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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
H01G4/30 516
H01G4/30 201G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018207833
(22)【出願日】2018-11-05
(65)【公開番号】P2019153774
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-09-28
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】10-2018-0025068
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0053428
(32)【優先日】2018-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オー、ウォン クエン
(72)【発明者】
【氏名】リー、テ ギョム
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ハン キュ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヒ フン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ハン ソン
【合議体】
【審判長】井上 信一
【審判官】篠原 功一
【審判官】須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-235807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び内部電極を含むセラミック本体と、
前記内部電極と連結される電極層と、
前記電極層上に形成され、導電性金属、グラフェン、及びベース樹脂を含む導電性樹脂層と、を含み、
前記グラフェンが板状であり、
前記グラフェンは、長軸の長さが0.2nm~10μmであり、短軸の長さが0.2nm~10μmであり、
前記導電性樹脂層は、導電性金属100重量部に対してグラフェン0.5~7.5重量部を含む、積層セラミック電子部品。
【請求項2】
誘電体層及び内部電極を含むセラミック本体と、
前記内部電極と連結される電極層と、
前記電極層上に形成され、導電性金属、グラフェン、及びベース樹脂を含む導電性樹脂層と、を含み、
前記グラフェンが板状であり、
前記導電性樹脂層は、導電性金属00重量部に対してグラフェン0.5~7.5重量部を含む積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記グラフェンは、長軸の長さが0.2nm~10μmである、請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記グラフェンは、短軸の長さが0.2nm~10μmである、請求項2または3のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記グラフェンは、複数の板状構造体が積層された形態である、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記グラフェンは、前記導電性樹脂層において、1μm×1μm(横×縦)の面積内に少なくとも1つ以上配置される、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記導電性樹脂層のラマン(Raman)分析時に、Dバンド(band)及びGバンド(band)のピーク(Peak)が検出される、請求項1から6のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等価直列抵抗の低い積層セラミック電子部品を実現するための外部電極ペースト、及びそれを適用した積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック電子部品のうち、積層セラミックキャパシターは、積層された複数の誘電体層と、誘電体層を挟んで対向配置される内部電極と、上記内部電極に電気的に接続された外部電極と、を含む。
【0003】
上記内部電極及び外部電極は、通常、導電性金属粉末を含むペーストを用いて製造される。
【0004】
積層セラミックキャパシターは、小型でありながらも高容量が保障され、且つ実装が容易であるという利点を有するため、コンピューター、PDA、携帯電話などの移動通信装置の部品として広く用いられている。
【0005】
近年、電子製品の小型化及び多機能化に伴ってチップ部品も小型化及び高機能化する傾向にあるため、積層セラミックキャパシターにおいても、そのサイズが小さいながらも容量が大きい高容量の製品が求められている。
【0006】
上記のような優れた性能を実現するためには、内部電極及び外部電極に用いられるペーストの比抵抗が低いことが要求される。
【0007】
また、積層セラミックキャパシターは、キャパシタンス成分以外に、等価直列抵抗(ESR)及び等価直列インダクタンス(ESL)成分をともに有しており、かかる等価直列抵抗(ESR)及び等価直列インダクタンス(ESL)成分は積層セラミックキャパシターの機能を阻害するようになる。
【0008】
