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特許7547708フルオロリン酸塩ガラス、ガラスプレフォーム、光学素子及びそれを有する光学機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】フルオロリン酸塩ガラス、ガラスプレフォーム、光学素子及びそれを有する光学機器
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/247 20060101AFI20240903BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C03C3/247
G02B1/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023049381
(22)【出願日】2023-03-27
(62)【分割の表示】P 2021538956の分割
【原出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2023085387
(43)【公開日】2023-06-20
【審査請求日】2023-04-25
(31)【優先権主張番号】201910074753.X
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511111585
【氏名又は名称】シーディージーエム グラス カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】No.359, Sec.3, Chenglong Avenue, LongQuan YI District Chengdu, Sichuan 610100 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ・スン
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/065225(WO,A1)
【文献】特開2010-059018(JP,A)
【文献】特開平05-238775(JP,A)
【文献】特開2004-083290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00,
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロリン酸塩ガラスであって、カチオンとアニオンとを含み、
前記カチオンは、
20~40モル%のP5+と、
5~25モル%のAl3+と、
5~20モル%のBa2+と、
15~35モル%のLiと、
1~15モル%のNaと、
0~8モル%のY3+と、
0~15モル%のZn2+と、を含み、
ただし、Cu2+ 、V 5+ 、Cr 3+ 、Mn 2+ 、Fe 3+ 、Co 2+ 、Ni 2+ 、Ag 、及びMo 6+ の少なくともいずれかを含む場合を除く、
前記アニオンは、
25~45モル%のFと、
55~75モル%のO2-と、を含み、
ただし、n(Y 3+Al 3+ /n(Zn 2+Ba 2+ 5+ は0.27以上である、
フルオロリン酸塩ガラス。
【請求項2】
前記カチオンは、
25~35モル%のP5+、及び/又は
10~22モル%のAl3+、及び/又は
6~15モル%のBa2+、及び/又は
18~30モル%のLi、及び/又は
3~12モル%のNa、及び/又は
0~5モル%のY3+、及び/又は
0~10モル%のZn2+を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のフルオロリン酸塩ガラス。
【請求項3】
前記カチオンは、
28~33モル%のP5+、及び/又は
12~20モル%のAl3+、及び/又は
8~13モル%のBa2+、及び/又は
20~26モル%のLi、及び/又は
5~9モル%のNa、及び/又は
0~3モル%のY3+、及び/又は
0~7モル%のZn2+を含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフルオロリン酸塩ガラス。
【請求項4】
前記アニオンは、
30~40モル%のF、好ましくは33~38モル%のF、及び/又は
60~70モル%のO2-、好ましくは62~67モル%のO2-を含む、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のフルオロリン酸塩ガラス。
【請求項5】
(Y 3+Al 3+ /n(Zn 2+ +Ba 2+ +P 5+ =0.27~0.54である、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のフルオロリン酸塩ガラス。
【請求項6】
(Al 3+Zn 2+ /n(Y 3+ +Ba 2+ +P 5+ =0.26~0.8であり、好ましくは0.26~0.6であり、より好ましくは0.26~0.53である、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のフルオロリン酸塩ガラス。
【請求項7】
(Ba 2+ 5+ /n(Zn 2+ +Y 3+ +P 5+ が1.465以下であり、好ましくは1.42以下であり、より好ましくは0.97~1.415である、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のフルオロリン酸塩ガラス。
【請求項8】
Ba 2+/n(Y 3+ +Li +Na =0.08~1.25であり、好ましくは0.13~0.71であり、より好ましくは0.21~0.52である、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のフルオロリン酸塩ガラス。
【請求項9】
前記カチオンは、
0~15モル%のCa2+、好ましくは1~10モル%、さらに好ましくは3~7モル%のCa2+、及び/又は
