、(a)は
図2のA-A断面図、(b)は
図2のB-B断面図、(c)は
図2のC-C断面図を表す。
【
図4】実施形態に係る金型に、ピッチ変換機構を備えるネック型が型締めされている様子を表す図である。
【
図5】
図3の円Aで囲まれた部分のインナー部材の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の一例について、図面を参照して説明する。尚、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。まず、
図1を参照して、成形品を製造するための成形機10について説明する。
図1は成形機10のブロック図である。
【0019】
図1に示すように、成形機10は、プリフォームを製造するための射出成形部11と、製造されたプリフォームの温度を調整するための温調部12とを機台18の上に備えている。射出成形部11には、原材料である樹脂材料を供給する射出装置15が接続されている。また、成形機10は、プリフォームをブローして成形品を製造するためのブロー成形部(ブロー装置の一例)13と、製造された成形品を取り出すための取出部14とを備えている。
【0020】
射出成形部11と温調部12とブロー成形部13と取出部14とは、搬送手段16を中心として所定角度(本実施形態では90度)ずつ回転した位置に設けられている。搬送手段16は回転板16a等で構成されており、回転板16aにはネック型ガイド部材42およびピッチ変換機構40を介し開閉可能なネック型41が取付けられている。ネック型41によりネック部が支持された状態の成形品(プリフォームや容器)が、回転板16aの
間欠的な回転(90°毎の回転)に伴って各部に搬送されるように構成されている。ネック型41は、複数個で回転板16aに保持される。例えば、1列12個からなるネック型41が3列、回転板16aの径方向に平行に並んで保持される。そして、ネック型ガイド部材42にはピッチ変換機構40が設けられている。ピッチ変換機構40は、二つのネック型ガイド部材42の両端より垂下するリンク機構であり(
図4を参照。)、成形の工程に合わせてネック型41の列間の距離を変換できるように構成されている。また、ピッチを広くする広ピッチ変換駆動部17aはブロー成形部13に、ピッチを狭くする狭ピッチ変換駆動部17bは取出部14に設けられる。
【0021】
ここで、
図4を参照して、ピッチ変換機構40の具体的な構成や動作を説明する。なお、
図4の破線は図面に表されている部材の内部の様子を示す想像線である。ピッチ変換機構40は、被押圧部40aと、リンク部40bと、ネック型保持部40cと、ピッチ維持部40dと、を少なくとも備える。ネック型保持部40cは、外側の列のネック型41を保持し、ネック型ガイド部材42にスライド可能に支持される。中央のネック型41の列は、ネック型ガイド部材42に直接的に支持される。ブロー成形部13で型開きと同時に被押圧部40aの下面が広ピッチ変換駆動部17aの押圧ロッドにより押されると、リンク部40bを介しネック型保持部40cがネック型ガイド部材42の上をスライド移動する。これにより、外側の列のネック型41は中央の列のネック型41と離れる方向に移動し、列間距離(ピッチ)が広がる(広ピッチになる)。そして、この列間距離はピッチ維持部40dにより維持される。次いで、その状態のネック型41が取出部14に移動して成形品が離型されると、狭ピッチ変換駆動部17bにより外側の列のネック型41が中央の列のネック型41に向けてスライド移動し、列間距離(ピッチ)が狭くなり(狭ピッチになり)、ピッチ維持部40dによりその距離が維持される。このように、中央の列のネック型41を静止させ、外側の列のネック型41をスライド移動させることで列間距離を変更させている。なお、狭ピッチは射出成形部11や温調部12のネック型41の列間距離になる。
【0022】
射出成形部11は、図示を省略する射出キャビティ型、射出コア型、ネック型等を備えている。これらの型が型締めされることで形成されるプリフォーム形状の空間内に、射出装置15から樹脂材料を流し込むことにより、有底のプリフォームが製造されるように構成されている。
【0023】
温調部12は、射出成形部11で製造されたプリフォームの温度を、延伸ブローするための適した温度に加熱して調整するように構成されている。また、温調部12の構成は、加熱ポット式、温調ポット式、赤外線ヒーター式、RED式、電磁波加熱式の何れの様式でも良い。
【0024】
ブロー成形部13は、温調部12で温度調整されたプリフォームに対して、割型からなる金型によって最終ブローを行い、樹脂製の容器を製造するように構成されている。
