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特許7547633マニピュレータ計測システム、計測装置およびマニピュレータの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】マニピュレータ計測システム、計測装置およびマニピュレータの制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/005 20060101AFI20240902BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
A61B1/005 523
A61B1/00 552
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023529313
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2021023766
(87)【国際公開番号】W WO2022269797
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】吉村 克彦
(72)【発明者】
【氏名】岸 宏亮
【審査官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-160278(JP,A)
【文献】特表2019-531807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の関節を有する湾曲部を備えるマニピュレータの前記湾曲部を観察する観察装置と、
前記観察装置の観察結果から前記湾曲部の形状情報を計測して、前記湾曲部の前記形状情報から算出した前記湾曲部の先端部と基端部の少なくとも一方の位置に基づいて前記関節の位置を推定する計測装置と、
を備える、
マニピュレータ計測システム。
【請求項2】
前記計測装置は、前記湾曲部の前記形状情報として前記湾曲部の輪郭を計測する、
請求項1に記載のマニピュレータ計測システム。
【請求項3】
前記計測装置は、推定した前記関節の位置から、前記湾曲部が直線状態であっても前記関節が直線状に並ばない不均等配向状態を検出する、
請求項1または請求項2に記載のマニピュレータ計測システム。
【請求項4】
前記マニピュレータは、前記湾曲部を曲げる湾曲ワイヤをさらに備え、
前記マニピュレータ計測システムは、前記湾曲ワイヤを駆動する駆動装置をさらに備え、
前記計測装置は、推定した前記湾曲部の前記関節の位置に基づいて、前記駆動装置が前記湾曲ワイヤを駆動する制御パラメータを更新する、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のマニピュレータ計測システム。
【請求項5】
前記制御パラメータは、前記湾曲部を所定の湾曲形状とするために必要な前記湾曲ワイヤのワイヤ牽引量と前記湾曲ワイヤのワイヤ張力の少なくとも一方である、
請求項に記載のマニピュレータ計測システム。
【請求項6】
前記計測装置は、前記湾曲部の前記関節の位置と前記制御パラメータとの関係を機械学習により事前に学習した学習済みモデルを用いて、前記制御パラメータを更新する、
請求項または請求項に記載のマニピュレータ計測システム。
【請求項7】
前記計測装置は、前記湾曲部の前記関節の位置と前記制御パラメータとの関係を記憶したデータベースを参照して、前記制御パラメータを更新する、
請求項または請求項に記載のマニピュレータ計測システム。
【請求項8】
前記計測装置は、前記湾曲部の構造情報を制約条件とした計算により、前記湾曲部の前記形状情報から前記関節の位置を推定する、
請求項1に記載のマニピュレータ計測システム。
【請求項9】
前記計測装置は、前記形状情報から前記湾曲部の中心線を推定し、前記中心線を用いて算出される条件を前記制約条件に加える、
請求項に記載のマニピュレータ計測システム。
【請求項10】
前記計測装置は、時間の経過とともに変化する前記湾曲部を観察した観察結果を用いて算出される条件を前記制約条件に加える、
請求項に記載のマニピュレータ計測システム。
【請求項11】
複数の関節を有する湾曲部を備えるマニピュレータの前記湾曲部の観察結果を取得し、
前記観察結果から前記湾曲部の形状情報を計測し、
前記湾曲部の前記形状情報から算出した前記湾曲部の先端部と基端部の少なくとも一方の位置に基づいて前記関節の位置を推定する、
計測装置。
【請求項12】
前記湾曲部の前記形状情報として前記湾曲部の輪郭を計測する、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項13】
推定した前記関節の位置から、前記湾曲部が直線状態であっても前記関節が直線状に並ばない不均等配向状態を検出する、
請求項11または請求項12に記載の計測装置。
【請求項14】
前記マニピュレータは、前記湾曲部を曲げる湾曲ワイヤをさらに備え、 推定した前記湾曲部の前記関節の位置に基づいて、前記湾曲ワイヤを駆動する制御パラメータを更新する、
請求項1から請求項1のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項15】
前記制御パラメータは、前記湾曲部を所定の湾曲形状とするために必要な前記湾曲ワイヤのワイヤ牽引量と前記湾曲ワイヤのワイヤ張力の少なくとも一方である、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項16】
計測された前記形状情報から前記湾曲部の構造情報を制約条件とした計算によって前記関節の位置を推定する、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項17】
複数の関節を有する湾曲部と、前記湾曲部を曲げる湾曲ワイヤと、を備えるマニピュレータと、前記マニピュレータを制御する制御装置を備えるマニピュレータシステムにおいて、前記制御装置が前記マニピュレータを制御する方法であって、
前記制御装置が、前記湾曲部の観察結果から前記湾曲部の形状情報を計測する計測工程と、
前記制御装置が、前記湾曲部の構造情報を制約条件とした計算により、前記湾曲部の前記形状情報から前記関節の位置を推定する推定工程と、
前記制御装置が、前記形状情報および推定した前記関節の位置に基づいて、前記湾曲ワイヤを駆動する制御パラメータを更新する更新工程と、
を備える、
マニピュレータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニピュレータシステム、計測装置およびマニピュレータの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消化管などの管腔器官内の観察や開腹手術における処置や観察や処置にマニピュレータシステムが使用されている。マニピュレータシステムは、電動駆動可能な湾曲部を備える。湾曲部は、回動可能な関節を有する。
【0003】
湾曲部の関節は、経年劣化等に伴って摩耗したり変形したりする。また、湾曲部の関節を駆動するワイヤは、経年劣化等に伴って伸びる。これらの理由により、ワイヤ牽引量やワイヤ張力を所定の値とした場合における湾曲部の湾曲形状は、経年劣化等に伴って変化する。
【0004】
マニピュレータシステムは、湾曲部を所定の湾曲形状とするために必要なワイヤ牽引量やワイヤ張力を調整(キャリブレーション)することで、上述したような経年劣化等に伴う湾曲部の湾曲形状の変化を補正できる。
【0005】
湾曲部を所定の湾曲形状とするために必要なワイヤ牽引量やワイヤ張力を調整(キャリブレーション)するためには、ワイヤ牽引量やワイヤ張力を所定の値とした場合における湾曲部の湾曲形状を正確に計測する必要がある。
【0006】
特許文献1には、湾曲部等の湾曲形状を把握する内視鏡挿入部形状把握システムが記載されている。特許文献1に記載された内視鏡挿入部形状把握システムは、内視鏡に内蔵されたセンサから取得した情報により湾曲部等の湾曲形状を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特許第4708963号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された内視鏡挿入部形状把握システムは、湾曲部等の湾曲形状の算出において、経年劣化等に伴う湾曲部の湾曲形状の変化は考慮されていない。また、特許文献1に記載された内視鏡挿入部形状把握システムは、内視鏡にセンサを内蔵する必要があり、センサを内蔵しない内視鏡には適用することができない。
【0009】
上記事情を踏まえ、本発明は、経年劣化等に伴う湾曲部の湾曲形状の変化があった場合であっても、湾曲部の湾曲形状を容易に計測できるマニピュレータシステム、計測装置およびマニピュレータの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本開示の第一の態様に係るマニピュレータ計測システムは、複数の関節を有する湾曲部を備えるマニピュレータの前記湾曲部を観察する観察装置と、前記観察装置の観察結果から前記湾曲部の形状情報を計測して、前記湾曲部の前記形状情報から算出した前記湾曲部の先端部と基端部の少なくとも一方の位置に基づいて前記関節の位置を推定する計測装置と、を備える。
【0011】
本開示の第二の態様に係る計測装置は、複数の関節を有する湾曲部を備えるマニピュレータの前記湾曲部の観察結果を取得し、前記観察結果から前記湾曲部の形状情報を計測し、前記湾曲部の前記形状情報から算出した前記湾曲部の先端部と基端部の少なくとも一方の位置に基づいて前記関節の位置を推定する。
【0012】
本開示の第三の態様に係るマニピュレータの制御方法は、複数の関節を有する湾曲部と、前記湾曲部を曲げる湾曲ワイヤと、を備えるマニピュレータを制御する方法であって、前記湾曲部の観察結果から前記湾曲部の形状情報を計測する計測工程と、前記湾曲部の構造情報を制約条件とした計算により、前記湾曲部の前記形状情報から前記関節の位置を推定する推定工程と、前記形状情報および推定した前記関節の位置に基づいて、前記湾曲ワイヤを駆動する制御パラメータを更新する更新工程と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明のマニピュレータシステム、計測装置およびマニピュレータの制御方法によれば、経年劣化等に伴う湾曲部の湾曲形状の変化があった場合であっても、湾曲部の湾曲形状を容易に計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第一実施形態に係る電動内視鏡システムの全体図である。
図2】術者によって使用される同電動内視鏡システムの内視鏡と操作装置を示す図である。
図3】同内視鏡の挿入部を示す図である。
図4】同内視鏡の湾曲部の一部を断面図として示す図である。
図5図4に示す領域Eにおける同湾曲部の節輪の拡大図である。
図6図4および図5のC1-C1線に沿う同湾曲部の断面図である。
図7】同電動内視鏡システムの駆動装置の機能ブロック図である。
図8】同電動内視鏡システムの映像制御装置の機能ブロック図である。
図9】同電動内視鏡システムのメインコントローラの機能ブロック図である。
図10】同電動内視鏡システムの計測装置の機能ブロック図である。
図11】同計測装置の計測コントローラの制御フローチャートである。
図12】抽出された湾曲部のボクセルデータを示す図である。
図13】算出された同湾曲部の先端関節および基端関節の位置を示す図である。
図14】推定された同湾曲部の関節の位置である。
図15】同湾曲部の関節の位置を説明する図である。
図16】不均等配向状態である同湾曲部を示す図である。
図17】時間の経過とともに変化する同湾曲部の湾曲形状を示す図である。
図18】第二実施形態に係る電動内視鏡システムの計測装置の計測コントローラの制御フローチャートである。
図19】推定された中心線を示す図である。
図20】同中心線から算出された湾曲部の長さを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態に係る電動内視鏡システム1000について、図1から図17を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る電動内視鏡システム1000の全体図である。電動内視鏡システム1000は、マニピュレータシステムの一例である。
【0016】
[電動内視鏡システム1000]
電動内視鏡システム1000は、図1に示すように、患者Pの体内を観察および処置する医療システムである。また、電動内視鏡システム1000は、内視鏡100をメンテナンスする医療システムである。電動内視鏡システム1000は、内視鏡100と、駆動装置200と、操作装置300と、処置具400と、映像制御装置500と、観察装置700と、計測装置800と、表示装置900と、を備える。
【0017】
内視鏡100は、患者Pの管腔内に挿入して患部を観察および処置する装置である。内視鏡100は、駆動装置200と着脱自在である。内視鏡100の内部には内部経路101が形成されている。以降の説明において、内視鏡100において、患者Pの管腔内に挿入される側を「先端側(A1)」、駆動装置200に装着される側を「基端側(A2)」という。
