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  • 特許-計測装置及び計測装置を有する除去装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】計測装置及び計測装置を有する除去装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 9/00 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
G01C9/00 R
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023558183
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2022056289
(87)【国際公開番号】W WO2022200074
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】21164313.5
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502407107
【氏名又は名称】バウアー マシーネン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フーバー ルートヴィヒ アンドレアス
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-221070(JP,A)
【文献】特開2019-163683(JP,A)
【文献】特開平08-122065(JP,A)
【文献】特開平11-118481(JP,A)
【文献】特開2013-155598(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0345108(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00ー 1/14
G01C 5/00ー15/14
E02F 5/00- 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側の固定点(38)に対して鉛直方向に調整可能且つ下降可能な作業装置(20)の位置・姿勢、特に鉛直度を計測する計測装置であり、
一方では鉛直方向に調整可能な前記作業装置(20)に連結されており他方では前記固定点(38)の方に延びている少なくとも1本の計測ケーブル(32)と、
前記計測ケーブル(32)のうち対応するものに連結されていて鉛直計測軸線に対する当該計測ケーブル(32)の傾斜角を計測しうるよう設計されており、且つ前記計測ケーブル(32)・前記作業装置(20)間連結領域内に配置されている少なくとも1個の計測手段(40)と、
前記計測手段(40)・前記作業装置(20)間に配置されており、且つ、前記計測手段(40)を前記作業装置(20)上で前記鉛直計測軸線に対し傾斜可能であると同時に前記作業装置(20)に対して前記鉛直計測軸線周りにおいて相対回動不能に保つよう設計されている少なくとも1個の連結手段(50)と、
を有する計測装置であって、
前記連結手段(50)が、前記鉛直計測軸線に対し同軸配置された連結チューブ(52)を有すること、並びに
前記連結チューブ(52)が、前記鉛直計測軸線周りにおいてねじれ不能であり且つ前記鉛直計測軸線に対し偏向可能なものとなるよう、設計されていること、
を特徴とする計測装置。
【請求項2】
請求項1に係る計測装置であって、
前記連結チューブ(52)がホース状の態様にて可撓素材から形成されていることを特徴とする計測装置。
【請求項3】
請求項1又は2に係る計測装置であって、
前記連結チューブ(52)が、少なくとも部分的に、コルゲート壁領域(54)付のコルゲート管として設計されていることを特徴とする計測装置。
【請求項4】
請求項3に係る計測装置であって、
前記コルゲート管が金属、特に鋼から製造されていることを特徴とする計測装置。
【請求項5】
請求項1~4のうち何れか一項に係る計測装置であって、
前記連結チューブ(52)が非圧縮性液体で以て満たされていることを特徴とする計測装置。
【請求項6】
請求項1~5のうち何れか一項に係る計測装置であって、
前記連結チューブ(52)の端のうち前記作業装置(20)の方を向く端にロータリベアリング(60)が設けられており、それによって前記連結チューブ(52)を前記鉛直計測軸線周りで回動させうること、特に180°の角度に亘り回動させうることを特徴とする計測装置。
【請求項7】
