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特許7547618硬化性ポリウレタン樹脂組成物、硬化物および積層体
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  • 特許-硬化性ポリウレタン樹脂組成物、硬化物および積層体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】硬化性ポリウレタン樹脂組成物、硬化物および積層体
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20240902BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240902BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C08F290/06
B05D7/24 302T
B32B27/40
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023511027
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2022013214
(87)【国際公開番号】W WO2022210112
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2021055942
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 陽介
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104546550(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
B05D 7/24
B32B 27/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ジイソシアネートおよび/またはその誘導体を含むポリイソシアネート成分と、
ヘテロ環構造を含有する植物由来のヘテロ環含有植物由来ポリオールと、エチレン性不飽和基およびヒドロキシル基を含有するヒドロキシル基含有不飽和化合物とを含むヒドロキシル成分とのみからなる反応生成物を含み、
前記反応生成物は、イソシアネート基末端プレポリマーと前記ヒドロキシル基含有不飽和化合物とのみからなる反応生成物であり、
前記ヒドロキシル基含有不飽和化合物のヒドロキシル基に対する前記イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基の当量比が、0.7以上1.3以下であり、
前記イソシアネート基末端プレポリマーは、前記ポリイソシアネート成分と前記ヘテロ環含有植物由来ポリオールとのみからなる反応生成物であり、
前記ヘテロ環含有植物由来ポリオールのヒドロキシル基に対する前記ポリイソシアネート成分のイソシアネート基の当量比が、1.5以上20以下であり、
前記脂肪族ジイソシアネートは、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートおよび/または1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートであり、
前記ヘテロ環含有植物由来ポリオールが、イソソルビド変性ポリカーボネートポリオールであり、
前記ヒドロキシル基含有不飽和化合物が、モノヒドロキシルモノ(メタ)アクリレートである、硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記1,5-ペンタメチレンジイソシアネートが、植物由来の1,5-ペンタメチレンジイソシアネートである、請求項1に記載の硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、3つ以上のエチレン性不飽和基を有する多官能(メタ)アクリレートを含み、
前記多官能(メタ)アクリレートが、前記反応生成物100質量部に対して、30質量部以上含有されている、請求項1に記載の硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の硬化性ポリウレタン樹脂組成物の硬化物。
【請求項5】
ヘイズが0.5%未満である、請求項に記載の硬化物。
【請求項6】
被塗装体と、請求項に記載の硬化物からなる硬化膜とを厚み方向に備える、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性ポリウレタン樹脂組成物、硬化物および積層体、詳しくは、活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性ポリウレタン樹脂組成物、その硬化物およびその硬化物からなる硬化膜を備える積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタンアクリレートは、各種工業製品のコーティング材、インキ、粘着剤、接着剤など、幅広い分野で用いられている。
【0003】
近年、このようなウレタンアクリレートには、環境負荷を低減するために、植物由来の原料を用いることが検討されている。
【0004】
例えば、植物由来であるペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体を含むポリイソシアネートと、ポリオールと、エチレン性不飽和基およびヒドロキシル基を含有するヒドロキシル基含有不飽和化合物とを反応させることにより得られるウレタン樹脂を含有する硬化性ポリウレタン樹脂組成物が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-190948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、硬化性ポリウレタン樹脂組成物に、さらに多官能(メタ)アクリレートを配合した後、活性エネルギー線を照射して、ウレタン樹脂を架橋させることにより硬化物を得ている。
【0007】
しかし、硬化性ポリウレタン樹脂組成物において、ポリオールの種類によっては、硬化性ポリウレタン樹脂組成物に多官能(メタ)アクリレートを配合すると、ウレタン樹脂に対する多官能(メタ)アクリレートの相溶性が十分でなく、得られる硬化物に濁りが生じるという不具合がある。
【0008】
本発明は、濁りを抑制することができる硬化性ポリウレタン樹脂組成物、その硬化物およびその硬化物からなる硬化膜を備える積層体である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、脂肪族ジイソシアネートおよび/またはその誘導体を含むポリイソシアネート成分と、ヘテロ環構造を含有する植物由来のヘテロ環含有植物由来ポリオールと、エチレン性不飽和基およびヒドロキシル基を含有するヒドロキシル基含有不飽和化合物とを含むヒドロキシル成分との反応生成物を含む、硬化性ポリウレタン樹脂組成物である。
【0010】
本発明[2]は、前記脂肪族ジイソシアネートが、植物由来の1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを含む、上記[1]に記載の硬化性ポリウレタン樹脂組成物を含んでいる。
【0011】
本発明[3]は、前記ヘテロ環含有植物由来ポリオールが、イソソルビド変性ポリカーボネートポリオールである、上記[1]または[2]に記載の硬化性ポリウレタン樹脂組成物を含んでいる。
【0012】
本発明[4]は、さらに、3つ以上のエチレン性不飽和基を有する多官能(メタ)アクリレートを含み、前記多官能(メタ)アクリレートが、前記反応生成物100質量部に対して、30質量部以上含有されている、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の硬化性ポリウレタン樹脂組成物を含んでいる。
【0013】
本発明[5]は、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の硬化性ポリウレタン樹脂組成物の硬化物を含んでいる。
【0014】
本発明[6]は、ヘイズが0.5%未満である、上記[5]に記載の硬化物を含んでいる。