【0025】
取出部14は、ブロー成形部13で製造された成形品のネック部をネック型から開放して成形品を取り出すように構成されている。
【0026】
続いて
図2及び
図3を参照して、射出成形部11に備えられる射出キャビティ型20について説明する。
図2はキャビティ型20の平面概略図であり、
図3はキャビティ型20の断面図であり、(a)は
図2のA-A断面図、(b)は
図2のB-B断面図、(c)は
図2のC-C断面図を表す。なお、
図2及び
図3の破線は図面に表されている部材の内部の様子を示す想像線である。
【0027】
射出キャビティ型20は、下方の射出キャビティブロック固定板20aと上方の射出キャビティブロック20bとからなる。射出キャビティブロック20bは、複数(例えば12個)のキャビティ21が形成されたキャビティ列22を少なくとも3列備える。
図2では外側のキャビティ列22a、22bおよび内側のキャビティ列22cの位置関係が示されている。また、射出キャビティ型20は、キャビティ21を冷却する冷却媒体を流通させる冷却流路30を内部に備える。冷却媒体としては例えば冷却水を用いることができる。
【0028】
キャビティ21は、射出キャビティ型20の凹部(キャビティ冷却部34)に嵌めこまれた、インナーキャビティ50およびキャビティリング60で構成されるインナー部材によって規定されている。ここで、
図5~
図7を参照して、インナーキャビティ50およびキャビティリング60について詳細に説明する。
図5は、
図3の円Aで囲まれた部分のインナー部材の詳細を示す図である。
図5に示すようにキャビティリング60の上方に、インナーキャビティ50が載置されている。
図6は、インナーキャビティ50を示す断面図である。
図7は、キャビティリング60を示す斜視図である。
【0029】
インナーキャビティ50は、
図5および
図6に示すように、キャビティ21を規定する内壁面51と、ホットランナーからキャビティ21内へ樹脂材料を導入する、内壁面51と連通したゲート部52とを備えている。インナーキャビティ50は、キャビティ21の外周に亘って設けられ、キャビティ21から外側に向かって張出しており、射出成形時にネック型41の下面と当接する肩部53を備えている。インナーキャビティ50は、ゲート部52の外周に亘って設けられ、ゲート部52から外側に向かって張出している脚部54を備えている。インナーキャビティ50は、キャビティ21の外周に亘って設けられ、キャビティ21から外側に向かって張出しており、肩部53および脚部54の間に設けられた胴張出部55を備えている。肩部53、脚部54および胴張出部55は、胴部56により繋がっている。インナーキャビティ50は、肩部53、胴部56および胴張出部55により規定される凹部である第一の流路規定部57を備えている。インナーキャビティ50は、胴張出部55、胴部56および脚部54により規定される凹部である第二の流路規定部58を備えている。肩部53は、キャビティ21の深さH1に対して4分の1以上の厚みH2を持ち、胴張出部55および脚部54よりも厚くされている。第一の流路規定部57および第二の流路規定部58を規定する胴部56は、キャビティ21と冷却媒体とを隔てる部分である。
【0030】
キャビティリング60は、
図5および
図7に示すように、インナーキャビティ50およびホットランナーが配置される空洞61を内側に備える部材である。キャビティリング60は、インナーキャビティ50の肩部53と当接する上面部62を備える。キャビティリング60は、インナーキャビティ50の胴張出部55が載置される上段差部63を備える。キャビティリング60は、インナーキャビティ50の脚部54が載置される下段差部64を備える。キャビティリング60の内壁65の一部には、上段差部63および上面部62の一部を切り欠くように形成された凹部である第三の流路規定部66が形成されている。第三の流路規定部66の反対側の内壁65には、上段差部63を貫通する第一の貫通孔67および上面部62を切り欠く切欠部68が形成されている。切欠部68の上面に肩部53の下面が載置することで、第二の貫通孔69が構成される。キャビティリング60の外周面には、第一の貫通孔67の下端部に連なるように環状溝70が形成されている。射出キャビティ型20の凹部の内周面と環状溝70が当接することで、第四の流路規定部71が構成される。
【0031】
インナーキャビティ50およびキャビティリング60で構成されるインナー部材が射出キャビティ型20の凹部に嵌めこまれている状態において、脚部54は底面および側面で下段差部64に当接し、胴張出部55は底面および側面で上段差部63に当接し、肩部53は底面で上面部62に当接する。脚部54の側面の下段差部64の側面で形成される凹
