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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】眼の排液インプラント
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
A61F9/007 160
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023504494
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 SG2020050427
(87)【国際公開番号】W WO2022019827
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】521453758
【氏名又は名称】ナショナル ユニバーシティ ホスピタル (シンガポール) ピーティーイー エルティーディー
(73)【特許権者】
【識別番号】523023513
【氏名又は名称】アドヴァンスド オプタルミック イノヴェーションズ ピーティーイー. エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100221327
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 亮
(72)【発明者】
【氏名】チュウ,ポール
(72)【発明者】
【氏名】コー,ヴィクトール
(72)【発明者】
【氏名】クー,チェリー,チョーイ リン
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0078416(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0348149(US,A1)
【文献】国際公開第2019/018807(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の排液インプラントであって、
眼の強膜表面または強膜下腔に配置されることを可能にするようなサイズおよび形状の柔軟なプレートであって、
a)第1の外部面および第2の下部外部面であって、前記第1の外部面から前記第2の下部外部面まで各々延びている複数の開口を有する、第1の外部面および第2の下部外部面、および
b)流体排液管保持構造
を備えている、前記柔軟なプレートと、
前記保持構造に接続され、前記インプラントに、前記インプラントの長手方向に沿った長手方向軸を与える無弁の流体排液管であって、前記眼の前眼房から結膜下または脈絡膜上腔に流体を排液するように適合されている無弁の流体排液管と、
を備え、
前記保持構造が、前記長手方向において実質的に前記プレートの全寸法にわたって延びており、
前記保持構造は、断面視において、前記保持構造が少なくとも1つの変曲点を含むよう設計されており、
前記断面視において、前記インプラントの前記第1の外部面および前記第2の下部外部面は、前記保持構造を除いて平坦であり、
前記インプラントは、前記インプラントが結膜下で使用するものであるかまたは脈絡膜上で使用するものであるかに応じて、縫合の前に、前記眼の上の第1の位置または前記眼の上の前記第1の位置に対して逆にされた第2の位置のいずれかに配置可能である、前記眼の排液インプラント。
【請求項2】
前記保持構造が、前記プレートの前記第1の外部面、前記プレートの前記第2の下部外部、またはその両方と一体である請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
記保持構造が前記プレートを二等分している、請求項1から2のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項4】
(i)前記保持構造の両側に等しい数の開口が含まれており、および/または、
(ii)各開口が同じサイズおよび形状である、および/または、
(iii)各開口が湾曲している
請求項1から3のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項5】
前記断面視において、
前記第1の外部面は、第1の平坦な部分と第2の平坦な部分を有し、