【0018】
駆動装置200は、内視鏡100および操作装置300と着脱自在に接続される。駆動装置200は、操作装置300に入力された操作に基づき、内蔵するモータを駆動して内視鏡100を電動駆動する。また、駆動装置200は、操作装置300に入力された操作に基づき、内蔵するポンプ等を駆動して内視鏡100に送気吸引を実施させる。
【0019】
操作装置300は、操作ケーブル301を経由して駆動装置200と着脱自在に接続される。操作装置300は、有線通信ではなく無線通信により駆動装置200と通信可能であってもよい。術者Sは、操作装置300を操作することにより、内視鏡100を電動駆動できる。
【0020】
処置具400は、内視鏡100の内部経路101を挿通して患者Pの管腔内に挿入して患部を処置する装置である。図1においては、処置具400は、延長チャンネルチューブ130を経由して内視鏡100の内部経路101に挿入されている。処置具400は、延長チャンネルチューブ130を経由せず、鉗子口126から内視鏡100の内部経路101に直接挿入されてもよい。
【0021】
映像制御装置500は、内視鏡100と着脱自在に接続されており、内視鏡100から撮像画像を取得する。映像制御装置500は、内視鏡100から取得した撮像画像や操作者に対する情報提供を目的とするGUI画像やCG画像を表示装置900に表示させる。
【0022】
駆動装置200と映像制御装置500とは、電動内視鏡システム1000を制御する制御装置600を構成する。制御装置600は、ビデオプリンタなどの周辺機器をさらに備えてもよい。駆動装置200と映像制御装置500とは、一体の装置であってもよい。
【0023】
表示装置900は、LCDなどの画像を表示可能な装置である。表示装置900は、表示ケーブル901を経由して映像制御装置500に接続されている。
【0024】
観察装置700および計測装置800は、内視鏡100をメンテナンスするサービス拠点に配置される装置である。なお、制御装置600(駆動装置200と映像制御装置500の一方でもよい)が十分な演算性能を有している場合は、制御装置600を計測装置800として使用してもよい。
【0025】
内視鏡100および観察装置700は、サービス拠点の設置台STに設置される。なお、内視鏡100および観察装置700は、サービス拠点ではなく病院の手術室に設置してもよい。その場合、内視鏡100および観察装置700は、例えば図2に示す手術台Tに設置される。
【0026】
図2は、術者Sによって使用される内視鏡100と操作装置300を示す図である。
術者Sは、例えば、表示装置900に表示された撮像画像を観察しながら、患者Pの肛門から管腔内に挿入させた内視鏡100を右手Rで操作しながら、操作装置300を左手Lで操作する。内視鏡100と操作装置300とが分離しているため、術者Sは内視鏡100と操作装置300とを互いに影響を受けることなく独立して操作できる。
【0027】
[内視鏡100]
内視鏡100は、図1に示すように、挿入部110と、連結部120と、体外軟性部140と、着脱部150と、湾曲ワイヤ160(図6参照)と、内蔵物170(図6参照)と、を備える。挿入部110と、連結部120と、体外軟性部140と、着脱部150と、は先端側から順に接続されている。連結部120は、延長チャンネルチューブ130を接続できる。
【0028】
図3は、内視鏡100の挿入部110を示す図である。
内視鏡100の内部には、挿入部110の先端から着脱部150の基端まで内視鏡100の長手方向Aに沿って延びる内部経路101が形成されている。湾曲ワイヤ160および内蔵物170は、内部経路101に挿入されている。
【0029】
内蔵物170は、チャンネルチューブ171と、送気吸引チューブ172(図7参照)と、撮像ケーブル173と、ライトガイド174と、を有する。
【0030】
[挿入部110]
挿入部110は、管腔内に挿入可能な細長な長尺部材である。挿入部110は、先端部111と、湾曲部112と、体内軟性部119と、を有する。先端部111と、湾曲部112と、体内軟性部119と、は先端側から順に接続されている。
【0031】
先端部111は、金属等により略円筒形状に形成されている。先端部111は、図3に示すように、開口部111aと、照明部111bと、撮像部111cと、を有する。開口部111aは、チャンネルチューブ171と連通する開口である。図3に示すように、チャンネルチューブ171を挿通する処置具400の先端に設けられた把持鉗子などの処置部410が開口部111aから突没する。
【0032】
照明部111bは、照明光を導光するライトガイド174と接続されており、撮像対象を照明する照明光を出射する。撮像部111cは、CMOS等の撮像素子を備えており、撮像対象を撮像する。撮像信号は、撮像ケーブル173を経由して映像制御装置500に送られる。
【0033】
図4は、湾曲部112の一部を断面図として示す図である。
湾曲部112は、複数の節輪(湾曲駒ともいう)115と、複数の節輪115の先端に連結された先端部116と、アウターシース118(図3参照)と、を有する。先端部116、複数の節輪115および体内軟性部119の先端部119aは、アウターシース118の内部において長手方向Aに連結されている。なお、湾曲部112が有する節輪115の形状および数は、図4に示す節輪115の形状および数に限定されない。
【0034】
図5は、図4に示す領域Eにおける節輪115の拡大図である。
節輪115は、金属で形成された短筒状の部材である。複数の節輪115は、隣り合う節輪115の内部空間が連続する空間となるように連結されている。
【0035】
隣り合う節輪115は、第一回動ピン115pによって、長手方向Aに対して垂直な上下方向(「UD方向」ともいう)に回動可能に連結されている。節輪(湾曲駒)115の第一回動ピン115pは、湾曲部112の関節112jの一例である。
【0036】
節輪115は、先端側の第一節輪115aと、基端側の第二節輪115bと、を有する。第一節輪115aと第二節輪115bとは、第二回動ピン115qによって、長手方向AおよびUD方向に対して垂直な左右方向(「LR方向」ともいう)に回動可能に連結されている。節輪(湾曲駒)115の第二回動ピン115qは、湾曲部112の関節112jの一例である。
【0037】
節輪(湾曲駒)115の第一回動ピン115pは、LR方向に延びる回転軸を中心に回動可能である。節輪(湾曲駒)115の第二回動ピン115qは、UD方向に延びる回転軸を中心に回動可能である。
【0038】
