(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】ガラス強化フルオロポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 27/12 20060101AFI20240903BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C08L27/12
C08K7/14
(21)【出願番号】P 2021503775
(86)(22)【出願日】2019-07-22
(86)【国際出願番号】 US2019042761
(87)【国際公開番号】W WO2020023347
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-19
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514180476
【氏名又は名称】エージーシー ケミカルズ アメリカズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】タッカー,ライアン,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】スプリック,キャサリン,エム.
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-113119(JP,A)
【文献】特開2012-112448(JP,A)
【文献】特開2004-277689(JP,A)
【文献】国際公開第2019/013934(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/00-27/24
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改善された曲げ強度を有するガラス繊維強化フルオロポリマー組成物であって、
A 当該ガラス繊維強化フルオロポリマー組成物の100重量部に対して、60から99重量部の量で存在する、第1のフルオロポリマーであって、
パーフルオロアルコキシポリマー、ポリ(エチレンco-テトラフルオロエチレン)、ポリビニリデンフルオライド、フッ素化エチレンプロピレン、およびこれらの組み合わせから選定された、第1のフルオロポリマーと、
B カルボキシ-および/または無水物-官能化パーフルオロアルコキシコポリマー、カルボキシ-および/または無水物-官能化ポリ(エチレンco-テトラフルオロエチレン)コポリマー、およびこれらの組み合わせから選定された、前記第1のフルオロポリマーとは異なる第2のフルオロポリマーであって、
当該ガラス繊維強化フルオロポリマー組成物の100重量部に対して、0.5から39.5重量部の量で存在する、第2のフルオロポリマーと、
C 当該ガラス繊維強化フルオロポリマー組成物の100重量部に対して、0.5から39.5重量部の量で存在する、ガラス繊維と、
を有
し、
ポリイミドを含まない、ガラス繊維強化フルオロポリマー組成物。
【請求項2】
前記第2のフルオロポリマーは、前記カルボキシ-および/または無水物-官能化パーフルオロアルコキシコポリマーを有する、請求項1に記載のガラス繊維強化フルオロポリマー組成物。
【請求項3】
前記カルボキシ-および/または無水物-官能化パーフルオロアルコキシコポリマーは、テトラフルオロエチレンおよびカルボン酸基の単位を有する、請求項1または2に記載のガラス繊維強化フルオロポリマー組成物。
【請求項4】
前記カルボン酸基は、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、およびこれらの組み合わせから形成される、請求項3に記載のガラス繊維強化フルオロポリマー組成物。
【請求項5】
前記第2のフルオロポリマーは、前記カルボキシ-および/または無水物-官能化ポリ(エチレンco-テトラフルオロエチレン)コポリマーを有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガラス繊維強化フルオロポリマー組成物。
【請求項6】
前記カルボキシ-および/または無水物-官能化ポリ(エチレンco-テトラフルオロエチレン)コポリマーは、テトラフルオロエチレンおよびエチレンの単位、ならびにカルボン酸基を有し、
前記カルボン酸基は、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、およびこれらの組み合わせで形成される、請求項5に記載のガラス繊維強化フルオロポリマー組成物。
【請求項7】
前記第2のフルオロポリマーは、当該ガラス繊維強化フルオロポリマー組成物の100重量部に対して、5から20重量部の量で存在し、
前記ガラス繊維は、当該ガラス繊維強化フルオロポリマー組成物の100重量部に対して、15から35重量部の量で存在する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のガラス繊維強化フルオロポリマー組成物。
【請求項8】
前記ガラス繊維は、5から20μmの直径、5から100μmの全長を有し、0.5から1.5g/mlのバルク密度を有
する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のガラス繊維強化フルオロポリマー組成物。
【請求項9】
前記ガラス繊維は、処理されておらず、シランを含まない、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のガラス繊維強化フルオロポリマー組成物。
【請求項10】
前記第2のフルオロポリマーを含まない比較組成物よりも、ASTM D790-10を用いて定められる曲げ強度が15から40%大きく、
前記第2のフルオロポリマーを含まない比較組成物よりも、ASTM D790-10を用いて定められる曲げ弾性率が25から60%大きく、
前記第2のフルオロポリマーを含まない比較組成物よりも、ASTM D95-10を用いて定められる圧縮強度が10から25%大きく、
前記第2のフルオロポリマーを含まない比較組成物よりも、ASTM D95-10を用いて定められる圧縮弾性率が40から70%大きく、または