【0015】
本発明[7]は、被塗装体と、上記[5]または[6]に記載の硬化物からなる硬化膜とを厚み方向に備える、積層体を含んでいる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の硬化性ポリウレタン樹脂組成物は、ポリオールとして、ヘテロ環構造を含有する植物由来のヘテロ環含有植物由来ポリオールを含有している。そのため、環境負荷を低減しながら、硬化性ポリウレタン樹脂組成物を硬化することにより得られる硬化物の濁りを抑制することができる。その結果、本発明の硬化物、および、その硬化物からなる硬化膜を備える本発明の積層体では、環境負荷を低減しながら、硬化膜の濁りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の積層体の製造方法の一実施形態を示す概略図である。図1Aは、被塗装体を準備する第1工程を示す。図1Bは、被塗装体の厚み方向一方面に、硬化膜を配置する第2工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の硬化性ポリウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート成分とヒドロキシル成分との反応生成物を含む。反応生成物はウレタン樹脂である。詳しくは、ヒドロキシル成分がヒドロキシル基含有不飽和化合物を含んでいることから、反応生成物は、活性エネルギー線硬化性ウレタン樹脂である。
【0019】
<ポリイソシアネート成分>
ポリイソシアネート成分は、脂肪族ジイソシアネートおよび/またはその誘導体を含んでいる。
【0020】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(ヘキサンジイソシアネート)(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(ペンタンジイソシアネート)(PDI)、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,2-、2,3-または1,3-ブチレンジイソシアネート、および、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0021】
ヘキサメチレンジイソシアネートとしては、例えば、1,2-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、および、2,5-ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられ、好ましくは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0022】
ペンタメチレンジイソシアネートとしては、例えば、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,4-ペンタメチレンジイソシアネート、および、1,3-ペンタメチレンジイソシアネートが挙げられ、好ましくは、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0023】
脂肪族ジイソシアネートとして、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、および、ペンタメチレンジイソシアネート、より好ましくは、ペンタメチレンジイソシアネート、さらに好ましくは、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0024】
また、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートは、とりわけ好ましくは、植物由来である。植物由来の1,5-ペンタメチレンジイソシアネートは、酵素によるリジンの脱炭酸反応により得ることができる。このような植物由来の1,5-ペンタメチレンジイソシアネートの製造方法は、国際公開パンフレットWO2012/121291号の明細書に記載されている。
【0025】
また、このような1,5-ペンタメチレンジイソシアネートのバイオマス度は、例えば、10%以上、好ましくは、50%以上、より好ましくは、60%以上、さらに好ましくは、65%以上、また、例えば、80%以下である。
【0026】
なお、バイオマス度の算出方法については、後述する実施例で詳述する(以下、同様。
)。
【0027】
脂肪族ジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0028】
脂肪族ジイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記した脂肪族ジイソシアネートの多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート誘導体、イミノオキサジアジンジオン誘導体)、5量体、7量体など)、アロファネート誘導体(例えば、上記した脂肪族ジイソシアネートと、1価アルコールまたは2価アルコールとの反応より生成するアロファネート誘導体)、ポリオール誘導体(例えば、上記した脂肪族ジイソシアネートと3価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン)との反応より生成するポリオール誘導体(アルコール付加体)など)、ビウレット誘導体(例えば、上記した脂肪族ジイソシアネートと、水またはアミン類との反応により生成するビウレット誘導体など)、ウレア誘導体(例えば、上記した脂肪族ジイソシアネートとジアミンとの反応により生成するウレア誘導体など)、オキサジアジントリオン誘導体(例えば、上記した脂肪族ジイソシアネートと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド誘導体(上記した脂肪族ジイソシアネートの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド誘導体など)、ウレトジオン誘導体、および、ウレトンイミン誘導体が挙げられ、好ましくは、イソシアヌレート誘導体、より好ましくは、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体、さらに好ましくは、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体、とりわけ好ましくは、植物由来の1,5-ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体が挙げられる。
【0029】
植物由来の1,5-ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体のバイオマス度は、例えば、10%以上、好ましくは、50%以上、より好ましくは、60%以上、さらに好ましくは、65%以上、また、例えば、80%以下である。
【0030】
脂肪族ジイソシアネートの誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0031】
ポリイソシアネート成分は、さらに、他のポリイソシアネートおよび/またはその誘導体を含むこともできる。
【0032】
他のポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、および、脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0033】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、4,4′-、2,4′-または2,2′-ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(MDI)、2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TDI)、o-トリジンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、m-またはp-フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4′-ジフェニルジイソシアネート、および、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネートが挙げられる。