請求項6に係る計測装置であって、
ロータリドライブ(62)が、回動可能に支持されている前記連結チューブ(52)を少なくとも1個の別な回動位置に回動させうるよう設けられていること、並びに
前記計測手段(40)が前記別な回動位置にて傾斜角を計測しうるよう設計されていること、
を特徴とする計測装置。
【請求項8】
請求項1~7のうち何れか一項に係る計測装置であって、
少なくとも2本の計測ケーブル(32)が設けられ、水平方向において相互に間隔が空いた状態で前記作業装置(20)に取り付けられていることを特徴とする計測装置。
【請求項9】
請求項1~8のうち何れか一項に係る計測装置であって、
前記連結チューブ(52)の内部にプル要素、特にプルケーブルが配置されていることを特徴とする計測装置。
【請求項10】
地盤(5)に孔(7)、特にトレンチを作成するための除去装置であり、
土壌を除去する少なくとも1個の除去ツール(26)を有する作業装置(20)と、
前記地盤(5)内に導入するために鉛直方向に調整可能な態様で前記作業装置(20)を支持するキャリア装置(12)と、
前記地盤(5)内における前記作業装置(20)の位置・姿勢、特に鉛直度を計測する計測装置(30)と、
を備える除去装置であって、
請求項1~8のうち何れか一項に係る計測装置(30)が配置されていることを特徴とする除去装置。
【請求項11】
請求項10に係る除去装置であって、
前記計測ケーブル(32)の密度が、前記作業装置(20)により作成される前記孔(7)を満たすスラリーの密度以下であることを特徴とする除去装置。
【請求項12】
請求項10又は11に係る除去装置であって、
前記孔(7)内での前記作業装置(20)の位置・姿勢変更用の駆動可能な位置決め部材(25)が前記作業装置(20)に付設されていること、並びに
前記作業装置(20)の位置・姿勢をチェックし前記少なくとも1個の計測手段(40)での計測値に依存しつつ前記位置決め部材(25)を駆動することで前記作業装置(20)の位置・姿勢を変化させるよう、前記キャリア装置(12)上に制御兼評価ユニットが配設され設計されていること、
を特徴とする除去装置。
【請求項13】
請求項10~12のうち何れか一項に係る除去装置であって、
前記キャリア装置(12)上に、前記計測ケーブル(32)ごとにウィンチ(18)が設けられており、それによって、予め決定可能な予張力下に置きつつ前記計測ケーブル(32)を前記作業装置に追従させうることを特徴とする除去装置。
【請求項14】
請求項10~13のうち何れか一項に係る除去装置であって、
少なくとも1個の前記固定点(38)が、前記孔(7)の上端に配置されているリードフレーム(36)上に設計されそこで校正されることを特徴とする除去装置。
【請求項15】
請求項10~14のうち何れか一項に係る除去装置であって、
前記作業装置(20)が、少なくとも1個の従動切削輪(27)を有するダイアフラム壁カッター(22)であり、前記従動切削輪が、カッターフレーム(24)の下端側にて水平回動軸線周りで回動可能に支持されることを特徴とする除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分によれば、一方では鉛直方向に調整可能な作業装置に連結されており他方では上側の固定点の方に延びている少なくとも1本の計測ケーブルと、対応する計測ケーブルに連結されていて鉛直計測軸線に対する計測ケーブルの傾斜角を計測しうるよう設計されており、且つ計測ケーブルと作業装置との間の連結領域内に配置されている、少なくとも1個の計測手段と、計測手段・作業装置間に配置されており、且つ、計測手段を、作業装置上で鉛直計測軸線に対し傾斜可能であると同時に作業装置に対して鉛直計測軸線周りにおいて相対回動不能に保つよう設計されている、少なくとも1個の連結手段と、を有する計測装置に関する。
【0002】
本発明は更に、請求項10の前提部分によれば、地盤に孔、特にトレンチ(溝)を作成するための除去装置であり、土壌を除去する少なくとも1個の除去ツールを有する作業装置と、地盤内への導入のために作業装置を鉛直方向に調節可能に支持するキャリア装置と、地盤内における作業装置の位置・姿勢、特に鉛直度を計測する計測装置と、を有するものに関する。
【背景技術】
【0003】
地盤にトレンチを作成する際には、様々な影響要因が原因で、トレンチの所望の鉛直整列具合又は位置からのずれが生じることがある。地盤におけるトレンチの精密で位置的に正確な作成は、例えば、その場にある地下水に抗し深い開削ピットを封止する必要があるためダイアフラム壁(隔壁)を作成する際に、死活的に重要なことである。そうしたダイアフラム壁は、複数個の個別トレンチを水硬性物質で満たすことで作成される。このプロセスでは、それら個別ダイアフラム壁セグメントを精密に隣り合わせに作成することで、ダイアフラム壁セグメント間でのギャップの発生による漏れの発生を防ぐことが必要となる。
