(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒組成物及び排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20240902BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240902BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
(21)【出願番号】P 2023506895
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2022006717
(87)【国際公開番号】W WO2022196249
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2021041763
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】浅越 俊紀
(72)【発明者】
【氏名】諫山 彰大
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 大典
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-520021(JP,A)
【文献】特開2012-130895(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/030657(US,A1)
【文献】国際公開第2018/198423(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/198424(WO,A1)
【文献】特開平11-314035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Rhと、Mg、Ba及びAlを含む複合酸化物とを含む排ガス浄化用触媒組成物であって、
前記複合酸化物が、スピネル型結晶構造を有し、
前記複合酸化物におけるAl含有量に対するMg含有量の比が、モル比で、0.010以上0.25以下である、排ガス浄化用触媒組成物。
【請求項2】
前記複合酸化物におけるAl含有量に対するBa含有量の比が、モル比で、0.0010以上0.10以下である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒組成物。
【請求項3】
前記複合酸化物におけるMg含有量に対するBa含有量の比が、モル比で、0.010以上1.0以下である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒組成物。
【請求項4】
前記排ガス浄化用触媒組成物が、前記複合酸化物以外の無機酸化物を前記複合酸化物よりも多い量で含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒組成物。
【請求項5】
基材と、前記基材上に設けられた第1触媒層とを備える排ガス浄化用触媒であって、
前記第1触媒層が、Rhと、Mg、Ba及びAlを含む複合酸化物とを含み、
前記複合酸化物が、スピネル型結晶構造を有し、
前記複合酸化物におけるAl含有量に対するMg含有量の比が、モル比で、0.010以上0.25以下である、排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
前記排ガス浄化用触媒が、前記基材上に設けられた第2触媒層をさらに備え、
前記第2触媒層が、Pd又はPtを含み、
前記第1触媒層が、前記第2触媒層の上側又は上流側に設けられている、請求項5に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
前記複合酸化物におけるAl含有量に対するBa含有量の比が、モル比で、0.0010以上0.10以下である、請求項5又は6に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項8】
前記複合酸化物におけるMg含有量に対するBa含有量の比が、モル比で、0.010以上1.0以下である、請求項5~7のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項9】
前記第1触媒層が、前記複合酸化物以外の無機酸化物を前記複合酸化物よりも多い量で含む、請求項5~8のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒組成物及び排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、バイク等の内燃機関から排出される排ガス中には、炭化水素(THC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。これらの有害成分を浄化して無害化する目的で三元触媒が使用されている。三元触媒としては、Pt、Pd、Rh等の貴金属元素を含む触媒が使用されている。Pt及びPdは主としてTHC及びCOの酸化浄化に関与し、Rhは主としてNOxの還元浄化に関与する。
【0003】
排ガス浄化用触媒の排ガス浄化性能を改善するために様々な技術が開発されている。例えば、特許文献1には、硫黄酸化物(SOx)による窒素酸化物(NOx)捕捉層の被毒を軽減するために、MgO、ハイドロタルサイト等のSOx吸収成分を含むSOx吸収層をNOx吸収層の前方又は上方に設ける技術が記載されている。また、特許文献2には、NOx吸蔵能に優れるスピネル型Mg-Al系複合酸化物(スピネル構造を有し、マグネシア及びアルミナを含む無機酸化物)を貴金属の担体として使用する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2006/044974号パンフレット
【文献】特開2018-187535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Pt及びPdは、リンによる被毒を受けやすい。したがって、Pt又はPdを含む第2触媒層の上側又は上流側に、Rhを含む第1触媒層を設け、第1触媒層にリン捕捉層としての機能を担わせることにより、第2触媒層中のPt又はPdの被毒を防止することができると考えられる。
【0006】
スピネル型結晶構造を有するMg-Al系複合酸化物(化学量論組成:MgAl2O4)(以下「MAO」という。)はリン捕捉能を有し、リン捕捉材として有用であるが、Rh及びMAOを共存させて排ガス浄化に使用すると、MAOに含まれるMgにより、Rhの排ガス浄化性能の劣化が生じやすいことが知られている。一方、本発明者らは、Rhの排ガス浄化性能の劣化を抑制するために、MAOにおけるMg含有量を低減させると、MAOの製造時に行われる熱処理(焼成)に起因して、MAOの分相(スピネル型結晶相及びαアルミナ相への分相)が生じ、これにより、MAOの比表面積の減少及びこれに起因するMAOのリン捕捉能の低下が生じやすいことを見出した。
【0007】