【0034】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネート(1,2-、1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(XDI)、1,3-または1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TMXDI)、および、ω,ω′-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンが挙げられる。
【0035】
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4′-、2,4′-または2,2′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)もしくはその混合物(H12MDI)、1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(HXDI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、および、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネートが挙げられる。
【0036】
他のポリイソシアネートにおける誘導体としては、上記した脂肪族ジイソシアネートの誘導体で挙げた誘導体が挙げられる。
【0037】
他のポリイソシアネートおよびその誘導体の配合割合は、ポリイソシアネート成分100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、また、例えば、20質量部以下である。
【0038】
他のポリイソシアネートおよびその誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0039】
ポリイソシアネート成分は、好ましくは、脂肪族ジイソシアネートおよび/またはその誘導体を含み、他のポリイソシアネートおよびその誘導体を含まず、より好ましくは、脂肪族ジイソシアネートの誘導体を含まず、脂肪族ジイソシアネートを含むか、または、脂肪族ジイソシアネートおよび脂肪族ジイソシアネートの誘導体を含む。
【0040】
ポリイソシアネート成分が、脂肪族ジイソシアネートおよび脂肪族ジイソシアネートの誘導体を含む場合には、脂肪族ジイソシアネートおよび脂肪族ジイソシアネートの誘導体の総量100質量部に対して、脂肪族ジイソシアネートの含有割合は、例えば、60質量部以上、好ましくは、70質量部以上、より好ましくは、80質量部以上、また、例えば、90質量部以下である。また、肪族ジイソシアネートの誘導体の含有割合は、例えば、10質量部以上、また、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下、より好ましくは、20質量部以下である。
【0041】
そして、とりわけ好ましくは、ポリイソシアネート成分は、脂肪族ジイソシアネートの誘導体を含まず、脂肪族ジイソシアネートを含む。これにより、硬化性ポリウレタン樹脂組成物を硬化することにより得られる硬化物の濁りを、より一層抑制することができる。
【0042】
<ヒドロキシル成分>
ヒドロキシル成分は、ヘテロ環含有植物由来ポリオールおよびヒドロキシル基含有不飽和化合物を含む。
【0043】
[ヘテロ環含有植物由来ポリオール]
ヘテロ環含有植物由来ポリオールは、分子内に、1つ以上のヘテロ環を有する植物由来のポリオールである。
【0044】
このようなヘテロ環含有植物由来ポリオールとしては、例えば、下記式(1)で示されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むポリオールが挙げられる。
【化1】
【0045】
上記式(1)で示されるジヒドロキシ化合物としては、構造異性体として、例えば、イソソルビド、イソマンニド、および、イソイデットが挙げられ、好ましくは、イソソルビドが挙げられる。
【0046】
また、上記式(1)で示されるジヒドロキシ化合物は、植物由来の成分である。
【0047】
また、ポリオールは、さらに、他のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むこともできる。
【0048】
他のジヒドロキシ化合物の構成単位としては、例えば、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位、および、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位(上記式(1)で示されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を除く。以下同様。)が挙げられる。
【0049】
脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、直鎖状脂肪族ジヒドロキシ化合物、および、分岐状脂肪族ジヒドロキシ化合物が挙げられる。直鎖状脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、および、1,12-ドデカンジオールが挙げられる。分岐状脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、および、ヘキシレングリコールが挙げられる。
【0050】
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6-デカリンジメタノール、1,5-デカリンジメタノール、2,3-デカリンジメタノール、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノール、および、1,3-アダマンタンジメタノールが挙げられる。
【0051】
そして、上記式(1)で示されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むポリオールにおいて、ポリオールは、好ましくは、マクロポリオールである。
【0052】
マクロポリオールは、数平均分子量が250以上、好ましくは、400以上、例えば、10000以下の高分子量ポリオールである。
【0053】
マクロポリオールとして、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、および、ウレタン変性ポリオールが挙げられ、好ましくは、ポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0054】
このようなポリカーボネートポリオールは、上記式(1)で示されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むジヒドロキシ化合物、および、必要により、他のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ成分と、炭酸ジエステル(例えば、ジフェニルカーボネート)とをエステル交換反応させることにより得られる。
【0055】
このポリカーボネートポリオールは、ヘテロ環を有し、かつ、植物由来の成分である上記式(1)で示されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含む。そのため、このポリカーボネートポリオールは、ヘテロ環を有し、かつ、植物由来である。
【0056】
また、上記したように、上記式(1)で示されるジヒドロキシ化合物は、好ましくは、イソソルビドである。そのため、このポリカーボネートポリオールは、好ましくは、イソソルビド変性ポリカーボネートポリオールである。つまり、ヘテロ環含有植物由来ポリオールとして、好ましくは、イソソルビド変性ポリカーボネートポリオールである。ヘテロ環含有植物由来ポリオールがイソソルビド変性ポリカーボネートポリオールであれば、より一層、環境負荷を低減できる。
【0057】
ヘテロ環含有植物由来ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0058】
