(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240902BHJP
【FI】
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2024061536
(22)【出願日】2024-04-05
【審査請求日】2024-04-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594172271
【氏名又は名称】富士フイルムシステムサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 道裕
(72)【発明者】
【氏名】大杉 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】馬石 直登
【審査官】佐藤 光起
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-124759(JP,A)
【文献】特開2001-184419(JP,A)
【文献】特開2010-277071(JP,A)
【文献】特開2008-084096(JP,A)
【文献】特開2014-182042(JP,A)
【文献】特開2016-126358(JP,A)
【文献】特開2021-107683(JP,A)
【文献】特開2000-309253(JP,A)
【文献】国際公開第2017/014288(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が情報を
一つの単位にまとめて記録可能な
複数のカードを
作成する作成部と、
被害の程度を調査する対象となる家屋
を構成する部位ごとに
、複数の被害情報の各々を前記複数の
カードに
それぞれ記録
し、前記複数のカードに前記部位の基礎となる量を定義する基礎量情報を対応付けて記録する記録部と、を備える、
情報処理装置。
【請求項2】
記録対象となる前記カードを示す対象カードに対応する対象カード画像を表示する表示部と、
前記対象カード画像が選択されたことに応じて、
選択された前記対象カードに記録する前記被害情報の入力操作を受け付ける受付部と、を更に備える、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記被害情報は、被害箇所を定義する被害箇所情報を含む、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記家屋の図面とメッシュ状のマス目と、を重畳した重畳画像を表示し、
前記受付部は、前記被害箇所を定義する前記マス目の選択操作を受け付ける、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記被害情報は、前記被害箇所における損傷程度を示す損傷程度情報を更に含む、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記被害箇所情報及び前記損傷程度情報に基づいて、前記部位における被害の程度を算出する算出部を更に備える、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記算出部は、前記基礎量情報に更に基づいて、前記部位における被害の程度を算出する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記被害情報は、被害箇所を撮影した撮影データを含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記表示部は、(1)前記対象カード画像を表示する第1の表示領域と、(2)前記入力操作を受け付けるための表示領域であって、少なくとも前記家屋の図面が表示される第2の表示領域と、(3)前記対象カードにそれぞれ記録された前記被害情報に基づいて、前記部位における被害の程度を算出した結果を表示する第3の表示領域と、を同一の画面に表示する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項10】
コンピュータが、
各々が情報を
一つの単位にまとめて記録可能な
複数のカードを
作成することと、
被害の程度を調査する対象となる家屋
を構成する部位ごとに
、複数の被害情報の各々を前記複数の
カードに
それぞれ記録
し、前記複数のカードに前記部位の基礎となる量を定義する基礎量情報を対応付けて記録することと、を備える、
情報処理方法。
【請求項11】
コンピュータに、
各々が情報を
一つの単位にまとめて記録可能な
複数のカードを
作成する処理と、
被害の程度を調査する対象となる家屋
を構成する部位ごとに
、複数の被害情報の各々を前記複数の
カードに
それぞれ記録
し、前記複数のカードに前記部位の基礎となる量を定義する基礎量情報を対応付けて記録する処理と、を実行させる、
情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「被災物に関する情報を収集管理する管理サーバ装置と、表示手段および写真撮影手段を有し、前記管理サーバ装置にネットワークを介して接続される携帯端末装置と、を含んで構成される。前記携帯端末装置において被災物の被害の程度の判断基準を指定する判断基準指定手段と、撮影された写真の画像データと、指定された被災物の被害の程度の判断基準とを含む被災物情報を前記携帯端末装置から前記管理サーバ装置に送信する被災物情報送信手段と、を備える。」と記載されている。
【0003】
特許文献2には、「被害調査支援システムは調査対象の被災家屋と属性情報が類似する家屋の調査情報を被害判定参考情報として抽出し、抽出した被害判定参考情報を、入力された調査情報と共にディスプレイに表示させる。これにより、ユーザは属性情報が類似する家屋の調査情報を参照して被災家屋の調査情報を入力することができ、属性情報が類似する家屋同士で調査結果がばらつくのを抑えることができる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-165906号公報
【文献】国際公開第2023/171481号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
対象物の調査にあたっては、対象物ごとの要件や調査内容の多様性等に起因して、様々な課題を抱えている。
【0006】