前記第1の平坦な部分および前記第2の平坦な部分は、前記保持構造により分離されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
前記断面視において、
前記保持構造は、前記第1の外部面の前記第1の平坦な部分と前記保持構造の平坦な頂部部分とをつなげる上りのS型形状湾曲部を有し、
前記保持構造は、前記保持構造の前記平坦な頂部部分と前記第1の外部面の前記第2の平坦な部分とをつなげる下りのS型形状湾曲部を有し、
前記上りのS型形状湾曲部は第1の変曲点を有し、前記下りのS型形状湾曲部は第2の変曲点を有する、請求項に記載のインプラント。
【請求項7】
前記プレートは2つの開口を備え、
前記断面視において、(i)前記開口のうちの一方は、前記第1の外部面の前記第1の平坦な部分と前記保持構造の前記上りのS型形状湾曲部との間に位置し、(ii)前記開口のうちの他方は、前記保持構造の前記下りのS型形状湾曲部と前記第1の外部面の前記第2の平坦な部分との間に位置する、請求項に記載のインプラント。
【請求項8】
(i)前記インプラントがその長手方向軸を中心として対称である、および/または
(ii)前記インプラントが、その長手方向軸に対して直交する少なくとも1つの軸を中心として対称である、請求項1から7のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項9】
前記インプラントがシリコーン製である、請求項1から8のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項10】
(i)前記無弁の流体排液管の内部直径が、0.101~0.108mmの範囲である、および/または、
(ii)前記無弁の流体排液管が、前記プレートよりも柔軟でない直線状の管である、
請求項1から9のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項11】
前記プレートのサイズが16mmまたはそれより小さい、請求項1から10のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項12】
(i)前記無弁の流体排液管の外側壁を前記無弁の流体排液管の内側壁から隔てている距離が、前記無弁の流体排液管の前記内側壁の直径よりも大きい、および/または、
(ii)前記無弁の流体排液管の外側壁の直径が、前記第1の外部面から前記第2の下部外部面まで延びている開口の直径未満である、および/または、
(iii)前記無弁の流体排液管の前記外側壁の直径が、前記第1の外部面から前記第2の下部外部面まで延びている開口の直径の半分未満である、請求項1から11のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項13】
前記無弁の流体排液管と前記保持構造との間の接続が、一体接続または接着接続である、請求項1から12のいずれか一項に記載のインプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼の排液インプラントに関し、詳細には、緑内障または高眼圧症のある眼の中でコントロールされた方式で眼内圧を低減するための脈絡膜上または結膜下緑内障排液インプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書における従来技術への参照はいずれも、そのような従来技術が一般的知識の一部をなすといういかなる形態の示唆の承認でもなく、またそのようなものとして解釈されるべきでない。
【0003】
眼に栄養を与える房水は、眼の中で生産される水様の流体であり、一定の生産および排液サイクルにある。この生産と排液の平衡状態が、健康な眼では眼内圧を維持する。眼内の圧力の増大につながるこの平衡状態のアンバランスは高眼圧症として知られ、これは緑内障として知られる視神経症の発症の危険因子の一つである。緑内障は視神経にダメージを与えることがあり、それにより視野に盲点(像の検出が行われない個人の視覚の小さい領域)が生じることがあり、治療しないままにすると、緑内障は不可逆的な視力の喪失につながり得る。
【0004】
緑内障を治療するために利用できるいくつかの治療形態があり、それらは通常、段階的な方法で取り組まれ、通常は局所的に(目薬を通じて)または経口で投与される薬物療法から開始する。それらの形態の薬物療法は、房水の生産を減らすように働くか、または排液の率を増すように働くかのいずれかである。
