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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】薄膜層供給器具
(51)【国際特許分類】
   A45D 44/00 20060101AFI20240903BHJP
   B65D 25/10 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
A45D44/00 B
A45D44/00 Z
B65D25/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021536942
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(86)【国際出願番号】 JP2020027833
(87)【国際公開番号】W WO2021020169
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2019137904
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小橋 佳彦
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0217036(US,A1)
【文献】特表2009-536901(JP,A)
【文献】特表2012-516725(JP,A)
【文献】特開平08-056745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 44/00
B65D 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の体表部に貼付される薄膜層が、シート状の担持体の一表面上に剥離可能に担持されてなるシート体と、
このシート体を内部に収めるケースと、
から構成された薄膜層供給器具であって、
前記シート体を構成する担持体が、前記薄膜層を担持した部分を含む利用領域と、該担持体を容易に切断可能にする切取線によって前記利用領域と隔てられた保持用領域とからなり、
前記ケースの内部に、互いに重なり合う向きに配置された複数の前記シート体を、前記担持体の保持用領域を固定することによって該ケース内に保持するシート体保持手段が設けられており、
前記ケースは、前記ケースが閉じられた状態にあるときは前記シート体保持手段に保持されたシート体を寝た姿勢とし、前記ケースが閉じられた状態から開かれた状態になると、前記ケースが開かれる動作に伴って、前記シート体保持手段に保持されたシート体を前記寝た姿勢から所定の角度だけ起き上がった斜めの姿勢とする、
ことを特徴とする薄膜層供給器具。
【請求項2】
前記ケースは、
ケース本体と、
前記ケース本体の一端部においてヒンジを介して揺動可能に連結されたケース蓋と、を有し、
前記ケースが開かれた状態にあるときは、前記シート体保持手段に保持されたシート体を、前記ヒンジ側の高さが前記ヒンジとは反対側の高さよりも高くなるように、前記利用領域と前記保持用領域とが横並びになって所定の角度だけ起き上がった斜めの姿勢とする、請求項1に記載の薄膜層供給器具。
【請求項3】
前記薄膜層が、前記担持体の表面に印刷された層である請求項1または2記載の薄膜層供給器具。
【請求項4】
前記担持体が、前記薄膜層を担持している表面と反対側の表面に、面内に分布した複数の微小凸部を有している請求項1から3いずれか1項記載の薄膜層供給器具。
【請求項5】
前記シート体がシート体保持手段に保持された状態において、前記担持体の層拡がり面内で前記利用領域が1面だけ前記ケース内に存在する請求項1から4いずれか1項記載の薄膜層供給器具。
【請求項6】
前記シート体がシート体保持手段に保持された状態において、前記担持体の層拡がり面内で前記利用領域がn面(2<n)前記ケース内に存在する請求項1から4いずれか1項記載の薄膜層供給器具。
【請求項7】
前記シート体保持手段が、前記ケース内に存在するn面の前記利用領域と前記切取線によって各々隔てられたn面の保持用領域をそれぞれ挟み付けるように構成されている請求項6記載の薄膜層供給器具。
【請求項8】
シート体保持手段が前記担持体の保持用領域を、該担持体の表裏両面側から挟み付けることによって固定するものである請求項1から7いずれか1項記載の薄膜層供給器具。
【請求項9】