そこで、本開示では、対象物の調査を実施する調査員が使用する調査環境を提供するにあたり、少なくとも複雑さの解消又は時間の短縮に寄与することができる情報処理装置、情報処理方法、及び情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係る情報処理装置は、情報を記録可能なカードを、家屋を構成する要素を1つのグループとし、当該グループごとに作成する作成部と、被害の程度を調査する対象となる家屋における被害情報を、前記グループに含まれる、前記家屋を構成する部位ごとに複数の前記カードに記録する記録部と、を備える。
【0008】
第2態様に係る情報処理装置は、第1態様に係る情報処理装置において、記録対象となる前記カードを示す対象カードに対応する対象カード画像を表示する表示部と、前記対象カード画像が選択されたことに応じて、前記対象カードに記録する前記被害情報の入力操作を受け付ける受付部と、を更に備える。
【0009】
第3態様に係る情報処理装置は、第2態様に係る情報処理装置において、前記被害情報は、被害箇所を定義する被害箇所情報を含む。
【0010】
第4態様に係る情報処理装置は、第3態様に係る情報処理装置において、前記表示部は、前記家屋の図面とメッシュ状のマス目と、を重畳した重畳画像を表示し、前記受付部は、前記被害箇所を定義する前記マス目の選択操作を受け付ける。
【0011】
第5態様に係る情報処理装置は、第3態様に係る情報処理装置において、前記被害情報は、前記被害箇所における損傷程度を示す損傷程度情報を更に含む。
【0012】
第6態様に係る情報処理装置は、第5態様に係る情報処理装置において、前記被害箇所情報及び前記損傷程度情報に基づいて、前記部位における被害の程度を算出する算出部を更に備える。
【0013】
第7態様に係る情報処理装置は、第6態様に係る情報処理装置において、前記記録部は、前記カードに前記部位の基礎となる量を定義する基礎量情報を対応付けて記録し、前記算出部は、前記基礎量情報に更に基づいて、前記部位における被害の程度を算出する。
【0014】
第8態様に係る情報処理装置は、第1態様から第7態様のいずれか一つに係る情報処理装置において、前記被害情報は、被害箇所を撮影した撮影データを含む。
【0015】
第9態様に係る情報処理方法は、コンピュータが、情報を記録可能なカードを、家屋を構成する要素を1つのグループとし、当該グループごとに作成することと、被害の程度を調査する対象となる家屋における被害情報を、前記グループに含まれる、前記家屋を構成する部位ごとに複数の前記カードに記録することと、を備える。
【0016】
第10態様に係る情報処理プログラムは、コンピュータに、情報を記録可能なカードを、家屋を構成する要素を1つのグループとし、当該グループごとに作成する処理と、被害の程度を調査する対象となる家屋における被害情報を、前記グループに含まれる、前記家屋を構成する部位ごとに複数の前記カードに記録する処理と、を実行させる。
【0017】
第11態様に係る情報処理装置は、調査する対象となる対象物の図面とメッシュ状のマス目と、を重畳した重畳画像を表示する表示部と、前記重畳画像に対する前記マス目の選択操作を受け付ける受付部と、前記マス目にしたがって、前記対象物における部分領域を定義する領域情報、及び前記部分領域における箇所を定義する箇所情報を記録する記録部と、を備える。
【0018】
第12態様に係る情報処理装置は、第11態様に係る情報処理装置において、前記表示部は、前記重畳画像の拡大又は縮小が指示されたことに応じて、前記図面及び前記マス目を連動して拡大又は縮小する。
【0019】
第13態様に係る情報処理装置は、第12態様に係る情報処理装置において、前記記録部は、記録済みの前記領域情報及び前記箇所情報を、前記マス目の拡大又は縮小に連動して更新する。
【0020】
第14態様に係る情報処理装置は、第11態様に係る情報処理装置において、前記記録部は、前記箇所情報と関連付けて、前記箇所を評価した評価結果を記録する。
【0021】
第15態様に係る情報処理装置は、第11態様に係る情報処理装置において、前記記録部は、前記箇所情報と関連付けて、前記箇所を撮影した撮影データを記録する。
【0022】
第16態様に係る情報処理装置は、第11態様に係る情報処理装置において、前記記録部は、前記図面に含まれる複数の前記部分領域について、前記領域情報及び前記箇所情報を記録する。
【0023】
第17態様に係る情報処理装置は、第11態様から第16態様のいずれか一つに係る情報処理装置において、前記対象物は、被害の程度を調査する対象となる家屋である。
【0024】
第18態様に係る情報処理装置は、第17態様に係る情報処理装置において、前記部分領域は、前記家屋を構成する部位であり、前記箇所は、前記部位における被害箇所である。
【0025】
第19態様に係る情報処理方法は、コンピュータが、調査する対象となる対象物の図面とメッシュ状のマス目と、を重畳した重畳画像を表示することと、前記重畳画像に対する前記マス目の選択操作を受け付けることと、前記マス目にしたがって、前記対象物における部分領域を定義する領域情報、及び前記部分領域における箇所を定義する箇所情報を記録することと、を備える。
【0026】
第20態様に係る情報処理プログラムは、コンピュータに、調査する対象となる対象物の図面とメッシュ状のマス目と、を重畳した重畳画像を表示する処理と、前記重畳画像に対する前記マス目の選択操作を受け付ける処理と、前記マス目にしたがって、前記対象物における部分領域を定義する領域情報、及び前記部分領域における箇所を定義する箇所情報を記録する処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0027】
第1態様に係る情報処理装置によれば、被害情報がカードに紐づく被害として記録されるので、被害情報がどこに対する情報であるのか等、情報のトレーサビリティを高めることができ、以て、情報の登録、再呼び出し、削除、編集等を容易にすることができる。
【0028】
第2態様に係る情報処理装置によれば、被害情報とカードとをユーザが容易に紐付けすることができる。
【0029】
第3態様に係る情報処理装置によれば、各被害がどの位置にどの範囲に亘って発生しているかを記録することができる。
【0030】
第4態様に係る情報処理装置によれば、ユーザが直感的な入力操作により容易に被害箇所を定義することができる。
【0031】
第5態様に係る情報処理装置によれば、どの程度の被害が発生しているかを被害箇所ごとに記録することができる。
【0032】
第6態様に係る情報処理装置によれば、記録された情報に基づいて、被害の程度の計算を自動化することができる。
【0033】
