(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】椎弓スペーサ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/70 20060101AFI20240903BHJP
A61B 17/80 20060101ALN20240903BHJP
【FI】
A61B17/70
A61B17/80
(21)【出願番号】P 2021085822
(22)【出願日】2021-05-21
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】319002430
【氏名又は名称】株式会社アクティパワー
(73)【特許権者】
【識別番号】390034740
【氏名又は名称】株式会社日本エム・ディ・エム
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】国松 利和
(72)【発明者】
【氏名】中川 幸洋
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0257795(US,A1)
【文献】特開2020-039664(JP,A)
【文献】特開2017-099877(JP,A)
【文献】中国実用新案第200939166(CN,Y)
【文献】特開2010-142657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/70
A61B 17/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切開されて開かれた椎弓の切断部間に配置される椎弓スペーサであって、
前記椎弓の切断部間に配置されるプレート状のスペーサ本体と、
前記スペーサ本体の両端部
からそれぞれ突出して形成され、椎弓の切断部が安着支持される一対の第1安着部とを備え、
前記スペーサ本体は、その板厚方向に貫通し、椎弓の切断部間方向に伸びる長孔状の開口部を備えており、
前記第1安着部は、互いに対向する椎弓の切断
面に当接するプレート状の当接部を備え、
前記当接部には、その板厚方向に貫通する貫通孔が形成されており、
前記スペーサ本体の前記開口部および前記貫通孔を介してスクリューを椎弓の切断部位置に挿通可能に構成される椎弓スペーサ。
【請求項2】
前記スペーサ本体は、椎弓の切断部間方向を長手方向とする帯板状に形成されている請求項1に記載の椎弓スペーサ。
【請求項3】
前記スペーサ本体は、
板厚方向に対して垂直な方向に凸となるように湾曲状に形成されている請求項1又は2に記載の椎弓スペーサ。
【請求項4】
前記貫通孔の軸線方向が、前記開口部内を向くように前記貫通孔が形成されている請求項1から3のいずれか記載の椎弓スペーサ。
【請求項5】
前記各第1安着部は、前記スペーサ本体の一方面側から他方面側を向く方向に突出して形成されている請求項1から4のいずれかに記載の椎弓スペーサ。
【請求項6】
前記各第1安着部が備える前記各当接部は、互いに対向する方向に向けて凸となる湾曲状又は屈曲状に形成されている請求項5に記載の椎弓スペーサ。
【請求項7】
前記スペーサ本体は、その他方面側から一方面側に向けて凸となる湾曲状に形成されている請求項5又は6に記載の椎弓スペーサ。
【請求項8】
前記スペーサ本体の少なくとも一方の端部に配置される第2安着部をさらに備えており、
前記第2安着部は、前記スペーサ本体の長手方向に沿って伸長するプレート状に形成されている請求項1から7のいずれかに記載の椎弓スペーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椎弓スペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、頚椎脊椎症性脊髄症、後縦靭帯骨化症、黄色靭帯骨化症または椎間板ヘルニアの治療法として、椎弓形成術が知られている。椎弓形成術は、椎弓を切断し、切断部間に、例えば、特許文献1に開示されているような椎弓スペーサを挿入することで、脊柱管の直径を拡大する方法である。切断部間に挿入された椎弓スペーサを椎弓に取り付ける取付手段として、スクリューが一般に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
椎弓形成術に用いられる椎弓プレートとしては、上記特許文献1に開示されるものの他、様々な形態を有するもの知られているが、より低侵襲で、椎弓の切断部間に簡便に設置できるような椎弓スペーサの開発が望まれている。
【0005】