前記薄膜層が、人体の体表部に塗布されて美容効果または保健効果を奏する成分を含む層である請求項1から8いずれか1項記載の薄膜層供給器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚等の人体の体表部に貼付される薄膜層を、貼付のために供給する器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1および2に示されているように、人体の体表部に貼付される薄膜層が、シート状の担持体の一表面上に剥離可能に担持されてなるシート体が公知となっている。上記の薄膜層としては、化粧用のものや医療用のもの等、多くのものが知られている。例えば化粧用の薄膜層としては、シミ隠し用の薄膜層が挙げられる。
【0003】
このような薄膜層は、体表部に貼付される前の状態では、自身が薄いことから単独では取扱いが難しいものとなっている。また、シミ隠し用の薄膜層等は、面積も通常かなり小さいものであるので、その点からも取扱いが難しいものとなっている。そのために、上記特許文献1および2に示されているように、薄膜層をシート状の担持体に剥離可能に担持させてシート体を形成し、このシート体から薄膜層を剥がして使用することが広く行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-261947号公報
【文献】特開2006-102485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなシート体を利用することは、薄膜層の取扱いを容易化する上で効果的であるが、別の問題を招くこともある。すなわち、このシート体は、販売や個人の使用に当たっては、複数枚が互いに重ねられた状態で保管あるいは携行されることがあるが、そのようにすると、2枚の薄膜層が直接あるいは間に薄い保護層等を介して重なり合うこともある。すると、重なり合った2枚の薄膜層が、場合によっては静電気の作用も加わって強く密着するので、その後両者が離れる際に双方とも、あるいは一方のみが破損に至ることがある。さらに、上記のような密着が無い場合でも、シート体が保管あるいは携行される際に不用意に外力を受けて、薄膜層が破損することもある。
【0006】
上記の密着に起因する薄膜層の破損を防止するのは比較的容易であり、複数のシート体を互いに重なり合わない状態にして保管あるいは携行すればよい。しかし、そのようにすると、複数のシート体が全て略一つの面内に並んでいる状態になるので、保管あるいは携行する複数のシート体が極めて大面積となって、実用上極めて不便となる。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、皮膚等の人体の体表部に貼付される薄膜層を貼付のために供給する薄膜層供給器具において、複数の薄膜層を互いに重なり合うような状態で保持しておいても薄膜層の破損を防止可能とし、また使用者の操作性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による薄膜層供給器具は、
人体の体表部に貼付される薄膜層が、シート状の担持体の一表面上に剥離可能に担持されてなるシート体と、
このシート体を内部に収めるケースと、
から構成された薄膜層供給器具であって、
シート体を構成する担持体が、薄膜層を担持した部分を含む利用領域と、該担持体を容易に切断可能にする切取線によって利用領域と隔てられた保持用領域とからなり、
上記ケースの内部に、互いに重なり合う向きに配置された複数のシート体を、前記担持体の保持用領域を固定することによって該ケース内に保持するシート体保持手段が設けられている、
ことを特徴とするものである。
【0009】
なお、上記の「容易に切断可能」とは、大人が普通に手で引っ張ると切断できることを意味するものである。また、「複数のシート体を互いに重なり合う向きに配置」とは、各シート体の少なくとも一部が重なり合うように配置することを意味するものであり、重なり方向から見たときに全てのシート体が必ずしも整合していなくてもよい。
【0010】
本発明の薄膜層供給器具において、薄膜層は好ましくは、担持体の表面に印刷された層から構成される。
【0011】
また担持体は、薄膜層を担持している表面と反対側の表面に、面内に分布した複数の微小凸部を有していることが望ましい。
【0012】
また、本発明の薄膜層供給器具においては、シート体がシート体保持手段に保持された状態下で、担持体の層拡がり面内で上記利用領域が1面だけケース内に存在してもよい。
【0013】
あるいは、シート体がシート体保持手段に保持された状態下で、担持体の層拡がり面内で上記利用領域がn面(2<n)ケース内に存在してもよい。このように利用領域がn面(2<n)ケース内に存在する場合、シート体保持手段は、ケース内に存在するn面の利用領域と切取線によって各々隔てられたn面の保持用領域をそれぞれ挟み付けるように構成されることが望ましい。
【0014】
