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特許7547720被覆着色剤、着色組成物、および被覆着色剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】被覆着色剤、着色組成物、および被覆着色剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/08 20060101AFI20240903BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20240903BHJP
   C09B 67/46 20060101ALI20240903BHJP
   C09C 1/00 20060101ALI20240903BHJP
   C09C 3/10 20060101ALI20240903BHJP
   C09D 11/32 20140101ALI20240903BHJP
   C09D 11/03 20140101ALI20240903BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20240903BHJP
【FI】
C09B67/08 C
C09B67/20 H
C09B67/20 C
C09B67/46 B
C09C1/00
C09C3/10
C09D11/32
C09D11/03
C09D11/037
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019110947
(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公開番号】P2020203965
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青谷 朋之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智彦
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-030833(JP,A)
【文献】国際公開第2018/173901(WO,A1)
【文献】特開2000-194132(JP,A)
【文献】特開昭62-235956(JP,A)
【文献】特開平09-104834(JP,A)
【文献】特許第6402435(JP,B1)
【文献】特開2003-012995(JP,A)
【文献】特開2018-162430(JP,A)
【文献】特開2004-144787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B
C09C 1/00
C09C 3/10
C09D 11/32
C09D 11/03
C09D 11/037
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤の表面を樹脂(P)が被覆する被覆着色剤、架橋剤、および水を含有する着色組成物であって、
前記着色剤は、顔料であり、
前記樹脂(P)は、着色剤吸着基含有モノマー単位、(無水)マレイン酸単位、および(メタ)アリルモノマー単位を含み、
前記着色剤吸着基含有モノマー単位が、炭素数8~38のα-オレフィン単位、および環含有モノマー単位の少なくとも一方を含む、着色組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アリルモノマー単位が(ポリ)アルキレンオキシ基を有する、請求項1に記載の着色組成物。
【請求項3】
前記樹脂(P)の数平均分子量が2,000~35,000である、請求項1または2に記載の着色組成物。
【請求項4】
前記樹脂(P)の(無水)マレイン酸単位が、エステル結合部位、アミド結合部位、またはイミド結合部位を有する、請求項1~3いずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項5】
前記樹脂(P)の全単位中に、(メタ)アリルモノマー単位を1~30モル%含む、請求項1~4いずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項6】
インクジェット記録用インキ、フレキソ印刷インキ、塗料、文具、または捺染剤に使用する、請求項1~いずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項7】
被覆着色剤、塩基性化合物、および水を混合し、次いで架橋剤を混合して、樹脂(P)を架橋する、着色組成物の製造方法であって
前記被覆着色剤が、水溶性溶剤、水溶性無機塩、着色剤、ならびに前記樹脂(P)を混練して着色剤の表面を前記樹脂(P)で被覆し、次いで水溶性無機塩および水溶性溶剤を除去する工程を含む方法によって製造されるものであり、
前記着色剤は、顔料であり、
前記樹脂(P)は、着色剤吸着基含有モノマー単位、(無水)マレイン酸単位、ならびに(メタ)アリルエーテル単位を含み、
前記着色剤吸着基含有モノマー単位が、炭素数8~38のα-オレフィン単位、および環含有モノマー単位の少なくとも一方を含む、着色組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆着色剤、およびそれを含有する着色剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷インキ、インキジェット用インキ、塗料などの着色剤として、顔料や染料が広く使用されている。これらの中でもインキジェット用インキ、例えば、水性インキジェット用インキで使用する着色剤の顔料(場合によって染料も)は、水溶性溶剤中に分散させた状態で含有されている。
インキジェット記録法は、インキをノズルから安定的に吐出する吐出安定性と鮮明な画像を形成するために着色剤の粒子の安定的な分散、インキの再分散性の両立が必要である。
【0003】
特許文献1には、着色剤、ならびに無水マレイン酸単位およびα―オレフィン単位を含む分散剤をビーズミル分散した着色組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-246813
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の着色組成物は、分散剤が着色剤に部分的に吸着しているため、分散剤が着色剤から脱離し易く、着色剤の分散安定性が経時で低下する問題があった。また、これらの着色剤をインキとして使用する場合、あらかじめ高濃度で分散させた着色剤分散体を作製し、前記着色剤分散体に、バインダー樹脂をレットダウンしインキ化する手法が行われている。しかし、着色剤の種類によりバインダー樹脂との相溶性が悪く、塗料化やインキ化等できない問題や、得られたインキの粘度が高く、被膜の光沢値が低い問題が有った。
【0006】
本発明は、分散安定性が優れ、バインダー樹脂との相溶性が高く、インキ化後の粘度が低く、保存安定性、被膜の光沢値が良好な被覆着色剤、着色組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の被覆着色剤は、着色剤の表面を樹脂(P)が被覆する被覆着色剤であって、
前記樹脂(P)は、着色剤吸着基含有モノマー単位、(無水)マレイン酸単位、および(メタ)アリルモノマー単位を含み、
前記着色剤吸着基含有モノマー単位が、α-オレフィン単位、および環含有モノマー単位の少なくとも一方を含む。
【発明の効果】
【0008】
上記の本発明によれば分散安定性が優れ、バインダー樹脂との相溶性が高く、インキ化後の粘度が低く、保存安定性、被膜の光沢値が良好な被覆着色剤、および着色組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本明細書の用語を定義する。「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。モノマーおよび単量体は、エチレン性不飽和基含有単量体である。(ポリ)アルキレンオキシ基は、ポリアルキレンオキシ基およびアルキレンオキシ基の両者を含む。アルキレンオキシ基は、例えば、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基等である。(無水)マレイン酸単位中の単位は、(無水)マレイン酸モノマーを重合した重合体を構成する繰り返し単位の一つを意味する。他のモノマー単位も前記同様である。分散剤は、予め微細化した着色剤を分散するために使用する化合物である。被覆着色剤は、樹脂と共に着色剤の微細化を行い、表面の少なくとも一部が樹脂で被覆された着色剤である。
【0010】
本発明の被覆着色剤は、着色剤の表面を樹脂(P)が被覆する被覆着色剤であって、
前記樹脂(P)は、着色剤吸着基含有モノマー単位、(無水)マレイン酸単位、および(メタ)アリルモノマー単位を含み、
前記着色剤吸着基含有モノマー単位が、α-オレフィン単位、および環含有モノマー単位の少なくとも一方を含む。
被覆着色剤、および他の任意成分を含む着色組成物は、例えば、インキジェット記録用インキ、フレキソ印刷インキ、トナー、文具、捺染剤、塗料等の用途に使用することが好ましい。
【0011】
本願発明は、着色剤の表面を樹脂(P)で被覆する被覆着色剤であって、前記樹脂(P)は、着色剤吸着基含有モノマー、(無水)マレイン酸、ならびに(メタ)アリルモノマーを含むモノマー混合物の共重合体であることを特徴とする。また、樹脂(P)は必要に応じて無水マレイン酸部をエステル化又はアミド化又はイミド化して使用することができる。これにより、樹脂(P)は、カルボキシル基部位による静電反発効果を得られることで着色組成物の保存安定性が向上する。なお、バインダーとの相溶性が向上する面でエステル化が好ましい。
【0012】
[被覆着色剤]
本発明の被覆着色剤は、着色剤の表面が樹脂(P)で被覆された化合物である。