そこで、本発明は、MAOの上記問題点を解決できるリン捕捉材を使用した排ガス浄化用触媒組成物及び排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、Rhと、Mg、Ba及びAlを含む複合酸化物とを含む排ガス浄化用触媒組成物であって、前記複合酸化物が、スピネル型結晶構造を有し、前記複合酸化物におけるAl含有量に対するMg含有量の比が、モル比で、0.010以上0.25以下である、排ガス浄化用触媒組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、基材と、前記基材上に設けられた第1触媒層とを備える排ガス浄化用触媒であって、前記第1触媒層が、Rhと、Mg、Ba及びAlを含む複合酸化物とを含み、前記複合酸化物が、スピネル型結晶構造を有し、前記複合酸化物におけるAl含有量に対するMg含有量の比が、モル比で、0.010以上0.25以下である、排ガス浄化用触媒を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、MAOの上記問題点を解決できるリン捕捉材を使用した排ガス浄化用触媒組成物及び排ガス浄化用触媒が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る排ガス浄化用触媒が内燃機関の排気経路に配置されている状態を示す一部端面図である
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係る排ガス浄化用触媒の端面図(
図4に対応する端面図)である。
【
図6】
図6は、実施例3のMg-Ba-Al系複合酸化物粉末のX線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪排ガス浄化用触媒組成物≫
以下、本発明の排ガス浄化用触媒組成物について説明する。
【0013】
<排ガス浄化用触媒組成物の形態>
本発明の排ガス浄化用触媒組成物の形態は、例えば、粉末状、成形体状、層状等である。
【0014】
<Mg-Ba-Al系複合酸化物>
本発明の排ガス浄化用触媒組成物は、Mg、Ba及びAlを含む複合酸化物(以下「Mg-Ba-Al系複合酸化物」という。)を含む。
【0015】
MgによるRhの排ガス浄化性能の劣化をより効果的に抑制する観点から、本発明の排ガス浄化用触媒組成物に含まれるMg-Ba-Al系複合酸化物の量は、本発明の排ガス浄化用触媒組成物の質量を基準として、好ましくは1質量%以上20質量%以下、より好ましくは5質量%以上17質量%以下、より一層好ましくは9質量%以上15質量%以下である。Mg-Ba-Al系複合酸化物の量は、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析装置(SEM-EDX)等を使用して特定することができる。
【0016】
Mg-Ba-Al系複合酸化物は、例えば、粉末状である。Mg-Ba-Al系複合酸化物が粉末状である場合、Mg-Ba-Al系複合酸化物のD50は、例えば1μm以上20μm以下、好ましくは3μm以上15μm以下、より好ましくは5μm以上10μm以下である。D50は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される体積基準の粒度分布において、累積体積が50体積%となる粒径である。D50の測定は、実施例に記載の方法により行うことが好ましい。
【0017】
Mg-Ba-Al系複合酸化物のリン捕捉材としての効果を向上させる観点から、Mg-Ba-Al系複合酸化物は、多孔質であることが好ましい。Mg-Ba-Al系複合酸化物の比表面積が大きくなるほど、リン成分が捕捉されやすくなるが、触媒活性成分も担持されやすくなる。Mg-Ba-Al系複合酸化物に担持される触媒活性成分の量が増えると、触媒活性が低下する。リン成分の捕捉されやすさと、触媒活性成分の担持量の低減とをバランスよく実現する観点から、Mg-Ba-Al系複合酸化物のBET比表面積は、好ましくは45m2/g以上100m2/g以下、より好ましくは55m2/g以上85m2/g以下、より一層好ましくは60m2/g以上80m2/g以下である。BET比表面積の測定は、実施例に記載の方法により行うことが好ましい。
【0018】
Mg-Ba-Al系複合酸化物は、スピネル型結晶構造を有する。すなわち、Mg-Ba-Al系複合酸化物は、スピネル型結晶構造を有する結晶相(以下「スピネル型結晶相」という。)を含む。スピネル型構造は、空間群Fd-3mに属する立方晶系の結晶構造である。
【0019】
Mg-Ba-Al系複合酸化物は、スピネル型結晶相の単相で構成されていてもよいし、スピネル型結晶相と1種又は2種以上のその他の相とを含む混相で構成されていてもよいが、スピネル型結晶相の単相で構成されていることが好ましい。その他の相は、結晶相であってもよいし、非晶質相であってもよい。その他の相としては、例えば、アルカリ土類金属酸化物相(例えば、MgO相、BaO相等)、αアルミナ相、αアルミナ相以外のアルミナ相(例えば、γアルミナ相、θアルミナ相等)、ハイドロタルサイト相等が挙げられる。
【0020】
Mg-Ba-Al系複合酸化物が混相で構成されている場合、スピネル型結晶相が第一相であることが好ましい。また、αアルミナ相が第一相である場合、スピネル型結晶相が第二相であることが好ましい。「第一相」は、CuKαを使用した粉末X線回折法(XRD)により得られた回折パターンにおいて、最大強度を有するピーク(メインピーク)が由来する結晶相を意味する。「第二相」は、第一相に由来するピーク以外で、最大強度を有するピークが由来する結晶相を意味する。
【0021】
Mg-Ba-Al系複合酸化物がスピネル型結晶相を含むことは、CuKαを使用したXRDにより確認することができる。XRDは、市販のX線回折装置(例えば、株式会社リガク製MiniFlex600)を使用して行うことができる。XRDは、実施例に記載の条件で行うことが好ましい。
【0022】
CuKαを使用したXRDにより得られた回折パターンにおいて、スピネル型結晶相に由来するピークは、例えば、2θ=15°~25°、30°~40°、40°~50°、55°~70°等の位置に存在する。スピネル型結晶相に由来するピークは、好ましくは、2θ=37±0.5°の位置に存在する。
【0023】
Mg-Ba-Al系複合酸化物は、Mg(マグネシウム元素)、Al(アルミニウム元素)及びO(酸素元素)に加えて、Ba(バリウム元素)を含み、Mg-Ba-Al系複合酸化物におけるAl含有量に対するMg含有量の比は、モル比で、0.010以上0.25以下である。
【0024】
Mg-Ba-Al系複合酸化物は、Mg含有量を減少させている点、及び、Baを含有(好ましくは固溶)させている点で、MAO(スピネル型結晶構造を有するMg-Al系複合酸化物(化学量論組成:MgAl2O4))と相違し、これにより、MAOの上記問題点が解決されている。すなわち、Mg-Ba-Al系複合酸化物では、Mg含有量の減少により、MgによるRhの排ガス浄化性能の劣化が抑制されている。また、Mg-Ba-Al系複合酸化物では、Baの含有(好ましくは固溶)により、Mg-Ba-Al系複合酸化物の製造時に行われる熱処理(焼成)に起因して生じ得るMg-Ba-Al系複合酸化物の分相(スピネル型結晶相及びαアルミナ相への分相)が抑制されており、これにより、Mg-Ba-Al系複合酸化物の比表面積の減少及びこれに起因するMg-Ba-Al系複合酸化物のリン捕捉能の低下が抑制されている。したがって、本発明の排ガス浄化用触媒組成物は、向上したRhの排ガス浄化性能を発揮することができるとともに、向上したリン捕捉性能を発揮することができる。
【0025】
Mg-Ba-Al系複合酸化物において、Mg、Ba、Al及びOは、スピネル型結晶構造を有する固溶体相を形成していることが好ましい。Mg、Ba、Al及びOは、スピネル型結晶構造を有する固溶体相に加えて、結晶相又は非晶質相である単独相(MgO相、BaO相、Al2O3相等)を形成していてもよい。Mg、Ba、Al及びOが固溶体相を形成していることは、XRD、SEM-EDX等を使用して確認することができる。