前記第2のフルオロポリマーを含まない比較組成物よりも、ASTM D638-10を用いて定められる引張弾性率が80から125%大きい、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のガラス繊維強化フルオロポリマー組成物。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のガラス繊維強化フルオロポリマー組成物を形成する方法であって、
前記第1のフルオロポリマーの溶融ストリームを形成するステップと、
前記ガラス繊維および前記第2のフルオロポリマーを混合し、混合物を形成するステップと、
前記溶融ストリームに前記混合物を添加し、前記ガラス繊維強化フルオロポリマー組成物を形成するステップと、
を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年7月23日に出願された米国仮出願第62/701,952号の優先権の利益を主張するものであり、これは、本願の参照として取り入れられる。
【0002】
本開示は、全般に、ガラス強化フルオロポリマー組成物に関する。特に、本開示は、第1のフルオロポリマーと、特定の第2のフルオロポリマーと、ガラス繊維とを有する組成物に関する。本組成物は、第2のフルオロポリマーを含まない比較組成物と比べて、高い曲げ強度を示す。
【背景技術】
【0003】
例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマー、およびエチレン/テトラフルオロエチレンコポリマーのようなフルオロポリマーは、いくつか例を挙げると、半導体産業および自動車産業のような各種分野で使用されている。フルオロポリマーは、優れた熱抵抗性、化学的耐性、耐候性、ガスバリア特性等を有するが、多くの物質に対するこれらの密着性は、不十分である。例えば、合成樹脂、金属、金属酸化物、ガラス、およびセラミックスのような各種材料と接合するためには、一般に、フルオロポリマーの表面をコロナ放電処理またはナトリウムエッチング処理に暴露し、その後、接合のための接着材が付与されるという方法が使用される。そのような接合方法は、プロセスが煩雑で、生産性が低い点で問題がある。さらに別の方法では、各種化学薬品により材料が予備処理されるが、そのような化学薬品は高価である上、製造時間および複雑性が追加されてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、ガラスで強化されたフルオロポリマーが知られており、これは、フルオロポリマーに対する密着性を高めるため、表面処理されたガラス繊維を有する。しかしながら、フルオロポリマーの化学的性質のため、ガラス繊維の表面を処理する際の、商業的に利用できる選択肢は限られている。通常、ガラス繊維は、シランまたはシラン系化学物質で表面処理される。これらの表面処理は、通常、製造プラントの内部で行う必要があり、特定の化学物質に整合するようにカスタマイズする必要がある。また、これらの表面処理の利用は、通常、製造プロセスの工程数が多くなり、複雑性が高まり、これにより、コストおよびサイクル時間が上昇する。従って、改善の機会が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の他の利点は、添付図面を考慮して、以下の詳細な説明を参照することにより、さらに理解されるため、容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施例に示した組成物1および比較組成物1乃至3の23℃での歪み(%)の関数としての応力(PSI)の線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示では、ガラス強化フルオロポリマー組成物が提供される。本ガラス強化フルオロポリマー組成物は、高い曲げ強度を有し、第1のフルオロポリマーと、第2のフルオロポリマーと、ガラス繊維とを有する。第1のフルオロポリマーは、ガラス強化フルオロポリマー組成物の100重量部に対して、60から99重量部の量で存在する。第2のフルオロポリマーは、(1)カルボキシ-および/または無水物-官能化パーフルオロアルコキシコポリマー、(2)カルボキシ-および/または無水物-官能化ポリ(エチレン-co-テトラフルオロエチレン)コポリマー、ならびに(3)これらの組み合わせから選定される。第2のフルオロポリマーは、ガラス強化フルオロポリマー組成物の100重量部に対して、0.5から39.5重量部の量で存在する。ガラス繊維は、ガラス強化フルオロポリマー組成物の100重量部に対して、0.5から39.5重量部の量で存在する。
【0008】
本開示では、ガラス強化フルオロポリマー組成物が提供される。これは、以降「組成物」と記載される。本組成物は、これに限られるものではないが、車両用の燃料ホース、車両用の燃料タンク、産業ホースおよびタンク、食品生産用ホース、耐候性フィルム、化学的耐性ライニングなど、いかなる産業に使用されてもよい。また、本組成物は、化学的耐性、高電気絶縁性、耐候性、難燃性、低誘電率、撥水および撥油性、高バリア特性、非付着性、および/または高耐熱性、またはこれらの組み合わせの1または2以上の特性が要求される用途に利用されてもよい。
【0009】
(第1のフルオロポリマー)
第1のフルオロポリマーは、従来から知られるものであってもよい。例えば、第1のフルオロポリマーは、PFA(パーフルオロアルコキシポリマー)、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)、PTFE(ポリ(テトラフルオロエチレン))、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PVF(ポリビニルフルオライド)、ETFE(ポリ(エチレンco-テトラフルオロエチレン))、ECTFE(ポリ(エチレンco-クロロトリフルオロエチレン))、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、FFKM(パーフルオロエラストマー)、FKM(クロロトリフルオロエチレンビニリデンフルオライド)、およびこれらの組み合わせから選択されてもよい。ある実施形態では、第1のフルオロポリマーは、パーフルオロアルコキシコポリマー、ポリ(エチレンco-テトラフルオロエチレン)、ポリビニリデンフルオライド、フッ素化エチレンピロピレン、およびこれらの組み合わせから選択される。別の実施形態では、これらの全てのフルオロポリマーは、他の1または2以上を除き、個々に使用されることが想定される。さらに別の実施形態では、第1のフルオロポリマーは、前述のポリマーの任意の一つであり、あるいはPFA、ETFE、PVDF、FEP、およびこれらの組み合わせから選定される。また、前述のポリマーの任意の2または3以上のコポリマーも使用可能であることが想定される。