第7態様に係る情報処理装置によれば、どの程度の被害が基礎量に対してどの程度の割合で発生しているかを計算することができる。
【0034】
第8態様に係る情報処理装置によれば、物的な証拠となるデータを被害箇所ごとに記録することができる。
【0035】
第9態様に係る情報処理方法によれば、第1態様に係る情報処理装置と同様の効果を奏する情報処理方法を提供することができる。
【0036】
第10態様に係る情報処理プログラムによれば、第1態様に係る情報処理装置と同様の効果を奏する情報処理プログラムを提供することができる。
【0037】
第11態様に係る情報処理装置によれば、ユーザが直感的な入力操作により容易に部分領域及び箇所を定義して図面上に記録することができる。
【0038】
第12態様に係る情報処理装置によれば、図面が拡大又は縮小された場合であっても、設定されたマス目のままユーザが部分領域及び箇所を定義することができる。
【0039】
第13態様に係る情報処理装置によれば、図面が拡大又は縮小された場合であっても、図面の表示と図面上の記録とを連動させることができる。
【0040】
第14態様に係る情報処理装置によれば、記録された箇所がどのような状態なのかを箇所ごとに記録することができる。
【0041】
第15態様に係る情報処理装置によれば、物的な証拠となるデータを箇所ごとに記録することができる。
【0042】
第16態様に係る情報処理装置によれば、対象物が複数の部分領域から構成される場合であっても、対象物の全体に亘って領域情報及び箇所情報を記録することができる。
【0043】
第17態様に係る情報処理装置によれば、家屋の調査に適用することができる。
【0044】
第18態様に係る情報処理装置によれば、被災した家屋の被害調査に適用することができる。
【0045】
第19態様に係る情報処理方法によれば、第12態様に係る情報処理装置と同様の効果を奏する情報処理方法を提供することができる。
【0046】
第20態様に係る情報処理プログラムによれば、第12態様に係る情報処理装置と同様の効果を奏する情報処理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】被害調査統合システム及び家屋被害調査アプリを用いた調査システムの全体像を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る情報処理装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る情報処理装置100の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】被害調査統合システムにおける申請受け付け画面の一例を示す図である。
【
図5】家屋被害調査アプリにおける基本情報入力画面の一例を示す図である。
【
図6】家屋被害調査アプリにおける図面登録画面の一例を示す図である。
【
図7】家屋被害調査アプリにおける記録方法選択画面の一例を示す図である。
【
図8】家屋被害調査アプリにおいて「カードに被害を記録」が選択された場合における調査画面の一例を示す図である。
【
図9】家屋被害調査アプリにおいて「図面に被害を記録」が選択された場合における調査画面の一例を示す図である。
【
図10】家屋被害調査アプリにおける図面調査画面の一例を示す図である。
【
図11】家屋被害調査アプリにおいて図面調整タブが選択されている場合における図面操作パネルエリアの一例を示す図である。
【
図12】家屋被害調査アプリにおいてマス目設定を変更した場合における被害記録図面表示エリアの遷移の一例を示す図である。
【
図13】家屋被害調査アプリにおいて被害記録図面を拡大させた場合における被害記録図面表示エリアの遷移の一例を示す図である。
【
図14】家屋被害調査アプリにおいて基礎量登録タブが選択されている場合における図面操作パネルエリアの一例を示す図である。
【
図15】家屋被害調査アプリにおいてペン描画モードで基礎量を登録した場合における被害記録図面表示エリアの遷移の一例を示す図である。
【
図16】家屋被害調査アプリにおいて消しゴムモードで基礎量の登録を解除した場合における被害記録図面表示エリアの遷移の一例を示す図である。
【
図17】家屋被害調査アプリにおいて被害を登録する場合における図面調査画面の一例を示す図である。
【
図18】家屋被害調査アプリにおける被害計算結果の一例を示す図である。
【
図19】家屋被害調査アプリにおいて屋根の被害点数を計算する場合における計算例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本開示は、任意の対象物の調査を実施する場合に、調査員が使用する調査環境を提供するものである。これより先、罹災証明発行に係る家屋被害調査(特に、建物内部の状況から判定する二次調査)において、調査を実施する自治体職員が使用する情報処理装置、及び情報処理装置上で動作する家屋被害調査アプリケーション(単に「アプリ」ともいう。)を例として本開示を説明することとする。
【0049】
本開示では、このような調査を実施するにあたって、効率的な情報の入力及び評価を可能とするための二つの機能について主に説明する。一つ目の機能は、家屋における被害情報を、家屋を構成する部位ごとに、複数のカードにそれぞれ記録する機能である。二つ目の機能は、対象物の図面にメッシュ状のマス目を重畳表示して、対象物における部分領域を定義する情報、及び部分領域における箇所を定義する情報を記録する機能である。
【0050】
本開示を説明するに先立ち、家屋被害調査の課題について説明する。一点目の課題としては、業務が難しいことが挙げられる。例えば、木造の場合と非木造の場合とでは調査すべき部位や判定基準(壊れ方の判定)が異なる。また、非木造の場合、家屋の構造(例えば、ラーメン構造か否か、柱や梁が確認できるか否か等)によって用いる判断基準が異なる。また、地震や風害等の場合、水害のように一様に水につかる被害ではないため、屋根、外壁、内壁、床等で部位ごとに壊れ方が多種多様である。それにもかかわらず、被害度の正確な判定には経験が必要だが、経験者が少ない。また、同じようなひびや剥離があっても、モルタルとボード、タイルやコンクリートでは被害度判定が異なる。また、同じ外壁でも、どこからどこまでが耐力壁で、仕上や雑壁はどこまでか等を見分けて、被害度を判断する必要がある。
【0051】