【0026】
Mg-Ba-Al系複合酸化物は、Mg、Ba及びAl以外の金属元素を含んでいてもよい。Mg、Ba及びAl以外の金属元素としては、例えば、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、遷移金属元素等が挙げられる。Mg、Ba及びAl以外の金属元素は、Mg、Ba、Al及びOとともに、スピネル型結晶構造を有する固溶体相を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相を形成していてもよい。Mg、Ba及びAl以外の金属元素が、Mg、Ba、Al及びOとともに固溶体相を形成していることは、XRD、SEM-EDX等を使用して確認することができる。
【0027】
MgによるRhの排ガス浄化性能の劣化をより効果的に抑制する観点から、Mg-Ba-Al系複合酸化物におけるAl含有量に対するMg含有量の比は、モル比で、好ましくは0.010以上0.25以下、より好ましくは0.020以上0.20以下、より一層好ましくは0.030以上0.15以下、より一層好ましくは0.050以上0.10以下である。
【0028】
Mg-Ba-Al系複合酸化物の分相(スピネル型結晶相及びαアルミナ相への分相)による、Mg-Ba-Al系複合酸化物の比表面積の減少及びこれに起因するMg-Ba-Al系複合酸化物のリン捕捉能の低下をより効果的に抑制する観点から、Mg-Ba-Al系複合酸化物におけるAl含有量に対するBa含有量の比は、モル比で、好ましくは0.0010以上0.10以下、より好ましくは0.0020以上0.090以下、より一層好ましくは0.0030以上0.080以下、より一層好ましくは0.0050以上0.070以下である。
【0029】
Mg-Ba-Al系複合酸化物の分相(スピネル型結晶相及びαアルミナ相への分相)による、Mg-Ba-Al系複合酸化物の比表面積の減少及びこれに起因するMg-Ba-Al系複合酸化物のリン捕捉能の低下をより効果的に抑制する観点から、Mg-Ba-Al系複合酸化物におけるMg含有量に対するBa含有量の比は、モル比で、好ましくは0.010以上1.0以下、より好ましくは0.030以上0.90以下、より一層好ましくは0.050以上0.80以下、より一層好ましくは0.10以上0.60以下である。
【0030】
Mg-Ba-Al系複合酸化物の分相(スピネル型結晶相及びαアルミナ相への分相)による、Mg-Ba-Al系複合酸化物の比表面積の減少及びこれに起因するMg-Ba-Al系複合酸化物のリン捕捉能の低下をより効果的に抑制する観点から、Mg-Ba-Al系複合酸化物におけるAlのAl2O3換算の含有量は、Mg-Ba-Al系複合酸化物の質量を基準として、好ましくは52質量%以上99質量%未満、より好ましくは70質量%以上98.99質量%以下、より一層好ましくは78質量%以上98.9質量%以下である。
【0031】
MgによるRhの排ガス浄化性能の劣化をより効果的に抑制する観点から、Mg-Ba-Al系複合酸化物におけるMgのMgO換算の含有量は、Mg-Ba-Al系複合酸化物の質量を基準として、好ましくは0質量%超28質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上15質量%以下、より一層好ましくは0.05質量%以上10質量%以下である。
【0032】
Mg-Ba-Al系複合酸化物の分相(スピネル型結晶相及びαアルミナ相への分相)による、Mg-Ba-Al系複合酸化物の比表面積の減少及びこれに起因するMg-Ba-Al系複合酸化物のリン捕捉能の低下をより効果的に抑制するとともに、Ba-Al系複合酸化物の生成を抑制する観点から、Mg-Ba-Al系複合酸化物におけるBaのBaO換算の含有量は、Mg-Ba-Al系複合酸化物の質量を基準として、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、より一層好ましくは1質量%以上12質量%以下である。
【0033】
Mg-Ba-Al系複合酸化物のスピネル型結晶相以外の結晶相の生成を抑制し、Mg-Ba-Al系複合酸化物の比表面積の減少及びこれに起因するMg-Ba-Al系複合酸化物のリン捕捉能の低下をより効果的に抑制する観点から、Mg-Ba-Al系複合酸化物におけるAlのAl2O3換算の含有量、MgのMgO換算の含有量及びBaのBaO換算の含有量の合計は、Mg-Ba-Al系複合酸化物の質量を基準として、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、より一層好ましくは99.95質量%以上である。上限は100質量%である。
【0034】
Mg-Ba-Al系複合酸化物に含まれる元素の種類及び量は、SEM-EDX等を使用して特定することができる。
【0035】
<Mg-Ba-Al系複合酸化物の製造方法>
Mg-Ba-Al系複合酸化物は、例えば、塩基を含む水溶液に、Ba塩、Mg塩及びAl塩を含む水溶液を添加し、Ba、Mg及びAlを含む沈殿物を形成し、得られた沈殿物を必要に応じて乾燥した後、焼成することにより製造することができる。焼成物は必要に応じて粉砕してもよい。粉砕は、例えば、乳鉢、ハンマーミル、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、ローラーミル等を使用して、乾式又は湿式にて行うことができる。Ba塩、Mg塩及びAl塩としては、例えば、硝酸塩、酢酸塩等の水溶性塩が挙げられる。塩基としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。乾燥温度は、例えば60℃以上120℃以下であり、乾燥時間は、例えば0.5時間以上3時間以下である。焼成温度は、例えば900℃以上1400℃以下であり、焼成時間は、例えば0.5時間以上4時間以下である。焼成は、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。
【0036】
<触媒活性成分>
本発明の排ガス浄化用触媒組成物は、Rh(ロジウム元素)を含む。Rhは、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、金属Rh、Rhを含む合金、Rhを含む化合物(例えば、Rhの酸化物)等の形態で本発明の排ガス浄化用触媒組成物に含まれる。排ガス浄化性能を高める観点から、金属Rh、Rhを含む合金、Rhを含む化合物等の触媒活性成分は、粒子状であることが好ましい。
【0037】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、本発明の排ガス浄化用触媒組成物に含まれるRhの量は、本発明の排ガス浄化用触媒組成物の質量を基準として、好ましくは0.001質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.001質量%以上3質量%以下、より一層好ましくは0.001質量%以上1質量%以下である。Rhの量は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)、蛍光X線分析装置(XRF)、SEM-EDX等を使用して特定することができる。なお、Rhの質量は、金属換算の質量である。
【0038】