本明細書で被覆着色剤は、粒子形態の化合物である。着色剤は、無機顔料、有機顔料、および染料から適宜選択して使用できる。なお、被覆前の着色剤は、凝集体でも良い。被覆着色剤を作製する際に着色剤の微細化を行う過程で、微細化された着色剤の表面が樹脂(P)で被覆されるためである。
【0013】
無機顔料は、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属錯塩、その他無機顔料等が挙げられる。カーボンブラックは、例えば、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
金属酸化物は、例えば、酸化チタン、酸化鉄、水酸化鉄、ジルコニア、アルミナ等が挙げられる。
その他無機顔料は、例えば、群青、黄鉛、硫化亜鉛、コバルトブルー等が挙げられる。
【0014】
有機顔料は、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アンソラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
【0015】
有機顔料をカラーインデックスでいうと、例えば、C.I.PigmentRed1、2、3、4、5、6、7、9、10、14、17、22、23、31、32、38、41、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、52:1、52:2、53:1、57:1、60:1、63:1、66、67、81:1、81:2、81:3、83、88、90、105、112、119、122、123、144、146、147、148、149、150、155、166、168、169、170、171、172、175、176、177、178、179、184、185、187、188、190、200、202、206、207、208、209、210、216、220、224、226、242、246、254、255、264、266、269、270、272、279、
C.I.PigmentYellow1、2、3、4、5、6、10、11、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、213、214、
C.I.PigmentOrange2、5、13、16、17:1、31、34、
36、38、43、46、48、49、51、52、55、59、60、61、62、64、71、73、
C.I.PigmentGreen7、10、36、37、58、59、62、63、
C.I.PigmentBlue1、2、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、66、79、79、80
C.I.PigmentViolet1、19、23、27、32、37、42
C.I.PigmentBrown25、28
C.I.PigmentBlack1、7
C.I.PigmentWhite1、2、4、5、6、7、11、12、18、19、21、22、23、26、27、28等が挙げられる。
【0016】
これらの中でもC.I.PigmentRed31、48:1、48:2、48:3、48:4、57:1、122,146、147、148、150、170、176、177、184、185、202、242、254、255、264、266、269、
C.I.PigmentYellow12、13、14、17、74、83、108、109、120、150、151、154、155、180、185、213
C.I.PigmentOrange36,38、43、64、73
C.I.PigmentGreen7、36、37、58、62、63、
C.I.PigmentBlue15:1、15:3、15:6、16、22、60、66、
C.I.PigmentViolet19、23、32、
C.I.PigmentBrown25、
C.I.PigmentBlack1、7
C.I.PigmentWhite6が好ましい。
【0017】
染料は、分散染料が好ましい。分散染料は、加熱により昇華する性質を有する染料である。分散染料は、例えば、C.I.ディスパースイエロー3、7、8、23、39、51、54、60、71、86;C.I.ディスパースオレンジ1、1:1、5、20、25、25:1、33、56、76;C.I.ディスパースブラウン2;C.I.ディスパースレッド11、50、53、55、55:1、59、60、65、70、75、93、146、158、190、190:1、207、239、240、343;C.I.バットレッド41;C.I.ディスパースバイオレット8、17、23、27、28、29、36、57;C.I.ディスパースブルー19、26、26:1、35、55、56、58、60、64、64:1、72、72:1、81、81:1、91、95、108、131、141、145、165、359、360等が挙げられる。
【0018】
着色剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0019】
着色剤の平均一次粒子径は、通常5~1,000nmである。なお、平均一次粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡を使用した2000~10万倍の範囲から選択した拡大画像から任意の約20個の粒子の平均値である。粒子が楕円形の場合、縦軸長さを用いる。
【0020】
[樹脂(P)]
樹脂(P)は、着色剤吸着基含有モノマー単位、(無水)マレイン酸単位、ならびに(メタ)アリルモノマー単位を含む。樹脂(P)の合成は、例えば、乳化重合、溶液重合、塊状重合、懸濁重合等が挙げられる。重合法は、例えば、ランダム重合、交互共重合、ブロック重合が挙げられる。重合反応は、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等が挙げられる。本明細書で樹脂(P)は、これらの手法を適宜組み合わせて合成できる。
本明細書では、ラジカル重合開始剤を使用して溶液中でランダム重合、または交互共重合する樹脂(P)を1例として以下説明する。
【0021】
樹脂(P)は、着色剤吸着基含有モノマー、(無水)マレイン酸、および(メタ)アリルモノマー混合物を共重合して合成することが好ましい。
【0022】
[着色剤吸着基含有モノマー]
着色剤吸着基含有モノマーは、着色剤に吸着する構造を含むモノマーであればよく、具体的には、α-オレフィン単位、および環含有モノマー単位の少なくとも一方を含む。
着色剤に吸着する構造を含むモノマーは、例えば、α-オレフィン、芳香環含有モノマー、脂環含有モノマー、複素環含有モノマー等が挙げられる。これらの中でも、α-オレフィンは、(無水)マレイン酸、および(メタ)アリルモノマーとの共重合性および、着色剤表面への吸着率の観点から好ましい。
【0023】
α-オレフィンは、炭素数6~50のα-オレフィンが好ましく、炭素数8~38がより好ましく、炭素数12~38がさらに好ましい。
α-オレフィンは、例えば、1-ヘキセン(炭素数6)、1-ヘプテン(炭素数7)、1-オクテン(炭素数8)、1-ノネン(炭素数9)、1-デセン(炭素数10)、1-ドデセン(炭素数12)、1-テトラデセン(炭素数14)、1-ヘキサデセン(炭素数16)、1-オクタデセン(炭素数18)、1-エイコセン(炭素数20)、1-ドコセン(炭素数22)、1-テトラコセン(炭素数24)、1-オクタコセン(炭素数28)、1-トリアコンテン(炭素数30)、1-ドトリアコンテン(炭素数32)、1-テトラトリアコンテン(炭素数34)、1-ヘキサトリアコンテン(炭素数36)、1-オクタトリアコンテン(炭素数38)等が挙げられる。
【0024】
α-オレフィンは、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0025】
芳香環含有モノマーとしては、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、スチレンマクロマー等が挙げられる。
【0026】
脂環含有モノマーは、例えば、イソボロニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート等が挙げられる。
【0027】
複素環含有モノマーとしては、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピリジン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-ビニルピペラジン、(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0028】
[(メタ)アリルモノマー]
(メタ)アリルモノマーは、(メタ)アリル基を含むモノマーであれば特に制限はないが、特に下記一般式(1)で示す(メタ)アリルエーテルモノマーが好ましい。
【0029】
【化1】
【0030】
一般式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基を示す。R2Oは、アルキレンオキシ基を示し、2種類以上のアルキレンオキシ基がランダム状もしくはブロック状に付加していても良い。R2Oで示されるアルキレンオキシ基としては、分散安定性の観点から炭素数2~5のアルキレンオキシ基が好ましい。
炭素数2~5のアルキレンオキシ基は、例えば、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基、テトラメチレンオキシ基が挙げられる。これらの中でも、分散性の観点でエチレンオキシ基、又はプロピレンオキシ基の単独付加、又はエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基のブロック又はランダム付加が好ましく、プロピレンオキシ基の単独付加、又はエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基のブロック又はランダム付加がより好ましい。
