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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】塗装ロボット
(51)【国際特許分類】
   B05B 12/00 20180101AFI20240902BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240902BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240902BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B05B12/00 A
B05C11/10
B05C5/00 101
B41J2/01 109
B41J2/01 303
B41J2/01 401
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024015823
(22)【出願日】2024-02-05
【審査請求日】2024-02-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】飯田 輝澄
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-501889(JP,A)
【文献】特開2023-097351(JP,A)
【文献】国際公開第2021/205537(WO,A1)
【文献】特開2023-010525(JP,A)
【文献】特開2022-094924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 12/00
B05C 11/10
B05C 5/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を吐出する複数のノズルから構成される複数のノズル列を有し、所定方向に移動しながら被塗物を塗装する長尺状の塗装ヘッドと、
前記塗装ヘッドを先端に装着すると共に前記塗装ヘッドを所望の位置へ移動させるロボットアームの作動を制御するアーム制御部と、
前記塗装ヘッドの傾斜を制御するヘッド制御部と、を備え、
前記ヘッド制御部は、
前記塗装ヘッドの移動方向が前記塗装ヘッドの短手方向から長手方向となるまでの間で前記塗装ヘッドを傾斜させる傾斜制御を実行し、
前記塗装ヘッドの前記ノズル列の配列に基づいて塗装解像度が所定の許容解像度以上となる前記塗装ヘッドの傾斜角度を演算し、その演算結果に基づいて前記塗装ヘッドの前記傾斜制御を実行し、
前記塗装解像度が前記許容解像度以上となる前記塗装ヘッドの傾斜角度が存在しないとき、前記被塗物を複数回塗装する、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載の塗装ロボットであって、
前記塗装ヘッドの移動中に、前記被塗物の形状に沿って前記塗装ヘッドが追従するように前記傾斜制御が実行される、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項3】
請求項1に記載の塗装ロボットであって、
前記ヘッド制御部は、
前記塗装ヘッドの移動方向に対して垂直な方向に隣接する、前記ノズル列における各ノズル間の距離が均等になるように前記塗装ヘッドの傾斜角度を演算し、その演算結果に基づいて前記傾斜制御を実行する、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項4】
請求項に記載の塗装ロボットであって、
前記ヘッド制御部は、
前記塗装ヘッドと障害物との干渉を避けるために必要な前記塗装ヘッドの傾斜角度範囲を演算し、前記傾斜角度範囲内で最も前記距離が均等になるように前記塗装ヘッドの前記傾斜角度を演算する、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項5】
請求項1に記載の塗装ロボットであって、
前記被塗物は車体である
ことを特徴とする塗装ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の塗装ラインにおいては、ロボットを用いたロボット塗装が主流となっている。ロボット塗装では、多関節ロボットの先端に、多数のノズル列を有する塗装ヘッドを取り付けた塗装ロボットが用いられる。特許文献1には、自動車等の車両の塗装ラインにおいて、インクジェット方式の塗装ヘッドを有する塗装ロボットを用いて塗装を行うことが開示されている。塗装ロボットによる塗装時には、塗装ヘッドの進行方向が長手方向に対して垂直に保たれた状態で塗装することが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2021/205537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、塗装ヘッドの長手方向が塗装方向に対して垂直である場合、塗装ヘッドを移動させて塗装中、特に障害物が近接する部位などでは、塗装ヘッドと障害物との干渉を避けるため、塗装ヘッドのノズル面を被塗物に十分接近させることができない。