したがって、等価直列抵抗(ESR)値の低い積層セラミックキャパシターの必要性が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0030450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一実施形態は、等価直列抵抗の低い積層セラミック電子部品を実現するための外部電極ペースト、及びそれを適用した積層セラミック電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態は、誘電体層及び内部電極を含むセラミック本体と、上記内部電極と連結される電極層と、上記電極層上に形成され、導電性金属、グラフェン、及びベース樹脂を含む導電性樹脂層と、を含む積層セラミック電子部品を提供する。
【0012】
本発明の他の実施形態は、誘電体層及び内部電極を含むセラミック本体と、上記内部電極と連結される電極層と、上記電極層上に形成され、導電性金属及びベース樹脂を含む導電性樹脂層と、を含み、上記導電性樹脂層のラマン(Raman)分析時に、2つのピーク(Peak)が検出される積層セラミック電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によると、比抵抗が低いグラフェンを外部電極ペースト中に含むことで、等価直列抵抗の低い積層セラミック電子部品を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシターを示す斜視図である。
図2図1のA-A'の断面図である。
図3図2のP領域の拡大図である。
図4】本発明の一構成であるグラフェンを拡大して概略的に示した拡大図である。
図5】本発明の一実施形態によるグラフェンを含む外部電極ペーストのNMR(Nuclear Magnetic Resonance)分析結果を示すグラフである。
図6】本発明の一実施形態によるグラフェンを含む導電性樹脂層のラマン(Raman)分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがある。
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシターを示す斜視図である。
【0018】
図2図1のA-A'の断面図である。
【0019】
図3図2のP領域の拡大図である。
【0020】
図1から図3を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含むセラミック本体110と、上記内部電極121、122と連結される電極層131a、131bと、上記電極層131a、131b上に形成され、導電性金属32a、グラフェン32b、及びベース樹脂32cを含む導電性樹脂層132a、132bと、を含む。
【0021】
具体的には、誘電体層111を含むセラミック本体110と、上記セラミック本体110内で上記誘電体層111を挟んで互いに対向するように配置される第1及び第2内部電極121、122と、上記第1内部電極121と電気的に連結された第1電極層131a、及び上記第2内部電極122と電気的に連結された第2電極層131bと、上記第1電極層131a上に形成される第1導電性樹脂層132a、及び上記第2電極層131b上に形成される第2導電性樹脂層132bと、を含み、第1導電性樹脂層132a及び第2導電性樹脂層132bは、導電性金属32a、グラフェン32b、及びベース樹脂32cを含む。
【0022】
上記第1及び第2導電性樹脂層132a、132bは、導電性金属32aの粉末、グラフェン32b、及びベース樹脂32cを含む外部電極ペーストを適用して形成されるものであって、100重量部の導電性金属32aの粉末に対して、5~30重量部のベース樹脂32c、及び0.5~5重量部のグラフェン32bをそれぞれ含むことができる。
【0023】
上記第1及び第2導電性樹脂層132a、132bは、上記本発明の一実施形態による外部電極ペーストを適用して形成されるものであるため、以下でともに説明する。
【0024】
上記ベース樹脂32cは、接合性及び衝撃吸収性を有し、且つ導電性金属32aの粉末と混合してペーストを製造することが可能なものであれば特に制限されず、例えば、エポキシ系樹脂を含むことができる。
【0025】
上記ベース樹脂32cの含量が5重量部未満である場合には、樹脂の不足によってペーストの製造作業が困難であり、相安定性に劣って相分離や粘度の経時変化を誘発する恐れがあり、金属の分散性に劣って充填率に劣るため、緻密度の低下を誘発する恐れがある。ベース樹脂32cの含量が30重量部を超える場合には、樹脂含量の過多により金属間の接触性に劣って比抵抗が増加し、表面部分の樹脂面積が増加するため、第1及び第2導電性樹脂層132a、132bの形成後にめっき層を形成する時に、未めっきの問題が発生し得る。
【0026】
通常、積層セラミックキャパシターの外部電極に導電性樹脂層が配置される場合、導電性樹脂層が内部電極と電気的に連結される電極層を全体的に覆う形態で製作されるが、外部との電気的導通のために、電流は導電性樹脂層を通じて流れるようになる。
【0027】
上記導電性樹脂層は、電気伝導度の確保のための導電性金属と、衝撃吸収のためのベース樹脂と、を含んで形成されることができる。導電性樹脂層がベース樹脂を含む場合、積層セラミック電子部品の反りのような外部刺激に対する耐久性を向上させることができるが、ベース樹脂を含まない電極に比べて高い比抵抗値を有するようになる。これにより、積層セラミック電子部品の等価直列抵抗(ESR、Equivalent Serial Resistance)が増加する。