【0031】
一般式(1)中、mはアルキレンオキシ基の平均付加モル数で0又は、1~100の整数である。モノマーの共重合性および樹脂(P)の着色剤への吸着率の観点から、1~60が好ましく、3~50がより好ましく、5~40がさらに好ましい。
【0032】
一般式(1)中、R3は、水素原子、又は直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、飽和アシル基、アルキル基で置換されていてもよいフェニル基を示す。直鎖状もしくは分岐状のアルキル基としては、炭素数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基があり、メチル基、エチル基、イソプロピル基などが好ましい。
飽和アシル基は、炭素数1~10の飽和アシル基があり、エタン酸、ブタン酸、プロピオン酸、酪酸から誘導される置換基が好ましい。
アルキル基で置換されていてもよいフェニル基としては、フェニル基、ナフチル基、p-メチルフェニル等が挙げられる。
これらの中でも、R3は、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基が好ましく、分散安定性の観点からメチル基が最も好ましい。
【0033】
一般式(1)で示す化合物は、例えば、メチル(メタ)アリルエーテル、エチル(メタ)アリルエーテル等のアルキル(メタ)アリルエーテル;フェニル(メタ)アリルエーテル、シクロへキシル(メタ)アリルエーテル等の環含有(メタ)アリルエーテル;2-ヒドロキシエチル(メタ)アリルエーテル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル等のヒドロキシアルキル(メタ)アリルエーテル、プロピオン酸(メタ)アリル、ヘキサン酸(メタ)アリル、シクロヘキサンプロピオン酸(メタ)アリル等の(メタ)アリルエステル等が挙げられる。
また、一般式(1)で示す化合物は、(ポリ)アルキレンオキシ基を有することが好ましい。例えば、ポリアルキレングリコール(メタ)アリルエーテル、アルキレンオキシグリコール(メタ)アリルエーテル、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アリルエーテルなどの(ポリ)アルキレンオキシ基含有(メタ)アリルエーテルが挙げられる。これら中でも分散安定性の観点から、(ポリ)アルキレンオキシ基を含むことが好ましく、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アリルエーテルがより好ましい。
【0034】
具体的には、メトキシエチレングリコール(メタ)アリルエーテル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アリルエーテル、メトキシプロピレングリコール(メタ)アリルエーテル、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アリルエーテル、エトキシエチレングリコール(メタ)アリルエーテル、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アリルエーテル、エトキシプロピレングリコール(メタ)アリルエーテル、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アリルエーテル、プロポキシエチレングリコール(メタ)アリルエーテル、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アリルエーテル、プロポキシプロピレングリコール(メタ)アリルエーテル、プロポキシポリプロピレングリコール(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。被覆着色剤の分散安定性の観点から、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アリルエーテル、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アリルエーテルがより好ましく、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アリルエーテルが最も好ましい。
【0035】
(ポリ)アルキレンオキシ基含有(メタ)アリルエーテルの市販品は、例えば、ユニオックス PKA-5006、PKA-5009、ユニセーフ PKA-5015(以上、日油社製)等が挙げられる。
【0036】
(メタ)アリルエーテルは、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0037】
(無水)マレイン酸単位の形成は、マレイン酸、または無水マレイン酸のうち少なくとも一方を使用する。これらの中でも共重合性に優れる面で無水マレイン酸が好ましい。
【0038】
樹脂(P)は、着色剤吸着基含有モノマー単位、(無水)マレイン酸単位、ならびに(メタ)アリルモノマー単位以外のその他モノマー単位を含有できる。
その他モノマー単位は、その他ビニルモノマー、その他(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0039】
樹脂(P)は、着色剤吸着基含有モノマー単位、無水マレイン酸、ならびに(メタ)アリルモノマーを含むモノマー混合物に、ラジカル重合開始剤、および必要に応じて連鎖移動剤を添加し、重合させることで合成できる。
得られた樹脂(P)は、本質的にはランダムに配列した着色剤吸着基含有モノマー単位と(メタ)アリルモノマーの間に無水マレイン酸が交互に配列する交互重合体となる。
【0040】
着色剤吸着基含有モノマー単位の含有量は、樹脂(P)の全単位中、20~60モル%が好ましく、25~55モル%がより好ましく、30~50モル%がさらに好ましい。適量含有すると樹脂(P)は着色剤の表面に吸着し易くなり、耐水性がより向上する。
【0041】
(無水)マレイン酸単位の含有量は、樹脂(P)の全単位中、35~79モル%が好ましく、40~75モル%がより好ましく、45~70モル%がさらに好ましい。適量含有すると被覆着色剤の分散安定性がより向上する。
【0042】
(メタ)アリルモノマー単位の含有量は、樹脂(P)の全単位中、1~30モル%が好ましく、1~20モル%がより好ましく、2~15モル%がさらに好ましい。適量含有すると被覆着色剤とバインダー樹脂等との親和性が向上し、分散安定性がより向上する。
【0043】
ラジカル重合開始剤は、アゾ化合物、過酸化物が挙げられる。
アゾ化合物は、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス2,4-ジメチルバレロニトリル等が挙げられる。過酸化物は、例えば、キュメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジt-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等が挙げられる。
【0044】
ラジカル重合開始剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0045】
溶液重合に使用する有機溶剤は、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。これらの重合溶媒は、2種類以上混合して用いても良い。
【0046】
有機溶剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0047】
樹脂(P)の(無水)マレイン酸単位は、エステル結合部位、アミド結合部位、またはイミド結合部位を有することが好ましく、特にエステル結合部位、アミド結合部位を持つことがより好ましい。酸無水物基に特定の化合物を反応させて、これらの結合部位を形成する。これにより被覆着色剤の分散安定性がより向上する。
エステル結合部位、アミド結合部位、またはイミド結合部位は、酸無水物基100モル%中、30~100%の割合で形成することが好ましい。エステル化又はアミド化等することで、樹脂(P)にカルボキシル基部位を付与することができ、優れた静電反発効果を得られる。特にエステル化するとバインダーとの相溶性が特に向上する。
【0048】
樹脂(P)のエステル化物又はアミド化物を得る方法は、例えば、α-オレフィンと無水マレイン酸、ならびに(メタ)アリルエーテルを重合し、α-オレフィンと無水マレイン酸と(メタ)アリルエーテルを有する共重合を得た後に、水、アルコール又はアミンを反応させる方法が好ましい。
【0049】
エステル結合部位の形成には、水又はアルコールを使用することが好ましい。
アルコールは、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、アミルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキシルアルコール、ノナノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、α-オキシ酪酸、12-ヒドロキシステアリン酸、乳酸等が挙げられる。
【0050】
エステル結合部位の形成に使用する化合物は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0051】
アミド結合部位の形成にはアミンを使用することが好ましい。
アミンは、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アニリン、o-トルイジン、2-エチルアニリン、2-フルオロアニリン、o-アニシジン、m -トルイジン、m-アニシジン、m-フェネチジン、p-トルイジン、2,3-ジメチルアニリン、5-アミノインダン、アスパラギン酸、グルタミン酸、γ-アミノ酪酸等が挙げられる。が、特にこれらに限定されるものではない。
【0052】