これにより、当該部位は塗装ヘッドからの塗装距離が離れるため、塗装の解像度が低下して所望の塗装品質を得られなくなる可能性がある。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みなされたもので、被塗物に対してノズル面を十分に接近させることができない箇所において塗装品質を保つことができる塗装ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面の塗装ロボットは、塗料を吐出する複数のノズルから構成される複数のノズル列を有し、所定方向に移動しながら被塗物を塗装する長尺状の塗装ヘッドと、塗装ヘッドを先端に装着すると共に塗装ヘッドを所望の位置へ移動させるロボットアームの作動を制御するアーム制御部と、塗装ヘッドの傾斜を制御するヘッド制御部と、を備え、ヘッド制御部は、塗装ヘッドの移動方向が塗装ヘッドの短手方向から長手方向となるまでの間で塗装ヘッドを傾斜させる傾斜制御を実行する。
【0007】
また、上述の発明において、塗装ヘッドの移動中に、被塗物の形状に沿って塗装ヘッドが追従するように傾斜制御が実行される、ことが好ましい。
【0008】
また、上述の発明において、ヘッド制御部は、塗装ヘッドのノズル列の配列に基づいて塗装解像度が所定の許容解像度以上となる塗装ヘッドの傾斜角度を演算し、その演算結果に基づいて塗装ヘッドの傾斜制御を実行する、ことが好ましい。
【0009】
また、上述の発明において、ヘッド制御部は、塗装解像度が許容解像度以上となる塗装ヘッドの傾斜角度が存在しないとき、被塗物を複数回塗装する、ことが好ましい。
【0010】
また、上述の発明において、ヘッド制御部は、塗装ヘッドの移動方向に対して垂直な方向に隣接する、ノズル列における各ノズル間の距離が均等になるように塗装ヘッドの傾斜角度を演算し、その演算結果に基づいて傾斜制御を実行する、ことが好ましい。
【0011】
また、上述の発明において、ヘッド制御部は、塗装ヘッドと障害物との干渉を避けるために必要な塗装ヘッドの傾斜角度範囲を演算し、傾斜角度範囲内で最も距離が均等になるように塗装ヘッドの傾斜角度を演算する、ことが好ましい。
【0012】
また、上述の発明において、被塗物は車体である、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ノズル面を十分に接近させることができない箇所においても塗装品質を保つことができる塗装ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態に係る塗装ロボットの概略構成を示す概略構成図である。
図2図2は、図1における塗装ヘッドのうち、塗料を吐出させるノズル形成面を正面視した状態を示す図である。
図3図3は、本実施形態に係る塗装ロボットの主制御部において行われる制御を示すフローチャートである。
図4図4は、本実施形態に係る塗装ロボットの塗装対象である被塗物及び主走査方向について説明する説明図である。
図5図5は、本実施形態に係る塗装ロボットの塗装ヘッドが被塗物を塗装している様子を示す概略図である。
図6図6は、本実施形態に係る塗装ロボットの塗装ヘッドが、傾斜制御を実行しながら被塗物を塗装している様子を示す概略図である。
図7図7は、本実施形態に係る塗装ロボットの塗装ヘッドの傾斜制御による効果を示す模式図である。Aは傾斜制御なしの場合を示し、Bは傾斜制御ありの場合を示す。
図8図8は、本実施形態に係る塗装ロボットの第1塗装ヘッドからの着弾形態を傾斜制御の有無に応じて簡易的に示す説明図である。
図9図9は、本実施形態に係る塗装ロボットの第1塗装ヘッドの傾斜制御の有無が塗装解像度に与える影響を示す説明図である。
図10図10は、本実施形態に係る塗装ロボットの第2塗装ヘッドからの着弾形態を傾斜制御の有無に応じて簡易的に示す説明図である。
図11図11は、本実施形態に係る塗装ロボットの第2塗装ヘッドの傾斜制御の有無が塗装解像度に与える影響を示す説明図である。
図12図12は、本実施形態に係る塗装ロボットの第1塗装ヘッド及び第2塗装ヘッドの傾斜制御の効果を示す被塗物の模式図である。
図13図13は、本実施形態に係る塗装ロボットの第1塗装ヘッド及び第2塗装ヘッドの傾斜制御の効果を示す被塗物の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態に係る塗装ロボット10について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
[塗装ロボット]
図1は、本実施形態に係る塗装ロボット10の概略構成を示す概略構成図である。塗装ロボット10は、自動車製造工場における塗装ラインの近傍に配置され、塗装ラインに沿って搬送される車体FRを塗装する。本実施形態では、塗装対象物として、自動車の車体FRを例示するが、自動車の車体FR以外のものであってもよい。