本発明の排ガス浄化用触媒組成物は、Rh以外の貴金属元素を含んでいてもよい。Rh元素以外の貴金属元素としては、例えば、Pt(白金元素)、Pd(パラジウム元素)、Ru(ルテニウム元素)、Ir(イリジウム元素)、Os(オスミウム元素)等が挙げられる。Rh以外の貴金属元素は、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、貴金属、貴金属元素を含む合金、貴金属元素を含む化合物(例えば、貴金属元素の酸化物)等の形態で本発明の排ガス浄化用触媒組成物に含まれる。排ガス浄化性能を高める観点から、貴金属、貴金属元素を含む合金、貴金属元素を含む化合物等の触媒活性成分は、粒子状であることが好ましい。但し、本発明の排ガス浄化用触媒組成物がRhとRh以外の貴金属元素とを含む場合、RhとRh以外の貴金属元素とが合金を形成し、排ガス浄化(例えば、NOxの還元浄化)に関与するRhの活性点が減少する可能性がある。また、リンによるRh以外の貴金属元素(例えば、Pd、Pt等)の被毒が生じる可能性もある。したがって、本発明の排ガス浄化用触媒組成物は、Rh以外の貴金属元素を実質的に含まないことが好ましい。「Rh以外の貴金属元素を実質的に含まない」とは、本発明の排ガス浄化用触媒組成物に含まれるRh以外の貴金属元素の量が、本発明の排ガス浄化用触媒組成物の質量を基準として、好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より一層好ましくは0.001質量%以下であることを意味する。下限はゼロである。Rh以外の貴金属元素の量は、Rhの量と同様にして特定することができる。なお、Rh以外の貴金属元素の質量は、金属換算の質量である。
【0039】
Mg-Ba-Al系複合酸化物のリン捕捉材としての効果を向上させる観点から、触媒活性成分は、Mg-Ba-Al系複合酸化物に担持されていないことが好ましいが、担持されていてもよい。「担持」は、触媒活性成分がMg-Ba-Al系複合酸化物の外表面又は細孔内表面に物理的又は化学的に吸着又は保持されている状態を意味する。触媒活性成分がMg-Ba-Al系複合酸化物に担持されていることは、例えば、SEM-EDX等を使用して確認することができる。
【0040】
<その他の成分>
本発明の排ガス浄化用触媒組成物は、Mg-Ba-Al系複合酸化物以外の無機酸化物(以下「その他の無機酸化物」という。)を含んでいてもよい。
【0041】
その他の無機酸化物は、例えば、粉末状である。その他の無機酸化物が粉末状である場合、その他の無機酸化物のD50は、例えば0.1μm以上15μm以下、好ましくは0.3μm以上12μm以下、より好ましくは0.5μm以上10μm以下である。その他の無機酸化物のD50は、Mg-Ba-Al系複合酸化物のD50と同様にして測定することができる。
【0042】
触媒活性成分を担持させやすい観点から、その他の無機酸化物は、多孔質であることが好ましい。その他の無機酸化物のBET比表面積は、例えば40m2/g以上300m2/g以下、好ましくは50m2/g以上250m2/g以下、より好ましくは60m2/g以上200m2/g以下である。その他の無機酸化物のBET比表面積は、Mg-Ba-Al系複合酸化物のBET比表面積と同様にして測定することができる。
【0043】
その他の無機酸化物は、酸素貯蔵能(OSC:Oxygen Storage Capacity)を有する無機酸化物であってもよいし、酸素貯蔵能を有しない無機酸化物であってもよい。
【0044】
酸素貯蔵能を有する無機酸化物としては、例えば、酸化セリウム、Ce(セリウム元素)及びZr(ジルコニウム元素)を含む複合酸化物(Ce-Zr系複合酸化物)等が挙げられる。
【0045】
Ce-Zr系複合酸化物は、Ce、Zr及びOを含む。Ce-Zr系複合酸化物において、Ce、Zr及びOは、固溶体相を形成していることが好ましい。Ce、Zr及びOは、固溶体相に加えて、結晶相又は非晶質相である単独相(CeO2相、ZrO2相等)を形成していてもよい。Ce、Zr及びOが固溶体を形成していることは、XRD、SEM-EDX等を使用して確認することができる。
【0046】
Ce-Zr系複合酸化物は、Ce及びZr以外の金属元素を含んでいてもよい。Ce及びZr以外の金属元素としては、例えば、Ce以外の希土類元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素等が挙げられる。Ce及びZr以外の金属元素は、Ce、Zr及びOとともに固溶体相を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相を形成していてもよい。
【0047】
酸素貯蔵能を有しない無機酸化物としては、例えば、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、アルミノ-シリケート、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-クロミア、アルミナ-セリア、アルミナ-ランタナ、チタニア等が挙げられるが、耐熱性の観点から、アルミナが好ましい。
【0048】
MgによるRhの排ガス浄化性能の劣化をより効果的に抑制するとともに、Mg-Ba-Al系複合酸化物のリン捕捉材としての効果をより向上させる観点から、本発明の排ガス浄化用触媒組成物は、その他の無機酸化物をMg-Ba-Al系複合酸化物よりも多い量で含むことが好ましい。
【0049】
本発明の排ガス浄化用触媒組成物において、Mg-Ba-Al系複合酸化物の含有量に対するその他の無機酸化物の含有量の比は、質量比で、好ましくは1.0超以上10以下、より好ましくは1.5以上10以下である。本発明の排ガス浄化用触媒組成物が2種以上のその他の無機酸化物を含む場合、「その他の無機酸化物の含有量」は、当該2種以上のその他の無機酸化物の合計含有量を意味する。その他の無機酸化物の量は、ICP-OES、XRF、SEM-EDX等を使用して特定することができる。
【0050】
本発明の排ガス浄化用触媒組成物がその他の無機酸化物を含む場合、触媒活性成分は、その他の無機酸化物に担持されていてもよい。本発明の排ガス浄化用触媒組成物がその他の無機酸化物を含み、且つ触媒活性成分がMg-Ba-Al系複合酸化物に担持されていない場合、触媒活性成分はその他の無機酸化物に担持される。「担持」の意義及び担持されていることの確認方法は上記と同様である。
【0051】
<排ガス浄化用触媒組成物の製造方法>
本発明の排ガス浄化用触媒組成物は、例えば、Rh塩含有溶液と、Mg-Ba-Al系複合酸化物と、必要に応じてその他の成分(例えば、Mg-Ba-Al系複合酸化物以外の無機酸化物等)とを混合した後、乾燥し、焼成することにより製造することができる。焼成物は、必要に応じて粉砕してもよい。粉砕は、例えば、乳鉢、ハンマーミル、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、ローラーミル等を使用して、乾式又は湿式にて行うことができる。Rh塩としては、例えば、硝酸塩、アンミン錯体塩、塩化物等が挙げられる。Rh塩含有溶液の溶媒は、通常、水(例えば、イオン交換水等)である。Rh塩含有溶液は、水以外の1種又は2種以上の溶媒を含有してもよい。水以外の溶媒としては、例えば、アルコール、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒が挙げられる。乾燥温度は、例えば60℃以上120℃以下であり、乾燥時間は、例えば0.5時間以上2時間以下である。焼成温度は、例えば400℃以上700℃以下であり、焼成時間は、例えば0.5時間以上3時間以下である。焼成は、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。