第一節輪115aと第二節輪115bとが第一回動ピン115pと第二回動ピン115qによって交互に連結されており、湾曲部112は所望の方向に湾曲自在である。
【0039】
以降の説明において、先端部116と連結される湾曲部112の関節112j(第一回動ピン115pまたは第二回動ピン115q)を、先端関節(先端部ともいう)112aとする。また、体内軟性部119の先端部119aと連結される湾曲部112の関節112j(第一回動ピン115pまたは第二回動ピン115q)を、基端関節(基端部ともいう)112bとする。
【0040】
図6は、図4および図5のC1-C1線に沿う湾曲部112の断面図である。
第二節輪115bの内周面には、上ワイヤガイド115uと、下ワイヤガイド115dと、が形成されている。上ワイヤガイド115uと下ワイヤガイド115dとは、長手方向Aの中心軸Oを挟んでUD方向の両側に配置されている。第一節輪115aの内周面には、左ワイヤガイド115lと、右ワイヤガイド115rと、が形成されている。左ワイヤガイド115lと右ワイヤガイド115rとは、長手方向Aの中心軸Oを挟んでLR方向の両側に配置されている。
【0041】
上ワイヤガイド115uと、下ワイヤガイド115dと、左ワイヤガイド115lと、右ワイヤガイド115rとには、湾曲ワイヤ160が挿通する貫通孔が長手方向Aに沿って形成されている。
【0042】
湾曲ワイヤ160は、湾曲部112を曲げるワイヤである。湾曲ワイヤ160は、内部経路101を通って着脱部150まで延びている。湾曲ワイヤ160は、図4および図6に示すように、上湾曲ワイヤ161uと、下湾曲ワイヤ161dと、左湾曲ワイヤ161lと、右湾曲ワイヤ161rと、4本のワイヤシース161sと、を有する。
【0043】
上湾曲ワイヤ161uと、下湾曲ワイヤ161dと、左湾曲ワイヤ161lと、右湾曲ワイヤ161rとは、図4に示すように、それぞれ別々のワイヤシース161sを挿通している。ワイヤシース161sの先端は、湾曲部112の基端の節輪115に取り付けられている。ワイヤシース161sは、着脱部150まで延びている。
【0044】
上湾曲ワイヤ161uおよび下湾曲ワイヤ161dは、湾曲部112をUD方向に曲げるワイヤである。上湾曲ワイヤ161uは、上ワイヤガイド115uを挿通している。下湾曲ワイヤ161dは、下ワイヤガイド115dを挿通している。
【0045】
上湾曲ワイヤ161uと下湾曲ワイヤ161dの先端は、図4に示すように、湾曲部112の先端の先端部116に固定されている。先端部116に固定された上湾曲ワイヤ161uと下湾曲ワイヤ161dの先端は、長手方向Aの中心軸Oを挟んでUD方向の両側に配置されている。
【0046】
左湾曲ワイヤ161lおよび右湾曲ワイヤ161rは、湾曲部112をLR方向に曲げるワイヤである。左湾曲ワイヤ161lは、左ワイヤガイド115lを挿通している。右湾曲ワイヤ161rは、右ワイヤガイド115rを挿通している。
【0047】
左湾曲ワイヤ161lと右湾曲ワイヤ161rの先端は、図4に示すように、湾曲部112の先端部116に固定されている。先端部116に固定された左湾曲ワイヤ161lと右湾曲ワイヤ161rの先端は、長手方向Aの中心軸Oを挟んでLR方向の両側に配置されている。
【0048】
湾曲部112は、湾曲ワイヤ160(上湾曲ワイヤ161u,下湾曲ワイヤ161d,左湾曲ワイヤ161l,右湾曲ワイヤ161r)をそれぞれ牽引または弛緩することによって、所望の方向に湾曲自在である。
【0049】
図6に示すように、湾曲部112の内部に形成された内部経路101には、湾曲ワイヤ160と、チャンネルチューブ171と、撮像ケーブル173と、ライトガイド174とが挿通している。
【0050】
体内軟性部119は、長尺で可撓性を有する管状部材である。体内軟性部119に形成された内部経路101には、湾曲ワイヤ160と、チャンネルチューブ171と、撮像ケーブル173と、ライトガイド174とが挿通している。体内軟性部119の先端には、金属等により略円筒形状に形成された先端部119aが設けられている。
【0051】
[連結部120]
連結部120は、図1に示すように、挿入部110の体内軟性部119と体外軟性部140とを連結する部材である。連結部120は、処置具400を内部経路101に挿入する挿入口である鉗子口126を備える。
【0052】
[体外軟性部140]
体外軟性部140は、長尺な管状部材である。体外軟性部140の内部に形成された内部経路101には、湾曲ワイヤ160と、撮像ケーブル173と、ライトガイド174と、送気吸引チューブ172(図7参照)とが挿通している。
【0053】
[着脱部150]
着脱部150は、図1に示すように、駆動装置200に装着される第一着脱部1501と、映像制御装置500に装着される第二着脱部1502と、を備える。なお、第一着脱部1501と第二着脱部1502とは、一体の着脱部であってもよい。
【0054】
体外軟性部140の内部に形成された内部経路101は、第一着脱部1501と第二着脱部1502に分岐する。湾曲ワイヤ160および送気吸引チューブ172は、第一着脱部1501を挿通する。撮像ケーブル173およびライトガイド174は、第二着脱部1502を挿通する。
【0055】
第一着脱部1501は、湾曲ワイヤ160(上湾曲ワイヤ161u,下湾曲ワイヤ161d,左湾曲ワイヤ161l,右湾曲ワイヤ161r)の張力を検出する図示しない張力センサを有する。張力センサの検出結果は、駆動装置200の駆動コントローラ260によって取得される。
【0056】
[駆動装置200]
図7は、駆動装置200の機能ブロック図である。
駆動装置200は、アダプタ210と、操作受信部220と、送気吸引駆動部230と、ワイヤ駆動部250と、駆動コントローラ260と、を備える。
【0057】
アダプタ210は、第一アダプタ211と、第二アダプタ212と、を有する。第一アダプタ211は、操作ケーブル301が着脱可能に接続されるアダプタである。第二アダプタ212は、内視鏡100の第一着脱部1501が着脱可能に接続されるアダプタである。
【0058】
操作受信部220は、操作ケーブル301を経由して操作装置300から操作入力を受信する。操作装置300と駆動装置200とが有線通信ではなく無線通信により通信を行う場合、操作受信部220は公知の無線受信用モジュールを有する。
【0059】
送気吸引駆動部230は、内視鏡100の内部経路101に挿入された送気吸引チューブ172と接続される。送気吸引駆動部230は、ポンプ等を備えており、送気吸引チューブ172に空気を送気する。また、送気吸引駆動部230は、送気吸引チューブ172から空気を吸引する。