二点目の課題としては、業務が複雑であることが挙げられる。被害度は0~5の6段階である。例えば、屋根の場合、その面積に対してどの被害度がどのくらいの割合で存在するかを計算し、内閣府の指針で示された点数表に当てはめる。また、その屋根や部位が、主要階とその他階で構成されている場合、その面積比に対して重み付け係数をかけて被害度を計算する。この際、重み付けを要する部位とそうでない部位とが混在する。また、面積割合で計算する部位と枚数で判断する部位と長さで判断する部位が混在する。また、非木造の場合、「屋根と雑壁・仕上」や「内部仕上と天井」等のように、別の構造の被害を構成比で判断しなければならない。また、設備については、面積でも枚数でも長さでもない壊れ方で判断する必要があるうえ、被害調査の対象となる設備とそうでない設備とが混在する。また、判断する調査部位ごとの被害度上限値が定められており、単なる積み上げの加算ではない。また、例えば、柱・基礎・傾斜・耐力壁の被害度のみで全壊判定をするなど、部位によっては、被害度が一定割合を超えるだけで被害判定が確定する。また、家屋の構造、使用されている部材、間取り等は一軒ごとに全て異なる。
【0052】
三点目の課題としては、専門性が求められることが挙げられる。家屋評価や建築などの専門知識がないと、調査の該当部位を正しく認識することができない。また、修理をする際に、被害を受けた場所単体で修繕や交換が可能なのか、もしくは、被害を受けた場所を含め部位全体の交換や修理が必要なのか、建築技法を理解していないと判断することができない。
【0053】
四点目の課題としては、調査に時間がかかることが挙げられる。調査にあたっては、部位ごとに被害箇所の長さや広さを測り、被害箇所を図面に記録する。また、被害度を判定する。また、被害箇所の写真を撮影する。このような作業を調査部位の壁面数、居室や間仕切りの裏表の全てに加え、設備や建具の全部に対して繰り返し行う。また、主要階とその他階の割合を屋根と床面積で記録する。また、集合住宅を一棟単位で調査する場合、全フロアで部位別に調査する。
【0054】
五点目の課題としては、帰庁してからも時間がかかることが挙げられる。部位ごとに基礎量(面積や長さや枚数)に対し、被害度別の占有率を図面や被害記録用紙から目で拾い出す。その占有率から被害度係数の点数を出して計算用表に記載する。主要階とその他階の面積割合を屋根と床面積で計算する。このようにして計算した構成割合を調査部位ごとに乗じ、主要階係数とその他階係数を乗じ、被害の重み付け計算をする。これを何度も確かめ算する。また、重み付けした値と重み付けをしなかった値とを比較し、点数の大きい方を被害度判定に採用する。また、計算結果と、調査票と、図面とをスキャンし、フォルダ格納ルールに従って電子データとして保管する。そのフォルダにデジカメで撮影した調査部位の写真を格納する。また、どこの家の調査をしたかや被害度を、地図または台帳に記録する。このような作業をその日に調査した件数分行う。
【0055】
六点目の課題としては、システム化が難しく、システム化する上での技術的難易度が高いことが挙げられる。ノートパソコンでは、立ち歩きの屋外作業には大きすぎて不向きである。スマートフォンでは、図面への被害記録をするには画面が小さすぎる。タブレット端末がサイズ的には最適だが、マウスが使えない。基本は指又はスタイラスペンの操作が原則である。図面の画像取り込み方法に柔軟性があり、処理がシンプルでないと使えない。図面がない場合もあるので、現場で簡単な図面がシステムで書けなければならず、書くだけであれば紙に近い操作性が必要である。また、災害時の業務なので、ソフトを最新版に保つメンテナンスが必要であるが、これにはコストがかかる。また、図面上に記録する被害記録は、線(壁等)、点(基礎等)、面(屋根等)等を使い分ける必要がある。また、被害記録の一環として撮影する写真は、図面上の被害記録と連動していなければならない。また、いつでも再呼び出し、削除、再登録、再撮影等ができなければならない。
【0056】
このように、例えば家屋被害調査を例に挙げてみても、様々な課題を抱えていることが分かる。この中で、業務の難しさや専門性の要求等を変えることは困難であるが、複雑さや時間がかかる点は大幅に解消できる可能性がある。本開示の技術は、このような対象物の調査において、少なくとも複雑さの解消又は時間の短縮に寄与することを目的とする。
【0057】
以下、本開示の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において、同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0058】
図1は、被害調査統合システム及び家屋被害調査アプリを用いた調査システムの全体像を示す図である。
【0059】
本開示の調査システムでは、登録した図面に対して、各部位の被害箇所の記録を行う。そして、本開示の調査システムでは、記録された被害情報により各損傷程度の割合が自動で計算される。
【0060】
これを実現すべく、本図(a)で示すように、調査準備担当者は、被害の程度を調査する対象となる家屋の電子化した図面を、パソコン等を用いて被害調査統合システムに登録してよい。
【0061】
また、本図(b)で示すように、調査員は、家屋の紙の図面を撮影して取り込んでもよい。このように、(a)又は(b)のいずれかのタイミングにおいて、被害の程度を調査する対象となる家屋の図面が取り込まれてよい。
【0062】
次に、本図(c)で示すように、調査員は、取り込まれた図面を利用して、被害を記録する各階のシートを作成する。これにより、調査に必要な基本情報が登録されてよい。
【0063】
そして、本図(d)で示すように、調査員は、家屋被害調査アプリがインストールされたタブレット端末を用いて、登録されたシートに対して、各部位の被害箇所の記録を行う。より詳細には、(d1)において、調査員は、マス目を選択することで部位の基礎となる基礎量を登録する。また、(d2)において、調査員は、マス目を選択することで被害箇所を登録する。また、(d3)において、調査員は、損傷程度と撮影データを入力する。また、(d4)において、調査員は、被害点数を確認する。これにより、家屋被害調査アプリは、記録された被害情報から各損傷程度の割合を自動で計算する。
【0064】
最後に、本図(e)で示すように、承認担当者は、被害情報が記録された図面を見ながら調査結果を確認して承認する。(e)は調査後のタイミングであるので、承認担当者は、庁舎内のパソコン等から被害調査統合システムにアクセスして、承認作業を行ってよい。
【0065】
本開示の技術は、例えばこのような家屋被害調査アプリを提供し、調査員が調査現場において実行する作業の少なくとも一部、特に、(d1)~(d4)の作業を支援する技術である。これについて詳細に説明する。
【0066】
