(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】自動車用サイドバイザー
(51)【国際特許分類】
B60J 3/00 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
B60J3/00 L
(21)【出願番号】P 2024034703
(22)【出願日】2024-03-07
【審査請求日】2024-03-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000101961
【氏名又は名称】イズミ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野津 敬
(72)【発明者】
【氏名】森 利幸
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-123948(JP,A)
【文献】特開2020-175793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイザー本体とブラケットと金属モールとを備え、前記バイザー本体の外側意匠面に、突起からなる固定部が設けられ、前記ブラケットは貫通孔を有しており、前記貫通孔に前記突起を差し込むことで、前記バイザー本体に前記ブラケットが固定され、前記ブラケットに前記金属モールが取り付けられている自動車用サイドバイザー。
【請求項2】
前記ブラケットは前記貫通孔の周縁部にカシメ用の刃を有し、前記刃により、前記突起に固定されることを特徴とする請求項1の自動車用サイドバイザー。
【請求項3】
前記突起を前記貫通孔に通した後、前記突起の先端を前記貫通孔の径より大きく広げることにより、前記突起に固定されることを特徴とする請求項1の自動車用サイドバイザー。
【請求項4】
前記突起は鎌ホゾ状を呈しており、前記鎌ホゾが前記貫通孔の周縁部に係合することにより、前記突起に固定されることを特徴とする請求項1の自動車用サイドバイザー。
【請求項5】
バイザー本体とブラケットと金属モールとを備え、前記バイザー本体の外側意匠面には蟻ホゾ形状の固定部を有しており、前記ブラケットは前記蟻ホゾに接合する蟻ホゾ挿入部を有し、これらが接合することで前記バイザー本体に前記ブラケットが固定され、前記ブラケットに前記金属モールが取り付けられている自動車用サイドバイザー。
【請求項6】
請求項1に記載の自動車用サイドバイザーを製造する方法であって、前記バイザー本体と前記固定部を一体成形することを特徴とする自動車用サイドバイザーの製造方法。
【請求項7】
前記金属モールの長手方向の両側面にスリット穴を有し、前記ブラケットは篏合用の爪を有し、
前記爪と前記スリット穴とが嵌合することで前記ブラケットに前記金属モールが接合されることを
特長とする請求項2または請求項3または請求項4または請求項5の自動車用バイザー。
【請求項8】
前記金属モールの長手方向の両端縁に篏合用の爪を有し、前記ブラケットはスリット穴を有し、
前記爪と前記スリット穴とが嵌合することで前記ブラケットに前記金属モールが接合されることを
特長とする請求項2または請求項3または請求項4または請求項5の自動車用バイザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用サイドバイザーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のドアの窓枠に装着される自動車用サイドバイザーは、降雨時に自動車ドアのガラス窓を開けても雨が車内に降りこまないよう雨を遮る庇として機能するものであるが、ドアの窓枠に両面テープで貼り付けることで装着されるものが一般的である。
【0003】
走行時、自動車用サイドバイザー(以下、バイザー)には強い風圧がかかるため、走行中にテープが剥がれてバイザーが脱落したり、風圧で飛ばされることがないよう、接着強度の高い両面テープが使われているが、テープが所期の接着力を発揮しなかったり、経年で接着力が低下しても、安全が確保できるよう、テープに加えてブラケットによる取り付け等の機械的な接合を併用する安全対策が取られている。
【0004】
一方、近年、高級車を中心にドアの窓枠をステンレス鋼板などで被覆して装飾するデザインが主流になっている。
その場合、窓枠にバイザーが装着されることで、折角の意匠性に優れた窓枠が隠れるため、バイザーと窓枠とに一体感を持たせるためバイザーの車外側に窓枠と同じステンレス鋼などの金属モールを装着したものが好まれる傾向にある。
