(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】画像記録シート、画像装飾体、及び画像装飾体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B44C 1/17 20060101AFI20240903BHJP
G03G 7/00 20060101ALI20240903BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20240903BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B44C1/17 G
B44C1/17 C
G03G7/00 B
G03G7/00 101B
G03G9/08 381
B32B27/40
(21)【出願番号】P 2020557849
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2019046742
(87)【国際公開番号】W WO2020111221
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2018224840
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518034805
【氏名又は名称】株式会社クロスマインズ
(74)【代理人】
【識別番号】100175075
【氏名又は名称】田中 康子
(72)【発明者】
【氏名】西村 克彦
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-269877(JP,A)
【文献】特開2007-223291(JP,A)
【文献】特開2002-160493(JP,A)
【文献】特開平11-078389(JP,A)
【文献】特開平08-252967(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0280250(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 1/17
G03G 7/00
G03G 9/00
G03G 9/08
B32B 27/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸を有する被装飾体の表面に、トナーからなる現像剤像から構成される画像層を保持した画像装飾体の製造方法であって、
工程1)
トナーにより形成した画像層を保持可能な画像受容面を有するカバー層、水溶解層、基材層の順で積層された画像記録シートの画像受容面に、画像形成装置を用いてトナーによる画像層を形成し、画像装飾シートを得る工程
工程2)工程1で得られた画像装飾シートの画像層側の面に、表面に凹凸を有する被装飾体を載置して積層物を得た後、得られた積層物を加熱及び加圧する工程、及び
工程3)工程2で得られた積層物
を水洗して、画像記録シート
のうち水溶解層と基材層を剥離する工程
を含み、
画像記録シートが、
トナーにより形成した画像層を保持可能な画像受容面を有するカバー層の破断伸度が50%以下で、トナーが乳化重合法で製造されたトナーであり、かつ
被装飾体がガラスである、製造方法。
【請求項2】
工程2の加熱及び加圧前に、少なくとも積層物の画像装飾シート側に、
局面に追従する離型性材料を設け、加熱及び加圧後に、
局面に追従する離型性材料を剥離する工程をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程3に続いて、お湯でカバー層を除去する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
工程2の加熱の温度が、120℃~160℃である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な材料(被装飾体)にトナー画像を形成するための画像装飾シートに関する。また本発明は、画像装飾シートにより画像を転写した画像装飾体に関する。さらに本発明は、画像装飾体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、紙、フィルム、ガラスをはじめとする様々な材料(被装飾体)に、好みのデザインのフルカラー画像をオンデマンドで形成することが行われている。この様な画像形成は、材料の厚さ、柔軟性、風合い等の性質に左右される。
【0003】
画像形成装置を用いて画像を形成する場合は、被装飾体の厚さが不均一で表面に凹凸を有する場合、被装飾体が独特の柔軟性を有したり独特の風合いを有したりする場合は、望み通りのフルカラー画像を形成することは容易ではない。
