(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】スパッタリング装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
C23C14/34 L
(21)【出願番号】P 2023510611
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2022005657
(87)【国際公開番号】W WO2022209356
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】P 2021055065
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183369
【氏名又は名称】住友精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】山口 征隆
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/117945(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/094200(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/067820(WO,A1)
【文献】特開2006-016627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
H01L 21/203
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタリングによる薄膜が形成される成膜対象物と、前記成膜対象物に前記薄膜を形成するためのスパッタ粒子を発生させるターゲットとが内部に配置される真空チャンバと、
前記成膜対象物を加熱する加熱部と、
前記真空チャンバ内の気体を排気する排気ポンプと、
前記ターゲットから前記成膜対象物を遮蔽するシャッタ閉位置と、前記シャッタ閉位置から前記排気ポンプ側に移動して成膜中に配置されるシャッタ退避位置とを移動可能に構成されているシャッタと、
前記排気ポンプと前記シャッタ退避位置に配置された退避状態の前記シャッタとの間に配置され、
前記退避状態の前記シャッタに対して前記排気ポンプとは反対側を覆わずに、前記退避状態の前記シャッタからの前記排気ポンプに対する熱の輻射を反射させる板状の反射板と、を備える、スパッタリング装置。
【請求項2】
前記加熱部は、前記シャッタ閉位置に配置された閉状態の前記シャッタの一方表面側に配置されており、
前記反射板は、前記シャッタ退避位置に配置された前記退避状態の前記シャッタに対して、前記加熱部と共通の前記一方表面側に配置されている、請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記シャッタ退避位置に配置された前記退避状態の前記シャッタに対向する側における前記反射板の表面は、前記成膜対象物が配置される側における前記加熱部の表面と平行である、請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
前記反射板は、前記シャッタ退避位置に配置された前記退避状態の前記シャッタに対向する側における表面の少なくとも一部が鏡面である、請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項5】
前記反射板は、冷却されずに、前記シャッタ退避位置に配置された前記退避状態の前記シャッタからの熱の輻射を反射させるように構成されている、請求項4に記載のスパッタリング装置。
【請求項6】
前記反射板は、前記排気ポンプが接続される前記真空チャンバの排気開口部と前記シャッタ退避位置に配置された前記退避状態の前記シャッタとの間において、前記排気開口部と前記退避状態の前記シャッタとの両方から離間して配置されている、請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項7】
前記シャッタ退避位置に配置された前記退避状態の前記シャッタは、前記シャッタの表面に垂直な方向から視て、前記真空チャンバの前記排気開口部に重なるように配置され、
前記反射板は、前記反射板の表面に垂直な方向から視て、前記退避状態の前記シャッタおよび前記排気開口部に重なるように配置されている、請求項6に記載のスパッタリング装置。
【請求項8】
前記シャッタの表面に垂直な方向から視て、板状の前記反射板の表面の投影面積は、前記シャッタ退避位置に配置された前記退避状態の前記シャッタの前記反射板に対向する側における表面の投影面積よりも大きい、請求項7に記載のスパッタリング装置。
【請求項9】
前記反射板は、多角形の板状または円形の板状である、請求項8に記載のスパッタリング装置。
【請求項10】
前記反射板は、前記シャッタ退避位置に配置された前記退避状態の前記シャッタにおける前記排気ポンプ側の表面と平行に、前記シャッタの前記排気ポンプ側の表面に対向するように配置されている、請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項11】
前記反射板は、互いに離間して配置される複数の前記反射板を含む、請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項12】
前記排気ポンプは、前記真空チャンバ内の気体を冷却して排気するように構成されており、
前記反射板は、前記真空チャンバ内の気体を冷却して排気する前記排気ポンプと前記シャッタ退避位置に配置された前記退避状態の前記シャッタとの間に配置されている、請求項1に記載のスパッタリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スパッタリング装置に関し、特に、成膜対象物を遮蔽するシャッタを備えるスパッタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板ホルダー上の基板(成膜対象物)を遮蔽するシャッター板を備えるスパッタリング装置が知られている。このようなスパッタリング装置は、たとえば、特開2002-302763号公報に開示されている。
【0003】
上記特開2002-302763号公報に記載されているスパッタリング装置は、基板に成膜を行う前に、スパッタ室内に配置されたターゲットの表面の酸化膜を除去するためにスパッタリングを行い、ターゲットクリーニングを行う。このスパッタリング装置は、ターゲットクリーニングを行う場合に、ターゲットから基板を遮蔽するために基板ホルダーとターゲットとの間にシャッター板を移動させる。そして、シャッター板は、基板に成膜を行う間は、真空ポンプが配置されている排気チャンバー側に退避させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特開2002-302763号公報には記載されていないが、スパッタリングを行う際に成膜対象物(基板)を加熱する場合がある。この場合には、基板に成膜を行う前に行われるターゲットクリーニングの際にも、成膜対象物に対する加熱が行われる。そのため、ターゲットクリーニングの際に成膜対象物とターゲットとの間に配置されるシャッタ(シャッター板)が、成膜対象物と同様に加熱される。したがって、ターゲットクリーニングの後にシャッタを退避させる場合には、加熱された状態のシャッタが排気ポンプ(真空ポンプ)側に移動させられる。
【0006】