アミンは、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0053】
イミド結合部位は、アミド結合を形成しさらに脱水反応することで得られる。また、あらかじめイミド化されたマレイミド構造を含むモノマーを重合して得ることもできる。具体的には、N-フェニルマレイミド、N-ドデシルマレイミド、o-メチルフェニルマレイミド、p-ヒドロキシフェニルマレイミド等のマレイミド系単量体等が挙げられる。
【0054】
樹脂(P)の酸価は、35~400mgKOH/gが好ましく、50~350mgKOH/gがより好ましく、65~300mgKOH/gがさらに好ましい。適度な酸価を有すると、再分散性、および分散安定性がより向上する。
【0055】
樹脂(P)の数平均分子量は、2,000~35,000が好ましく、5,000~25,000がより好ましい。適度な数平均分子量を有すると、着色剤の被覆し易さと、再分散性を両立し易くなる。
【0056】
[被覆着色剤の製造]
本明細書で被覆着色剤の製造方法は、ソルトミリング法が好ましい。例えば、水溶性溶剤、水溶性無機塩、着色剤、ならびに樹脂(P)を混練して着色剤の表面を樹脂(P)で被覆し、次いで水溶性無機塩および水溶性溶剤を除去する工程を含む。
まず、水溶性溶剤、水溶性無機塩、着色剤、ならびに樹脂(P)を混練して着色剤の表面を樹脂(P)で被覆する。
前記混練により着色剤を微細化しつつ、その表面を樹脂(P)で被覆する。ソルトミリング法で混練すると着色剤を効率よく微細化できる。
ソルトミリング法に使用する混練装置は、例えば、ニーダー、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、アトライター、横型サンドミル、縦型サンドミル及び/又はアニューラ型ビーズミル等が挙げられる。これらの中でも着色剤の表面を効率的に被覆できる面でニーダーが好ましい。混練条件は、着色剤の種類、微細化の程度等に応じて、適宜調整できる。また必要に応じて加熱するとも冷却することもできる。
【0057】
水溶性無機塩は、破砕助剤として働くものであり、水溶性無機塩の硬度の高さを利用して着色剤を破砕する。水溶性無機塩は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等が挙げられる。価格の点から塩化ナトリウム(食塩)を用いることが好ましい。
【0058】
水溶性溶剤は、着色剤および水溶性無機塩を湿潤する。水溶性溶剤は、水に溶解(混和)しつつ、水溶性無機塩を溶解しない化合物である。
水溶性溶剤は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等のジオール類;ラウリン酸プロピレングリコール等のグリコールエステル;ジエチレングリコールモノエチル、ジエチレングリコールモノブチル、ジエチレングリコールモノヘキシル等のエーテル;プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、及びトリエチレングリコールエーテルを含むセロソルブ等のグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール等のアルコール類;スルホラン;γ-ブチロラクトン等のラクトン類;N-(2-ヒドロキシエチル)ピロリドン等のラクタム類;グリセリン等が挙げられる。これらの中でもジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類が好ましい。
【0059】
水溶性溶剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0060】
水溶性溶剤の使用量は、着色剤100質量部に対し、5~1,000質量部が好ましく、50~500質量部がより好ましい。
水溶性無機塩の使用量は、着色剤100質量部に対し、50~2,000質量部が好ましく、300~1,000質量部がより好ましい。
樹脂(P)の使用量は、着色剤100質量部に対し、5~100質量部が好ましく、10~80質量部が好ましい。適量使用すると分散安定性および再分散性がより向上する。
【0061】
次に得られた被覆着色剤を含む混合物から水溶性無機塩および水溶性溶剤を除去する。
まず、混練装置から前記混合物を取り出し、イオン交換水を投入して撹拌を行い、懸濁液を得る。イオン交換水の使用量は、混練装置に投入した質量の10~10,000倍の質量が好ましい。撹拌温度は、25~90℃が好ましい。次いでろ過を行い被覆着色剤を得る。これらの操作により水溶性溶剤、水溶性無機塩を除去できる。なお、さらにイオン交換水を除去する工程を行ってもよい。水の除去は、乾燥処理が好ましい。乾燥条件は、例えば、常圧下、80~120℃の範囲で12~48時間程度の乾燥を行う方法、減圧下、25~80℃の範囲で12~60時間程度の乾燥を行う方法が挙げられる。乾燥処理は、スプレードライ装置が好ましい。また、乾燥処理と同時もしくは乾燥処理後に粉砕処理を行うことができる。
【0062】
[着色組成物]
本明細書の着色組成物は、被覆着色剤、および架橋剤を含むことが好ましい。また、着色組成物は、実施態様により塩基性化合物、水、バインダー樹脂等から適宜選択して含有することが好ましい。
【0063】
[塩基性化合物]
塩基性化合物は、被覆着色剤の樹脂(P)に由来するカルボキシル基を中和し、被覆着色剤を安定的に分散させる。さらに着色組成物のpHを7~10程度に調整するために使用する。
塩基性化合物は、例えば、アンモニア、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン;水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等の無機アルカリ;有機酸や鉱酸等が挙げられる。
【0064】
樹脂(P)の中和度は、着色組成物の分散安定性の観点から、10~100モル%させることが好ましく、30~100モル%がより好ましく、50~100モル%がさらに好ましい。
ここで中和度は、塩基性化合物のモル当量を樹脂(P)のカルボキシル基のモル量で除したものである。下記式によって求めることができる。
{(塩基性化合物の重量(g)/塩基性化合物の当量)/[(樹脂(P)の酸価(KOHmg/g)×樹脂(P)の重量(g)/(56.1×1000)]}×100
【0065】
塩基性化合物は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0066】
[架橋剤]
架橋剤は、被覆着色剤の樹脂(P)に由来するカルボキシル基を架橋するために使用する。架橋剤は、カルボキシル基と反応可能な官能基(以下、反応性官能基という)を2以上有する化合物である。架橋により樹脂(P)が着色剤を強固に被覆し、被覆着色剤の分散安定性がより向上する。
反応性官能基は、例えば、イソシアネート基、アジリジン基、カルボジイミド基、オキセタン基、オキサゾリン基、エポキシ基が好ましく、アジリジン基、カルボジイミド基、エポキシ基がより好ましく、エポキシ基がさらに好ましい。インキジェット記録用インキとしての分散安定性を向上させる観点からも架橋剤の添加は好ましい。具体的な架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキセタン化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物が挙げられる。
【0067】
イソシアネート化合物は、例えば、有機ポリイソシアネート又はイソシアネート基末端プレポリマーが挙げられる。有機ポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;トリレン-2,4-ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;脂環式ジイソシアネート;芳香族トリイソシアネート;それらのウレタン変性体等の変性体が挙げられる。イソシアネート基末端プレポリマーは、有機ポリイソシアネート又はその変性体と低分子量ポリオール等とを反応させることにより得ることができる。
【0068】
アジリジン化合物は、例えば、N,N'-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、N,N'-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル-1-(2-メチルアジリジン)、トリ-1-アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N'-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、2,2'-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリス-2,4,6-(1-アジリジニル)-1、3、5-トリアジン、4,4'-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0069】
カルボジイミド化合物は、例えば、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネート化合物を脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドが挙げられる。このような高分子量ポリカルボジイミドとしては、日清紡績株式会社のカルボジライトシリーズが挙げられる。
【0070】