【0005】
このような金属モール付きバイザーにおいて、金属モールは両面テープでバイザー本体に貼り付けられるが、両面テープの接着性能が不足したり、低下した場合でも容易に脱落することがないよう、バイザーと同様にテープ以外の接合方法を併用する安全対策が提案されている。
【0006】
すなわち、特許文献1に開示されている自動車用サイドバイザーではモール下端部を内側へ折り曲げ形成し、さらに折り曲げ容易な係止爪をさらに内方に突設し、バイザーのモールの接着部に係止爪を挿通可能な貫通孔を設け、モールが両面テープにより接着されるとともに貫通孔への係止爪による係止により装着される。
【0007】
これと同様に、特許文献2でも金属モールを両面テープでバイザー表面に接着するとともに、金属モールに複数の係止部を設け、バイザー接着部に設けられた複数の貫通孔に挿入し、裏面で折り曲げることで装着する技術が提案されている。
【0008】
また、特許文献3では、前記特許文献と同様にバイザーに貫通孔を設けてなるが、長手方向端縁を自動車内側に向かいカール状に折り曲げ形成されている金属モール(特許文献4)を使用し、底部に係止爪を備えた脚を有する固定具を、バイザー裏面に設けた段部に当接する位置まで挿入しモール端縁に係止爪を係止させて固定する方法が開示されている。
【0009】
ところが、このような金属モール付きサイドバイザーでは、いずれもバイザーの外側意匠面(車外側)に金属モールを両面テープで接着後、バイザーを裏返して、係止爪を折り曲げたり、固定具を装着したりする必要があった。
また、いずれもバイザー本体に貫通孔を設けるため、雨水が貫通孔を通して車内側に侵入する恐れがあるため何らかの止水対策が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2009-73409
【文献】特開2015-123817
【文献】特開2013-123948
【文献】特開2013-123947
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、上述の目的、すなわち金属モールの両面テープ接着と併行して実施される機械的な接合による安全対策において、金属モールの装着時にバイザーを裏返す必要がなく効率よく生産できること、ならびに、バイザー本体に貫通孔を開けないことにより雨水が入り込まないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
バイザー本体とブラケットと金属モールとを備え、前記バイザー本体の外側意匠面に、突起からなる固定部が設けられ、前記ブラケットは貫通孔を有しており、前記貫通孔に前記突起を差し込むことで、前記バイザー本体に前記ブラケットが固定され、前記ブラケットに前記金属モールが取り付けられている自動車用サイドバイザー。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、バイザー本体を成形する際に、バイザー本体の車外側の、金属モールをテープ接着する部分の一箇所以上の箇所に、貫通孔を設けることなく、突起部からなる固定部が形成される。前記固定部に、金属モールとの接合機構を有し、且つ貫通孔を有するブラケットを固定し、バイザー本体との接着を行う両面テープが事前に貼り付けられた金属モールであって、さらに加えて前記ブラケットとの接合機構を有する前記金属モールを両面テープを介してバイザー本体に接着する際に、前記金属モールと前記ブラケットとの接合機構により、前記ブラケットを介して、前記金属モールが前記バイザー本体に機械的に接合される。
【0014】
前記ブラケットの前記バイザー本体への固定ならびに前記バイザー本体に固定されたブラケットへの前記金属モールの機械的接合のために、バイザー本体に貫通孔を設ける必要はなく、また、前記バイザー本体への前記金属モールの取付け操作はすべて前記バイザー本体の車外側意匠面において行われるため、両面テープによる接着と同時にあるいは併行して行われる機械的接合においても、バイザーを反転して裏面側で作業を行う必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】自動車にサイドバイザーを装着した状態を示す説明図である。
【
図2】金属モール付きフロントバイザーを車外側から見た説明図である。
【
図3】金属モールの構造を表した説明図である。(a)金属モールの車両姿勢における平面図、(b)金属モールの車両姿勢における正面図、(c)金属モールのA-A断面図、(d)金属モールのB-B断面図
【