また、上記特開2002-302763号公報には記載されていないが、真空チャンバ(スパッタ室および排気チャンバー)内を排気する排気ポンプは、真空チャンバ内の気体を冷却して凝縮させ、ポンプ内に吸着(トラップ)させることによって排気するように構成されている場合がある。この場合に、加熱された状態のシャッタが排気ポンプ側に移動することに起因して、加熱された状態のシャッタからの熱の輻射によって排気ポンプに吸着されている気体が不純物として真空チャンバ内に放出されるという問題点がある。同様に、気体を吸着するイオンポンプまたはゲッタポンプなどを排気ポンプとして用いる場合にも、加熱されたシャッタからの熱の輻射に起因して排気ポンプに吸着されている気体が真空チャンバ内に放出される場合がある。また、排気ポンプがタービン翼を含むロータ(回転体)を回転させることによって気体分子を弾き飛ばすことにより排気するターボ分子ポンプである場合には、加熱されたシャッタからの熱の輻射に起因して排気ポンプを構成するロータなどの部材が熱膨張することが考えられる。この場合には、ロータなどの回転する部材が熱膨張することに起因して、排気ポンプを構成する部材同士が接触することによって排気ポンプに異常が生じるという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、加熱されたシャッタが排気ポンプ側に移動させられる場合にも、排気ポンプに吸着された気体が真空チャンバ内に放出されることを抑制することが可能であるとともに、加熱されたシャッタからの熱の輻射に起因して排気ポンプに異常が生じることを抑制することが可能なスパッタリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面によるスパッタリング装置は、スパッタリングによる薄膜が形成される成膜対象物と、成膜対象物に薄膜を形成するためのスパッタ粒子を発生させるターゲットとが内部に配置される真空チャンバと、成膜対象物を加熱する加熱部と、真空チャンバ内の気体を排気する排気ポンプと、ターゲットから成膜対象物を遮蔽するシャッタ閉位置と、シャッタ閉位置から排気ポンプ側に移動して成膜中に配置されるシャッタ退避位置とを移動可能に構成されているシャッタと、排気ポンプとシャッタ退避位置に配置された退避状態のシャッタとの間に配置され、退避状態のシャッタに対して排気ポンプとは反対側を覆わずに、退避状態のシャッタからの排気ポンプに対する熱の輻射を反射させる板状の反射板と、を備える。
【0009】
この発明の一の局面によるスパッタリング装置では、上記のように、排気ポンプとシャッタ退避位置に配置された退避状態のシャッタとの間に配置され、退避状態のシャッタからの排気ポンプに対する熱の輻射を反射させる板状の反射板を備える。これにより、シャッタ退避位置に配置された退避状態のシャッタからの熱の輻射を反射板によって反射させることができる。そのため、加熱されたシャッタから排気ポンプに熱が伝わることを抑制することができる。その結果、加熱されたシャッタが排気ポンプ側に移動させられる場合にも、排気ポンプに吸着された気体が真空チャンバ内に放出されることを抑制することができる。また、反射板により加熱されたシャッタから排気ポンプに熱が伝わることを抑制することができるので、排気ポンプを構成する部材が熱膨張することに起因して、排気ポンプを構成する部材同士が接触することを抑制することができる。そのため、排気ポンプを構成する部材同士が接触することによって排気ポンプに異常が生じることを抑制することができる。これらの結果、加熱されたシャッタが排気ポンプ側に移動させられる場合にも、排気ポンプに吸着された気体が真空チャンバ内に放出されることを抑制することができるとともに、加熱されたシャッタからの熱の輻射に起因して排気ポンプに異常が生じることを抑制することができる。
【0010】
上記一の局面によるスパッタリング装置において、好ましくは、加熱部は、シャッタ閉位置に配置された閉状態のシャッタの一方表面側に配置されており、反射板は、シャッタ退避位置に配置された退避状態のシャッタに対して、加熱部と共通の一方表面側に配置されている。このように構成すれば、シャッタから視て、加熱部と反射板とが共通の一方表面側に配置されているため、シャッタにおいて加熱部によって加熱される側である一方表面側からの熱の輻射を反射板によって反射することができる。そのため、シャッタの加熱される側である一方表面側からの熱の輻射が排気ポンプに伝わることを効果的に抑制することができるので、排気ポンプに吸着された気体が真空チャンバ内に放出されることを効果的に抑制することができるとともに、排気ポンプに異常が生じることを効果的に抑制することができる。
【0011】
上記一の局面によるスパッタリング装置において、好ましくは、シャッタ退避位置に配置された退避状態のシャッタに対向する側における反射板の表面は、成膜対象物が配置される側における加熱部の表面と平行である。このように構成すれば、シャッタがシャッタ閉位置からシャッタ退避位置に平行に移動することによって閉状態から退避状態へと変更されるように構成されている場合にも、加熱部によって加熱されたシャッタの表面に沿うように反射板を配置することができる。そのため、加熱部によって加熱されたシャッタの表面からの熱の輻射を効果的に反射させることができる。その結果、シャッタがシャッタ閉位置からシャッタ退避位置に平行に移動することによって閉状態から退避状態へと変更されるように構成されている場合に、排気ポンプに吸着された気体が真空チャンバ内に放出されることを効果的に抑制することができるとともに、排気ポンプに異常が生じることを効果的に抑制することができる。また、反射板の表面が加熱部の表面と平行であるため、シャッタの表面からの熱の輻射を、反射板によって効果的に反射させることができる。そのため、反射板による熱の反射によってシャッタを保温して一定の温度に保つことができるため、シャッタの温度が低下することを抑制することができる。その結果、退避状態において温度が低下したシャッタが移動して再度シャッタ閉位置に配置された場合に、シャッタの温度低下に起因して、成膜対象物の加熱が不十分となることを抑制することができるので、形成される薄膜に不具合が発生することを抑制することができる。なお、ここで言う「平行」とは、平行な方向からわずかに傾斜した方向をも含む広い概念として記載している。
【0012】
上記一の局面によるスパッタリング装置において、好ましくは、反射板は、シャッタ退避位置に配置された退避状態のシャッタに対向する側における表面の少なくとも一部が鏡面である。このように構成すれば、退避状態のシャッタに対向する側における反射板の表面の少なくとも一部が鏡面であるため、退避状態のシャッタからの熱の輻射をより効果的に反射することができる。そのため、加熱されたシャッタから排気ポンプに熱が伝わることをより効果的に抑制することができる。その結果、排気ポンプに吸着された気体が真空チャンバ内に放出されることをより効果的に抑制することができるとともに、排気ポンプに異常が生じることをより効果的に抑制することができる。また、退避状態のシャッタからの熱の輻射をより効果的に反射することができるため、シャッタの温度が低下することをより効果的に抑制することができる。そのため、シャッタの温度低下に起因して、真空チャンバ内の気体がシャッタの表面に付着することをより効果的に抑制することができる。その結果、シャッタの表面に付着(残留)した気体に起因して、成膜対象物に成膜される薄膜に不具合が発生することをより効果的に抑制することができる。また、退避状態のシャッタに対向する側における反射板の表面の少なくとも一部が鏡面であるため、反射板に気体が付着(残留)することを抑制することができる。そのため、反射板に付着(残留)した気体に起因して、成膜対象物に成膜される薄膜に不具合が発生することを抑制することができる。
【0013】
上記一の局面によるスパッタリング装置において、好ましくは、反射板は、冷却されずに、シャッタ退避位置に配置された退避状態のシャッタからの熱の輻射を反射させるように構成されている。このように構成すれば、反射板を冷却するために冷媒流路などの構成を設けることなく、板状の反射板を配置することによって、シャッタからの熱の輻射を反射して排気ポンプに対して熱が伝わることを容易に抑制することができる。その結果、装置構成を複雑化することなく排気ポンプに対する熱の伝播を容易に抑制することができる。また、反射板を冷却させる場合には、反射板の冷却に起因して、シャッタ退避位置に配置された退避状態のシャッタの温度が低下する。これに対して、本発明では、反射板を、冷却せずに、シャッタ退避位置に配置された退避状態のシャッタからの熱の輻射を反射させるように構成する。このように構成すれば、反射板の冷却に起因してシャッタの温度が低下することを抑制することができる。そのため、シャッタの温度低下に起因して、成膜対象物に形成される薄膜に不具合が発生することを抑制することができる。
【0014】