【0017】
塗装ロボット10は、塗装ラインを上流側から搬送される車体FRに対して塗装を行う。塗装工程は、塗装ラインを流しながら車体FRに対して塗装を行ってもよいし、所定位置でラインの流れを止めて塗装を行ってもよい。塗装ロボット10により塗装が施された車体FRは、塗装ラインの下流側に向けて搬送される。
【0018】
塗装ロボット10は、先端部24がX軸、Y軸および及びZ軸の3つの軸を中心とする方向に回動できるものを例示するが、先端部24をX軸、Y軸またはZ軸のいずれか1つの軸を中心として回動するものでもよいし、2つの軸を中心として回動するものでもよい。
【0019】
塗装は、塗膜を塗装対象物の表面に形成して、その表面の保護や美観を与えることを目的として行われる。塗装工程としては、特定色の塗料または特定の機能を有する塗料を用いて塗装するだけの場合もあれば、複数色の塗料または特定の機能を有する塗料を順に塗り重ねる場合も含む。
【0020】
塗装ロボット10は、多関節ロボットを例示するが、塗装が可能であればスカラロボットでもよい。図1に示すように、塗装ロボット10は、基台20と、脚部21と、回転駆動部22と、ロボットアーム23と、先端部24と、塗装ヘッド30と、を備える。
【0021】
基台20は、塗装ロボット10を塗装ラインの床面に固定して、塗装ロボット10を支持する固定部材である。基台20は、塗装ラインの床面上で移動可能としてもよい。
【0022】
脚部21は、下部が基台20に固定され、上部が回転駆動部22に連結され、塗装ロボット10による塗装を行うのに適した鉛直方向高さまで延設される。
【0023】
回転駆動部22は、脚部21の上端に連結され、回転軸部25と、回転アーム26と、を有する。回転軸部25は、不図示のモータにより、回転アーム26を床面と平行な方向(図1に示すX軸方向)を中心として回転させる。回転アーム26は、回転アーム26に連結されるロボットアーム23を、回転軸部25の回転中心と直交する直線(図1に示すZ軸方向)を回転中心として回転させる。
【0024】
ロボットアーム23は、第1回動アーム27と、第2回動アーム28と、を有する。第1回動アーム27は、一端部が回転アーム26に連結され、他端部が第2回動アーム28に連結される。第1回動アーム27は、回転アーム26に搭載される不図示のモータによって図1に示すZ軸方向を回動中心として回動する。第2回動アーム28は、一端部が第1回動アーム27に連結され、他端部に後述するリスト部29を有する。第2回動アーム28は、不図示のモータによって図1に示すZ軸方向を回動中心として回動する。
【0025】
先端部24は、塗装ロボット10の先端側に配置され、塗料を自動車の車体FRに噴射する。先端部24と第2回動アーム28との間には、リスト部29が保持される。リスト部29は、先端部24を、図1に示す3つの軸(X軸、Y軸およびZ軸)の少なくとも一つを中心として回動させる。先端部24は、先端に塗装ヘッド30を有する。
【0026】
塗装ヘッド30は、塗装ライン上を流れてくる車体FRに対して、適切なタイミングで塗料を噴射する。図2は、塗装ヘッド30における塗料を吐出させるノズル形成面31を正面視した状態を示す図である。ノズル形成面31には、多数のノズル32からなるノズル列33が一定の規則に従って複数列並設されている。塗装ヘッド30は、各ノズル32から適切なタイミングで塗料を噴射することで被塗物CMである車体FRに塗膜を形成する。塗装ヘッド30は、図1に示すように、先端部24に装着された状態で中心軸周りに回動可能である。塗装ヘッド30の回動、すなわち傾斜については後述する。
【0027】
上記のような、塗装ロボット10を構成する各種部材は、制御部からの指令に基づいて動作する。制御部は、主制御部1と、アーム制御部2と、塗料供給制御部3と、記憶部4と、センサ部5と、ヘッド制御部6と、を有する。
【0028】
主制御部1は、記憶部4及びセンサ部5から送信される信号に基づいて、アーム制御部2、塗料供給制御部3及びヘッド制御部6に信号を送信して塗装ロボット10の動きや塗料の供給を制御する。
【0029】
アーム制御部2は、主制御部1からの信号に基づいて、回転駆動部22からロボットアーム23までの動きを制御する。アーム制御部2は、塗装ロボット10を所望の塗装位置に移動させ、塗装時に塗装ヘッド30を主走査方向に移動させる。
【0030】
塗料供給制御部3は、主制御部1からの信号に基づいて、塗装ヘッド30の塗料循環経路に介装されるポンプや流路変換バルブなどを駆動制御する。
【0031】
ヘッド制御部6は、主制御部1からの信号に基づいて、先端部24の先端に装着されている塗装ヘッド30の角度を制御する。角度の制御は、主走査方向は変えずに、塗装ヘッド30の向きだけを変更する制御であり傾斜制御と称する。なお、傾斜制御については後述する。