【0060】
ワイヤ駆動部250は、図示しない駆動部とエンコーダとを有する。駆動部は、プーリ等により湾曲ワイヤ160(上湾曲ワイヤ161u,下湾曲ワイヤ161d,左湾曲ワイヤ161l,右湾曲ワイヤ161r)を牽引または弛緩する。エンコーダは、湾曲ワイヤ160の牽引量を検出する。エンコーダの検出結果は、駆動装置200の駆動コントローラ260によって取得される。
【0061】
駆動コントローラ260は、駆動装置200の全体を制御する。駆動コントローラ260は、操作受信部220が受信した操作入力を取得する。駆動コントローラ260は、取得した操作入力に基づいて、送気吸引駆動部230およびワイヤ駆動部250を制御する。
【0062】
駆動コントローラ260は、プロセッサと、メモリと、プログラムおよびデータを記憶可能な記憶部と、入出力制御部と、を備えたプログラム実行可能なコンピュータである。駆動コントローラ260の機能は、プログラムをプロセッサが実行することにより実現される。駆動コントローラ260の少なくとも一部の機能は、専用の論理回路によって実現されていてもよい。
【0063】
駆動コントローラ260は、複数の湾曲ワイヤ160を駆動する複数のモータを高精度に制御するため、高い演算性能を備えていることが望ましい。
【0064】
なお、駆動コントローラ260は、プロセッサ、メモリ、記憶部、および入出力制御部以外の構成をさらに有してもよい。例えば、駆動コントローラ260は、画像処理や画像認識処理の一部もしくは全部を行う画像演算部をさらに有してもよい。画像演算部をさらに有することで、駆動コントローラ260は、特定の画像処理や画像認識処理を高速に実行できる。画像演算部は通信回線で接続される別体のハードウェア装置に搭載されていてもよい。
【0065】
[操作装置300]
操作装置300は、内視鏡100を駆動するための操作が入力される装置である。入力された操作入力は、操作ケーブル301を経由して駆動装置200に送信される。
【0066】
[映像制御装置500]
図8は、映像制御装置500の機能ブロック図である。
映像制御装置500は、電動内視鏡システム1000を制御する。映像制御装置500は、第三アダプタ510と、撮像処理部520と、光源部530と、メインコントローラ560と、を備える。
【0067】
第三アダプタ510は、内視鏡100の第二着脱部1502が着脱可能に接続されるアダプタである。
【0068】
撮像処理部520は、撮像ケーブル173を経由して先端部111の撮像部111cから取得された撮像信号を撮像画像に変換する。
【0069】
光源部530は、撮像対象に照射される照明光を発生させる。光源部530が発生させた照明光は、ライトガイド174を経由して先端部111の照明部111bに導かれる。
【0070】
図9は、メインコントローラ560の機能ブロック図である。
メインコントローラ560は、プロセッサ561とメモリ562等を備えたプログラム実行可能なコンピュータである。メインコントローラ560の機能はプログラムをプロセッサ561が実行することにより実現される。メインコントローラ560の少なくとも一部の機能は、専用の論理回路によって実現されていてもよい。
【0071】
メインコントローラ560は、プロセッサ561と、プログラムを読み込み可能なメモリ562と、記憶部563と、入出力制御部564と、を有する。
【0072】
記憶部563は、上述したプログラムや必要なデータを記憶する不揮発性の記録媒体である。記憶部563は、例えばROMやハードディスク等で構成される。記憶部563に記録されたプログラムは、メモリ562に読み込まれ、プロセッサ561によって実行される。
【0073】
入出力制御部564は、撮像処理部520、光源部530、駆動装置200、計測装置800、表示装置900、入力装置(不図示)、およびネットワーク機器(不図示)と接続されている。入出力制御部564は、プロセッサ561の制御に基づき、接続される機器に対するデータの送受信や制御信号の送受信を実施する。
【0074】
メインコントローラ560は、撮像処理部520が取得した撮像画像に対して画像処理を実施できる。メインコントローラ560は、術者Sに対する情報提供を目的とするGUI画像やCG画像を生成できる。メインコントローラ560は、撮像画像やGUI画像やCG画像を表示装置900に表示させることができる。
【0075】
メインコントローラ560は、一体となったハードウェア装置に限られない。例えば、メインコントローラ560は、一部が別体のハードウェア装置として分離した上で、分離したハードウェア装置を通信回線で接続することで構成してもよい。例えば、メインコントローラ560は、分離された記憶部563を通信回線で接続するクラウドシステムであってもよい。
【0076】
メインコントローラ560は、図9に示すプロセッサ561、メモリ562、記憶部563、および入出力制御部564以外の構成をさらに有してもよい。例えば、メインコントローラ560は、プロセッサ561が行っていた画像処理や画像認識処理の一部もしくは全部を行う画像演算部をさらに有してもよい。画像演算部をさらに有することで、メインコントローラ560は、特定の画像処理や画像認識処理を高速に実行できる。画像演算部は通信回線で接続される別体のハードウェア装置に搭載されていてもよい。
【0077】
[観察装置700]
観察装置700は、内視鏡100をメンテナンスするサービス拠点に配置される装置であり、湾曲部112の形状を観察する装置である。観察装置700は、図1に示すように、筐体710と、撮像装置720と、支持部材730と、マーカーボード740と、を備える。
【0078】
筺体710は、箱状に形成されており、内部に湾曲部112を収容可能である。撮像装置720、支持部材730、およびマーカーボード740は、筐体710の内部に設けられている。
【0079】
撮像装置720は、例えばイメージセンサ(CCDセンサまたはCMOSセンサなど)を有するカメラを備える。撮像装置720は、複数のカメラを備えてもよい。撮像装置720は、撮像した画像を計測装置800に送信する。
【0080】
支持部材730は、撮像装置720を固定する部材である。支持部材730は、箱状の内部に収容された湾曲部112を撮像可能な位置に撮像装置720を固定する。
【0081】
マーカーボード740は、公知のマーカーボードであり、筺体710の内部であって、撮像装置720よって撮像可能な位置に取り付けられている。
【0082】
[計測装置800]