【0004】
UVインクジェット方式の画像形成装置を用いて、被装飾体に直接印刷することが行われている。しかし、UVインクジェットはその原理より、モノマー残渣の刺激臭のため、脱気装置が不可欠であり、画像を転写した印刷物に残った刺激臭の除去に1日程度放置することを要する。加えて、UV硬化インクは硬く脆い為に、柔軟性のある被装飾体への追従性に欠ける。
【0005】
タイル、陶器、ガラス、琺瑯へフルカラーオンデマンド印刷を行う場合は、主に水転写が用いられている。水転写は、水転写シート(例えば、特開平11-78389号)に、熱転写方式により画像を形成し、その転写シートと被印刷物を水槽に入れて、水転写シートを被印刷物に被せて、乾燥や焼成をするものであり工程が複雑である。さらに、染料を用いた水転写の場合には、望み通りの画像が表現するのが難しく、耐光性が乏しい為に、ラミネートやトップコート等の後加工が必要となる。
【0006】
特許文献1には、基体と、該基体の少なくとも片面に設けられた画像受像層とを少なくとも有する電子写真用ラミネートフィルムにおいて、前記画像受像層が少なくともウレタン変性ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする電子写真用ラミネートフィルムが記載されている。当該特許文献では、電子写真方式で、電子写真用ラミネートフィルムに反転定着画像を形成し、その後、前記反転定着画像面を転写体上面へ接した形で加熱圧着し、正規画像を得ている。
【0007】
また特許文献2には、電子写真方式で、画像記録シートに反転定着画像を形成する際に、装置の画像形成時の定着工程での優れた搬送性と、その後の加熱圧着工程での良好な接着性を得て、正規画像を得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4168846号
【文献】特開2017-62419号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、表面に凹凸を有する被装飾体へ、所望の電子写真画像を、被装飾体の表面凹凸に追随し鮮明に形成するための画像装飾シートを提供することを目的とする。また本発明は、可撓性を有する材料や剛性を有する材料からなる様々な被装飾体へ、所望の電子写真画像を、被装飾体に追随し鮮明に形成するための画像装飾シートを提供することを目的とする。
【0010】
さらに本発明は、表面に凹凸を有する被装飾体、可撓性を有する材料や剛性を有する材料からなる様々な被装飾体へ、所望の電子写真画像を形成した画像装飾体を提供することを目的とする。
【0011】
また本発明は、表面に凹凸を有する被装飾体へ、表面凹凸に追随した鮮明な画像を形成した画像装飾体を製造する方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、可撓性を有する材料や剛性を有する材料からなる様々な被装飾体へ、被装飾体に追随した鮮明な画像を形成した画像装飾体を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明は、以下の通りである。
[1]画像記録シートと、画像記録シートの画像受容面に画像形成装置を用いてトナーにより形成した画像層を有し、画像層を被装飾体に転写して被装飾体を装飾するための画像装飾シート。
【0013】
[2]画像記録シートが、熱可塑性弾性フィルムを含む、[1]に記載の画像装飾シート。
【0014】
[3]熱可塑性弾性フィルムが、厚さが10μm~35μmであり、伸縮率が500~800%である、[2]に記載の画像装飾シート。
【0015】
[4]熱可塑性弾性フィルムが、フィルム厚が50μmの場合の流動開始温度が110℃であり、かつ120℃及び130℃における一軸伸長粘度がそれぞれ8×102Pa・s及び5×102Pa・sである無黄変ポリウレタンホットメルトフィルムである、[2]または[3]に記載の画像装飾シート。
【0016】
[5]画像記録シートが、熱可塑性弾性フィルムと剥離ライナーとからなる、[2]~[4]のいずれかに記載の画像装飾シート。
【0017】
[6]画像記録シートが、少なくともその一の面に、トナーにより形成した画像層を保持可能であり、画像層を被装飾体に転写した後に除去可能なカバー層を有する基材である[1]に記載の画像装飾シート。
【0018】
[7]カバー層を有する基材が、シリコーン処理層を有する剥離紙である[6]に記載の画像装飾シート。
【0019】
[8]剥離紙が、シリコーン処理層、クレーコート層、紙の順で積層されている、[7]に記載の画像装飾シート。
【0020】
[9]カバー層の破断伸度が50%以下であり、カバー層と基材との間に、水溶解層をさらに含む[6]に記載の画像装飾シート。