【0028】
しかし、本発明の一実施形態によると、第1及び第2導電性樹脂層132a、132bが、導電性金属32aの粉末とベース樹脂32cに加えて、グラフェン32bをさらに含むことで、積層セラミック電子部品の反りのような外部刺激に対する耐久性を向上させるとともに、ベース樹脂による積層セラミック電子部品の等価直列抵抗(ESR、Equivalent Serial Resistance)の増加問題をグラフェンが相殺することにより、等価直列抵抗(ESR、Equivalent Serial Resistance)を低くすることができる。
【0029】
本発明の一実施形態によると、第1導電性樹脂層132a及び第2導電性樹脂層132bがグラフェン32bをさらに含むことで、導電性が従来の外部電極に比べて約1,000~100,000倍程度向上することができ、積層セラミックキャパシターの等価直列抵抗が従来に比べて約30%程度低くなる効果を得ることができる。
【0030】
具体的には、上記第1及び第2導電性樹脂層132a、132bは、導電性金属32aの粉末100重量部に対して0.5~7.5重量部のグラフェン32bを含むことで、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシターの等価直列抵抗を低くすることができる。
【0031】
上記グラフェン32bの含量が0.5重量部未満である場合には、等価直列抵抗の低い積層セラミック電子部品を実現することができず、7.5重量部を超える場合には、第1及び第2導電性樹脂層132a、132bの上部にめっき層を形成する時に、未めっき不良や固着強度低下が生じる。
【0032】
上記グラフェン32bの含量は、外部電極ペースト中に含まれる含量で表現すると、約0.4wt%~6.0wt%の含量に相当し、0.4wt%未満である場合には、上記のとおり、等価直列抵抗の低い積層セラミック電子部品を実現することができず、6.0wt%の含量を超える場合には、第1及び第2導電性樹脂層132a、132bの上部にめっき層を形成する時に、未めっき不良や固着強度低下が生じ得る。
【0033】
特に、上記グラフェン32bの含量が6.0wt%を超える場合には、第1及び第2導電性樹脂層132a、132bの内部の樹脂不足現象によって粘度比が高くなり、導電性樹脂層形成用ペーストを本体の外側に塗布する時に本体のコーナー部が薄くなるため、耐湿特性が悪くなる。これにより、信頼性が低下する問題が発生し得る。
【0034】
より好ましくは、上記グラフェン32bは、導電性金属32aの粉末100重量部に対して2.5重量部~2.9重量部で上記第1及び第2導電性樹脂層132a、132b中に含まれることができる。
【0035】
上記グラフェン32bの含量が、導電性金属32aの粉末100重量部に対して2.5重量部~2.9重量部である場合、外部電極の導電性が向上し、積層セラミック電子部品の等価直列抵抗を低くする効果がより高い。
【0036】
図3を参照すると、上記導電性樹脂層132a、132b内において、上記グラフェン32bは上記ベース樹脂32c中に分散された形態で存在することができ、上記導電性金属32aの表面に吸着されていることができる。
【0037】
上記グラフェン32bが上記ベース樹脂32c中に分散された形態で存在することで、上記ベース樹脂32cによる積層セラミック電子部品の等価直列抵抗(ESR、Equivalent Serial Resistance)の増加を相殺させることができる。
【0038】
具体的には、等価直列抵抗(ESR、Equivalent Serial Resistance)を増加させるベース樹脂32c中に、比抵抗が低く、且つ電気伝導度に優れたグラフェン32bが分散されることで、積層セラミック電子部品の等価直列抵抗(ESR、Equivalent Serial Resistance)が低減することができる。
【0039】
また、上記導電性樹脂層132a、132b内で、上記グラフェン32bは板状に分散されていることができる。
【0040】
上記グラフェン32bが上記第1及び第2導電性樹脂層132a、132b内で板状に分散されていることにより、比表面積が大きくなり、積層セラミック電子部品の等価直列抵抗(ESR)の低減効果がより高くなることができる。
【0041】
従来、外部電極に含まれる導電性樹脂層によって積層セラミック電子部品の等価直列抵抗(ESR)が増加する問題を解決するために、導電性樹脂層中にカーボンナノチューブ(CNT)を含ませる試みがあった。
【0042】
上記カーボンナノチューブ(CNT)は、シングルウォールカーボンナノチューブ及びマルチウォールカーボンナノチューブの少なくとも1つ以上を含むように製作されていた。
【0043】
しかし、上記カーボンナノチューブ(CNT)は、内部が充填または中空となっている柱形状や、内部に通路が形成された管(pipe)形状を有するため、カーボンナノチューブ(CNT)を所定量以上含有しない場合には、積層セラミック電子部品の等価直列抵抗(ESR)の低減効果が微小であり得る。
【0044】
また、導電性樹脂層内での金属間接触(Contact)及びトンネリングを助長するためには、外部電極ペースト中における分散が必須である。
【0045】
