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特許7547742繊維強化基材の製造方法、繊維強化基材およびシャッター羽根の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】繊維強化基材の製造方法、繊維強化基材およびシャッター羽根の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20240903BHJP
   G03B 9/36 20210101ALI20240903BHJP
   B29B 11/16 20060101ALI20240903BHJP
   B29C 70/20 20060101ALI20240903BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C08J5/04 CES
C08J5/04 CEZ
C08J5/04 CFD
C08J5/04 CFG
G03B9/36 A
B29B11/16
B29C70/20
B29C70/42
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020032834
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021134305
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 彰文
(72)【発明者】
【氏名】篠木 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 隆雄
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-083426(JP,A)
【文献】特開平06-095202(JP,A)
【文献】特開2008-149708(JP,A)
【文献】特開2015-166130(JP,A)
【文献】特開2006-263759(JP,A)
【文献】特開昭60-063825(JP,A)
【文献】特開2007-121895(JP,A)
【文献】特開昭63-165828(JP,A)
【文献】特開平07-227841(JP,A)
【文献】特開2006-188597(JP,A)
【文献】特開2007-192961(JP,A)
【文献】特開2021-126847(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181983(WO,A1)
【文献】特許第6721042(JP,B1)
【文献】特開2015-193214(JP,A)
【文献】特開2013-221114(JP,A)
【文献】特開2019-98747(JP,A)
【文献】特開2018-83426(JP,A)
【文献】特開平4-285922(JP,A)
【文献】特開2004-4231(JP,A)
【文献】特開2017-31342(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0136925(US,A1)
【文献】特開平11-107107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16
15/08-15/14
B29C33/00-33/76
39/00-43/58
45/26-45/44
45/64-45/68
45/73
49/48-49/56
49/70
51/30-51/40
51/44
70/00-70/88
B32B1/00-43/00
C08J5/04-5/10
5/24
G03B9/00-9/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に配向した強化繊維が熱可塑性樹脂に埋め込まれた第1のシート材と、熱可塑性樹脂を含有する帯状の第2のシート材とを準備する第1の工程と、
前記第2のシート材の両面側に、前記強化繊維の配向方向を揃えて2つの前記第1のシート材を配置する第2の工程と、
両面側に前記第1のシート材が配置された状態の前記第2のシート材を、少なくとも一対の加熱ローラ同士の間を通過させることにより、前記第1のシート材の前記熱可塑性樹脂および前記第2のシート材の前記熱可塑性樹脂を溶融させて、2つの前記第1のシート材および前記第2のシート材を一体化して帯状の繊維強化基材を得る第3の工程とを有し、
前記第1のシート材は、帯状をなし、
前記第2の工程において、第1送出ロールを用いて、一方の前記第1のシート材を前記第2のシート材の搬送方向に対して交差する方向に搬送し、第2送出ロールを用いて、他方の前記第1のシート材を前記第2のシート材の搬送方向に対して交差する方向に搬送し、前記第2のシート材と重なる重なり部を分断し、
前記第1送出ロールと前記第2送出ロールとは、前記第2のシート材の搬送方向を中心として互いに反対側に配置され、
前記一方の前記第1のシート材の搬送方向と、前記他方の前記第1のシート材の搬送方向とは、互いに異なることを特徴とする繊維強化基材の製造方法。
【請求項2】
一方向に配向した強化繊維が熱可塑性樹脂に埋め込まれた第1のシート材と、熱可塑性樹脂を含有する帯状の第2のシート材とを準備する第1の工程と、
前記第2のシート材の両面側に、前記強化繊維の配向方向を揃えて2つの前記第1のシート材を配置する第2の工程と、
両面側に前記第1のシート材が配置された状態の前記第2のシート材を、少なくとも一対の加熱ローラ同士の間を通過させることにより、前記第1のシート材の前記熱可塑性樹脂および前記第2のシート材の前記熱可塑性樹脂を溶融させて、2つの前記第1のシート材および前記第2のシート材を一体化して帯状の繊維強化基材を得る第3の工程とを有し、