【0004】
計測体からキャリア装置まで延びる少なくとも1本の計測ケーブルにより地盤内のボアホールを計測する高度に精密な方法が、特許文献1により知られている。しかしながら、この既知方法では、装置非依存的な計測装置で以て角度及び距離計測を実行することが必要とされる。この場合、計測ケーブル上での位置の変化を、その地盤における孔の整列具合、特に鉛直度に関する物差しとして役立てることができる。しかしながら、この計測装置は、除去装置の制御にそのまま利用することができない。
【0005】
一般的な計測装置を特許文献2から引用することができる。この既知な計測装置では、互いに間隔を空けて配置されている2本の計測ケーブルが、地面上にある所定の固定点からダイアフラム壁カッターまで引っ張られている。ダイアフラム壁カッターが精度よく鉛直下降されると、それら計測ケーブルが鉛直整列する。ダイアフラム壁カッターに鉛直からのずれがある場合、計測ケーブル上に傾斜角が発生する。作業装置に至る計測ケーブル間の連結領域にある傾斜計によって、計測角を確定することができる。更に微小なずれを最高限な正確度で以て確定するには、それらの計測ケーブルを、できる限り自在に調整可能となるよう、作業装置に取り付けねばならない。この目的を踏まえ、特許文献2では、互いに交差するピボット軸によるボールジョイント又はカルダンジョイントの取付が教示されている。
【0006】
この計測装置に関しては、特許文献3にて教示されている特殊なカルダンベアリングにより、ひときわ良好な計測精度を達成することができる。しかしながら、このカルダンベアリングは複数個の機械部品を有しているので、建設現場で利用される際、特にそうした計測手段を伴う作業装置がコンクリートサスペンションで以て満たされているトレンチ内へと導入される際に、清掃及びメンテナンスに長大な時間及び労力が必要になる。この繊細な機械的カルダンリンケージの清掃及びメンテナンスが不十分な場合、望ましくない計測不正確性が発生しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許第2698499号明細書
【文献】欧州特許第0841465号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3536899号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の基本的な目的は、頑健設計である一方、ひときわ信頼性が高く精密な計測が可能な計測装置及びこの計測装置を有する除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1の諸特徴を有する計測装置により、また請求項10の諸特徴を有する除去装置により、達成される。本発明の好適な諸実施形態が従属形式請求項にて宣明されている。
【0010】
本発明に係る計測装置の特徴は、連結手段が、鉛直計測軸線に対し同軸配置された連結チューブを有すること、並びにこの連結チューブが、鉛直計測軸線周りでトーションリジッド(ねじりに対して堅固)なものとなり且つ鉛直計測軸線に対し偏向可能なものとなるよう設計されていること、にある。
【0011】
本発明の基本的着想は、計測手段を作業装置に連結するための連結チューブを設け、それを一方では計測軸線と一致する管の軸線の周りでトーションリジッドとし、他方では管の軸線に対し偏向可能又は屈曲可能とすることにある。そうした連結チューブの使用は様々な面で長所をもたらしてくれる。互いに交差するピボット軸を伴うカルダンジョイントとは違い、この連結チューブは、周縁全体に亘り均一な偏向挙動を呈する。更に、ジョイント要素としての連結チューブは、基本的に単ピース設計のものであるので、単純であると同時に頑健である。特に、多部品式カルダンジョイント又はボールジョイントと比べ、外からの影響に対しさほど敏感でなくてメンテナンス及び清掃に必要な時間及び労力がかなり少ないのであり、特に水硬性懸濁液との接触や泥粒子との接触が見込まれる場合にそうなる。したがって、本発明に係る計測装置は、建設現場での、あるいはその他の屋外エリアにおける、粗作業割当に特に適している。
【0012】
基本的には、連結チューブを、管の軸線周りで十分にトーションリジッドであり管の軸線を横断する方向にて所望の偏向性が許容される何れの好適素材でも、作成することができる。本発明のある実施形態によれば、特に好適なことに、連結チューブがホース状の態様にて可撓素材で形成される。特にプラスチック素材、より具体的には弾性プラスチック素材が、連結チューブを形成するのに適している。