【0010】
第1のフルオロポリマーは、組成物の100重量部に対して、60から99重量部の量で存在する。各種実施形態では、第1のフルオロポリマーは、組成物の100重量部に対して、65から95、70から90、75から85、80から85、80から90、85から95、80から95、または85から99の重量部の量で存在する。別の実施形態では、前述の値の間の全ての値および範囲が明示的に考慮される。
【0011】
(第2のフルオロポリマー)
組成物は、さらに第2のフルオロポリマーを含む。第2のフルオロポリマーは、前述の第1のフルオロポリマーとは異なる。第2のフルオロポリマーは、組成物の100重量部に対して、0.5から39.5重量部の量で存在する。各種実施形態では、第2のフルオロポリマーは、組成物の100重量部に対して、5から39.5、5から35、10から30、15から25、または20から25の重量部の量で存在する。別の実施形態では、第2のフルオロポリマーは、組成物の100重量部に対して、5から20、5から15、5から10、10から20、10から15、15から20、または5から20の重量部の量で存在する。各種非限定的な実施形態では、前述の値の間の全ての値および値の範囲が明示的に考慮される。
【0012】
各種実施形態では、第2のフルオロポリマーの融点は、150から320℃であり、例えば、200から310℃である。融点がこの範囲内にある場合、第2のフルオロポリマーは、溶融共押出性に優れる。融点は、例えば、以降に示すように、第2のフルオロポリマーを構成する使用成分の割合を選定することにより、調整することができる。各種非限定的な実施形態では、前述の値の間およびこれに含まれる全ての値および範囲が明示的に考慮される。
【0013】
第2のフルオロポリマーの体積流速(以降、値Qで表す)は、0.1から1,000mm3/secであり得る。値Qは、第2のフルオロポリマーの溶融流動性を表す指標であり、通常、分子量の指標である。大きなQの値は、第2のフルオロポリマーの低い分子量に相関する傾向がある。Qの小さな値は、第2のフルオロポリマーの高い分子量に相関する傾向がある。値Qは、島津製作所によるフローテスタを用いて、第2のフルオロポリマーの融点よりも50℃高い温度で、7kgの負荷の下、直径2.1mm、全長8mmのオリフィスを介して押し出される際の、第2のフルオロポリマーの押出速度を表してもよい。値Qが極端に小さい場合、押出による形成が難しくなる傾向となり、極端に大きい場合、第2のフルオロポリマーの機械的強度が劣化する傾向となる。本発明の第2のフルオロポリマーの値Qは、5から500mm3/secが可能であり、例えば、10から200mm3/secである。さらに別の非限定的な実施形態では、第2のフルオロポリマーは、米国特許第7112640号に記載されているものであってもよく、これは、これらの実施形態における全体の参照により、本願に明確に取り入れられている。各種非限定的な実施形態では、前述の値の間の全ての値および値の範囲が明示的に考慮される。
【0014】
第2のフルオロポリマーは、カルボキシ-および/または無水物-官能化パーフルオロアルコキシコポリマー、カルボキシ-および/または無水物-官能化ポリ(エチレンco-テトラフルオロエチレン)コポリマー、およびこれらの組み合わせから選定される。換言すれば、第2のフルオロポリマーは、カルボキシ-官能化パーフルオロアルコキシコポリマー、無水物-官能化パーフルオロアルコキシコポリマー、カルボキシ-官能化ポリ(エチレンco-テトラフルオロエチレン)コポリマー、無水物-官能化ポリ(エチレンco-テトラフルオロエチレン)コポリマー、またはこれらのコポリマーの2または3以上の組み合わせであってもよい。
【0015】
第2のフルオロポリマーは、後述のように、ガラス繊維との反応に依存して、カルボキシ-および/または無水物-官能化されてもよい。例えば、あるガラス繊維は、ガラス繊維の表面から延在する-OH基を有する。組み合わせにおいて、ポリ(エチレンco-テトラフルオロエチレン)、および/またはパーフルオロアルコキシコポリマーの1または2以上の無水物基は、-OH基の1または2以上と反応してもよい。これが生じた場合、カルボキシ基は、通常、コポリマーの一端に形成され、他端には、通常、エステルが形成される。従って、第2のフルオロポリマーは、例えば、ガラス繊維上で、記載された分子に依存して、存在する場合、任意の-OH基との反応に依存して、カルボキシ-および/または無水物-官能化される。
【0016】
(官能化されたパーフルオロアルコキシコポリマー)
第2のフルオロポリマーは、カルボキシ-および/または無水物-官能化パーフルオロアルコキシコポリマーを有し、実質的にこれで構成され、またはこれで構成されてもよい。「実質的に構成される」と言う用語は、第2のフルオロポリマーが、他のポリマー、例えば他のフルオロポリマーを有さず、および/または従来の添加剤を有さない実施形態を表す。
【0017】
各種実施形態では、第2のフルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(以降、TFEで表す)および/またはクロロトリフルオロエチレン(以降、CTFEで表す)に基づく繰り返し単位(ユニット)(a)、ジカルボン酸無水物基および環内重合可能な未飽和基を有する環状炭化水素モノマーに基づく繰り返し単位(b)、ならびに他のモノマー(TFE、CTFE、および環状炭化水素モノマーを除く)に基づく繰り返し単位(c)を有する。「基づく」という用語は、例えば、重合化後の単位がもはやTFEではないものの、TFEから形成された単位であってもよいことを表す。換言すれば、重合化後の単位の化学構造は、当業者が理解できる、重合が生じた後に存在する構造であってもよい。