前記第1のシート材は、帯状をなし、
前記第2の工程において、1つの前記第1のシート材を、前記第2のシート材の搬送方向に対して交差する方向に搬送して、前記第2のシート材を通過させ、前記第2のシート材と重なる重なり部と、前記重なり部より搬送方向前方の余剰部とを生じさせ、前記重なり部と前記余剰部とを分断した後、前記余剰部を前記第2のシート材を介して前記重なり部と反対側に反転させることを特徴とする繊維強化基材の製造方法。
【請求項3】
前記第2のシート材は、さらに、前記熱可塑性樹脂に埋め込まれ、一方向に配向した強化繊維を含有し、
前記第2の工程において、前記第2のシート材の前記強化繊維の配向方向を、前記第1のシート材の前記強化繊維の配向方向と交差させる請求項1または2に記載の繊維強化基材の製造方法。
【請求項4】
前記第2の工程において、前記第1のシート材の前記強化繊維の配向方向を、得られる前記繊維強化基材の短手方向とする請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維強化基材の製造方法。
【請求項5】
前記第3の工程において、前記少なくとも一対の加熱ローラ同士の間の距離を調整することにより、得られる前記繊維強化基材の厚さを制御する請求項1~4のいずれか1項に記載の繊維強化基材の製造方法。
【請求項6】
配向した強化繊維が熱可塑性樹脂に埋め込まれた帯状の繊維強化基材であって、
前記繊維強化基材の長手方向に沿って、複数の厚肉部と、前記厚肉部同士の間に位置し、前記厚肉部の厚さより厚さが小さい薄肉部とを有し、
前記長手方向における各前記厚肉部の幅が、前記繊維強化基材の短手方向における各前記厚肉部の幅よりも長く、
各前記厚肉部の表面付近に存在する前記強化繊維の配向方向と、厚さ方向の途中に存在する前記強化繊維の配向方向とが交差していることを特徴とする繊維強化基材。
【請求項7】
前記強化繊維は、各前記厚肉部の表面付近に偏在している請求項6に記載の繊維強化基材。
【請求項8】
各前記厚肉部の表面付近に存在する前記強化繊維の配向方向は、前記繊維強化基材の短手方向である請求項6または7のいずれか1項に記載の繊維強化基材。
【請求項9】
シャッター羽根を製造する方法であって、
請求項1~5のいずれか1項に記載の繊維強化基材の製造方法により得られた繊維強化基材または請求項6~のいずれか1項に記載の繊維強化基材の表面に、遮光膜を形成する工程と、
前記遮光膜が形成された前記繊維強化基材を、前記シャッター羽根の形状に加工して、前記シャッター羽根を得る工程とを有することを特徴とするシャッター羽根の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化基材の製造方法、繊維強化基材およびシャッター羽根の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の繊維強化基材は、一方向に配向した炭素繊維が、エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂に埋め込まれたプリプレグを使用して製造されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-95202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱硬化性樹脂を使用する繊維強化基材の製造方法を図9に示す。繊維強化基材90は、プリプレグ91を複数積層し、熱プレスにより、熱硬化性樹脂を硬化させることにより製造される。
エポキシ樹脂を含むプリプレグ91は、タック性を有するため、台紙92に貼着され、さらに保護フィルム93で保護された状態の帯状の積層物99として流通している(図9(a)参照)。
まず、帯状の積層物99から3つの矩形状の積層物99を切り出す(図9(b)参照)。
【0005】
次に、2つの積層物99からそれぞれ保護フィルム93を剥離し、プリプレグ91同士を貼り合わせる(図9(c)参照)。その後、一方の台紙92を剥離してプリプレグ91を露出させ、残りの積層物99から保護フィルム93が剥離されたプリプレグ91に貼り合わせる(図9(d)参照)。
次に、台紙92を除去して、3つのプリプレグ91が積層された積層体910を得、その両面側に、それぞれ離型フィルム94およびプレス板95をこの順に配置して、被プレス物96を得る(図9(e)参照)。
【0006】
この被プレス物96を複数(例えば、20個)重ね合わせ、一括して、熱プレス機97で加熱および加圧する(図9(f)参照)。これにより、熱硬化性樹脂を硬化させる。
その後、離型フィルム94およびプレス板95を除去する(図9(g)参照)。これにより、繊維強化基材90を得る(図9(h)参照)。
かかる方法では、図9(b)~(e)に示す工程を人手で行っており、生産性を高めるのに限界がある。また、3つのプリプレグ91を積層する際の位置精度が低い。
図9(f)に示す工程において、積層方向における位置の違いによって、プリプレグ91同士の間での熱履歴が大きく異なり、得られる繊維強化基材90に反りが発生し易い。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、反りが発生し難い繊維強化基材を効率よく製造可能な繊維強化基材およびその製造方法、並びに、特性に優れるシャッター羽根を製造可能なシャッター羽根の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の例示的な発明は、一方向に配向した強化繊維が熱可塑性樹脂に埋め込まれた第1のシート材と、熱可塑性樹脂を含有する帯状の第2のシート材とを準備する第1の工程と、前記第2のシート材の両面側に、前記強化繊維の配向方向を揃えて2つの前記第1のシート材を配置する第2の工程と、両面側に前記第1のシート材が配置された状態の前記第2のシート材を、少なくとも一対の加熱ローラ同士の間を通過させることにより、前記第1のシート材の前記熱可塑性樹脂および前記第2のシート材の前記熱可塑性樹脂を溶融させて、2つの前記第1のシート材および前記第2のシート材を一体化して帯状の繊維強化基材を得る第3の工程とを有することを特徴とする繊維強化基材の製造方法である。
