(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-30
(45)【発行日】2024-09-09
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
E02F 9/18 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
E02F9/18
(21)【出願番号】P 2024509196
(86)(22)【出願日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2023011401
(87)【国際公開番号】W WO2023182406
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2022046570
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲辻▼本 悠哉
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-033485(JP,A)
【文献】実開平01-063356(JP,U)
【文献】特開平09-124285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の後部に設けられた取付ベースに対し、カウンタウエイトが脱着可能に取り付けられる作業機において、
前記取付ベースに貫設されたボス孔と、
前記カウンタウエイトの前面に形成されたボス凹部と、
前方から前記取付ベースのボス孔を介して前記カウンタウエイトのボス凹部内に挿入されて、第1の締結部材により前記カウンタウエイトに締結され、下面が前記ボス孔内の下壁に当接すると共に、上面が前記ボス凹部内の上壁に当接するボス部材と、
前記取付ベースに前記カウンタウエイトを締結する第2の締結部材と、
を備えたことを特徴とする作業機。
【請求項2】
前記第1の締結部材は、後方より前記カウンタウエイトのボルト孔を介して前記ボス部材に螺合して、前記ボス部材を前記ボス凹部内に引き込んで締結し、
前記ボス部材は、前方から前記取付ベースに当接するフランジ部が一体形成され、前記第1の締結部材の締結力を受けて前記フランジ部の当接面と前記カウンタウエイトの前面との間で前記取付ベースを挟み込んでいる
ことを特徴とする請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記ボス孔の軸線と平行で且つ上方に面しており、前記取付ベースの前側に設けられるガイド面を有する台座をさらに備え、
前記ボス部材は、前記ガイド面上に配設されて、前記ガイド面に案内されて前後方向に移動可能となっている
ことを特徴とする請求項1に記載の作業機。
【請求項4】
前記第2の締結部材は、後方より前記カウンタウエイトのボルト孔に挿入されて、前記取付ベースと前記カウンタウエイトとを締結している
ことを特徴とする請求項1に記載の作業機。
【請求項5】
前記ボス部材は、角形状をなし、
前記取付ベースのボス孔及び前記カウンタウエイトのボス凹部の少なくとも何れか一方は、前記ボス部材の断面形状に対応する角形状をなして相対回転が規制されている
ことを特徴とする請求項1に記載の作業機。
【請求項6】
前記ボス部材は、脱着可能な固定金具により前記台座のガイド面上に固定される
ことを特徴とする請求項3に記載の作業機。
【請求項7】
前記ボス凹部は、前記ボス部材に対して上下方向に間隙を形成している
ことを特徴とする請求項1に記載の作業機。
【請求項8】
前記取付ベースのボス孔、前記カウンタウエイトのボス凹部、及び前記ボス部材は、左右方向に間隔をおいて一対設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば油圧ショベルは、クローラにより走行する下部走行体上に旋回可能に上部旋回体を設け、上部旋回体の前部に多関節型の作業フロントを設けてなる。作業フロントの重量とバランスさせるために、上部旋回体の後部にはカウンタウエイトが脱着自在に取り付けられている。
【0003】
例えば