【0032】
記憶部4は、ライン上を流れてくる車体FRの形状を記憶し、塗装ヘッド30が車体FRに干渉しないように、過去に記憶したデータのうち、主制御部1が現在必要なデータを供給する。また、記憶部4は、現在使用している塗装ヘッド30の傾斜角度と塗装解像度との関係を記憶し、主制御部1の求めに応じて必要なデータを供給する。
【0033】
センサ部5は、塗装ヘッド30が障害物に接近していることを常時監視する。センサ部5は、例えば、赤外線センサ、カメラによる画像処理、ミリ波レーダーなどによって、塗装ヘッド30と障害物との距離、相対的な位置などを把握する。センサ部5は、これらの障害物に関する情報を主制御部1に送信し、主制御部1で演算された信号に基づいてアーム制御部2及びヘッド制御部6が制御される。
【0034】
[制御フロー]
次に、図3を参照しながら、塗装ロボット10の制御フローについて説明する。図3は、本実施形態に係る塗装ロボット10の主制御部1において行われる制御を示すフローチャートである。
【0035】
ステップS1において主制御部1は、センサ部5がセンシングした内容や記憶部4が記憶している障害物の位置情報に基づいて、塗装ヘッド30の主走査方向前方に塗装ヘッド30と干渉する障害物があるか否かを判定する。
【0036】
障害物は、例えば、車体FRの例でいうとBピラー45(図4参照)のような塗装ヘッド30の進行中に干渉する物であればよい。ステップS1において障害物があると判定されなければ、処理がステップS6へ進んで、主制御部1は該当箇所の塗装を一回だけ行って処理を終了する。
【0037】
ステップS2において主制御部1は、障害物を回避可能な傾斜角度範囲を演算する。主制御部1は、ステップS1と同様に、センサ部5がセンシングした内容や記憶部4が記憶している障害物の位置情報に基づいて、現在の塗装ヘッド30と被塗物CMとの距離や障害物の形状等に応じて、障害物を回避可能な傾斜角度範囲を演算する。傾斜角度範囲は、単一の角度であってもよい。
【0038】
ステップS3において主制御部1は、塗装解像度が許容解像度以上となる傾斜角度範囲を演算する。主制御部1は、ステップS2において演算した傾斜角度の角度範囲の中から、塗装解像度が許容解像度以上となる傾斜角度範囲を演算する。許容解像度は、要求スペックを満たすことができる程度の解像度であり、予め実験などによって定めておく。
【0039】
例えば、ノズル配列と傾斜角度との関係を予めデータとして記憶部4に保存しておくことも可能である。ノズル配列と傾斜角度との関係から、塗装解像度を演算する方法については、後述する。
【0040】
ステップS4において主制御部1は、ステップS3において演算された傾斜角度範囲の中から、塗装解像度が許容解像度以上となる傾斜角度があるか否かを判定する。塗装ヘッド30と障害物との位置関係によっては、障害物を避けながら塗装解像度を維持できる塗装ヘッド30の傾斜角度がない場合もあるため、主制御部1はこのような場合の有無を本ステップにおいて確認している。
【0041】
ステップS5において主制御部1は、ステップS4においてあると判定された傾斜角度となるように、塗装ヘッド30の傾斜角度を設定する。なお、ステップS2~S5で行われる、主制御部1がヘッド制御部6を介して塗装ヘッド30の角度を傾斜させるように制御することを「傾斜制御」と称する。傾斜制御では、塗装ヘッド30は主走査方向に垂直であって、塗装ヘッド30の長手方向とは一致しない軸を中心として回動、つまり傾斜する。
【0042】
なお、上記ステップS2~S5までの演算によって塗装ヘッド30の傾斜角度を設定することを、「傾斜制御」と称する。
【0043】
ステップS6において主制御部1は、ステップS5において設定された傾斜角度を有する塗装ヘッド30に対し、塗料供給制御部3を介して、該当箇所の塗装指示を送信する。この場合の塗装は、他の場所の塗装と同じく一回だけ塗装すれば所望の塗装品質を保つことができる。
【0044】
なお、ここでいう「塗装」とは、例えば、塗装ヘッドがルーフレール41に沿って主走査方向に移動しながら1回塗装することであり、途中でBピラー45などの障害物があった場合には、傾斜制御によって塗装ヘッド30を傾斜させながら塗装を行うことを含む。また、傾斜制御が必要な部分だけ後回しにして、最初に塗装ヘッド30を主走査方向に移動しながら塗装した後、後回しにした障害物付近だけ傾斜制御で塗装する、という手順で塗装してもよい。
【0045】
一方、ステップS7において主制御部1は、ステップS4において塗装解像度が許容解像度以上となる傾斜角度がないと判定しているので、主制御部1は、塗装ヘッド30の傾斜角度を変化させない。
【0046】
ステップS8において主制御部1は、塗装ヘッド30が、該当箇所を複数回塗装するように塗料供給制御部3に信号を送信して処理を終了する。塗装解像度が一度で許容解像度にならなくても、2回以上塗装することで許容解像度とすることができる。塗装回数については、元の塗装解像度や被塗物CMの形状などによって異なる。