上記一の局面によるスパッタリング装置において、好ましくは、反射板は、排気ポンプが接続される真空チャンバの排気開口部とシャッタ退避位置に配置された退避状態のシャッタとの間において、排気開口部と退避状態のシャッタとの両方から離間して配置されている。このように構成すれば、反射板を排気開口部から離間して配置することによって、反射板と排気開口部との間に隙間ができるので、排気ポンプの排気効率が反射板の設置に起因して低下することを抑制することができる。そのため、排気効率を低下させることなく、反射板によって排気ポンプに対する熱の輻射を効果的に反射することができる。また、反射板を退避状態のシャッタから離間して配置することによって、退避状態のシャッタから反射板に対して直接的に熱伝達が行われる(直接的に熱が伝導する)ことを抑制することができる。そのため、反射板自体がシャッタから直接的に加熱されることなくシャッタからの熱の輻射を反射させることができるので、反射板の温度が上昇することに起因して反射板からの熱の輻射が排気ポンプに対して伝わることを抑制することができる。その結果、排気ポンプに吸着された気体が真空チャンバ内に放出されることを効果的に抑制することができるとともに、排気ポンプに異常が生じることを効果的に抑制することができる。
【0015】
この場合、好ましくは、シャッタ退避位置に配置された退避状態のシャッタは、シャッタの表面に垂直な方向から視て、真空チャンバの排気開口部に重なるように配置され、反射板は、反射板の表面に垂直な方向から視て、退避状態のシャッタおよび排気開口部に重なるように配置されている。このように構成すれば、反射板が、退避状態のシャッタおよび排気開口部に対して、反射板の表面に垂直な方向から視て重なるように配置されているため、排気開口部に重なるように配置されている退避状態のシャッタからの排気開口部に対する熱の輻射を、反射板の表面に垂直な方向に沿って反射させることができる。そのため、反射板の垂直な方向以外からの熱の輻射を反射させる場合に比べて、反射板によって反射された熱の輻射が排気開口部側に回り込むことをより抑制することができる。その結果、排気ポンプに対して熱が伝わることをより抑制することができる。なお、ここで言う「垂直」とは、垂直な方向からわずかに傾斜した方向をも含む広い概念として記載している。
【0016】
上記反射板が退避状態のシャッタと排気開口部とに対して重なるように配置されているスパッタリング装置において、好ましくは、シャッタの表面と垂直な方向から視て、板状の反射板の表面の投影面積は、シャッタ退避位置に配置された退避状態のシャッタの反射板に対向する側における表面の投影面積よりも大きい。このように構成すれば、退避状態のシャッタの表面よりも大きい投影面積の反射板によって、退避状態のシャッタの表面からの熱の輻射を反射させることができる。そのため、反射板の投影面積がシャッタよりも小さい場合と異なり、シャッタの排気ポンプ側の表面全体からの熱を反射することができる。その結果、排気ポンプに吸着された気体が真空チャンバ内に放出されることをより一層抑制することができるとともに、排気ポンプに異常が生じることをより一層抑制することができる。
【0017】
この場合、好ましくは、反射板は、多角形の板状または円形の板状である。このように構成すれば、反射板が多角形の板状である場合には、板金を直線状に切断加工することによって、反射板を生成することができる。そのため、曲線状に切断加工する場合に比べて、反射板を容易に生成することができる。また、一般的にシャッタの形状は円板形であるため、反射板が円形の板状である場合には、反射板を円板形のシャッタの形状に合わせた形状とすることができる。ここで、反射板の表面積が大きすぎる場合には、反射板の表面に気体(ガス)が付着(吸着)すること起因して真空チャンバ内において高真空が得られにくくなるため、成膜対象物に形成される薄膜の品質が低下する。これに対して、反射板の形状を円形とすることによって、反射板の面積をシャッタの面積よりも大きくしながら、円板形のシャッタの形状に合わせて最小とすることができる。そのため、反射板の表面に吸着される気体の量を最小とすることができる。その結果、反射板の表面に吸着した気体が成膜中の真空チャンバ内に飛び出すことを抑制することができるので、高真空が得られず薄膜の品質が低下することを抑制することができる。また、反射板を、角のない円形の板状とすることによって、シャッタから輻射された熱に起因する熱応力が角部に集中することを抑制することができる。そのため、反射板を円形の板状とすることによって、反射板に角部が含まれる場合に比べて、熱による変形をより抑制することができる。
【0018】
上記一の局面によるスパッタリング装置において、好ましくは、反射板は、シャッタ退避位置に配置された退避状態のシャッタにおける排気ポンプ側の表面と平行に、シャッタの排気ポンプ側の表面に対向するように配置されている。このように構成すれば、退避状態のシャッタの排気ポンプ側の表面に対して、対向するように平行に反射板が配置されているため、シャッタからの熱の輻射をシャッタ側に対して垂直に反射することができる。そのため、排気開口部側に熱の輻射が回り込むことをより効果的に抑制することができるので、排気ポンプにシャッタからの熱が伝わることをより効果的に抑制することができる。
【0019】
上記一の局面によるスパッタリング装置において、好ましくは、反射板は、互いに離間して配置される複数の反射板を含む。ここで、シャッタからの熱の輻射に起因して、反射板の温度が上昇する場合がある。その場合には、温度が上昇した反射板自体が熱源となり、温度が上昇した反射板から排気ポンプに対して熱の輻射が発生する。これに対して、本発明では、互いに離間して配置される複数の反射板を含む。このように構成すれば、複数の反射板のうちのシャッタに近い反射板の温度が上昇した場合にも、隣り合う反射板によって、温度が上昇した反射板からの熱の輻射を反射させることができる。そのため、複数の反射板を配置することによって、シャッタからの熱の輻射によって反射板の温度が上昇する場合にも、排気ポンプ側に熱が伝播することを抑制し、または、遅延させることができる。
【0020】
上記一の局面によるスパッタリング装置において、好ましくは、排気ポンプは、真空チャンバ内の気体を冷却して排気するように構成されており、反射板は、真空チャンバ内の気体を冷却して排気する排気ポンプとシャッタ退避位置に配置された退避状態のシャッタとの間に配置されている。このように構成すれば、シャッタ退避位置に配置された退避状態のシャッタからの熱の輻射を反射板によって反射させることができるため、気体を冷却することにより排気する排気ポンプに対して加熱されたシャッタから熱が伝わることを効果的に抑制することができる。その結果、シャッタからの熱に起因して、排気ポンプに吸着された気体が真空チャンバ内に放出されることを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上記のように、加熱されたシャッタが排気ポンプ側に移動させられる場合にも、排気ポンプに吸着された気体が真空チャンバ内に放出されることを抑制することが可能であるとともに、加熱されたシャッタからの熱の輻射に起因して排気ポンプに異常が生じることを抑制することが可能なスパッタリング装置を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態によるスパッタリング装置の構成を示した図である。
【
図2】シャッタのシャッタ閉位置とシャッタ退避位置との移動を説明するための図である。
【
図3】スパッタリング装置のシャッタの動作を説明するための図であって、(A)は、シャッタ閉位置に配置された閉状態のシャッタを示した図であり、(B)は、シャッタ退避位置に配置された退避状態のシャッタを示した図である。
【
図4】2つの反射板と退避状態のシャッタとを示した図である。
【
図5】変形例による反射板の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1~
図4を参照して、本実施形態によるスパッタリング装置100について説明する。
【0025】
スパッタリング装置100は、ターゲット1をスパッタリングすることによって、スパッタリングされたターゲット1からのスパッタ粒子による薄膜を成膜対象物2に形成するように構成されている。具体的には、スパッタリング装置100は、たとえば、真空に排気された真空チャンバ40内に、Ar(アルゴン)およびO2(酸素)などのガスを導入する。そして、スパッタリング装置100は、ターゲット1に電圧を印加して真空チャンバ40内にプラズマを発生させる。このプラズマ中の荷電粒子(たとえば、アルゴンイオンなど)がターゲット1に衝突することによって、ターゲット1からスパッタ粒子(たとえば、ターゲット1の原子)が放出される(叩き出される)。そして、放出されたスパッタ粒子が成膜対象物2に付着(成膜)することによって、成膜対象物2の表面に薄膜が形成される。