図8に示すように、上部旋回体のフレーム109の後部には取付ベース115が設けられ、後方からカウンタウエイト113が配設される。カウンタウエイト113の前面に突設されたボス部113aは、取付ベース115のボス孔115aに挿入されている。カウンタウエイト113及び取付ベース115に貫設されたボルト孔113b、115bには、前方からボルト122が挿入されてナット123と螺合し、取付ベース115にカウンタウエイト113が締結されている。また、図示はしないが、ボス孔115aを介して前方に露出したボス部113aには、ボルトによりプレートが締結され、ボス孔115aから後方へのボス部113aの離脱が防止されている。
【0004】
カウンタウエイト113の重量による剪断力は強固なボス部113aに受け止められ、ボス部113aを介してカウンタウエイト113の重量が取付ベース115に支持され、これによりボルト122に作用する剪断力が軽減されている。以下、このカウンタウエイト113の取付構造を先行技術と称する。
【0005】
このようなカウンタウエイト113は油圧ショベルの輸送時等には取付ベース115から取り外され、その脱着作業にはカウンタウエイト脱着装置が使用される。例えば特許文献1に記載されているように、カウンタウエイト脱着装置は油圧ショベルの上部旋回体の後部に備えられている。上部旋回体のフレームの後部には連結ピンにより左右一対の回動アームの基端が軸支され、各回動アームの先端には、それぞれカウンタウエイトの吊環に掛止可能な連結具が設けられている。各回動アームは昇降用シリンダにより駆動され、その先端を上方に向けた取付位置と、先端を後方に向けた取外位置との間で、連結ピンを中心として回動可能になっている。
【0006】
地表に載置されている
図8に示すカウンタウエイト113を油圧ショベルに取り付ける場合には、カウンタウエイト脱着装置の回動アームを取外位置とし、各連結具の調整ボルトにより、凡そのカウンタウエイト113の吊下げ高さを調整して吊環に掛止する。回動アームを取付位置へと回動させると、カウンタウエイト113は吊下されて取付ベース115へと移動する。吊下げ高さが適切に調整されている場合には、ボス部113aが取付ベース115のボス孔115aに挿入され、このとき、カウンタウエイト113のボルト孔113bが取付ベース115のボルト孔115bと上下方向で一致するため、ボルト122により締結すると共に、ボルト及びプレートによりボス部113aの抜け止めを図る。
【0007】
また、吊下げ高さが不適切な場合には、取付ベース115に対してボス部113aが上下方向にズレを生じて挿入不能となる。従って、ズレの状態を確認した上で、一旦カウンタウエイト113を地表に降ろし、連結具の調整ボルトにより吊下げ高さを調整し直して、再度カウンタウエイト113の取付を試みる。
【0008】
一方、取付ベース115からカウンタウエイト113を取り外す場合には、カウンタウエイト脱着装置の回動アームを取付位置とし、各連結具をカウンタウエイト113の吊環に掛止して吊下する。ボルト122及びプレートを取り外して回動アームを取外位置へと回動させると、カウンタウエイト113は地表へと移動・載置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、先行技術のカウンタウエイト113の取付構造では、油圧ショベルへの取付作業が煩雑であるという問題があった。
【0011】
図8の例示では、二点鎖線で示すように、カウンタウエイト113のボス部113aを取付ベース115のボス孔115aに挿入できる吊下げ高さのため、取付作業を完了できるはずである。しかしながら、カウンタウエイト113は連結具と共に連結ピンを中心とした円弧状の軌跡Lを辿って移動するため、前方に突設されたボス部113aは、ボス孔115aに挿入される以前に取付ベース115に干渉してカウンタウエイト113の移動を妨げてしまう。
【0012】
この場合、
図8中の、ボス部113aと下端の位置とボス孔115aの下端の位置との高さの差に相当する寸法Aだけカウンタウエイト113の吊下げ高さを上方に調整し直せば、ボス部113aをボス孔115aに挿入できるものの、この状態は、寸法A相当分だけ吊り上げ高さの調整代(取付可能な上下幅)が減少していることを意味する。結果として、本来はボス部113aをボス孔115aに挿入できる吊下げ高さに調整されているにも関わらず、カウンタウエイト113を取り付けできず、一旦カウンタウエイト113を地表に降ろして吊下げ高さを調整し直すという煩雑な作業を要してしまう。