部には、液密可能なシール部材が設けられる。この状態において、第一の貫通孔67および第二の流路規定部58が連通し、第二の流路規定部58および第三の流路規定部66が連通し、第三の流路規定部66および第一の流路規定部57が連通し、第一の流路規定部57および第二の貫通孔69が連通している。また、第四の流路規定部71と第一の貫通孔67が連通している。
【0032】
冷却流路30は、供給口31と、供給口31と連通された分配管32と、分配管32と連通された供給管33と、供給管33と連通されたキャビティ冷却部34と、キャビティ冷却部34と連通された排出管35と、排出管35と連通された集約管36と、集約管36と連通された排出口37と、により形成されている。供給口31および排出口37には、おのおの冷却媒体を給排させる冷却パイプ38が連結される。なお、供給口31、分配管32、集約管36、および排出口37は射出キャビティブロック固定板20aに設けられおり、供給管33、キャビティ冷却部34、および排出管35は射出キャビティブロック20bに設けられている。つまり、大径である分配管32や集約管36は、小径である供給管33や排出管35に対して下側に配置されており、高さが異なるように設けられている。これにより、射出キャビティブロック20bをピッチ変換機構40(例えばネック型ガイド部材42)と干渉しないように小型化でき、また、単位面積あたりのキャビティ21の数を増やすことができる。
【0033】
供給口31は、キャビティ列22と直交するキャビティ型20の側面23に2つ形成されている。2つの供給口31は、側面23の中央から離れた場所にそれぞれ形成されている。分配管32は射出キャビティ型20においてキャビティ21よりも側面23に近い位置に形成されている。分配管32は供給口31から供給された冷却媒体を3つの流路に分配する。分配管32は2つ形成されており、それぞれが独立して各供給口31と連通している。また各々の分配管32は、外側のキャビティ列22a(22b)と内側のキャビティ列22cとの間に延在している。
【0034】
供給管33は1つの分配管32に対して3つ形成されており、それぞれが1つの同じ分配管32に連通している。また、それぞれの供給管33は分配管32が延在している範囲で、並列的に設けられている。1つの供給管33はキャビティ列22の半分(6個)のキャビティ冷却部34の下部に連通している。供給口31から見て手前側に位置する半分のキャビティ21の周りに設けられているキャビティ冷却部34に連通している供給管33は、キャビティ列22の半分まで伸びている。供給口31から見て奥側に位置する半分のキャビティ21の周りに設けられているキャビティ冷却部34に連通している供給管33は、供給口31から見て最奥側のキャビティ21付近まで伸びている。
【0035】
キャビティ冷却部34は、キャビティ21の外周に設けられている。キャビティ冷却部34へ、その下部に連通された供給管33を通して冷却媒体が供給される。また、キャビティ冷却部34の上部には排出管35が連通されている。キャビティ冷却部34から、排出管35を通して冷却媒体が排出される。
【0036】
また、キャビティ冷却部34は、インナーキャビティ50の第一の流路規定部57および第二の流路規定部58、ならびにキャビティリング60の第三の流路規定部66、第一の貫通孔67および切欠部68により構成される(
図5)。ここで、キャビティ冷却部34における冷却媒体の挙動を説明する。まず、供給管33からキャビティリング60の第四の流路規定部71と第一の貫通孔67を通して、第二の流路規定部58により規定される流路R1に冷却媒体が導入される。次いで、キャビティリング60の第三の流路規定部66並びにインナーキャビティ50の肩部53、胴張出部55および胴部56により規定される流路R2に冷却媒体が導入される。次に、第一の流路規定部57により規定される流路R3に冷却媒体が導入される。最後に、インナーキャビティ50の肩部53およびキ
ャビティリング60の切欠部68により構成される第二の貫通孔69により規定される流路R4を通り、排出管35へ冷却媒体が排出される。
【0037】
1つの排出管35はキャビティ列22の半分(6個)のキャビティ冷却部34の上部に連通している。排出口37から見て手前側に位置する半分のキャビティ21の周りに設けられているキャビティ冷却部34に連通している排出管35は、キャビティ列22の半分まで伸びている。排出口37から見て奥側に位置する半分のキャビティ21の周りに設けられているキャビティ冷却部34に連通している排出管35は、排出口37から見て最奥側のキャビティ21付近まで伸びている。排出管35は1つの集約管36に対して3つ形成されており、それぞれが1つの同じ集約管36に連通している。また、それぞれの排出管35は集約管36が延在している範囲で、並列的に設けられている。