図4】金属モールの形状を模式的に表した説明図である。
【
図6】ブラケットの形状を示す二面図である。(a)ブラケットの正面図と平面図、(b)ブラケットのV-V断面図、(c)ブラケットのW-W断面図
【
図7】バイザー本体の金属モール取付け部分を拡大した説明図である。
【
図8】ブラケット取付け部の構造を示す断面図である。(a)バイザー本体の突起部の断面図、(b)バイザー本体の突起にブラケット7を固定した断面図、(c)(b)のブラケット7に金属モール10を接合した断面図
【
図9】金属モールを取り付けたバイザーの取付け状態を示す説明図。(a)金属モール付きバイザー、(b)バイザーの突起以外の部分B- Bの断面図、(c)バイザーの突起部分A-Aの断面図
【
図10】ブラケットと金属モールの構造を示す説明図である。(a)ブラケット、(b)金属モール
【
図11】ブラケットの形状を示す二面図 (a)ブラケットの正面図および平面図、(b)ブラケットのB-B断面図
【
図12】ブラケット取付け部の構造を示す断面図である。(a)バイザー本体の突起部の断面図、(b)バイザー本体の突起16 にブラケット18を固定した断面図、(c)(b)のブラケット18に金属モール19を接合した断面図
【
図13】バイザー本体の金属モール取付け部分を拡大した説明図である。
【
図15】ブラケット取付け部の構造を示す断面図である。(a)バイザー本体の突起部の断面図、(b)バイザー本体の突起22 にブラケット23を挿入した断面図、(c)バイザー本体の突起22 にブラケット23を挿入し、さらに突起の先端を広げて25のような頭部を形成した断面図、(d)(c)のブラケット23に金属モール10を接合した断面図
【
図17】ブラケット取付け部の構造を示す断面図である。(a)バイザー本体の突起部22の断面図、(b)バイザー本体の突起22にブラケット26を挿入した断面図、(c)(b)の後、突起22の先端を広げて25のような頭部を形成した断面図、(d)(c)のブラケット26に金属モール19を接合した断面図
【
図18】バイザー本体の金属モール取付け部分を拡大した説明図である。
【
図20】ブラケット取付け部の構造を示す断面図である。(a)バイザー本体の鎌ホゾ状突起27の断面図、(b)バイザー本体の鎌ホゾ状突起27にブラケット28を固定した断面図、(c)(b)のブラケット28に金属モール10を接合した断面図
【
図21】バイザー本体の金属モール取付け部分を拡大した説明図である。
【
図23】バイザー本体の金属モール取付け部分を拡大した説明図である。
【
図25】ブラケット取付け部の構造を示す断面図である。(a)バイザー本体の蟻ホゾ部33の断面図、(b)バイザー本体の蟻ホゾ部33にブラケット35を挿入した断面図、(c)(b)のブラケット35に金属モール10を接合した断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1に示す自動車1のフロントドア2とリアドア4の窓枠にバイザー100が取り付けられている。
前記バイザー100のバイザー本体3はスモーク色等を基調とした透明または半透明の合成樹脂製で、上縁部がフランジ形状、下部が庇状を呈しており、フランジ部を、両面テープを介して車両ドアの窓枠サッシに貼り付けることで、自動車に取り付けられている。
【0017】
ここで、バイザー100が本発明の自動車用サイドバイザーである。
バイザー100につき、自動車1のフロントドア2に取り付けられているものはフロントバイザー、リアドア4に取り付けられているものはリアバイザーと一般的に呼称されるが、両者は形状に若干の差があるものの、その機能、構成要素および金属モールのバイザー本体への取付け構造は同じであるため、以後は主にフロントバイザーを例にあげて説明するものの、内容や要件についてリアバイザーに対しても同様に適用される。
【0018】
図2に本発明のフロントバイザーを抜き描きしているが、
図2に示す通り、バイザー本体3の上縁部の車外側意匠面には、後述するブラケットを介して金属モール10が取り付けられて、バイザー100を構成している。前記金属モール10の材料としては、自動車のドアサッシの装飾に用いられるステンレス鋼と類似の外観、色調、光沢を有することに加え、十分な強度を有することが要求されるため、SUS304などのステンレス鋼が望ましい。本発明ではこの金属モールのバイザー本体への取付け構造について詳細に規定する。
【0019】
本発明のもう一つの重要な構成要素であるブラケットについても、十分な曲げ強度あるいは引張強度を有し、錆に強い、ステンレス鋼等の金属製であることが望ましいが、必ずしも金属製に限定されることはなく、合成樹脂製あるいは金属と合成樹脂を組み合わせることも可能である。本発明で使用するブラケットの形状・構造の一例を