ヘテロ環含有植物由来ポリオールのバイオマス度は、例えば、10%以上、好ましくは、30%以上、より好ましくは、40%以上、また、例えば、70%以下である。
【0059】
[ヒドロキシル基含有不飽和化合物]
ヒドロキシル基含有不飽和化合物は、分子内に、1つ以上のエチレン性不飽和基、および、1つ以上のヒドロキシル基を併有する。
【0060】
より具体的には、ヒドロキシル基含有不飽和化合物は、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルフェニル基、プロペニルエーテル基、アリルエーテル基およびビニルエーテル基から選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和基含有基を1つ以上と、ヒドロキシル基を1つ以上とを、併有している。
【0061】
エチレン性不飽和基含有基として、好ましくは、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基、さらに好ましくは、アクリロイル基が挙げられる。
【0062】
ヒドロキシル基含有不飽和化合物は、エチレン性不飽和基含有基がアクリロイル基および/またはメタクリロイル基である場合、例えば、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0063】
なお、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルと定義され、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートと定義される。
【0064】
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、1分子中に、ヒドロキシル基を1つ有し、アクリロイル基またはメタクリロイル基を1つ有するモノヒドロキシルモノ(メタ)アクリレート、例えば、1分子中に、ヒドロキシル基を複数有し、アクリロイル基またはメタクリロイル基を1つ有するポリヒドロキシルモノ(メタ)アクリレート、例えば、1分子中に、ヒドロキシル基を1つ有し、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を複数有するモノヒドロキシルポリ(メタ)アクリレート、例えば、1分子中に、ヒドロキシル基を複数有し、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を複数有するポリヒドロキシルポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0065】
モノヒドロキシルモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、2-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェート、ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、および、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0066】
ポリヒドロキシルモノ(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、および、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0067】
モノヒドロキシルポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、および、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート(例えば、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート(商品名:NKエステル701A、新中村化学製))が挙げられる。
【0068】
ポリヒドロキシルポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、および、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0069】
ヒドロキシル基含有不飽和化合物は、エチレン性不飽和基含有基がビニルフェニル基である場合、例えば、4-ビニルフェノール、2-ヒドロキシエチル-4-ビニルフェニルエーテル、(2-ヒドロキシプロピル)-4-ビニルフェニルエーテル、(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-ビニルフェニルエーテル、および、4-(2-ヒドロキシエチル)スチレンが挙げられる。
【0070】
ヒドロキシル基含有不飽和化合物は、エチレン性不飽和基含有基がプロペニルエーテル基である場合、例えば、プロペニルアルコール、2-ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、および、2,3-ジヒドロキシプロピルプロネニルエーテルが挙げられる。
【0071】
ヒドロキシル基含有不飽和化合物は、エチレン性不飽和基含有基がアリルエーテル基である場合、例えば、アリルアルコール、2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、および、2-ヒドロキシプロピルアリルアルコールが挙げられる。
【0072】
ヒドロキシル基含有不飽和化合物は、エチレン性不飽和基含有基がビニルエーテル基である場合、例えば、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、および、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテルが挙げられる。
【0073】
これらヒドロキシル基含有不飽和化合物のうち、好ましくは、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、より好ましくは、モノヒドロキシルモノ(メタ)アクリレート、さらに好ましくは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、とりわけ好ましくは、2-ヒドロキシエチルアクリレートが挙げられる。
【0074】
ヒドロキシル基含有不飽和化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0075】
そして、ポリイソシアネート成分とヒドロキシル成分とを反応させるには、ポリイソシアネート成分と、ヒドロキシル成分(ヘテロ環含有植物由来ポリオールおよびヒドロキシル基含有不飽和化合物)とを混合して、反応させる。
【0076】
具体的には、まず、ポリイソシアネート成分と、ヘテロ環含有植物由来ポリオールとを反応させる。
【0077】
詳しくは、まず、ポリイソシアネート成分と、ヘテロ環含有植物由来ポリオールとを、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基(NCO)が、ヘテロ環含有植物由来ポリオールのヒドロキシル基(OH)に対して過剰となるように反応させることにより、イソシアネート基末端プレポリマーを含むプレポリマー組成物を得る。
【0078】
具体的には、ヘテロ環含有植物由来ポリオールに対するポリイソシアネート成分の当量比(NCO/OH)が、例えば、1.5以上、好ましくは、2以上、さらに好ましくは、3以上であり、例えば、20以下、好ましくは、10以下、さらに好ましくは、8以下の割合となるように、ポリイソシアネート成分とヘテロ環含有植物由来ポリオールとを反応させる。
【0079】
上記反応において、反応温度は、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上、より好ましくは、60℃以上、例えば、120℃以下、好ましくは、100℃以下、より好ましくは、90℃以下である。また、反応時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上、例えば、10時間、好ましくは、5時間以下である。
【0080】