0~10モル%のSr2+、好ましくは0.5~8モル%、さらに好ましくは0.5~5モル%のSr2+をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載のフルオロリン酸塩ガラス。
【請求項10】
(Ba 2+Ca 2+ /n(Y 3+ +Li +Na が0.9以下であり、好ましくは0.75以下である、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のフルオロリン酸塩ガラス。
【請求項11】
(Li Na /n(Zn 2+ +Ba 2+ +Sr 2+ +Ca 2+ が0.9以上であり、好ましくは0.92~3であり、より好ましくは0.92~1.49である、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載のフルオロリン酸塩ガラス。
【請求項12】
(Sr 2+Ba 2+ /n(Al 3+ +Na +Zn 2+ が1.9以下であり、好ましくは1.75以下であり、より好ましくは0.35~0.84である、
ことを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載のフルオロリン酸塩ガラス。
【請求項13】
前記カチオンは、
0~15モル%のMg2+、好ましくは0~10モル%のMg2+、及び/又は
0~10モル%のK、好ましくは0~5モル%のK、及び/又は
0~5モル%のLa3+、好ましくは0~3モル%のLa3+、及び/又は
0~5モル%のGd3+、好ましくは0~3モル%のGd3+、及び/又は
0~5モル%のB3+、好ましくは0~2モル%のB3+、及び/又は
0~5モル%のSi4+、好ましくは0~3モル%のSi4+、及び/又は
0~5モル%のZr4+、好ましくは0~3モル%のZr4+、及び/又は
0~8モル%のTi4+、Nb5+、W6+及びBi3+の和、好ましくは0~5モル%のTi4+、Nb5+、W6+及びBi3+の和、及び/又は
0~5モル%のYb3+、好ましくは0~3モル%のYb3+、及び/又は
0~5モル%のTa5+、好ましくは0~3モル%のTa5+、及び/又は
0~5モル%のGe4+、好ましくは0~3モル%のGe4+をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載のフルオロリン酸塩ガラス。
【請求項14】
前記フルオロリン酸塩ガラスの屈折率が1.50~1.55であり、好ましくは1.51~1.54であり、アッベ数が70~76であり、好ましくは70~75である、
ことを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載のフルオロリン酸塩ガラス。
【請求項15】
前記フルオロリン酸塩ガラスのガラス転移温度が400℃以下であり、好ましくは390℃以下であり、より好ましくは380℃以下であり、λ80は、350nm以下であり、好ましくは345nm以下であり、λは、300nm以下であり、好ましくは295nm以下であり、耐候性は、3級以上であり、好ましくは2級以上であり、より好ましくは1級以上である、
ことを特徴とする請求項1~14のいずれかに記載のフルオロリン酸塩ガラス。
【請求項16】
前記フルオロリン酸塩ガラスの密度が3.5g/cm以下であり、好ましくは3.45g/cm以下であり、より好ましくは3.4g/cm以下であり、耐水性は、3級以上であり、好ましくは2級以上であり、より好ましくは1級以上である、
ことを特徴とする請求項1~15のいずれかに記載のフルオロリン酸塩ガラス。
【請求項17】
ガラスプレフォームであって、前記ガラスプレフォームは請求項1~16のいずれかに記載のフルオロリン酸塩ガラスを用いて製造された、
ガラスプレフォーム。
【請求項18】
光学素子であって、前記光学素子は請求項1~16のいずれかに記載のフルオロリン酸塩ガラス又は請求項17に記載のガラスプレフォームを用いて製造された、
光学素子。
【請求項19】
光学機器であって、前記光学機器は請求項18に記載の光学素子を有する、
光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本開示は、2019年01月25日に中国国家知識産権局に提出した、特許出願番号が201910074753.Xであり、出願名が「成都光明光電株式有限公司」である中国特許出願の優先権を主張し、その内容の全てが参照によって本開示に組み込まれる。
【0002】
本開示は、フルオロリン酸塩ガラスの技術分野に属し、具体的には、本開示はフルオロリン酸塩ガラス、ガラスプレフォーム、光学素子及びそれを有する光学機器に関する。
【背景技術】
【0003】
フルオロリン酸塩ガラスは、低屈折低分散であり且つ可視領域の幅範囲で高い光線透過率を得ることができるなどの特性を有し、直接精密プレス成形して高水準の非球面レンズを製造することができ、光学系において他のガラスで形成されたレンズと組み合わせることができ、二段スペクトルの特殊分散をよりよく解消し、解像度を高め、光学系の画質を顕著に改善し、従って、ニーズが多く、特に屈折率ndが1.50~1.55であり、アッベ数vdが70以上の低屈折率低分散であり且つ低軟化点を有してプレス成形が容易なフルオロリン酸塩の無色光学ガラスは、市場ニーズが大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、少なくともある程度で関連技術に存在する技術的問題の1つを解決することを目的とする。そのため、本開示は、フルオロリン酸塩ガラス、ガラスプレフォーム、光学素子及びそれを有する光学機器を提供することを一つの目的とし、該フルオロリン酸塩ガラスの屈折率が1.50~1.55であり、アッベ数が70以上であり、且つ光学性能などに優れ、無色であり且つプレス成形が容易であり、それにより市場のニーズを満たす。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、本開示はフルオロリン酸塩ガラスを提供する。本開示の実施例に基づき、前記フルオロリン酸塩ガラスは、カチオンとアニオンとを含み、そのうち、前記カチオンは、20~40モル%のP5+と、5~25モル%のAl3+と、5~20モル%のBa2+と、15~35モル%のLiと、1~15モル%のNaと、0~8モル%のY3+と、0~15モル%のZn2+とを含み、前記アニオンは、25~45モル%のFと、55~75モル%のO2-とを含み、そのうち、n(Y 3+Al 3+ /n(Zn 2+ +Ba 2+ +P 5+ は0.27以上である。
