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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】チューブ容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 35/14 20060101AFI20240903BHJP
   B65D 35/10 20060101ALI20240903BHJP
   B65D 35/12 20060101ALI20240903BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240903BHJP
   B65D 81/24 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B65D35/14 A
B65D35/10 B
B65D35/12
B65D65/40 D
B65D81/24 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020024539
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2021127167
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢島 俊輔
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-082484(JP,A)
【文献】特開平10-086952(JP,A)
【文献】特開2019-172280(JP,A)
【文献】特開2017-019553(JP,A)
【文献】特開2014-227206(JP,A)
【文献】特開2012-162283(JP,A)
【文献】特開2008-308191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/14
B65D 35/10
B65D 35/12
B65D 65/40
B65D 81/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が閉塞され、内容物を収容することができる筒状の胴部と、
前記胴部の他端に取り付けられた前記胴部の前記他端を閉塞可能な注出口部とを含むチューブ容器であって、
前記注出口部は、
前記胴部の長手方向に直交する平板状の閉塞部と、
前記閉塞部の前記胴部側の面を覆うように取り付けられた低吸着性の樹脂を含む低吸着フィルムとを備え、
前記胴部は、
前記筒状の状態における最内層が、低吸着性の樹脂を含む低吸着シーラント層である2層以上の積層フィルムを用いて形成されており、
前記積層フィルムの端縁どうしが貼り合わされた、貼り合わせ部を備え、
前記他端が、前記閉塞部の端縁において、前記胴部の長手方向に対して直交する面であって、前記閉塞部の前記胴部の前記一端側とは反対側の面に貼り合わされており、
前記貼り合わせ部が、エッジプロテクトテープで覆われている、
チューブ容器。
【請求項2】
一端が閉塞され、内容物を収容することができる筒状の胴部と、
前記胴部の他端に取り付けられた前記胴部の前記他端を閉塞可能な注出口部とを含むチューブ容器であって、
前記注出口部は、
低吸着性の樹脂を含む樹脂材料により形成され、
前記胴部の長手方向に直交する平板状の閉塞部を備え、
前記胴部は、
前記筒状の状態における最内層が、低吸着性の樹脂を含む低吸着シーラント層である2層以上の積層フィルムを用いて形成されており、
前記積層フィルムの端縁どうしが貼り合わされた、貼り合わせ部を備え、
前記他端が、前記閉塞部の端縁において、前記胴部の長手方向に対して直交する面であって、前記閉塞部の前記胴部の前記一端側とは反対側の面に貼り合わされており、
前記貼り合わせ部が、エッジプロテクトテープで覆われている、
チューブ容器。
【請求項3】
前記低吸着性の樹脂のそれぞれは、エステル系、環状ポリオレフィン系、エチレンビニルアルコールポリマー系、ポリアクリルニトリル系、バリアナイロン系のいずれかの樹脂を含む、
請求項1または2に記載のチューブ容器。
【請求項4】
記貼り合わせ部は、前記積層フィルムの前記最内層どうしが対向して貼り合わされ、前記胴部の長手方向に沿って延伸するように形成されている、