【0052】
≪排ガス浄化用触媒≫
以下、本発明の排ガス浄化用触媒について説明する。
【0053】
<基材>
本発明の排ガス浄化用触媒は、基材を備える。基材は、排ガス浄化用触媒の基材として一般的に使用されている基材から適宜選択することができる。基材としては、例えば、ウォールフロー型基材、フロースルー型基材等が挙げられる。
【0054】
基材を構成する材料は、排ガス浄化用触媒の基材の材料として一般的に使用されている材料から適宜選択することができる。基材を構成する材料は、基材が高温(例えば400℃以上)の排ガスに曝露された場合にも基材の形状が安定して維持され得る材料であることが好ましい。基材の材料としては、例えば、コージェライト、炭化ケイ素(SiC)、チタン酸アルミニウム等のセラミックス、ステンレス鋼等の合金等が挙げられる。
【0055】
<第1触媒層>
本発明の排ガス浄化用触媒は、基材上に設けられた第1触媒層を備える。第1触媒層は、基材上に直接設けられていてもよいし、他の層(例えば、後述する第2触媒層)を介して基材上に設けられていてもよい。
【0056】
第1触媒層は、Rhと、Mg-Ba-Al系複合酸化物とを含む。
【0057】
第1触媒層は、本発明の排ガス浄化用触媒組成物で構成されている。したがって、上記の<Mg-Ba-Al系複合酸化物>、<Mg-Ba-Al系複合酸化物の製造方法>、<触媒活性成分>及び<その他の成分>の欄における説明は、第1触媒層にも適用される。適用の際、「本発明の排ガス浄化用触媒組成物」は、「第1触媒層」に読み替えられる。
【0058】
MgによるRhの排ガス浄化性能の劣化をより効果的に抑制するとともに、Mg-Ba-Al系複合酸化物のリン捕捉材としての効果をより向上させる観点から、基材の単位体積当たりの第1触媒層の質量(乾燥及び焼成後の質量)は、好ましくは30g/L以上100g/L以下、より好ましくは30g/L以上90g/L以下、より一層好ましくは30g/L以上80g/L以下である。なお、基材の体積は、基材の見かけの体積を意味する(以下同様)。例えば、基材が外径2rの円柱状である場合、基材の体積は、式:基材の体積=π×r2×(基材の長さ)で表される。
【0059】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、第1触媒層に含まれるRhの質量は、基材の単位体積を基準として、好ましくは0.1g/L以上5g/L以下、より好ましくは0.1g/L以上3g/L以下、より一層好ましくは0.1g/L以上1g/L以下である。Rhの量は、ICP-OES、XRF、SEM-EDX等を使用して特定することができる。なお、Rhの質量は、金属換算の質量である。
【0060】
MgによるRhの排ガス浄化性能の劣化をより効果的に抑制するとともに、Mg-Ba-Al系複合酸化物のリン捕捉材としての効果をより向上させる観点から、第1触媒層に含まれるMg-Ba-Al系複合酸化物の質量は、基材の単位体積を基準として、好ましくは0.1g/L以上25g/L以下、より好ましくは0.1g/L以上20g/L以下、より一層好ましくは0.1g/L以上10g/L以下である。Mg-Ba-Al系複合酸化物の量は、ICP-OES、XRF、SEM-EDX等を使用して特定することができる。
【0061】
<第2触媒層>
本発明の排ガス浄化用触媒は、基材上に設けられた第2触媒層を備えていてもよい。第2触媒層は、基材上に直接設けられていてもよいし、他の層を介して基材上に設けられていてもよい。
【0062】
基材上に第2触媒層が設けられている場合、第1触媒層は、第2触媒層の上側又は上流側に設けられていることが好ましい。
【0063】
「第1触媒層が第2触媒層の上側に設けられている」という表現は、第2触媒層の2つの主面のうち、第2触媒層が設けられている基材表面側の主面とは反対側の主面上に、第1触媒層の一部又は全部が存在することを意味する。第1触媒層は、第2触媒層の主面上に、直接設けられていてもよいし、別の層を介して設けられていてもよい。
【0064】
「第1触媒層が第2触媒層の上流側に設けられている」という表現は、基材の表面のうち、第2触媒層が設けられている領域よりも排ガス流通方向の上流側に位置する領域に、第1触媒層の一部又は全部が存在することを意味する。
【0065】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、基材の単位体積当たりの第2触媒層の質量(乾燥及び焼成後の質量)は、好ましくは40g/L以上250g/L以下、より好ましくは40g/L以上230g/L以下、より一層好ましくは40g/L以上210g/L以下である。
【0066】
第2触媒層は、Pd(パラジウム元素)又はPt(白金元素)を含む。第2触媒層は、Pd及びPtの両方を含んでいてもよい。Pd又はPtは、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、金属Pd、金属Pt、Pd又はPtを含む合金、Pd又はPtを含む化合物(例えば、Pd又はPtの酸化物)等の形態で第2触媒層に含まれる。排ガス浄化性能を高める観点から、金属Pd、金属Pt、Pd又はPtを含む合金、Pd又はPtを含む化合物等の触媒活性成分は、粒子状であることが好ましい。
【0067】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、第2触媒層に含まれるPdの質量は、基材の単位体積を基準として、好ましくは0.1g/L以上10g/L以下、より好ましくは0.1g/L以上8g/L以下、より一層好ましくは0.1g/L以上5g/L以下である。排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、第2触媒層に含まれるPtの質量は、基材の単位体積を基準として、好ましくは0.1g/L以上10g/L以下、より好ましくは0.1g/L以上8g/L以下、より一層好ましくは0.1g/L以上5g/L以下である。Pd又はPtの量は、ICP-OES、XRF、SEM-EDX等を使用して特定することができる。なお、Pd又はPtの質量は、金属換算の質量である。
【0068】
第2触媒層は、Pd及びPt以外の貴金属元素を含んでいてもよい。Pd及びPt以外の貴金属元素としては、例えば、Rh、Ru、Ir、Os等が挙げられる。Pd及びPt以外の貴金属元素は、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、貴金属、貴金属元素を含む合金、貴金属元素を含む化合物(例えば、貴金属元素の酸化物)等の形態で第2触媒層に含まれる。排ガス浄化性能を高める観点から、貴金属、貴金属元素を含む合金、貴金属元素を含む化合物等の触媒活性成分は、粒子状であることが好ましい。
【0069】
第2触媒層は、無機酸化物を含んでいてもよい。第2触媒層に含まれる無機酸化物は、Mg-Ba-Al系複合酸化物以外の無機酸化物であることが好ましい。
【0070】
第2触媒層に含まれる無機酸化物の質量は、基材の単位体積を基準として、例えば30g/L以上250g/L以下、好ましくは30g/L以上230g/L以下、より好ましくは30g/L以上210g/L以下である。第2触媒層が2種以上の無機酸化物を含む場合、「無機酸化物の質量」は、当該2種以上の無機酸化物の合計質量を意味する。無機酸化物の量は、ICP-OES、XRF、SEM-EDX等を使用して特定することができる。
【0071】