【0006】
発明者らは、その成分、含有量及び特定の成分間の量比を制御することにより、本開示のフルオロリン酸塩ガラスの屈折率を1.50~1.55にさせ、アッベ数を70以上にさせ、且つ光学性能などに優れており、無色であり且つプレス成形が容易であり、それにより市場のニーズを満たすことを見出した。
【0007】
また、本開示の上記実施例に基づくフルオロリン酸塩は、さらに下記添付された技術的特徴を有してよい。
【0008】
本開示のいくつかの実施例において、上記フルオロリン酸塩ガラスの組成における前記カチオンは、25~35モル%のP5+、及び/又は10~22モル%のAl3+、及び/又は6~15モル%のBa2+、及び/又は18~30モル%のLi、及び/又は3~12モル%のNa、及び/又は0~5モル%のY3+、及び/又は0~10モル%のZn2+を含む。これにより、該フルオロリン酸塩ガラスが優れた性能を有するように保証することができる。
【0009】
本開示のいくつかの実施例において、上記フルオロリン酸塩ガラスの組成における前記カチオンは、28~33モル%のP5+、及び/又は12~20モル%のAl3+、及び/又は8~13モル%のBa2+、及び/又は20~26モル%のLi、及び/又は5~9モル%のNa、及び/又は0~3モル%のY3+、及び/又は0~7モル%のZn2+を含む。これにより、該フルオロリン酸塩ガラスが優れた性能を有するように保証することができる。
【0010】
本開示のいくつかの実施例において、上記フルオロリン酸塩ガラスの組成における前記アニオンは、30~40モル%のF、及び/又は60~70モル%のO2-を含む。これにより、該フルオロリン酸塩ガラスが優れた性能を有するように保証することができる。
【0011】
本開示のいくつかの実施例において、上記フルオロリン酸塩ガラスの組成における前記アニオンは、33~38モル%のF、及び/又は62~67モル%のO2-を含む。これにより、該フルオロリン酸塩ガラスが優れた性能を有するように保証することができる。
【0012】
本開示のいくつかの実施例において、上記フルオロリン酸塩ガラスの組成において、n(Y 3+Al 3+ /n(Zn 2+ +Ba 2+ +P 5+ =0.27~0.54である。これにより、該フルオロリン酸塩ガラスが優れた性能を有するように保証することができる。
【0013】
本開示のいくつかの実施例において、上記フルオロリン酸塩ガラスの組成において、n(Al 3+Zn 2+ /n(Y 3+ +Ba 2+ +P 5+ =0.26~0.8であり、好ましくは0.26~0.6であり、より好ましくは0.26~0.53である。これにより、該フルオロリン酸塩ガラスが優れた性能を有するように保証することができる。
【0014】
本開示のいくつかの実施例において、上記フルオロリン酸塩ガラスの組成において、n(Ba 2+ 5+ /n(Zn 2+ +Y 3+ +P 5+ は1.465以下であり、好ましくは1.42以下であり、より好ましくは0.97~1.415である。これにより、該フルオロリン酸塩ガラスが優れた性能を有するように保証することができる。
【0015】
本開示のいくつかの実施例において、上記フルオロリン酸塩ガラスの組成において、nBa 2+/n(Y 3+ +Li +Na =0.08~1.25であり、好ましくは0.13~0.71であり、より好ましくは0.21~0.52である。これにより、該フルオロリン酸塩ガラスが優れた性能を有するように保証することができる。
【0016】
本開示のいくつかの実施例において、上記フルオロリン酸塩ガラスの組成における前記カチオンは、0~15モル%のCa2+、及び/又は0~10モル%のSr2+をさらに含む。これにより、該フルオロリン酸塩ガラスが優れた性能を有するように保証することができる。
【0017】
本開示のいくつかの実施例において、上記フルオロリン酸塩ガラスの組成における前記カチオンは、1~10モル%のCa2+、及び/又は0.5~8モル%のSr2+をさらに含む。これにより、該フルオロリン酸塩ガラスが優れた性能を有するように保証することができる。
【0018】
本開示のいくつかの実施例において、上記フルオロリン酸塩ガラスの組成における前記カチオンは、3~7モル%のCa2+、及び/又は0.5~5モル%のSr2+をさらに含む。これにより、該フルオロリン酸塩ガラスが優れた性能を有するように保証することができる。
【0019】
本開示のいくつかの実施例において、上記フルオロリン酸塩ガラスの組成において、n(Ba 2+Ca 2+ /n(Y 3+ +Li +Na は0.9以下であり、好ましくは0.75以下である。これにより、該フルオロリン酸塩ガラスが優れた性能を有するように保証することができる。
【0020】
本開示のいくつかの実施例において、上記フルオロリン酸塩ガラスの組成において、n(Li Na /n(Zn 2+ +Ba 2+ +Sr 2+ +Ca 2+ が0.9以上であり、好ましくは0.92~3であり、より好ましくは0.92~1.49である。これにより、該フルオロリン酸塩ガラスが優れた性能を有するように保証することができる。
【0021】
本開示のいくつかの実施例において、上記フルオロリン酸塩ガラスの組成において、n(Sr 2+Ba 2+ /n(Al 3+ +Na +Zn 2+ は1.9以下であり、好ましくは1.75以下であり、より好ましくは0.35~0.84である。これにより、該フルオロリン酸塩ガラスが優れた性能を有するように保証することができる。
【0022】