上記反応は、所望のイソシアネート基濃度(例えば、1質量%以上40質量%以下)となった時点で終了する。また、反応は、好ましくは、窒素雰囲気下で実施する。また、同時に、ヒドロキシル基含有不飽和化合物の重合(自己重合)を抑制する目的で、反応液中に乾燥空気をバブリングすることが好ましい
【0081】
また、上記反応においては、必要に応じて、公知の有機溶媒、および、公知のウレタン化触媒(例えば、アミン系触媒、錫系触媒、鉛系触媒、ビスマス系触媒、ジルコニウム系触媒、亜鉛系触媒)を適宜の割合で添加することができる。
【0082】
これにより、イソシアネート基末端プレポリマーと、未反応のポリイソシアネートとの混合物としてのプレポリマー組成物を得ることができる。
【0083】
また、上記反応において、有機溶媒を添加した場合は、プレポリマー組成物は、イソシアネート基末端プレポリマーが有機溶媒に溶解または分散された有機溶媒溶液として調製されている。
【0084】
次いで、必要により、プレポリマー組成物における未反応のポリイソシアネートを、例えば、蒸留法、抽出法によって、除去する。
【0085】
次いで、プレポリマー組成物とヒドロキシル基含有不飽和化合物とを反応させる。
【0086】
これにより、イソシアネート基末端プレポリマーの分子末端に、ヒドロキシル基含有不飽和化合物を結合させることができ、ウレタン樹脂の分子末端にエチレン性不飽和基を含有させることができる。
【0087】
詳しくは、ヒドロキシル基含有不飽和化合物のヒドロキシル基(OH)に対するイソシアネート基末端プレポリマーおよび未反応のポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)の当量比(NCO/OH)が、例えば、0.7以上、好ましくは、0.8以上、より好ましくは、0.9以上となり、また、1.3以下、好ましくは、1.2以下、より好ましくは、1.1以下となるように、イソシアネート基末端プレポリマーおよび未反応のポリイソシアネートと、ヒドロキシル基含有不飽和化合物とを反応させる。
【0088】
上記反応において、反応温度は、例えば、40℃以上、好ましくは、60℃以上であり、例えば、100℃以下、好ましくは、80℃以下である。反応時間は、例えば、0.5時間以上、また、例えば、10時間以下である。
【0089】
また、上記反応においては、必要に応じて、上記した反応溶媒および上記ウレタン化触媒を適宜の割合で添加することができる。
【0090】
また、上記の反応においては、ヒドロキシル基含有不飽和化合物の重合(自己重合)を防止するため、重合禁止剤を、反応系に対して10ppm以上、好ましくは、50ppm以上、例えば、10000ppm以下、好ましくは、5000ppm以下、配合することもできる。
【0091】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メトキシフェノール、メチルハイドロキノン(別名ハイドロキノンメチルエーテル)、2-ターシャリーブチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、ターシャリーブチルp-ベンゾキノン、フェノチアジンなどが挙げられる。
【0092】
また、上記反応において、例えば、モノオールを添加することもできる。
【0093】
モノオールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、1-メトキシー2-プロパノール、2-エチルヘキシルアルコール、その他のアルカノール(C5~38)および脂肪族不飽和アルコール(9~24)、アルケニルアルコール、2-プロペン-1-オール、アルカジエノール(C6~8)、および、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オールが挙げられる。
【0094】
モノオールは、そのヒドロキシル基が、未反応のイソシアネート基に対して等量または1を超過する割合、より具体的には、例えば、1以上、好ましくは、1.05以上、例えば、2以下、好ましくは、1.5以下となる割合で、配合する。
【0095】
また、モノオールは、プレポリマー組成物およびヒドロキシル基含有不飽和化合物の反応終了後に配合するか、または、ヒドロキシル基含有不飽和化合物と混合して、プレポリマー組成物と反応させることもできる。
【0096】
モノオールを配合することにより、所定濃度で残存する未反応のイソシアネート基を消失させることができる。
【0097】
これにより、例えば、ウレタン樹脂を、イソシアネート基末端プレポリマーおよびヒドロキシル基含有不飽和化合物からなる主生成物と、ポリイソシアネートおよびヒドロキシル基含有不飽和化合物からなる副生成物との混合物として得る。なお、上記副生成物は、必要により、例えば、蒸留法、抽出法によって、除去することもできる。
【0098】
なお、ウレタン樹脂において、エチレン性不飽和基は、分子鎖中(途中部分)に含まれていてもよく、また、分子末端に含まれていてもよい。エチレン性不飽和基は、好ましくは、ウレタン樹脂の分子末端に含まれる。
【0099】
なお、ウレタン樹脂の分子中におけるエチレン性不飽和基の位置は、ヒドロキシル基含有不飽和化合物の分子構造に応じて、決定される。
【0100】
プレポリマー組成物が有機溶媒溶液として調製された場合には、ウレタン樹脂は、有機溶媒に溶解または分散された有機溶媒溶液として調製される。
【0101】
ウレタン樹脂のバイオマス度は、例えば、10%以上、好ましくは、40%以上、より好ましくは、45%以上、また、例えば、70%以下である。
【0102】
<ウレタン樹脂の他の実施形態>
ヒドロキシル成分は、必要により、上記したヘテロ環含有植物由来ポリオールおよびヒドロキシル基含有不飽和化合物以外の他のポリオールを含むこともできる。
【0103】
他のポリオールとしては、例えば、上記したマクロポリオールが挙げられる。
【0104】
他のポリオールの配合割合は、特に限定されないが、ウレタン樹脂が上記したバイオマス度を有する範囲内で、適宜調整される。
【0105】
他のポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0106】
また、ヒドロキシル成分が、他のポリオールを含む場合において、ポリイソシアネート成分とヒドロキシル成分とを反応させるには、まず、ポリイソシアネート成分と、ヘテロ環含有植物由来ポリオールおよび他のポリオールとを反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを含むプレポリマー組成物を得、次いで、プレポリマー組成物と、ヒドロキシル基含有不飽和化合物とを反応させる。
【0107】
ヒドロキシル成分は、好ましくは、他のポリオールを含まず、ヘテロ環含有植物由来ポリオールおよびヒドロキシル基含有不飽和化合物からなる。
【0108】
<硬化性ポリウレタン樹脂組成物>
硬化性ポリウレタン樹脂組成物は、上記のウレタン樹脂を含む。
【0109】
また、硬化性ポリウレタン樹脂組成物は、その目的および用途により、3つ以上のエチレン性不飽和基を有する多官能(メタ)アクリレートを含むこともできる。
【0110】
すなわち、ウレタン樹脂を含み、多官能(メタ)アクリレートを含まない硬化性ポリウレタン樹脂組成物が、まず、流通し、その後に、この硬化性ポリウレタン樹脂組成物に、多官能(メタ)アクリレートが配合される場合がある。また、ウレタン樹脂と、多官能(メタ)アクリレートを配合とを含む硬化性ポリウレタン樹脂組成物が、流通する場合もある。
【0111】
多官能(メタ)アクリレートは、活性エネルギー線(後述)の照射により重合する化合物である。また、多官能(メタ)アクリレートは、硬化性ポリウレタン樹脂組成物の粘度が高い場合に配合される反応性希釈剤でもある。
【0112】
また、多官能(メタ)アクリレートは、3つ以上の(メタ)アクリロイル基を、エチレン性不飽和基として含有する。
【0113】