オキセタン化合物、例えば、4,4'-(3-エチルオキセタン-3-イルメチルオキシメチル)ビフェニル(OXBP)、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(EHO)、1,4-ビス[{(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ}メチル]ベンゼン(XDO)、ジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル(DOX)、ジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル(DOE)、1,6-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]ヘキサン(HDB)、9,9-ビス[2-メチル-4-{2-(3-オキセタニル)}ブトキシフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-[2-{2-(3-オキセタニル)}ブトキシ]エトキシフェニル]フルオレン等が挙げられる。
【0071】
オキサゾリン化合物は、例えば、脂肪族基又は芳香族基に2個以上、好ましくは2~3個のオキサゾリン基が結合した化合物、より具体的には2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、1,3-フェニレンビスオキサゾリン、1,3-ベンゾビスオキサゾリン等のビスオキサゾリン化合物、該化合物と多塩基性カルボン酸とを反応させて得られる末端オキサゾリン基を有する化合物が挙げられる。
【0072】
エポキシ化合物は、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0073】
これらの中では、分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物が好ましく、特にエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルが好ましい。
【0074】
架橋剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0075】
架橋剤の分子量(式量または、数平均分子量Mn)は、反応のし易さ、及び再分散性の観点から、100~2,000が好ましく、120~1,500が更に好ましく、150~1,000が特に好ましい。架橋剤に含まれる反応性官能基の数は、架橋後の樹脂(P)の分子量を制御して再分散性を向上する観点から、2~6が好ましい。
【0076】
架橋剤は、水中で効率よく樹脂(P)のカルボキシル基と反応させる面で適度な水溶性があることが好ましい。水溶性は、架橋剤の25℃の水100gに対する溶解量が0.1~50gが好ましく、0.2~40gがより好ましく、0.5~30gがさらに好ましい。
【0077】
架橋剤の使用量は、前記樹脂(P)のカルボキシル基100モル%に対して、反応性官能基が10~150モル%程度が好ましく、20~120モル%がより好ましく、30~100モル%がさらに好ましい。
【0078】
バインダー樹脂は、例えば(メタ)アクリル樹脂、スチレン-(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0079】
バインダー樹脂の含有量は、着色組成物の不揮発分中、1~30質量%が好ましく、2~20質量%がより好ましい。
【0080】
本明細書で着色組成物の製造方法は、被覆着色剤、塩基性化合物、および水を混合し、次いで、架橋剤を混合して、樹脂(P)を架橋することが好ましい。
【0081】
まず、被覆着色剤、塩基性化合物、および水を混合し、混合物全体のpHを7~10に調整する。次いで、架橋剤を混合し、架橋させる。架橋温度は、25℃でも構わないが、40~95℃が好ましい。架橋時間は、0.5~10時間程度が好ましい。
【0082】
着色組成物の不揮発分は5~80質量%になる程度に水で調整することが好ましい。
【0083】
被覆着色剤の含有量は、着色組成物100質量%中、5~40質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。適量含有すると印刷適正と分散安定性がより向上する。
【0084】
着色組成物中の被覆着色剤のD50平均粒子径(メディアン径)は、20~200nmが好ましく、25~150nmがより好ましく、30~130nmがさらに好ましく、35~90nmが特に好ましい。適度な粒子径を有するとノズルからに吐出安定性が向上し、着色組成物の分散安定性がより向上する。なお、D50平均粒子径の測定は、レーザー回折・散乱法を用いる。
【0085】
着色組成物の用途をインキジェット記録用インキを例に説明する。
<インキジェット記録用インキ>
本明細書のインキジェット記録用インキは、被覆着色剤、水、水溶性溶剤を含む。
本明細書のインキジェット記録用インキは、水を溶媒(媒体)として使用するが、インキの乾燥を防止するため、水溶性溶剤を併用することが好ましい。また、被覆着色剤の分散安定性が向上するため、印刷後の基材への浸透性、濡れ広がり性が向上する。
【0086】
水溶性溶剤は、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、その他水溶性溶剤等が挙げられる。
【0087】
多価アルコール類は、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、ペトリオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,3-ジメチル-1,2-ブタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、5-ヘキセン-1,2-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール等が挙げられる。これらの中でも、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-へプタンジオールが好ましい。
【0088】
多価アルコールアルキルエーテル類は、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル類は、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル等が挙げられる。
【0089】
含窒素複素環化合物は、例えば、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチルイミイダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
アミド類は、例えば、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
アミン類は、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン
等が挙げられる。
含硫黄化合物類は、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
【0090】
その他水溶性溶剤は、糖が好ましい。糖類は、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類、四糖類を含む)、多糖類等が挙げられる。糖は、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等が挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α-シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む。また、これらの糖類の誘導体としては、前記糖類の還元糖(例えば、糖アルコール〔一般式:HOCH2(CHOH)nCH2OH(ただし、n=2~5の整数を表す)で表される〕、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸等が挙げられる。これらの中でも、糖アルコールが好ましく、マルチトール、ソルビットがより好ましい。
【0091】
水溶性溶剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0092】
水溶性溶剤の含有量は、インキジェット記録用インキ中、3~60質量%が好ましく、3~50質量%がより好ましい。また、水の含有量は、インキジェット記録用インキ中、10~90質量%が好ましく、30~80質量%がより好ましい。適度に水溶性溶剤を含有すると、ヘッドからのインキ吐出安定性が向上する。
【0093】
インキジェット記録用インキは、バインダー樹脂を含有することが好ましい。これにより、印字した塗膜の耐水性、耐溶剤性、耐擦過性、光沢性などが向上する。バインダー樹脂は、例えば、架橋性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン含有樹脂等が挙げられる
【0094】
本明細書のインキジェット記録用インキは、必要に応じて添加剤を含有できる。添加剤は、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等が挙げられる。添加剤の含有量は、インキジェット記録用インキ中、0.05~10質量%が好ましく、0.2~5質量%がより好ましい。
【0095】
本明細書のインキジェット記録用インキは、各種のインキジェット用プリンターに使用できる。インキジェット方式は、例えば、荷電制御型、スプレー型等の連続噴射型、ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式等のオンデマンド型等が挙げられる。
【0096】
<フレキソ印刷インキ>
本明細書のフレキソ印刷インキは、被覆着色剤を含有し、さらに、バインダー樹脂を含有することがより好ましい。バインダー樹脂は、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。また、フレキソ印刷インキは、添加剤、溶剤、架橋剤を含有できる。
【0097】