【0038】
集約管36は、射出キャビティ型20においてキャビティ21よりも側面23に近い位置に形成されている。集約管36は3つの排出管35から排出された冷却媒体を1つの流路に集約する。集約管36は2つ形成されており、それぞれが独立して各排出口37と連通している。排出口37は、側面23に2つ形成されている。2つの排出口37は、側面23の中央から離れた場所にそれぞれ形成されている。また各々の集約管36は、外側のキャビティ列22a(22b)と内側のキャビティ列22cとの間に延在している。
【0039】
供給口31が形成された側面23及び排出口37が形成された側面23は、対向している。また、排出管35は、供給管33に比べてキャビティ21が形成された射出キャビティ型20の上面24の近くに形成されている。分配管32及び集約管36は、供給管33よりも上面24と対向する射出キャビティ型20の底面25の近くに形成されている。分配管32及び集約管36は略同径で形成され、供給管33及び排出管35は略同径で形成されている。分配管32は供給管33より太く、集約管36は排出管35より太く形成されている。
【0040】
図4は、本実施形態の射出キャビティ型20にピッチ変換機構40を備えるネック型41が型締めされている様子を表す図である。ピッチ変換機構40は、射出キャビティ型20にネック型41を型締めする際に、側面23の中央近傍に配置される。供給口31及び排出口37は、ピッチ変換機構に接触しない非干渉部に形成されている。なお、射出キャビティ型20には、機台18の上に固定されたホットランナー80を介し射出装置15から溶融樹脂が導入される。
上記の構成により、一つの分配管32からの冷却媒体を外側のキャビティ列22a(22b)および内側のキャビティ列22cに好適に分配して供給することが可能となり、また、外側のキャビティ列22a(22b)および内側のキャビティ列22cの冷却媒体を集約させて一つの集約管36から排出することが可能になる。
【0041】
ところで、従来の供給口及び排出口が少なく、連続した回路で複数のキャビティ列の冷却を行う冷却流路を備えた金型では、供給口付近の冷却媒体の温度と排出口付近の冷却媒体の温度との差が大きくなってしまうおそれがあった。それにより冷却条件にむらが生じてしまい、また下流のキャビティを十分に冷却できなくなるおそれがあった。大口の供給口、供給管、排出口及び排出管を形成すれば水量を増やすことができ、冷却条件を均一に近づけることが可能だが、金型内で冷却流路が占める割合が大きくなり、射出成形できる成形品の大きさや形状が限定されてしまう。
【0042】
本実施形態の射出キャビティ型20によれば、2つの供給口31及び排出口37を有する冷却流路30を備えることにより、冷却流路を太くすることなく水量を多くでき、高い冷却能力を確保できる。また、供給管33及び排出管35をキャビティ列22に平行に設け、かつキャビティ列22毎にそれぞれ少なくとも1つずつ設けていることにより、各キ
ャビティ列22での冷却条件を均一に近づけることができ、射出キャビティ型20の冷却条件を均一に近づけることができる。
【0043】
また、本実施形態の射出キャビティ型20によれば、キャビティ列22の半分のキャビティ冷却部34に対して各供給管33から冷却媒体が供給されるので、一本の供給管33当たりのキャビティ冷却部34を減らすことができ、各キャビティ21での冷却条件を均一に近づけることができ、射出キャビティ型20の冷却条件を更に均一に近づけることができる。また、一本あたりの供給管33の直径を小さくできるため、金型内の冷却流路の配置構成における融通性が高まり、成形品の大きさや形状等に関する制限を減少させることもできる。
【0044】
また、本実施形態の射出キャビティ型20によれば、供給口31及び排出口37毎に分配管32及び集約管36がそれぞれ独立して形成されているので、冷却媒体を安定して供給及び排出することができ、冷却を安定して実施できる。
【0045】
また、ピッチ変換機構を備える成形機では、射出成形時に型閉状態で金型の列と直交する面の中央付近にピッチ変換機構が配置される。そのため、給水口及び排水口を形成できる場所が制限される。従来の方法では、当該成形機において金型に3列以上のキャビティ列を設けると金型の内側のキャビティ列を外側のキャビティ列と同様の冷却条件で均一に冷却することが困難であった。本実施形態の射出キャビティ型20によれば、ピッチ変換機構40との非干渉部に供給口31及び排出口37が形成されて、供給管33及び排出管35が、キャビティ列22に平行に、かつキャビティ列22毎に形成されているので、ピッチ変換機構40を備える成形機10に用いた場合に好適に金型を冷却することができる。