【0013】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、作業機にカウンタウエイトを取り付ける際の吊下げ高さの調整代を拡大して、取付作業を容易に実施することができる作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明の作業機は、車体の後部に設けられた取付ベースに対し、カウンタウエイトが脱着可能に取り付けられる作業機において、前記取付ベースに貫設されたボス孔と、前記カウンタウエイトの前面に形成されたボス凹部と、前方から前記取付ベースのボス孔を介して前記カウンタウエイトのボス凹部内に挿入されて、第1の締結部材により前記カウンタウエイトに締結され、下面が前記ボス孔内の下壁に当接すると共に、上面が前記ボス凹部内の上壁に当接するボス部材と、前記取付ベースに前記カウンタウエイトを締結する第2の締結部材と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の作業機によれば、作業機にカウンタウエイトを取り付ける際の吊下げ高さの調整代を拡大して、取付作業を容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態のカウンタウエイトの取付構造が適用された油圧ショベルを示す側面図である。
【
図2】カウンタウエイトの取付を完了した状態を側方視で示す模式図である。
【
図3】ボス部材と台座及び固定金具とを示す斜視図である。
【
図4】ボス部材と台座及び固定金具とを示す分解斜視図である。
【
図5】ボス部材の雌ネジ孔にカウンタウエイトのボルト孔を一致させた状態を側方視で示す模式図である。
【
図6】カウンタウエイトのボルト孔を介してボス部材の雌ネジ孔にボルトを螺合させた状態を側方視で示す模式図である。
【
図7】ボルトを締め込んでカウンタウエイトのボス凹部内にボス部材を引き込んだ状態を側方視で示す模式図である。
【
図8】先行技術においてカウンタウエイトのボス部が支持フレームに干渉して再調整を要する状態を側方視で示す模式図である。
【
図9】フランジ部を省略した別例のボス部材を示す
図7に対応する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を油圧ショベルのカウンタウエイトの取付構造に具体化した一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態の油圧ショベルを示す側面図であり、まず、同図に基づき油圧ショベルの概略構成を説明する。なお以下の説明では、油圧ショベルに搭乗したオペレータを主体として前後、左右、上下方向を表現する。
【0018】
油圧ショベル1の下部走行体2には左右一対のクローラ3が備えられ、クローラ3は図示しない走行用油圧モータにより駆動されて油圧ショベル1を走行させる。下部走行体2上には上部旋回体4(本発明の「車体」に相当)が設けられ、上部旋回体4は図示しない旋回用油圧モータにより駆動されて旋回する。上部旋回体4の前部には多関節型の作業フロント5が設けられ、作業フロント5はブーム6、アーム7、及びバケット8から構成されている。ブーム6はブームシリンダ6aにより角度変更され、アーム7はアームシリンダ7aにより角度変更され、バケット8はバケットシリンダ8aにより角度変更される。
【0019】
上部旋回体4のフレーム9上の前部には運転室10が設けられ、運転室10内に設けられた図示しない各種操作装置がオペレータにより操作される。フレーム9上の運転室10の後側には燃料タンク11、機械室12及びカウンタウエイト13等が設けられ、図示はしないが機械室12内には、エンジン、このエンジンにより駆動される油圧ポンプ、油圧ポンプから吐出された作動油を切り換える油圧回路等の各種機器が搭載されている。油圧ポンプからの作動油は、操作装置の操作に応じて油圧回路により切り換えられ、上記した走行用及び旋回用油圧モータや作業フロント5の各シリンダ6c~8cに供給される。これにより、油圧ショベル1の走行、上部旋回体4の旋回、作業フロント5の作動等が行われる。