【0013】
本発明のある変形実施形態によれば、連結チューブが少なくとも部分的に、コルゲート壁領域付のコルゲート管として設計され、それにより計測装置の偏向性、ひいては感度の改善が達成される。この場合、連結チューブが、直径が変わる領域、具体的には直径が増減する領域を、少なくとも1個有することとなる。望みであれば、連結チューブ全体をコルゲート管として設計することもできる。望ましくは、このコルゲート管を金属素材、例えば鋼又はステンレス鋼から製造する。
【0014】
本発明の別の好適実施形態によれば、連結チューブを非圧縮性液体で以て満たすことで、連結チューブの持続的な高感度角度性能と併せ連結チューブの軸線方向における剛性の向上を達成することができる。好適なことに、油又は水を液体として提供することができる。
【0015】
本発明の別の好適実施形態は、連結チューブの端のうち作業装置の方を向く端にロータリベアリングを設けることで、連結チューブを鉛直計測軸線周りで回動可能、特に180°の角度に亘り回動可能とすることにある。基本的には、ロータリベアリングを連結チューブの何れの位置にも配置することができる。連結チューブの計測軸線又は管の軸線周りに回動可能な特性により、計測正確度をなおも更に向上させることができる。
【0016】
特に、回動可能に支持されている連結チューブを少なくとも1個の別な位置に回動させうるロータリドライブを配置すること、並びにその別な回動位置にて傾斜角を計測しうるよう計測手段を設計することで、これを成し遂げることができる。具体的には、第1位置での計測後、ロータリドライブにより連結チューブを調整し、第1位置に対し90°又は180°ずれている第2位置にすることができる。第2位置にて更なる計測を実行することができる。これによりいわゆるターンオーバ計測が可能となり、それによって計測誤差を補償すること、即ち最小限度まで低減することができる。基本的には、連結チューブを2個超の別々な回動位置にして計測を実行することもできる。
【0017】
一般に、これまでも、計測装置を特定用途向けの計測ケーブル1本と併用することができている。本発明の更なる発展形態によれば、特に有利なことに、少なくとも2本の計測ケーブルが設けられ、水平方向において相互に間隔が空いた状態で、作業装置に取り付けられる。望みであれば、それら少なくとも2本の計測ケーブルが通常位置にて互いに平行に走るようにする。少なくとも2本の計測ケーブルを配置することで、空中における作業装置の回動を実現し、各計測ケーブル側で個別の角度計測を実行することもできる。3本以上の計測ケーブルを設け、作業装置と個々の固定点との間に延設することもできる。精密計測のためには、計測ケーブルを伸長状態としなければならないので、そのための引張手段を設けるべきである。計測ケーブルが1本しか配置されていない場合でも、好適な検出手段、例えばジャイロスコープを有するそれにより、回動を検出することができる。
【0018】
連結チューブの内部にプル要素を配置することで、連結手段により作業装置上での計測ケーブルの格別良好な軸線固定を達成することができる。より具体的には、プル要素をプルケーブルとすることができ、それにより更に、鉛直計測軸線横断方向における連結チューブの十分な偏向が可能となる。
【0019】
本発明により、更に、地盤に孔、特にトレンチを作成するための除去装置であり、土壌を除去する少なくとも1個の除去ツールを有する作業装置と、地盤内への導入のために鉛直方向に調整可能に作業装置を支持するキャリア装置と、を有していて、本発明に係り地盤内における作業装置の位置・姿勢、特に鉛直度を計測する計測装置が配置されているものが、構成される。除去装置上で本発明に係る計測装置が用いられるようにすることで、前述した諸利点を実現することができる。
【0020】
作業装置を特殊基礎工事用の装置とすることができ、特にダイアフラム壁カッター、ダイアフラム壁グラブ、あるいはダウンザホールドリリング装置又はドリリングツールをも構成することができる。キャリア装置は、具体的には、移動可能な下キャリッジを有しており下キャリッジ上で回動可能な上キャリッジが支持されている建設機械である。その下キャリッジは、具体的には、無限軌道(クローラトラック)走行装置を備えるものとすることができる。
【0021】