【0005】
そのような薬物療法伴う問題は通常2つあり、第一に、通常はステロイドをベースとするため、望ましくない副作用を有する傾向があり、第二に、患者の中には薬を服用しないか、またはしばしば服用するのを忘れる者があるため、患者コンプライアンスが問題となり得る。言うまでもなく、費用も、世界の地域によっては要因となり得る。
【0006】
薬物療法が効かない場合は、手術が次の選択肢であり、典型的な処置は、いわゆる濾過手術、または虹彩切除を伴う。それらの処置は各々侵襲的な手術を要するため、それらも本質的なリスクを有し、長期的には必ずしも問題を解決するとは限らない。
【0007】
これにより最終的な治療方法に至り、それは眼の排液インプラントの外科的埋め込みである。そのようなインプラントは、「房水シャント」としても知られ、通例は、眼の強膜に取り付けられるように適合された柔軟なプレートの形態であり、眼の前眼房内に置かれる排液管が、そのプレートに取り付けられている。
【0008】
しかし、そのようなインプラントは、合併症および再手術という重大なリスクも伴う。それでも、従来の緑内障インプラント手術に代わるのは、極低侵襲緑内障手術(MIGS(minimally invasive glaucoma surgeries))であり、これは、短い手術時間、低侵襲性の到達法、良好な安全性プロファイル、およびより速い術後回復を特徴とするインプラントの群である。MIGSは、房水の排液、線維柱帯バイパス、結膜下および脈絡膜上排液の態様によっておおまかに分類することができる。これらのうち、脈絡膜上排液インプラントが、最も研究が進んでおらず、通常は、インプラントを適所に固定するための方法を一つしか可能にしない。
【0009】
したがって、従来技術に伴う上記問題に鑑みて、上述の問題を克服することを図る眼の排液インプラントを提供する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0010】
前述に照らして、1つの態様における本発明は、概して、眼の排液インプラントに属し、このインプラントは、
眼の強膜表面または強膜下腔に配置されることを可能にするようなサイズおよび形状の柔軟なプレートであって、
a)第1の外部面および第2の外部面であって、第1の外部面から第2の外部面まで各々延びている複数の開口を有する、第1の外部面および第2の外部面、および
b)流体排液管保持構造
を備えている、柔軟なプレートと、
保持構造に接続され、インプラントに長手方向軸を与える、無弁の流体排液管であって、眼の前眼房から結膜下または脈絡膜上腔のいずれかに流体を排液するように適合されている無弁の流体排液管と、を備え、
保持構造が、実質的にプレートの全寸法にわたって延びている。
【0011】
そのような構成は、排液管のかなりの部分が保持構造の中に位置し、この部分は動くことができず、および/または眼と接触し得ないため、排液管によって引き起こされるインプラントの着用者によって見られる閃光の可能性を低減する可能性が高い。そのような動きまたは接触は、個人によって経験され得る、閃光または点滅として知られている知覚の潜在的な原因である。加えて、プレートの設計は、それが強膜片の下に埋め込まれることを可能にし、それによりその固定を向上させ、維持する。
【0012】
好ましくは、流体排液管保持構造は、プレートの第1の外部面またはプレートの第2の外部表面の少なくとも一方と一体である。
【0013】
好ましくは、プレートの少なくとも1つの外部面が平坦である。
【0014】
好ましくは、保持構造は、線形または直線部分を備える。そのような構成は、流体排液管の直線部分を受けるために利用されてよい。
【0015】
保持構造はプレートの任意の態様と交差し得るが、好ましくは、保持構造はプレートを二等分する。そのような形態では、好ましくは、保持構造は、プレートの長さを二等分する。
【0016】
好ましくは、保持構造の両側に等しい数の開口が形成され/設けられている。そのような形態では、保持構造の各側に1つのみの開口が設けられる。開口の存在は、インプラントを適所に固定するために縫合が適用されることを可能にすると共に、プレート、したがってインプラントを安定化させるその後の線維成長を可能にする。