計測装置800は、内視鏡100をメンテナンスするサービス拠点に配置される装置である。計測装置800は、観察装置700の制御、観察装置700の観察結果の取得および観察装置700の観察結果の解析等を実施する。
【0083】
図10は、計測装置800の機能ブロック図である。
計測装置800は、計測コントローラ810を備える。計測コントローラ810は、プロセッサ811とメモリ812等を備えたプログラム実行可能なコンピュータである。計測コントローラ810の機能はプログラムをプロセッサ811が実行することにより実現される。計測コントローラ810の少なくとも一部の機能は、専用の論理回路によって実現されていてもよい。
【0084】
計測コントローラ810は、プロセッサ811と、プログラムを読み込み可能なメモリ812と、記憶部813と、入出力制御部814と、を有する。
【0085】
記憶部813は、上述したプログラムや必要なデータを記憶する不揮発性の記録媒体である。記憶部813は、例えばROMやハードディスク等で構成される。記憶部813に記録されたプログラムは、メモリ812に読み込まれ、プロセッサ811によって実行される。
【0086】
入出力制御部814は、映像制御装置500の入出力制御部564、観察装置700、入力装置(不図示)、およびネットワーク機器(不図示)と接続されている。入出力制御部814は、プロセッサ811の制御に基づき、接続される機器に対するデータの送受信や制御信号の送受信を実施する。
【0087】
計測コントローラ810は、観察装置700の撮像装置720を制御する。また、計測コントローラ810は、撮像装置720が撮像した画像を取得する。
【0088】
計測コントローラ810は、一体となったハードウェア装置に限られない。例えば、計測コントローラ810は、一部が別体のハードウェア装置として分離した上で、分離したハードウェア装置を通信回線で接続することで構成してもよい。例えば、計測コントローラ810は、分離された記憶部813を通信回線で接続するクラウドシステムであってもよい。
【0089】
計測コントローラ810は、図10に示すプロセッサ811、メモリ812、記憶部813、および入出力制御部814以外の構成をさらに有してもよい。例えば、計測コントローラ810は、プロセッサ811が行っていた画像処理や計測演算処理の一部もしくは全部を行う演算部をさらに有してもよい。演算部をさらに有することで、計測コントローラ810は、特定の画像処理や計測演算処理を高速に実行できる。演算部は通信回線で接続される別体のハードウェア装置に搭載されていてもよい。
【0090】
なお、制御装置600(駆動装置200と映像制御装置500の一方でもよい)が十分な演算性能を有している場合は、制御装置600を計測装置800として使用してもよい。制御装置600を計測装置800として使用する場合、以降の説明における「計測コントローラ810」は「メインコントローラ560」や「駆動コントローラ260」を意味する。
【0091】
[電動内視鏡システム1000の動作]
次に、本実施形態の電動内視鏡システム1000の動作について説明する。具体的には、内視鏡100をメンテナンスするサービス拠点に持ち込まれた内視鏡100を計測する動作について説明する。
【0092】
以降、図11に示す計測装置800の計測コントローラ810の制御フローチャートに沿って説明を行う。計測装置800が起動されると、計測コントローラ810は初期化を実施した後に制御を開始する(ステップS100)。次に、計測コントローラ810(主としてプロセッサ811)はステップS110を実行する。
【0093】
使用者は、湾曲部112が撮像装置720により撮像可能な位置に配置されるように、湾曲部112を含む挿入部110を筺体710に収容する。使用者は、操作装置300を操作することにより湾曲部112の制御パラメータ(ワイヤ牽引量やワイヤ張力など)を調整値Vとして、湾曲部112を湾曲させる。使用者は、UD方向およびLR方向のどちらに対しても湾曲部112を湾曲させてもよいが、本実施形態では、まずUD方向に対してのみ湾曲部112を湾曲させたとする。
【0094】
<ステップS110>
計測コントローラ810は、ステップS110において、観察装置700の初期化を実施する。計測コントローラ810は、例えばマーカーボード740を用いて、撮像装置720のカメラの位置や姿勢を認識する。なお、計測コントローラ810がマーカーボード740を用いずとも撮像装置720のカメラの位置や姿勢を認識できる場合、マーカーボード740は不要である。次に、計測コントローラ810はステップS120を実行する。
【0095】
<ステップS120>
計測コントローラ810は、ステップS120において、撮像装置720により湾曲部112を撮像させて、撮像した画像(観察結果)を取得する。次に、計測コントローラ810はステップS130を実行する。
【0096】
<ステップS130>
計測コントローラ810は、ステップS130において、湾曲部112の形状情報を計測する。計測コントローラ810は、例えば湾曲部112の輪郭を形状情報として計測する。計測コントローラ810は、例えば、湾曲部112のエッジを検出したり、湾曲部112のボクセルデータBDを抽出したりすることにより、湾曲部112の輪郭を計測する。
【0097】
図12は、抽出された湾曲部112のボクセルデータBDを示す図である。
計測コントローラ810は、例えば視体積交差法などの公知の手法により撮像した画像(観察結果)から湾曲部112等のボクセルデータBDを抽出する。次に、計測コントローラ810はステップS140を実行する。
【0098】
<ステップS140>
図13は、算出された湾曲部112の先端関節112aおよび基端関節112bの位置を示す図である。計測コントローラ810は、ステップS140において、湾曲部112の先端関節112aおよび基端関節112bの位置を算出する。
【0099】
湾曲部112の先端部116および体内軟性部119の先端部119aは、形状が既知であり、湾曲部112の湾曲形状によらず形状が変化しない。そこで、計測コントローラ810は、例えばボクセルデータBDから、湾曲部112の先端部116および体内軟性部119の先端部119aの位置をパターンマッチングなどにより算出する。なお、計測コントローラ810は、例えばボクセルデータBDを表示した画像における先端部116や先端部119aの位置を、使用者にマウス等の入力機器を用いて指定させることにより、先端部116や先端部119aの位置を認識してもよい。
【0100】
計測コントローラ810は、算出された湾曲部112の先端部116の位置から、先端部116に連結された湾曲部112の先端関節112aの位置を算出する。
【0101】