【0047】
[塗装ヘッドの動作]
次に、図4図6を参照しながら、塗装ヘッド30による車体FRの塗装について説明する。図4は、本実施形態に係る塗装ロボット10の塗装対象である被塗物CM及び主走査方向について説明する説明図である。図5は、本実施形態に係る塗装ロボット10の塗装ヘッド30が被塗物CMを塗装している様子を示す概略図である。図6は、本実施形態に係る塗装ロボット10の塗装ヘッド30が、傾斜制御を実行しながら被塗物CMを塗装している様子を示す概略図である。
【0048】
図4に示すように、塗装ヘッド30の塗装対象である被塗物CMは、自動車の車体FRである。本実施形態では、車体FRのうち、特にルーフレール41を塗装する場合を例示しているが、ルーフレール41以外の部分であってもよいし、被塗物CMが車体FR以外であってもよい。
【0049】
塗装ヘッド30は、車体FRの塗装として、車両前方から、Aピラー42、ルーフ43の両サイド端部であるルーフレール41、を経由して、Cピラー44付近までを、一連の工程として行う。なお、車両のデザインによっては、ステーションワゴンや5ドアセダンなど、ルーフレール41が図示しないDピラーへと滑らかに続く場合があり、このような場合には、塗装ヘッド30は、Dピラーまでを一連の塗装工程とする。
【0050】
また、塗装ヘッド30の主走査方向は、図4の場合、左方の車両前方側のAピラー42から右方の車両後方側へ向かう方向である。主走査方向は、図5及び図6で後述する。
【0051】
図5は、塗装ヘッド30が図4のルーフレール41の一部を塗装している状態を示している。なお、図5は、塗装ヘッド30を支持する先端部24については省略して、塗装ヘッド30だけを示している。図5に示すように、塗装ヘッド30は、通常の塗装時には、塗装ヘッド30の移動方向に対して、左右方向が長手方向となるように塗装を行う。言い換えると、塗装ヘッド30は、当該塗装ヘッド30の短手方向に沿って移動しながら塗装を行う。
【0052】
なお、以下の説明において、「主走査方向」とは、塗装を行うために、塗装ヘッド30を移動させる方向のことを指し、それが塗装ヘッド30の短手方向であるか、長手方向であるか、それ以外の角度であるか、は問わない。
【0053】
図4に戻って説明すると、塗装ヘッド30がAピラー42からルーフレール41に沿って主走査方向に塗装を行うとき、図5で示した、塗装ヘッド30の短手方向を主走査方向とする向きでは、塗装ヘッド30がBピラー45に干渉する可能性がある(S1)。また、塗装ヘッド30の一部が、塗装部位と近く、その他の部分は塗装部位と遠くなることもあり得る。このような場合、塗装部位が遠いところでは、液滴の飛行曲がりなどで塗装品質が低下する可能性がある。
【0054】
特に、ルーフレール41の上面や側面は問題ないが、下方面47に回り込んで塗装を行うとその可能性が顕著となる。
【0055】
そこで、図6に示すように、ヘッド制御部6が傾斜制御を行い(S2~S5)、塗装ヘッド30を略90度傾斜させ、この状態でルーフレール41を主走査方向に塗装する(S6)。図5図6との比較からも明らかなように、塗装ヘッド30の長手方向を主走査方向として塗装する図6の場合の方が、塗装ヘッド30のルーフレール41からの下方への飛び出しが少なくなる。また、塗装ヘッド30のうち、塗装部位と遠くなる部分が減少するので、液滴の飛行曲がりなどで塗装品質が低下する部位が減少する。
【0056】
これにより、塗装ヘッド30は、図5に示す向きより、傾斜制御によって図6に示す向きとした方が、Bピラー45が障害物となっていても、塗装ヘッド30をよりルーフレール41の下方面47まで回り込ませることができる。よって、塗装ヘッド30をよりルーフレール41に接近させることができ、その分だけ、また接近させることができる塗装ヘッド30の面積の分だけ、塗装解像度の低下を抑制することができる。
【0057】
[傾斜制御の動作]
ここで、塗装ヘッド30の傾斜制御を行うことによる塗装解像度の低減抑制について、図7を参照しながら説明する。図7は、本実施形態に係る塗装ロボット10の塗装ヘッド30の傾斜制御による効果を示す模式図である。
【0058】
図7は、A、Bともに、ルーフレール41を模式的に示しており、車両の左右方向の切断面でルーフレール41を切断し、ルーフレール41に平行な方向である車両の前方から後方を見た状態を示している。従って、Rの付いた細い線がルーフレール41であり、その細線に追従する太線が塗膜を表している。
【0059】
また、長方形の部材は、塗装ヘッド30であり、塗装ヘッド30を支持する先端部24やロボットアーム23などは省略している。図7はあくまでも模式図であり、ルーフレール41、塗装ヘッド30などが図示した形状に限定されないことは言うまでもない。
【0060】