【0046】
また、キャビティを規定するインナー部材は、射出成形時にキャビティ型とネック型とコア型(図示無)を型締めする際の型締め圧力に対抗するためにある程度の強度が要求される。また、インナー部材は内部に冷却媒体が通されて射出成形されたプリフォームを冷却する。冷却効率を上げる観点から、インナー部材の内部を流れる冷却媒体はできるだけインナー部材の内壁面に近い箇所を流路とすることが望ましい。しかしながら、一つの部材で構成されるインナー部材において内壁面に近い箇所に冷却媒体の流路を形成すると、インナー部材の内壁面に近い部分の厚みが局所的に小さくなってその部分での強度(剛性度)が減少してしまい、型締め圧力に耐えることができなくなる。拡散接合方式によりキャビティ近傍に冷流路を配したインナー部材を製造することも可能だが、コスト高に繋がり、接合度合が不十分だと冷却媒体の漏れに繋がる。また、射出成形時には、インナー部材の下に位置するホットランナーからの熱が伝わるため、一つの部材で構成されるインナー部材では冷却効率が下がる恐れがある。
【0047】
本実施形態の射出キャビティ型20では、インナー部材がインナーキャビティ50およびキャビティリング60の2つの部材で構成されている。これにより、ホットランナーからの熱がキャビティリング60で中断されてインナーキャビティ50に伝わる熱を少なくしているため、一つの部材で構成されるインナー部材を用いる場合に比べて冷却効率が下がることを抑制できる。
【0048】
また、インナーキャビティ50の肩部53に厚みを持たせ、インナー部材が射出キャビティ型20の凹部に嵌めこまれている状態において、肩部53は底面でキャビティリング60の上面部62に当接している。型締め圧力に対して対抗するための接地面積を稼ぎ、且つ圧力がかかる肩部を厚くしたことにより、キャビティ21と型締め圧力に対抗するために必要な強度を確保することができる。そして、インナーキャビティ50とキャビティリング60を別部材としたことにより、必要な強度を確保しつつ、キャビティ21と冷却
媒体を隔てる胴部56を薄くして冷却媒体を内壁面51に近い箇所で流すことができる。これにより、高い冷却効率を達成できる。
【0049】
なお、射出成形における型締め圧力は、キャビティ単体の断面積およびキャビティの個数に対応して設定される。この型締め圧力に対抗することのできる強度(剛性度)を、ネック型等と当接するインナーキャビティの肩部に備えさせるために、肩部に厚みを持たせる必要がある。一つの部材で構成されるインナー部材(インナーキャビティ単体)であると、それ自体で型締め圧力に対抗するために肩部の厚みを大きくする必要がある。これに対して、インナーキャビティ50とキャビティリング60とによりインナー部材を構成する上記の実施形態によれば、インナーキャビティ50の肩部53にかかる型締め圧力をキャビティリング60が受けることができる。これにより、一つの部材で構成されるインナー部材の場合と比較して、肩部53の厚みを薄くすることができる。これにより、冷却媒体用の冷却回路をキャビティ21の内壁面の側により近づけることができ、射出キャビティ型20の冷却効率を高めることができる。
【0050】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
例えば、分配管32や集約管36を、それぞれ外側の二つのキャビティ列22a、22bの間にわたって延在する単一(一本)の構成にし、そこに2つ以上の供給口31や排出口37を設けた構成にしても良い。また、前述の構成の場合、十分な冷却能力が満たされるようであれば、供給口31や排出口37はそれぞれ1つずつにしても構わない。
【0051】
なお、本願は、2017年9月8日付で出願された日本国特許出願(特願2017-173440)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【符号の説明】
【0052】
10:成形機、11:射出成形部、12:温調部、13:ブロー成形部、14:取出部、15:射出装置、16:搬送手段、16a:回転板、20:射出キャビティ型、21:キャビティ、22:キャビティ列、23:側面、24:上面、25:底面、30:冷却流路、31:供給口、32:分配管、33:供給管、34:キャビティ冷却部、35:排出管、36:集約管、37:排出口、40:ピッチ変換機構、41:ネック型、42:ネック型ガイド部材