これに対し、積層セラミック電子部品の等価直列抵抗(ESR)の低減効果を大きくするためにカーボンナノチューブ(CNT)を過量に投入する場合には、外部電極ペースト中におけるカーボンナノチューブ(CNT)の分散において問題が発生し得る。
【0046】
また、カーボンナノチューブ(CNT)の含量が過量である場合には、導電性樹脂層の上部にめっき層を形成する時に、未めっき不良や固着強度低下の問題が発生し得る。
【0047】
また、カーボンナノチューブ(CNT)の含量が過量である場合、導電性樹脂層中に含有されるベース樹脂の含量が相対的に少なく含有されざるを得ないため、導電性樹脂層の弾性による衝撃緩和効果が得られなくなる。
【0048】
しかし、本発明の一実施形態によると、上記第1及び第2導電性樹脂層132a、132b内に比表面積が大きい板状のグラフェン32bを含むことで、積層セラミック電子部品の等価直列抵抗(ESR)の低減効果がより高くなる。
【0049】
すなわち、本発明の一実施形態によるグラフェン32bは板状であって比表面積が大きいため、カーボンナノチューブに比べて少量の含量でも積層セラミック電子部品の等価直列抵抗(ESR)の低減効果が高い。
【0050】
また、グラフェン32bは、カーボンナノチューブに比べて少量の含量でも電気的特性の効果があるため、外部電極ペーストの製造時に均一に分散可能であり、優れた信頼性を有することができる。
【0051】
また、第1及び第2導電性樹脂層132a、132bが所定の範囲量でグラフェン32bを含むことで、上部にめっき層を形成する時に、未めっき不良や固着強度低下の問題が発生しない。
【0052】
また、第1及び第2導電性樹脂層132a、132bがグラフェン32bを少量含有する場合にも積層セラミック電子部品の等価直列抵抗(ESR)の低減効果が得られるため、ベース樹脂を従来と同様に含むことができ、導電性樹脂層の弾性による衝撃緩和効果を従来と同様に得ることができる。
【0053】
上記グラフェン32bは、長軸の長さが0.2nm~10μmであり、短軸の長さが0.2nm~10μmであることができるが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0054】
本発明の一実施形態によると、上記グラフェン32bは、上記第1及び第2導電性樹脂層132a、132bにおいて、1μm×1μm(横×縦)の面積内に少なくとも1つ以上配置されることができる。
【0055】
特に制限されないが、上記グラフェン32bは、例えば、第1及び第2導電性樹脂層132a、132bでの1μm×1μm(横×縦)の面積内で測定されることができる。
【0056】
例えば、上記第1及び第2導電性樹脂層132a、132bでの1μm×1μm(横×縦)の面積内におけるグラフェン32bの測定は、積層セラミックキャパシターの長さ-厚さ方向の断面のイメージを透過型電子顕微鏡(TEM、Transmission Eletron Microscope)でスキャンして測定することができる。
【0057】
具体的には、積層セラミックキャパシターの幅(W)方向の中央部で切断した長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を透過型電子顕微鏡(TEM、Transmission Eletron Microscope)でスキャンしたイメージから抽出された第1及び第2導電性樹脂層132a、132bの領域に対して、1μm×1μm(横×縦)の面積内でグラフェン32bを測定して求めることができる。
【0058】
図4は本発明の一構成であるグラフェンを拡大して概略的に示した拡大図である。
【0059】
図4を参照すると、上記グラフェン32bは、複数の板状構造体が積層された形態であることができる。
【0060】
上記グラフェン32bは複数の板状構造体が積層された形態であり、各板状構造体の比表面積が大きいため、少量の含量でも積層セラミック電子部品の等価直列抵抗(ESR)の低減効果を高めることができる。
【0061】
すなわち、比抵抗が低く、且つ電気伝導度に優れたグラフェン32bは比表面積が大きい板状構造であり、各板状構造体が複数積層されているため、少量の含量でも積層セラミック電子部品の等価直列抵抗(ESR)の低減効果を高めることができる。
【0062】
また、第1及び第2導電性樹脂層132a、132bがグラフェン32bを少量含有する場合にも、積層セラミック電子部品の等価直列抵抗(ESR)の低減効果を得ることができるため、ベース樹脂を従来と同様に含むことができ、導電性樹脂層の弾性による衝撃緩和効果を従来と同様に得ることができる。
【0063】
上記導電性金属32aは、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、及び銀-パラジウム(Ag-Pd)からなる群から選択される1つ以上であることができるが、これに制限されるものではない。
【0064】
上記誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られるものであれば特に制限されず、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)粉末であることができる。また、上記誘電体層111を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO)などの粉末に、本発明の目的に応じて、種々のセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0065】