【0018】
例えば、繰り返し単位(a)、(b)、(c)の全モル量に対して、繰り返し単位(a)は、50から99.89mol%の量で存在し、繰り返し単位(b)は、0.01から5mol%の量で存在し、繰り返し単位(c)は、0.1から49.99mol%の量で存在してもよい。各種実施形態では、繰り返し単位(a)は、50から99.47mol%の量で存在し、繰り返し単位(b)は、0.03から3mol%の量で存在し、繰り返し単位(c)は、0.5から49.97mol%の量で存在してもよい。さらに別の実施形態では、繰り返し単位(a)は、50から98.95mol%の量で存在し、繰り返し単位(b)は、0.05から2mol%の量で存在し、繰り返し単位(c)は、1から49.95mol%の量で存在してもよい。各種非限定的な実施形態では、前述の値の間およびこれに含まれる全ての値および値の範囲が明示的に考慮される。
【0019】
ジカルボン酸無水物基、および環内重合可能な未飽和基を有する環状炭化水素モノマー(以降、単に環状炭化水素モノマーと称する)は、一般に、重合可能な化合物であり、これは、少なくとも一つの5員環または6員環を有する環状炭化水素であり、ジカルボン酸無水物基および環内重合可能な未飽和基を有する。環状炭化水素としては、少なくとも一つの架橋された多環式炭化水素を有する環状炭化水素が典型的である。各種実施形態では、そのような架橋された多環式炭化水素を有する環状炭化水素、少なくとも2つの架橋された多環式炭化水素縮合を有する環状炭化水素、または別の環状炭化水素で縮合された架橋された多環式炭化水素を有する環状炭化水素が利用される。また、本環状炭化水素モノマーは、少なくとも一つの環内重合可能な未飽和基、すなわち、炭化水素環を構成する炭素原子内に存在する、少なくとも一つの重合可能な未飽和基を有してもよい。通常、この環状炭化水素モノマーは、さらに、ジカルボン酸無水物基(--CO--O--CO--)を有し、ジカルボン酸無水物基は、炭化水素環を構成する2つの炭素原子と結合され、または環の外の2つの炭素原子と結合されてもよい。ある実施形態では、ジカルボン酸無水物基は、2つの炭素原子と結合され、これらは、前述の環状炭化水素の環を構成する炭素原子であり、相互に隣接している。また、環状炭化水素の環を構成する炭素原子に対して、水素原子の代わりに、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、または他の置換基が結合されてもよい。
【0020】
各種実施形態では、以下に示す構造が利用される。式(2)、および(5)から(8)において、Rは、C1-6アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子から選定されたハロゲン原子、またはハロゲン原子で置換されたアルキル基にハロゲン原子を有するハロゲン化アルキル基である。別の実施形態では、示された5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物が利用され、および/または式(2)および(5)から(8)の環状炭化水素モノマーが使用される。ここで、Rは、メチル基である。
【0021】
【化1】
前述の式(1)乃至(8)の環状炭化水素モノマーは、例えば、触媒の非存在下で、シクロペンタジエンおよびマレイン酸無水物を加熱する方法、または日本国特許出願第6-73043号に記載の方法により製造できる化合物である。
【0022】
非限定的な実施形態では、第2のフルオロポリマーは、米国特許第7112640号に記載されたものであってもよい。これは、本願の参照として、実施形態の全体が明確に取り入れられている。
【0023】
ここで、(c)の他のモノマーを参照すると、これらの他のモノマーは、例えば、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン(以降、VdFと称する)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(以降、HFPと称する)、CF2=CFORf1(ここでRf1は、C1-10パーフルオロアルキル基であり、炭素原子の間に酸素原子を有してもよい)、CF2=CFORf2SO2X1(ここでRf2は、C1-10パーフルオロアルキレン基であり、炭素原子の間に酸素原子を有してもよく、X1は、ハロゲン原子またはヒドロキシル基である)、CF2=CFORf2CO2X2(ここでRf2は、前述のものであり、X2は、水素原子またはC1-3アルキル基である)、CF2=CF(CF2)pOCF=CF2(ここでpは、1または2である)、CH2=CX3(CF2)qX4(ここで、X3およびX4の各々は、相互に独立に、水素原子またはフッ素原子であり、qは、2から10の整数である)、パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)、エチレン、プロピレン、またはイソブテンのようなC2-4オレフィン、酢酸ビニルのようなビニルエステル、ならびにエチルビニルエーテルまたはシクロヘキシルビニルエーテルのようなビニルエーテルを有し、実質的にこれらで構成され、またはこれらで構成されてもよい。そのような他のモノマーは、単独で使用されてもよく、あるいはこれらも2または3以上が組み合わされて使用されてもよい。CF2=CFORf1は、例えば、CF2=CFOCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF2CF3、またはCF2=CFO(CF2)8Fであってもよい。CF2=CFOCF2CF2CF2CF3が好ましい。
【0024】
CH2=CX3(CF2)qX4は、例えば、CH2=CH(CF2)2F、CH2=CH(CF2)3F、CH2=CH(CF2)4F、CH2=CF(CF2)3H、またはCH2=CF(CF2)4Hであってもよい。CH2=CH(CF2)4FまたはCH2=CH(CF2)2Fが好ましい。
【0025】
別の実施形態では、(c)は、VdF、HFP、CF2=CFORf1、CH2=CX3(CF2)qX4、エチレン、プロピレン、および酢酸ビニルから選定される。少なくとも一つは、HFP、CF2=CFORf1、エチレン、およびCH2=CX3(CF2)qX4から選定されることがより好ましい。HFPまたはCF2=CFORf1が最も好ましい。