本開示のいくつかの実施例において、上記フルオロリン酸塩ガラスの組成における前記カチオンは、0~15モル%のMg2+、及び/又は0~10モル%のK、及び/又は0~5モル%のLa3+、及び/又は0~5モル%のGd3+、及び/又は0~5モル%のB3+、及び/又は0~5モル%のSi4+、及び/又は0~5モル%のZr4+、及び/又は0~8モル%のTi4+、Nb5+、W6+及びBi3+の和、及び/又は0~5モル%のYb3+、及び/又は0~5モル%のTa5+、及び/又は0~5モル%のGe4+をさらに含む。これにより、該フルオロリン酸塩ガラスが優れた性能を有するように保証することができる。
【0023】
本開示のいくつかの実施例において、上記フルオロリン酸塩ガラスの組成における前記カチオンは、0~10モル%のMg2+、及び/又は0~5モル%のK、及び/又は0~3モル%のLa3+、及び/又は0~3モル%のGd3+、及び/又は0~2モル%のB3+、及び/又は0~3モル%のSi4+、及び/又は0~3モル%のZr4+、及び/又は0~5モル%のTi4+、Nb5+、W6+及びBi3+の和、及び/又は0~3モル%のYb3+、及び/又は0~3モル%のTa5+、及び/又は0~3モル%のGe4+をさらに含む。これにより、該フルオロリン酸塩ガラスが優れた性能を有するように保証することができる。
【0024】
本開示のいくつかの実施例において、上記フルオロリン酸塩ガラスの屈折率は1.50~1.55であり、好ましくは1.51~1.54であり、アッベ数は70~76であり、好ましくは70~75である。
【0025】
本開示のいくつかの実施例において、上記フルオロリン酸塩ガラス転移温度が400℃以下であり、好ましくは390℃以下であり、より好ましくは380℃以下である。λ80は、350nm以下であり、好ましくは345nm以下であり、λは、300nm以下であり、好ましくは295nm以下である。耐候性は、3級以上であり、好ましくは2級以上であり、より好ましくは1級以上である。
【0026】
本開示のいくつかの実施例において、上記フルオロリン酸塩ガラスの密度が3.5g/cm以下であり、好ましくは3.45g/cm以下であり、より好ましくは3.4g/cm以下である。耐酸性は、3級以上であり、好ましくは2級以上であり、より好ましくは1級以上である。
【0027】
本開示の別の態様によれば、本開示はガラスプレフォームを提供する。本開示の実施例に基づき、前記ガラスプレフォームは、上記フルオロリン酸塩ガラスを用いて製造される。
【0028】
本開示の第3の態様によれば、本開示は光学素子を提供する。本開示の実施例に基づき、前記光学素子は、上記フルオロリン酸塩ガラス又は上記ガラスプレフォームを用いて製造される。
【0029】
本開示の第4の態様によれば、本開示は光学機器を提供する。本開示の実施例に基づき、前記光学機器は、上記光学素子を有する。
【0030】
本開示の添付された態様及び利点は、以下の説明において部分的に与えられ、いくつかが以下の説明から明らかになるか、又は本開示の実施を通じて理解される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本開示の実施例を詳細に説明し、以下で説明する実施例は例示的なものであり、本開示を解釈することを意図しているが、本開示を限定するものと理解されるべきではない。
【0032】
具体的な状況で特に明記されていない限り、本明細書に記載されている数値範囲には上限値と下限値が含まれており、「以上」と「以下」には端点値、該範囲内の全ての整数と分数が含まれ、限定された範囲にリストされた特定値に制限されていない。本明細書に言われる「及び/又は」は包括的であり、例えば「A及び/又はB」は、Aのみ、又はBのみ、又はA及びBの両方を意味する。
【0033】
なお、以下に説明する各成分のイオン価は、便宜上で用いられた代表値であり、他のイオン価とは区別がない。光学ガラス中の各成分のイオン価は、代表値以外である可能性がある。例えば、Pは、通常、イオン価が+5価である状態でガラスに存在するので、本開示では「P5+」を代表値としているが、他のイオン価の状態で存在する可能性もあり、それも本開示の保護範囲内にある。
【0034】
本開示の一態様によれば、本開示はフルオロリン酸塩ガラスを提供する。本開示の実施例に基づき、前記フルオロリン酸塩ガラスは、カチオンとアニオンとを含み、そのうち、前記カチオンは、20~40モル%のP5+と、5~25モル%のAl3+と、5~20モル%のBa2+と、15~35モル%のLiと、1~15モル%のNaと、0~8モル%のY3+と、0~15モル%のZn2+とを含み、前記アニオンは、25~45モル%のFと、55~75モル%のO2-とを含み、そのうち、n(Y 3+Al 3+ /n(Zn 2+ +Ba 2+ +P 5+ は0.27以上である。説明すべきこととして、カチオンにおける成分のモル%は該カチオンと全てのカチオンの総モル数との比であり、同様にアニオンにおける成分のモル%は該アニオンと全てのアニオンの総モル数との比である。
【0035】
ガラスの成分:
5+は、ガラスの中で網目構造として機能する重要な必須成分である。導入量が20モル%未満であれば、ガラスの安定性が低下し、結晶化傾向が大きくなるが、その導入量が40モル%を超えると、所定の光学性能を満たすことができない。従って、本開示におけるP5+の含有量は20~40モル%であり、P5+の含有量は好ましくは25~35モル%であり、より好ましくは28~33モル%である。
【0036】
Al3+は、フルオロリン酸塩ガラスにおいて安定性を向上させるために重要な成分である。その導入量が5モル%未満であれば、ガラスの安定性が低下するが、その導入量が25モル%を超えると、ガラス転移温度及び結晶化の上限温度が大幅に上昇し、成形温度が上昇することを引き起こす。従って、本開示におけるAl3+の含有量は5~25モル%であり、Al3+の含有量は好ましくは10~22モル%であり、より好ましくは12~20モル%である。
【0037】
Ba2+はガラスの屈折率を高めることができる。その導入量が5モル%未満であれば、ガラスの屈折率を調整する機能が不十分であるが、その導入量が20モル%を超えると、ガラスの化学的安定性及び熱安定性がいずれも急激に低下し、ガラスの比重が大きくなる。従って、本開示におけるBa2+の含有量は5~20モル%であり、Ba2+の含有量は好ましくは6~15モル%であり、より好ましくは8~13モル%である。