【0020】
上部旋回体4のフレーム9の後端には、左右方向に間隔をおいて一対の取付ベース15(
図2,3に一方を示す)が設けられ、これらの取付ベース15を介して油圧ショベル1にカウンタウエイト13が取り付けられている。各取付ベース15の間には、カウンタウエイト13を脱着するためのカウンタウエイト脱着装置16が備えられている。カウンタウエイト脱着装置16の構成は、例えば特許文献1に記載のものと同様に、油圧ショベル1の上部旋回体4のフレーム9の後部の取付ベース15に連結ピンにより左右一対の回動アームの基端が軸支され、各回動アームの先端には、それぞれカウンタウエイトの吊環に掛止可能な連結具が設けられ、各回動アームは昇降用シリンダにより駆動され、その先端を上方に向けた取付位置と、先端を後方に向けた取外位置との間で、連結ピンを中心として回動可能となって構成される。
【0021】
従って、このような構成のカウンタウエイト脱着装置16によりカウンタウエイト13を取り付ける場合、カウンタウエイト13は、連結ピンを中心とした円弧状の軌跡L(
図5に示す)を辿って移動して取付ベース15に取り付けられる。このとき
図8に示す先行技術のカウンタウエイト113の取付構造では、カウンタウエイト113の前面に突設されたボス部113aが取付ベース115に干渉して取付できない場合があり、吊下げ高さの再調整を要するという問題があった。
【0022】
以上の不具合を鑑みて本発明者は、ボス部113aに代えて、カウンタウエイト13とは別部品のボス部材18を用意し、取付ベース15にカウンタウエイト13を配置した後に、カウンタウエイト13と取付ベース15との間にボス部材18を配置する対策を見出した。以下に、その詳細を説明する。
【0023】
図2は、カウンタウエイト13の取付を完了した状態を側方視で示す模式図、
図3は、ボス部材18と台座及び固定金具とを示す斜視図、
図4は、ボス部材18と台座及び固定金具とを示す分解斜視図である。なお、各図では、左右の取付ベース15の一方、及びこの取付ベース15に関連するボス部材18や台座17等を示しているが、他方の取付ベース15等についても同一構成である。
【0024】
取付ベース15は前方及び後方に面した板状をなし、その下端が上部旋回体4のフレーム9の後端に固定されて上方に延設されている。フレーム9上の取付ベース15の前側には台座17が固定され、台座17は、後述するボス孔15aの軸線と平行で且つ上方に面し、平面視で四角状をなすガイド面17aと、ガイド面17aの左右両側及び前側に形成された側壁17b及び前壁17cとからなり、台座17の後端が取付ベース15に当接している。
【0025】
台座17のガイド面17a上にはボス部材18が配設され、ボス部材18は、前後方向に延びる直方体状の嵌挿部18a、及び嵌挿部18aの前端に一体形成された四角板状のフランジ部18bからなる。結果として嵌挿部18aは、後方より見て四角状(本発明の「角形状」に相当)をなしている。ボス部材18の下面全体がガイド面17a上に当接し、ガイド面17aに案内されてボス部材18が前後方向に移動可能となっている。フランジ部18bの左右幅よりも嵌挿部18aの左右幅は小さく設定され、フランジ部18bの上下幅よりも嵌挿部18aの上下幅は小さく設定されている。このため後方より見ると、嵌挿部18aの左右両側及び上側がフランジ部18bにより包囲され、以下、この包囲しているフランジ部18bの領域を当接面18cと称する。
【0026】
ボス部材18の嵌挿部18aには、鋼板を折曲形成して製作された固定金具19が配設され、嵌挿部18aの断面形状と対応する下方に開放された凹状をなして上方から嵌挿部18aに嵌め込まれている。固定金具19の両端はボルト20によりガイド面17a上に締結され、この固定金具19によりボス部材18がガイド面17a上に固定されている。油圧ショベル1からカウンタウエイト13を取り外した輸送時には、固定金具19が台座17に締結されてボス部材18の脱落を防止する機能を奏する。
【0027】