計測コントローラ810は、算出された体内軟性部119の先端部119aの位置から、先端部119aに連結された湾曲部112の基端関節112bの位置を算出する。
【0102】
計測コントローラ810が算出する位置は、相対的な位置であっても、絶対的な位置であってもよい。計測コントローラ810は、可能であれば、先端関節112aおよび基端関節112b以外の関節112jの位置をさらに算出してもよい。次に、計測コントローラ810はステップS160を実行する。
【0103】
<ステップS160>
図14は、推定された湾曲部112の関節112jの位置である。
計測コントローラ810は、ステップS160において、湾曲部112の関節112jの位置を推定する。計測コントローラ810は、先端関節112aおよび基端関節112bの位置に基づいて、先端関節112aおよび基端関節112b以外の湾曲部112の関節112jの位置を推定する。なお、計測コントローラ810は、先端関節112aと基端関節112bの一方の位置に基づいて、他の関節112jの位置を推定してもよい。
【0104】
具体的には、計測コントローラ810は、湾曲部112の構造情報を制約条件(拘束条件ともいう)とし、例えば逆運動学計算を用いた収束計算によって、湾曲部112の形状情報から湾曲部112の関節112jの位置を推定する。湾曲部112の構造情報とは、節輪(湾曲駒)115の構造および数、複数の関節112jの相対位置関係などである。次に、計測コントローラ810はステップS170を実行する。
【0105】
図15は、湾曲部112の関節112jの位置を説明する図である。
「関節112jの位置」は、例えば、UD方向に平行な平面であって、湾曲部112の中心軸を含む中心面CSと、関節112jの回転軸と、の交点Cにより定義される。湾曲部112の関節112j(第一回動ピン115pまたは第二回動ピン115q)の位置は、交点Cから算出できる。なお、関節112jの位置は、中心面CSと回転軸との交点Cではなく、関節112j(第一回動ピン115pまたは第二回動ピン115q)の3次元座標で定義されていてもよい。
【0106】
図15において点線で示される線L1は、制御パラメータ(ワイヤ牽引量やワイヤ張力など)を調整値Vとした場合における、理想的に湾曲する湾曲部112の関節112j(交点C)をつないだ仮想線である。湾曲部112が理想的に湾曲する場合、湾曲部112は略均一の湾曲率により湾曲する。
【0107】
図15において実線で示される線L2は、推定された湾曲部112の関節112jの位置に基づいて、湾曲部112の関節112j(交点C)をつないだ線である。すなわち、線L2は、制御パラメータ(ワイヤ牽引量やワイヤ張力など)を調整値Vとした場合における、湾曲部112の関節112j(交点C)をつないだ線である。図15に示す湾曲部112の湾曲率は略均一となっていない。
【0108】
図16は、不均等配向状態である湾曲部112を示す図である。
湾曲部112の関節112jが経年劣化等に伴って摩耗したり変形したりするため、湾曲部112を直線状態にした場合であっても、湾曲部112の節輪115は想定する初期の位置に戻りにくくなる。この場合、湾曲部112が直線状態であっても、湾曲部112の関節112j(交点C)は直線状に並ばない。以降の説明において、湾曲部112の関節112j(交点C)が直線状に並ばず、湾曲部112の節輪(湾曲駒)115が不均等に配向した状態を「不均等配向状態」という。
【0109】
湾曲ワイヤ160が経年劣化等に伴って伸びた場合や、内蔵物170の局所的な弾性率が変化した場合や、節輪115の摩擦状態が変化した場合や、上述した節輪115が不均等配向状態となった場合などにおいて、図15の線L2に示すように、湾曲部112は均一に湾曲しにくくなる。
【0110】
計測コントローラ810は、図15に示す線L1と線L2とを比較することにより、湾曲部112の不均等配向状態の有無や程度等を検出できる。ここで、計測コントローラ810は、制御パラメータを所定の値とした場合における線L1の情報を予め保有している。
【0111】
<ステップS170>
計測コントローラ810は、ステップS170において、推定した湾曲部112の関節112jの位置に基づいて、湾曲部112をUD方向に湾曲させるための制御パラメータ(ワイヤ牽引量やワイヤ張力など)を調整(キャリブレーション)する。
【0112】
計測コントローラ810は、例えば、事前に用意した複数の制御パラメータから、推定した関節112jの位置に最適な制御パラメータを選択する。計測コントローラ810は、湾曲部112の関節112jの位置と制御パラメータとの関係を機械学習により事前に学習した学習済みモデル(機械学習モデル)を用いて、推定した関節112jの位置に最適な制御パラメータを選択してもよい。あるいは、計測コントローラ810は、湾曲部112の関節112jの位置と制御パラメータとの関係を事前に記録したデータベースを参照して最適な制御パラメータを選択してもよい。次に、計測コントローラ810はステップS190を実行して制御を終了する。
【0113】
なお、計測コントローラ810は、湾曲部112の湾曲形状を変えながらステップS110からステップS170までを複数回実施することで、制御パラメータ(ワイヤ牽引量やワイヤ張力など)を調整(キャリブレーション)の精度を高めることができる。
【0114】
図17は、時間の経過とともに変化する湾曲部112の湾曲形状を示す図である。
計測コントローラ810は、時間の経過とともに変化する湾曲部112の湾曲形状を観察し、湾曲部112の関節112jの位置を推定してもよい。計測コントローラ810は、湾曲部112を観察した観察結果(時刻歴情報)を用いて算出される条件を追加の制約条件として用いることができ、より高速かつ正確に湾曲部112の関節112jの位置を推定できる。
【0115】
<湾曲部112をLR方向に湾曲させるための制御パラメータの調整>
使用者は、湾曲部112をUD方向に湾曲させるための制御パラメータを調整した後、湾曲部112をLR方向に湾曲させて、電動内視鏡システム1000に再度ステップS110からステップS170までを実施させる。電動内視鏡システム1000は、湾曲部112をLR方向に湾曲させるための制御パラメータを調整する。
【0116】
本実施形態に係る電動内視鏡システム1000によれば、経年劣化等に伴う湾曲部112の湾曲形状の変化があった場合であっても、湾曲部112の湾曲形状(関節112jの位置)を容易に推定できる。電動内視鏡システム1000は、推定した関節112jの位置に基づいて、湾曲部112を所定の湾曲形状とするために必要な制御パラメータ(ワイヤ牽引量やワイヤ張力など)を調整(キャリブレーション)できる。