【0021】
[10]基材は、画像層を被装飾体に転写した後に除去される、[6]~[9]のいずれかに記載の画像装飾シート。
【0022】
[11]画像記録シートが、少なくともその一の面に、トナーにより形成した画像層を保持可能である水系ポリウレタンフィルムである[1]に記載の画像装飾シート。
【0023】
[12]水系ポリウレタンフィルムは、画像層を被装飾体に転写した後に除去される、[11]に記載の画像装飾シート。
【0024】
[13]被装飾体の表面に、トナーからなる現像剤像から構成される画像層を有する画像装飾体。
【0025】
[14]画像記録シートが、熱可塑性弾性フィルムを含む、[13]に記載の画像装飾体。
【0026】
[15]画像記録シートが、厚さが10μm~35μmであり、伸縮率が500~800%である熱可塑性弾性フィルムを含む、[14]に記載の画像装飾体。
【0027】
[16]熱可塑性弾性フィルムが、フィルム厚が50μmの場合の流動開始温度が110℃であり、かつ120℃及び130℃における一軸伸長粘度がそれぞれ8×102Pa・s及び5×102Pa・sである無黄変ポリウレタンホットメルトフィルムである、[14]または[15]に記載の画像装飾体。
【0028】
[17]画像層が、画像層と画像記録シートとが一体化した画像装飾シートの一部である、[14]~[16]のいずれかに記載の画像装飾体。
【0029】
[18]画像層が、[6]~[12]のいずれかに記載の画像装飾シートにより転写された層である、[13]に記載の画像装飾体。
【0030】
[19]さらに、画像層の、被装飾体とは反対側の面に保護層を有する、[18]に記載の画像装飾体。
【0031】
[20]被装飾体が、紙、和紙、洋紙、絹本、金箔紙、擬似金箔紙、真鍮箔紙、胡粉紙、漆、タイル、陶器、ガラス、金属、ステンレス、プラスチック、フィルム、木材、珪藻土板及び琺瑯から選ばれる一以上である、[13]~[19]のいずれかに記載の画像装飾体。
【0032】
[21]トナーが、オイルレストナー、または乳化重合法で製造されたトナーである、[1]~[12]のいずれかに記載の画像装飾シート、または[13]~[20]のいずれかに記載の画像装飾体。
【0033】
[22]以下の工程を含む、[13]~[21]のいずれかに記載の画像装飾体の製造方法。
工程1)画像記録シートの画像受容面に、画像形成装置を用いてトナーによる画像層を形成し、画像装飾シートを得る工程
工程2)工程1で得られた画像装飾シートの画像層側の面に被装飾体を載置して積層物を得た後、得られた積層物を加熱及び加圧する工程
【0034】
[23]工程2の加熱及び加圧前に、少なくとも積層物の画像装飾シート側に、搬送基材層を設け、加熱及び加圧後に、搬送基材層を剥離する工程をさらに含む、[22]に記載の製造方法。
【0035】
[24]画像記録シートが熱可塑性弾性フィルムであり、工程1の前に、熱可塑性弾性フィルムの画像受容層と反対側の面にプラスチックフィルム製ライナーを貼付する前処理工程、及び工程2の後にかかるプラスチックフィルム製ライナーを剥離する後処理工程を含む、[22]または[23]に記載の製造方法。
【0036】
[25]画像記録シートが、少なくともその一の面に、トナーにより形成した画像層を保持可能であり、画像層を被装飾体に転写した後に除去可能なカバー層を有する基材である、[22]または[23]に記載の製造方法。
【0037】
[26]カバー層を有する基材が、シリコーン処理層を有する剥離紙である、[25]に記載の製造方法。
【0038】
[27]剥離紙が、シリコーン処理層、クレーコート層、紙の順で積層されている、[26]に記載の製造方法。
【0039】
[28]カバー層の破断伸度が50%以下であり、カバー層と基材との間に、水溶解層をさらに含む[22]または[23]に記載の製造方法。
【0040】
[29]工程2の後に、水洗により基材を除去する工程を含む、[28]に記載の製造方法。
【0041】
[30]水洗により基材を除去した後、カバー層を除去する工程をさらに含む、[29]に記載の製造方法。
【0042】
[31]画像記録シートが、少なくともその一の面に、トナーにより形成した画像層を保持可能である水系ポリウレタンフィルムである、[22]または[23]に記載の製造方法。
【0043】
[32]工程2の後に、水系ポリウレタンフィルムを除去する工程を含む、[31]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0044】