請求項1または2に記載のチューブ容器。
【請求項5】
前記胴部は、前記最内層が互いに接するように折り返されたプリーツ部を前記他端に備える、
請求項1~3のいずれかに記載のチューブ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品、化粧品、食品等を充填して包装することができるチューブ容器が知られている。チュ-ブ容器は、一般に、一端が閉塞されかつ他端が開口した筒状の胴部と、胴部の開口他端に溶着等により取り付けられた、胴部の開口から離れるにしたがって外径が小さくなるテーパ形状に形成された注出口部(肩部とも呼ばれる)とを含む。注出口部の胴部と反対側には、内容物を取り出すことができる開口部が設けられ、チューブ容器の使用者は胴部を押し潰すことにより、開口部から内容物を絞り出すことができる。
【0003】
特許文献1は、胴部および注出口部がアルミニウム等の金属材料を用いて一体に形成されたチューブ容器を開示している。また、特許文献2は、胴部および注出口部がそれぞれ樹脂材料を用いて形成され、胴部の一端が注出口部のテーパ形状の外周面に溶着されたチューブ容器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-067401号公報
【文献】特開2016-199280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1のチューブ容器は金属材料を用いて形成されているため、樹脂材料を用いて形成されたチューブ容器と比べて、内容物に含まれる薬効成分や香気成分が胴部および注出口部を形成する材料に吸着されることで、内容物の効能が低下したり香りが変化したりすることを防ぐことができるが、その一方で、金属材料を用いて形成された胴部は、繰り返し内容物を絞り出した場合に胴部に破れが発生してしまうという課題を有していた。
【0006】
他方、引用文献2のチューブ容器は、胴部が低吸着樹脂を含む材料で形成されているため、内容物に含まれる成分等の吸着、およびピンホールの発生を抑制することが可能であるが、低吸着樹脂を含む材料を用いて形成された胴部は一般に溶着強度が低く、注出口部との十分な接続強度を確保することが困難であるという課題があった。
【0007】
また、引用文献1、2のチューブ容器はいずれも、注出口部がテーパ形状に形成されていることから、内容物を取り出す際に内容物の一部がテーパ形状の内方に残留してしまい、全ての内容物を絞り出すことが困難であるという課題があった。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、胴部と注出口部との接続強度を確保しながら内容物に含まれる成分に対する吸着性を抑えて、容器内部における内容物の残留を抑制することができるチューブ容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一局面は、一端が閉塞され、内容物を収容することができる筒状の胴部と、胴部の他端に取り付けられた胴部の他端を閉塞可能な注出口部とを含むチューブ容器であって、注出口部は、胴部の長手方向に直交する平板状の閉塞部と、閉塞部の胴部側の面を覆うように取り付けられた低吸着性の樹脂を含む低吸着フィルムとを備え、胴部は、筒状の状態における最内層が、低吸着性の樹脂を含む低吸着シーラント層である2層以上の積層フィルムを用いて形成されており、積層フィルムの端縁どうしが貼り合わされた、貼り合わせ部を備え、他端が、閉塞部の端縁において、胴部の長手方向に対して直交する面であって、閉塞部の胴部の一端側とは反対側の面に貼り合わされており、貼り合わせ部が、エッジプロテクトテープで覆われている、チューブ容器である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、胴部と注出口部との接続強度を確保しながら内容物に含まれる成分に対する吸着性を抑えて、容器内部における内容物の残留を抑制することができるチューブ容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態に係るチューブ容器の正面図および側面図
図2】本発明の第1の実施形態に係るチューブ容器の胴部の断面図
図3】本発明の第1の実施形態に係るチューブ容器の胴部の断面図
図4】本発明の第1の実施形態に係るチューブ容器の使用方法を示す断面図