図2は、本実施形態に係る情報処理装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。上述の「タブレット端末」は、本開示の情報処理装置100の一例である。しかしながら、これに限定されるものではない。情報処理装置100は、スマートフォンやノートパソコン等、持ち運び可能な如何なる端末装置であってもよい。
【0067】
情報処理装置100は、プロセッサ101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、ストレージ104と、通信インタフェース105と、ユーザインタフェース106とを有する。これらの構成は、バス109を介して相互に通信可能に接続されている。
【0068】
プロセッサ101は、各種プログラムを実行し、各構成を制御する。ROM102は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM103は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ104は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム及び各種データを格納する。
【0069】
本実施形態に係る情報処理装置100においては、ROM102又はストレージ104に情報処理プログラムが格納されている。プロセッサ101は、ROM102又はストレージ104から情報処理プログラムを読み出し、RAM103を作業領域として実行することにより、情報処理プログラムにしたがった各構成の制御及び各種の演算処理を実行する。
【0070】
通信インタフェース105は、情報処理装置100が他の装置と通信するためのインタフェースである。ユーザインタフェース106は、情報処理装置100がユーザと情報をやりとりするための入出力インタフェースである。ユーザインタフェース106は、入力装置としてタッチパネル等を含み、出力装置としてモニタ等を含んでよい。
【0071】
図3は、本実施形態に係る情報処理装置100の機能構成の一例を示す図である。情報処理装置100は、作成部110と、表示部120と、受付部130と、記録部140と、算出部150と、を備える。これらの機能構成は、プロセッサ101が、ROM102又はストレージ104から情報処理プログラムを読み出し、RAM103に展開して実行することにより実現される。
【0072】
上述の二つの機能のうちの一つ目の機能を実現すべく、作成部110は、情報を記録可能なカードを、家屋を構成する要素を1つのグループとし、当該グループごとに作成してよい。ここで、単に「カード」とは、一以上の情報を一つの単位にまとめたもののことを本実施形態において呼称するものであり、情報がまとめられてさえいれば、視覚的に表示されているか否かは問わない。
【0073】
表示部120は、記録対象となるカードを示す対象カードに対応する対象カード画像を表示してよい。また、表示部120は、家屋の図面とメッシュ状のマス目と、を重畳した重畳画像を表示してよい。
【0074】
受付部130は、対象カード画像が選択されたことに応じて、対象カードに記録する被害情報の入力操作を受け付けてよい。また、受付部130は、被害箇所を定義するマス目の選択操作を受け付けてよい。
【0075】
記録部140は、被害の程度を調査する対象となる家屋における被害情報を、グループに含まれる、家屋を構成する部位ごとに複数のカードに記録してよい。この際、被害情報は、被害箇所を定義する被害箇所情報を含んでよい。また、被害情報は、被害箇所における損傷程度を示す損傷程度情報を更に含んでよい。また、被害情報は、被害箇所を撮影した撮影データを含んでよい。また、記録部140は、カードに部位の基礎となる量を定義する基礎量情報を対応付けて記録してよい。
【0076】
算出部150は、被害箇所情報及び損傷程度情報に基づいて、部位における被害の程度を算出してよい。この際、算出部150は、基礎量情報に更に基づいて、部位における被害の程度を算出してよい。
【0077】
上述の二つの機能のうちの二つ目の機能を実現すべく、表示部120は、調査する対象となる対象物の図面とメッシュ状のマス目と、を重畳した重畳画像を表示してよい。この際、表示部120は、重畳画像の拡大又は縮小が指示されたことに応じて、図面及びマス目を連動して拡大又は縮小してよい。
【0078】
受付部130は、重畳画像に対するマス目の選択操作を受け付けてよい。
【0079】
記録部140は、マス目にしたがって、対象物における部分領域を定義する領域情報、及び部分領域における箇所を定義する箇所情報を記録してよい。この際、記録部140は、図面に含まれる複数の部分領域について、領域情報及び箇所情報を記録してよい。また、記録部140は、記録済みの領域情報及び箇所情報を、マス目の拡大又は縮小に連動して更新してよい。また、記録部140は、箇所情報と関連付けて、箇所を評価した評価結果を記録してよい。また、記録部140は、箇所情報と関連付けて、箇所を撮影した撮影データを記録してよい。
【0080】
なお、対象物は、被害の程度を調査する対象となる家屋であってよい。また、部分領域は、家屋を構成する部位であり、箇所は、部位における被害箇所であってよい。
【0081】
このような機能部を備えた情報処理装置100が提供する図面を用いた調査について、家屋被害調査アプリの画面を例示しながら詳細に説明する。
【0082】
なお、図面を用いた調査は、災害種別、調査次数に依らず、図面を用いた調査が行えるように設定可能であってよい。
【0083】
図4は、被害調査統合システムにおける申請受け付け画面の一例を示す図である。申請受け付け画面には、符号410で示す図面連携タブが設けられている。調査準備担当者が、符号420で示すファイル選択ボタンを押下すると、ファイル選択ダイアログが表示される。この際の表示は、OS依存の画面であってよく、ファイルの表示方法はユーザ設定に従うものとする。調査準備担当者がファイルを選択することにより、取り込んだ図面データのファイル名及び画像イメージが表示される。選択されたファイルは、申請に紐づく図面データとして保存される。
【0084】
被害調査統合システムは、本開示の家屋被害調査アプリと協働するにあたり、例えばこのような要件が追加されてよい。次に、家屋被害調査アプリについて説明する。
【0085】