【0017】
好ましくは、各開口は、同じサイズおよび形状である。
【0018】
好ましくは、各開口は湾曲しており、そのような形態では、その湾曲が円を形成する。
【0019】
好ましくは、各開口の周方向周部が、流体排液管保持構造の開始部に接触している。これは、与えられた開口のサイズに対してプレートの寸法の大きさを低減することを可能にする。
【0020】
好ましくは、プレートのサイズは、16mmまたはそれより小さい面積を有してよい。代替として、プレートのサイズは、16mmよりも大きい面積を有してよい。
【0021】
好ましくは、保持構造は、断面視で、保持構造が少なくとも1つの変曲点を含むような形状および寸法である。そのような形態では、保持構造は、2つの変曲点を含んでいる。さらにそのような形態では、保持構造は、連続した湾曲部を備えず、平坦な頂部を有する。そのような実施形態は、平坦な側部と非平坦な(または高くなった)側部とを有するインプラントにつながる。結膜下層は脈絡膜上層よりも薄いので、インプラントが眼の内部から結膜腔の外側に流体を排液することが意図される場合、インプラントは、平坦な側を下にして眼に配置されなければならず、前眼房から出て脈絡膜上腔に入る流体の流出を可能にするように意図される場合は、非平坦な側を下にして眼に配置されなければならない。この理由は、適所に縫合されるとき、前者の排液管は、眼の表面に対して、後者よりも浅く配置されることになる(これは結膜下での使用に好ましい)ためであり、後者はより深くなる(よって脈絡膜上で使用するためにより適する)。したがって、そのような形態では、インプラントの配置は、インプラントが結膜下で使用するためのものであるか、それとも脈絡膜上で使用するためのものであるかに応じて、縫合の前に、眼の上で第1の位置または第2の逆にされた(第1の位置に対して)位置のいずれかにあり得る。
【0022】
好ましくは、排液管の内部直径が、0.101~0.108mmの範囲である。そのような範囲では、房水の流量が、内部直径の流れ抵抗に関するハーゲン・ポアズイユ式に従わず、この範囲の精度が、利用可能な製造公差内になる。
【0023】
プレートは、楕円、長円、円、または丸められた縁部を備える任意の他の形状であり得る。好ましくは、プレートの形状は、切頭円または「四角円(squircle)」の形態であり、すなわち一連の交互の直線部分と湾曲部分とから形成される。上述の交互の湾曲形状/直線形状の各々は、眼に装着されたときにある程度の安定性を提供し、また、まばたきが起きるときに眼球の結膜の摩擦の度合いを低減し、それは、プレートの形状が比較的「鋭い」点または縁部を有する場合により顕著になり得る。円または「四角円」の形状は、それが両方とも2つの向きのうちの一方に正しく装着できるため、特に有利である。
【0024】
好ましくは、流体排液管は、直線状の比較的非柔軟な管である。
【0025】
そのような構成は、詰まりのリスクを増大させ得るよじれを防止する。
【0026】
好ましくは、排液管の直径は、第1の外部面によって占められる同じ平面内に実質的に位置する。
【0027】
好ましくは、排液管の周方向周部の最も低い点が、第1の外部面と第2の外部面とを隔てている距離の実質的に中間に位置する。
【0028】
好ましくは、インプラントは、その長手方向軸を中心として対称である。これは、インプラントが、適所に固定されているときにどちらの側を上にして配置されることも可能にする。
【0029】
好ましくは、インプラントは、その長手方向軸に対して直交する少なくとも1つの軸を中心として対称である。この構成は、その結果、対称なインプラントになるという利点を有する。
【0030】
排液管は、排液管の内側壁の直径に対して、排液管の外側壁を排液管の内側壁から隔てる距離を調節することにより、概ね柔軟となり得る。例えば、排液管の外側壁を排液管の内側壁から隔てる距離が、排液管の内側壁の直径よりも大きい場合、この結果、比較的柔軟でない排液管となる。
【0031】
そのような構成は、排液管の柔軟性を低下させ、適正な房水の流量が得られることを可能にするという利点を有する。
【0032】
それぞれの面の上または下から見たときの(すなわち2次元の)それぞれの第1および第2の外部面の縁部長さは、異なるサイズであり得、それにより、両縁部同士を繋ぐベベル壁となり、壁の各端部は、必ずしも同じ弧長でないフィレットまたは湾曲部によってそれぞれの外部面縁部に接続されている。各湾曲部は、インプラントが適所にあるときに眼への刺激を最小にする働きをする。