図5】本発明の第1の実施形態に係るチューブ容器の使用方法を示す断面図
図6】本発明の第1の実施形態に係るチューブ容器の胴部を貼り合わせた様子を示す図
図7】本発明の第2の実施形態に係るチューブ容器の正面図および側面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図を参照しながら本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、各実施形態において同一または対応する構成には、同じ参照符号を付して説明を適宜省略する。
【0013】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態に係るチューブ容器100は、一端が閉塞された胴部10と、胴部10の他端に取り付けられた注出口部20とを含む。図1は、チューブ容器100の正面図および側面図であり、図2図3は、胴部10をA-A’線で切断した断面図であり、図4図5は、チューブ容器100の使用方法を示す断面図である。なお、図1は、注出口部20の形状を明確にするために、注出口部20の周辺を透過して示している。
【0014】
(胴部)
胴部10は、一端に位置する底部11が閉塞された筒状の部材であって、図示しない内容物を収容することができる収容部13を備える。胴部10は、筒状の状態における最内層が、低吸着性の樹脂を含む低吸着シーラント層10aである2層以上の積層フィルムを用いて形成されている。胴部10の底部11はヒートシールにより閉塞されている。
【0015】
胴部10は、積層フィルムの端縁どうしを貼り合わせて形成された、貼り合わせ部14を備える。貼り合わせ部14は、図1図2に示すように、積層フィルムの端縁の低吸着シーラント層10aどうしをヒートシールなどにより対向させて貼り合わせて、胴部10の長手方向に沿って延伸するように形成されている。貼り合わせ部14は、積層フィルムの剥離を防止するためにエッジプロテクトテープで覆ってもよい。
【0016】
貼り合わせ部14は、図3に示すように、胴部10の表面に沿うように折り曲げて、接着剤などを用いて胴部10に貼り付けて固定してもよい。これにより、チューブ容器100を掴んで使用する際等に、胴部10の表面から延出した貼合わせ部14が手等に接触して使用の邪魔になることを抑制できる。
【0017】
低吸着シーラント層10aに用いられる低吸着性の樹脂としては、特に限定されないが、エステル系、環状ポリオレフィン系、エチレンビニルアルコールポリマー系、ポリアクリルニトリル系、バリアナイロン系のいずれかの樹脂を好適に用いることができる。
【0018】
胴部10の形成に用いられる積層フィルムの低吸着シーラント層10a以外の層の材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(NY)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)等の樹脂材料を用いることができる。また、積層フィルムは、胴部10に求められる機能に応じて周知の機能性フィルムを含んでもよく、例えば、ガスバリア性を付与するためにアルミニウム箔やエチレンビニルアルコールポリマー(EVOH)樹脂等を含んだフィルムを有してもよい。
【0019】
このように、チューブ容器100の貼り合わせ部14は、積層フィルムの端縁の低吸着シーラント層10aどうしを対向させて貼り合わせることにより形成されている。このため、積層フィルムの最内層と最外層に接着性を有する層(シーラント層)を設けて端部どうしをオーバーラップして貼り合わせた従来技術に係るチューブ容器の胴部と比べて、積層フィルムを薄く形成することが可能である。したがって、チューブ容器100は、積層フィルムが厚くなり胴部10の剛性が高くなることを抑制でき、この結果、胴部10を押し潰す力を解除した際に元の形状に戻る収容部13に外気が逆流するエアーバック現象が発生し難くなる。積層フィルムの厚みは、内容物の絞り出し易さおよびエアーバック現象の抑制を考慮すると250μm以下であることが好ましい。
【0020】
なお、図1に示す胴部10の形状は一例であり、胴部10の形状は収容部13を形成可能な筒状であれば限定されず、例えば、マチを備えたガセット型や、貼り合わせ部14を2つ備えた二方シール型であってもよい。
【0021】
(注出口部)