図5、
図10(a)、
図14、
図16、
図19、
図22、
図24に示した。以下実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0020】
本実施例は、本発明の請求項1と請求項2に記載の態様を示す。
図3(a)と(b)は本発明の金属モールの、それぞれ平面図と正面図である。
図3(b)の正面図において、A-Aで示された箇所、この例では2か所の側面には、断面図(c)で示されるようなスリット穴が両側面に設けられている。スリット穴以外の部分、ここでは
図3(b)のB-Bで代表される部分を断面
図3(d)に示すが、スリット穴のない「コ」の字形状をしている。この部分には、金属モールの内側に、長手方向に沿って両面テープが貼られている。ただし、前記金属モールの内側全面に貼られている訳ではなく、
図3(c)に示すように、スリット穴のある2箇所には隙間が設けられ、両面テープは貼られていない。これは、この箇所では両面テープによる接着に代えて、ブラケットにより機械的に接合されるためである。なお、ここでは正面図、平面図とも車両への取付け姿勢で描かれている。
【0021】
前記金属モール10のB-B断面とA-Aの位置にある側面スリット穴の形状を示す説明図が
図4である。この図では、B-B断面から前記金属モール10の内側(バイザー側)に貼られた両面テープ12が見えている。11が金属モール10の2箇所の両側面に開けられたスリット穴である。
【0022】
図5にブラケットの鳥瞰図を示す。ブラケット7のベース部の中央に貫通孔39があり、貫通孔の周縁部にはカシメ刃9が形成されており、同じくベース部の上下には
図4の金属モール10のスリット穴11に差し込むための嵌合爪8が設けられている。前記ブラケット7の詳細な構造を
図6に2面図で示す。
図6(a)は前記ブラケット7の正面図と平面図、(b)はV-V断面図、(c)はW-W断面図である。
【0023】
バイザー本体3のモール取付け部分の詳細は
図7に示す通り、フランジ部17の車外側にモールを取り付けるのであるが、
図4の金属モール10の「コ」の字の2本の横棒に相当する前記金属モールの両側面を挿入するための溝14と15が設けられ、これらに挟まれた平坦部13がモールの内側に貼られた両面テープの貼り付け代になる。前記平坦部13は前記バイザー本体3の長手方向に沿って設けられているが、長手方向全面ではなく、ブラケットを取り付ける箇所では平坦部13が切り欠かれ、その部分に突起16が成形されている。
【0024】
前記突起16に
図5のブラケット7のカシメ刃9を差し込んで固定する。この様子を前記突起の中心を通る垂直断面方向から見た断面図として
図8(a)~(c)に示す。
図8(a)がブラケット7を取り付ける前の状態を、
図8(b)が前記突起16に前記ブラケット7のカシメ刃9を差し込んでかしめ固定したところを示している。さらに
図8(c)に、前記ブラケット7の嵌合爪8に前記金属モール10のスリット穴11を嵌合した状態を示すが、嵌合するのと同時に、前記金属モール10の内側の両面テープ12を前記バイザー本体の平坦部13に貼り付けることで、前記バイザー本体に前記金属モールを固定する。
【0025】
前記金属モールと前記バイザー本体との取付け強度は両面テープで確保されるが、同時に前記突起と前記ブラケットを介しての機械的な接合により前記両面テープが十分な接着強度を得られない際の安全対策が完了する。
【0026】
この接合状態を
図9に示す。
図9(a)に示す金属モール付きバイザー100におけるブラケット接合部分A-Aの断面の接合状態を
図9(c)に、それ以外の部分、
図9(a)のB-Bの箇所に代表される断面図を
図9(b)に示す。
図9(b)では前記バイザー本体3のフランジ部17の車外側に設けられた溝14,15に、金属モール10の両側面が挿入され、金属モール10と平坦部13とに貼り付けられた両面テープ12を介して前記金属モール10が接合されている。
【0027】
前記ブラケットの接合部分A-Aにおいては、
図9(c)に示す通り、前記バイザー本体3と前記金属モール10との間に両面テープは存在せず、前記バイザー本体3のフランジ部17の車外側に一体成形された突起16に、ブラケット7がカシメ固定され、前記ブラケット7の上下の嵌合爪8が金属モール10に設けられたスリット穴11に嵌合することにより機械的に接合される。一方、