【0033】
代替として、それぞれの第1および第2の外部面の縁部長さが同じサイズである場合、両縁部同士を繋ぐ厚みは、以下のものであり得る。
i)フィレットもしくは湾曲部によってそれぞれの外部面縁部に接続された縦方向の壁;
ii)それぞれの外部面縁部を繋ぐ連続した湾曲部、または
iii)ベベルの各斜面が湾曲部によって互いと接続されている、フィレットもしくは湾曲部によってそれぞれの外部面縁部に接続された二段ベベル。
【0034】
好ましくは、排液管の外側壁の直径が、第1の外部面から第2の外部面まで延びている開口の直径未満であり、そのような形態では、排液管の外側壁の直径は、第1の外部面から第2の外部面まで延びている開口の直径の半分未満である。
【0035】
無弁の流体排液管と保持構造との間の接続は、滑りばめである、および/もしくは接着剤(インプラントがシリコーン製である場合は、好ましくはシリコーン接着剤)で接続されてよく、または一体接続であってもよい。
【0036】
インプラントはポリアミド製であり得るが、好ましくはシリコーン製である。他の生体適合性材料が使用されてよいことが企図される。
【0037】
本発明がより容易に理解され、実施され得るように、次いで以下の添付の図面紙面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明による眼の排液インプラントの一実施形態の1つの面の図であり、縦方向の点線は、インプラントの長手方向軸および第1の対称線を表し、横方向の点線は、インプラントの別の対称線を表している。
図2】点線のない、図1に示されるインプラントの実施形態の別の図である。
図3】反対側の面を示した、図1および図2に示されるインプラントの実施形態の図である。
図4図1~3に示されるインプラントの実施形態の側面図である。
図5図4に示されるインプラントの実施形態の反対側の側面図である。
図6図1~5に示されるインプラントの実施形態の断面図であり、インプラントの各部の構造を示し、インプラントのそれぞれの第1および第2の外部面を繋ぐ縦方向壁を示している。
図7図1~5に示されるインプラントの実施形態の等角図である。
図8図1~5に示されるインプラントの別の実施形態の断面図であり、インプラントのそれぞれの第1および第2の外部面を繋ぐベベル付きの壁を有する。
図9】インプラントの別の実施形態の図であり、このタイプの実施形態および他の実施形態に利用可能なインプラントのそれぞれの第1および第2の外部面を繋ぐために利用することが可能な、様々なタイプの壁の範囲を含む。
図10】インプラントの別の実施形態の図である。
図11】インプラントの別の実施形態の図であり、また、任意のタイプの実施形態において、縦方向壁をインプラントのそれぞれの第1および第2の外部面に繋ぐために用いることができるフィレットタイプの範囲を含む。
図12】インプラントのそれぞれの第1および第2の外部面を繋ぐ二段のベベルを示し、X軸、Y軸、およびZ軸を中心として対称である、インプラントの別の実施形態の図である。
図13】眼の内部から結膜腔の外側に流体を排液するために使用されることが意図される場合にインプラントを固定する手術方法を示す図であり、同図は初めに、比較的薄い結膜下層を貫通する切開を示し、インプラントをある向きで適所に入れ、結膜下を再縫合しながら、インプラントを縫合して適所に入れる。
図14】前眼房から出て脈絡膜上腔に入る流体の流出を可能にするように意図される場合にインプラントを固定する手術方法を示す図であり、同図は初めに、より厚い(結膜下層と比較して。図13参照)脈絡膜上層を貫通する切開を示し、図13のインプラントに対して逆にした向きでインプラントを適所に入れ、切断された組織を再縫合しながらインプラントを縫合して適所に入れる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本明細書において、用語「一体の」は、当初は別個である完全体の群から、単一の、通常は分解不可能な構造に一体的に組み立てたものから一体的に組み立てられた物品と、最初から一体形成された単一の構造との両方を包含することが意図される。
【0040】