注出口部20は、胴部10の他端に位置する頂部12に取り付けられ、胴部10の頂部12を閉塞可能とする部材である。注出口部20は、胴部10の長手方向に直交する平板状の閉塞部21と、閉塞部21の略中心部に設けられた円環状のハーフカット22と、ハーフカット22の内側から胴部10の底部11とは反対側に向かって延出する摘み部23と、ハーフカット22よりも外方において胴部10の底部11とは反対側に向かって延出する筒状の周壁24と、閉塞部21の胴部10側の面を覆うように取り付けられた、低吸着性の樹脂を含む低吸着フィルム25とを備える。なお、ハーフカット22、摘み部23、および周壁24は、一例であり、注出口部20はこれらの少なくとも一部を備えなくてもよい。
【0022】
閉塞部21は、胴部10の頂部12を閉塞する円板状の部材である。閉塞部21は、一例として円板形状であるが、平板状であれば平面視における形状は限定されず、楕円、長円、多角形等であってもよい。
【0023】
摘み部23は、ハーフカット22に沿って注出口部20の一部を除去することで、内容物を取り出すための開口を閉塞部21に形成するために設けられる。摘み部23は、一例として、閉塞部21から延出する支持部23aと、支持部23aの注出口部20と反対側の端部に設けられたリング部23bとを含むプルリングである。チューブ容器100の使用者は、摘み部23を所定の力で引っ張ることにより、図4に示すように、閉塞部21においてハーフカット22に囲まれた開口予定部21aおよび低吸着フィルム25を除去して、内容物を取り出すための開口を形成することができる。なお、低吸着フィルム25に、ハーフカット22の形状に対応する弱化線を形成して、開口予定部21aの除去を容易にしてもよい。
【0024】
なお、摘み部23の形状は、使用者が引っ張ることにより閉塞部21の一部を除去することができればプルリングに限定されず、例えば閉塞部21から延出する板状の摘み代であってもよい。
【0025】
周壁24は、注出口部20に形成される開口を閉塞するキャップ(不図示)を取り付けるために設けられる。周壁24は、キャップを固定するためのネジ山や係合爪を備えてもよい。
【0026】
注出口部20の閉塞部21、摘み部23、および周壁24は、胴部10の低吸着シーラント層10aとのヒートシールが可能な樹脂材料を用いて射出成型などにより一体的に形成することができる。閉塞部21を平板状に形成した注出口部20によれば、テーパ形状に形成された従来技術に係る注出口部と比較して、使用される材料を低減することができる。
【0027】
低吸着フィルム25は、注出口部20を形成する樹脂材料に内容物の薬効成分や香気成分が吸着されることを防ぐために、閉塞部21の胴部10側の面を覆うように取り付けられる低吸着性の樹脂を含むフィルム状の部材である。低吸着フィルム25の形状は、閉塞部21の胴部10側の面を覆うことができるように、閉塞部21の平面視における形状と同じであることが好ましい。
【0028】
低吸着フィルム25に含まれる低吸着性の樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エステル系、環状ポリオレフィン系、エチレンビニルアルコールポリマー系、ポリアクリルニトリル系、バリアナイロン系の樹脂を好適に用いることができる。
【0029】
低吸着フィルム25の層構成としては、一例として、アイオノマー/アルミニウム(AL)/アイオノマー、酸コポリマー/AL/酸コポリマーを挙げることができる。この場合、酸コポリマーとしては、例えば、エチレンメタアクリル酸共重合樹脂(EMAA樹脂)、エチレンーメチルアクリレート共重合樹脂(EMA樹脂)が挙げられる。また、低吸着フィルム25は、胴部10の形成に用いられる積層フィルムと同様に、注出口部20に求められる機能に応じて周知の機能性フィルムを含んでもよく、例えば、ガスバリア性を付与するためにアルミニウム箔やEVOH樹脂等を含んだフィルムを有してもよい。
【0030】
低吸着フィルム25は、一例として、注出口部20にヒートシールにより取り付けられる。低吸着フィルム25を注出口部20に取り付ける方法は、ヒートシールに限定されず、例えば、閉塞部21に一体的にインサート成形されてもよい。
【0031】
図1に示すように、胴部10の頂部12は、閉塞部21の端縁において、閉塞部21の胴部10の底部11側とは反対側の面に沿うようにして折り曲げられて貼り合わされている。胴部10と閉塞部21とは、一例として、ヒートシールにより貼り合わされる。