【0026】
(スパッタリング装置の全体構成)
図1に示すように、スパッタリング装置100は、カソード電極11、および、磁石ユニット12、を備える。また、スパッタリング装置100には、ターゲット1が配置される。
【0027】
ターゲット1は、真空チャンバ40内に配置され、成膜対象物2に薄膜を形成するためのスパッタ粒子を発生させる。すなわち、ターゲット1は、成膜対象物2に形成される薄膜の材料となる部材である。ターゲット1は、たとえば、アルミニウムまたは銅などを含む。
【0028】
カソード電極11は、図示しない電源に接続されており、ターゲット1に対して負の電荷を印加する。具体的には、カソード電極11は、ターゲット1に対して負の直流高電圧を印加することによって、真空チャンバ40内にプラズマ放電現象を発生させる。また、カソード電極11は、真空チャンバ40に対して絶縁されている。なお、ターゲット1は、交流電圧、パルス電圧、または、高周波電圧が印加されるように構成されていてもよい。
【0029】
また、磁石ユニット12は、ターゲット1の背面側(成膜対象物2が配置される側とは反対側;Z1方向側)に配置される。磁石ユニット12は、ターゲット1の表面側(成膜対象物2側;Z2方向側)に漏洩磁束を発生させる。磁石ユニット12による漏洩磁束(磁界)によって、真空チャンバ40内のターゲット1の成膜対象物2側の表面の近傍において電子が周回する。スパッタリング装置100は、磁石ユニット12が電子を周回させることによって、スパッタ粒子の発生を促進するマグネトロンスパッタリングを行うように構成されている。
【0030】
また、スパッタリング装置100は、載置台20、および、加熱部21を備える。載置台20は、真空チャンバ40内において、成膜対象物2が載置される。成膜対象物2は、スパッタリングによる薄膜が表面に形成される。成膜対象物2は、たとえば、シリコンウェハである。また、載置台20は、図示しないモータなどの昇降機構によって、昇降移動するように構成されている。
【0031】
加熱部21は、載置台20に載置された成膜対象物2を加熱するように構成されている。具体的には、加熱部21は、成膜対象物2が配置される側(Z1方向側)に、XY平面に沿う加熱面21aを有する。そして、加熱部21は、加熱面21aからの熱によって、載置台20に載置されている成膜対象物2をZ2方向側から加熱するように構成されている。すなわち、加熱部21は、成膜対象物2において、ターゲット1およびシャッタ50が配置されている側(Z1方向側)とは反対側から、加熱するように構成されている。加熱部21は、たとえば、電熱線を含む。なお、加熱面21aは、請求の範囲における「成膜対象物が配置される側における加熱部の表面」の一例である。また、加熱面21aは、平滑な平面に限られず、凹凸のある形状であってもよい。この場合、加熱面21aの凹凸形状の凸部分の頂点同士を結んだ面が「成膜対象物が配置される側における加熱部の表面」の一例である。
【0032】
また、スパッタリング装置100は、排気ポンプ30、排気調整弁31を備える。排気ポンプ30は、真空チャンバ40内の排気を行う。本実施形態では、排気ポンプ30は、真空チャンバ40内の気体を冷却して排気する。排気ポンプ30は、たとえば、クライオポンプである。排気ポンプ30は、真空チャンバ40内の気体を、たとえば、100K(ケルビン)以下程度の低温に冷却することによって凝縮する。そして、排気ポンプ30は、凝縮した気体を吸着(トラップ)するように構成されている。排気調整弁31は、排気ポンプ30による排気の流量を調整する。また、排気調整弁31は、後述する真空チャンバ40の排気開口部41に接続されている。
【0033】
また、スパッタリング装置100は、真空チャンバ40を備える。真空チャンバ40は、スパッタリングを行うために、内部にターゲット1と成膜対象物2とが配置される。真空チャンバ40は、排気ポンプ30によって内部が排気され真空状態を形成可能に構成されている。真空チャンバ40内において、ターゲット1がZ1方向側、成膜対象物2がZ2方向側に配置される。
【0034】
また、真空チャンバ40は、排気開口部41を含む。排気開口部41は、排気ポンプ30が接続される開口部である。すなわち、排気ポンプ30は、排気開口部41を介して、真空チャンバ40内の気体を排気するように構成されている。排気開口部41は、たとえば、円形の開口部(
図3(B)参照)である。排気開口部41は、真空チャンバ40の底面(Z2方向側の面)のX2方向側寄りに設けられている。
【0035】
また、スパッタリング装置100は、真空チャンバ40内に防着板42を備える。防着板42は、真空チャンバ40の内表面にスパッタ粒子が付着することを抑制するための遮蔽板である。防着板42は、ターゲット1と成膜対象物2とが対向する方向(Z方向)に沿って延びる半円筒形状(
図3参照)の板状の部材である。
【0036】
〈シャッタの構成〉
図2に示すように、スパッタリング装置100は、シャッタ50およびシャッタ駆動機構53を備える。シャッタ50は、Z1方向側に上面51と、Z2方向側に下面52とを有する円板状である。また、シャッタ50は、たとえば、ステンレス鋼(SUS304、SUS316)である。シャッタ50は、ターゲット1からのスパッタ粒子が成膜対象物2に付着しないように、成膜対象物2を遮蔽する。なお、下面52は、請求の範囲における「一方表面」、「反射板に対向する側における表面」、および、「排気ポンプ側の表面」の一例である。
【0037】
ここで、本実施形態のスパッタリング装置100では、成膜対象物2に対する成膜を行う前に、予めターゲット1の表面における酸化物を除去するためにスパッタリング(ターゲットクリーニング)が行われる。ターゲットクリーニングでは、ターゲットクリーニング中のスパッタ粒子が成膜対象物2に付着(堆積)することを抑制するために、スパッタリング装置100は、シャッタ50を用いて成膜対象物2を遮蔽した状態でターゲット1をスパッタリングする。そして、スパッタリング装置100は、ターゲット1の表面における酸化膜の除去が完了した後に、シャッタ50をターゲット1および成膜対象物2の間から退避させて、成膜対象物2に薄膜を成膜するためのスパッタリングを行う。
【0038】
本実施形態では、シャッタ50は、ターゲット1から成膜対象物2を遮蔽するシャッタ閉位置50aと、シャッタ閉位置50aから排気ポンプ30側に移動して成膜中に配置されるシャッタ退避位置50bとを移動可能に構成されている。具体的には、シャッタ駆動機構53のZ方向を軸とした回動によって、シャッタ50は、XY平面に沿ってシャッタ閉位置50aとシャッタ退避位置50bとを移動する。
【0039】
図3に示すように、シャッタ閉位置50aは、真空チャンバ40内において、ターゲット1と成膜対象物2との間にシャッタ50が配置される位置である。シャッタ閉位置50aに配置された閉状態のシャッタ50は、成膜対象物2を覆うように遮蔽する。また、シャッタ退避位置50bは、シャッタ閉位置50aから、排気ポンプ30側にシャッタ50を退避させた位置である。本実施形態では、シャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50は、シャッタ50の表面に垂直な方向(垂直に沿った方向)から視て、真空チャンバ40の排気開口部41に重なる(オーバーラップする)ように配置される。すなわち、退避状態のシャッタ50は、Z方向に沿った方向から視て、排気開口部41と重なるように配置されている。また、真空チャンバ40内において、シャッタ閉位置50aは、X1方向側寄りの位置であり、シャッタ退避位置50bは、シャッタ閉位置50aからX2方向側に移動された位置である。
【0040】
(反射板の構成)
