(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】経皮吸収促進装置
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
A61M37/00
(21)【出願番号】P 2024058684
(22)【出願日】2024-04-01
(62)【分割の表示】P 2020098294の分割
【原出願日】2020-06-05
【審査請求日】2024-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000114628
【氏名又は名称】ヤーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 岩男
(72)【発明者】
【氏名】脇本 研一
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-501809(JP,A)
【文献】特表2010-526589(JP,A)
【文献】特表2002-515786(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0207051(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0318853(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外用物の経皮吸収を促す経皮吸収促進装置であって、
第1の発振部と、第2の発振部と、皮膚への接触面を有する接触部とを備え、
前記第1の発振部は、第1の周波数の音波又は超音波を第1の方向に伝搬可能に構成され
るとともに、
前記音波又は超音波を伝搬する媒体を介して前記接触部に対して固定され、
前記第2の発振部は、前記第1の周波数よりも高い第2の周波数の超音波を第2の方向に伝搬可能に構成され
るとともに、
前記接触部に対して固定され、
前記接触部の前記接触面は、前記第1の方向と前記第2の方向との交点を含む位置に配設される
経皮吸収促進装置。
【請求項2】
請求項1に記載の経皮吸収促進装置において、
前記媒体は、長尺状のホーンを含み、前記第1の方向は、前記ホーンの長手方向である
経皮吸収促進装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮吸収促進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
外用薬や化粧品等は、経皮吸収により人体に吸収される。これら外用薬や化粧品等には、皮膚に塗るだけで経皮吸収するものもあるが、経皮吸収を促さなければ人体に吸収されないものもある。このため、経皮吸収を促進する様々な方法が提案されている。
【0003】
経皮吸収を促す方法には、ソノフォレシス(超音波導入)と称される技術があり、当該技術は、皮膚に物理的な外傷を与えず、熱損傷等も与えないものとして知られている。また、ソノフォレシスにおいては、20kHzの超音波と1MHzの超音波とを同時に照射することで経皮吸収効果を向上させることが知られている。
【0004】
なお、複数周波数の音波又は超音波を組み合わせたスキンケア装置も提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、外用薬や化粧品等を塗布する範囲は、人体の様々な部位に及ぶ。このため、経皮吸収を促進させるための装置は、取り扱いが容易で、把持することも容易であることが望まれる。
【0007】
また、経皮吸収を促す皮膚の面積が小さい場合であっても、複数の周波数による経皮吸収促進の効果を向上させ得ることが望まれる。
【0008】
本発明では上記事情を鑑み、取り扱いの容易な経皮吸収促進装置を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、外用物の経皮吸収を促す経皮吸収促進装置であって、第1の発振部と、第2の発振部と、接触部とを備え、前記第1の発振部は、第1の周波数の音波又は超音波を第1の方向に伝搬可能に構成され、前記第2の発振部は、前記第1の周波数よりも高い第2の周波数の超音波を第2の方向に伝搬可能に構成され、前記接触部は、皮膚への接触面を有し、前記第1の方向と前記第2の方向との交点を含む位置に配設される経皮吸収促進装置が提供される。
【0010】
本発明の一態様によれば、音波又は超音波の伝搬方向に応じて効率よく経皮吸収を促進させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】経皮吸収促進装置の基本的な構成を説明するための図である。
【
図2】経皮吸収促進装置11の外観を示す斜視図である。
【
図3】経皮吸収促進装置11の外観を示す正面図である。
【
図4】経皮吸収促進装置11の外観を示す上面図である。
【
図5】経皮吸収促進装置11の外観を示す左側面図である。
【
図6】経皮吸収促進装置11の外観を示す右側面図である。
【
図8】接触面141が円形の場合の経皮吸収促進装置11の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0013】