【0032】
このようにして、注出口部20が胴部10に取り付けられたチューブ容器100では、胴部10と注出口部20との接続面が胴部10の長手方向に対して直交する面となる。このため、テーパ形状の外周面に胴部の一端を貼り合わせる従来技術と比べて、胴部10と注出口部20とのそれぞれに、胴部10の長手方向において互いに離れるような力が作用した場合に、接続面に作用するせん断方向への力を低減することができる。このため、チューブ容器100によれば、比較的溶着強度が低い低吸着性の樹脂を含む低吸着シーラント層10aを用いた溶着であっても充分な接続強度を確保することができる。
【0033】
また、このようにして形成されたチューブ容器100の収容部13は、低吸着シーラント層10aと低吸着フィルム25とにより覆われた空間となる。このため、チューブ容器100は、内容物の薬効成分や香気成分が、胴部10および注出口部20に含まれる低吸着性の樹脂以外の樹脂材料に吸着されることを抑制して、内容物の効能が低下したり香りが変化したりすることを防ぐことができる。
【0034】
なお、胴部10の形成に用いられる積層フィルムおよび低吸着フィルム25のそれぞれがガスバリア性を有するフィルムを有する場合、注出口部20において、胴部10が貼り合された領域と、低吸着フィルム25が取り付けられた領域とが、閉塞部21の全周にわたる領域において胴部10の長手方向から見て互いに重なるように、胴部10が注出口部20に貼り合わされることが好ましい。このようにして、注出口部20が胴部10に取り付けられたチューブ容器100では、閉塞部21の全周にわたる領域において、積層フィルムおよび低吸着フィルム25それぞれのガスバリア性を有するフィルムが胴部10の長手方向から見て互いに重なるため、ガスバリア性を有さない領域が生じず、高いガスバリア性を実現することができる。
【0035】
(使用方法)
上述のように、摘み部23が所定の力で引っ張られることにより、ハーフカット22に沿って閉塞部21の一部である開口予定部21aが低吸着フィルム25とともに除去されて閉塞部21に開口が形成される。これにより、チューブ容器100の使用者は、胴部を押し潰すことで、内容物を、開口を介して外方に絞り出すことができる。
【0036】
また、チューブ容器100は、注出口部20が胴部10の長手方向に直交する平板状の閉塞部21を備えるとともに、胴部10の頂部12は、閉塞部21の端縁において、閉塞部21の胴部10の底部11側とは反対側の面に接着されている。このため、図5に示すように、収容部13にわずかに内容物30が残留した場合などには、チューブ容器100の使用者は、胴部10を注出口部20の端縁近傍で折り曲げることにより、内容物30を、閉塞部21の内方側の平面と胴部10の内面とにより挟み込み、注出口部20の開口の周辺へ向かって容易に押し出すことができる。
【0037】
さらに、注出口部20の閉塞部21は、平板状であるため、テーパ形状に形成された注出口部とは異なり、内方側に内容物30が残留する空間を有さない。このため、注出口部20の開口の周辺へ向かって押し出された内容物は、胴部10および注出口部20の内部へ残留することなく開口から絞り出される。このため、チューブ容器100によれば、容器内部における内容物の残留を抑制することができる。
【0038】
(変形例)
頂部12は、胴部10の低吸着シーラント層10aが互いに接するように折り返された複数のプリーツ部12aが形成されるように閉塞部21に貼り合わせてもよい。図6は、プリーツ部12aを形成した胴部10を閉塞部21へ貼り合わせた様子を示す図である。図6の(a)は、頂部12を胴部10の長手方向から見た平面図であり、図6の(b)は、プリーツ部12aを図6の(a)のB-B’線で切断した断面図である。
【0039】
プリーツ部12aの数は、閉塞部21の形状や胴部10を形成する積層フィルムの厚み等によって適宜調整することができる。チューブ容器100では、一例としてプリーツ部12aを16個設けた。プリーツ部12aの数は、プリーツ部12aを形成するための加工装置の強度、意匠性の観点等から3個以上60個以下が好ましく、3個以上36個以下が特に好ましい。
【0040】