【0026】
別の実施形態では、第2のフルオロポリマーは、以下に記載の成分を用いて形成される。ここで、(a)、(b)、(c)は、前述の任意のものであってもよい。
【0027】
【表A】
非限定的な各種実施形態では、前述の値の間およびこれに含まれる全ての値および値の範囲が明示的に考慮される。
【0028】
(官能化ポリ(エチレンco-テトラフルオロエチレン)コポリマー)
各種実施形態では、第2のフルオロポリマーは、カルボキシ-および/または無水物-官能化ポリ(エチレンco-テトラフルオロエチレン)コポリマーを有し、実質的にこれで構成され、またはこれで構成されてもよい。カルボキシ-および/または無水物-官能化ポリ(エチレンco-テトラフルオロエチレン)コポリマーは、テトラフルオロエチレンおよびエチレンの単位と、カルボン酸基とを有してもよい。このコポリマーは、さらに、カルボキシまたは無水物により官能化された、またはこれによりグラフト化された、ポリ(エチレンco-テトラフルオロエチレン)コポリマーとして定められてもよい。「実質的に構成される」と言う用語は、第2のフルオロポリマーが、他のポリマー、例えば他のフルオロポリマーを有さず、および/または従来の添加剤を有さない実施形態を表す。
【0029】
例えば、第2のフルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFEとして知られている)であり、またはこれに基づく単位(a)、エチレンまたはこれに基づく単位(b)、ter-モノマーのようなモノマーに基づく単位(c)、ならびにカルボキシまたは無水物、例えばジカルボン酸無水物基を有するモノマーに基づく単位(d)を有してもよい。各種実施形態では、(a)、(b)、(c)、および(d)の比ならびに量は、以下の通りである:
【0030】
【0031】
【0032】
【表D】
非限定的な各種実施形態では、前述の値の間およびこれに含まれる全ての値および値の範囲が明示的に考慮される。
【0033】
「基づく」という用語は、重合化後の単位がもはやTFE、またはエチレン、またはter-モノマー、または無水物ではないものの、TFE、またはエチレン、またはter-モノマー、または無水物から形成された単位であってもよいことを表す。換言すれば、重合化後の単位の化学構造は、当業者が理解できる、重合が生じた後に存在する構造であってもよい。
【0034】
単位(a)および(b)は、知られている。単位(c)は、前述のタイプであってもよい。ある実施形態では、(c)は、HFP、CF2=CFORf1、CH2=CX3(CF2)qX4を含む。単位(c)の特定の例は、これに限られるものではないが、CH2=CH(CF2)2F、CH2=CH(CF2)3F、CH2=CH(CF2)4F、CH2=CF(CF2)3H、またはCH2=CF(CF2)4Hを有する。
【0035】
単位(d)は、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、イタコン酸、シトラコン酸無水物、シトラコン酸、クロトン酸無水物、クロトン酸、ビシクロ[2.2.1]hept-2-ene-5,6-ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]hept-2-ene-5,6-ジカルボン酸、未飽和基がアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、モノメチルマレイン酸塩、もしくはフマル酸である、未飽和カルボン酸無水物、またはこれらの組み合わせであってもよい。各種実施形態では、無水物は、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、またはこれらの組み合わせである。あるいは、カルボン酸基および/または無水物基は、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、およびこれらの組み合わせから形成されてもよい。さらに別の実施形態では、カルボン酸基および/または無水物基は、イタコン酸無水物、イタコン酸、シトラコン酸無水物、シトラコン酸、およびこれらの組み合わせから形成されてもよい。さらに別の非限定的な実施形態では、第2のフルオロポリマーは、日本国特許出願第2004-277689号に記載されたものであってもよい。この文献は、これらの実施例における全体が本願の参照として取
り入れられている。
【0036】
単位(a)、(b)、(c)および(d)の割合は、以下の通りである。
【0037】
単位(a)は、40から60モル%、30から70モル%、または20から80モル%であってもよい。
【0038】
単位(b)は、30から50モル%、25から60モル%、または20から70モル%であってもよい。
【0039】
単位(c)は、1から5モル%、0.5から10モル%、または0.1から20モル%であってもよい。
【0040】
単位(d)は、0.2から0.8モル%、0.1から1モル%、または0.01から3モル%であってもよい。
【0041】
ある実施形態では、単位(a)は、40から60モル%であり、単位(b)は、30から50モル%であり、単位(c)は、1から5モル%であり、単位(d)は、0.2から0.8モル%であってもよい。
【0042】
(追加の実施形態)
別の実施形態では、第2のフルオロポリマーは、エチレン(以降、Eで表す)に基づく重合単位(B)に対するテトラフルオロエチレン(以降、TFEで表す)に基づく重合単位(A)のモル比、20/80から80/20、典型的には50/50から70/30、より典型的には、50/50から60/40を有する。(A)/(B)のモル比が極端に小さいと、熱に対する耐性、耐候性、化学的耐性、ガスバリア特性、燃料バリア特性等が低下する。また、モル比が極端に大きいと、機械的強度、溶融加工性などが低下し得る。各種非限定的な実施形態では、前述の値の間およびこれに含まれる全ての値および値の範囲が明示的に考慮される。
【0043】