本発明により、これまでオンデマンドで所望のデザインを形成することが難しかった種々の被装飾体、例えば紙、和紙、洋紙、絹本、金箔紙、擬似金箔紙、真鍮箔紙、胡粉紙、漆、タイル、陶器、ガラス、金属、ステンレス、プラスチック、フィルム、木材、珪藻土板及び琺瑯など、にトナー画像による所望のデザインを形成することが可能となる。また本発明により、トナー画像による所望のデザインを施した画像装飾体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の画像装飾シートの一態様を示す断面図である。
【
図2】本発明の一態様における画像記録シートの温度と粘度の関係を示すグラフである。TPUは一般の熱可塑性弾性ポリウレタンフィルム、UNHは、無黄変ポリウレタンホットメルトフィルムユニメルトUNH790(日本ユニポリマー株式会社製)を示す。
【
図3】本発明の画像装飾体の一態様を示す断面図である。
【
図4】本発明の積層物の一態様を示す断面図である。
【
図5】本発明の一態様において使用可能な加圧加熱装置の模式図である。
【
図6】製造例10で得られた画像装飾体(ショットグラス)の写真である。
【
図7】製造例11で得られた画像装飾体(ガラス板)の写真である。
【
図8】写真左側は製造例15で得られた画像装飾体、写真右側は製造例16で得られた画像装飾体である。製造例16では剥離ライナーによりグロス調整を行ったため、写真右側のグロスが左側に比べて高くなっている。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0047】
画像装飾シート
本発明の画像装飾シートは、少なくとも一の表面に画像受容面を有する画像記録シートと、画像形成装置を用いてトナーにより形成した画像層とからなる。画像装飾シートは、その画像記録シートの画像受容面に形成した画像層を、被装飾体に転写して被装飾体を装飾するためのシートである。
【0048】
画像記録シート
一の態様において、画像記録シートは、熱可塑性弾性フィルムを含む。熱可塑性弾性フィルムとしては、例えばポリウレタンフィルムを挙げることができる。熱可塑性弾性フィルムの厚さは、被装飾体や製造条件に応じて適宜選択することができ特に限定されないが、例えば10μm~35μmとすることができる。また熱可塑性弾性フィルムは、伸縮率が500~800%であることが、熱圧着により被装飾体を装飾する観点から好ましい。さらに、熱可塑性弾性フィルムは、フィルム厚が50μmの場合の流動開始温度が110℃であり、かつ120℃及び130℃における一軸伸長粘度がそれぞれ8×102Pa・s及び5×102Pa・sである無黄変ポリウレタンホットメルトフィルムであることが、加熱及び加圧により被装飾体を装飾する観点から好ましい。
【0049】
また熱可塑性弾性フィルムは、紙製あるいはプラスチックフィルム製の剥離ライナーを有していても良い。さらに熱可塑性弾性フィルムは、トナーによる画像層のカラーをより忠実に表現するため、透明であることが好ましい。
【0050】
この様な熱可塑性弾性フィルムとしては、公知のフィルムを使用することができ特に限定されないが、好ましいものとして、無黄変ポリウレタンホットメルトフィルムユニメルトUNH790(日本ユニポリマー株式会社製)、ポリウレタンフィルムタフグレイス(株式会社武田産業製)を挙げることができる。
【0051】
画像記録シートは、熱可塑性弾性フィルムと剥離ライナーとが積層されていても良い。剥離ライナーとしては、ポリエチレンなどのプラスチックフィルムまたは紙製のライナーが挙げられる。剥離ライナーは、画像層を被装飾体に転写した後剥離する。また、剥離ライナーとしてフィルム製の表面が平坦な剥離ライナーを使用することで、画像装飾体に形成した画像層のグロスを調整することもできる。
【0052】
別の態様において、画像記録シートは、少なくともその一の面に、トナーにより形成した画像層を保持可能であり、画像層を被装飾体に転写した後に除去可能なカバー層を有する基材とすることができる。
【0053】
この場合、一の態様において、カバー層を有する基材として、シリコーン処理層を有する剥離紙を使用することができる。剥離紙は、シリコーン処理層、クレーコート層、紙の順で積層されていてもよい。この態様においては、シリコーン処理層の表面が、画像記録シートの画像受容面となる。この様な剥離紙としては、公知の剥離紙を使用することができ特に限定されないが、好ましいものとして、剥離紙EV130R、ESR180NC-3A(リンテック株式会社製)を挙げることができる。剥離紙は、画像層を被装飾体に転写した後剥離する。
【0054】
さらに他の態様において、破断伸度が50%以下であるカバー層を有する基材を用いることができ、さらにカバー層と基材との間に、水溶解層を含んでもよい。この場合、基材は、画像層を被装飾体に転写した後に水洗により水溶解層を溶かして除去することができる。このような基材として例えば、トナーにより形成した画像層を保持可能な画像受容面を有するカバー層、水溶解層、基材層の順で積層されたシートである、スリーエムジャパン社製エーワン転写タトゥーシール白地 52207、あるいは特開平11-78389号公報に記載された水転写シートを挙げることができる。