図7Aに示すように、塗装ヘッド30の長手方向に垂直な方向である短手方向を主走査方向として塗装を行うと、長手方向が主走査方向に対して左右方向に延びることになる。この状態では、一度の塗装サイクルで大きな面積を塗装することができる反面、塗装ヘッド30を、特に下方面47に追従させることが難しい。よって、ルーフレール41の斜め上方面においては、塗装ヘッド30はBピラー45などの障害物の影響を受けないため、塗装ヘッド30の吐出面と被塗物CMとの距離L1を比較的小さくでき、解像度を高く保つことができる。
【0061】
一方、同じ塗装ヘッド30の吐出面であっても、ルーフレール41の下方面47では、ルーフレール41の上方面を塗装するときと同じ角度では、塗装ヘッド30の吐出面と被塗物CMとの距離L2は大きくなり、所望の解像度を維持することが難しい。
【0062】
そのため、塗装ヘッド30を図7Aの実線の状態から徐々に紙面上時計回りに回動させていき、破線に示す状態まで回動させることで塗装ヘッド30と被塗物CMとの距離をL2からL1まで近づけることが必要であるが、これにより、塗装ヘッド30はBピラー45などの障害物に干渉しやすくなってしまう。
【0063】
また、塗装ヘッド30を回動させたことで、塗装ヘッド30内での圧力変動(水頭圧差)が大きくなり、それによって、ノズル32から液滴が吐出しなくなる可能性がある。
【0064】
図7Bは、図7Aの破線で示す状態の塗装ヘッド30を傾斜制御によって傾斜させた状態を示す。図7Bでは、塗装ヘッド30の長手方向が主走査方向になっているため、図7Bの紙面上に示されるのは塗装ヘッド30の短手方向の側面である。この場合、ルーフレール41の下方面47を塗装するために、塗装ヘッド30を下方に回り込ませたとしても、塗装ヘッド30と被塗物CMであるルーフレール41との距離L3を比較的小さくすることができる。また、図7Aの破線で示される塗装ヘッド30の下端部付近と、図7Bの実線で示される塗装ヘッド30の下端部付近と、の相違からも明らかなように、塗装ヘッド30を傾斜制御することで、障害物に干渉することを避けながら、より精度よく下方面47を塗装することができる。さらに、塗装ヘッド30の回動量の低下などから、塗装ヘッド30内での圧力変動(水頭圧差)が小さくなり、ノズル32の不吐出といった不具合を低減させることができる。
【0065】
[ノズル配列と傾斜角度]
次に、図8図11を参照しながら、ノズル配列と適切な傾斜角度との関係について説明する。図8は、本実施形態に係る塗装ロボット10の第1塗装ヘッドからの着弾形態を傾斜制御の有無に応じて簡易的に示す説明図である。図9は、本実施形態に係る塗装ロボット10の第1塗装ヘッドの傾斜制御の有無が塗装解像度に与える影響を示す説明図である。図10は、本実施形態に係る塗装ロボット10の第2塗装ヘッドからの着弾形態を傾斜制御の有無に応じて簡易的に示す説明図である。図11は、本実施形態に係る塗装ロボット10の第2塗装ヘッドの傾斜制御の有無が塗装解像度に与える影響を示す説明図である。
【0066】
ここからは、本実施形態の塗装ヘッド30を、第1塗装ヘッドと第2塗装ヘッドの2種類に分け、図8及び図9において第1塗装ヘッドを用いて説明し、図10及び図11において第2塗装ヘッドを用いて説明する。第1塗装ヘッドと第2塗装ヘッドとの違いは、ヘッド内に一定の規則に従って配設される塗料吐出ノズル32のノズル配列である。
【0067】
図8及び図9における紙面は、第1塗装ヘッド又は第2塗装ヘッドを停止させた状態で塗料を着弾させた様子を示している。図9及び図10における紙面は、第1塗装ヘッド又は第2塗装ヘッドを主走査方向に移動させながらa方向のゼロにおける軸上で塗料を着弾させた様子を示している。
【0068】
初めに、図8及び図9を参照しながら、第1塗装ヘッドについて説明する。第1塗装ヘッドは、白丸で示すように、a方向に所定のピッチで整列するノズル列33を有する。また、b方向に隣接する2つのノズル列33は、a方向に隣接するノズル32のピッチの半分だけ互い違いにa方向にずれている。
【0069】
なお、実際の吐出面には、a方向およびb方向に、図示した液滴のドットよりも多数の液滴のドットを吐出するように、多数のノズル32が配列されているが、理解の容易化のため、図8は、左右に5個のノズル32からなる2列のノズル列33のみを示している。
【0070】
図8に示す状態において、紙面右方向を主走査方向、つまり塗装を行う方向とした場合、図8において白丸で示す各ノズル32が図9のa方向ゼロにおける軸上でのみ塗料を吐出すると、図9のb方向に沿って対称な2カ所(±0.26付近)に白丸が着弾する。これを省略しているすべてのノズル32で行うと、塗装解像度は大幅に低下することになる。
【0071】
そこで、例えば、傾斜制御によって、第1塗装ヘッドを反時計回りに40度傾斜させた場合について考える。第1塗装ヘッドを図8において白丸がすべて反時計回りに40度回動するように傾斜させると、黒丸は図8に示すように、a方向からもb方向からも40度傾斜した状態となる。その後、第1塗装ヘッドを主走査方向に移動させる。図9において、先ほどと同様にa方向ゼロの軸上でのみ塗料を吐出すると、図9のa方向ゼロの軸上に沿ってb方向に均等に黒丸が着弾する。これを省略しているすべてのノズル32で行うと、塗装解像度は大きくは低下せず、塗装解像度の低下を抑制することができる。