【0038】
Liは、ガラスの安定性を損なわずにガラス転移温度を低下させることができる。その導入量が15モル%未満であれば、ガラス転移温度を低下させる効果が不十分であるが、その導入量が35モル%を超えると、ガラスの安定性が低下し、且つガラスの加工性能が低くなる。従って、本開示におけるLiの含有量は15~35モル%であり、Liの含有量は好ましくは18~30モル%であり、より好ましくは20~26モル%である。
【0039】
Naは、ガラスの溶融性、耐失透性を改善し且つ可視光領域の透過率を向上させることができる。その導入量が1モル%未満であれば、それがガラスの溶融性、耐失透性を改善し且つ可視光領域の透過率を向上させる機能が不十分であるが、その導入量が15モル%を超えると、ガラスの安定性が低下する。従って、本開示におけるNaの含有量は1~15モル%であり、好ましくは3~12モル%であり、より好ましくは5~9モル%である。
【0040】
3+は、ガラスの安定性を高めることができる。その導入量が8モル%を超えると、ガラスの安定性を低下させ、且つガラス転移温度も大幅に上昇する。従って、本開示におけるY3+の含有量は0~8モル%であり、Y3+の含有量は好ましくは0~5モル%であり、より好ましくは0~3モル%である。
【0041】
Zn2+は、ガラスの耐失透性、安定性及び加工性を向上させることができる。その導入量が15モル%を超えると、逆にガラスの耐失透性が著しく低下する。従って、本開示におけるZn2+の含有量は0~15モル%であり、Zn2+の含有量は好ましくは0~10モル%であり、より好ましくは0~7モル%である。
【0042】
は、ガラスの融点を下げ且つガラスの耐候性を向上させることができる。その導入量が25モル%未満であれば、ガラスの耐候性が悪化するが、その導入量が45モル%を超えると、ガラスの溶錬過程における揮発性が大きくなり、ガラスの損耗度が大きくなり、屈折率性能も低下する。従って、本開示におけるFの含有量は25~45モル%であり、Fの含有量は好ましくは30~40モル%であり、より好ましくは33~38モル%である。
【0043】
2-は、ガラスの網目構造の必須成分であり、ガラスの安定性を高め、ガラスの失透を抑え、摩耗度を低下させることができる。その導入量が55モル%未満であれば、ガラスの失透及び摩耗度を抑える効果が不十分であるが、その導入量が75モル%を超えると、ガラスの粘度が上昇し且つ溶融温度が高くなり、透過率の悪化を引き起こす。従って、本開示におけるO2-の含有量は55~75モル%であり、O2-の含有量は好ましくは60~70モル%であり、より好ましくは62~67モル%である。
【0044】
発明者らは、本願のフルオロリン酸塩ガラスが、高い形成安定性、低い分散及び転移温度、優れた透過率、耐候性及び光学特性などを必要とすることを見出し、本願の発明者らは、多数の研究により、ガラス成分中のY3+とAl3+との合計モル数と、Zn2+、Ba2+及びP5+の合計モル数との比(n(Y 3+Al 3+ /n(Zn 2+ +Ba 2+ +P 5+ )を0.27以上に制御することにより、各成分の間は相乗効果を発揮し、ガラスが形成安定性に優れ、ガラスの分散を効果的に低下させ、透過率を改善し、耐候性に優れ、ガラス転移温度が著しく低下し、それによりプレス成形が容易になり、金型の損傷が少なく、金型の耐用年数を保証し、得られたフルオロリン酸塩ガラスの屈折率が1.50~1.55であり、アッベ数が70~76であり、転移温度が400℃以下であり、λ80が350nm以下であり、λが300nm以下であり、さらに好ましくは、ガラス成分中のY3+及びAl3+の合計モル数と、Zn2+、Ba2+及びP5+の合計モル数との比(n(Y 3+Al 3+ /n(Zn 2+ +Ba 2+ +P 5+ )を0.27~0.54に制御し、得られたフルオロリン酸塩ガラスの屈折率が1.51~1.54であり、アッベ数が70~75であり、転移温度が390℃以下であり、より好ましくは380℃以下であり、λ80が345nm以下であり、λが295nm以下であることを見出した。
【0045】
また、発明者らは、本願のフルオロリン酸塩ガラスが、優れた機械的特性及び耐失透性、耐酸性及び軽量化という特性を必要とすることを見出し、本開示の発明者らは、多数の研究により、ガラス成分中のAl3+及びZn2+の合計モル数と、Y3+、Ba2+及びP5+の合計モル数との比(n(Al 3+Zn 2+ /n(Y 3+ +Ba 2+ +P 5+ )を0.26~0.8に制御することにより、各成分の間は相乗効果を発揮し、ガラスは機械的特性が良好であり、耐失透、耐酸、耐候性に優れ、及び軽量化の特性を有し、同時に該組成のガラスは優れた光学特性を有し、得られたフルオロリン酸塩ガラスの密度が3.5g/cm以下であり、耐酸性が3級以上であり、耐候性が3級以上であり、さらに好ましくはガラス成分中のAl3+及びZn2+の合計モル数とY3+、Ba2+及びP5+の合計モル数との比(n(Al 3+Zn 2+ /n(Y 3+ +Ba 2+ +P 5+ )を0.26~0.6に制御し、得られたフルオロリン酸塩ガラスの密度は、3.45g/cm以下であり、耐酸性は2級以上であり、耐候性は2級以上であり、より好ましくはガラス成分中のAl3+及びZn2+の合計モル数と、Y3+、Ba2+及びP5+の合計モル数との比(n(Al 3+Zn 2+ /n(Y 3+ +Ba 2+ +P 5+ )を0.26~0.53に制御し、得られたフルオロリン酸塩ガラスの密度は、3.4g/cm以下であり、耐酸性は1級以上であり、耐候性は1級以上であることを見出した。
【0046】
さらに、発明者らは、ガラス成分中のBa2+及びP5+の合計モル数と、Zn2+、Y3+及びP5+の合計モル数との比(n(Ba 2+ 5+ /n(Zn 2+ +Y 3+ +P 5+ )を1.465以下に制御することにより、各成分の間は相乗効果を発揮し、ガラスの形成安定性をより高め、且つガラスの比重を低下させることができることを見出し、ガラス成分中のBa2+及びP5+の合計モル数とZn2+、Y3+及びP5+の合計モル数との比(n(Ba 2+ 5+ /n(Zn 2+ +Y 3+ +P 5+ )を1.42以下に制御することがさらに好ましく、ガラス成分中のBa2+及びP5+の合計モル数とZn2+、Y3+及びP5+の合計モル数との比(n(Ba 2+ 5+ /n(Zn 2+ +Y 3+ +P 5+ )を0.97~1.415に制御することがより好ましい。