ボス部材18を移動規制できるものであれば、固定金具19として種々の構造を採用できる。例えば、固定金具19でボス部材18をガイド面17a上に押え付けて、前後方向、左右方向及び上方への全ての移動を規制してもよい。或いは、固定金具19で左右方向及び上方への移動を規制し、前方への移動は前壁17cにより規制し、後方への移動はフランジ部18bの当接面18cを固定金具19に当接させて規制してもよい。
【0028】
一方、油圧ショベル1にカウンタウエイト13を取り付ける際には、固定金具19が台座17から取り外される。このためボス部材18の移動が許容され、後述するようにボス部材18を介してカウンタウエイト13の重量が取付ベース15に支持される。
【0029】
図5は、ボス部材18の雌ネジ18d孔にカウンタウエイト13のボルト孔13bを一致させた状態を側方視で示す模式図、
図6は、カウンタウエイト13のボルト孔13bを介してボス部材18の雌ネジ18d孔にボルトを螺合させた状態を側方視で示す模式図、
図7は、ボルトを締め込んでカウンタウエイト13のボス凹部13a内にボス部材18を引き込んだ状態を側方視で示す模式図である。
【0030】
図2,3に示すように取付ベース15には、ボス部材18の嵌挿部18aと対応する四角状(本発明の「角形状」に相当)をなすボス孔15aが貫設され、ボス孔15a内の下壁が台座17のガイド面17aと面一になっている。
図5に示すように、台座17のガイド面17a上でボス部材18を最も前方に移動させた位置(以下、前方位置と称する)では、嵌挿部18aの先端がボス孔15a内から後方に突出せずにボス孔15a内にとどまっている。この位置からボス部材18が後方に移動すると、
図6に示すように、嵌挿部18aが取付ベース15のボス孔15a内から後方に突出する。さらにボス部材18が後方に移動すると、
図7に示すように、フランジ部18bの当接面18cが取付ベース15の前面に当接し、ボス部材18の移動が規制される(以下、後方位置と称する)。
【0031】
図2に示すように、カウンタウエイト13は取付ベース15の後側に配設され、その前面には、ボス部材18の嵌挿部18aと対応する四角状(本発明の「角形状」に相当)をなすボス凹部13aが形成されている。以下、説明の便宜上、
図2に示すように取付ベース15にカウンタウエイト13が取り付けられているものとして、その構成を述べる。
【0032】
この場合にはボス部材18が後方位置にあり、その当接面18cが取付ベース15の前面に当接し、嵌挿部18aが前方から取付ベース15のボス孔15aを介してボス凹部13a内に挿入されている。ボス部材18の嵌挿部18aには後方から雌ネジ18dが形成され、この雌ネジ18dと一致するようにカウンタウエイト13にはボルト孔13bが前後方向に貫設されている。ボルト孔13bには後方からボルト21(本発明の「第1の締結部材」に相当)が挿入され、その先端がボス部材18の雌ネジ18dに螺合している。
【0033】
ボルト21による締結力を受けて、ボス部材18の嵌挿部18aがカウンタウエイト13のボス凹部13a内に引き込まれて締結されている。結果として、ボス部材18の当接面18cとカウンタウエイト13の前面との間に取付ベース15が挟み込まれ、カウンタウエイト13が取付ベース15に取り付けられている。
【0034】
この状態では、ボス部材18の下面がボス孔15a内の下壁に当接すると共に、ボス部材18の上面がボス凹部13a内の上壁に当接している。このため、カウンタウエイト13の重量による剪断力がボス部材18に受け止められ、ボス部材18を介してカウンタウエイト13の重量が取付ベース15に支持されている。
【0035】
本実施形態では、
図2に示すように、ボス部材18の嵌挿部18aの上下幅に比較して、取付ベース15のボス孔15aの上下幅及びカウンタウエイト13のボス凹部13aの上下幅が若干大きく設定され、互いの間に上下方向の間隙が形成されている。また図示はしないが、嵌挿部18aの左右幅に比較して、取付ベース15のボス孔15aの左右幅及びカウンタウエイト13のボス凹部13aの左右幅も若干大きく設定されている。但し、これに限るものではなく、各部材の18a,15a,13aの上下幅を一致させたり、左右幅を一致させたりしてもよい。
【0036】