【0055】
一の態様において、画像記録シートが、少なくともその一の面に、トナーにより形成した画像層を保持可能である水系ポリウレタンフィルムとすることができる。水系ポリウレタンフィルムは熱硬化性であることが好ましく、このような水系ポリウレタンフィルムとしては、例えば、オカモト社製コンドームゼロワンを挙げることができる。水系ポリウレタンフィルムは、画像層を被装飾体に転写した後に除去する。
【0056】
画像記録シートの厚さは、画像形成装置により画像層を形成できる厚さであればよく特に限定されない。例えば、50μm~300μm、好ましくは70μm~200μmとすることができる。
【0057】
画像層
画像層は、画像記録シートの画像受容面に、画像形成装置を用いてトナーにより形成した現像剤像から構成される。
【0058】
ここで画像形成装置は、トナー方式の装置を用いることができ特に限定されない。例えば、富士ゼロックス社製の高画質レーザープリンターであるDocuColorシリーズを用いることができる。またトナーは、公知のトナーを使用することができ特に限定されないが、オイルレストナー、または乳化重合法で製造されたEAトナーやEA-Ecoトナー(富士ゼロックス社製)を用いることが、所望の画像を正確に転写するうえで好ましい。中でも、EAトナーより定着温度が低いEA-Ecoトナーを用いることがより好ましい。
【0059】
本発明の画像装飾シートは、例えば次の様に製造することができる。画像記録シートとして熱可塑性弾性フィルムを用いる場合、画像受容面にトナー画像が形成されるような向きで、熱可塑性弾性フィルムをレーザープリンターに装填し、予めレーザープリンターの制御部へ伝送した所望の画像の鏡像データにより画像層を形成し、画像装飾シートを得ることができる。
【0060】
また、画像記録シートとして、カバー層を有する基材または水系ポリウレタンフィルムを用いる場合、画像受容面である、シリコーン処理層等のカバー層の表面またはフィルム表面に、トナー画像が形成されるような向きで、剥離紙をレーザープリンターに装填し、予めレーザープリンターの制御部へ伝送した所望の画像の鏡像データにより画像層を形成し、画像装飾シートを得ることができる。
【0061】
画像装飾体
本発明の画像装飾体は、被装飾体の表面に、トナーからなる現像剤像から構成される画像層を有する。さらに、被装飾体の表面と画像層との間に転写補助層を有していても良い。
【0062】
一の態様において、画像装飾体の画像層は、画像層と画像記録シートが一体化した画像装飾シートの一部であっても良い。この態様において、画像装飾シートは熱可塑性弾性フィルムからなる画像形成シートの画像受容面にトナーによる画像層を形成したものとすることができる。例えば、
図1(a)に示すような、剥離ライナーを有する熱可塑性弾性フィルムに画像層を形成した画像装飾シートの、画像層側の面に被装飾体を配置して、熱可塑性弾性フィルムが溶融する温度まで加熱、及び加圧して画像装飾体を製造することにより、
図3(a)に示すような、被装飾体の表面に画像層と画像記録シートが一体化した画像装飾シートを保持した構成とすることができる。
【0063】
別の態様において、画像装飾体の画像層はトナーによる画像層のみからなる。この態様の画像装飾体を製造するためには、画像装飾シートは、カバー層を有する基材、あるいは水系ポリウレタンフィルムからなる画像記録シートの画像受容面にトナーによる画像層を形成したものとすることができる。このような画像装飾シートの画像層側の面に被装飾体を配置して加熱及び加圧した後、画像記録シートのみを剥離することで、
図3(b)に示すような、被装飾体の表面に画像層を保持した構成となる。
【0064】
画像装飾体に用いる被装飾体は、製造工程における加熱及び加圧に耐えられる材料から構成されるものであればよく限定されない。可撓性を有する材料や剛性を有する材料等を幅広く適用可能である。この様な被装飾体として例えば、紙、和紙、洋紙、絹本、金箔紙、擬似金箔紙、真鍮箔紙、胡粉紙、漆、タイル、陶器、ガラス、金属、ステンレス、プラスチック、フィルム、木材、珪藻土板及び琺瑯等を挙げることができる。
【0065】
転写補助層は、被装飾体と画像層の間に設けることができる層であり、被装飾体の種類や表面の特性、画像装飾体の用途により、その要否及び材料を選択することができる。転写補助層としては例えば、粗面用フィルム、膠、スプレーのり等を用いることができる。
【0066】