【0072】
次に、図10及び図11を参照しながら、第2塗装ヘッドについて説明する。
【0073】
第2塗装ヘッドは、白丸で示すように、b方向は略ゼロでa方向に所定のピッチで整列するノズル列33を有する。また、このノズル列33は、b方向には略ゼロであるが、わずかに傾斜しており、a方向及びb方向がゼロである原点を中心として点対称に配置される。
【0074】
なお、実際の吐出面には、a方向およびb方向に、図示した液滴のドットよりも多数の液滴のドットを吐出するように、多数のノズル32が配列されているが、理解の容易化のため、図10はb方向略ゼロの軸上左右に10個のノズル32からなる1列のノズル列33のみを示している。
【0075】
図10に示す状態において、紙面右方向を主走査方向とした場合、白丸で示すノズル32が図11のa方向ゼロにおける軸上で塗料を吐出すると、図11のb方向ゼロ付近に集中して白丸が着弾する。これを省略しているすべてのノズル32で行うと、塗装解像度は大幅に低下することになる。
【0076】
そこで、例えば、傾斜制御によって、第2塗装ヘッドを時計回りに70度傾斜させた場合について考える。この状態では、図10において白丸がすべて時計回りに70度傾斜させると黒丸となる。その後、第2塗装ヘッドを主走査方向に移動させる。図11において、先ほどと同様にa方向ゼロの軸上で塗料を吐出すると、図11のa方向ゼロの軸上であって、b方向に均等なピッチで黒丸が着弾する。これを省略しているすべてのノズル32で行うと、塗装解像度は大きくは低下せず、塗装解像度の低下を抑制することができる。
【0077】
上記の図9および図11における黒丸のように、ノズル列33における各ノズル間の距離がb方向に均等になれば塗装解像度の大幅な低下を抑制することができる。つまり、塗装解像度が許容解像度以上となる傾斜角度は、あるノズル列33における隣接する各ノズル間の距離がb方向に均等となるような、前記塗装ヘッドの傾斜角度であるといえる。
【0078】
このように、塗装解像度は、塗装ヘッド30の傾斜角度だけで規定することはできない。すなわち、使用している塗装ヘッド30の種類によってノズル配列が異なるため、各塗装ヘッド30に、それぞれ塗装解像度の低下を抑制できる傾斜角度範囲が決まっていることになる。
【0079】
つまり、図3のフローチャートにおける、ステップS3において、「許容解像度は、要求スペックを満たすことができる程度の解像度であり、予め実験などによって定めておく。」と述べたように、塗装ヘッド30ごとに傾斜角度と、塗装解像度との関係を規定しておくことが必要である。そして、塗装ヘッド30の先に障害物がある場合には、現在使用している塗装ヘッド30における塗装解像度の低下を抑制できる傾斜角度を演算することになる。
【0080】
[傾斜制御の効果実例]
塗装ヘッドの傾斜制御による塗装解像度の変化について説明する。
【0081】
図12は、塗装ヘッド30を用いてルーフレール41を塗装した後の状態を示している。黒い部分が被塗物CMであり、グレーの部分は塗装対象外部分である。図12では、黒い部分に、白い線スジ46ができており、これが塗装によって塗膜が形成されなかった部分である。この部分は、塗装ヘッド30からは奥まった所に配置されるため、塗装ヘッド30と被塗物CMとの間の距離を縮めることが難しい。塗装距離が延びたことにより、塗装品質が低下したと考えられる。
【0082】
図13は、塗装ヘッド30を用いて傾斜制御を行ってルーフレール41を塗装した後の状態を示している。図12と見る角度は異なるが、塗装ムラは生じておらず、許容される塗装解像度を実現できているといえる。
【0083】
[効果]
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0084】
塗料を吐出する複数のノズル32から構成される複数のノズル列33を有し、所定方向に移動しながら被塗物CMを塗装する長尺状の塗装ヘッド30と、塗装ヘッド30を先端に装着すると共に塗装ヘッド30を所望の位置へ移動させるロボットアーム23の作動を制御するアーム制御部2と、塗装ヘッド30の傾斜を制御するヘッド制御部6と、を備え、ヘッド制御部6は、塗装ヘッド30の移動方向が塗装ヘッド30の短手方向から長手方向となるまでの間で塗装ヘッド30を傾斜させる傾斜制御を実行する。
【0085】
これにより、塗装ヘッド30を障害物への干渉を防止しながら塗装を継続可能な傾斜角度に傾斜させることができる。よって、ノズル面を十分に接近させることができない箇所においても塗装品質を保つことができる。
【0086】
また、本実施の形態では、塗装ヘッド30の移動中に、被塗物CMの形状に沿って塗装ヘッド30が追従するように傾斜制御が実行される。
【0087】