一方、ボス部材18の上側位置において、カウンタウエイト13及び取付ベース15にはそれぞれ前後方向にボルト孔13c,15bが貫設され、後方からボルト22(本発明の「第2の締結部材」に相当)がボルト孔13c,15bに挿入されて取付ベース15の前面に溶接されたナット23に螺合している。結果として、この位置においても取付ベース15とカウンタウエイト13とが締結されている。
【0037】
以上のように構成されたカウンタウエイト13は、カウンタウエイト脱着装置16により脱着される。
図2に示す油圧ショベル1への取付状態からカウンタウエイト13を取り外す場合には、カウンタウエイト脱着装置16の回動アームを取付位置とし、各連結具をカウンタウエイト13の図示しない吊環に掛止して吊下した上で、ボルト21及びボルト22の締結を解除する。
【0038】
カウンタウエイト13は連結ピンを中心とした円弧状の軌跡Lを辿って取り外されるため、その移動が後方位置のボス部材18により妨げられる可能性がある。そこで、例えば取り外したボルト21をカウンタウエイト13のボルト孔13bに挿入し、その先端でボス部材18を押して前方位置へと移動させておく。そして、カウンタウエイト脱着装置16の回動アームを取外位置へと回動させると、カウンタウエイト13は地表へと移動・載置される。
【0039】
なお、カウンタウエイト13の取り外し後に油圧ショベル1を輸送する場合には、台座17に固定金具19を締結してボス部材18を固定する。輸送時の振動が台座17上のボス部材18に作用するが、台座17上からボス部材18が脱落する等の事態を未然に防止することができる。
【0040】
一方、地表に載置されているカウンタウエイト13を油圧ショベル1に取り付ける場合には、以下の手順で作業が実施される。なお、取付作業に際して、予めボス部材18は前方位置に保たれているものとする。
【0041】
まず、カウンタウエイト脱着装置16の回動アームを取外位置とし、各連結具の調整ボルトにより、凡そのカウンタウエイト13の吊下げ高さを調整して吊環に掛止する。回動アームを取付位置へと回動させると、
図5に示すように、カウンタウエイト13は吊下されて円弧状の軌跡Lを辿って取付ベース15へと移動する。ボス部材18の嵌挿部18aとカウンタウエイト13のボス凹部13aとの上下方向の位置関係(ひいては、雌ネジ18dとボルト孔13bとの上下方向の位置関係)は、カウンタウエイト13の移動に伴って次第に変化する。
【0042】
吊下げ高さが適切に調整されている場合には、取付ベース15の後面にカウンタウエイト13の前面が当接するまでの何れかの時点で、嵌挿部18aとボス凹部13aとが上下方向で一致する。例えば作業者は、後方からカウンタウエイト13のボルト孔13bを覗き込んで、ボルト孔13bとボス部材18の雌ネジ18dとの位置関係を確認し、一致した時点でカウンタウエイト13の移動を中止する。
【0043】
そして、
図6に示すように、後方からカウンタウエイト13のボルト孔13bにボルト21を挿入し、その先端をボス部材18の雌ネジ18dに螺合させて仮締めする。ボルト21の締め込みに伴って、前方位置のボス部材18はガイド面17aに案内されながら後方位置へと移動し、
図7に示すように、ボス部材18の嵌挿部18aがカウンタウエイト13のボス凹部13a内に引き込まれる。これによりボス部材18の当接面18cは取付ベース15の前面に当接し、カウンタウエイト13の前面は取付ベース15の後面に当接する。
【0044】
また、これと並行して、後方からボルト22をカウンタウエイト13及び取付ベース15のボルト孔13c,15bに挿入し、その先端をナット23に螺合させて仮締めする。次いで、カウンタウエイト脱着装置16によるカウンタウエイト13の吊下を中止すると、カウンタウエイト13の重量はボス部材18に作用し、ボス部材18を介して取付ベース15に支持されるようになる。この状態で、ボルト21及びボルト22を本締めすると、取付ベース15にカウンタウエイト13が取り付けられて、一連の取付作業が完了する。
【0045】
以上のように本実施形態のカウンタウエイト13の取付構造では、カウンタウエイト13に対してボス部材18を別部品としているため、その前面は、例えば
図8に示す先行技術のカウンタウエイト113のようにボス部113aが突設されておらず、平坦状をなしている。
図5と