本発明の画像装飾体は、画像層の外側、すなわち画像層の被装飾体とは反対側の面に、さらに保護層を設けることができる。保護層は、画像層を保護する、あるいは画像の風合いや色合いを調節するために用いることができ、その用途や目的に応じて材料を選択することができる。このような保護層としては、例えば、公知のコーティング剤(トナーを溶かさないもの)、UV硬化樹脂、フィルムなどを用いることができる。
【0067】
本発明の画像装飾体は、以下に示す画像装飾体の製造方法により製造することができる。
【0068】
画像装飾体の製造方法
本発明の画像装飾体の製造方法について説明する。本発明の画像装飾体の製造方法は、以下の工程を含む。
工程1)画像記録シートの画像受容面に、画像形成装置を用いてトナーによる画像層を形成し、画像装飾シートを得る工程
工程2)工程1で得られた画像装飾シートの画像層側の面に被装飾体を載置して積層物を得た後、得られた積層物を加熱及び加圧する工程
【0069】
工程1の画像装飾シートを得る工程は、上述の通りである。
工程2は、まず画像装飾シートの画像層側の面に、被装飾体を直接あるいは間接に載置して積層物を得る。間接に載置する場合、工程1に続いて、画像装飾シートの画像層側、すなわち画像装飾シートと被装飾体との間に転写補助層を設ける工程を含んでもよい。
【0070】
続いて、積層物を加熱及び加圧する。加熱及び加圧は例えば、
図5に示す加圧加熱装置を用いて行うことができる。
図5において、積層物Mを、E方向にローラーの間を移動するよう装置に装填することで加熱及び加圧を行うことができる。
【0071】
加熱条件及び加圧条件は、画像記録シートや被装飾体に応じて適宜選択することができる。加熱温度は、例えば80℃~200℃、好ましくは120℃~140℃とすることができ、加熱時間は、例えば数秒~数分程度とすることができる。加圧条件は、例えば0.5kg~10kgとすることができる。画像記録シートとして熱可塑性弾性フィルムを用い、画像層と一体化して被装飾体に形成する場合は、使用するフィルムが溶融する温度で一定時間加熱する必要がある。
【0072】
被装飾体が、
図5の加圧加熱装置に適用できない形状や素材の場合、加熱は、公知のアイロン、スチーマー、ドライヤー、ヒートガン等を用いて行うことができ、加圧は、被装飾体の局面に追従する離型性材料で表面を覆って圧迫すると画像層や被装飾体を痛めることが無く好ましい。
【0073】
加熱及び加圧を行う前に、少なくとも積層物の画像装飾シート側に、搬送基材層を設けて、加熱及び加圧後に、搬送基材層を剥離する工程をさらに含んでもよい。搬送基材層を設けることにより、積層物の強度が担保され加熱及び加圧を行う際に画像装飾シートや被装飾体を保護して、所望の画像を鮮明に被装飾体に形成することが可能となる。
【0074】
搬送基材層は、用いる画像記録シートや製造条件によりその要否及び材料を選択することができ特に限定されない。搬送基材層としては、従来公知の離型性のあるプラスチックフィルムや紙、具体的には例えば、きもと社のリリージーを用いることができる。
【実施例】
【0075】
以下に具体的な実施形態を挙げて本発明を説明するが、本発明はその実施形態に限定されるものではなく、それらにおける様々な変更および改変が当業者によって、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく実行され得ることが理解される。
【0076】
画像装飾シートの製造
製造例1
画像記録シートとして、剥離ライナーを有する、厚さ20μm、25μm、30μmの無黄変ポリウレタンホットメルトフィルムユニメルトUNH790(日本ユニポリマー株式会社製)を準備した。これら画像記録シートの画像受容面にトナー像が形成されるように、画像記録装置(富士ゼロックス社製DocuColor1450GA)にセットし、画像記録装置に所望の電子写真画像を送信して画像層を形成し、画像装飾シートを得た。トナーは、乳化重合法で製造されたトナー(富士ゼロックス社製EA-Ecoトナー)を用いた。
【0077】
製造例1-2
製造例1の無黄変ポリウレタンホットメルトフィルムユニメルトUNH790(日本ユニポリマー株式会社製)から剥離ライナーを除去して、新たに剥離ライナー(コクヨ カラーレーザー インクジェット ラベル 貼ってはがせる KPC-HH101-20)を貼り付けたものを画像記録シートとして準備した。続いて製造例1と同様にして画像装飾シートを得た。
【0078】
製造例2
画像記録シートとして、剥離ライナーを有する、厚さ35μmのポリウレタンフィルムタフグレイス(株式会社武田産業製)を用いた以外は製造例1と同様にして画像装飾シートを得た。
【0079】
製造例3