またシート体保持手段は、担持体の保持用領域を、該担持体の表裏両面側から挟み付けることによって固定するものであることが望ましい。
【0015】
他方、薄膜層は、人体の体表部に塗布されて美容効果または保健効果を奏する成分を含む層であることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の薄膜層供給器具によれば、シート体をケース内に保持して外部から力を受けないようにし、その上でシート体の保持は担持体の利用領域とは別の保持用領域を使って行うようにしたので、互いに重なり合うように複数のシート体が配置されていても、利用領域にある複数の薄膜層が互いに強く密着することが避けられる。そこで、薄膜層が破損することが効果的に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態による薄膜層供給器具を示す斜視図
図2図1とは異なる状態にある上記薄膜層供給器具を示す斜視図
図3図1とは異なる状態にある上記薄膜層供給器具を示す部分断面図
図4】上記薄膜層供給器具で用いられたシート体を示す斜視図
図5】上記シート体を示す概略断面図
図6】本発明の薄膜層供給器具による薄膜層供給を説明する概略図
図7】本発明の薄膜層供給器具による薄膜層供給を説明する概略図
図8】本発明の薄膜層供給器具による薄膜層供給を説明する概略図
図9】本発明の第2実施形態による薄膜層供給器具を示す斜視図
図10】本発明の第3実施形態による薄膜層供給器具を示す斜視図
図11図10とは異なる状態にある上記第3実施形態の薄膜層供給器具を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態による薄膜層供給器具1を示す斜視図であり、ここではそのケースが開けられた状態を示している。また図2および図3はそれぞれ、図1とは異なる状態にある薄膜層供給器具1を示す斜視図、部分断面図である。この薄膜層供給器具1は基本的に、シート体10と、このシート体10を内部に収めるケース30とから構成されている。図1図3ではシート体10がケース30内に保持された状態を示している。以下図4および図5を参照して、まずシート体10について説明する。
【0019】
図4はシート体10の外観を示す斜視図であり、この図4中のV-V線に沿った部分の断面形状を図5に示している。なお図5は概略の断面形状を示すものであり、断面各部の厚さ等は実物と異なっている。図示のようにシート体10は、シート状の担持体11の一表面(図5中の上表面)上に、薄膜層12が剥離可能に担持されてなる。なお本例のシート体10には、薄膜層12を間に置いて担持体11と向かい合う形にして保護層13も設けられている。
【0020】
担持体11および保護層13は、例えば不織布から形成されている。一方薄膜層12は、例えば厚さが30~200nm程度の透明な基材膜に、印刷部12aが形成されてなる。印刷部12aは本例ではシミ隠しとして使用されるものであり、肌色に着色されている。上記基材膜は例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、あるいはこれらの共重合体を含む材料から構成されている。なお、この種の材料については、例えば特許第6037371号公報に詳しい記載がなされている。
【0021】
担持体11、薄膜層12および保護層13は、直線状に延びる切取線Cを境にして、利用領域Aと保持用領域Bとに隔てられている。薄膜層12の印刷部12aが形成された部分は、利用領域Aに含まれている。本例では、共通の1つの保持用領域Bから、切取線Cを介して2つの利用領域Aが連続している。保持用領域Bには、担持体11から保護層13まで貫通する、一例として3個の保持用円孔10aが穿設されている。切取線Cは、担持体11から保護層13まで貫通するミシン目状の切り込みであり、利用領域Aは保持用領域Bに対して、この切取線Cにおいて容易に切断可能となっている。この「容易に切断可能」が意味するところは、先に説明した通りである。
【0022】
なお、シート体10のケース30への保持については後述するが、この保持が担持体11だけを保持することによってなされる場合は、切取線Cを、担持体11だけに設けるようにしてもよい。その場合は、担持体11が切取線Cを境に、利用領域Aと保持用領域Bとに隔てられることになる。
【0023】
次に図1図3に戻って、ケース30について説明する。ケース30は、ケース本体31とケース蓋32とから構成されている。ケース本体31は、概略四隅部が丸みを帯びた四角形状の底板31aと、この底板31aの周囲から立ち上がった側壁31bとからなる浅い開放容器状に形成されている。ケース蓋32も同様に、概略四隅部が丸みを帯びた四角形状の底板32aと、この底板32aの周囲から立ち上がった側壁32bとからなる浅い開放容器状に形成されている。ケース本体31およびケース蓋32は、各側壁31b、32bの一端部においてヒンジ33(図3参照)で連結されている。なおケース本体31、ケース蓋32およびヒンジ33は、例えば合成樹脂から一体的に形成されている。