上記第1及び第2内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、例えば、銀(Ag)、鉛(Pb)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、及び銅(Cu)のうち1つ以上の物質を含むことができる。
【0066】
上記第1及び第2電極層131a、131bは第1及び第2内部電極121、122と直接的に連結され、第1及び第2外部電極130a、130bと第1及び第2内部電極121、122との電気的導通を確保する。
【0067】
上記第1及び第2電極層131a、131bは導電性金属を含むことができ、上記導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、金(Au)、またはこれらの合金であることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0068】
上記第1及び第2電極層131a、131bは、導電性金属を含むペーストの焼成により形成される焼成型電極であることができる。
【0069】
上記第1及び第2導電性樹脂層132a、132b上にはめっき層(不図示)が形成されることができる。上記めっき層はニッケルめっき層及びスズめっき層を含むことができ、第1及び第2導電性樹脂層132a、132b上にニッケルめっき層が配置され、上記ニッケルめっき層上にスズめっき層が配置されることができる。
【0070】
下記の表1は、グラフェン32bを含む実施例と含んでいない比較例において、積層セラミックキャパシターの第1及び第2導電性樹脂層132a、132b内に含まれるベース樹脂32cであるエポキシ樹脂の含量を変化させながら、ペーストが塗布されたシートの硬化後の比抵抗値、及びそれを適用した積層セラミックキャパシターの等価直列抵抗(ESR、Equivalent Serial Resistance)を評価した結果を示す。
【0071】
上記比較例と実施例による第1及び第2導電性樹脂層132a、132bは、導電性金属32aとして銅(Cu)を70wt%~80wt%の含量で含む。
【0072】
上記比較例はグラフェンを含んでおらず、エポキシ樹脂11wt%を含んでいる。
【0073】
上記実施例はグラフェン32bを2wt%含んでおり、実施例1、2、及び3はそれぞれ、エポキシ樹脂11wt%、13wt%、及び15wt%を含んでいる。
【0074】
比較例及び各実施例による積層セラミックキャパシターは3216サイズ(長さ×幅が3.2mm×1.6mm)に製作された。下記表1に、積層セラミックキャパシターの等価直列抵抗(ESR、Equivalent Serial Resistance)の平均値と標準偏差の結果を示した。
【0075】
【表1】
【0076】
上記表1を参照すると、グラフェン32bを含む実施例1~3で製作された外部電極エポキシペーストが塗布されたシートの硬化後の比抵抗値は、グラフェンを含んでいない従来の比較例の比抵抗値に比べて低い値を有することが分かる。
【0077】
また、上記表1を参照すると、グラフェン32bを含む実施例1~3は、グラフェンを含んでいない従来の比較例に比べて、積層セラミックキャパシターの等価直列抵抗(ESR、Equivalent Serial Resistance)値が約30%程度低減される効果があることが分かる。
【0078】
また、グラフェン32bを含む実施例1~3は、グラフェンを含んでいない従来の比較例に比べて、積層セラミックキャパシターの等価直列抵抗(ESR、Equivalent Serial Resistance)値の標準偏差も低く、より均一な電気的特性を有する積層セラミックキャパシターを実現することができることが分かる。
【0079】
本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品は、下記のように製作されることができる。
【0080】
先ず、チタン酸バリウム(BaTiO)などの粉末を含んで形成されたスラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥して、複数のセラミックグリーンシートを用意する。これにより、誘電体層111を形成することができる。
【0081】
上記セラミックグリーンシートは、セラミック粉末、バインダー、溶剤を混合してスラリーを製造し、上記スラリーをドクターブレード法により数μmの厚さを有するシート(sheet)状に製作することができる。
【0082】
次に、ニッケル粉末を含む内部電極用導電性ペーストを用意することができる。
【0083】
上記グリーンシート上に上記内部電極用導電性ペーストをスクリーン印刷法により塗布して内部電極を形成した後、内部電極が印刷されたグリーンシートを複数積層し、積層体の上下面に、内部電極が印刷されていないグリーンシートを複数積層してから焼成することで、セラミック本体110を製作することができる。上記セラミック本体は、第1及び第2内部電極121、122、誘電体層111、及びカバー層を含む。この際、上記誘電体層は、内部電極が印刷されたグリーンシートが焼成されて形成されたものであり、上記カバー層は、内部電極が印刷されていないグリーンシートが焼成されて形成されたものである。
【0084】
上記内部電極は第1及び第2内部電極からなることができる。
【0085】