本発明は、このような要望に応えるべくなされたものであって、より低侵襲で、椎弓の切断部間に簡便に設置できる椎弓スペーサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、切開されて開かれた椎弓の切断部間に配置される椎弓スペーサであって、前記椎弓の切断部間に配置されるプレート状のスペーサ本体と、前記スペーサ本体の両端部からそれぞれ突出して形成され、椎弓の切断部が安着支持される一対の第1安着部とを備え、前記スペーサ本体は、その板厚方向に貫通し、椎弓の切断部間方向に伸びる長孔状の開口部を備えており、
前記第1安着部は、互いに対向する椎弓の切断面に当接するプレート状の当接部を備え、前記当接部には、その板厚方向に貫通する貫通孔が形成されており、前記スペーサ本体の前記開口部および前記貫通孔を介してスクリューを椎弓の切断部位置に挿通可能に構成される椎弓スペーサにより達成される。
【0007】
また、上記椎弓スペーサにおいて、前記スペーサ本体は、椎弓の切断部間方向を長手方向とする帯板状に形成されていることが好ましい。
【0008】
また、前記スペーサ本体は、板厚方向対して垂直な方向に凸となるように湾曲状に形成されていることが好ましい。
【0009】
また、前記貫通孔の軸線方向が、前記開口部内を向くように前記貫通孔が形成されていることが好ましい。
【0010】
また、前記各第1安着部は、前記スペーサ本体の一方面側から他方面側を向く方向に突出して形成されていることが好ましい。
【0011】
また、前記各第1安着部が備える前記各当接部は、互いに対向する方向に向けて凸となる湾曲状又は屈曲状に形成されていることが好ましい。
【0012】
また、前記スペーサ本体は、その他方面側から一方面側に向けて凸となる湾曲状に形成されていることが好ましい。
【0013】
また、前記スペーサ本体の少なくとも一方の端部に配置される第2安着部をさらに備えており、前記第2安着部は、前記スペーサ本体の長手方向に沿って伸長するプレート状に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、よりコンパクトで、椎弓の切断部間に簡便に設置できる椎弓スペーサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る椎弓スペーサを示す概略構成斜視図である。
【
図2】
図1に示す椎弓スペーサの概略構成平面図である。
【
図3】
図2のA-A断面を示す概略構成断面図である。
【
図4】
図2の矢視B方向から見た概略構成側面図である。
【
図5】
図1係る椎弓スペーサの使用状態を説明するための説明図である。
【
図6】
図1に係る椎弓スペーサの作動を説明するための説明図である。
【
図7】
図1に示す椎弓スペーサを取り付ける椎弓において、棘突起の先端を切除し、スリットを形成した状態を示す図である。
【
図8】
図7の椎弓の棘突起を切断して開いた状態を示す図である。
【
図9】本発明に係る椎弓スペーサの変形例を示す概略構成側面図である。
【
図10】本発明に係る椎弓スペーサの変形例を示す概略構成側面図である。
【
図13】本発明に係る椎弓スペーサの変形例を示す概略構成平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る椎弓スペーサ1について、添付図面を参照して説明する。なお、各図は、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。
図1は、本発明に係る椎弓100スペーサを示す概略構成斜視図であり、
図2は、上側から見た概略構成平面図である。
図3は、
図2のA-A断面における概略構成断面図であり、
図4は、
図2の矢視B方向から見た概略構成側面図である。
【0017】
本発明に係る椎弓スペーサ1は、椎弓形成術に使用されるものであって、
図5に示されるように、椎弓100を切断して開かれた椎弓100の切断部間に配置される椎弓スペーサ1である。この椎弓スペーサ1は、
図1~
図4に示すように、スペーサ本体2と、一対の第1安着部3とを備えている。ここで、椎弓スペーサ1の材料としては、特に限定されず、十分な強度と生体適合性を有するものであれば任意に選択することができる。例えば、SUS316L(JIS規格記号)のようなステンレス鋼、純チタンまたはチタン合金などの金属材料であってもよく、PEEKのような高分子材料であってもよい。
【0018】
スペーサ本体2は、椎弓100の切断部間に配置されるプレート状の部材であり、その板厚方向に貫通し、椎弓100の切断部間方向に伸びる長孔状の開口部21を備えている。なお、本発明においては、スペーサ本体2は、椎弓100の切断部間方向を長手方向とする帯板状に形成されている。