図8とは、それぞれのカウンタウエイト13,113を同一の吊下げ高さに調整した場合を示している。
図8の先行技術では、取付ベース115への取付のためにカウンタウエイト113を円弧状の軌跡Lを辿って移動させたとき、前方に突設されたボス部113aが、ボス孔115aに挿入される以前に取付ベース115に干渉してカウンタウエイト113の移動を妨げてしまう。従って、吊下げ高さを上方に調整し直すための再調整が必要になる。
【0046】
これに対して
図5に示す本実施形態では、ボス部材18に相当する部位が存在しないため、ボス部材18の嵌挿部18aにボス凹部13aが一致する上下位置まで、円弧状の軌跡Lを辿って何ら問題なくカウンタウエイト13を移動させることができる。そして、嵌挿部18aとボス凹部13aとを一致させた後に、ボルト21の螺合によりボス部材18の嵌挿部18aをボス凹部13a内に引き込めば、ボス部材18を介してカウンタウエイト13の重量を取付ベース15に支持させることができる。結果として、
図8中の寸法Aに相当する分だけ吊り上げ高さの調整代を下方に拡大でき、これにより再調整を要する機会を減少できることから、カウンタウエイト13の取付作業を容易に実施することができる。
【0047】
また、本実施形態では、ボス部材18の嵌挿部18aの上下幅に対してカウンタウエイト13のボス凹部13aの上下幅が大きく設定されて、互いの間に上下方向の間隙が形成されている。従って、吊下げ高さが上方に多少ずれている場合でも嵌挿部18aをボス凹部13a内に挿入できる。結果として、この場合には吊下げ高さを下方に調整し直すための再調整が不要になり、この点も取付作業の容易化に大きく貢献する。
【0048】
また、カウンタウエイト13のボルト孔13bを介して後方からボルト21をボス部材18の雌ネジ18dに螺合させている。そして、これによりボス部材18の嵌挿部18aをカウンタウエイト13のボス凹部13a内に引き込むと共に、ボス部材18の当接面とカウンタウエイト13の前面との間で取付ベース15を挟み込んでいる。結果として、後方からボルト21をボス部材18に螺合させるだけで、取付ベース15にカウンタウエイト13を締結することができる。
【0049】
また、フレーム9上の取付ベース15の前側に台座17を固定し、台座17に形成した上方に面するガイド面17a上にボス部材18を配設して前後方向の移動を案内している。仮に、台座17を備えない構成とした場合には、重量物であるボス部材18を作業者が把持して、その嵌挿部18aを、人力で取付ベース15の前側からボス孔15aを介してカウンタウエイト13のボス凹部13a内に差し入れる必要がある。しかしながら、ガイド面17a上でボス部材18が案内されるため、このような大きな労力を要する作業を大幅に軽減できる。加えて、後方からボス部材18にボルト21を螺合させて締め込むだけで、ボス部材18をカウンタウエイト13のボス凹部13a内に引き込むことができる。
【0050】
また、ボルト22についても、後方からカウンタウエイト13及び取付ベース15のボルト孔13c,15bを介してナット23に螺合させるだけであり、これだけの簡単な操作により、取付ベース15へのカウンタウエイト13の締結が完了する。
【0051】
そして、以上の説明から明らかなように本実施形態の取付構造によれば、カウンタウエイト13を取り付ける際の全ての作業を上部旋回体4の後方位置で完了することができる。即ち、カウンタウエイト脱着装置16を用いて取付ベース15の所期の位置にカウンタウエイト13を配置する作業は無論のこと、ボルト21及びボルト22の締結操作についても上部旋回体4の後方位置で実施できる。そして、ボルト21の締め込みにより取付ベース15にカウンタウエイト13を締結できると共に、それに伴ってボス部材18をカウンタウエイト13のボス凹部13aに引き込むことができる。
【0052】
仮にボルト21を前方から螺合させる構成とした場合には、例えば
図8に示すように、取付ベース115の前側から、作業者がボルト122を取付ベース115及びカウンタウエイト113のボルト孔115b,113bに挿入し、その先端をナット123に螺合させる必要が生じる。また、台座17を備えない構成とした場合には、上記のように取付ベース15の前側から作業者がボス部材18をカウンタウエイト13のボス凹部13a内に差し入れる必要が生じる。