また、閉塞部21におけるプリーツ部12aの間隔も、閉塞部21の形状や胴部10を形成するフィルムの厚み等によって適宜調整することができる。閉塞部21の形状が楕円等の曲率半径が胴部10の周方向にわたって変化する形状である場合は、一例として曲率半径が小さい部分におけるプリーツ部12aの間隔を小さくし、曲率半径が大きい部分におけるプリーツ部12aの間隔を大きくして配置することができる。なお、頂部12を折りたたんだ箇所は、すべての閉塞部21の端縁に沿っていなくてもよいが、胴部10と注出口部20との接合強度を高めるために、胴部10の長手方向から見て閉塞部21の端縁が折りたたんだ箇所に内接していることが好ましい。
【0041】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係るチューブ容器101について、チューブ容器100との相違を中心に説明する。チューブ容器101は、一端が閉塞された胴部10と、胴部10の他端に取り付けられた注出口部20aとを含む。図7は、チューブ容器101の正面図および側面図である。
【0042】
チューブ容器101とチューブ容器100との相違点は、注出口部20aが低吸着フィルム25を備えない点、および注出口部20aの閉塞部21、摘み部23、および周壁24が低吸着性の樹脂を含む樹脂材料により形成されている点である。なお、ハーフカット22、摘み部23、および周壁24は、一例であり、注出口部20aはこれらの少なくとも一部を備えなくてもよい。
【0043】
このようにして形成されたチューブ容器101の収容部13は、低吸着シーラント層10aと低吸着性の樹脂を含む樹脂材料により形成された注出口部20aとにより覆われた空間となる。このため、チューブ容器101もチューブ容器100と同様に、内容物の薬効成分や香気成分が、胴部10および注出口部20に含まれる低吸着性の樹脂以外の樹脂材料に吸着されることを抑制して、内容物の効能が低下したり香りが変化したりすることを防ぐことができる。
【0044】
注出口部20aの閉塞部21、摘み部23、および周壁24の形成に用いられる低吸着性の樹脂としては、特に限定されないが、エステル系、環状ポリオレフィン系、エチレンビニルアルコールポリマー系、ポリアクリルニトリル系、バリアナイロン系のいずれかの樹脂を好適に用いることができる。
【0045】
チューブ容器101は、上述の相違点以外は、チューブ容器100と同様であるため、低吸着シーラント層と注出口部20aとを充分な強度で接続することができ、容器内部における内容物の残留を抑制することができ、エアーバック現象の発生を抑制することができる。
【0046】
なお、チューブ容器101の注出口部20aは、閉塞部21の胴部10側の面を覆う低吸着フィルム25をさらに備えてもよい。
【実施例
【0047】
実施例1~19および比較例1、2に係るチューブ容器を製造して、香気成分の吸着性についての評価を行った。いずれのチューブ容器も、周壁の内周直径(口径)は21mmであり、胴部の長さは100mmである。なお、以下で説明する各積層フィルムの層構成はいずれも、胴部を形成した際の外方から内方の順である。
【0048】
(実施例1)
実施例1として、図7に示した第2の実施形態に係るチューブ容器を製造した。胴部の積層フィルムの層構成は、PET(12μm)/NY(15μm)/AL(9μm)/ヒートシール性PET(HS-PET)(50μm)とし、注出口部の材料はPET-Gとした。
【0049】
(実施例2)
実施例2として、図1に示した第1の実施形態に係るチューブ容器を製造した。胴部の積層フィルムの層構成は、PET(12μm)/NY(15μm)/AL(9μm)/HS-PET(50μm)とし、注出口部の材料はPET-Gとし、低吸着フィルムの層構成をアイオノマー(20μm)/AL(7μm)/アイオノマー(20μm)とした。
【0050】
(実施例3)
実施例3として、図7に示した第2の実施形態に係るチューブ容器を製造した。胴部の積層フィルムの層構成は、PET(16μm)/AL(7μm)/NY(25μm)/HS-PET(30μm)とし、注出口部の材料はPET-Gとした。
【0051】
(実施例4)
実施例4として、図1に示した第1の実施形態に係るチューブ容器を製造した。胴部の積層フィルムの層構成は、PET(25μm)/AL(9μm)/NY(15μm)/HS-PET(100μm)とし、注出口部の材料はPET-Gとし、低吸着フィルムの層構成を酸コポリマー(10μm)/AL(9μm)/酸コポリマー(10μm)とした。