【0047】
さらに、発明者らは、ガラス成分中のBa2+のモル数とY3+、Li及びNaの合計モル数との比(nBa 2+/n(Y 3+ +Li +Na )を0.08~1.25に制御することにより、各成分の間は相乗効果を発揮し、ガラスの透過率、耐失透性、耐酸性及び耐候性をより高めることができ、且つガラス転移温度がさらに低下することを見出し、ガラス成分中のBa2+のモル数とY3+、Li及びNaの合計モル数との比(nBa 2+/n(Y 3+ +Li +Na )を0.13~0.71に制御することが好ましく、ガラス成分中のBa2+のモル数とY3+、Li及びNaの合計モル数との比(nBa 2+/n(Y 3+ +Li +Na )を0.21~0.52に制御することがより好ましい。
【0048】
本開示の他の実施例によれば、上記フルオロリン酸塩ガラスの組成におけるカチオンは、0~15モル%のCa2+及び/又は0~10モル%のSr2+をさらに含む。発明者らは、Ca2+及び/又はSr2+を適量に導入することにより、ガラスの安定性を高めるとともに、ガラスの屈折率を高めることができ、Ca2+の導入量が15モル%を超えると、ガラスの安定性が急激に低下することを見出し、そのため、本開示のCa2+の含有量は0~15モル%であり、Ca2+の含有量は、好ましくは1~10モル%であり、より好ましくは3~7モル%である。同時に、Sr2+の導入量が10モル%を超えると、ガラスの安定性が急激に低下するため、本開示におけるSr2+の含有量は0~10モル%であり、Sr2+の含有量は好ましくは0.5~8モル%であり、より好ましくは0.5~5モル%である。
【0049】
さらに、発明者らは、ガラス成分中のBa2+及びCa2+の合計モル数と、Y3+、Li及びNaの合計モル数との比(n(Ba 2+Ca 2+ /n(Y 3+ +Li +Na )を0.9以下に制御することにより、ガラスの屈折率をより高め且つ分散を低下させ、且つガラスの比重及び転移温度を低下させるとともに、ガラスの耐酸性を向上させることをさらに見出し、ガラス成分中のBa2+及びCa2+の合計モル数とY3+、Li及びNaの合計モル数との比(n(Ba 2+Ca 2+ /n(Y 3+ +Li +Na )を0.75以下に制御することがさらに好ましい。
【0050】
さらに、発明者らは、ガラス成分中のLi及びNaの合計モル数と、Zn2+、Ba2+、Sr2+及びCa2+の合計モル数との比(n(Li Na /n(Zn 2+ +Ba 2+ +Sr 2+ +Ca 2+ )を0.9以上に制御することにより、ガラス転移温度をより低くすることができ、それによりプレス成形が容易になり、金型の損傷が少なく、金型の耐用年数を保証し、且つ優れた耐酸及び耐候性を備えることをさらに見出し、ガラス成分中のLi及びNaの合計モル数とZn2+、Ba2+、Sr2+及びCa2+の合計モル数との比(n(Li Na /n(Zn 2+ +Ba 2+ +Sr 2+ +Ca 2+ )を0.92~3に制御することがさらに好ましく、ガラス成分中のLi及びNaの合計モル数と、Zn2+、Ba2+、Sr2+及びCa2+の合計モル数との比(n(Li Na /n(Zn 2+ +Ba 2+ +Sr 2+ +Ca 2+ )を0.92~1.49に制御することがより好ましい。
【0051】
さらに、発明者らは、ガラス成分中のSr2+及びBa2+の合計モル数と、Al3+、Na及びZn2+の合計モル数との比(n(Sr 2+Ba 2+ /n(Al 3+ +Na +Zn 2+ )を1.9以下に制御することにより、ガラスの分散をさらに低減し、且つガラスの光学特性を改善し、耐失透性及び耐酸性を向上させ、且つガラスの軽量化をさらに実現することができることを見出し、ガラス成分中のSr2+及びBa2+の合計モル数と、Al3+、Na及びZn2+の合計モル数との比(n(Sr 2+Ba 2+ /n(Al 3+ +Na +Zn 2+ )を1.75以下に制御することが好ましく、ガラス成分中のSr2+及びBa2+の合計モル数と、Al3+、Na及びZn2+の合計モル数との比(n(Sr 2+Ba 2+ /n(Al 3+ +Na +Zn 2+ )を0.35~0.84に制御することがより好ましい。
【0052】
本開示の別の実施例に基づき、上記フルオロリン酸塩ガラスの組成におけるカチオンは、0~15モル%のMg2+、及び/又は0~10モル%のK、及び/又は0~5モル%のLa3+、及び/又は0~5モル%のGd3+、及び/又は0~5モル%のB3+、及び/又は0~5モル%のSi4+、及び/又は0~5モル%のZr4+、及び/又は0~8モル%のTi4+、Nb5+、W6+及びBi3+の和、及び/又は0~5モル%のYb3+、及び/又は0~5モル%のTa5+、及び/又は0~5モル%のGe4+をさらに含む。発明者らは、Mg2+がガラスの安定性を保証できるが、その導入量が15モル%を超えると、ガラスの安定性が著しく低下するため、本開示のMg2+の含有量は0~15モル%であり、好ましくは0~10モル%であり、より好ましくは0~5モル%であることを見出した。Kは、ガラスの粘性及び転移温度を低下させることができるが、その導入量が10モル%を超えると、ガラスの安定性が低下することを引き起こす。従って、本開示におけるKの含有量は0~10モル%であり、好ましくは0~5モル%であり、より好ましくは導入しないことである。La3+及びGd3+は、ガラスの安定性及び屈折率を高めることができるが、La3+及びGd3+それぞれの導入量が5モル%を超えると、ガラスの安定性を悪化させ、同時にガラス転移温度を上昇させるため、本開示のLa3+の含有量は0~5モル%であり、好ましくは0~3モル%であり、より好ましくは導入しないことであり、Gd3+の含有量は0~5モル%であり、好ましくは0~3モル%であり、より好ましくは導入しないことである。