図4に示すように、本実施形態によるスパッタリング装置100は、2つの反射板60および反射板70を備える。反射板60および70は、退避状態のシャッタ50からの排気ポンプ30に対する熱の輻射を反射させる。また、反射板60および70は、それぞれ、Z1方向側の退避状態のシャッタ50に対向する側に上面61および71を有する。また、反射板60および70は、それぞれ、Z2方向側に下面62および72を有する。なお、上面61および71は、請求の範囲における「シャッタ退避位置に配置された退避状態のシャッタに対向する側における表面」の一例である。
【0041】
また、本実施形態では、反射板60および70は、四角形の板状である。そして、反射板60および70は、略同じ形状である。また、反射板60および70は、たとえば、ステンレス鋼である。反射板60および70は、赤外線(熱線)を透過させない材質、厚みであればよい。また、反射板60および70は、耐熱性が高く、表面の赤外線反射率が高い材質であればなおよい。本実施形態では、反射板60および70は、シャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50に対向する側(Z1方向側)における表面の少なくとも一部が鏡面である。具体的には、2つの反射板60および70は、熱の輻射(赤外線)を反射しやすく、かつ、反射板60および70の表面に気体(ガス)が付着することを抑制するように、上面61および71と、下面62および72との全体が研磨された鏡面である。
【0042】
また、本実施形態では、反射板60および70は、冷却されずにシャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50からの熱の輻射を反射させるように構成されている。すなわち、本実施形態によるスパッタリング装置100には、反射板60および70を冷却するための構成(冷媒流路など)は設けられていない。
【0043】
〈反射板の配置〉
本実施形態では、反射板60および70は、Z方向に沿って互いに離間して配置されている。そして、反射板60および70は、互いに対向するように配置されているとともに、互いに平行に(平行な方向に沿って)配置されている。具体的には、反射板60および70の両方は、XY平面に平行に(平行に沿った方向に)配置されている。そして、平面視において、反射板60および70は重なり合う(オーバーラップする)ように配置されている。
【0044】
また、反射板60および70は、シャッタ50の加熱された側の表面である下面52からの熱の輻射を反射するように配置されている。本実施形態では、加熱部21は、シャッタ閉位置50aに配置された閉状態のシャッタ50の下面52側(Z2方向側)に配置されている。そして、反射板60および70は、シャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50に対して、加熱部21と共通の下面52側(Z2方向側)に配置されている。
【0045】
また、本実施形態では、シャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50に対向する側(Z1方向側)における反射板60および70の表面(上面61および上面71)は、成膜対象物2が配置される側(Z1方向側)における加熱部21の表面(加熱面21a)と平行である(平行な方向に沿った方向に配置されている)。具体的には、加熱部21の成膜対象物2側の表面である加熱面21a(Z1方向側の面)は、XY平面に平行に配置されている。そして、反射板60および70の上面61および71(Z1方向側の面)は、同様に、XY平面に平行に配置されている。
【0046】
また、本実施形態では、反射板60および70は、シャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50における排気ポンプ30側(Z2方向側)の表面である下面52と平行に(平行に沿った方向に)、シャッタ50の排気ポンプ30側の表面である下面52に対向するように配置されている。すなわち、反射板60および70の両方が、退避状態のシャッタ50の下面52と平行に、かつ、対向するように配置されている。
【0047】
なお、反射板60および70は、自重、または、シャッタ50からの輻射熱に起因する熱膨張などによって、Z方向側に撓む場合がある。ここで、反射板60および70は、スパッタリング装置100の組み立て時(製造時)に加熱面21aと平行となるように配置されていればよい。同様に、反射板60および70は、スパッタリング装置100の組み立て時(製造時)に退避状態のシャッタ50の下面52と平行となるように配置されていればよい。
【0048】
また、本実施形態では、反射板60および70は、排気ポンプ30とシャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50との間に配置される。具体的には、反射板60および70は、シャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50から排気開口部41を遮蔽する位置に配置される。また、本実施形態では、反射板60および70は、排気ポンプ30が接続される真空チャンバ40の排気開口部41とシャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50との間において、排気開口部41と退避状態のシャッタ50との両方から離間して配置されている。具体的には、反射板60および70は、退避状態のシャッタ50と、排気開口部41との間において、シャッタ50と排気開口部41との両方からZ方向に離間した位置に配置される。
【0049】
また、
図3(B)に示すように、本実施形態では、反射板60および70は、反射板60および70の表面に垂直な方向(垂直に沿った方向)から視て、退避状態のシャッタ50および排気開口部41に重なる(オーバーラップする)ように配置されている。具体的には、退避状態のシャッタ50は、Z方向側から視て、排気開口部41の全体を覆うように重なり合って配置されている。そして、反射板60および70は、Z方向側から視て、シャッタ50および排気開口部41の全体を覆うように重なり合って配置されている。そして、本実施形態では、シャッタ50の表面(下面52)に垂直な方向(Z方向)から視て、板状の反射板60および70の表面の投影面積は、シャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50の反射板60および70に対向する側(Z2方向側)における表面(下面52)の投影面積よりも大きい。すなわち、反射板60および70のZ方向側から視た大きさは、退避状態のシャッタ50のZ方向側から視た大きさよりも大きい。
【0050】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0051】
本実施形態では、上記のように、排気ポンプ30とシャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50との間に配置され、退避状態のシャッタ50からの排気ポンプ30に対する熱の輻射を反射させる板状の反射板60および70を備える。これにより、シャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50からの熱の輻射を反射板60および70によって反射させることができる。そのため、加熱されたシャッタ50から排気ポンプ30に熱が伝わることを抑制することができる。その結果、加熱されたシャッタ50が排気ポンプ30側に移動させられる場合にも、排気ポンプ30に吸着された気体が真空チャンバ40内に放出されることを抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記のように、加熱部21は、シャッタ閉位置50aに配置された閉状態のシャッタ50の下面52(一方表面)側に配置されており、反射板60および70は、シャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50に対して、加熱部21と共通の下面52(一方表面)側に配置されている。これにより、シャッタ50から視て、加熱部21と反射板60および70とが共通の下面52(一方表面)側に配置されているため、シャッタ50において加熱部21によって加熱される側である下面52(一方表面)側からの熱の輻射を反射板60および70によって反射することができる。