【0052】
(実施例5)
実施例5として、図7に示した第2の実施形態に係るチューブ容器を製造した。胴部の積層フィルムの層構成は、PET(12μm)/AL(20μm)/NY(15μm)/HS-PET(50μm)とし、注出口部の材料はA-PETとした。
【0053】
(実施例6)
実施例6として、図7に示した第2の実施形態に係るチューブ容器を製造した。胴部の積層フィルムの層構成は、透明蒸着PET(12μm)/NY(15μm)/HS-PET(50μm)とし、注出口部の材料はPET-Gとした。
【0054】
(実施例7)
実施例7として、図1に示した第1の実施形態に係るチューブ容器を製造した。胴部の積層フィルムの層構成は、PET(12μm)/NY(15μm)/AL(7μm)/シクロオレフィンポリマー(COP)多層シーラント(30μm)とし、注出口部の材料はポリエチレン(PE)とし、低吸着フィルムの層構成をアイオノマー(20μm)/AL(9μm)/アイオノマー(20μm)とした。COP多層シーラントの層構成は、COP(20μm)/PE(10μm)である。
【0055】
(実施例8)
実施例8として、図7に示した第2の実施形態に係るチューブ容器を製造した。胴部の積層フィルムの層構成は、PET(12μm)/NY(25μm)/AL(9μm)/COP多層シーラント(30μm)とし、注出口部の材料はCOPとした。COP多層シーラントの層構成は、PE(10μm)/COP(20μm)である。
【0056】
(実施例9)
実施例9として、図1に示した第1の実施形態に係るチューブ容器を製造した。胴部の積層フィルムの層構成は、PET(12μm)/NY(15μm)/AL(9μm)/COP多層シーラント(50μm)とし、注出口部の材料はCOPとし、低吸着フィルムの層構成をアイオノマー(10μm)/AL(9μm)/アイオノマー(10μm)とした。COP多層シーラントの層構成は、PE(30μm)/COP(20μm)である。
【0057】
(実施例10)
実施例10として、図1に示した第1の実施形態に係るチューブ容器を製造した。胴部の積層フィルムの層構成は、PET(12μm)/NY(15μm)/AL(7μm)/環状オレフィンコポリマー(COC)多層シーラント(50μm)とし、注出口部の材料はPEとし、低吸着フィルムの層構成をPE(10μm)/COC(20μm)とした。COC多層シーラントの層構成は、COC(40μm)/PE(10μm)である。
【0058】
(実施例11)
実施例11として、図7に示した第2の実施形態に係るチューブ容器を製造した。胴部の積層フィルムの層構成は、PET(12μm)/NY(15μm)/AL(9μm)/COC多層シーラント(30μm)とし、注出口部の材料はCOCとした。COC多層シーラントの層構成は、PE(10μm)/COC(10μm)/PE(10μm)である。
【0059】
(実施例12)
実施例12として、図1に示した第1の実施形態に係るチューブ容器を製造した。胴部の積層フィルムの層構成は、PET(25μm)/NY(25μm)/AL(20μm)/ポリアクリロニトリル(PAN)(30μm)とし、注出口部の材料はPANとし、低吸着フィルムの層構成をアイオノマー(20μm)/AL(9μm)/アイオノマー(20μm)とした。
【0060】
(実施例13)
実施例13として、図7に示した第2の実施形態に係るチューブ容器を製造した。胴部の積層フィルムの層構成は、透明蒸着PET(12μm)/NY(15μm)/PAN(30μm)とし、注出口部の材料はPANとした。
【0061】
(実施例14)
実施例14として、図1に示した第1の実施形態に係るチューブ容器を製造した。胴部の積層フィルムの層構成は、PET(12μm)/NY(15μm)/AL(9μm)/EVOH多層シーラント(30μm)とし、注出口部の材料はEVOHとPEとの混合樹脂とし、低吸着フィルムの層構成をアイオノマー(10μm)/AL(9μm)/アイオノマー(10μm)とした。EVOH多層シーラントの層構成は、EVOH(20μm)/PE(10μm)である。
【0062】
(実施例15)
実施例15として、図7に示した第2の実施形態に係るチューブ容器を製造した。胴部の積層フィルムの層構成は、PET(16μm)/NY(15μm)/AL(9μm)/バリアNY多層シーラント(50μm)とし、注出口部の材料はバリアNYとPEとの混合樹脂とした。バリアNY多層シーラントの層構成は、PE(20μm)/バリアNY(10μm)/PE(20μm)である。