図1および図2は、全体が10として参照される、眼の排液インプラントの同じ実施形態を示す。インプラント10は、交互になった湾曲部分12と直線部分13、14とから形成される、16平方ミリメートル(mm)未満の柔軟な平坦なプレート11を含み、サイズおよび形状は、それが眼の強膜表面または強膜下腔に配置されることを可能にするようなものである。眼の排液インプラント10は、部分的にまたは全体がシリコーンで/から形成されてよい。
【0041】
流体排液管保持構造23(下記で図6を参照して説明される)までの定められた厚み20のプレート11は、第1の外部面15を備え、図3は、第2の外部面17を示し、これは、図3において下から見たとき、第2の外部面17の縁部長さを明瞭に見ることができる。
【0042】
同一のサイズおよび形状である、離間した円形の開口19の対が、プレート11の第1の面15と第2の面17との間に延び、それらの面同士を隔てるシリコーン20の厚みが、各開口19の壁21を画定する。各開口19の中心は、インプラント10の横方向対称線22に沿って位置する。プレート11はさらに、プレート11の第1の外部面15と一体で、その一部を形成する、線形の流体排液管保持構造23を備える。保持構造23は、2つの構成要素である面および厚みを備え、後者は、保持構造23の面を第2の外部面17から隔てている。保持構造23は、第1の外部面15の残りの部分に対して高くなっている部分であり、プレート11の一端からプレート11の中心に沿って他端まで延び、それによりプレート11を二等分し、保持構造23の主軸は、プレート11の縦方向対称線25と同軸である。
【0043】
断面では、プレート11の第1の外部面15の一方の側から他方の側に進んで、一つは、平坦な第1の外部面15で始まった後に、上りの「S型」形状湾曲部(したがって変曲点26を含む)で開始する保持構造23に合流し、続いて平坦な頂部部分27、次いで下りの「S型」形状湾曲部(したがってさらなる変曲点26を含む)があり、その後、インプラント10の平坦な第1の外部面15に再び合流する。
【0044】
したがって、保持構造23の面を第2の外部面17から隔てている厚みは、保持構造23の両側の第1の外部面15の領域を第2の外部面17から隔てている厚み20よりも大きい。各開口19は、保持構造23の両側に位置し、各開口19の周方向周部は、各「S型」形状湾曲部の上りの開始部と接触している。眼の前眼房(図示せず)から流体を排液するように適合された、0.101~0.108mmの内部直径29を有する細長い円筒形の流体排液管28が、保持構造23と一体であり、管28の長手方向軸は、縦方向対称線25と同軸である。プレート11の両側における管28の長さは同じであり、排液管28の周方向周部の最も低い点は、第1の外部面15と第2の外部面17とを隔てている厚み16のほぼ中間に位置する。
【0045】
加えて、管28の直径は、第1の外部面15によって占められる同じ平面内にあり、内部管のサイズおよび長さは、従来の管とは異なる抵抗を房水の流体流に与え、したがって、本発明の意図される目的のために理想的な流量をもたらす。言い換えると、本発明の管28を通る房水の流量は、これに限定されないが、通常のハーゲン・ポアズイユ式などの流体動態の原理下で与えられる房水の通常の流量に従わない。
【0046】
プレート11の互いと対向している直線部分13は、プレート11の互いと対向している直線部分14と同じ長さでなくてよく、後者が前者よりも長く、部分13が、保持構造23のそれぞれの端部(および幅)を形成する。直線部分13の長さは、開口19の直径未満である。
【0047】
図8は、図6に示す実施形態の変形例を示す。図6に示すようにフィレットによってそれぞれの外部面縁部を繋ぐ縦方向の壁に代えて、図8は、ベベルの両端において異なる弧長のそれぞれのフィレットを介してベベルによって繋がれた、それぞれの第1および第2の外部面を示している。この理由は、それぞれの面15、17の上または下から見たときに、各それぞれの面15、17の縁部長さが異なるためである。加えて、この実施形態の保持構造23は、平坦な頂部を含んでおらず、代わりに凸状の湾曲部の形態である。この実施形態では、第2の外部面17の縁部長さは、第1の外部面15の縁部長さよりも長い。
【0048】