そのため、シャッタ50の加熱される側である下面52(一方表面)側からの熱の輻射が排気ポンプ30に伝わることを抑制することができるので、排気ポンプ30に吸着された気体が真空チャンバ40内に放出されることを効果的に抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態では、上記のように、シャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50に対向する側(Z1方向側)における反射板60および70の表面(上面61および71)は、成膜対象物2が配置される側(Z1方向側)における加熱部21の表面と平行である。これにより、シャッタ50がシャッタ閉位置50aからシャッタ退避位置50bに平行に移動することによって閉状態から退避状態へと変更されるように構成されている場合にも、加熱部21によって加熱されたシャッタ50の表面(下面52)に沿うように反射板60および70を配置することができる。そのため、加熱部21によって加熱されたシャッタ50の表面(下面52)からの熱の輻射を効果的に反射させることができる。その結果、シャッタ50がシャッタ閉位置50aからシャッタ退避位置50bに平行に移動することによって閉状態から退避状態へと変更されるように構成されている場合に、排気ポンプ30に吸着された気体が真空チャンバ40内に放出されることを効果的に抑制することができる。また、反射板60および70の表面(上面61および71)が加熱部21の表面(加熱面21a)と平行であるため、シャッタ50の表面(下面52)からの熱の輻射を、反射板60および70によって効果的に反射させることができる。そのため、反射板60および70による熱の反射によってシャッタ50を保温して一定の温度に保つことができるため、シャッタ50の温度が低下することを抑制することができる。その結果、退避状態において温度が低下したシャッタ50が移動して再度シャッタ閉位置50aに配置された場合に、シャッタ50の温度低下に起因して、成膜対象物2の加熱が不十分となることを抑制することができるので、形成される薄膜に不具合が発生することを抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態では、上記のように、反射板60および70は、シャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50に対向する側(Z1方向側)における表面(上面61および71)の全面が鏡面である。これにより、退避状態のシャッタ50に対向する側における反射板60および70の表面(上面61および71)の少なくとも一部が鏡面であるため、退避状態のシャッタ50からの熱の輻射をより効果的に反射することができる。そのため、加熱されたシャッタ50から排気ポンプ30に熱が伝わることをより効果的に抑制することができる。その結果、排気ポンプ30に吸着された気体が真空チャンバ40内に放出されることをより効果的に抑制することができる。また、退避状態のシャッタ50からの熱の輻射をより効果的に反射することができるため、シャッタ50の温度が低下することをより効果的に抑制することができる。そのため、シャッタ50の温度低下に起因して、真空チャンバ40内の気体がシャッタ50の表面に付着することをより効果的に抑制することができる。その結果、シャッタ50の表面に付着(残留)した気体に起因して、成膜対象物2に成膜される薄膜に不具合が発生することをより効果的に抑制することができる。また、退避状態のシャッタ50に対向する側における反射板60および70の表面(上面61および71)の少なくとも一部が鏡面であるため、反射板60および70に気体が付着(残留)することを抑制することができる。そのため、反射板60および70に付着(残留)した気体に起因して、成膜対象物2に成膜される薄膜に不具合が発生することを抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、上記のように、反射板60および70は、冷却されずに、シャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50からの熱の輻射を反射させるように構成されている。これにより、反射板60および70を冷却するために冷媒流路などの構成を設けることなく、板状の反射板60および70を配置することによって、シャッタ50からの熱の輻射を反射して排気ポンプ30に対して熱が伝わることを容易に抑制することができる。その結果、装置構成を複雑化することなく排気ポンプ30に対する熱の伝播を容易に抑制することができる。また、反射板60および70を冷却させる場合には、反射板60および70の冷却に起因して、シャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50の温度が低下する。これに対して、本実施形態では、反射板60および70を、冷却せずに、シャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50からの熱の輻射を反射させるように構成する。これにより、反射板60および70の冷却に起因してシャッタ50の温度が低下することを抑制することができる。そのため、シャッタ50の温度低下に起因して、成膜対象物2に形成される薄膜に不具合が発生することを抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、反射板60および70は、排気ポンプ30が接続される真空チャンバ40の排気開口部41とシャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50との間において、排気開口部41と退避状態のシャッタ50との両方から離間して配置されている。これにより、反射板60および70を排気開口部41から離間して配置することによって、反射板60および70と排気開口部41との間に隙間ができるので、排気ポンプ30の排気効率が反射板60および70の設置に起因して低下することを抑制することができる。そのため、排気効率を低下させることなく、反射板60および70によって排気ポンプ30に対する熱の輻射を効果的に反射することができる。また、反射板60および70を退避状態のシャッタ50から離間して配置することによって、退避状態のシャッタ50から反射板60および70に対して直接的に熱伝達が行われる(直接的に熱が伝導する)ことを抑制することができる。そのため、反射板60および70自体がシャッタ50から直接的に加熱されることなくシャッタ50からの熱の輻射を反射させることができるので、反射板60および70の温度が上昇することに起因して、反射板60および70からの熱の輻射が排気ポンプ30に対して伝わることを抑制することができる。その結果、排気ポンプ30に吸着された気体が真空チャンバ40内に放出されることを効果的に抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、シャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50は、シャッタ50の表面に垂直な方向(Z方向)から視て、真空チャンバ40の排気開口部41に重なるように配置され、反射板60および70は、反射板60および70の表面に垂直な方向(Z方向)から視て、退避状態のシャッタ50および排気開口部41に重なるように配置されている。これにより、反射板60および70が、退避状態のシャッタ50および排気開口部41に対して、反射板60および70の表面に垂直な方向(Z方向)から視て重なるように配置されているため、排気開口部41に重なるように配置されている退避状態のシャッタ50からの排気開口部41に対する熱の輻射を、反射板60および70の表面に垂直な方向(Z方向)に沿って反射させることができる。そのため、反射板60および70の垂直な方向以外からの熱の輻射を反射させる場合に比べて、反射板60および70によって反射された熱の輻射が排気開口部41側に回り込むことをより抑制することができる。その結果、排気ポンプ30に対して熱が伝わることをより抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態では、上記のように、シャッタ50の表面(下面52)に垂直な方向から視て、板状の反射板60および70の表面の投影面積は、シャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50の反射板60および70に対向する側(Z2方向側)における表面(下面52)の投影面積よりも大きい。これにより、退避状態のシャッタ50の表面(下面52)よりも大きい投影面積の反射板60および70によって、退避状態のシャッタ50の表面からの熱の輻射を反射させることができる。そのため、反射板60および70の投影面積がシャッタ50よりも小さい場合と異なり、シャッタ50の排気ポンプ30側(Z2方向側)の表面(下面52)全体からの熱を反射することができる。その結果、排気ポンプ30に吸着された気体が真空チャンバ40内に放出されることをより一層に抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態では、上記のように、反射板60および70は、多角形(四角形)の板状である。これにより、反射板60および70が四角形の板状である場合には、板金を直線状に切断加工することによって、反射板60および70を生成することができる。そのため、曲線状に切断加工する場合に比べて、反射板60および70を容易に生成することができる。