図9(b)および(c)におけるバイザー100のフランジ部17の車内側に貼り付けられた両面テープ12は前記バイザー100を車両に取り付けるための両面テープである。
【0028】
なお、本実施例では、前記バイザー100のブラケットの固定箇所ならびに、前記金属モール10の両側面のスリット穴をそれぞれ2か所としたが、それぞれ1か所あるいはそれぞれ3か所以上としても構わない。
【0029】
ここで、当然のことであるが、ブラケットの固定位置と金属モールのスリット穴の位置は正確に一致していなければならない。さらに、前記スリット穴の横幅と前記ブラケットの嵌合爪の幅との関係についてであるが、前記スリット穴の横幅が前記嵌合爪の幅よりも広くないと、物理的に爪が穴に嵌らないので、前記スリット穴の横幅は嵌合爪の幅よりよりやや広くする必要があるが、本発明では前記スリット穴の横幅と前記ブラケットの嵌合爪の幅との差を2mm~4mmとすることが望ましい。
【0030】
この理由として、バイザーにブラケットを固定する作業においては、ブラケットのカシメ刃と突起とを目視しながら突起に取り付けることができるが、モールとブラケットの接合においては、ブラケットが目視できないため、ある程度の寸法許容差を設ける必要があるからである。
【0031】
さらに、金属モールと樹脂バイザー本体では熱膨張率に差があるため、例えば、金属モールの材料がSUS304、バイザー本体の材料がポリメチルメタクリレートとした場合、長さ1mのモールと長さ1mのバイザーでは40℃の温度差で、両者の長さに2~3mmの差が生ずることが見込まれるからである。
次に、請求項1と2に記載の要件の別の態様として、実施例2について説明する。
【実施例2】
【0032】
前述の実施例ではブラケットの上下に設けた嵌合爪を、モールの両側面に開けられたスリット穴にはめ込む構造を述べたが、ここでは
図10(a)に、ブラケット材料の上下を折り曲げて縦壁を設け、そこにスリット穴20を開けた構造としたブラケット18の鳥瞰図を示す。前記ブラケット18の詳細構造を
図11に二面図で示す。ここで、
図11(a)は前記ブラケット18の正面図と平面図であり、
図11(b)はB-B断面図である。
【0033】
一方、前記ブラケット18に対応する金属モール19としては
図10(b)に示す通り、側面のスリット穴に代えて両側面の下部に嵌合爪21を設けた構造とした。ここで、
図10(b)では、金属モール19の内側から見た様子を示しており、金属モール19の内側にはバイザー本体3への接着に用いる両面テープ12が長手方向に沿って貼り付けられている。ただし、前記両面テープは前記金属モール19の内側全面ではなく、前記篏合爪21の部分には隙間が設けられている。これは、この部分では、両面テープ接着に代えて、前記篏合爪21と前記ブラケット18のスリット穴20との篏合による機械的接合が行われるためである。
【0034】
前記ブラケット18および前記金属モール19の取付け順序を
図12の(a)~(c)に垂直断面図で示す。すなわち、バイザー本体3のフランジ部17の車外側に一体成形された突起16に、前記ブラケット18のカシメ刃9をかしめることにより固定し、さらに、
図10(b)の金属モール19を、両面テープを介してバイザー本体の平坦部に貼り付けるのと同時に、前記金属モール19の側面の下部に設けた嵌合爪21を、前記ブラケット18の上下スリット穴20にはめ込むことで機械的に接合するものである。
【0035】
実施例2の利点として、金属モールの側面にスリット穴を開ける必要がないため、金属モールのスリット穴が車外側に露出することがなく、見栄えが良い他、スリット穴からの浸水による影響も少ないものと思われる。
【0036】
さらに請求項1と請求項3に記載の態様として、実施例3と実施例4をあげる。
【実施例3】
【0037】
図13に本実施例のバイザー本体のモール取付け部分の詳細を示す。ここでは
図7に示す突起16に代えて、より長い突起22が設けられている。
【0038】
本実施例に使用するブラケットの構造を
図14に示す。ここで、ブラケット23の貫通孔24は前記突起22を通すための取付け穴であり、前記突起22の径よりも前記貫通孔24の径の方が僅かに大きい。本実施例における金属モールの取付け順序を
図15に示す。
図15(a)は突起の中心を通るバイザー本体の垂直断面図である。次に、
図15(b)に示す通り、前記ブラケット23を、前記突起22に前記貫通孔24を差し込むことによりセットする。さらに、超音波はんだこてのような器具を用いて突起の先端を熱溶融などの方法により潰して広げ、リベットのように前記貫通孔24の径より大きな頭部25を形成する。この状態を