多官能(メタ)アクリレートとして、例えば、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、および、ヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。トリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、および、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。テトラ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、および、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。ペンタ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。ヘキサ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0114】
多官能(メタ)アクリレートとしては、好ましくは、ペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサ(メタ)アクリレート、より好ましくは、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、さらに好ましくは、ペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが挙げられる。
【0115】
また、多官能(メタ)アクリレートには、上記多官能(メタ)アクリレートと、ポリイソシアネートとの反応により得られるウレタン(メタ)アクリレートも含まれる。ポリイソシアネートとしては、上記したポリイソシアネート成分で例示したジイソシアネートが挙げられる。このようなウレタン(メタ)アクリレートとして、好ましくは、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマーが挙げられる。
【0116】
多官能(メタ)アクリレートの配合割合は、ウレタン樹脂(上記ポリイソシアネート成分と、上記ヒドロキシル成分との反応生成物)100質量部に対して、30質量部以上、好ましくは、40質量部以上、より好ましくは、50質量部以上、さらに好ましくは、60質量部以上、とりわけ好ましくは、70質量部以上、最も好ましくは、80質量部以上、さらには、100質量部以上、さらには、200質量部以上、また、例えば、400質量部以下である。
【0117】
多官能(メタ)アクリレートの配合割合が、上記下限以上であれば、硬化性ポリウレタン樹脂組成物を硬化することにより得られる硬化物の濁りを抑制しつつ、硬化物の硬度を向上させることができる。とりわけ、多官能(メタ)アクリレートの配合割合が、60質量部以上であれば、後述する耐摩耗試験後においても、硬化物の濁りを抑制することができる。
【0118】
多官能(メタ)アクリレートは、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマーの単独使用、および、ペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの併用が挙げられる。
【0119】
また、硬化性ポリウレタン樹脂組成物が、3つ以上のエチレン性不飽和基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む場合には、硬化性ポリウレタン樹脂組成物は、必要により、公知の光重合開始剤を適宜の割合で含む。
【0120】
また、硬化性ポリウレタン樹脂組成物には、その目的および用途によって、必要に応じて、例えば、増感剤、光重合促進剤、消泡剤、レベリング剤、顔料、染料、珪素化合物、ロジン類、シランカップリング剤、酸化防止剤、着色剤、増白剤などの各種の添加剤を、適宜の割合で添加することもできる。
【0121】
硬化性ポリウレタン樹脂組成物のバイオマス度は、例えば、10%以上、好ましくは、30%以上、より好ましくは、40%以上、また、例えば、70%以下である。
<作用効果>
【0122】
硬化性ポリウレタン樹脂組成物は、植物由来のポリオール(ヘテロ環含有植物由来ポリオール)を含有している。そのため、環境負荷を低減できる。
【0123】
また、硬化性ポリウレタン樹脂組成物は、ヘテロ環構造を含有するポリオール(ヘテロ環含有植物由来ポリオール)を含有している。そのため、この硬化性ポリウレタン樹脂組成物を硬化することにより得られる硬化物の濁りを抑制することができる。
【0124】
とりわけ、硬化性ポリウレタン樹脂組成物が、上記した多官能(メタ)アクリレートを所定の割合で含む場合において、硬化物の濁りを抑制することができる。
【0125】
詳しくは、炭素環からなる環状構造を有するポリオールを用いると、多官能(メタ)アクリレートとの相溶性が低下し、硬化物の濁りを抑制できない場合がある。
【0126】
一方、この硬化性ポリウレタン樹脂組成物は、ヘテロ環構造を含有するポリオール(ヘテロ環含有植物由来ポリオール)を用いる。そのため、ヘテロ原子の不対電子間に静電反発が生じる。これにより、環状構造同士の重なり合いが、炭素原子のみから構成される炭素環に比べて弱くなると推察される。環状構造同士の重なり合いが、炭素原子のみから構成される炭素環に比べて弱くなることで、多官能(メタ)アクリレートとの相溶性が向上すると推察される。
【0127】
また、多官能(メタ)アクリレートのエステル基には、炭素-酸素結合間に由来する極性がある。一方、炭素以外の元素を含むヘテロ環の方が、炭素原子のみからなる炭素環よりも極性が高いため、多官能(メタ)アクリレートとの相溶性が向上すると推察される。
【0128】
硬化性ポリウレタン樹脂組成物は、例えば、コーティング材、インキ、粘着剤、接着剤、シーリング剤、エラストマー、水性樹脂、熱硬化樹脂、マイクロカプセル、歯科材料、レンズ、バインダー樹脂、防水材、フィルム、シート、3Dプリンタなどに用いる光造形用樹脂として用いることができ、また、スピーカー、センサー類、発電装置(熱や機械的な刺激を電気エネルギーに変換するための装置)に用いられる圧電材料あるいは焦電材料などとして、用いることができる。
【0129】
例えば、コーティング材は、例えば、プラスチックフィルム、プラスチックシート、プラスチックフォーム、メガネレンズ、メガネフレーム、繊維、人工皮革、合成皮革、金属、木材などの各種工業製品に用いることができる。
【0130】
より具体的には、プラスチックフィルムコーティングは、例えば、光学用部材(例えば光学フィルム、光学シートなど)、光学用コーティング材料、繊維、電子電機材料、食品パッケージ、化粧品パッケージ、加飾フィルム、および、太陽電池モジュール用保護シートに用いることができる。
【0131】
また、粘着剤および接着剤は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、EL照明、電子ペーパー、プラズマディスプレイなどの表示装置、例えば、光ディスク(具体的には、ブルーレイディスク、DVD(デジタルビデオ(またはバーサタイル)ディスク)、MO(光磁気ディスク)、PD(相変化光ディスク)など)の情報記録媒体に用いることができる。
【0132】
また、インキは、例えば、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、例えば、の凸版印刷、例えば、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷などの凹版印刷、例えば、オフセット印刷などの平版印刷、例えば、スクリーン印刷などの孔版印刷、例えば、近インクジェット印刷(インク組成物の小滴を飛翔させて紙などの記録媒体に付着させて印刷する印刷方式)に用いることができる。
<硬化物>
【0133】
この硬化性ポリウレタン樹脂組成物を硬化させることにより、硬化物を得ることができる。
【0134】
硬化性ポリウレタン樹脂組成物を硬化させるには、硬化性ポリウレタン樹脂組成物に、活性エネルギー線を照射する。
【0135】
活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の照射量は、例えば、50mJ/cm以上、好ましくは、100mJ/cm以上であり、例えば、5000mJ/cm以下、好ましくは、1000mJ/cm以下である。
【0136】
これにより、硬化物が得られる。このような硬化物は、硬化性ポリウレタン樹脂組成物を硬化させることにより得られる。そのため、環境負荷を低減しながら、濁りが抑制されている。
【0137】
具体的には、硬化物のヘイズは、例えば、0.5%未満、好ましくは、0.4%以下である。
【0138】