無機酸化物は、例えば、粉末状である。無機酸化物が粉末状である場合、無機酸化物のD50は、例えば0.1μm以上60μm以下、好ましくは0.1μm以上45μm以下、より好ましくは0.1μm以上30μm以下である。無機酸化物のD50は、Mg-Ba-Al系複合酸化物のD50と同様にして測定することができる。
【0072】
触媒活性成分を担持させやすい観点から、無機酸化物は、多孔質であることが好ましい。無機酸化物のBET比表面積は、例えば40m2/g以上300m2/g以下、好ましくは50m2/g以上250m2/g以下、より好ましくは60m2/g以上200m2/g以下である。無機酸化物のBET比表面積は、Mg-Ba-Al系複合酸化物のBET比表面積と同様にして測定することができる。
【0073】
無機酸化物は、酸素貯蔵能を有する無機酸化物であってもよいし、酸素貯蔵能を有しない無機酸化物であってもよい。酸素貯蔵能を有する無機酸化物及び酸素貯蔵能を有しない無機酸化物に関する説明は、上記と同様である。
【0074】
触媒活性成分は、無機酸化物に担持されていることが好ましい。「担持」の意義及び担持されていることの確認方法は上記と同様である。
【0075】
<第1実施形態>
以下、
図1~4に基づいて、本発明の第1実施形態に係る排ガス浄化用触媒1Aについて説明する。
【0076】
図1に示すように、排ガス浄化用触媒1Aは、内燃機関の排気管P内の排気通路に配置されている。内燃機関は、例えば、ガソリンエンジン等である。内燃機関から排出された排ガスは、排気管Pの一端から他端に向けて排気管P内の排気通路を流通し、排気管P内に設けられた排ガス浄化用触媒1Aで浄化される。図面において、排ガス流通方向は、符号Xで示されている。本明細書において、排ガス流通方向Xの上流側を「排ガス流入側」、排ガス流通方向Xの下流側を「排ガス流出側」という場合がある。
【0077】
排気管P内の排気通路には、排ガス浄化用触媒1Aとともに、その他の排ガス浄化用触媒が配置されていてもよい。例えば、排気管P内の排気通路の上流側に、排ガス浄化用触媒1Aが配置され、排気管P内の排気通路の下流側に、その他の排ガス浄化用触媒が配置されていてもよい。その他の排ガス浄化用触媒としては、例えば、後述する排ガス浄化用触媒1B等が挙げられる。
【0078】
図2~4に示すように、排ガス浄化用触媒1Aは、基材10と、基材10上に設けられた第2触媒層30と、第2触媒層30の上側に設けられた第1触媒層20とを備える。
【0079】
基材、第1触媒層及び第2触媒層に関する上記説明は、それぞれ、基材10、第1触媒層20及び第2触媒層30に適用される。
【0080】
図2~4に示すように、基材10は、基材10の外形を規定する筒状部11と、筒状部11内に設けられた隔壁部12と、隔壁部12によって仕切られたセル13とを有する。
【0081】
図2に示すように、筒状部11の形状は、円筒状であるが、楕円筒状、多角筒状等のその他の形状であってもよい。
【0082】
図2~4に示すように、隣接するセル13の間には隔壁部12が存在し、隣接するセル13は隔壁部12によって仕切られている。隔壁部12は、多孔質であることが好ましい。隔壁部12の厚みは、例えば40μm以上350μm以下である。
【0083】
図4に示すように、セル13は、排ガス流通方向Xに延在しており、排ガス流入側の端部及び排ガス流出側の端部を有する。
【0084】
図4に示すように、セル13の排ガス流入側の端部及び排ガス流出側の端部はともに開口している。したがって、セル13の排ガス流入側の端部(開口部)から流入した排ガスは、セル13の排ガス流出側の端部(開口部)から流出する。このような様式は、フロースルー型と呼ばれる。
【0085】
図2及び3に示すように、セル13の排ガス流入側の端部(開口部)の平面視形状は、四角形であるが、六角形、八角形等のその他の形状であってもよい。セル13の排ガス流出側の端部(開口部)の平面視形状も同様である。
【0086】
基材10の1平方インチあたりのセル密度は、例えば150セル以上1500セル以下である。なお、基材10の1平方インチあたりのセル密度は、基材10を排ガス流通方向Xと垂直な平面で切断して得られた断面における1平方インチあたりのセル13の合計個数である。
【0087】
図4に示すように、第2触媒層30は、基材10の隔壁部12上に設けられている。
【0088】
図4に示すように、第2触媒層30は、隔壁部12の排ガス流入側の端部から隔壁部12の排ガス流出側の端部まで排ガス流通方向Xに沿って延在している。第2触媒層30は、隔壁部12の排ガス流出側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Xに沿って延在していてもよいし、隔壁部12の排ガス流入側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Xとは反対の方向に沿って延在していてもよい。
【0089】
図4に示すように、第1触媒層20は、第2触媒層30の上側に設けられている。
【0090】
図4に示すように、第1触媒層20は、隔壁部12の排ガス流入側の端部から隔壁部12の排ガス流出側の端部まで排ガス流通方向Xに沿って延在している。第1触媒層20は、隔壁部12の排ガス流出側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Xに沿って延在していてもよいし、隔壁部12の排ガス流入側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Xとは反対の方向に沿って延在していてもよい。
【0091】
排ガス浄化用触媒1Aでは、第1触媒層20が第2触媒層30の上側に設けられているので、セル13の排ガス流入側の端部(開口部)から流入した排ガスは、第1触媒層20と接触した後、第2触媒層30と接触する。排ガスが第1触媒層20と接触すると、排ガス中のリンは第1触媒層20中のMg-Ba-Al系複合酸化物に捕捉され、これにより、第2触媒層30に含まれるPd又はPtのリン被毒が防止される。したがって、第2触媒層30は、向上したPd又はPtの排ガス浄化性能を発揮することができる。
【0092】
Mg-Ba-Al系複合酸化物では、Mg含有量の減少により、MgによるRhの排ガス浄化性能の劣化が防止されている。したがって、第1触媒層20は、向上したRhの排ガス浄化性能を発揮することができる。また、Mg-Ba-Al系複合酸化物では、Baの含有(好ましくは固溶)により、Mg-Ba-Al系複合酸化物の製造時に行われる熱処理(焼成)に起因して生じ得るMg-Ba-Al系複合酸化物の分相(スピネル型結晶相及びαアルミナ相への分相)が防止されており、これにより、Mg-Ba-Al系複合酸化物の比表面積の減少及びこれに起因するMg-Ba-Al系複合酸化物のリン捕捉能の低下が防止されている。したがって、第1触媒層20は、向上したリン捕捉性能を発揮することができる。これにより、第2触媒層30に含まれるPd又はPtのリン被毒は効果的に防止されるので、第2触媒層30は、向上したPd又はPtの排ガス浄化性能を発揮することができる。
【0093】
排ガス浄化用触媒1Aは、基材10上に第2触媒層30を形成した後、第2触媒層30の上側に第1触媒層20を形成することにより製造することができる。
【0094】
第2触媒層30は、貴金属元素の供給源(例えば、貴金属塩等)及びその他の成分(例えば、無機酸化物、バインダ、安定剤、溶媒等)を混合して第2スラリーを調製し、第2スラリーを基材10上に塗布し、乾燥し、焼成することにより形成することができる。
【0095】