【0060】
また、本実施形態では、上記のように、反射板60および70は、シャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50における排気ポンプ30側(Z2方向側)の表面(下面52)と平行に、シャッタ50の排気ポンプ30側の表面(下面52)に対向するように配置されている。これにより、退避状態のシャッタ50の排気ポンプ30側の表面(下面52)に対して、対向するように平行に反射板60および70が配置されているため、シャッタ50からの熱の輻射をシャッタ50側に対して垂直に反射することができる。そのため、排気開口部41側に熱の輻射が回り込むことをより効果的に抑制することができるので、排気ポンプ30にシャッタ50からの熱が伝わることをより効果的に抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、上記のように、互いに離間して配置される複数の反射板60および70を含む。ここで、シャッタ50からの熱の輻射に起因して、反射板60および70の温度が上昇する場合がある。その場合には、温度が上昇した反射板60および70自体が熱源となり、温度が上昇した反射板60および70から排気ポンプ30に対して熱の輻射が発生する。これに対して、本実施形態では、互いに離間して配置される複数の反射板60および70を含む。これにより、複数の反射板60および70のうちのシャッタ50に近い反射板60の温度が上昇した場合にも、隣り合う反射板70によって、温度が上昇した反射板60からの熱の輻射を反射させることができる。そのため、複数の反射板60および70を配置することによって、シャッタ50からの熱の輻射によって反射板60の温度が上昇する場合にも、排気ポンプ30側に熱が伝播することを抑制し、または、遅延させることができる。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように、排気ポンプ30は、真空チャンバ40内の気体を冷却して排気するように構成されており、反射板60および70は、真空チャンバ40内の気体を冷却して排気する排気ポンプ30とシャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50との間に配置されている。これにより、シャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50からの熱の輻射を反射板60および70によって反射させることができるため、気体を冷却することにより排気する排気ポンプ30に対して加熱されたシャッタ50から熱が伝わることを効果的に抑制することができる。その結果、シャッタ50からの熱に起因して、排気ポンプ30に吸着された気体が真空チャンバ40内に放出されることを効果的に抑制することができる。
【0063】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0064】
たとえば、上記実施形態では、加熱部21と反射板60および70との両方が、シャッタ50の下面52側(Z2方向側)に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、加熱部21と、反射板60および70とをシャッタ50の上面51側と下面52側とのそれぞれに分かれるように配置してもよい。この場合には、反射板60および70が、シャッタ50から視て排気開口部41が配置されている側に配置するようにする。
【0065】
また、上記実施形態では、反射板60および70の上面61および71は、加熱部21の加熱面21aと平行である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、反射板60および70の上面61および71は、加熱部21の加熱面21aと交差する位置関係であってもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、シャッタ閉位置50aに配置された閉状態のシャッタ50の下面52が、加熱部21の加熱面21aと平行に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、成膜対象物2の表面に垂直な方向に対して斜め方向からスパッタリングを行う場合には、シャッタ50を、成膜対象物2の表面に対して斜めに配置してもよい。その場合に、加熱部21の加熱面21aを成膜対象物2の表面と平行に配置することによって、シャッタ50と加熱部21の加熱面21aとを互いに平行ではなく斜めに配置してもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、反射板60および70は、両面が鏡面である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、反射板60および70を、片面のみ鏡面となるように構成してもよい。また、片面の一部のみ鏡面であってもよい。また、反射板60および70のいずれか一方のみが、鏡面の表面を有するように構成されていてもよい。また、本発明では、反射板60および70の両方ともが、鏡面の表面を有していなくてもよい。また、反射板60および70に対して、赤外線吸収率を低下させ、赤外線反射率を上昇させるためならば、可視光領域では差異を認識できない(目視では鏡面とならない)ような表面処理を用いてもよい。また、鏡面を得るための手段としては、研磨に限定されない。すなわち、反射板60および70の表面に、ステンレス以外の材質を被覆するような処理を行うことによって、シャッタ50からの熱の輻射を効果的に反射するように構成してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、反射板60および70は、退避状態のシャッタ50と、排気開口部41との両方から離間して配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、反射板60および70は、排気開口部41に当接するように設けられていてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、シャッタ退避位置50bに配置された退避状態のシャッタ50が、シャッタ50の表面に垂直な方向(Z方向)から視て排気開口部41と重なる(オーバーラップする)ように配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、シャッタ50の表面に垂直な方向から視て、退避状態のシャッタ50と、排気開口部41とが重なり合わない(オーバーラップしない)ように配置されていてもよい。その場合には、反射板60および70と退避状態のシャッタ50とが重なり合う(オーバーラップする)ように配置されていてもよいし、排気開口部41と反射板60および70とが重なり合う(オーバーラップする)ように配置されていてもよい。すなわち、排気開口部41から視てシャッタ50が見えない(遮蔽する)ように反射板60および70を配置するようにすればよい。
【0070】