本発明に係る除去装置の特に好適な実施形態は、計測ケーブルの密度が、作業装置により作成される孔を満たすスラリーの密度以下とされることにある。特に、密度がその孔におけるスラリー表面でのスラリーの密度に等しい場合、密度差を原因とするケーブルへの不要な影響を回避することができる。これにより計測結果の再現性が高まる。その懸濁液の密度が一定であっても深さにより変わってもよい。
【0022】
除去装置との関連では、計測装置による計測を連続的に行うことも所定時点で行うこともできる。計測値のうち確認されたものを頼りに、孔における作業装置の位置・姿勢のずれを、早期段階で確定することができる。基本的には、その後、作業装置を手動で再制御することができる。
【0023】
本発明の更なる発展形態によれば、ひときわ好適なことに、孔内での作業装置の位置・姿勢変更用の駆動可能な位置決め部材が作業装置に付設され、且つ、作業装置の位置・姿勢をチェックし少なくとも1個の計測手段での計測値に依存しつつ位置決め部材を駆動することで作業装置の位置・姿勢を変化させるよう、制御装置上に制御兼評価ユニットが配設及び設計される。特に、作業装置の位置・姿勢の自動制御又は調整を、それにより行うことができる。結果として、位置的に正確な孔、特にトレンチを、単純な要領で地盤に作成することができる。これにより、隣り合うダイアフラム壁セグメント間の概ね通例的な重複を、非常に低いレベルに保つことが可能となるため、ダイアフラム又はカットオフ壁を作成する際に、そのことが原因となり除去ツール上で顕著に素材節約及び摩耗低減されることとなる。
【0024】
本発明の更なる発展形態によれば、キャリア装置上に計測ケーブルごとにウィンチが設けられていて、それによって、予め決定可能な予張力下に置きつつ計測ケーブルを作業装置に追従させることができる、ひときわ有利な除去装置が実現される。予張力は、特に、計測ケーブルの高感度偏向、ひいては高い計測正確度がなおももたらされるようにしつつ、常時計測ケーブルが完全に引っ張られるように、設定することができる。これは、対応する始動トルクをウィンチ用のウィンチドライブを対象に設定することで、達成することができる。
【0025】
基本的には、計測ケーブルの信頼できる恒久的な局在化を行える何れの好適な場所にも、少なくとも1個の固定点を設けることができる。特に、とりわけ得策なのは、少なくとも1個の固定点の設計及び構成個所を、孔の上端に配置されているリードフレーム上とすることである。とりわけ、ダイアフラム壁を作成する際には、コンクリート壁を伴うガイドトレンチが地面に沿い作成される。ガイドトレンチに沿い、リードフレーム、好ましくは金属製のそれを配置し固定することができる。リードフレーム上で、対応する保持手段により、計測ケーブル用の固定点を局在化させることができる。この目的を踏まえ、特に計測スリーブ及び/又は偏向プーリをリードフレーム上に配置し、それによってあるいはそれぞれを通じ、計測ケーブルが好適に案内されるようにすることができる。その固定点を、特に、例えば建設現場連携システムにて明瞭な位置定義が与えられるよう、特別に精密な計測向けに校正することができる。
【0026】
原理的には、除去装置の作業装置を、地盤に孔を作成できる何れの建設装置ともすることができる。本発明の更なる発展形態によれば、ひときわ有利なことに、作業装置が、少なくとも1個の従動切削輪を有するダイアフラム壁カッターとされ、従動切削輪が、カッターフレームの下端側にて水平回動軸線周りで回動可能に支持される。特に、カッターフレームの下側で互いに水平方向に沿ってずらして、二対の切削輪を配置することができる。
【0027】
後掲の図中に模式的に描かれている好適な諸実施形態により、以下、本発明について更に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る計測装置を伴う除去装置の斜視図である。
図2図1の計測装置の正面概観の詳細図である。
図3】本発明に係る計測装置の計測手段の拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1によれば、キャリア装置12を備えた除去装置10が描かれており、それには下キャリッジ13である無限軌道走行装置が備わっている。下キャリッジ13上では、駆動制御部が備わる運転室15付の上キャリッジ14が、水平回動軸線周りで回動可能に支持されている。図示実施形態では、マストとして、除去装置10が角度付け可能な伸縮マスト16を有しており、それを介し支持ケーブル17により鉛直方向に調整可能な態様で作業装置20が保持されている。
【0030】