【0024】
ケース蓋32は、上述のようにヒンジ33を介してケース本体31に連結されていることにより、ケース本体31に対してヒンジ33を軸に図1の矢印R方向に揺動可能となっている。図1は、このように揺動可能なケース蓋32が開蓋状態、つまりケース本体31の上方を開いた状態にあるところを示している。ケース蓋32がこの開蓋状態から、ケース本体31に近付く方向に揺動されると、最終的にはケース蓋32の側壁32bの先端面が、ケース本体31の側壁31bの先端面と接する閉蓋状態となる。図3の断面図は、この閉蓋状態となっているところを示している。
【0025】
なおケース本体31の側壁31bには、左右にそれぞれ切り込み31cが設けられ、またヒンジ33と反対側の端部に凹部31dが形成されている。上述のように閉蓋状態となったケース蓋32を開蓋状態にしようとする際には、操作する指先を、上記切り込み31cあるいは凹部31dから、ケース蓋32の側壁32bの先端面に宛がうことができるので、開蓋操作を容易に行うことができる。ここでケース本体31およびケース蓋32には、ケース蓋32の閉蓋状態を維持できる公知の機構が設けられるのが望ましい。そのような機構として具体的には、ケース本体31およびケース蓋32の先端側(ヒンジ33による連結部と反対側)において両者を係合させ、押し込まれると弾性変形して係合を解除するような機構等が適用可能である。
【0026】
ケース本体31とケース蓋32とは、上記ヒンジ33に加えて、下記の構成によっても連結されている。以下、この構成について説明する。ケース30内には、連結部材40が配されている。連結部材40は例えば合成樹脂から形成されたもので、ほぼケース本体31の長さ方向に延びる中央部41と、この中央部41の一端部(ヒンジ33から遠い側の端部)において左右外方に延びる1対のガイド部42と、中央部41の他端部に固定された筒状部43とを有している。この連結部材40を保持するためにケース本体31には、その側壁31bの左右両側部の上端から内側に折り返して、底板31aと略平行に延びる1対のガイド板31eが形成されている。上記1対のガイド部42は各々、底板31aとガイド板31eとの間に入った状態にされており、上下から底板31aとガイド板31eとによって位置規定されて、図1中の矢印Y方向に移動可能となっている。
【0027】
他方、ケース蓋32の底板32aの内面には、該底板32aから起立した1対の軸支部35が設けられている。これらの軸支部35も、例えば合成樹脂によりケース蓋32と一体的に形成されている。各軸支部35は先端から内方つまり互いの方に突出した棒状の軸(図示せず)を有し、それらの軸は筒状部43の一端、他端から該筒状部43内に収容されている。軸支部35はケース蓋32の揺動に従って向きを変え、ケース蓋32が前述した開蓋状態にあるときは上記軸が最も高い位置を取り(図1の状態)、ケース蓋32が前述した閉蓋状態にあるときは上記軸が最も低い位置を取る(図3の状態)ように変位する。
【0028】
これらの軸支部35に対して、筒状部43を介して連結している連結部材40は、前述したようにガイド部42を図1中の矢印Y方向に移動させながら、これらの軸支部35の変位に追随する。したがって連結部材40は、ケース蓋32が開蓋状態にあるときは筒状部43が比較亭高い位置にある斜めの姿勢となり、ケース蓋32が閉蓋状態にあるときは筒状部43が比較的低い位置にある低く寝た姿勢(ケース本体31の底板31aと略平行になる姿勢)となる。
【0029】
次にシート体10の保持について説明する。本実施形態においては、シート体保持手段としてのシート体保持ユニット50によって、シート体10がケース30内に保持される。シート体保持ユニット50は図1に示すように、本体51と、この本体51と組み合わせられる蓋体52とによって構成されている。図2には、本体51と蓋体52との所定の組み合わせ(図1の表示状態)が解除された状態を示している。シート体10は、シート体保持ユニット50をこの図2の状態にして、該シート体保持ユニット50に保持する作業を受ける。なお図1および図2では、図の煩雑化を避けるために、シート体10を2点鎖線で示している。
【0030】