図5は、家屋被害調査アプリにおける基本情報入力画面の一例を示す図である。基本情報入力画面には、符号510で示すように、被害記録図面登録欄が設けられている。ここで、被害記録図面とは、各部位の被害を記録する図面であり、単に「図面」ともいう。被害記録図面登録欄を展開すると、符号520で示す名称入力欄、符号530で示す主要階/その他階選択ボタン、符号540で示す図面選択ボタン、符号550で示す削除ボタン、及び符号560で示す追加ボタンが表示される。調査員は、被害記録図面登録欄において、被害を記録する各階の図面の追加、削除、名称の設定、主要階又はその他階の設定を行うことができる。なお、各階の図面については、平面図を主としているが、梁調査等では一部立体図が求められる場合も存在する。調査員が図面選択ボタンを押下すると、次に示す図面登録画面が表示される。
【0086】
図6は、家屋被害調査アプリにおける図面登録画面の一例を示す図である。図面登録画面には、符号610で示すように、被害調査統合システムで読み込んだ図面データのファイル名及び画像イメージが表示される。また、図面登録画面には、符号620で示す追加ボタンが設けられている。調査員は、当該追加ボタンを押下することで、家屋被害調査アプリ内のファイルを追加で取り込むことができる。したがって、調査員は、調査開始時に紙の図面を撮影することにより電子化されたファイルを取り込むこともできる。次に、図面を用いた調査への切り替えと図面を用いた調査画面(「図面調査画面」ともいう)について説明する。調査員が基本情報入力→簡易調査→詳細調査の順に進めると、次に示す記録方法選択画面が表示される。
【0087】
図7は、家屋被害調査アプリにおける記録方法選択画面の一例を示す図である。外観以外の何れかの部位タブ(家屋を構成する複数の部位の中から調査部位を選択するタブ)が初めて選択された場合に、図面を用いた調査か、カードへの被害記録かどちらで調査するかを選択する画面が表示されてよい。なお、どちらを選択しても被害情報は最終的にはカードに記録されることになるが、ここでは、図面を介してカードに記録するか、カードに直接記録するかを選択する。
【0088】
図8は、家屋被害調査アプリにおいて「カードに被害を記録」が選択された場合における調査画面の一例を示す図である。調査画面には、符号810で示す「図面に被害を記録」に変更するボタンが設けられていてよい。
【0089】
図9は、家屋被害調査アプリにおいて「図面に被害を記録」が選択された場合における調査画面の一例を示す図である。調査画面には、符号910で示す「カードに被害を記録」に変更するボタンが設けられていてよい。
【0090】
図10は、家屋被害調査アプリにおける図面調査画面の一例を示す図である。図面調査画面は四つのエリアを含んでいる。一つ目のエリアは、符号1010で示す被害計算結果表示エリアである。当該エリアには、図面に記録した被害情報から算出された部位における被害の程度等が表示される。
【0091】
二つ目のエリアは、符号1020で示す図面操作パネルエリアである。当該エリアには、被害記録図面に対する各種操作を行うボタンが表示される。
【0092】
三つ目のエリアは、符号1030で示す被害記録図面表示エリアである。当該エリアには、選択された被害記録図面が表示される。なお、被害記録図面には、本図に示されるように、メッシュ状のマス目が重畳表示されてよい。これにより、調査員は、マス目を選択することで後述する基礎量及び被害箇所の位置や範囲を登録することができる。表示部120は、例えばこのようにして、調査する対象となる対象物、ここでは、被害の程度を調査する対象となる家屋の図面とメッシュ状のマス目と、を重畳した重畳画像を表示することができる。なお、ここでいう「重畳」とは、上下関係を問わないものとして解釈されてよい。すなわち、重畳画像は、図面の上にマス目が重ねられた画像であってもよいし、マス目の上に図面が重ねられた画像であってもよい。
【0093】
なお、被害記録図面表示エリアに表示する被害記録図面は、符号1020で示す図面操作パネルエリアに設けられた各種ボタン等により様々に調整することができる。これについては後述する。
【0094】
四つ目のエリアは、符号1040で示す被害カード表示エリアである。当該エリアには、各被害箇所の被害情報が記録された被害カード(単に「カード」ともいう)に対応したカード画像が表示される。なお、本図においては、一つの被害カードに対応した一つのカード画像のみが表示されている場合を一例として示しているが、当該エリアには、複数の被害カードに対応した複数のカード画像が表示されてよい。
【0095】
また、調査員は、符号1050で示す保存ボタンを押下することで、その時点までに記録した被害情報を保存することができる。保存ボタンが押下された後、処理結果が画面上に表示されてよい。
【0096】
また、調査員は、符号1060で示す閉じるボタンを押下することで、図面を用いた調査を終了し、図面調査画面を閉じることができる。この際、閉じるボタンが押下されたタイミングで保存されていないデータが存在する場合は、警告ダイアログが表示されてよい。
【0097】
図11は、家屋被害調査アプリにおいて図面調整タブが選択されている場合における図面操作パネルエリアの一例を示す図である。調査員は、符号1110で示す図面表示切替用のプルダウンにより、被害記録図面表示エリアに表示する被害記録図面を切り替えることができる。
【0098】
また、図面調整タブが選択されている場合、図面操作パネルエリアには、符号1120で示す図面選択ボタンが表示される。調査員は、図面選択ボタンを押下することで、被害記録図面表示エリアに表示する図面を変更することができる。
【0099】
被害記録図面は、図面操作パネルエリアに表示される各種ボタン等により、拡大、縮小、表示範囲の移動、及び方眼のマス目設定が行えるように構成されている。なお、「方眼のマス目」は、本開示の「メッシュ状のマス目」の一例である。調査員は、符号1130で示すマス目設定用のプルダウンにより方眼のマス目を選択することができる。
【0100】
図12は、家屋被害調査アプリにおいてマス目設定を変更した場合における被害記録図面表示エリアの遷移の一例を示す図である。本図においては、調査員がマス目設定を変更した場合における、被害記録図面表示エリアの遷移を示している。
【0101】
図13は、家屋被害調査アプリにおいて被害記録図面を拡大させた場合における被害記録図面表示エリアの遷移の一例を示す図である。本図においては、調査員が、図面の角をタップしながら拡大させたい方向に指をスライドさせることにより、被害記録図面を任意の大きさに拡大させた場合における、被害記録図面表示エリアの遷移を示している。なお、本図においては図面を拡大する場合を一例として示しているが、調査員は、同様の手法により図面を縮小させることもできる。表示部120は、例えばこのようにして、重畳画像の拡大又は縮小が指示されたことに応じて、図面及びマス目を連動して拡大又は縮小することができる。なお、調査員は、符号1140で示すズームバーにより、被害記録図面を拡大又は縮小させることもできる。