【0019】
椎弓スペーサ1が備える一対の第1安着部3は、椎弓100の切断部が安着支持される部分であり、各第1安着部3は、スペーサ本体2の両端部にそれぞれ配置されている。これら第1安着部3は、スペーサ本体2の一方面側2aから他方面側2bを向く方向に突出して(伸長して)形成されており、
図5の使用状態を説明する説明図に示すように互いに対向する椎弓100の切断部側(切断面)に当接するプレート状の当接部31を備えて構成されている。
【0020】
各当接部31は、
図2に示すように、互いに対向する方向に向けて凸となる湾曲状又は屈曲状に形成されている。また、この当接部31には、その板厚方向に貫通する貫通孔32が形成されており、
図6の説明図に示すように、スペーサ本体2の開口部21および当接部31における貫通孔32を介してスクリューSを椎弓100の切断部位置に挿通可能に構成されている。なお、互いに対向する方向に向けて凸となる湾曲状(又は屈曲状)に形成される各当接部31が備える貫通孔32は、湾曲状(又は屈曲状)の当接部31の頂部と、当接部31およびスペーサ本体2との接続部分との間の領域に形成されている。
【0021】
また、本実施形態においては、貫通孔32の軸線(L)方向が、スペーサ本体2に形成される開口部21内を向くように貫通孔32が形成されている。なお、貫通孔32の内径は、スクリューSの軸部(ネジが形成される軸部)の外径よりも大きく、かつ、スクリューSの頭部最大外径よりも小さくなるように構成され、椎弓100の切断部位置に挿入されるスクリューSの頭部が、貫通孔32周囲の当接部31部分を押圧することにより、椎弓スペーサ1は、椎弓100の切断部間に固定される。なお、
図1の斜視図や
図3の断面図に示すように、スクリューSの頭部と接触する貫通孔32の周辺部分がテーパ状の凹部を構成するように、該貫通孔32の周辺部分を形成することが好ましい。
【0022】
ここで、スペーサ本体2は、椎弓100の切断部間方向に対して垂直な方向に凸となるように湾曲状に形成されている。より具体的には、本実施形態においては、スペーサ本体2は、その他方面側2bから一方面側2aに向けて、長手方向中央領域が凸となる湾曲状に形成されている。換言すると第1安着部3の伸長方向とは反対側に向けて、長手方向中央領域が凸となるような湾曲状に形成されている。
【0023】
次に、本実施形態に係る椎弓スペーサ1の設置方法について、棘突起を縦割りする棘突起縦割法による椎弓形成術を例に挙げて説明する。なお、棘突起縦割法ではなく、左右一方の椎弓100を切断する片開き式の椎弓形成術に椎弓スペーサ1を使用してもよい。椎弓100形成術において、
図7に示されるように、棘突起101の端部を切除した後に、棘突起101を縦割りする。次に、椎弓100の根元近傍に、ヒンジを形成するためのスリット102を形成する。
【0024】
この状態で、スリット102により形成されたヒンジにより、棘突起101が縦割りされた椎弓100をそれぞれ揺動させることにより、
図8に示されるように、切断面103を開いて離間させる。
【0025】
次に、切断部間に本発明に係る椎弓スペーサ1を
図5に示すように配置する。椎弓スペーサ1の配置に際しては、縦割りされ、開かれた棘突起101の各切断面103に第1安着部3の当接部31(貫通孔32が形成されている部分)が当接するように配置する。ついで、
図6に示すように、スペーサ本体2に形成される開口部21を介してスクリューSを切断部間に差し入れるとともに、当接部31に形成される貫通孔32を介して椎弓100の切断部近傍に該スクリューSを締結し、椎弓スペーサ1が、椎弓100の切断部間に掛け渡された状態に固定される。
【0026】
本発明に係る椎弓スペーサ1は、上記のような構成を備えているため、椎弓100の切断部間の間隔と同程度の大きさに形成することができ、従来の椎弓スペーサ1と比べてよりコンパクト化することが可能となる。
【0027】
また、スペーサ本体2に形成される長孔状の開口部21を介して、固定用のスクリューSを第1安着部3における当接部31が備える貫通孔32に挿入しつつ、該スクリューSを椎弓100の切断部近傍に締結することができるため、切開される体表の切開量を小さくし、術者の術視野が狭い状態であっても、貫通孔32の位置や挿入されるスクリューSを視認することができ、簡便にスクリューSの締結を確実に行うことが可能となる。
【0028】