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂は、アクリル共重合体、アクリル酸-スチレン共重合樹脂、アクリル酸-マレイン酸樹脂、アクリル酸-スチレン-マレイン酸樹脂等が挙げられる。なお、アクリル共重合体は、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルのうち2種以上の単量体を使用する共重合体である。なお、前記2種以上の単量体は、(メタ)アクリル酸エステルから選択しても構わない。
【0098】
アクリル樹脂の重量平均分子量は200,000~800,000の範囲にある場合が好ましい。重量平均分子量が200,000未満であると、樹脂皮膜の強度が低下して、積層体の基材密着性、耐水摩擦性、耐スクラッチ性、耐ブロッキング性が低下する場合がある。一方で800,000を超えると、分子鎖の運動性が低下するため、低温乾燥条件では、インキ皮膜層間の融着が不十分となり、積層体の基材密着性、耐水摩擦性が低下する恐れがある。また、再溶解性も低下しやすい。
【0099】
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30℃~30℃程度が好ましい。適度なTgにより耐水摩擦性、耐ブロッキング性、基材への密着性がより向上する。
【0100】
(ウレタン樹脂)
本発明において、ウレタン樹脂には、ポリウレタン樹脂の他、ポリウレタン-ウレア樹脂を使用することができる。ウレタン樹脂は造膜性の観点から、酸価を有することが好ましい。ウレタン樹脂の重量平均分子量は、10,000~100,000が好ましい。適度な分子量を有すると基材への密着性、耐水摩擦性、耐スクラッチ性、耐ブロッキング性がより向上する。
【0101】
バインダー樹脂の酸価は20~180mgKOH/gが好ましく、40~150mgKOH/gがより好ましい。適度な酸価により印刷における再溶解性、基材への密着性、耐水摩擦性、耐ブロッキング性がより向上する。なお、酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数の事をさす。
【0102】
フレキソ印刷インキに含まれるバインダー樹脂の量は、10~40質量%が好ましい。適度に含有するとインキ塗膜の強度が向上、基材への密着性および耐水摩擦性がより向上する。
【0103】
フレキソ印刷インキは必要に応じて添加剤を含有できる。添加剤は、レベリング剤、濡れ剤、撥水剤、消泡剤、ワックス、架橋剤等が挙げられる。
【0104】
フレキソ印刷インキに使用する溶剤は、水、または前述の水溶性溶剤等が挙げられる。溶剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0105】
被覆着色剤の含有量は、フレキソ印刷インキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちフレキソ印刷インキの全量中、1~50質量%が好ましい。フレキソ印刷インキ組成物の粘度は、被覆着色剤の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。なお、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
【0106】
フレキソ印刷インキは、前述の成分を混合分散して調製できる。例えば、本発明の被覆着色剤に加え、任意成分としてワックス、ぬれ剤等を添加して混合撹拌して水性フレキソインキを作製できる。分散、撹拌は、例えば、ハイスピードミキサー、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、トリミックス、ニーダー、エクストルーダー、横型サンドミル、縦型サンドミルまたは/およびアニューラ型ビーズミル、ペイントシェイカー、ボールミル等、超音波発振子を備える分散機、2本ロールミル、3本ロールミル等が挙げられる。
【0107】
<トナー>
本明細書でトナーは、被覆着色剤を含有する。トナーは、さらに、結着樹脂、離型剤、荷電制御剤、滑剤、流動性改良剤、研磨剤、導電性付与剤、画像剥離防止剤等から適宜選択して使用できる。
【0108】
(結着樹脂)
結着樹脂は、各色の被覆着色剤の色相を阻害しないために無色、透明あるいは白色、淡色の樹脂を使用することが好ましい。
【0109】
結着樹脂は、例えば、ポリスチレン、ポリ-p-クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタレン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体などのスチレン系共重合体また架橋されたスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。これらの中でもポリエステル樹脂、スチレン系共重合体が好ましい。
【0110】
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50~70℃が好ましい。ガラス転移温度(Tg)は、本発明においては示差走査熱量計(島津製作所社製 DSC-60)を用いて、昇温速度10℃/minで測定した時のTg以下のベースラインの延長線と、Tg近傍の吸熱カーブの接線との交点の値を求め測定する。
【0111】
また、結着樹脂は、フローテスターによる軟化温度Tsが60~90℃が好ましい。これは着色剤との相溶性を高めるために有効な数値である。
【0112】
本発明においては、軟化温度Tsの測定は、島津製作所製フローテスターCFT-500Dを用いて、開始温度40℃、昇温速度6.0℃/min.、試験荷重20kg、予熱時間300秒、ダイ穴径0.5mm、ダイ長さ1.0mmの条件にて行った。
【0113】
離型剤は、例えば熱ロール定着時の離型性(オフセット防止性)を向上させる。離型剤は、例えば、脂肪族炭化水素、脂肪酸金属塩類、高級脂肪酸類、脂肪酸エステル類もしくはその部分ケン化物、シリコーンオイル、各種ワックスが挙げられる。これらの中では、重量平均分子量(Mw)が500~8000程度のエチレンホモポリマー、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、サゾールワックス、パラフィンワックス等のワックス類が好ましい。これらはトナー母粒子100質量部に対して通常0.5~10質量%程度の割合で添加される。
【0114】
荷電制御剤は、現像によって得られる画像鮮明性を向上させる目的で、トナーに摩擦帯電性を付与するために使用される。荷電制御剤の使用により、適正な帯電量を有するように調整できる。荷電制御剤は、トナーに応じて正荷電制御剤又は負荷電制御剤が用いられる。
【0115】
正荷電制御剤は、例えば、四級アンモニウム塩化合物(例えば、トリブチルベンジルアンモニウム-1-ヒドロキシ-4-ナフトスルホン酸塩、テトラブチルベンジルアンモニウムテトラフルオロボレート)、4級アンモニウム塩有機錫オキサイド(例えば、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド)、ジオルガノスズボレート(ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート)、アミノ基を有するポリマー等が挙げられる。
【0116】
負荷電制御剤は、例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸の亜鉛塩、カルシウム塩、クロム塩等、サリチル酸あるいはサリチル酸誘導体などのアリールオキシカルボン酸の二価又は三価の金属塩や金属キレート(錯体)、脂肪酸石鹸、ナフテン酸金属塩等が挙げられる。 荷電制御剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して0.1~10質量部が好ましく、0.5~8質量部がより好ましい。
【0117】
トナーは、生産性や被覆着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーは、例えば、被覆着色剤、結着樹脂、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。被覆着色剤の含有量は、生産性や着色剤の分散性の観点からトナー中10~70重量%の割合で含まれることが好ましい。
【0118】
本明細書でトナーは、粒子状であり、重量平均粒径が3~15μmであることが好ましく、5~10μmがより好ましい。トナーの粒度分布測定は、例えばコールターカウンター(マルチサイザー3、ベックマンコールター社製)を用いて測定することができる。
【0119】
<塗料>
本明細書で塗料は、被覆着色剤を含有する。塗料は、さらにバインダー樹脂を含有することが好ましく、架橋剤を含有することがより好ましい。塗料は、被覆着色剤、バインダー樹脂を含む水性塗料が好ましい。被覆着色剤とバインダー樹脂との比率は、求められる用途によって異なり、特に限定されるものではない。
【0120】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、例えば、架橋性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン含有樹脂等が挙げられる。架橋剤は、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネ-ト化合物、エポキシ化合物、カルボキシル基含有化合物、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物等が挙げられる。これらの中でもアクリル樹脂とメラミン樹脂との併用が好ましい。
【0121】
塗料は、さらに必要に応じて、水、有機溶媒、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、架橋剤、体質顔料等を適宜含有できる。
【0122】
塗料は、前記の材料を混合・分散して作製できる。
【0123】