【0053】
フレーム9上の取付ベース15の前側には機械室12が画成され、機械室12の保守のために、フレーム9には図示しないメンテナンス開口部が下方に向けて開口形成されている。従って、作業者はメンテナンス開口部から上半身を機械室12内に入れて、上記のようなボルト122(
図8に示す)の締結操作、或いはボス部材18の差入れ操作(
図7に示す)を実施することになる。しかしながら、このときの作業者は中腰の姿勢を保ち続け、且つ障害物となる機械室12内の各種機器を避けながら作業するため、非常に煩雑な作業になってしまう。
【0054】
これに対して本実施形態によれば、作業者は上部旋回体4の後方位置でボルト21及びボルト22を締結するだけであり、その作業は直立した自然な姿勢で実施できると共に、カウンタウエイト13の周辺には作業の妨げになる障害物等が存在しない。従って、極めて簡単な作業になり、ひいてはカウンタウエイト13の取付作業全体の容易化に大きく貢献する。
【0055】
また、ボス部材18の嵌挿部18aは後方より見て四角状をなし、このボス部材18の形状に対応して、取付ベース15のボス孔15a及びカウンタウエイト13のボス凹部13aは四角状をなしているため、相対回転が規制されている。ボルト21の締結時にはボス部材18に回転力が作用するが、このときのボス部材18の回転が取付ベース15のボス孔15a及びカウンタウエイト13のボス凹部13aにより規制されるため、ボルト21を容易に締結でき、この点も取付作業の容易化に大きく貢献する。
【0056】
なお、取付ベース15のボス孔15aとカウンタウエイト13のボス凹部13aとを共に四角状とする必要はない。何れか一方の部材15a,13aを四角状とすればボス部材18を回転規制できるため、他方の部材については嵌挿部18aを挿入可能な他の形状としてもよい。また各部材18a,15a,13aの形状は、後方より見て四角状をなすものに限る必要はなく、回転規制できる他の形状に変更してもよい。さらに、必ずしも回転規制する必要はなく、例えば円形状としてもよく、このような場合も本発明は含むものとする。
【0057】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、油圧ショベル1のカウンタウエイト13の取付構造に具体化したが、これに限るものではない。本発明は、カウンタウエイトが脱着自在に取り付けられる種々の作業機に適用でき、例えば油圧クレーンのカウンタウエイトの取付構造として具体化してもよい。
【0058】
また上記実施形態では、後方からカウンタウエイト13のボルト孔13bにボルト21を挿入して、ボス凹部13a内にボス部材18を締結したが、これに限るものではない。例えば、ボス部材18に前後方向にボルト孔を貫設し、このボルト孔に対応してカウンタウエイト13のボス凹部13a内に雌ネジを形成し、前方からボルトをボス部材18のボルト孔を介してボス凹部13a内の雌ネジに螺合させてもよい。
【0059】
また上記実施形態では、ボス部材18にフランジ部18bを形成したが、例えば、
図9に示すようにフランジ部18bを省略してもよい。この場合のボルト21は、取付ベース15にカウンタウエイト13を締結する役割は果たさなくなるが、この締結機能はボルト22及びナット23により奏されるため、何ら問題は生じない。
【0060】
また上記実施形態では、フレーム9上に台座17を固定してボス部材18の移動を案内したが、台座17を省略してもよい。上記実施形態では、ガイド面17a上への配置を想定してボス部材18の下面を平坦にしたが、その必要がなくなるため、フランジ部18bを左右両側及び上側に加えて下側にも延出して、当接面18cとして機能させてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 油圧ショベル(作業機)
4 上部旋回体(車体)
13 カウンタウエイト
13a ボス凹部
13b ボルト孔
15 取付ベース
15a ボス孔
16 カウンタウエイト脱着装置
17 台座
17a ガイド面
18 ボス部材
18b フランジ部
18c 当接面
19 固定金具
21 ボルト(第1の締結部材)
22 ボルト(第2の締結部材)