第1触媒層20は、貴金属元素の供給源(例えば、貴金属塩等)及びその他の成分(例えば、Mg-Ba-Al系複合酸化物、その他の無機酸化物、バインダ、安定剤、溶媒等)を混合して第1スラリーを調製し、第1スラリーを第2触媒層30上に塗布し、乾燥し、焼成することにより形成することができる。
【0096】
バインダとしては、例えば、酸化アルミニウムゾル、酸化チタンゾル、酸化セリウムゾル、酸化ジルコニウムゾル等の金属酸化物ゾルが挙げられる。安定剤としては、例えば、アルカリ土類金属化合物(例えば、Ba(バリウム元素)の硝酸塩、炭酸塩、酸化物等)が挙げられる。溶媒としては、例えば、水、有機溶媒等が挙げられる。
【0097】
乾燥温度は、例えば60℃以上120℃以下であり、乾燥時間は、例えば0.5時間以上120時間以下である。焼成温度は、例えば400℃以上700℃以下であり、焼成時間は、例えば0.5時間以上3時間以下である。焼成は、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。
【0098】
<第2実施形態>
以下、
図5に基づいて、本発明の第2実施形態に係る排ガス浄化用触媒1Bについて説明する。排ガス浄化用触媒1Bにおいて、排ガス浄化用触媒1Aと同一の部材は、排ガス浄化用触媒1Aと同一の符号で示されている。以下で別段記載する場合を除き、排ガス浄化用触媒1Aに関する上記説明は、排ガス浄化用触媒1Bにも適用される。
【0099】
図5に示すように、排ガス浄化用触媒1Bは、
基材10に、一部のセル13の排ガス流出側の端部を封止する第1封止部14、及び、残りのセル13の排ガス流入側の端部を封止する第2封止部15が設けられており、これにより、基材10に、排ガス流入側の端部が開口しており、排ガス流出側の端部が第1封止部14で閉塞されている流入側セル13a、及び、排ガス流入側の端部が第2封止部15で閉塞されており、排ガス流出側の端部が開口している流出側セル13bが形成されている点、並びに、
基材10の隔壁部12の流出側セル13b側に第2触媒層30が設けられており、基材10の隔壁部12の流入側セル13a側に第1触媒層20が設けられている点
で、排ガス浄化用触媒1Aと相違する。
【0100】
図5に示すように、1個の流入側セル13aの周りには、複数(例えば4つ)の流出側セル13bが隣接するように配置されており、流入側セル13aと、当該流入側セル13aに隣接する流出側セル13bとは、多孔質の隔壁部12によって仕切られている。
【0101】
図5に示すように、第2触媒層30は、隔壁部12の排ガス流入側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Xとは反対の方向に沿って延在しており、第1触媒層20は、隔壁部12の排ガス流出側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Xに沿って延在している。すなわち、第1触媒層20は、第2触媒層30の上流側に設けられている。
【0102】
第1触媒層20は、隔壁部12の排ガス流出側の端部に至っていてもよい。第2触媒層30は、隔壁部12の排ガス流入側の端部に至っていてもよい。
【0103】
図5に示すように、第1触媒層20及び第2触媒層30は、それぞれ、隔壁部12の表面からセル13a側に隆起している部分及び隔壁部12の表面からセル13b側に隆起している部分を有する。第1触媒層20及び第2触媒層30は、当該部分のみで構成されていてもよいし、当該部分とともに、隔壁部12の内部に存在する部分を有していてもよい。また、第1触媒層20及び第2触媒層30は、それぞれ、隔壁部12の内部に存在する部分のみで構成されていてもよい。
【0104】
排ガス浄化用触媒1Bでは、流入側セル13aの排ガス流入側の端部(開口部)から流入した排ガスが、多孔質の隔壁部12を通過して流出側セル13bの排ガス流出側の端部(開口部)から流出する。このような様式は、ウォールフロー型と呼ばれる。
【0105】
排ガス浄化用触媒1Bにおいて、流入側セル13aの排ガス流入側の端部(開口部)から流入した排ガスが、多孔質の隔壁部12を通過する際、排ガス中の粒子状物質(PM:Particulate Matter)が、隔壁部12の細孔に捕集される。したがって、排ガス浄化用触媒1Bは、ガソリンエンジン用のパティキュレートフィルタ(Gasoline Particulate Filter)又はディーゼルエンジン用のパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter)として有用である。
【0106】
排ガス浄化用触媒1Bでは、第1触媒層20が第2触媒層30の上流側に設けられているので、流入側セル13aの排ガス流入側の端部(開口部)から流入した排ガスは、第1触媒層20と接触した後、多孔質の隔壁部12を通過し、第2触媒層30と接触する。排ガスが第1触媒層20と接触すると、排ガス中のリンは第1触媒層20中のMg-Ba-Al系複合酸化物に捕捉され、これにより、第2触媒層30に含まれるPd又はPtのリン被毒が防止される。したがって、第2触媒層30は、向上したPd又はPtの排ガス浄化性能を発揮することができる。
【0107】
Mg-Ba-Al系複合酸化物では、Mg含有量の減少により、MgによるRhの排ガス浄化性能の劣化が防止されている。したがって、第1触媒層20は、向上したRhの排ガス浄化性能を発揮することができる。また、Mg-Ba-Al系複合酸化物では、Baの含有(好ましくは固溶)により、Mg-Ba-Al系複合酸化物の製造時に行われる熱処理(焼成)に起因して生じ得るMg-Ba-Al系複合酸化物の分相(スピネル型結晶相及びαアルミナ相への分相)が防止されており、これにより、Mg-Ba-Al系複合酸化物の比表面積の減少及びこれに起因するMg-Ba-Al系複合酸化物のリン捕捉能の低下が防止されている。したがって、第1触媒層20は、向上したリン捕捉性能を発揮することができる。これにより、第2触媒層30に含まれるPd又はPtのリン被毒は効果的に防止されるので、第2触媒層30は、向上したPd又はPtの排ガス浄化性能を発揮することができる。
【0108】
排ガス浄化用触媒1Bは、以下の方法により製造することができる。基材10の排ガス流入側の端部を、第1触媒層20を形成するためのスラリー中に浸漬し、反対側からスラリーを吸引し、乾燥させ、第1触媒層20の前駆層を形成する。基材10の排ガス流出側の端部を、第2触媒層30を形成するためのスラリー中に浸漬し、反対側からスラリーを吸引し、乾燥させ、第2触媒層30の前駆層を形成する。第1触媒層20の前駆層及び第2触媒層30の前駆層の形成後、焼成する。これにより、第1触媒層20及び第2触媒層30が形成され、排ガス浄化用触媒1Bが製造される。排ガス浄化用触媒1Bの製造条件等は、排ガス浄化用触媒1Aと同様である。
【実施例】
【0109】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明をさらに詳述する。
【0110】
〔実施例1~4及び比較例1~2〕
(1)Mg-Ba-Al系又はMg-Al系複合酸化物粉末の製造
実施例1~4では、Mg-Ba-Al系複合酸化物粉末を製造し、比較例1~2では、Mg-Al系複合酸化物粉末を製造した。
【0111】
Ba、Mg及びAlの酸化物換算量が表1に示す量(質量%)となるように、硝酸バリウム、硝酸マグネシウム及び硝酸アルミニウムを純水に溶解させ、溶液1を調製した。なお、比較例1及び2では、硝酸バリウムを使用しなかった。
【0112】
溶液1の硝酸根中和に必要な量よりも過剰な量の炭酸アンモニウムを純水に溶解させ、溶液2を調製した。
【0113】