塗料は、様々な基材に塗工できる。基材は、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム等及びその表面処理物等の金属基材;セメント類、石灰類、石膏類等のセメント系基材;ポリ塩化ビニル類、ポリエステル類、ポリカーボネート類、アクリル類等のプラスチック系基材等が挙げられる。
【0124】
塗料の塗工は、例えば、刷毛塗り、ローラー塗装、スプレー塗装等が挙げられる。塗工後、常温また加熱乾燥して被膜を形成する。被膜の厚みは、通常5~70μm程度である。
【0125】
<文具>
本明細書の文具は、被覆着色剤を含み、筆記具、記録計、プリンター等の用途に使用できる。文具は、被覆着色剤の他、水、更にバインダーを含むことが好ましい。文具は、各用途(例えば、ボールペン、マーキングペン等)に応じて、任意に、水溶性有機溶剤、増粘剤、分散剤、潤滑剤、防錆剤、防腐剤、防菌剤等を含有できる。被覆着色剤とバインダー樹脂との比率は、求められる用途によって異なり、特に限定されるものではない。
【0126】
文具は、被覆着色剤の高濃度水分散液を作成し、それを更に水で希釈し前記バインダー樹脂、必要に応じてその他の添加剤を添加して調製することが好ましい。前記被覆着色剤の分散方法は、特に限定されず前述の公知の分散方法でよい。
文具は、例えば、チキソトロピー性インキ(例えば、ゲルインキ水性ボールペン用インキ)、ニュートニアン性インキ(例えば、低粘度水性ボールペン用インキ)等の用途がより好ましい。
また、文具のpH(25℃)は、使用性、安全性、インキ自身の安定性、インキ収容体とのマッチング性の点からpH調整剤などにより5~10に調整されることが好ましく、6~9.5がより好ましい。
【0127】
被覆着色剤の含有量は、文具の描線濃度に応じて適宜調整できるところ、文具用インキ組成物全量中、0.1~40質量%程度が好ましい。
【0128】
<捺染剤>
本明細書の捺染剤は、被覆着色剤、水、バインダー樹脂を含むことが好ましい。捺染剤は、織布や不織布、編布などの布帛に、文字、絵、図柄などの画像を記録できる。なお、覆着色剤とバインダー樹脂との比率は、求められる用途によって異なり、特に限定されるものではない。
【0129】
バインダー樹脂は、前述のバインダー樹脂を使用できる。バインダー樹脂は、水分散粒子、水溶性樹脂等いずれの形態でも使用できる。バインダー樹脂は、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0130】
捺染剤は、被覆着色剤の水分散液を作製した後、さらに水と、バインダー樹脂と、その他必要に応じた添加剤を混合して、着色したい繊維に応じて浸染、捺染など好ましい処理方法に合わせて捺染剤を作製できる。
スクリーン記録用の捺染剤は、添加剤として、防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、架橋剤等を含有することが好ましい。スクリーン記録用の捺染剤の着色剤濃度は、1~10質量%が好ましい。
また、浸染用の捺染剤は、添加剤として、防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、架橋剤等を含有することが好ましい。浸染用の捺染剤の着色剤濃度は、1~10質量%の範囲であるものを使用することが好ましい。浸染用の捺染剤の粘度は、1mPa・s~100mPa・sの範囲で印捺装置に合わせて任意に設定される。
スプレー捺染用の捺染剤は、添加剤として、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を含有することが好ましい。スプレー記録用の捺染剤の着色剤濃度は、1質量%~10質量%が好ましい。スプレー記録用の捺染剤の粘度は1mPa・s~100mPa・sの範囲で装置に合わせて任意に設定される。
インキジェット記録用の捺染剤は、添加剤として、防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤等を含有することが好ましい。インキジェット記録用の捺染剤の着色剤濃度は、1質量%~20質量%が好ましい。前記添加剤は、前記被覆着色剤の水分散体に、前記バインダー樹脂ととともに添加することが好ましい。
防腐剤は、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2-ジベンジソチアゾリン-3-オン(アーチケミカルズ社のプロキセルGXL、プロキセルXL-2、プロキセルLV、プロキセルAQ、プロキセルBD20、プロキセルDL)等が挙げられる。
粘度調整剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、スターチ等の主として水溶性の天然あるいは合成高分子物が挙げられる。
pH調整剤は、例えば、コリジン、イミダゾール、燐酸、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ほう酸等が挙げられる。
キレート化剤は、例えば、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン二酢酸、ニトリロ三酢酸、1,3-プロパンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、イミノ二酢酸、ウラミル二酢酸、1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸及びこれらの塩(水和物を含む)等が挙げられる。
酸化防止剤は、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキノン系化合物、ホスファイト系化合物及びこれらの置換体、ハロゲン化銅、アルカリ金属ハロゲン化物等が挙げられる。紫外線吸収剤は、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の有機化合物系紫外線吸収剤;酸化チタン、酸化亜鉛等の無機化合物系紫外線吸収剤;が挙げられる。
捺染剤をインキジェット記録法に適用する場合、その表面張力を20mN/m以上60mN/m以下と調整することが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、20mN/m以上40mN/m以下である。表面張力が20mN/m未満となるとノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、60mN/mを超えると非吸収基材でのはじきが発生し易い傾向がある。 また粘度は、1.2mPa・s以上20.0 mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2.0 mPa・s以上 15.0mPa・s未満、更に好ましくは3.0mPa・s以上 12.0 mPa・s未満である。粘度がこの範囲において、優れた吐出性と、長期間にわたる良好な噴射性の維持が達成できる。表面張力は前記界面活性剤により適宜調整可能である。
【0131】
本発明の捺染剤は、布帛、人工皮革、天然皮革等に対して印捺することができる。特に布帛に対しての印捺に優れる。
布帛は、繊維で構成される媒体であることが好ましく、織物の他不織布でもよい。素材は、例えば、綿、絹、羊毛、麻、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、レーヨン等が挙げられる。
【実施例
【0132】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。本発明は、実施例に限定されないことはいうまでもない。以下、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
【0133】
(数平均分子量(Mn))
数平均分子量(Mn)は、TSK-GEL SUPER HZM-Nカラム(東ソ-社製)を用い、カラム温度40℃において、RI検出器を装備したGPC(東ソ-社製、HLC-8320GPC)で、展開溶媒にTHFを用いて流速0.35ml/分で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)である。
【0134】
(酸価)
三角フラスコ中に試料、約1gを精密に量り採り、蒸留水/ジオキサン(重量比:蒸留水/ジオキサン=1/9)混合液50mlを加えて溶解する。上記試料溶液に対して、電位差測定装置(京都電子工業社製、装置名「電位差自動滴定装置AT-710M」)を用いて、0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液(力価F)で滴定を行い、滴定終点までに必要な水酸化カリウム・エタノール溶液の量(α(mL))を測定した。乾燥状態の樹脂の値として、酸価(mgKOH/g)を次式により求めた。
酸価(mgKOH/g)={(5.611×α×F)/S}/(不揮発分濃度/100)
ただし、S:試料の採取量(g)
α:0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液の消費量(ml)
F:0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液の力価
【0135】
樹脂(P)の合成に使用した(メタ)アリルモノマーを表1に示す。(メタ)アリルモノマーに関しては、特開平01-000109号などの公知の合成方法に従って実施し得た。
【0136】
【表1】
【0137】
<樹脂(P)の製造>