上記第1及び第2内部電極とそれぞれ電気的に連結されるように、セラミック本体の外部面に第1及び第2電極層131a、131bを形成することができる。上記第1及び第2電極層は、導電性金属及びガラスを含むペーストを焼成することで形成することができる。
【0086】
上記導電性金属は特に制限されず、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、及びこれらの合金からなる群から選択される1つ以上であることができ、上述のように銅(Cu)を含むことが好ましい。
【0087】
上記ガラスは、特に制限されるものではなく、通常の積層セラミックキャパシターの外部電極の製作に用いられるガラスと同一の組成の物質が使用可能である。
【0088】
上記第1及び第2電極層131a、131bの外側に、銅を含む導電性樹脂組成物を塗布することで第1及び第2導電性樹脂層132a、132bを形成することができる。上記導電性樹脂組成物は銅を含む導電性金属32aの粉末とベース樹脂32cを含むことができ、上記ベース樹脂は、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂であることができる。
【0089】
本発明の一実施形態によると、第1及び第2導電性樹脂層132a、132bは、導電性金属32aの粉末100重量部に対して0.5~7.5重量部のグラフェン32bを含む。
【0090】
上記第1及び第2導電性樹脂層132a、132bは、導電性金属32aの粉末100重量部に対して0.5~7.5重量部のグラフェン32bを含むことで、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシターの等価直列抵抗が低くなることができる。
【0091】
より好ましくは、上記グラフェン32bは、導電性金属32aの粉末100重量部に対して2.5重量部~2.9重量部で上記第1及び第2導電性樹脂層132a、132b内に含まれることができる。
【0092】
上記グラフェン32bの含量が導電性金属32aの粉末100重量部に対して2.5重量部~2.9重量部である場合、外部電極の導電性が向上し、積層セラミック電子部品の等価直列抵抗を低くする効果がより高い。
【0093】
上記第1及び第2導電性樹脂層132a、132bを形成した後、その上部にニッケルめっき層及びスズめっき層をさらに形成する段階を含むことができる。
【0094】
図5は本発明の一実施形態によるグラフェンを含む外部電極ペーストのNMR(Nuclear Magnetic Resonance)分析結果を示すグラフである。
【0095】
図5を参照すると、本発明の一実施形態によるグラフェンを含む外部電極ペーストに対してNMR(Nuclear Magnetic Resonance)分析を行った場合に、sp carbonによるピーク(peak)aが検出されることが分かる。
【0096】
上記sp carbonによるピーク(peak)aは、本発明の一実施形態によるグラフェンを含む外部電極ペーストを適用した積層セラミックキャパシターの外部電極を分析した場合にも同様に検出されることができる。
【0097】
図6は本発明の一実施形態によるグラフェンを含む導電性樹脂層のラマン(Raman)分析結果を示すグラフである。
【0098】
図6を参照すると、本発明の他の実施形態による積層セラミック電子部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含むセラミック本体110と、上記内部電極121、122と連結される電極層131a、131bと、上記電極層131a、131b上に形成され、導電性金属及びベース樹脂を含む導電性樹脂層132a、132bと、を含み、上記導電性樹脂層132a、132bのラマン(Raman)分析時に、2つのピーク(Peak)が検出される。
【0099】
図6のラマン分析のグラフに示されたように、実施例1~3は本発明の実施形態によるサンプルであって、2つのピーク(Peak)が検出される。また、比較例1は、グラファイト(graphite)のラマン分析のグラフであって、1つのピーク(Peak)のみが検出される。
【0100】
本発明の他の実施形態において、上記2つのピーク(Peak)は、Dバンド(band)及びGバンド(band)で検出される。
【0101】
また、比較例1の場合には、Gバンド(band)で1つのピーク(Peak)のみが検出される。
【0102】
本発明の他の実施形態において、上記導電性樹脂層132a、132bはグラフェンを含むことができる。
【0103】
上記導電性樹脂層132a、132bのラマン(Raman)分析時に、2つのピーク(Peak)が検出されることは、上記導電性樹脂層132a、132bがグラフェンを含むためであり、他の炭素材料とはラマン分析グラフが異なって現れる。
【0104】
本発明は、上述の実施形態及び添付図面によって限定されず、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野の通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0105】
10 セラミック本体
11 誘電体層
21 第1内部電極
22 第2内部電極
32a 導電性金属
32b グラフェン
32c ベース樹脂
130a、130b 第1及び第2外部電極
131a 第1電極層
131b 第2電極層
132a 第1導電性樹脂層
132b 第2導電性樹脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6