図9は、インプラント10の別の実施形態を示す。この実施形態では、線形の流体排液管保持構造23は、それぞれの第1の外部面15と第1の外部面17との間の中心に位置し、両方の面15、17が平面状の平坦な面になることを可能にしている。この実施形態では、第2の外部面17の縁部長さが、第1の外部面15の縁部長さよりも長く、その結果、それぞれの第1および第2の外部面が図8に示されるものと同様のベベルによって繋がれている。
【0049】
図10は、インプラント10のさらに別の実施形態を示す。この実施形態では、線形の流体排液管保持構造23は、ここでもそれぞれの第1の外部面15と第2の外部面17との間の中心に位置するが、この実施形態では、流体排液管保持構造23が両方の面15、17と一体で、それらの一部を形成し、したがって各面15、17に2つずつ、4つの変曲点26を含んでいるため、両方の面15、17が湾曲した面である。この実施形態では、第2の外部面17の縁部長さは、第1の外部面15の縁部長さよりも長く、ここでも、それにより、それぞれの第1および第2の外部面が図8および図9に示されるものと同様のベベルによって繋がれる。
【0050】
図11は、図9に示される実施形態の変形例を示す。図9に示されるようなフィレットによってそれぞれの外部面縁部を繋ぐベベル壁に代えて、図11は、連続した湾曲部によって繋がれたそれぞれの第1および第2の外部面を示し、この実施形態では、それぞれの面15、17の上または下から見たときに、各それぞれの面15、17の縁部長さが同じである。
【0051】
図12は、図9および図11に示される実施形態の変形例を示す。それぞれ図9および図11に示されるようにフィレットによってそれぞれの外部面縁部を繋ぐベベルまたは連続した湾曲壁の代わりに、図12は、それぞれの第1および第2の外部面15、17をフィレットによって繋ぐ二段ベベルを示し、二段ベベルの各傾斜壁も、曲線によって第1の外部面と第2の外部面との間の中点において接続されている。図12に示す実施形態は、X軸、Y軸、およびZ軸を中心として対称である実施形態の例でもある。
【0052】
図13は、眼の内部から結膜腔の外側に流体を排液するために使用されることが意図される場合にインプラント10を強膜表面に固定する手術方法を示し、図13は初めに、比較的薄い結膜下層を貫通する切開を示し、インプラント10をある向きで適所に入れ、結膜下を再縫合しながら、開口19を使用してインプラントを縫合して適所に入れる。
【0053】
図14は、代替の外科的処置を示し、ここでは前眼房から出て脈絡膜上腔に入る流体の流出を可能にするように意図される場合に、インプラント10を強膜下腔に固定するものであり、図14は初めに、より厚い(結膜下層と比較して。図13参照)脈絡膜上層を貫通する切開を示し、図13のインプラントに対して逆にした向きでインプラントを適所に入れ、切断された組織を再縫合しながら、開口19を使用してインプラント10を縫合して適所に入れる。
【0054】
外科医によって決定される両端における流体排液管28の長さは、外科医が、どこで排液したいか、および特定の眼の中でどれほどの流れ抵抗を実現したいかを決定することを可能にし、よって、術後の最終的なインプラントは、前方短、後方長;前方長、後方短;前方短、後方短;前方長、後方長として提示され得、これらの用語は、最終的な排液管28の長さを指している。
【0055】
代替例および置換例ではない上記で説明された特徴の変形例および組合せが組み合わされて、本発明の意図される範囲内に該当するさらに他の実施形態を形成してよいことが当業者によって認識されるべきである。
なお、本発明には以下の態様が含まれることを付記する。
[態様1]
眼の排液インプラントであって、
眼の強膜表面または強膜下腔に配置されることを可能にするようなサイズおよび形状の柔軟なプレートであって、
a)第1の外部面および第2の下部外部面であって、前記第1の外部面から前記第2の外部面まで各々延びている複数の開口を有する、第1の外部面および第2の下部外部面、および
b)流体排液管保持構造
を備えている、柔軟なプレートと、
前記保持構造に接続され、前記インプラントに長手方向軸を与える、無弁の流体排液管であって、前記眼の前眼房から結膜下または脈絡膜上腔に流体を排液するように適合されている無弁の流体排液管と、
を備え、前記保持構造が、実質的に前記プレートの全寸法にわたって延びている、眼の排液インプラント。
[態様2]