B3+は、ガラスの安定性を高めることができるが、その導入量が5モル%を超えると、溶融過程にBFとして揮発しやすいため、且つそれによって脈理が生じることを引き起こす。従って、本開示におけるB3+の含有量は0~5モル%であり、好ましくは0~2モル%であり、より好ましくは導入しないことである。Si4+は、ガラスの安定性を向上させることができるが、ガラスを低温で溶融させるため、その導入量が5モル%を超えると、ガラスの溶融難易度を高め、又はSi4+を溶融するために溶融温度を高めると、あるガラス成分の揮発を引き起こす。従って、本開示におけるSi4+の含有量は0~5モル%であり、好ましくは0~3モル%であり、より好ましくは導入しないことである。Zr4+は、ガラスの屈折率を高めることができ、且つガラス中の成分揮発によるガラスの脈理を抑制することができるが、その導入量が5モル%を超えると、ガラスの安定性が低下するため、本開示のZr4+の含有量は0~5モル%であり、好ましくは0~3モル%であり、より好ましくは導入しないことである。Ti4+、Nb5+、W6+及びBi3+は、ガラスの屈折率を高めることができるが、Ti4+、Nb5+、W6+及びBi3+の和が8モル%を超えると、ガラスの安定性が低下するため、本開示のTi4+、Nb5+、W6+及びBi3+の合計モル数は0~8モル%であり、好ましくは0~5モル%であり、より好ましくは導入しないことである。Yb3+は、ガラスの低分散性を保持する成分であるが、その導入量が5モル%を超えると、溶解温度が上昇し、ガラスの安定性を低下させる。従って、本開示におけるYb3+の含有量は0~5モル%であり、好ましくは0~3モル%であり、より好ましくは導入しないことである。Ta5+は、ガラスの屈折率を高め且つガラスの失透性を低下させることができるが、その導入量が5モル%を超えると、ガラスの安定性を低下させるため、本開示のTa5+の含有量は0~5モル%であり、好ましくは0~3モル%であり、より好ましくは導入しないことである。Ge4+は、ガラスの屈折率及び耐失透性を高めることができるが、その導入量が5モル%を超えると、ガラスのコストが高くなるため、本開示のGe4+の含有量は0~5モル%であり、0~3モル%を導入し、より好ましくは導入しないことである。
【0053】
本開示のガラス特性を損なわない範囲で、必要に応じて上記で言及していない他の成分、例えばLu3+、Ce4+、Te4+などを少量添加することができる。ただし、V5+、Cr3+、Mn2+、Fe3+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Ag及びMo6+などの遷移金属成分は、単独又は複合的に少量含有する場合であっても、ガラスも着色され、可視光領域における特定の波長に吸収を生じ、それにより本開示の可視光の透過効果を高める特性を弱めるため、特に可視光領域における波長の透過率に対して要求がある光学ガラスは、実質的に含有しないことが好ましい。
【0054】
Pb、As、Th、Cd、Tl、Os、Be及びSeの化合物は、近年、有害な化学物質として使用を制限する傾向にあり、ガラスの製造工程のみならず、加工工程及び製品化後の処理に至るまでの環境保護措置が必要である。従って、環境への影響を重視する場合には、不可避的に混入する他、実質的にそれらを含有しないことが好ましい。これにより、光学ガラスは、環境を汚染する物質を実質的に含まないものとなる。従って、本開示の光学ガラスは、特殊な環境対策上の処置を講じなくても、製造、加工、廃棄を行うことができる。
【0055】
本開示に記載の「含まない」、「含有しない」、「導入しない」、「0%」とは、該化合物、分子又は元素などを原料として本開示のガラスに意図的に添加しないことを意味するものである。しかしながら、ガラスを製造するための原料及び/又は機器としては、非意図的に添加された不純物又は成分が存在し、最終的なガラスに少量又は微量に含まれる場合があり、このような場合も本開示という特許の保護範囲内にある。
【0056】
以下、本開示のフルオロリン酸塩ガラスの性能及び試験方法について説明する。
【0057】
1.着色度(λ80/λ
本開示のガラスの短波長透過スペクトル特性は、着色度(λ80/λ)で表される。λ80は、ガラスの透過率が80%に到達する時に対応する波長であり、λは、ガラスの透過率が5%に到達する時に対応する波長であり、そのうち、λ80の測定は、互いに平行であり且つ光学研磨された2つの対向平面を備えて厚さが10±0.1mmのガラスを用いて、280nmから700nmの波長域内の分光透過率を測定し且つ透過率80%の波長を示す。分光透過率又は透過率とは、ガラスの上記表面に強度Iinの光を垂直に入射し、ガラスを透過して1つの平面から強度Ioutの光を出射した場合に、Iout/Iinで表される量であり、且つガラスの上記表面での表面反射損失も含めた透過率である。ガラスの屈折率が高いほど表面反射損失が大きくなる。従って、本開示の光学ガラスにおいて、λ80の値が小さいということは、ガラス自体の着色が少ないことを意味する。本開示の光学ガラスの透過率が80%に到達する時に対応する波長(λ80)が350nm以下であり、好ましくは345nm以下であり、そのガラスの透過率が5%に到達する時に対応する波長(λ)が300nm以下であり、好ましくは295nm以下である。
【0058】
互いに対向する2つの光学研磨平面を備えて厚みが10±0.1mmであるガラス試料を用いて、分光透過率を測定し、その結果に基づいて算出した。
【0059】
2.密度
フルオロリン酸塩ガラスの密度は、温度が20℃である時に単位体積当たりの重量であり、単位をg/cmで表し、本開示のフルオロリン酸塩ガラスの密度は、3.5g/cm以下であり、好ましくは3.45g/cm以下であり、より好ましくは3.4g/cm以下である。
【0060】
GB/T7962.20-2010に規定された方法で測定した。
【0061】
3.転移温度T