画像記録シートとして、トナーにより形成した画像層を保持可能な画像受容面を有するカバー層、水溶解層、基材層の順で積層されたシート(スリーエムジャパン社製エーワン転写タトゥーシール白地 52207)を準備した。このシートの画像受容面にトナー像が形成されるように、画像記録装置(富士ゼロックス社製DocuColor1450GA)にセットし、画像記録装置に所望の電子写真画像を送信して画像層を形成し、画像装飾シートを得た。トナーは、乳化重合法で製造されたトナー(富士ゼロックス社製EA-Ecoトナー)を用いた。
【0080】
製造例4
画像記録シートとして、シリコーン処理層、クレーコート層、紙の順で積層されている剥離紙(リンテック株式会社製EV130R)を使用した以外は製造例3と同様に画像装飾シートを得た。
【0081】
製造例5
画像記録シートとして、トナーにより形成した画像層を保持可能な画像受容面を有する水系ポリウレタンフィルム(オカモト社製コンドームゼロワン)をあらかじめ水道水で洗い、PETフィルムの上で広げて乾燥し、株式会社クロスマインズ製の乳化作用のある100%水の浄肌浸透電解水にて余計な油分を取り除いたものを準備した。続いて、準備した水系ポリウレタンフィルムを搬送基材層(コクヨ社製カラーレーザー インクジェット ラベル 貼ってはがせるラベル紙30 KPC-HH101-20)上に広げた。このシートの画像受容面にトナー像が形成されるように、画像記録装置(富士ゼロックス社製DocuColor1450GA)にセットし、画像記録装置に所望の電子写真画像を送信して画像層を形成し、画像装飾シートを得た。トナーは、乳化重合法で製造されたトナー(富士ゼロックス社製EA-Ecoトナー)を用いた。
【0082】
画像装飾体の製造
製造例6
製造例1で得られた画像装飾シートの画像層側の面に被装飾体として新鳥の子紙(和紙の一種)を積層して積層物を得た。続いて、この積層物を加圧加熱装置(フジプラ社製ラミパッカーLPD3226Meister6)に装填して加熱したローラーの間を通して加熱圧着した。加熱温度は、120℃~160℃に設定した。加圧加熱装置から取り出した積層物から剥離ライナーを除去して、新鳥の子紙上に所望の画像が形成された画像装飾体を得た。得られた画像は、画像記録装置に送信した電子写真の画像を忠実に再現したものであり、画像記録シートが溶融してトナー像と一体となり、新鳥の子紙の表面凹凸に追随して溶着していた。
【0083】
製造例7
製造例2で得られた画像装飾シートの画像層側の面に被装飾体として新鳥の子紙(和紙の一種)を、積層して積層物を得た。続いて、この積層物を加圧加熱装置(フジプラ社製ラミパッカーLPD3226Meister6)に装填して加熱したローラーの間を通して加熱圧着した。加熱温度は、120℃~160℃に設定した。加圧加熱装置から取り出した積層物から剥離ライナーを除去して、新鳥の子紙上に所望の画像が形成された画像装飾体を得た。得られた画像は、画像記録装置に送信した電子写真の画像を忠実に再現したものであり、画像記録シートが溶融してトナー像と一体となり、新鳥の子紙の表面凹凸に追随して溶着していた。
【0084】
製造例8
製造例4で得られた画像装飾シートの画像層側の面に被装飾体として新鳥の子紙(和紙の一種)を、積層して積層物を得た。続いて、この積層物を加圧加熱装置(フジプラ社製ラミパッカーLPD3226Meister6)に装填して加熱したローラーの間を通して加熱圧着した。加熱温度は、120℃~160℃に設定した。加圧加熱装置から取り出した積層物から剥離紙(リンテック株式会社製EV130R)を除去して、新鳥の子紙上に、トナーのみで構成される画像層により所望の画像が形成された画像装飾体を得た。得られた画像は、画像記録装置に送信した電子写真の画像を忠実に再現したものであり、新鳥の子紙の表面凹凸に追随していた。
【0085】
製造例9
被装飾体として擬似金箔紙(株式会社片岡屏風店よりサンプルとして入手)を用いた以外は製造例8と同様にして画像装飾体を得た。得られた画像は、画像記録装置に送信した電子写真の画像を忠実に再現したものであり、疑似金箔紙に追随していた。疑似金箔紙にしわや亀裂は見当たらなかった。
【0086】
製造例10
製造例3で得られた画像装飾シートの画像層側の面を、被装飾体であるショットグラスの表面に沿わせるようにして重ねた。続いて、局面に追従する離型性材料で画像装飾シートの上から覆い加圧しつつ小型アイロン(ガーメントスチーマー ハイパワースチーム Veholion TIMI-2)にて、加熱温度120℃~160℃に設定して、加熱圧着した。その後、離型性材料を除去し、水洗して基材を除去した。さらにお湯でカバー層をこすり落として除去し、ショットグラス表面(曲面)に所望の画像が形成された画像装飾体(
図6)を得た。得られた画像は、画像記録装置に送信した電子写真の画像を忠実に再現したものであり、ショットグラス表面にしっかり保持されていた。