図15(c)に示す。
【0039】
これにより、前記突起22に差し込まれた前記ブラケット23が抜けることなく前記バイザー本体3に固定される。さらに
図15(d)に示すように前記ブラケット23の嵌合爪8を、
図5に示す金属モール10のスリット穴11に嵌合すると同時に、前記金属モール10の内側の両面テープ12を前記バイザー本体の平坦部13に貼り付けることで、バイザー本体に金属モールを接合するものである。
【0040】
前記突起22の長さを前記突起16よりも長くしたのは、前記突起22の先端部を潰して広げ、リベットのような頭部を形成するためである。また、
図13では突起22を円柱若しくは円錐台形状として示したが、四角柱あるいは四角錘台形等の形状であっても構わない。
【実施例4】
【0041】
本実施例では、バイザー側のモール取付け部分は
図13と同じ構造であるが、ブラケットについては
図14の23に代えて、
図16に示すブラケット26を用いる。ブラケット26は実施例2と同様に、ブラケット材料の上下を折り曲げて縦壁を設け、そこにスリット穴20を開けた構造としている。
【0042】
本実施例における金属モールの取付け順序を前記突起22の中心を通る垂直断面図として
図17(a)から(d)に示す。
図15と同様、
図17(a)の長い突起22に
図16のブラケット26の貫通孔24を挿入する。この状態を
図17(b)に示す。次に、前記突起22の先端を超音波はんだこてのような器具を用いて潰して広げ、リベットのように前記貫通孔24の径より大きな頭部を形成して固定する。この状態を
図17(c)に示す。
【0043】
次いで、
図17(d)に示すように、
図10の金属モール19を、両面テープを介してバイザー本体3の平坦部13に貼り付けると同時に、前記金属モール19の側面の下部に設けた嵌合爪21を、前記ブラケット26の上下スリット穴20にはめ込むことで機械的に接合するものである。
【0044】
本発明の請求項1と請求項4に記載の態様を実施例5と実施例6に詳述する。
【実施例5】
【0045】
本実施例に用いるバイザー本体のモール取付け部分の詳細を
図18
に示す。
図18では、
図7の突起16に代えて鎌ホゾ状突起27が示されている。ここで、鎌ホゾとは木組みの「鎌継ぎ」に使用されるホゾで、先端に鎌首状の突出部を有する形状のものを称する。前記鎌ホゾ状突起27はバイザー本体3と一体に成形されたもので、先端が鎌状をした突起が2本垂直上下方向に並んだ構造であり、
図19に示すブラケット28のホゾ取付け用の貫通孔29を、前記鎌ホゾ状突起27に通すことで固定するものである。
【0046】
この様子を前記突起27の垂直断面方向から見た断面図として
図2 (a)~(c)に示す。ここで、
図20(a)が上下垂直方法に並んだ2本の鎌ホゾ状突起の中心を通る断面図で、
図20(b)が前記鎌ホゾ状突起27に前記ブラケット28の貫通孔29を通して固定したところを示している。
【0047】
前記ブラケット28の貫通孔29は、前記突起27の横幅より僅かに大きく、2本の突起の鎌の頭部を含む全体の縦幅よりも僅かに小さくすることにより、前記貫通孔29が前記突起27の頭部を通過する際に、前記貫通孔の端部が前記突起の鎌状の頭部の傾斜面に突き当たり、さらに荷重を加えてはめ込むことにより、前記2本の突起がそれぞれ内側に撓み・しなうことで、前記鎌状の頭部を通過させることができる。前記貫通孔が前記鎌状の頭部を通過後に、前記2本の突起の撓みが復元して広がることで、前記ブラケット28がバイザー本体に固定される。
【0048】
次に、
図20(c)に示すように、前記ブラケット28の嵌合爪8に前記金属モール10のスリット穴11を嵌合すると同時に、前記金属モール10の内側の両面テープ12を前記バイザー本体3の平坦部13に貼り付けることで、前記バイザー本体3に前記金属モール10を取り付ける。
【実施例6】
【0049】
本実施例は実施例5と同様に鎌ホゾ状の2本の突起に、中央に貫通孔を有するブラケットを嵌め込む構造であるが、実施例5の鎌ホゾ状突起2本が、バイザー本体に対して垂直方向(上下縦方向)に並んでいるのに対し、本実施例では、
図21に示すように、前記2本の鎌ホゾ状の突起30が水平方向(左右横方向)に並んでいることが特徴である。
【0050】
また前記突起30の2本の突起の間隔は、前記突起27の2本の突起の間隔よりも広いことが特徴である。前記突起30に嵌めこむための貫通孔を有するブラケットを
図22に示す。
図22で、2つの貫通孔32が
図21中の左右2本の鎌ホゾ状突起30のそれぞれに嵌めこむための貫通孔となる。