また、上記実施形態では、反射板60および70の表面の投影面積が退避状態のシャッタ50の反射板60および70に対向する側(Z2方向側)における表面(下面52)の投影面積より大きい例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、反射板60および70の表面の投影面積は、反射板60および70に対向する側(Z2方向側)のシャッタ50の表面(下面52)の面積よりも小さくてもよい。すなわち、少なくとも1枚の反射板の投影面積がシャッタ50の投影面積よりも大きく、他の反射板の投影面積がシャッタ50より小さくてもよい。また、シャッタ50よりも小さい複数の反射板を組み合わせることによって、シャッタ50よりも大きい投影面積を有するようにしてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、反射板60および70が四角形(長方形)の板状である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、反射板60および70は、三角形または五角形などの多角形の板状であってもよい。また、反射板60および70の裏面には、変形を抑制するためのリブが設けられていてもよい。また、反射板60および70は、変形可能に構成された(可撓性のある)シート状、または、膜状であってもよい。
【0072】
また、
図5に示す変形例による反射板260のように、反射板260は、円形の板状であってもよい。一般的にシャッタ50の形状は円板形であるため、反射板260が円形の板状である場合には、反射板260を円板形のシャッタ50の形状に合わせた形状とすることができる。ここで、反射板260の表面積が大きすぎる場合には、反射板260の表面に気体(ガス)が付着(吸着)すること起因して真空チャンバ40内において高真空が得られにくくなるため、成膜対象物2に形成される薄膜の品質が低下する。これに対して、反射板260の形状を円形とすることによって、反射板260の面積をシャッタ50の面積よりも大きくしながら、円板形のシャッタ50の形状に合わせて最小とすることができる。そのため、反射板260の表面に吸着される気体の量を最小とすることができる。その結果、反射板260の表面に吸着した気体が成膜中の真空チャンバ40内に飛び出すことを抑制することができるので、高真空が得られず薄膜の品質が低下することを抑制することができる。また、反射板260を、角のない円形の板状とすることによって、シャッタ50から輻射された熱に起因する熱応力が角部に集中することを抑制することができる。そのため、反射板260を円形の板状とすることによって、反射板260に角部が含まれる場合に比べて、熱による変形をより抑制することができる。
【0073】
また、上記実施形態では、反射板60および70は、退避状態のシャッタ50の下面52と平行に、シャッタ50の下面52に対向するように配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、反射板60および反射板70は、シャッタ50の下面52に対して平行ではなく傾いた状態で対向するように配置されていてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、互いに離間して配置される2枚の反射板60および70を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、反射板は1枚であってもよいし、3枚以上であってもよい。また、複数の反射板の各々は、それぞれ異なる材質であってもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、2枚の反射板60および70は、互いに平行に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。2枚(複数)の反射板は、互いに平行ではなく傾いた状態で対向するように配置されていてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、2つの反射板60および70は、略同じ形状である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、2つの反射板は、互いに異なる形状であってもよい。すなわち、2つの反射板のうちの一方が四角形(多角形)であり、他方が円形であってもよい。また、反射板60に比べて反射板70の方が面積が大きくなるように構成されていてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、ターゲット1の表面の酸化物を除去するため(ターゲットクリーニングのため)にシャッタ50を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、プラズマ(放電)の安定化、または、真空チャンバ40内の雰囲気の安定化など、ターゲットクリーニング以外の成膜対象物2に成膜せずにスパッタリングを行う場合にシャッタ50をシャッタ閉位置に配置するようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、シャッタ50は、円形の板状である例を示したが、本発明はこれに限られない。シャッタ50は、四角形などの多角形であってもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、退避状態のシャッタ50の面積は、排気開口部41の開口面積よりも大きい例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、シャッタ50の面積は、排気開口部41の開口面積よりも小さくてもよい。その場合には、反射板60および70の面積も、排気開口部41よりも小さくてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、シャッタ50は、シャッタ閉位置50aからシャッタ退避位置50bに平行移動することによって、閉状態から退避状態へと切り替えられる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、シャッタ50を、シャッタ閉位置50aの閉状態と、シャッタ退避位置50bの退避状態との各々において形状を変化させるように構成してもよい。すなわち、シャッタ50を、シャッタ閉位置50aの閉状態では一枚の板状であり、シャッタ退避位置50bの退避状態では折りたたむように変形させるように構成してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、排気ポンプ30が、真空チャンバ40内の気体を冷却することによって排気するクライオポンプである例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、真空チャンバ40内の気体を排気する排気ポンプは、気体を吸着するイオンポンプまたはゲッタポンプなどであってもよい。この場合においても、同様に、加熱されたシャッタが排気ポンプ側に移動させられる場合にも、排気ポンプに吸着された気体が真空チャンバ内に放出されることを抑制することができる。また、排気ポンプは、タービン翼を含むロータ(回転体)を回転させることによって気体分子を弾き飛ばすことにより排気するターボ分子ポンプであってもよい。この場合にも、反射板により加熱されたシャッタから排気ポンプに熱が伝わることを抑制することができるので、排気ポンプを構成する部材が熱膨張することに起因して、排気ポンプを構成する部材同士が接触することを抑制することができる。その結果、排気ポンプを構成する部材同士が接触することによって排気ポンプに異常が生じることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 ターゲット
2 成膜対象物
21 加熱部
21a 加熱面(成膜対象物が配置される側における加熱部の表面)
30 排気ポンプ
40 真空チャンバ
41 排気開口部
50 シャッタ
50a シャッタ閉位置
50b シャッタ退避位置
52 下面(一方表面、排気ポンプ側の表面、反射板に対向する側における表面、排気ポンプ側の表面)
60、70、260 反射板(複数の反射板)
61、71 上面(シャッタ退避位置に配置された退避状態のシャッタに対向する側における表面)
100 スパッタリング装置