【0087】
製造例11
製造例3で得られた画像装飾シートの画像層側の面を、被装飾体であるガラス板に重ねた。この積層物を加圧加熱装置(フジプラ社製ラミパッカーLPD3226Meister6)に装填して加熱したローラーの間を通して加熱圧着した。加熱温度は、120℃~160℃に設定した。続いて、離型性材料を除去し、水洗して基材を除去した。さらにお湯でカバー層をこすり落として除去し、ガラス板表面に所望の画像が形成された画像装飾体(
図7)を得た。得られた画像は、画像記録装置に送信した電子写真の画像を忠実に再現したものであり、ガラス板表面にしっかり保持されていた。
【0088】
製造例12
製造例5で得られた画像装飾シートの画像層側の面に被装飾体として擬似金箔紙(株式会社片岡屏風店よりサンプルとして入手)を積層して積層物を得た。続いて、この積層物を加圧加熱装置(フジプラ社製ラミパッカーLPD3226Meister6)に装填して加熱したローラーの間を通して加熱圧着した。加熱温度は、120℃~160℃に設定した。加圧加熱装置から取り出した積層物から搬送基材層、水系ポリウレタンフィルムの順に除去して、疑似金箔紙上に、トナーのみで構成される画像層により所望の画像が形成された画像装飾体を得た。得られた画像は、画像記録装置に送信した電子写真の画像を忠実に再現したものであり、疑似金箔紙に追随していた。疑似金箔紙にしわや亀裂は見当たらなかった。
【0089】
製造例13
被装飾体として、ガラス板を用いた以外は製造例12と同様にして、画像装飾体を得た。得られた画像は、画像記録装置に送信した電子写真の画像を忠実に再現したものであり、ガラス板表面にしっかり保持されていた。
【0090】
製造例14
製造例1で得られた画像装飾シートの画像層側の面に被装飾体として、フィルム(厚さ142μmのペイントフィルム上に、乳白色の伸縮性のある乳白色の弾性フィルム層72μmが積層されたフィルム:スリーエムジャパン株式会社製ペイントフィルム PF001C 粗面・コンクリート・タイル 短期 白)を積層して積層物を得た。続いて、製造例6と同様に加熱及び加圧を行い画像装飾体を得た。得られた画像(
図8左側)は、画像記録装置に送信した電子写真の画像を忠実に再現したものであり、画像記録シートが溶融してトナー像と一体となり、フィルム表面に追随して溶着していた。
【0091】
製造例15
製造例1-2で得られた画像装飾シートの画像層側の面に被装飾体として、フィルム(厚さ142μmのペイントフィルム上に、乳白色の伸縮性のある乳白色の弾性フィルム層72μmが積層されたフィルム:スリーエムジャパン株式会社製ペイントフィルム PF001C 粗面・コンクリート・タイル 短期 白)を積層して積層物を得た。続いて、製造例6と同様に加熱及び加圧を行い、剥離ライナーを除去して画像装飾体を得た。得られた画像(
図8右側)は、画像記録装置に送信した電子写真の画像を忠実に再現したものであり、画像記録シートが溶融してトナー像と一体となり、フィルム表面に追随して溶着していた。さらに、表面が平坦な剥離ライナーにより表面のグロス調整を行ったため、
図8左側の写真に比べて、
図8右側の写真はグロスが高くなっている。
【0092】
参考例
画像記録シートとして、平均厚さ10μmのポリ塩化ビニリデンラップ(株式会社クレハ製クレラップ(登録商標))を用いた以外は、製造例1及び6と同様にして、画像修飾シート及び画像装飾体を製造した。得られた画像装飾体は、画像装飾シートと被装飾体が、トナーのある部分では密着していたがそれ以外の部分では密着していなかった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明により、紙、和紙、洋紙、絹本、金箔紙、擬似金箔紙、真鍮箔紙、胡粉紙、漆、タイル、陶器、ガラス、金属、ステンレス、プラスチック、フィルム、木材、珪藻土板及び琺瑯等の被装飾体上に、トナー画像を形成する事ができる。すなわち本発明により、普通紙にトナーでコピーを行ったかのように、被装飾体上にトナー画像を形成した画像装飾体を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0094】
100、450 画像装飾シート
110、410 画像記録シート
112 熱可塑性弾性フィルム
114 剥離ライナー
116 クレーコート層
118 紙
120、320、420 画像層
122 画像受容面
300 画像装飾体
310 画像層と画像記録シートが一体化した画像装飾シート
330、430 被装飾体
400 積層物
900 加圧加熱装置
911、912、921、922、931、932 加熱加圧ローラー
914、924 ヒータ
940 制御装置
913、923 温度検出器