溶液2に溶液1を一定速度で注ぎ込み、逆中和法により白色の沈殿を生成させ、得られた沈殿をろ別し、純水で洗浄した。得られた粉末を120℃で一晩乾燥させた後、100メッシュ以下に粉砕し、1100℃で4時間、大気雰囲気下で焼成し、Mg-Ba-Al系又はMg-Al系複合酸化物粉末を得た。Mg-Ba-Al系又はMg-Al系複合酸化物粉末の組成を表1に示す。
【0114】
<D50>
Mg-Ba-Al系又はMg-Al系複合酸化物粉末のD50は、7μmであった。D50の測定は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置自動試料供給機(マイクロトラック・ベル社製「Microtorac SDC」)を使用して、Mg-Ba-Al系又はMg-Al系複合酸化物粉末を水性分散媒(例えば純水)に投入し、26mL/secの流速中、40Wの超音波を360秒間照射した後、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製「マイクロトラックMT3300EXII」)を使用して行った。D50の測定は、粒子屈折率:1.5、粒子形状:「真球形」、溶媒屈折率:1.3、「セットゼロ」:30秒、測定時間:30秒の条件で、2回行い、得られた測定値の平均値をMg-Ba-Al系又はMg-Al系複合酸化物粉末のD50とした。
【0115】
<比表面積>
Mg-Ba-Al系又はMg-Al系複合酸化物粉末の比表面積を表1に示す。比表面積の測定は、比表面積計QUADRASORB SI(Quantachrome社製)を用いて、BET1点法にて測定した。測定の際に使用するガスは、窒素ガスとした。BET1点法は、JIS R1626「ファインセラミック粉体の気体吸着BET法による比表面積測定方法」の「6.2流動法」における「(3.5)一点法」に従って行った。
【0116】
<Mg-Ba-Al系又はMg-Al系複合酸化物の分相の有無に関する評価>
Mg-Ba-Al系又はMg-Al系複合酸化物粉末のX線回折スペクトルを、X線回折装置(型番:MiniFlex600、株式会社リガク製)を使用して、X線源:CuKα、操作軸:2θ/θ、測定方法:連続、計数単位:cps、開始角度:5°、終了角度:85°、サンプリング幅:0.02°、スキャンスピード:7°/分、電圧:15kV、電流:100mAの条件で測定した。2θ=37±0.5°の位置に存在するスピネル型結晶相由来ピーク強度Isに対する、2θ=35.1±0.1°の位置に存在するαアルミナ相由来ピーク強度Icの強度比Ic/Isが2以下である場合、Mg-Ba-Al系又はMg-Al系複合酸化物の分相が生じていないと評価し、強度比Ic/Isが2を超える場合、Mg-Ba-Al系又はMg-Al系複合酸化物の分相が生じていると評価した。結果を表1に示す。
【0117】
実施例3のMg-Ba-Al系複合酸化物粉末のX線回折パターンを
図6に示す。
【0118】
(2)第1スラリーの製造
硝酸ロジウム水溶液に、アルミナ粉末、Ce-Zr系複合酸化物粉末及び上記(1)で製造されたMg-Ba-Al系又はMg-Al系複合酸化物粉末を添加して混合し、第1スラリーを製造した。第1スラリー中の各成分の量は、Rh量、アルミナ量、Ce-Zr系複合酸化物量及びMg-Ba-Al系又はMg-Al系複合酸化物量が、第1スラリーの乾燥及び焼成によって形成される第1触媒層の質量を基準として、それぞれ、2質量%、41質量%、41質量%及び16質量%となるように調整した。
【0119】
(3)第2スラリーの製造
硝酸パラジウム水溶液に、アルミナ粉末及びCe-Zr系複合酸化物粉末を添加して混合し、第2スラリーを製造した。第2スラリー中の各成分の量は、Pd量、アルミナ量及びCe-Zr系複合酸化物量が、第2スラリーの乾燥及び焼成によって形成される第2触媒層の質量を基準として、それぞれ、5質量%、48質量%及び47質量%となるように調整した。
【0120】
(4)排ガス浄化用触媒の製造
第2スラリーに、ハニカム基材(材質:コージェライト、直径:118.4mm、軸方向長さ:91mm、セル密度:600セル/インチ2、体積:1L)を浸漬した後、70℃で1時間乾燥した。乾燥後、450℃で1時間焼成し、第2触媒層をハニカム基材上に形成した。ハニカム基材の単位体積当たりの第2触媒層の質量は、115g/Lであった。ハニカム基材の単位体積当たりの第2触媒層中のPdの質量は、5g/Lであった。ハニカム基材の単位体積当たりの第2触媒層中のアルミナ及びCe-Zr系複合酸化物の合計質量は、110g/Lであった。
【0121】
次いで、第1スラリーに、第1触媒層が形成されたハニカム基材を浸漬した後、70℃で1時間乾燥した。乾燥後、450℃で1時間焼成し、第1触媒層を第2触媒層上に形成した。ハニカム基材の単位体積当たりの第1触媒層の質量は、61g/Lであった。ハニカム基材の単位体積当たりの第1触媒層中のRhの質量は、1g/Lであった。ハニカム基材の単位体積当たりの第1触媒層中のアルミナ及びCe-Zr系複合酸化物の合計質量は、50g/Lであった。ハニカム基材の単位体積当たりの第1触媒層中のMg-Ba-Al系又はMg-Al系複合酸化物の質量は、10g/Lであった。
【0122】
(5)熱耐久試験
上記(4)で製造された排ガス浄化用触媒を15mLにコアリングし、1000℃×25時間、10体積%H2O雰囲気下、下記FCモードにて熱耐久試験を行った。
FCモード:下記組成のモデルガス 3L/minと空気 3L/minとを、所定時間毎に交互に流した。
モデルガス流量:C3H6 6mL/min、O2 71mL/min、N2 2923mL/min(計3L/min)とした。
10体積%H2Oは、水入りタンクより気化させ、水蒸気としてモデルガス又は空気に混入させた。温度により飽和水蒸気圧を調整し、上記体積%の水蒸気量とした。
【0123】
(6)排ガス浄化性能試験(リン被毒耐久試験)
上記(5)の熱耐久試験後の排ガス浄化用触媒を所定治具内に固定して排気管に搭載し、ハニカムの中央に熱電対を差し込んだ。この排気管をエンジンにセットし、熱電対の温度が750℃±20℃になるようにエンジン回転数/トルク等を調整した。このとき、A/F(空気/燃料)は14と15を一定時間ずつ繰り返すサイクル試験とし、リン被毒を促進するため、エンジンオイルを6mL/時間ずつ触媒の上流に添加し、耐久試験時間を150時間とした。
【0124】
(7)ライトオフ温度T50に関する評価
リン被毒耐久試験後、排ガス浄化用触媒を評価装置に充填し、排気モデルガス(CO:0.50%,H2:0.17%,O2:0.50%,NO:500ppm,C3H6:1200ppm,CO2:14%,H2O:10%,N2:残部)を空間速度100000/hで流通させながら、20℃/分の昇温温度で500℃まで昇温し、炭化水素(THC)の浄化率を連続的に測定し、炭化水素(THC)の浄化率が50%に達する温度(ライトオフ温度T50)(℃)を求めた。ライトオフ温度T50は、昇温時について求めた。結果を表1に示す。
【0125】
【0126】
表1に示すように、スピネル型結晶相の分相は、実施例1~4のMg-Ba-Al系複合酸化物粉末では生じていなかったが、比較例1~2のMg-Al系複合酸化物粉末では生じていた。
【0127】
表1に示すように、比表面積は、比較例1~2のMg-Al系複合酸化物粉末よりも実施例1~4のMg-Ba-Al系複合酸化物粉末の方が有意に大きかった。
【0128】
表1に示すように、リン被毒耐久試験後の触媒のライトオフ温度T50は、比較例1~2のMg-Al系複合酸化物粉末を使用した触媒よりも実施例1~4のMg-Ba-Al系複合酸化物粉末を使用した触媒の方が有意に低かった。