また、イタコン酸無水物またはシトラコン酸無水物に基づく(C)の重合単位は、(C)/((A)+(B))のモル比が1/10,000から5/100、典型的には5/10,000から3/100、より典型的には7/10,000から1/100となるように使用されてもよい。モル比が極端に小さいと、接着特性が低下し、これが極端に大きいと、燃料バリア特性が低下し得る。ここで、イタコン酸無水物(IAN)およびシトラコン酸無水物(CAN)は、重合の前に、部分的に加水分解されてもよい。例えば、IANは、IANの部分的な加水分解により得られた、IANとイタコン酸の混合物であってもよい。同様に、CANは、CANの部分的な加水分解により得られた、CANとシトラコン酸のCANの混合物であってもよい。また、IANまたはCANに基づく重合単位の一部は、重合の後に加水分解されてもよい。重合化前または後の加水分解により形成されたそのような重合化単位は、重合単位(C)の一部と見なされる。例えば、重合単位(C)の量は、通常、IANに基づく重合化された単位と、IANの部分的な加水分解により形成されたイタコン酸に基づく重合化単位との全量を表す。各種非限定的な実施形態では、前述の値の間およびこれに含まれる全ての値および値の範囲が明示的に考慮される。
【0044】
IANまたはCANを用いた場合、通常、マレイン酸無水物が使用される場合に要求される、特別な重合化方法を使用する必要はない。例えば、各種実施形態では、酸無水物に基づく重合化単位を有するエチレン/テトラフルオロエチレンコポリマーは、パーフルオロカルボン酸を使用せずに、またはヘキサフルオロプロピレンの共重合を使用せずに、得ることができることが好ましい。
【0045】
前述の(A)、(B)および(C)に基づく重合化単位に加えて、第2のフルオロポリマーは、(A)、(B)および(C)とは異なる別のモノマーに基づく重合化単位(D)を有してもよい。そのような他のモノマーは、例えば、プロピレンまたはブテンのような、炭化水素オレフィン、式CH2=CX(CF2)nYの化合物(ここで、XおよびYの各々は、相互に独立に、水素原子、またはフッ素原子であり、nは、2から8の整数である)、フッ化ビニリデン、フッ化ビニルまたはトリフルオロエチレンのような未飽和基に水素原子を有するフルオロオレフィン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、もしくはパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(TFEを除く)のような未飽和基に水素原子を含まないフルオロオレフィン、アルキルビニルエーテル、(フルオロアルキル)ビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、もしくは炭酸メチルビニルオキシブチルのようなビニルエーテル、酢酸ビニル(VAC)、クロロ酢酸ビニル、ブタン酸ビニル、ビニルピバレート、安息香酸ビニル、もしくはクロトン酸ビニルのようなビニルエステル、または(ポリフルオロアルキル)アクリレートもしくは(ポリフルオロアルキル)メタクリレートのような(メタ)(ア)クリレートであってもよい。そのような別のモノマーは、単独で使用されても、これらの2または3以上で組み合わせて使用されてもよい。
【0046】
各種実施形態では、前述のCH2=CX(CF2)nYで表される化合物が好ましい。別の実施形態では、より好ましい化合物は、nが2から4のものである。さらに別の 実施形態では、化合物は、CH2=CF(CF2)2F、CH2=CF(CF2)3F、CH2=CF(CF2)4F、CH2=CF(CF2)2H、CH2=CF(CF2)3H、CH2=CF(CF2)4H、CH2=CH(CF2)2F、CH2=CH(CF2)3F、CH2=CH(CF2)4F、CH2=CH(CF2)2H、CH2=CH(CF2)3H、またはCH2=CH(CF2)4Hであってもよい。より典型的には、CH2=CF(CF2)2F、CH2=CH(CF2)2F、CH2=CH(CF2)2H、またはCH2=CF(CF2)2Hであり、最も典型的には、CH2=CH(CF2)2Fである。
【0047】
別の実施形態では、ビニルエステルも好ましい。ビニルエステルに基づく重合化単位が用いられる場合、フルオロコポリマーは、優れた接着性を示してもよい。各種実施形態では、ビニルエステルは、より典型的には、VAC、クロロ酢酸ビニル、ブタン酸ビニル、またはビニルピバレートであり、最も典型的には、VACである。
【0048】
フルオロコポリマーが(D)前述の他のモノマーに基づく重合化単位を有するある実施形態では、第2のフルオロポリマーにおける全重合化単位に対して、その量は、典型的には、0.01から20mol%であり、より典型的には、0.1から15mol%であり、最も典型的には、1から10mol%である。各種非限定的な実施形態では、前述の値の間およびこれに含まれる全ての値および値の範囲が明示的に考慮される。
【0049】
別の実施形態では、第2のフルオロポリマーの終端基として、エステル基、炭酸塩基、水酸基、カルボン酸基、またはフッ化カルボニル基のような、ポリアミドのような非フッ素化ポリマーと反応する官能基を有することが好ましい。各種実施形態では、第2のフルオロポリマーの製造に使用される、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤などを適切に選択することにより、そのような終端基を導入することが好ましい。さらに別の非限定的な実施形態では、第2のフルオロポリマーは、米国特許出願第2003/0162923号に記載されているものであってもよく、これらの実施形態の全体は、参照により明確に取り入れられる。
【0050】
(ガラス繊維)
また、組成物は、ガラス繊維を有し、これは、組成物の100重量部に対して、0.5から39.5重量部の量で存在する。各種実施形態では、ガラス繊維は、組成物の100重量部に対して、1から39.5、5から35、10から30、15から25、20から25、15から35、20から30、または25から30の重量部の量で存在する。各種非限定的な実施形態では、前述の値の間およびこれに含まれる全ての値および値の範囲が明示的に考慮される。
【0051】