硬化物のヘイズの測定方法は、後述する実施例で詳述する。
【0139】
また、硬化性ポリウレタン樹脂組成物を硬化することにより得られる硬化物は、濁りが抑制されているため、とりわけ、透明性が要求される用途において、好適に用いることができる。
【0140】
以下の説明では、硬化性ポリウレタン樹脂組成物の使用方法の一例として、被塗装体2(後述)の表面を、硬化性ポリウレタン樹脂組成物でコーティングする場合について、詳述する。
【0141】
<硬化性ポリウレタン樹脂組成物の使用方法(積層体の製造方法)>
硬化性ポリウレタン樹脂組成物は、被塗装体2の表面を、コーティングするために用いられる。被塗装体2を、コーティングすることにより、積層体1が製造される。
【0142】
積層体1の製造方法は、被塗装体2を準備する第1工程と、被塗装体2の表面(厚み方向一方面)に、硬化性ポリウレタン樹脂組成物を塗布し、硬化させることにより、硬化膜3を配置する第2工程とを備える。
【0143】
図1を参照して、積層体1の製造方法の一実施形態を説明する。
【0144】
図1において、紙面上下方向は、上下方向(厚み方向)であって、紙面上側が、上側(厚み方向一方側)、紙面下側が、下側(厚み方向他方側)である。また、紙面左右方向および奥行き方向は、上下方向に直交する面方向である。具体的には、各図の方向矢印に準拠する。
【0145】
第1工程では、図1Aに示すように、被塗装体2を準備する。
【0146】
被塗装体2は、硬化膜3によって、その表面(厚み方向一方面)に、各種物性が付与される被塗装体である。
【0147】
なお、図1Aにおいて、被塗装体2は、平板形状を有するが、被塗装体2の形状は、特に限定されず、種々の形状が選択される。
【0148】
被塗装体2としては、特に限定されず、例えば、樹脂、および、金属が挙げられる。
【0149】
第2工程では、図1Bに示すように、まず、被塗装体2の表面(厚み方向一方面)に、硬化性ポリウレタン樹脂組成物を塗布し、必要により、乾燥させ、塗膜を形成する。
【0150】
次いで、塗膜を硬化する。塗膜を硬化するには、塗膜に、活性エネルギー線を照射する。
【0151】
これにより、被塗装体2の表面(厚み方向一方面)に、硬化膜3を配置し、積層体1を得る。
【0152】
このような積層体1は、被塗装体2と、硬化性ポリウレタン樹脂組成物の硬化物からなる硬化膜3とを厚み方向に順に備える。
【0153】
積層体1は、硬化性ポリウレタン樹脂組成物の硬化物からなる硬化膜3を備えるため、環境負荷を低減しながら、硬化膜3の濁りを抑制することができる。
【実施例
【0154】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0155】
1.成分の詳細
各製造例、各実施例、および、各比較例で用いた成分の、商品名および略語について、詳述する。
1,5-PDI:1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、ASTM D6866によるバイオマス度70%、商品名「スタビオPDI」、三井化学株式会社製
PDIヌレート:1,5-ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体、ASTM D6866によるバイオマス度70%、商品名「スタビオD-370N」、三井化学株式会社製
1,6-HDI:1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート
HS0850H:上記式(1)で示されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むポリカーボネートポリオール(植物由来)、水酸基価141.3mgKOH/g、ASTM D6866によるバイオマス度44%、商品名「べネビオールHS0850H」、三菱ケミカル株式会社製
NL1010DB:環構造を有しないポリカーボネートポリオール、水酸基価113.5mgKOH/g、ASTM D6866によるバイオマス度22%、商品名「ベネビオールNL1010DB」、三菱ケミカル株式会社製
UM-90(1/1):炭素環を有するポリカーボネートポリオール、水酸基価126.0mgKOH/g、ASTM D6866によるバイオマス度0%、商品名「ETERNACOLL UM-90(1/1)」、宇部興産株式会社製
UC-100:炭素環を有するポリカーボネートポリオール、水酸基価116.1mgKOH/g、ASTM D6866によるバイオマス度0%、商品名「ETERNACOLL UC-100」、宇部興産株式会社製
HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート、富士フイルム和光純薬株式会社製(試薬一級)
アロニックスM402:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、商品名「アロニックスM402」、東亞合成株式会社製
UA-306H:ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、共栄社化学社製
ネオスタンU810:スズ系硬化触媒、日東化成株式会社製
【0156】
2.ウレタン樹脂の合成
<合成例1>
乾燥したフラスコに、HS0850H 297.8gと、酢酸エチル297.8gと、ネオスタンU810 0.12gと加え、45℃で混合攪拌し均一な溶液とした。
【0157】
次いで、ポリイソシアネート成分として、1,5-PDI 69.38gと、PDIヌレート 17.01gとを、それぞれ3回に分けて加えながら70℃に昇温した。
【0158】
次いで、ポリイソシアネート成分と、HS0850Hとを、70℃で1.5時間反応させた後、HEA 29.03gと、メチルエチルケトン65.60gと、メチルハイドロキノン(東京化成工業株式会社、試薬一級)0.08gとを加え、乾燥空気を緩くバブリングさせながら1時間反応させた。
【0159】
次いで、1-メトキシ-2-プロパノール20.00gを加えて、70℃で20分攪拌後、ろ過することで、ウレタン樹脂(固形分濃度50.0%、バイオマス度46.5%)を得た。
【0160】
合成例2~合成例7
合成例1と同様の手順に基づき、ウレタン樹脂を得た。但し、配合処方は、表1に従って変更した。
【0161】
3.硬化性ポリウレタン樹脂組成物の調製
実施例1~実施例3、および、比較例1~比較例4
表2および表3の配合処方に従って、ウレタン樹脂(固形分濃度50.0質量%)と、炭酸ジメチル10.45gと、酢酸エチル10.45g、光重合開始剤としてイルガキュア1173(BASFジャパン株式会社製)0.30gとを混合し、均一な硬化性ポリウレタン樹脂組成物(固形分濃度25質量%)を調製した。
【0162】
実施例4~実施例8、実施例10~実施例16、および、実施例18
表2および表3の配合処方に従って、ウレタン樹脂(固形分濃度50.0質量%)と、アロニックスM402またはUA-306Hと、イルガキュア1173を樹脂の総質量に対し3質量部と、炭酸ジメチルおよび酢酸エチルの混合液(炭酸ジメチル:酢酸エチル=1:1(質量比))とを混合し、均一な硬化性ポリウレタン樹脂組成物(固形分濃度25質量%)を調製した。
【0163】
実施例9および実施例17
表2および表3の配合処方に従って、ウレタン樹脂(固形分濃度50.0質量%)と、アロニックスM402 8.00gと、炭酸ジメチル22.95gと、酢酸エチル22.95gと、レベリング剤としてBYK333(信越化学工業株式会社社製)0.09gと、イルガキュア1173 0.54gとを混合し、均一な硬化性ポリウレタン樹脂組成物(固形分濃度25質量%)を調製した。
【0164】
4.評価
<バイオマス度>
バイオマス度について、下記式(2)基づき、算出した。
各バイオマス原料の(バイオマス度×炭素の含有率×使用量)の総和/全原料の(炭素含有率×使用量)の総和 (2)
【0165】
上記式(2)において、各原料のバイオマス度は、米国試験材料規格(ASTM D6866)に基づき求めた。
【0166】
炭素の含有率については、構造が明確になっているモノマー・オリゴマーに関してはその分子式の計算値から炭素の含有率を算出し、構造が不明確なものに関しては元素分析により、炭素の含有率を算出した。
【0167】
また、全原料に有機溶媒は含まないものとした。