【0051】
2つの貫通孔32は鎌を含めた前記突起頭部がそれぞれ通過できる大きさであるが、前記2つの貫通孔の間隔を、前記2本の突起のつけ根の間隔よりも僅かに狭くしたことで、前記ブラケット31の2つの貫通孔32を前記鎌ホゾ状突起30に通す際に、前記2本の突起がそれぞれ内向きに撓んで傾斜し、前記ブラケット31が通過後に撓みが元に戻ることにより、前記ブラケット31が前記突起部に固定されるのである。
【0052】
最後に、本発明の請求項5に記載の態様を、実施例7に詳述する。
【実施例7】
【0053】
図23に本実施例のバイザー本体のモール取付け部分の構造を示す。
図23では、実施例1~6で述べた突起部はなく、代わりに蟻ホゾ部33が設けられている。ここで、蟻ホゾとは木組みの「蟻継ぎ」に使用されるホゾで、断面が逆ハの字形状ものを称する。前記蟻ホゾ部33の上面は、金属モール内側の両面テープを貼り付けるための貼り代である平坦部13と同じ平面を共有しているが、溝14および15が部分的に内側に向かって広がっているため、断面が部分的に逆ハの字状となり、その部分に蟻ホゾが形成されている。
【0054】
一方、本実施例に使用するブラケットの構造を
図24に示す。
図24のブラケット35には前記蟻ホゾにほぼ相似であり、幅が僅かに広い蟻ホゾ挿入部(前記「蟻ホゾ」との接合が可能な雌形状を有する構造)36が設けられており、前記ブラケット35の上下方向には、
図4のブラケット7の嵌合爪8に類似した嵌合爪37が設けられている。本実施例における金属モールの取付け順序を
図25に示す。
【0055】
図25(a)は、
図23の蟻ホゾ部33を通るバイザー本体の垂直断面図である。次に、
図25(b)に示す通り、前記蟻ホゾ部33に前記ブラケット35の蟻ホゾ挿入部36を差し込んでセットする。前記ブラケット35を前記蟻ホゾ部33に差し込むに当たっては、
図23に示したブラケット入れ込み部34に、一旦前記ブラケット35を落とし込み、その後水平方向にスライドさせることにより、前記蟻ホゾ部33に、前記ブラケット35の蟻ホゾ挿入部36を、突き当て部38まで差し込むことでセットが完了する。
【0056】
これにより、前記ブラケット35は、前記バイザー本体3の蟻ホゾ部33に固定される。ただし、前記ブラケット35が水平方向に戻る、すなわちスライドバックして抜け落ちる恐れがあるため、
図25(c)に示すように前記ブラケット35の嵌合爪37に、
図4に示す金属モール10のスリット穴11を嵌合する際に、前記金属モール10の内側の両面テープ12を前記バイザー本体の平坦部13に貼り付けることで、バイザー本体にモールが取り付けられるのと同時に、前記ブラケット35の水平方向の動きが規制される。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、自動車用サイドバイザーの製造、販売などをする事業者に
とって産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0058】
1・・自動車、2・・フロントドア、3・・バイザー本体、4・・リアドア、7・・ブラケット、8・・嵌合爪、9・・カシメ刃、10・・金属モール、11・・スリット穴、12・・両面テープ、13・・モール取付け部の平坦部、14・・溝、15・・溝、16・・突起、17・・フランジ部、18・・ブラケット、19・・金属モール、20・・スリット穴、21・・嵌合爪、22・・突起、23・・ブラケット、24・・貫通孔、25・・頭部、26・・ブラケット、27・・鎌ホゾ状突起、28・・ブラケット、29・・貫通孔、30・・鎌ホゾ状突起、31・・ブラケット、32・・貫通孔、33・・蟻ホゾ部、34・・ブラケット入れ込み部、35・・ブラケット、36・・蟻ホゾ挿入部、37・・嵌合爪、38・・突き当て部、39・・貫通孔、100・・バイザー
【要約】
【課題】 車外側意匠面に金属モールを取り付けた自動車用サイドバイザーにおいて、金属モールのバイザーへの両面テープを介しての接着に引き続いて行われる、安全対策としての機械的な接合を行う際に、バイザーを裏返す必要がないこと、ならびに、機械的な接合のためにバイザー本体に貫通孔を開けないことにある。
【解決手段】バイザーのモール接着部分の一部に突起を形成し、突起にカシメ機構を有し、上下に嵌合爪を有するブラケットをはめ込み、側面にスリット穴を有する金属モールを両面テープによりバイザー接着部分への貼り付ける際に、
ブラケットの嵌合爪とモールのスリット穴とが嵌合することで、機械的な接合を同時に行うこと。
【選択図】
図8