【0102】
次に、基礎量を登録する方法について説明する。ここで、基礎量とは、対象物における部分領域、ここでは、家屋を構成する部位の基礎となる量を意味している。基礎量は、部位に対して被害箇所が占める割合を算出するための計算の基礎として用いられる。
【0103】
図14は、家屋被害調査アプリにおいて基礎量登録タブが選択されている場合における図面操作パネルエリアの一例を示す図である。
図11と比べると、図面操作パネルエリアには、図面選択ボタンが表示されていない一方、符号1410~1420で示す各種ボタンが表示されている。
【0104】
調査員は、基礎量登録タブを選択することで、調査部位の基礎量を被害記録図面に登録することができる。なお、調査員は、マス目にしたがって基礎量を登録することができ、図面操作パネルエリアに表示される各種ボタンを選択することでマス目の選択方法の変更や削除を行うことも可能である。
【0105】
図15は、家屋被害調査アプリにおいてペン描画モードで基礎量を登録した場合における被害記録図面表示エリアの遷移の一例を示す図である。調査員は、符号1410で示すペンボタンを押下することで、ペン描画モードにおいて選択したマス目を基礎量として登録することができる。この際、調査員は、任意のマス目を選択したまま隣接したマス目をなぞることで複数のマス目を連続塗りすることも可能である。調査員は、本図左に示すように、複数のマス目を指で連続して選択することで、選択された複数のマス目を基礎量として登録することができる。選択されたマス目は、本図右に示すように、透過ありの塗りつぶしで表示されてよい。
【0106】
図16は、家屋被害調査アプリにおいて消しゴムモードで基礎量の登録を解除した場合における被害記録図面表示エリアの遷移の一例を示す図である。調査員は、符号1420で示す消しゴムボタンを押下することで、消しゴムモードにおいて選択したマス目を基礎量の登録から解除することができる。この際、調査員は、任意のマス目を選択したまま隣接したマス目をなぞることで複数のマス目を連続して基礎量の登録から解除することも可能である。調査員は、本図左に示すように、複数のマス目を指で連続して選択することで、選択された複数のマス目を基礎量の登録から解除することができる。選択されたマス目は、本図右に示すように、透過ありの塗りつぶし表示が解除されてよい。
【0107】
記録部140は、例えばこのようにして登録された基礎量を定義する情報を基礎量情報として記録する。記録部140は、このような基礎量情報を、調査部位ごとに後述するカードに対応付けて記録する。換言すれば、基礎量情報は、各部位が被害記録図面上においてどの位置にどの範囲に亘って存在するかを定義する情報ということもできる。受付部130は、例えばこのようにして、重畳画像に対するマス目の選択操作を受け付けることができる。そして、記録部140は、マス目にしたがって、対象物における部分領域を定義する領域情報、ここでは、家屋を構成する部位の基礎となる量を定義する基礎量情報を記録することができる。
【0108】
次に、被害を登録する方法について説明する。調査員は、図面操作パネルエリアにおける被害登録タブを選択することで、調査部位における被害を被害記録図面に登録することができる。なお、調査員は、基礎量の登録と同様、マス目にしたがって被害を登録することができ、図面操作パネルエリアに表示される各種ボタンを選択することでマス目の選択方法の変更や削除を行うことも可能である。
【0109】
図17は、家屋被害調査アプリにおいて被害を登録する場合における図面調査画面の一例を示す図である。被害は、家屋を構成する部位ごとに複数のカードに分けて登録される。
【0110】
被害を登録する場合、被害情報は、選択中のカード画像に対応する被害カードに紐づく被害として登録される。
【0111】
対象カード画像が選択中の場合、調査員は、基礎量の登録と同様に、ペン描画モード、消しゴムモード等により被害を受けていると判断した箇所に対応するマス目を選択して、被害箇所を登録することができる。そして、記録部140は、登録された被害箇所を定義する情報を被害箇所情報として記録する。換言すれば、被害箇所情報は、各被害が被害記録図面上においてどの位置にどの範囲に亘って発生しているかを定義する情報ということもできる。記録部140は、例えばこのようにして、マス目にしたがって、部分領域における箇所を定義する箇所情報、ここでは、調査部位における被害箇所を定義する被害箇所情報を対象カードに記録することができる。なお、基礎量として登録されていないマス目が被害箇所の登録のために選択された場合は、記録部140は、当該マス目を被害箇所情報として記録しないように制限してもよい。
【0112】
このように、カードに記録される被害情報は、被害箇所を定義する被害箇所情報を含んでよい。これに加えて、カードに記録される被害情報は、様々な情報を含むことができる。
【0113】
例えば、カードに記録される被害情報は、被害箇所における損傷程度を示す損傷程度情報を更に含んでもよい。記録部140は、例えばこのようにして、被害箇所情報と関連付けて、被害箇所を評価した評価結果を記録することもできる。
【0114】
また、カードに記録される被害情報は、被害箇所を撮影した撮影データを含んでもよい。記録部140は、例えばこのようにして、被害箇所情報と関連付けて、被害箇所を撮影した撮影データを記録することもできる。
【0115】
表示部120は、例えばこのようにして、複数のカードのうちの記録対象となる対象カードに対応する対象カード画像を表示することができる。そして、受付部130は、対象カード画像が選択されたことに応じて、対象カードに記録する被害情報の入力操作を受け付けることができる。
【0116】
なお、調査員は、被害カード表示エリアに表示されている追加ボタンを押下することで、被害カードを追加することができる。この際、被害カードは、家屋を構成する要素を1つのグループとしてグループごとに作成されてよい。作成部110は、例えばこのようにして、情報を記録可能なカードを、家屋を構成する要素を1つのグループとし、当該グループごとに作成することができる。
【0117】
調査員は、例えばこのようにして、一つの調査部位について、複数の被害が発生している場合に、複数のカードを作成する。そして、複数の被害箇所における被害情報の各々を複数のカードにそれぞれ登録する。この際、調査員は、被害情報として、各々の被害箇所における被害箇所情報、損傷程度情報、及び撮影データの少なくともいずれかをカードに登録してよい。調査員は、このような調査を他の全ての調査部位についても同様に実行する。