【0063】
(実施例16)
実施例16として、図7に示した第2の実施形態に係るチューブ容器を製造した。胴部の積層フィルムの層構成は、PET(12μm)/NY(25μm)/AL(10μm)/COP多層シーラント(30μm)とし、注出口部の材料はバリアNYとPEとの混合樹脂とした。COP多層シーラントの層構成は、COP(20μm)/PE(10μm)である。
【0064】
(実施例17)
実施例17として、図1に示した第1の実施形態に係るチューブ容器を製造した。胴部の積層フィルムの層構成は、透明蒸着PET(12μm)/NY(15μm)/AL(7μm)/COP多層シーラント(30μm)とし、注出口部の材料はバリアNYとPEとの混合樹脂とし、低吸着フィルムの層構成を酸コポリマー(10μm)/AL(9μm)/酸コポリマー(10μm)とした。COP多層シーラントの層構成は、COP(10μm)/PE(20μm)である。
【0065】
(実施例18)
実施例18として、図1に示した第1の実施形態に係るチューブ容器を製造した。胴部の積層フィルムの層構成は、透明蒸着PET(12μm)/NY(15μm)/HS-PET(50μm)とし、注出口部の材料はPET-Gとし、低吸着フィルムの層構成を酸コポリマー(20μm)/AL(9μm)/酸コポリマー(20μm)とした。
【0066】
(実施例19)
実施例19として、図7に示した第2の実施形態に係るチューブ容器を製造した。胴部の積層フィルムの層構成は、透明蒸着PET(12μm)/NY(15μm)/COP多層シーラント(30μm)とし、注出口部の材料はCOPとした。COP多層シーラントの層構成は、PE(10μm)/COP(20μm)である。
【0067】
(比較例1)
比較例1として、図7に示した第2の実施形態に係るチューブ容器と同じ形状のチューブ容器を製造した。胴部の積層フィルムの層構成は、PET(12μm)/NY(15μm)/AL(7μm)/PE(100μm)とし、注出口部の材料はPEとした。
【0068】
(比較例2)
比較例2として、図7に示した第2の実施形態に係るチューブ容器と同じ形状のチューブ容器を製造した。胴部の積層フィルムの層構成は、PET(12μm)/NY(15μm)/AL(7μm)/ポリプロピレン(PP)(80μm)とし、注出口部の材料はPPとした。
【0069】
以上のチューブ容器を製造して、香気成分を含むリモネンおよびメントールを含む液体20mLを内容液として充填した後、40℃湿度75%の環境に1カ月保管した。保管の開始から、1週、2週、および1月経過した時点での、内容液中のリモネンおよびメントールの、保管開始時を100%とした残存率をガスクロマトグラフィー質量分析にて測定した。
【0070】
表1に測定結果(残存率)および評価結果を示す。総合評価には、1月経過後に残存率80%以上であったものを、吸着量が少ないチューブ容器として「+」で示し、残存率が80%未満であったものを、吸着量が多いチューブ容器として「-」で示した。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示すように、比較例1、2に係るチューブ容器は香気成分の吸着量が多く、1月後の残存率が80%未満であった。
【0073】
これに対して、実施例1~19に係るチューブ容器は、収容部が、低吸着シーラント層および低吸着フィルム、または低吸着シーラント層および低吸着性の樹脂を含む樹脂材料により形成された注出口部20により覆われているため香気成分の吸着量が少なく、いずれも1月後の残存率が80%以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、医薬品、化粧品、食品等を充填できる包装容器に用いることができる。
【符号の説明】
【0075】
10 胴部
10a 低吸着シーラント層
11 底部
12 頂部
12a プリーツ部
13 収容部
14 貼り合わせ部
20、20a 注出口部
21 閉塞部
22 ハーフカット
23 プルリング
24 周壁
25 低吸着フィルム
100、101 チューブ容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7