1.基本構成
図1は、経皮吸収促進装置の基本的な構成を説明するための図である。同図に示すように、外用物の経皮吸収を促す経皮吸収促進装置1は、第1の発振部2と、第2の発振部3と、接触部4とを備える。
【0014】
第1の発振部2は、発振することで第1の周波数の音波又は超音波を生成し、生成した音波又は超音波を第1の方向に伝搬させる。第1の方向は、図中の破線矢印Lが示す方向であり、接触部4を通過する方向である。
【0015】
第2の発振部3は、発振することで第1の周波数よりも高い第2の周波数の超音波を生成し、生成した超音波を第2の方向に伝搬させる。第2の方向は、図中の破線矢印Hが示す方向であり、接触部4を通過する方向である。
【0016】
接触部4は、皮膚への接触面を有する。この接触面は、接触部4のうち、第1の発振部2及び第2の発振部3と対向する面の反対側の面である。また、接触部4は、第1の方向と第2の方向との交点を含む位置に配設される。
【0017】
この経皮吸収促進装置1では、第1の方向と第2の方向とのなす角θが鋭角となるように、第1の発振部2と、第2の発振部3と、接触部4とのそれぞれの位置関係が決定される。
【0018】
また、経皮吸収促進装置1では、第1の発振部2と接触部4の接触面との距離DLが、第1の周波数の音波又は超音波の半波長の整数倍であり、第2の発振部3と接触部4の接触面との距離DHが、第2の周波数の音波又は超音波の半波長の整数倍である。
【0019】
2.経皮吸収促進装置の構成例
次に、
図1に示した経皮吸収促進装置1の基本的な構成を有する経皮吸収促進装置11について説明するが、まず、経皮吸収促進装置11の外観について説明する。
図2は、経皮吸収促進装置11の外観を示す斜視図である。また、
図3は、経皮吸収促進装置11の外観を示す正面図である。なお、経皮吸収促進装置11は、特に正面を定めているわけではないため、ここでは、任意の面を正面としている。
図4は、経皮吸収促進装置11の外観を示す上面図である。また、
図5は、経皮吸収促進装置11の外観を示す左側面図である。なお、
図5における破線は、参考のために記したものであり、当該破線は実在するものではない。
図6は、経皮吸収促進装置11の外観を示す右側面図である。
【0020】
図2から
図6に示すように、経皮吸収促進装置11は、第1の収容部12と、第2の収容部13と、接触部14と、ホーン15とを有している。
【0021】
第1の収容部12は、
図1に示した第1の発振部2を収容する。なお、外観からは第1の発振部2を視認することはできない。
【0022】
第2の収容部13は、
図1に示した第2の発振部3を収容する。なお、外観からは第2の発振部3を視認することはできない。
【0023】
接触部14は、第1の収容部12に収容されている第1の発振部2から伝搬された音波又は超音波と、第2の収容部13に収容されている第2の発振部3から伝搬された超音波を皮膚に照射する部分であり、皮膚と接触させるための接触面141を有している。この接触面141は、平面を形成している。
【0024】
ホーン15は、第1の収容部12に収容されている第1の発振部2が生成した音波又は超音波を伝搬する媒体である。
【0025】
また、接触部14及びホーン15は、ステンレス、アルミニウム、エポキシ樹脂、シリコン等を用いて形成されるもので、いずれも、音波又は超音波を伝搬する媒体となりうるものである。また、接触部14及びホーン15をステンレスやアルミニウムといった導電体で形成した場合、経皮吸収促進装置11をイオントフォレシス(イオン導入)の際の電極としても利用することができる。
【0026】
続いて、経皮吸収促進装置11の構成について説明する。
図7は、経皮吸収促進装置11の断面図である。同図に示すように、経皮吸収促進装置11は、第1の収容部12に、圧電素子21、電極22、電極23、電極24、絶縁材25、絶縁材26、バックマス27及びボルト28を収容している。これらは、第1の発振部2を構成するものである。また、経皮吸収促進装置11は、第2の収容部13に、圧電素子31と絶縁材32を収容している。これらは、第2の発振部3を構成するものである。
【0027】
第1の収容部12に収容される第1の発振部2は、圧電素子21、電極22、電極23、電極24、バックマス27及びボルト28により構成されるボルト締めランジュバン型振動子(BLT)である。この第1の発振部2は、電極22と電極23の間に所定の電圧を印加することで、第1の周波数で発振する。なお、電極22と電極24は、常に同電位となるように、電気的に接続されている。第1の周波数は、100kHz以下であることが望ましく、例えば、20kHzである。第1の発振部2を20kHzで発振させる場合、電極22と電極23の間には、例えば、40V、20kHzの電圧が、図示しない電圧供給部により印加される。
【0028】
また、絶縁材25により、電極22とホーン15とは電気的に絶縁され、絶縁材26により電極24(バックマス27)とボルト28とは電気的に絶縁されている。これにより、ボルト28が嵌入されているホーン15は、電極22及び電極24と電気的に絶縁され、結果として、第1の発振部2と接触部14とは、電気的に絶縁される。なお、ボルト28の材質が絶縁電圧の高いものである場合には、絶縁材26を省略することができる。