蓋体52は本体51に対して、ヒンジ54を介して揺動自在に取り付けられている。このヒンジ54が介設された端部の反対側の端部において、本体51および蓋体52には、両者の組合せ状態を維持させる下記の係合機構が形成されている。シート体保持ユニット50にシート体10を保持させる際には、上記係合機構による本体51と蓋体52との係合が解除された後、蓋体52は本体51の上方を大きく開くように揺動される。本体51の底面の上には、一例として3個の小さい円筒状のシート挿通部53が立設されている。これらのシート挿通部53は、蓋体52に立設された円柱状の3個の円柱状凸部55と共に、上述の係合機構を構成している。なお、円筒状のシート挿通部53および円柱状凸部55の代わりに、その他の形状の筒状のシート挿通部およびその内部に嵌合する柱状凸部から係合機構を構成してもよいし、それらの各個数も3個以外とされてもよい。また、シート挿通部53および円柱状凸部55は後述するように、シート体10の保持用円孔10aに挿通させて該シート体10を保持する作用を果たすが、シート体保持ユニット50においてシート体10の一部を単に上下から挟み付ける手段を設け、それによってシート体10を保持させるようにしてもよい。
【0031】
なお、このような本体51と蓋体52、それにヒンジ54も、一例として合成樹脂を用いて一体的に形成することができる。また本体51は、前述した連結部材40の中央部41の上面に取り付けられているが、この取付けは、中央部41と本体51との間に設けた係合機構を介して取り外し自在としてもよいし、あるいは中央部41と本体51とを一体的に形成する等により、取り外し不能にしてもよい。
【0032】
図4に詳細形状を示したシート体10は、シート体保持ユニット50を図2の状態とした後、本体51の3個のシート挿通部53をシート体10の3つの保持用円孔10aに挿通させることにより、本体51に(つまりシート体保持ユニット50に)保持される。その後、蓋体52に形成されている3個の凸部55をそれぞれ上記シート挿通部53の円孔に嵌合させることにより、蓋体52が本体51と係合される。この状態とすることにより、シート体保持ユニット50に保持されているシート体10が、該シート体保持ユニット50から脱落することが防止される。なお図1および図2では、シート体10が1枚だけシート体保持ユニット50に保持された状態を示しているが、シート挿通部53はシート体10の厚さよりもかなり長いものとされているので、複数のシート体10を互いに重なり合う状態でシート体保持ユニット50に保持させることも可能である。
【0033】
以上のように複数のシート体10を、互いに重なり合う状態でシート体保持ユニット50に保持させても、薄膜層12の密着に起因して薄膜層12が破損することが効果的に防止される。その詳しい理由は、先に述べた通りである。
【0034】
また本実施形態では、シート体保持ユニット50にシート体10を保持させる作業は、薄ケース蓋32を開蓋状態にしてなされる。この状態下では前述した通り、連結部材40は筒状部43が比較的高い位置にある斜めの姿勢となるので、シート体保持ユニット50も比較的高い位置にあり、上記作業がやり易くなる。
【0035】
次に図6図8を参照して、薄膜層12の供給および利用について説明する。薄膜層12の利用に当たって利用者は、薄膜層供給器具1を図1に示す状態、つまりケース蓋32が開いている状態にする。そして利用者は、シート体保持ユニット50に互いに重なり合って保持されている複数のシート体10、あるいは1枚だけ保持されているシート体10から、印刷部12aが1つ形成されている範囲の薄膜層12を、その上下の担持体11および保護層13ごと把持し、それらをシート体保持ユニット50から離すように引っ張る。すると、上記範囲の担持体11、薄膜層12および保護層13が、切取線Cから容易に切断される。なおシート体10は、図2に示す通りにシート体保持ユニット50に保持されているから、切取線Cから切断されて利用者が把持するのは、図5に示した利用領域Aの部分であり、保持用領域Bはシート体保持ユニット50に保持されたままとなる。
【0036】
次に、図5に示した利用領域Aの部分から、利用者によって保護層13が剥離される。その状態を図6に示す。次に、残っている担持体11および薄膜層12を、図7に示すように、印刷部12aを含んでいる薄膜層12が体表部(例えば肌)Sに密着するように配置する。そしてこの状態で、担持体11を指で押しながら、薄膜層12を体表部Sになじませる。その後、図8に示すように担持体11を剥がし取ると、体表部Sの上には、印刷部12aを含んでいる薄膜層12だけが残る。こうして、例えばシミ隠しである印刷部12aを利用できるようになる。
【0037】