また、本発明に係る椎弓スペーサ1を使用する場合、切開される体表の切開量を小さくできることから、つまり低侵襲で手術を行うことができることから、手術を受ける患者の体力的な負担をより一層軽減することが可能となる。
【0029】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、スペーサ本体2が、その他方面側2bから一方面側2aに向けて凸となる湾曲状に形成されているが、湾曲していない平坦なプレート状に形成してもよい。あるいは、
図9に示すように、スペーサ本体2が、その一方面側2aから他方面側2bに向けて凸となる湾曲状に形成してもよい。
【0030】
また、縦割りされて開かれた棘突起101の各切断面の互いに対向する角部分を受け入れるために、
図1や
図3等に示すように、各第1安着部3が備える各当接部31が、互いに対向する方向に向けて凸となる湾曲状(又は屈曲状)に形成されることが好ましが、このような形態に特に限定されず、湾曲していない平坦なプレート状に形成することもできる。
【0031】
また、上記実施形態においては、第1安着部3が有する当接部31に形成される貫通孔32の軸線(L)方向が、スペーサ本体2における開口部21内を向くように貫通孔32が形成されているが、このような構成に特に限定されない。例えば、スクリューSを回転させるためのドライバー等の器具が首振り機構を備えているものであれば、貫通孔32の軸線(L)方向が、スペーサ本体2における開口部21内を向いていなくても、開口部21および貫通孔32を介してスクリューSを椎弓100の切断部近傍に締結することが可能となる。
【0032】
また、上記実施形態においては、各第1安着部3を互いに平行となるような配置で構成しているが、このような構成に限定されず、例えば、
図3の矢視C方向から見た場合に、一方の第1安着部3と他方の第1安着部3とがハ字状となるような位置関係として、各第1安着部3を構成してもよい。
【0033】
また、上記実施形態において、
図10や
図11に示すように、スペーサ本体2の各端部に配置される第2安着部4をさらに備えるように構成してもよい。これら各第2安着部4は、スペーサ本体2の長手方向に沿って伸長するプレート状に形成されている。このような第2安着部4を備えることにより、
図12に示すように、第1安着部3が安着支持される椎弓部分以外の椎弓領域を追加の支持面として椎弓スペーサ1が椎弓100の切断部間に掛け渡されることになり、椎弓スペーサ1をより一層安定的に切断部間に設置固定することが可能となる。なお、第2安着部4の材料としては、特に限定されず、十分な強度と生体適合性を有するものであれば任意に選択することができる。例えば、SUS316L(JIS規格記号)のようなステンレス鋼、純チタンまたはチタン合金などの金属材料であってもよく、PEEKのような高分子材料であってもよい。
【0034】
なお、
図12においては、第2安着部4をスペーサ本体2の両端部にそれぞれ設ける構成を示しているが、いずれか一方のみ第2安着部4を備えるように構成してもよい。また、第2安着部4とスペーサ本体2とは、一体的に滑らかな湾曲面を有する形態として形成することが好ましい。
【0035】
また、
図13の平面図や
図14の側面図に示すように、第1安着部3が、プレート状の第3安着部5を備えるように構成してもよい。この第3安着部5は、第1安着部3が有するプレート状の当接部31の側縁に固定されており、その長手方向が、椎弓100の切断部間方向に沿う方向に伸びるように構成されている。この第3安着部3は、椎弓100の切断部近傍エリアであって、第1安着部3が安着支持される椎弓部分以外の椎弓領域を支持する機能を有している。第3安着部5は、可撓性を有するように構成されることが好ましい。可撓性を有するように第3安着部5を構成することにより、第3安着部5を椎弓100の表面に沿うように変形させて椎弓100に巻き付けるようにして椎弓スペーサ1を設置することができるため、より一層、椎弓スペーサ1を安定的に切断部間に設置固定することが可能となる。なお、第3安着部5の材料としては、特に限定されず、生体適合性を有するものであれば任意に選択することができる。例えば、SUS316L(JIS規格記号)のようなステンレス鋼、純チタンまたはチタン合金などの金属材料であってもよく、PEEKのような高分子材料であってもよい。また、プレート状に形成される第3安着部5の厚みを適宜設定することにより可撓性を有するように構成することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 椎弓スペーサ
2 スペーサ本体
21 開口部
3 第1安着部
31 当接部
32 貫通孔
4 第2安着部
5 第3安着部