前記流体排液管保持構造が、前記プレートの前記第1の外部面、前記プレートの前記第2の外部表面、またはその両方と一体である、態様1に記載のインプラント。
[態様3]
前記プレートの少なくとも1つの外部面が平坦である、態様1に記載のインプラント。
[態様4]
前記保持構造が、線形部分または直線部分を備えている、態様1から3のいずれか一項に記載のインプラント。
[態様5]
前記保持構造が前記プレートを二等分している、態様1から4のいずれか一項に記載のインプラント。
[態様6]
前記保持構造が前記プレートの長さを二等分している、態様5に記載のインプラント。
[態様7]
前記保持構造の両側に等しい数の開口が含まれている、態様1から6のいずれか一項に記載のインプラント。
[態様8]
前記保持構造の各側に1つのみの開口が設けられている、態様7に記載のインプラント。
[態様9]
各開口が同じサイズおよび形状である、態様1から8のいずれか一項に記載のインプラント。
[態様10]
各開口が湾曲している、態様1から9のいずれか一項に記載のインプラント。
[態様11]
前記湾曲が円を形成する、態様10に記載のインプラント。
[態様12]
前記保持構造の設計は、断面視で、前記保持構造が少なくとも1つの変曲点を含むようなものである、態様1から11のいずれか一項に記載のインプラント。
[態様13]
前記保持構造が2つの変曲点を含んでいる、態様12に記載のインプラント。
[態様14]
前記保持構造が、連続した湾曲部を備えていない、態様13に記載のインプラント。
[態様15]
前記インプラントは、前記インプラントが結膜下で使用するものであるかまたは脈絡膜上で使用するものであるかに応じて、縫合の前に、前記眼の上で第1の位置または前記第1の位置に対して逆にされた第2の位置のいずれかに配置可能である、態様12から14のいずれか一項に記載のインプラント。
[態様16]
前記排液管の直径が、前記第1の外部面によって占められる同じ平面内に実質的に位置する、態様1から15のいずれか一項に記載のインプラント。
[態様17]
前記排液管の周方向周部の最も低い点が、前記第1の外部面と前記第2の外部面とを隔てている距離の実質的に中間に位置する、態様1から16のいずれか一項に記載のインプラント。
[態様18]
前記インプラントがその長手方向軸を中心として対称である、態様1から17のいずれか一項に記載のインプラント。
[態様19]
前記インプラントが、その長手方向軸に対して直交する少なくとも1つの軸を中心として対称である、態様1から18のいずれか一項に記載のインプラント。
[態様20]
前記インプラントがシリコーン製である、態様1から19のいずれか一項に記載のインプラント。
[態様21]
前記管の内部直径が、0.101~0.108mmの範囲である、態様1から20のいずれか一項に記載のインプラント。
[態様22]
前記管が、直線状の比較的非柔軟な管である、態様1から21のいずれか一項に記載のインプラント。
[態様23]
各開口の周方向周部が、前記流体排液管保持構造の開始部に接触している、態様1から22のいずれか一項に記載のインプラント。
[態様24]
前記プレートのサイズが16mm またはそれより小さい、態様1から23のいずれか一項に記載のインプラント。
[態様25]
前記排液管の外側壁を前記排液管の内側壁から隔てている距離が、前記排液管の前記内側壁の直径よりも大きい、態様1から24のいずれか一項に記載のインプラント。
[態様26]
前記排液管の外側壁の直径が、前記第1の外部面から前記第2の外部面まで延びている開口の直径未満である、態様1から25のいずれか一項に記載のインプラント。
[態様27]
前記排液管の前記外側壁の直径が、前記第1の外部面から前記第2の外部面まで延びている開口の直径の半分未満である、態様25に記載のインプラント。
[態様28]
前記無弁の流体排液管と前記保持構造との間の接続が、一体接続または接着接続である、態様1から27のいずれか一項に記載のインプラント。
【符号の説明】
【0056】
10 インプラント
12 湾曲部分
13、14 直線部分
11 プレート
23 流体排液管保持構造
20 厚み
15 第1の外部面
17 第2の外部面
19 開口
21 壁
25 縦方向対称線
26 変曲点
27 頂部部分
28 流体排液管
29 内部直径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14