【0029】
電極23と接触面141との距離DLは、第1の発振部2により生成される音波又は超音波の半波長の整数倍となる。例えば、ホーン15及び接触部14の材質がステンレスである場合、ステンレスを伝搬する音速が5660m/sであるとすれば、20kHzの音波又は超音波の波長は283mmであるから、距離DLは、141.5mm、283mm、424.5mm等となる。また、ホーン15及び接触部14の材質がアルミニウムである場合、アルミニウムを伝搬する音速が6380m/sであるとすれば、20kHzの音波又は超音波の波長は319mmであるから、距離DLは、159.5mm、319mm、478.5mm等となる。
【0030】
第2の収容部13に収容される第2の発振部3は、圧電素子31と絶縁材32により構成される。圧電素子31は、例えば、セラミック圧電素子であり、圧電素子31と接続されている図示しない電極間に所定の電圧を印加することで、第2の周波数で発振する。第2の周波数は、第1の周波数よりも高い周波数であり、例えば、1MHzである。第2の発振部3を1MHzで発振させる場合、図示しない電極間には、例えば、40V、1MHzの電圧が、図示しない電圧供給部により印加される。
【0031】
また、絶縁材32により、圧電素子31と接触部14とは電気的に絶縁されている。これにより、第2の発振部3と接触部14とは、電気的に絶縁される。
【0032】
圧電素子31と接触面141との距離DHは、第2の発振部3により生成される超音波の半波長の整数倍となる。例えば、接触部14の材質がステンレスである場合、ステンレスを伝搬する音速が5660m/sであるとすれば、1MHzの超音波の波長は5.66mmであるから、距離DHは、2.83mm、5.66mm、8.49mm等となる。また、接触部14の材質がアルミニウムである場合、アルミニウムを伝搬する音速が6380m/sであるとすれば、1MHzの超音波の波長は6.38mmであるから、距離DHは、3.19mm、6.38mm、19.14mm等となる。
【0033】
なお、距離DLは、第1の周波数の音波又は超音波の半波長の整数倍であり、距離DHは、第2の周波数の超音波の半波長の整数倍である旨を説明したが、ここでの整数は両者が同じものである必要はない。したがって、距離DLを第1の周波数の音波又は超音波の半波長の1倍である141.5mmとし、距離DHを第2の周波数の音波の半波長の2倍である6.38mmとすることが可能である。
【0034】
また、第1の発振部2から接触面141へ伝搬される音波又は超音波の伝搬方向と、第2の発振部3から接触面141へ伝搬される超音波の伝搬方向とがなす角θは、鋭角であり、例えば、30度から60度、具体的には、30度、35度、40度、45度、50度、55度、60度である。また、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内、例えば、42度や38.9度であってもよい。もちろん、20度、80度であってもよい。
【0035】
ところで、接触部14の接触面141は、平面であれば、その形状は任意であり、方形以外でも、例えば、円形や楕円形であってもよい。この場合、経皮吸収促進装置11の外観は、例えば、
図8に示すようになる。
図8は、接触面141が円形の場合の経皮吸収促進装置11の外観を示す斜視図である。
【0036】
4.その他
本発明は、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記経皮吸収促進装置において、前記第1の方向と前記第2の方向とのなす角が鋭角である経皮吸収促進装置。
前記経皮吸収促進装置において、前記第1の発振部と前記接触面との距離が、前記第1の周波数の音波又は超音波の半波長の整数倍である経皮吸収促進装置。
前記経皮吸収促進装置において、前記第2の発振部と前記接触面との距離が、前記第2の周波数の超音波の半波長の整数倍である経皮吸収促進装置。
前記経皮吸収促進装置において、前記第1の周波数は、20kHzである経皮吸収促進装置。
前記経皮吸収促進装置において、前記第2の周波数は、1MHzである経皮吸収促進装置。
前記経皮吸収促進装置において、前記接触部は、導電体である経皮吸収促進装置。
前記経皮吸収促進装置において、前記第1の発振部と前記接触部とは、電気的に絶縁され、前記第2の発振部と前記接触部とは、電気的に絶縁される経皮吸収促進装置。
前記経皮吸収促進装置において、前記接触面は、円形である経皮吸収促進装置。
もちろん、この限りではない。
【符号の説明】
【0037】
1 :経皮吸収促進装置
2 :第1の発振部
3 :第2の発振部
4 :接触部
11 :経皮吸収促進装置
12 :第1の収容部
13 :第2の収容部
14 :接触部
15 :ホーン
21 :圧電素子
22 :電極
23 :電極
24 :電極
25 :絶縁材
26 :絶縁材
27 :バックマス
28 :ボルト
31 :圧電素子
32 :絶縁材
141 :接触面