次に本発明の第2実施形態による薄膜層供給器具2について、その斜視形状を示す図9を参照して説明する。なおこの図9において、先に説明した図1図8中のものと同等の要素には同番号を付してあり、それらについての説明は、特に必要の無い限り省略する(以下、同様)。この薄膜層供給器具2は、ケース本体131とケース蓋132とから構成されるケース130内に、シート体110を収めて構成されている。本実施形態の薄膜層供給器具2は基本的に、シート体110が前述したシート体10とは異なる形状とされている点で、薄膜層供給器具1と相違している。すなわちシート体110は、シート体10と同様に担持体11、薄膜層12および保護層13から構成されているが、1枚の薄膜層12において印刷部12aを4個含んでいる。
【0038】
各シート体110は、図4に示した保持用領域Bと同様の保持用領域、利用領域Aと同様の利用領域を有している。利用領域は、1つの保持用領域から右側に2つ、左側に2つの合計4つが形成されており、印刷部12aを含んでいる利用領域はそれぞれ保持用領域から切り取り可能とされている。ケース130内には、図1および図2に示したシート体保持ユニット50と基本的に同様の構造を有するシート体保持ユニット150が配設されている。シート体110の上記保持用領域は、このシート体保持ユニット150に保持されている。シート体110は、例えば複数枚を重ねた状態にしてシート体保持ユニット150に保持されており、印刷部12aを含んでいる利用領域は1つずつ上記保持用領域から切り取って利用され得る。
【0039】
次に本発明の第3実施形態による薄膜層供給器具3について、その斜視形状を示す図10および図11を参照して説明する。この薄膜層供給器具3は、先に説明した図9の薄膜層供給器具2と対比すると基本的に、ケース230の構成の点で異なっている。すなわち本実施形態では、シート体保持ユニット250の左右両側に例えば図示外のヒンジ機構を介して、各々図10中の矢印R方向に揺動可能にしてケース本体231Aとケース本体231Bとが取り付けられており、これらのケース本体231A、ケース本体231Bおよびシート体保持ユニット250からケース230が構成されている。
【0040】
シート体保持ユニット250は、図2に示したシート体保持ユニット50の本体51および蓋体52とそれぞれ基本的に同様の構造を有するユニット本体251およびユニット蓋体252から構成されている。このシート体保持ユニット250に対して、ケース本体231Aとケース本体231Bとが、図10に示す矢印Rの方向に沿って互いに近付く方向に揺動されると、シート体保持ユニット250の2つの側端の一方、他方にそれぞれケース本体231A、ケース本体231Bが密接して、ケース230が閉蓋状態、つまり図11の状態になる。この閉蓋状態から、ケース本体231Aとケース本体231Bとが上記と反対に互いに離れる方向に揺動されると、ケース230の内部が露出した図10の開蓋状態となる。
【0041】
なお図10に示されるように、シート体保持ユニット250を構成するユニット蓋体252の左右両側には、円板状のガイド板240が固定されている。これらのガイド板240は、シート体保持ユニット250に側方からケース本体231A、ケース本体231Bが近接するとき、それぞれケース本体231A、ケース本体231Bを案内して、それらの上面位置をシート体保持ユニット250の上面位置と揃える作用を果たす。なお本実施形態の構成においても、シート体保持ユニット250に対してケース本体231A、ケース本体231Bをそれぞれ閉蓋状態に保つ公知の手段を設けることが望ましい。
【0042】
この第3実施形態による薄膜層供給器具3においては、第2実施形態の薄膜層供給器具2に適用されているシート体110と同様のシート体210が適用されている。シート体210は、例えば複数枚を重ねた状態として、シート体保持ユニット250に保持される。そこで本実施形態でも、ケース230を図10に示す開蓋状態に設定した後、シート体保持ユニット250に保持されているシート体210から、印刷部12aを含んでいる利用領域を1つずつ切り取って利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1、2、3 薄膜層供給器具
10、110、210 シート体
11 担持体
12 薄膜層
12a 薄膜層の印刷部
13 保護層
30、130、230 ケース
31、131、231A、231B ケース本体
32、132 ケース蓋
33 ヒンジ
35 軸支部
40 連結部材
41 連結部材の中央部
42 連結部材のガイド部
43 連結部材の筒状部
50 シート体保持ユニット
51 シート体保持ユニットの本体
52 シート体保持ユニットの蓋体
53 シート体保持ユニットのシート挿通部
240 ガイド板
A 利用領域
B 保持用領域
C 切取線
S 体表部
図1
図2
図3
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図5
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図11