ガラス繊維の種類、直径、全長、およびバルク密度は、特に限られない。各種実施形態では、ガラス繊維は、5から20、5から15、5から10、10から20、10から15、15から20、8から15、9から14、10から13、11から12、6から14、7から13、8から12、9から11、または9から10μmの直径を有してもよい。別の実施形態では、ガラス繊維は、
5から100、10から95、15 から90、20から85、25から80、30から75、35から70、40から65、45から60、50から55、15から85、20から80、25から75、30から70、35から65、40から60、または45から55、3から15、4から14、5から13、6から12、7から11、8から10、または9から10μmの全長を有する。さらに別の実施形態では、ガラス繊維は、0.5から1.5、0.5から1、1から1.5、0.6から1、0.7から0.9、または0.8から0.9g/mlのバルク密度を有する。各種実施形態では、ガラス繊維は、ミル処理されたガラス繊維であり、8から15μmの直径、15から85μmの全長、および0.6から1g/mlのバルク密度を有する。別の実施形態では、ガラス繊維は、チョップドガラス繊維であり、6から14μmの直径、3から15μmの全長を有する。各種非限定的な実施形態では、前述の値の間およびこれに含まれる全ての値および値の範囲が明示的に考慮される。
【0052】
ガラス繊維は、チョップド処理されてもされなくてもよく、ミル処理されてもされなくてもよく、マットとしてまたは個々の繊維の一つとして存在してもよい。ガラス繊維は、通常、シリカ系のまたは他の配合の薄いストランドが多くの繊維に押し出される際に形成される。ガラス繊維は、ファイバガラス、E-ガラス(すなわち、アルカリ酸化物が1wt%未満のアルミノボロシリケートガラス)、A-ガラス(すなわち、ホウ素酸化物を僅かに含みまたは含まない、アルカリライムガラス)、E-CR-ガラス(すなわち、通常、1wt%のアルカリ酸化物を有し高い酸抵抗を有するアルミノライムシリケートガラスである、電気的/化学的抵抗ガラス)、C-ガラス(すなわち、ホウ素酸化物量が高いアルカリライムガラス)、D-ガラス(すなわち、低い誘電率を有するボロシリケートガラス)、R-ガラス(すなわち、MgOおよびCaOを含まないアルミノシリケートガラス)、S-ガラス(すなわち、CaOを含まないが高含有量のMgOを含むアルミノシリケートガラス)、およびこれらの組み合わせであってもよい。あるいは、ガラス繊維は、純粋なシリカ(二酸化ケイ素)であり、これが冷却されて溶融石英が形成されてもよい。
【0053】
ガラス繊維は、処理されても、されなくてもよい。例えば、ガラス繊維は、シラン、カチオン、またはエポキシ樹脂の1または2以上で処理され、あるいはフッ酸エッチングもしくはサンドブラストを介して処理されてもよい。あるいは、ガラス繊維は、未処理であってもよい。例えば、ガラス繊維は、シランを含まず、または前述の処理の1または2以上を含まなくてもよい。
【0054】
(物理的特性)
組成物は、通常、第2のフルオロポリマーを有さない比較組成物に比べて、改善された1または2以上の物理的特性を有する。換言すれば、インスタント組成物の物理的特性が計算され、第2のフルオロポリマーの存在を除き、被評価インスタント組成物と同じである比較組成物の物理的特性と比較されてもよい。そのような比較が行われると、インスタント組成物の物理的特性の1または2以上は、通常、比較組成物の特性よりも改善/向上される。
【0055】
各種実施形態では、ASTM D790-10を用いて定めた場合、組成物は、第2のフルオロポリマーを有さない比較組成物よりも、15から40%、20から35%、25から30%、30から35%、25から40%、25から35%、または35から40%、大きな曲げ強度を有する。別の実施形態では、ASTM D790-10を用いて定めた場合、組成物は、第2のフルオロポリマーを有さない比較組成物よりも、25から60%、30から55%、35から50%、40から45%、45から50%、35から60%、40から55%、または45から50%、大きな曲げ弾性率を有する。別の実施形態では、ASTM D95-10を用いて定めた場合、組成物は、第2のフルオロポリマーを有さない比較組成物よりも、10から25%、15から20%、20から25%、または15から25%、大きな圧縮強度を有する。さらに別の実施形態では、ASTM D95-10を用いて定めた場合、組成物は、第2のフルオロポリマーを有さない比較組成物よりも、40から70%、45から65%、50から65%%、50から55%、55から60%、50から70%、55から65%、または60から65%、大きな圧縮強度を有する。追加の実施形態では、ASTM D638-10を用いて定めた場合、組成物は、第2のフルオロポリマーを有さない比較組成物よりも、80から125、85から120、90から115、95から105、95から100、100から105、90から125、95から115、100から110、100から105、または105から110%、大きな引張弾性率を有する。各種非限定的な実施形態では、前述の値の間およびこれに含まれる全ての値および値の範囲が明示的に考慮される。
【0056】
(組成物を形成する方法)
また、本開示では、組成物を形成する方法が提供される。当該方法は、第1のフルオロポリマーの溶融ストリームを形成するステップと、ガラス繊維と第2のフルオロポリマーとを混合して、混合物を形成するステップと、前記溶融ストリームに前記混合物を添加し、ガラス強化フルオロポリマー組成物を形成するステップとを有する。これらのステップの任意の一以上は、当業者によって理解され、または選択されるように実施することができる。例えば、時間、熱、圧力等は、当業者により選択され得る。
【実施例】
【0057】
本開示で示される組成物(組成物1)が、3つの比較組成物(比較組成物1乃至3)とともに形成される。以下の表1には、これらの組成物を示す。
【0058】
より具体的には、組成物1は、当業者には明らかな簡単な回転ミル(tumbling)方法により、ガラス繊維と第2のフルオロポリマーを組み合わせることより形成される。次に、この混合物は、当業者には明らかな、押出混合法を介して、PFAの溶融ストリームに添加される。
【0059】
比較組成物1乃至3は、PFAの溶融ストリームに、ガラス繊維を添加することにより形成される。ガラス繊維は、ツインスクリュー押出機により溶融ストリームに混合され、得られた押出物は、評価のためペレット化される。