(製造例1)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、着色剤吸着基含有モノマーとして1-オクタデセンを65.9部(45モル%)、無水マレイン酸を28.3部(50モル%)、アリルモノマーとしてモノマー(M-1)を5.8部(5モル%)仕込み、キシレン10部、連鎖移動剤としてチオグリコール酸オクチル0.6部をフラスコに仕込み、窒素置換した後、130℃で加熱、撹拌した。そこへ、撹拌しながら、ラジカル重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート1.0部とキシレン20部との混合物を、2時間かけて滴下した。その後、温度を130℃に保ったままさらに1時間撹拌して反応させた。その後重合転化率が95~100%になったことを確認した後、続いて反応温度を60℃まで下げて、イソプロピルアルコールを50.8部(無水マレイン酸に仕込み量に対して5当量分)、触媒としてジアザビシクロウンデセンを0.01部加え、撹拌しながら80℃に加温し、4時間保持して反応を終了した。有機溶剤を減圧濃縮して完全に除去し、樹脂(P-1)を得た。得られた樹脂(P-1)の数平均分子量は10,000であった。
【0138】
(製造例2~29)
製造例1の原料と仕込み量を表2および表3に記載した通りに変更した以外は樹脂(P-1)と同様にして合成を行い、樹脂(P-2)~樹脂(P-29)を得た。なお、製造例7は、(無水)マレイン酸単位中の酸無水物基を変性しなかった。また、樹脂の数平均分子量は、ラジカル重合開始剤と連鎖移動剤の使用量を変更して適宜調整した。なお、表2および表3の配合量は、モル%である。
【0139】
【表2】
【0140】
【表3】
【0141】
表2、表3の略号の内容は以下の通りである。
IPA :イソプロピルアルコール
HA:へキシルアルコール
LA :ラウリルアミン
【0142】
<被覆着色剤の製造>
(実施例1)
着色剤としてC.I.ピグメントレッド122(クラリアントケミカルズ社製、「トナーマゼンタE」)35.0部、塩化ナトリウム175.0部、樹脂(P-1)を12.25部、水溶性溶剤としてジエチレングリコール35.0部をステンレス製ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で3時間混練した。この混合物を水1,000部に投入し、約40℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及び水溶性溶剤を除き、減圧下40℃で乾燥して被覆着色剤を得た。
【0143】
<着色組成物の製造>
得られた被覆着色剤20部に対して、濃度10%の水酸化カリウム水溶液を、樹脂(P)の酸価の中和度が100%になるように加えた。次いで、防腐剤としてPROXELGXL(S)(Lonza社製)を0.03部加え、不揮発分が22%になるようにイオン交換水を加えた。次いで70℃のオイルバスで加温しながらディスパーで約1時間撹拌した。次いで出力600Wの超音波ホモジナイザーを使用し、内温が15℃になるように調整しながら5分間処理を行った。
次いで、常温(25℃)で架橋剤としてデナコールEX321(エポキシ基含有化合物、ナガセケムテックス社製、不揮発分100%、エポキシ当量140g/eq)を、前記樹脂(P)のカルボキシル基に対してモル比で0.8eqになるように加えた。次いで、70℃のオイルバスで加温しながらディスパーで約1時間撹拌し、不揮発分が22%になるようにイオン交換水で調整し、着色組成物を得た。得られた着色剤組成物を100倍に水希釈し、該希釈液約5mlを動的光散乱測定法(測定装置はマイクロトラック(株)日機装製)により平均粒子径の測定を行ったところ、平均粒子径(D50)は87nmであった。この時、平均粒子径(D50)は得られた体積粒子径分布データ(ヒストグラム)のピークとした。
【0144】
<着色組成物を含むインキジェット記録用インキの製造>
得られた着色組成物を33.3部、バインダー樹脂としてジョンクリル780(アクリル水性エマルション、BASF社製、不揮発分48%)を6.3部(不揮発分として3部)、プロピレングリコールを16.65部、1,2-ヘキサンジオールを16.65部、レベリング剤としてサーフィノールDF110D(エアープロダクツジャパン社製)を0.1部、さらに合計が100部になるようにイオン交換水で調整し、インキジェット記録用インキを製造した。
【0145】
(実施例2~148、比較例1~8)
使用する着色剤、樹脂(P)、バインダーを表4~7に従って変更した以外は、実施例1と同様にして被覆着色剤、着色組成物、インキジェット記録用インキを得た。
【0146】
表4~7の略号を以下に記載する。
・PR150(C.I.ピグメントレッド150、東京色材製、「TOSHIKIRED150TR」)
・PR254(C.I.ピグメントレッド254、CINIC製、「CINILEX DPP RED SR2P」
・PG7(C.I.ピグメントグリーン7、トーヨーカラー製、「LIONOL GREEN 8930-1」)
・PV19(C.I.ピグメントバイオレット19、クラリアントケミカルズ社製、「InkJetMagentaE5B02」)
・PV23(C.I.ピグメントバイオレット23、クラリアントケミカルズ社製、「HOSTAFINE VIOLET RL」)
・PY74(C.I.ピグメントイエロー74、クラリアント製、「Hansayellow5GX01」)
・PB15:3(C.I.ピグメントブルー15:3、トーヨーカラー製、「LIONOLBLUEFG-7351」)
・PBl7(C.I.ピグメントブラック7、オリオン・エンジニアドカーボンズ製、「Printex35」)
・PO43(C.I.ピグメントオレンジ43、CINIC製、「Cinilex DPP Orange」)
・PO73(C.I.ピグメントオレンジ73、クラリアント製、「PV FAST ORANGE GRL」)
【0147】
表4~7で使用したバインダー樹脂は、以下の通りである。
(1):ジョンクリル780(アクリルエマルション、BASF社製、不揮発分48%)
(2):バイロナールMD-2000(ポリエステルエマルション、東洋紡績社製、不揮発分40%)
(3):ハイドランAP-40F(ポリエステルウレタンエマルション、DIC社製、不揮発分22%)
(4):ボンコートWKA-565(ウレタンアクリルエマルション、DIC社製、不揮発分36%)
【0148】
<粒径安定性>
得られたインキジェット記録用インキを100倍に水希釈し、該希釈液約5mlの粒径を動的光散乱測定法(測定装置:マイクロトラック、日機装社製)により測定を行った。この時、得られた体積粒子径分布データ(ヒストグラム)のピークを(D50)とした。
25℃における粒度、60℃で10日間保存後の25℃における粒度を比較して、粒径変化率を算出し、以下の基準で評価した。インキ化工程での粒径変化が少ないほど評価が高い。
◎:粒径変化率が±5%未満(非常に良好)
○:粒径変化率が±5%以上±12.5%未満(良好)
△:粒径変化率が±12.5%以上±20%未満(実用上問題無し)
×:粒径変化率が±20%以上(実用不可)
【0149】
<粘度安定性>
得られたインキジェット記録用インキの25℃における粘度、60℃で10日間保存後の25℃における粘度を測定し、粘度上昇率で評価した。測定はE型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて、回転数20rpmという条件で測定した。
○: 粘度上昇率が1.1倍未満のもの(良好)
△: 粘度上昇率が1.1~1.5倍のもの(実用上問題なし)
×: 粘度上昇率が1.5倍を超えるもの(実用不可)
【0150】
<吐出安定性>
インキジェットプリンター(セイコーエプソン社製、型番:EM-930C、ピエゾ方式)に上記で得られたインキジェット記録用インキを装填し、XEROX社製の普通紙4200 100枚に全面ベタ印刷(ファインモード)し、100枚目の印刷物を観察し、白線(吐出されていないノズル数に相当)の数を計測した。次にノズルクリーニング操作を実施した後、更に100枚の全面ベタ印刷を実施して再度100枚目(合計200枚目)の印刷物を観察し、白線の発生本数を吐出ノズル幅当たりで計測して、以下の基準で吐出性を評価した。
○:100枚目の印字物及び200枚目の印刷物で白線発生なし。(良好)
△:100枚目の印字物で白線なし且つ200枚目の印刷物で白線発生2本以下。(実用上問題なし)
×:100枚目又は200枚目の印刷物で白線発生3本以上。(実用不可)
【0151】
<光沢値>
吐出安定性評価で用いた印刷パターンと印刷モードを使用して、普通紙の代わりにコート紙(王子製紙社製、OKトップコート)に印刷して、ハンディ光沢計(日本電色工業社製、PG-II)で60°光沢度を測定した。
◎:光沢度 45以上(良好)
○:光沢度 45未満~35以上(良好)
△:光沢度 35未満~20以上(実用上問題なし)
×:光沢度 20未満(実用不可)
60°光沢度が高いほど光沢性に優れ、印字物がきれいに見え、好ましい。
◎、○評価であればインキジェット記録用インキに好適である。
【0152】
<相溶性評価>
実施例及び比較例の各インキの調製でそれぞれ使用した樹脂(P)とそれぞれのバインダー樹脂を各インキでの使用量と同等に含む混合水溶液をガラス上にキャストし、100℃で加熱乾燥することにより膜厚25μmのポリマー膜を作製した。そして、得られた各ポリマー膜の600nmの透過率を分光光度計(日立製作所社製U-3300)で測定した。測定した透過率を下記のように分類し、相溶性の評価基準とし、各種バインダー樹脂との相溶性を評価した。
○:透過率90%以上(良好)
△:透過率85%以上(実用上問題なし)
×:透過率80%未満(実用不可)
【0153】
【表4】
【0154】
【表5】
【0155】
【表6】
【0156】
【表7】
【0157】
表4~7の結果から、本発明の被覆着色剤は、着色剤の分散安定性が優れバインダーとの相溶性に優れ、被膜の光沢が良好である。
樹脂(P)が着色剤吸着基含有モノマー単位を含むことで着色剤に対して高い吸着能を持ち、樹脂(P)中の(メタ)アリルモノマー単位が優れた立体反発効果、およびバインダー樹脂との相溶性向上効果により優れた分散安定性が得られた。被覆着色剤を含むインキジェット記録用インキ、フレキソ印刷インキ、塗料、文具、および捺染剤は、粘度が低く、保存安定性が良好であり、被膜の光沢値が被膜を形成できる。