【0117】
本実施形態に係る電動内視鏡システム1000によれば、X線装置のような大規模な計測装置を用いずとも、湾曲部112の湾曲形状(関節112jの位置)を容易に推定できる。また、電動内視鏡システム1000は、経年劣化等に伴う湾曲部112の湾曲形状の変化を考慮した制御パラメータ(ワイヤ牽引量やワイヤ張力など)の調整(キャリブレーション)が可能である。
【0118】
本実施形態に係る電動内視鏡システム1000によれば、例えば湾曲部112の不均等配向状態の程度が高いなどの理由により、制御パラメータ(ワイヤ牽引量やワイヤ張力など)の調整(キャリブレーション)ができない場合、内視鏡100の交換を促すこともできる。
【0119】
以上、本発明の第一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0120】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態に係る電動内視鏡システム1000Bについて、図18から図20を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0121】
[電動内視鏡システム1000B]
電動内視鏡システム1000Bは、図1に示すように、第一実施形態の電動内視鏡システム1000と同様の構成を備える。電動内視鏡システム1000Bは、第一実施形態の電動内視鏡システム1000と比較して動作のみが異なる。
【0122】
以降、図18に示す計測装置800の計測コントローラ810の制御フローチャートに沿って説明を行う。計測装置800が起動されると、計測コントローラ810は初期化を実施した後に制御を開始する(ステップS100)。次に、計測コントローラ810(主としてプロセッサ811)はステップS110を実行する。
【0123】
計測コントローラ810は、第一実施形態と同様に、ステップS110からステップS140を実施する。次に、計測コントローラ810はステップS150を実行する。
【0124】
<ステップS150>
計測コントローラ810は、ステップS150において、湾曲部112の形状情報として計測した湾曲部112の輪郭から湾曲部112の中心線CLを推定する。具体的には、計測コントローラ810は、湾曲部112の輪郭における接線ベクトルから湾曲部112の輪郭における法線ベクトルを算出する。計測コントローラ810は、湾曲部112の輪郭における法線ベクトルから湾曲部112の中心線CLを推定する。
【0125】
計測コントローラ810は、中心線CLの推定においては、湾曲部112の湾曲形状における外側の輪郭を使用することが望ましい。湾曲部112の湾曲形状における内側はアウターシース118にしわが生じており、湾曲部112の輪郭を正確に抽出しにくいためである。
【0126】
図19は、推定された中心線CLを示す図である。
撮像装置720が有するカメラの数が多いほど、計測コントローラ810は湾曲部112の中心線CLを推定しやすい。次に、計測コントローラ810はステップS160を実行する。
【0127】
<ステップS160>
計測コントローラ810は、ステップS160において、第一実施形態と同様に、湾曲部112の関節112jの位置を推定する。第二実施形態において、計測コントローラ810は、先端関節112aおよび基端関節112bに加えて中心線CLに基づいて湾曲部112の関節112jの位置を推定する。計測コントローラ810は、中心線CLを用いて算出される条件を追加の制約条件として用いることで、より高速かつ正確に湾曲部112の関節112jの位置を推定できる。
【0128】
図20は、中心線CLから算出された湾曲部112の長さDを示す図である。
計測コントローラ810は、推定した中心線CLにおいて先端関節112aおよび基端関節112bの線分を湾曲部112の長さDとして算出する。
【0129】
図20に示す長さD1は、経年劣化していない理想的な湾曲部112の長さDである。一方、図20に示す長さD2は、推定した中心線CLから算出された湾曲部112の長さDである。計測コントローラ810は、直線状態における湾曲部112の長さD1と長さD2とを比較することにより、湾曲部112の不均等配向状態の有無や程度等を検出できる。計測コントローラ810は、長さD1と長さD2との差DEが大きい場合、湾曲部112が不均等配向状態であると予測できる。ここで、計測コントローラ810は、直線状態における湾曲部112の長さD1の情報を予め保有している。なお、計測コントローラ810は、中心線CLを用いず、ステップS140で算出された湾曲部112の先端関節112aおよび基端関節112bの位置を用いて長さD2を算出してもよい。
【0130】
計測コントローラ810は、第一実施形態と同様に、ステップS170以降を実施して制御を終了する。
【0131】
本実施形態に係る電動内視鏡システム1000Bによれば、経年劣化等に伴う湾曲部112の湾曲形状の変化があった場合であっても、湾曲部112の湾曲形状(関節112jの位置)を容易に推定できる。電動内視鏡システム1000は、湾曲部112の中心線CLを推定して湾曲部112の関節112jの位置をより高速かつ正確に推定できる。
【0132】
以上、本発明の第二実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0133】
(変形例1)
上記の実施形態において観察装置700は、カメラを有する撮像装置720を備えていたが、観察装置700の態様はこれに限定されない。観察装置700は、湾曲部112の形状情報を計測できる観察結果を取得できる装置であればよく、例えばスキャナ装置等であってもよい。
【0134】
各実施形態におけるプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、管腔器官内等を観察および処置する医療システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0136】
1000,1000B 電動内視鏡システム(マニピュレータシステム)
100 内視鏡
110 挿入部
111 先端部
112 湾曲部
112j 関節
115 節輪(湾曲駒)
119 体内軟性部
140 体外軟性部
150 着脱部
160 湾曲ワイヤ
200 駆動装置
300 操作装置
400 処置具
500 映像制御装置
600 制御装置
700 観察装置
800 計測装置
900 表示装置
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