これにより、塗装ヘッド30を被塗物CMの形状に沿って追従するように塗装ヘッド30が傾斜するので、被塗物CMの形状が塗装ヘッド30に近づく部分においても、衝突せずに塗装を行うことができる。よって、後に、被塗物CMの形状が塗装ヘッド30に近づく部分だけ別個に塗装を行う場合と比べてサイクルタイムを短縮することができる。
【0088】
また、本実施の形態では、ヘッド制御部6は、塗装ヘッド30のノズル列33の配列に基づいて塗装解像度が所定の許容解像度以上となる塗装ヘッド30の傾斜角度を演算し、その演算結果に基づいて塗装ヘッド30の傾斜制御を実行する。
【0089】
これにより、塗装ヘッド30の障害物への干渉を防止するために塗装ヘッド30を傾斜させた際に、解像度の低下を防止することができる。
【0090】
また、本実施の形態では、ヘッド制御部6は、塗装解像度が許容解像度以上となる塗装ヘッド30の傾斜角度が存在しないとき、被塗物CMを複数回塗装する。
【0091】
これにより、塗装解像度を許容解像度以上にできない場合であっても、被塗物CMを複数回塗装することで、結果として許容解像度以上にすることができる。
【0092】
また、本実施の形態では、ヘッド制御部6は、塗装ヘッド30の移動方向に対して垂直な方向に隣接する、ノズル列33における各ノズル32間の距離が均等になるように塗装ヘッド30の傾斜角度を演算し、その演算結果に基づいて傾斜制御を実行する。
【0093】
これにより、塗装ヘッド30を移動させると、移動方向に対して垂直な方向にノズル32が整列するので、解像度の低下を防止することができる。
【0094】
また、本実施の形態では、ヘッド制御部6は、塗装ヘッド30と障害物との干渉を避けるために必要な塗装ヘッド30の傾斜角度範囲を演算し、傾斜角度範囲内で最も距離が均等になるように塗装ヘッド30の傾斜角度を演算する。
【0095】
これにより、より精度よく障害物との干渉を避けながら塗装ヘッド30の傾斜角を演算することができるので、より確実に干渉を防止しながら、解像度の低下を防止することができる。
【0096】
また、本実施の形態では、被塗物CMは車体FRである。
【0097】
これにより、塗装ヘッド30が干渉する部位の多い車体FRへの塗装であっても、塗装部位の解像度の低下を防止することができる。
【0098】
上述した実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以上の実施の形態で示される数値、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態の順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、各図は、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0099】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0100】
例えば、本実施形態のステップS2において、主制御部1は、障害物を回避可能な傾斜角度を演算するため、傾斜角度と障害物との距離との関係を実験によって予め求めておいて記憶部4に記憶しておいてもよいが、ロボットの軌跡シミュレーションと併せて液滴の着弾位置もシミュレーションして割り出し、所望の解像度で塗装可能か(S3、S4)を検討しながら傾斜角度を決定することが好ましい。
【0101】
また、本実施形態では、図7を用いて、塗装ヘッド30の傾斜制御時の動作を簡易的に説明したが、塗装ヘッド30の動作はロボットティーチングに基づく制御によって行われてもよい。
【0102】
さらに、本実施形態では、傾斜制御によって塗装を行うとき(S2~S5)、すなわち、塗装ヘッド30を所定角度だけ傾斜させた状態で塗装を行うとき、ノズル形成面における塗料を吐出するエリアを角度に応じて設定してもよいし、傾斜制御のときはすべてのノズル32から吐出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0103】
2 アーム制御部
6 ヘッド制御部
10 塗装ロボット
23 ロボットアーム
30 塗装ヘッド
32 ノズル
33 ノズル列

【要約】
【課題】ノズル面を十分に接近させることができない箇所においても塗装品質を保つことができる塗装ロボット10を提供する。
【解決手段】塗料を吐出する複数のノズル32から構成される複数のノズル列33を有し、所定方向に移動しながら被塗物CMを塗装する長尺状の塗装ヘッド30と、塗装ヘッド30を先端に装着すると共に塗装ヘッド30を所望の位置へ移動させるロボットアーム23の作動を制御するアーム制御部2と、塗装ヘッドの傾斜を制御するヘッド制御部6と、を備え、ヘッド制御部6は、塗装ヘッド30の移動方向が塗装ヘッド30の短手方向から長手方向となるまでの間で塗装ヘッド30を傾斜させる傾斜制御を実行する。
【選択図】図3

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13