【0060】
形成の後、組成物の各々を評価し、破断強度、破断伸び、ヤング率、曲げ強度、曲げ弾性率、圧縮強度、および圧縮弾性率の平均値を定めた。これらも以下の表1に示した(括弧内には標準偏差を示した)。また、組成物の各々を評価し、23℃での歪み(%)の関数としての応力(PSI)を定めた。
図1には、結果を示す。
【0061】
【表1】
第1のフルオロポリマーは、パーフルオロアルコキシポリマー(PFA)であり、具体的には、P62Xである。
【0062】
第2のフルオロポリマーは、EA-2000である。
【0063】
ガラス繊維1は、フッ素含有有機基を有する、シランで処理されたガラス繊維である。ガラス繊維は、Owens Corning社の739DCであり、シランは、DynasylanF8800である。
【0064】
ガラス繊維2は、未処理のガラス繊維である。ガラス繊維は、Owens Corning社から市販されている739DCである。
【0065】
ガラス繊維3は、ビニル有機基を有する、シランで処理されたガラス繊維である。ガラス繊維は、PFE001であり、シランは、MomentiveTSL8331である。
【0066】
破断強度は、ASTM D638-10を用いて定めた。
【0067】
破断伸びは、ASTM D638-10を用いて定めた。
【0068】
ヤング率は、ASTM D638-10を用いて定めた。
【0069】
曲げ強度は、ASTM D790-10を用いて定めた。
【0070】
曲げ弾性率は、ASTM D790-10を用いて定めた。
【0071】
圧縮強度は、ASTM D695-10を用いて定めた。
【0072】
圧縮弾性率は、ASTM D695-10を用いて定めた。
【0073】
前述のデータから、第2のフルオロポリマーは、第1のフルオロポリマーと高い互換性を有し、ガラス繊維は、組成物内に強固に導入され密着され、これにより、組成物の物理的特性が大きく向上することが示されている。第2のフルオロポリマーの接着官能基は、ガラス繊維表面と相互作用し、これと結合する。第2のポリマーは、第1のポリマーと似ているため、2つの材料の間には、高い互換性がある。従って、ガラス繊維は、第1のポリマーのマトリクス全体に導入され、これにより、第1のポリマーは、幅広い温度範囲にわたって、ガラス繊維からの有意な機械的特徴を引き継ぐことができる。
【0074】
本開示を通じて、前述の実施形態の全ての組み合わせは、そのような開示が単一の段落または章に逐語的に記載されていない場合であっても、1または2以上の非限定的な実施形態において明示的に考慮される。換言すれば、明示的に考慮される実施形態は、開示の任意の部分から選択され、組み合わされた前述の1または2以上の任意の要素を含んでもよい。
【0075】
前述の値の1または2以上は、変動が開示の範囲内に維持される限り、±5%、±10%、±15%、±20%、±25%などで変動してもよい。他のすべての選択肢から独立して、マーカッシュグループの各選択肢から、予期しない結果が得られてもよい。各選択肢は、個別におよびまたは組み合わせて利用されてもよく、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に対して適切なサポートが提供される。独立クレームおよび従属クレームのすべての組み合わせの主題は、単一項および多重項従属のいずれにおいても、本願において明示的に考慮されている。開示は、限定ではなく、説明の言葉を含む例示的なものである。前述の示唆に基づき、本開示の多くの修正および変更が可能であり、本開示は、明確に記載がない限り、実施されてもよい。
【0076】
また、本開示の各種実施形態を説明する際に依存する任意の範囲およびサブ範囲は、独立におよび集合的に、添付の特許請求の範囲内に属することが理解され、そのような値が明示的に記載されていない場合であっても、その中の全体および/または部分的な値を含む全ての範囲が説明され、考慮されるものと理解される。当業者には、列挙された範囲およびサブ範囲が本開示の各種実施形態を十分に説明し、可能にすることが容易に理解され、そのような範囲およびサブ範囲は、関連する半分、3分の1、4分の1、5分の1などにさらに描写されてもよい。単なる一例として、「0.1から0.9の範囲」は、さらに、下側の3分の1、すなわち0.1から0.3、中間の0.4から0.6、および上側の3分の1、すなわち0.7から0.9に線引きすることができ、これらは、個々におよび集合的に、添付の請求項の範囲に属し、個々におよび/または集合的に依存し、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態の適切なサポートが提供される。また、「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」、「以下」などの範囲を定義または変更する用語に関して、そのような用語は、サブ範囲および/または上限もしくは下限を含むことが理解される。別の例では、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10から35のサブ範囲、少なくとも10から25のサブ範囲、25から35のサブ範囲などを含み、各サブ範囲は、個々におよび/または集合的に依存し、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態の適切なサポートが提供される。最後に、開示された範囲内の個々の数は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態の適切なサポートに依存し、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態の適切なサポートが提供される。例えば、「1から9」の範囲は、3のような各種個々の整数、および4.1のような小数点(分数)を含む個々の数を含み、これは、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態の適切なサポートに依存し、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態の適切なサポートが提供される。