フルオロリン酸塩ガラスは、ある温度区間で徐々に固体から可塑状態に変化する。転移温度Tとは、ガラス試料が室温から軟化温度Tまで昇温し、その低温領域と高温領域の直線部の延長線が交わる交点に対応する温度である。転移温度Tは、GB/T7962.16-2010に規定された方法で測定した。
【0062】
本開示のガラス転移温度(T)は400℃以下であり、好ましくは390℃以下であり、より好ましくは380℃以下である。
【0063】
4.屈折率及びアッベ数
本開示のフルオロリン酸塩ガラスは、屈折率ndが1.50~1.55であり、好ましくは1.51~1.54であり、アッベ数vdが70以上であり、好ましくは70~76であり、より好ましくは70~75である。
【0064】
屈折率とアッベ数は、GB/T7962.1-2010に規定される方法に従って測定した。
【0065】
5.耐候性
試料を相対湿度90%の飽和水蒸気雰囲気のテストボックスに放置し、40℃~50℃で1hごとに交替サイクルし、15サイクルを繰り返す。試料の放置前後の濁度変化量に応じて、耐候性の類別を分類し、ここで、濁度とは、無色の光学ガラスが大気に侵食された後に、その表面に「白斑点」や「白化」などの変質層が発生することをいう。ガラス表面の侵食程度は、試料の侵食前後の濁度差を測定することにより確定する。濁度測定は、ヘーズ表示値の相対誤差±5%以内の積分球式濁度計を用いて行う。以下の表は耐候性分類の詳細である。
【0066】
本開示のフルオロリン酸塩ガラスは、耐候性が3級以上であり、好ましくは2級以上であり、より好ましくは1級以上である。
【0067】
6.耐水機能の安定性
フルオロリン酸塩ガラス素子は、製造及び使用過程において、その研磨表面が酸などの様々な腐食性媒体の作用に抵抗する能力は、光学ガラスの化学的安定性と呼ばれ、それは主にガラスの化学成分に依存し、本開示のフルオロリン酸塩ガラスの耐水機能の安定性D(粉末法)は、3級以上であり、好ましくは2級以上であり、より好ましくは1級である。
【0068】
GB/T17129の試験方法により、耐水機能の安定性Dを試験した。
【0069】
本開示の第2の態様において、本開示はガラスプレフォームを提供する。本開示の実施例に基づき、前記ガラスプレフォームは、上記フルオロリン酸塩ガラスを採用して製造される。これにより、本開示の光学プレフォームは、低屈折低分散などの特性を有し、様々な光学素子及び光学設計に役立つ。特に、本開示のフルオロリン酸塩ガラスから、精密プレス成形などの手段を用いてレンズ、プリズム、反射鏡などの光学素子を製造することが好ましい。なお、上記フルオロリン酸塩ガラスに対して記載された特徴及び利点は同様に該ガラスプレフォームに適用し、ここでは説明を省略する。
【0070】
本開示の第3の態様において、本開示は光学素子を提供する。本開示の実施例に基づき、前記光学素子は、上記フルオロリン酸塩ガラス又は上記ガラスプレフォームを採用して製造される。これにより、本開示の光学素子は、低屈折低分散という特性を有し、性能に優れた各種類のレンズ、プリズムなどの光学素子を提供することができる。例えば、本開示の光学素子は、球面レンズ、非球面レンズ、マイクロレンズなどの様々なレンズ、回折格子、回折格子付きレンズ、レンズアレイ、プリズムなどであってもよい。また、必要に応じて、該光学素子には、反射防止膜、全反射膜、部分反射膜、分光特性を有する膜などの光学薄膜を設けることができる。なお、上記フルオロリン酸塩ガラス及びガラスプレフォームに対して記載された特徴及び利点は同様に該光学素子に適用し、ここでは説明を省略する。
【0071】
本開示の第4の態様において、本開示は光学機器を提供する。本開示の実施例に基づき、前記光学機器は上記光学素子を有する。これにより、該光学機器に上記優れた性能を備える光学素子を用いることにより、該光学機器の顧客の体験を向上させることができる。具体的には、本開示の光学機器はカメラ、プロジェクタなどにおける可視光を透過させる光学機器であってもよい。なお、上記光学素子に対して記載された特徴及び利点は同様に該光学機器に適用し、ここでは説明を省略する。
【0072】
以下に具体的な実施例を挙げて本開示を説明し、なお、これらの実施例は説明するためのものにすぎず、いずれかの形態で本開示を限定するものではない。
【0073】
表1~表5に示す組成を有するガラスを得るために、ガラス原料(炭酸塩、硝酸塩、メタリン酸塩、フッ化物、酸化物など)をガラスの各イオンの導入割合に応じて秤量し且つ均一に混合した後、溶錬装置(例えば白金ルツボ)に投入し、続いて900~1150℃で適切な撹拌、清澄、均質を行った後に、900℃以下に降温し、成形金型に流し込むか又は漏れ込み、最後に焼きなまし、加工などの後処理を行った後、又は精密プレス成形技術により直接プレス成形する。また、上記に示した方法により各ガラスの特性を測定し、且つ測定結果を表1~表5に示す。
【0074】
【表1-1】
【0075】
【表1-2】
【表2-1】
【表2-2】
【0076】
【表3-1】
【表3-2】
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
注:上記表における総量100%は測定誤差、設備精度及び不可避的な不純物を取り除いた後のデータである。
【0080】
本明細書の説明において、「一実施例」、「いくつかの実施例」、「例」、「具体例」、又は「いくつかの例」などの用語の説明を参照することは、その実施例又は例に関連して説明された特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味する。本明細書において、上記の用語の例示的な表現は、必ずしも同じ実施例又は例を対象とするものではない。さらに、説明された特定の特徴、構造、材料又は特性は、任意の1つ又は多くの実施例又は例において適切な方法で結合され得る。また、矛盾することなく、当業者は、本明細書で説明された異なる実施例又は例、ならびに異なる実施例又は例の特徴を結合し、組み合わせることができる。
【0081】
以上、本開示の実施例を示し、説明してきたが、上記の実施例は例示的なものであり、本開示を限定するものとして理解されるものではなく、本開示の範囲内で、当業者が上記実施例の変更、修正、置換及び変形を行うことができることを理解されたい。