【0168】
<ヘイズ評価>
各実施例および各比較例の硬化性ポリウレタン樹脂組成物を、アプリケーター0.101mm(YA-4型、ヨシミツ精機株式会社製)を用いて、被塗装体としてのポリカーボネート樹脂基板、商品名「PC 1600」、150mm×70mm×厚さ2.0mm、タキロンシーアイ株式会社製)の厚み方向一方面に、塗装し、温風乾燥機で70℃2分乾燥させることで溶剤を留去し、ポリカーボネート樹脂基板の厚み方向一方面に、塗膜を形成した。
【0169】
次いで、このポリカーボネート樹脂基板を、紫外線照射装置のコンベア内を一度通過させることにより、塗膜に紫外線(無電極Hバルブ 240W/cm、出力100%、ランプ高さ70mm、コンベア速度8.9m/分、積算光量400mJ/cm、 Electronic Instrumentation & Technology、 Inc.、社製 UV Power PuckIIにて測定)を照射し、塗膜を硬化させた。
これにより、硬化膜を得、被塗装体と、硬化膜とを厚み方向一方面に順に備える積層体を得た。
【0170】
次いで、硬化直後の硬化膜について、ヘイズメーター(NDH-4000型、日本電色工業株式会社製)を用いて、ヘイズを測定した。その結果を表2および表3に示す。
【0171】
別途、硬化膜に対して、耐摩耗試験を実施した。具体的には、学振形摩耗試験機(摩耗試験機II形、株式会社 安田精機製作所製)を用いてスチールウール(ボンスター ♯0000、日本スチールウール工業株式会社製)の上から500g荷重をかけて50往復した。耐摩耗試験後、ヘイズを測定した。その結果を表2および表3に示す。
【0172】
なお、ヘイズ測定において、試験回数は2回実施し、結果は、2回の試験の平均値とした。
【0173】
5.考察
<合成例1のウレタン樹脂(ポリイソシアネート成分:1,5-PDIおよびPDIヌレート、ヒドロキシル成分:ヘテロ環を含有するポリオール)>
【0174】
実施例1、実施例4~実施例9は、合成例1のウレタン樹脂を用いている。
【0175】
実施例1は、多官能(メタ)アクリレートを含まず、実施例4~実施例9は、多官能(メタ)アクリレートを含む。
【0176】
実施例1は、ヘイズ試験において、硬化直後の硬化膜のヘイズが、0.5%未満である。このことから、硬化膜の濁りを抑制できているとわかる。
【0177】
また、実施例4~実施例9は、ヘイズ試験において、硬化直後の硬化膜のヘイズが、0.5%未満である。このことから、硬化性ポリウレタン樹脂組成物が、多官能(メタ)アクリレートを含んでいても、硬化膜の濁りを抑制できているとわかる。
【0178】
<合成例2のウレタン樹脂(ポリイソシアネート成分:1,5-PDI、ヒドロキシル成分:ヘテロ環を含有するポリオール)>
【0179】
実施例2、実施例10~実施例17は、合成例2のウレタン樹脂を用いている。
【0180】
実施例2は、硬化性ポリウレタン樹脂組成物が、多官能(メタ)アクリレートを含まず、実施例10~実施例17は、多官能(メタ)アクリレートを含む。
【0181】
実施例2は、上記した実施例1と同様に、硬化膜の濁りを抑制できているとわかる。
【0182】
実施例10~実施例17は、上記した実施例4~実施例9と同様に、硬化性ポリウレタン樹脂組成物が、多官能(メタ)アクリレートを含んでいても、硬化膜の濁りを抑制できているとわかる。
【0183】
<合成例6のウレタン樹脂(ポリイソシアネート成分:1,6-HDI、ヒドロキシル成分:ヘテロ環を含有するポリオール)>
【0184】
実施例3および実施例18は、合成例6のウレタン樹脂を用いている。
【0185】
実施例3は、硬化性ポリウレタン樹脂組成物が、多官能(メタ)アクリレートを含まず、実施例18は、多官能(メタ)アクリレートを含む。
【0186】
実施例3は、上記した実施例1と同様に、硬化膜の濁りを抑制できているとわかる。
【0187】
実施例18は、上記した実施例4~実施例9と同様に、硬化性ポリウレタン樹脂組成物が、多官能(メタ)アクリレートを含んでいても、硬化膜の濁りを抑制できているとわかる。
【0188】
<合成例3のウレタン樹脂(ポリイソシアネート成分:1,5-PDI、ヒドロキシル成分:環構造を有しないポリカーボネートポリオール)>
比較例1、比較例5および比較例6は、合成例3のウレタン樹脂を用いている。
【0189】
比較例1は、硬化性ポリウレタン樹脂組成物が、多官能(メタ)アクリレートを含まず、比較例5および比較例6は、多官能(メタ)アクリレートを含む。
【0190】
比較例1は、ヘイズ試験において、硬化直後の硬化膜のヘイズが、0.5%を超過する。このことから、硬化膜の濁りを抑制できていないとわかる。
【0191】
また、比較例5および比較例6は、硬化直後の硬化膜のヘイズが、0.5%を超過する。このことから、硬化性ポリウレタン樹脂組成物が、多官能(メタ)アクリレートを含んでいる場合においても、硬化膜の濁りを抑制できていないとわかる。
【0192】
<合成例4のウレタン樹脂(ポリイソシアネート成分:1,5-PDI、ヒドロキシル成分:炭素環を有するポリカーボネートポリオール)>
比較例2、比較例7および比較例8は、合成例4のウレタン樹脂を用いている。
【0193】
比較例2は、硬化性ポリウレタン樹脂組成物が、多官能(メタ)アクリレートを含まず、比較例7および比較例8は、多官能(メタ)アクリレートを含む。
【0194】
比較例2は、上記した比較例1と同様に、硬化膜の濁りを抑制できていないとわかる。
【0195】
また、比較例7および比較例8は、上記した比較例5および比較例6と同様に、硬化性ポリウレタン樹脂組成物が、多官能(メタ)アクリレートを含んでいても、硬化膜の濁りを抑制できていないとわかる。
【0196】
<合成例5のウレタン樹脂(ポリイソシアネート成分:1,5-PDI、ヒドロキシル成分:炭素環を有するポリカーボネートポリオール)
比較例3、比較例9および比較例10は、合成例5のウレタン樹脂を用いている。
【0197】
比較例3は、硬化性ポリウレタン樹脂組成物が、多官能(メタ)アクリレートを含まず、比較例9および比較例10は、多官能(メタ)アクリレートを含む。
【0198】
比較例3は、ヘイズ試験において、硬化直後の硬化膜のヘイズが、0.5%未満である一方、比較例9および比較例10は、硬化直後の硬化膜のヘイズが、0.5%を超過する。このことから、比較例3の硬化性ポリウレタン樹脂組成物に、多官能(メタ)アクリレートを配合すると、硬化膜の濁りを抑制できないことがわかる。
【0199】
<合成例7のウレタン樹脂(ポリイソシアネート成分:1,6-HDI、ヒドロキシル成分:炭素環を有するポリカーボネートポリオール)
比較例4、比較例11および比較例12は、合成例7のウレタン樹脂を用いている。
【0200】
比較例4は、硬化性ポリウレタン樹脂組成物が、多官能(メタ)アクリレートを含まず、比較例11および比較例12は、多官能(メタ)アクリレートを含む。
【0201】
比較例4、比較例11および比較例12は、上記比較例3、比較例9および比較例10と同様に、比較例4の硬化性ポリウレタン樹脂組成物に、多官能(メタ)アクリレートを配合すると、硬化膜の濁りを抑制できないことがわかる。
【0202】
<バイオマス度>
実施例1~実施例18は、植物由来のポリオール(ヘテロ環含有植物由来ポリオール)を用いている。
【0203】
そして、実施例1~実施例18のバイオマス度は、10以上である。そのため、環境負荷を低減できているとわかる。とりわけ、実施例3および実施例18は、植物由来の1,5-PDIを含まず、1,6-HDIを含むが、ヒドロキシル成分が、植物由来のポリオール(ヘテロ環含有植物由来ポリオール)を含むため、バイオマス度を向上できる。
【0204】
【表1】
【0205】
【表2】
【0206】
【表3】
【0207】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0208】
本発明の硬化性ポリウレタン樹脂組成物、硬化物および積層体は、例えば、プラスチックフィルム、プラスチックシート、プラスチックフォーム、メガネレンズ、メガネフレーム、繊維、人工皮革、合成皮革、金属、木材などの各種工業製品において、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0209】
1 積層体
2 被塗装体
3 硬化膜
図1