図示実施形態では、作業装置20が、カッターフレーム24を伴うダイアフラム壁カッター22として設計されている。カッターフレーム24上には、複数個の伸長可能なフラップ状位置決め部材25が配置されており、それによって、地盤の孔におけるダイアフラム壁カッター22の位置・姿勢を、既知手法にて変更及び設定することができる。カッターフレーム24の下端では、二対の切削輪27が、除去ツール26として回動可能に支持されている。既知手法に従い、切削輪27を、内蔵切削輪ドライブの働きで回転状態に設定して、地盤物質を除去することができる。
【0031】
地盤における作業装置20の位置・姿勢、特に鉛直度を計測するため、本発明に係る計測装置30の計測手段40が懸吊手段28の付近に取り付けられており、前記懸吊手段を介しダイアフラム壁カッター22が支持ケーブル17に連結されている。計測手段40は後に詳述されるものであり、作業装置20の長手軸線に対しほぼ中心に位置し且つほぼ同軸となるよう配置されている。作業装置20にしっかり連結されている計測手段40からは、計測ケーブル32が上方に延びていて、行く先たる所定の固定点38はリードフレーム36上に設計されている。リードフレーム36が地面上の孔の上端に固定されているので、固定点38を校正することで作業装置20の位置に関する目標参照点が予め決定される。
【0032】
計測ケーブル32はリードフレーム36よりずっと高くまで延びており、その行く先にあるキャリア装置12では、計測ケーブル32が、偏向プーリにより上キャリッジ14上のウィンチ18へと案内されている。ウィンチ18の働きで、計測ケーブル32を、地中に下降される作業装置20に追従させることができ、且つ計測ケーブル32のある程度の張力を確保することができる。
【0033】
一般に既知な手法にて、ダイアフラム壁カッター22の動作のための更なるライン及びホースを、対応するウィンチ及びドラムの働きで、キャリア装置12から追従させている。
【0034】
図2には、合計2個の計測手段40を備えた変更された作業装置20の上端が描かれており、それに備わるカッターフレーム24が、孔7又はトレンチが形成されつつあるときに既に地盤5内に導入されている。
【0035】
それら2個の計測手段40は、水平方向及び鉛直方向にずらしてカッターフレーム24上に固定されている。各計測手段40からは計測ケーブル32が上方に延びており、孔7の上方で地面上に載置されているリードフレーム36内を通っている。計測ケーブル32はそれぞれリードフレーム36上の所定の固定点38を通じ案内されており、固定点38が、地盤5における作業装置20の位置・姿勢計測用、特に鉛直度計測用の参照点として働いている。
【0036】
作業装置20が目標位置に所在していれば、計測ケーブル32は、個々の固定点38を通り鉛直計測軸線を基準にして精密に鉛直に延びている。水平方向に位置ずれが発生しているのなら、それは、鉛直計測軸線に対する計測ケーブル32のうち少なくとも1本の偏向によるものである。このずれ即ちアンギュレーションは、図3による描写を参照し後に詳細に説明される通り、計測手段40により決定することができる。作業装置20の鉛直調整は、懸吊手段28を介し作業装置20に連結されている支持ケーブル17により行われる。
【0037】
本発明に係り計測手段40を伴う計測装置30の好適実施形態が、図3に模式的に描かれている。計測ケーブル32が固定スリーブ34を介しほぼボール状の計測手段40まで案内されており、計測手段40によって、鉛直計測軸線に対する計測ケーブル32のずれ、特に傾斜を、高い計測正確度で以て確定することができる。鉛直計測軸線は、具体的には重力方向に由来しうる。
【0038】
計測手段40は連結手段50を介し作業装置20に連結されている。連結手段50は鉛直方向に延びる連結チューブ52を有している。連結チューブ52はコルゲート(波形)壁領域を備えており、コルゲート管と呼ぶことができる。プルケーブルを、連結チューブ52に沿いその内側に延設することができる。連結チューブ52は、好ましくも液体で以て満たすことができる。上固定フランジ55によって、連結チューブ52が計測手段40にしっかり連結されている。下固定フランジ56によって、連結チューブ52がロータリベアリング60に取り付けられており、それで以て連結チューブ52を鉛直軸線周りで回動させることができる。回動のためロータリベアリング60の下方にロータリドライブ62が設けられており、それで以て連結チューブ52を調整することで、作業装置20に対し所定の位置決め角にすることができる。このようにして、傾斜角の計測を様々な回動位置にて行うことができ、ひいては空中での作業装置20の位置・姿勢の決定も可能となる。ロータリドライブ62はフランジ連結を介し作業装置20に連結されており、その連結部が作業装置20のフレーム上か懸吊手段28上に設けられている。
図1
図2
図3