【0118】
なお、カードに登録する被害内容は部位ごとに異なってよい。
【0119】
次に、登録された基礎量及び被害箇所を元に各部位ごとの被害を計算して表示する方法を説明する。計算結果は、符号1010で示す被害計算結果表示エリアに表示されてよい。ここで、被害計算結果の内容は部位ごとに異なっていてよい。
【0120】
図18は、家屋被害調査アプリにおける被害計算結果の一例を示す図である。
【0121】
「数値」については、主要階、その他階で選択した被害記録図面上のマス目の合計が列ごとに表示される。より詳細には、基礎量の列における数値は、調査部位の基礎量として登録されたマス目の数を表している。また、「程度I」の列における「数値」は、調査部位において損傷程度Iの被害としてカードに登録されたマス目の数の合計を表している。「程度II」~「程度V」についても同様である。また、無被害の列における数値は、(基礎量-各損傷程度のマス目の合計)で算出されたマス目の数を表している。内壁、外壁の基礎量については、建具分(収納建具を除く)を除外して表示される。
【0122】
より詳細には、内壁、内部仕上の基礎量計算において、基礎量の数値は、主要階、その他階それぞれで以下の計算が適用される。ただし、マス目の数に関しては、割合を考慮した値とする。(例えば、1マス選択で割合50%の場合は0.5として計算する。)
(基礎量のマス目の数)-(外接建具の被害のマス目の数)-(内接建具の被害のマス目の数)
【0123】
外壁、外部仕上・雑壁の基礎量計算において、基礎量の数値は、主要階、その他階それぞれで以下の計算が適用される。ただし、マス目に関しては割合を考慮した値とする。(例えば、1マス選択で割合50%の場合は0.5として計算する。)
(基礎量のマス目の数)-(外接建具のマス目の数)
【0124】
「計算%」については、主要階、その他階それぞれの「(各損傷程度の数値/基礎量)×100」で算出した値を表示する。
【0125】
「入力%」については、程度I~Vの場合、計算%の値の1の位を切り上げした数値を表示する。ただし、1の位が0の場合は切り上げしない。値は0%~100%まで10%刻みで変更が可能である。主要階、その他階それぞれで合計が100%でない場合、警告が表示される。なお、無被害については、明示的に調査を完了したことが分かるように手動入力必須としてよい。
【0126】
「被害度」については、内閣府調査票(https://www.bousai.go.jp/taisaku/unyou.html)の点数表に従い算出した点数を表示する。
【0127】
主要階、その他階の入力%の合計が100%になった場合、詳細調査画面の部位タブ上に調査完了マークが表示されてよい。
【0128】
なお、屋根のみ図面を用いた調査を行った場合、点数表上での計算を変更する。従来のカード調査機能では、主要階、その他階それぞれで入力した損傷程度の%に応じて計算された損害割合が
図19の太枠部分に表示されるが、図面を用いた調査の場合、主要階とその他階を分けて記録しないため、主要階とその他階を合わせた損害割合を
図19の太枠2箇所に代入して計算する。
【0129】
算出部150は、例えばこのようにして、被害箇所情報及び損傷程度情報に基づいて、部位における被害の程度を算出することができる。この際、算出部150は、基礎量情報に更に基づいて、部位における被害の程度を算出することができる。
【0130】
ここまで、家屋被害調査アプリについて概要を説明したが、情報処理装置100は、下記の機能を更に備えてもよい。
【0131】
上述の説明では、表示部120が重畳画像の拡大又は縮小が指示されたことに応じて、図面及びマス目を連動して拡大又は縮小する場合を説明した。ここで、基礎量情報及び被害箇所情報は、上述のとおりマス目にしたがって記録された情報である。そのため、マス目が拡大又は縮小された場合、基礎量情報及び被害箇所情報は、拡大又は縮小の比に基づいて、拡大後又は縮小後の新たなマス目で再定義することができる。そこで、記録部140は、記録済みの領域情報、すなわち、基礎量情報、及び箇所情報、すなわち被害箇所情報を、マス目の拡大又は縮小に連動して更新してもよい。
【0132】
ここまで、情報処理装置100と情報処理装置100上で動作する家屋被害調査アプリについて概要を説明した。このような技術を開発する上で、調査方法、調査部位や判定方法は内閣府指針に従っている。しかしながら、内閣府指針の推奨する調査票では、集計できるが詳細な調査には別途の記録と集計が必要である。このような制約を踏まえたうえで、使いやすいデザイン(操作性)の工夫を行った。また、直感的に何をすればよいか、何をしているかが分かるデザインとなるよう工夫を行った。
【0133】
また、図面への被害記録方法については、基礎量登録と被害記録という操作を分かりやすく分けた。更には、図面を拡大してサイズを変更しても被害記録の座標がズレないことをブラウザ上で実現することが可能となった。特に、マス目のサイズ変更に追随する機能をブラウザ上で実現し、サイズを変更しても記録の大きさを自動で引き継ぐことが可能となった。また、被害を記録している途中で、性能による反応遅延が起きにくい構造としたため、調査員の記録のストレスを低減させることが可能となった。また、データの持ち方(データ構造)に加えて、実装上の工夫をすることで、早さを最優先することが可能となった。特に、部位ごとに被害が記録できる点も軽さに繋がっている大事なポイントである。
【符号の説明】
【0134】
100 情報処理装置
101 プロセッサ
102 ROM
103 RAM
104 ストレージ
105 通信インタフェース
106 ユーザインタフェース
109 バス
110 作成部
120 表示部
130 受付部
140 記録部
150 算出部
【要約】
【課題】対象物の調査を実施する調査員が使用する調査環境を提供するにあたり、少なくとも複雑さの解消又は時間の短縮に寄与することができる情報処理装置、情報処理方法、及び情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】情報処理装置は、情報を記録可能なカードを、家屋を構成する要素を1つのグループとし、当該グループごとに作成する作成部と、被害の程度を調査する対象となる家屋における被害情報を、前記グループに含まれる、前記家屋を構成する部位ごとに複数の前記カードに記録する記録部と、を備える。
【選択図】
図3