【0009】
本願の他の例示的な発明は、配向した強化繊維が熱可塑性樹脂に埋め込まれた帯状の繊維強化基材であって、その長手方向に沿って、複数の厚肉部と、前記厚肉部同士の間に位置し、前記厚肉部の厚さより厚さが小さい薄肉部とを有することを特徴とする繊維強化基材である。
また、本願の他の例示的な発明は、シャッター羽根を製造する方法であって、本発明の繊維強化基材の製造方法により得られた繊維強化基材または本発明の繊維強化基材の表面に、遮光膜を形成する工程と、前記遮光膜が形成された前記繊維強化基材を、前記シャッター羽根の形状に加工して、前記シャッター羽根を得る工程とを有することを特徴とするシャッター羽根の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本願の例示的な発明によれば、反りが発生し難い繊維強化基材を提供することができる。また、本願の他の例示的な発明によれば、精度の高いシャッター羽根を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の繊維強化基材の製造方法の第1実施形態で使用される製造装置を示す模式図である。
図2図2は、本発明の繊維強化基材の製造方法の第2実施形態で使用される製造装置を示す模式図である。
図3図3は、本発明の繊維強化基材を長手方向に沿って切断した断面図である。
図4図4は、本発明の繊維強化基材の他の構成例を長手方向に沿って切断した断面図である。
図5図5は、薄肉部の存在割合が異なる2つの繊維強化基材を示す平面図である。
図6図6は、シャッター羽根の一例を示す斜視図である。
図7図7は、図6に示すシャッター羽根を用いて組み立てられたシャッターを示す模式的な平面図である。
図8図8は、図6に示すシャッター羽根の取付構造を示す斜視図である。
図9図9は、従来の繊維強化基材の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の繊維強化基材の製造方法の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の繊維強化基材の製造方法の第1実施形態で使用される製造装置を示す模式図である。以下、図1中の上側を「上」または「上方」と言い、下側を「下」または「下方」と言う。
【0013】
第1実施形態の繊維強化基材の製造方法は、図1に示すような製造装置100を用いて実施される。
製造装置100は、帯状の第2のシート材2が巻き付けられ、これを送り出す送出ロール201と、得られた帯状の繊維強化基材3を巻き取る巻取ロール202とを備えている。また、製造装置100は、帯状の第1のシート材1がそれぞれ巻き付けられ、これを送り出す上側送出ロール301および下側送出ロール302を備えている。
さらに、製造装置100は、第2のシート材2の搬送方向の途中に、第2のシート材2を介して配置された一対の加熱ローラ400および一対の冷却ローラ500を備えている。なお、冷却ローラ500は、第2のシート材2の搬送方向において、加熱ローラ400より下流側に配置されている。
【0014】
第1実施形態(後述する第2実施形態でも同様)において、第1のシート材1および第2のシート材2は、同様の構成を有している。したがって、第1のシート材1と第2のシート材2とを特に区別しない場合、本明細書中では、これらを総称して「シート材」と記載する。
シート材は、一方向に配向した強化繊維が、熱可塑性樹脂に埋め込まれて構成されている。
【0015】
強化繊維としては、例えば、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミックス繊維、金属繊維、セルロース繊維等が挙げられる。中でも、軽量で強度が高いことから、PAN系炭素繊維またはピッチ系炭素繊維が好ましい。
強化繊維の平均繊維径は、1~20μm程度であることが好ましく、5~10μm程度であることがより好ましい。
【0016】
熱可塑性樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、アイオノマー、液晶ポリマー、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。中でも、強化繊維に十分に浸透させ得るとともに、耐衝撃性に優れた薄いシート材が得られることから、ポリカーボネートが好ましい。
強化繊維にポリカーボネートを浸透させる際の溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられる。
【0017】
強化繊維に熱可塑性樹脂を浸透させる方法は、これに限られず、例えば、熱可塑性樹脂を溶融させ、溶融状態の熱可塑性樹脂を強化繊維に浸透させてもよい。具体的には、熱可塑性樹脂のフィルムと強化繊維とを積層して、加熱加圧することにより熱可塑性樹脂を強化繊維に含侵させる方法(film stacking法)、熱可塑性樹脂の粉末を強化繊維に付着させた後、熱可塑性樹脂を溶融させて強化繊維に含侵する方法(powder法)、熱可塑性樹脂の繊維と強化繊維とを混合した後、熱可塑性樹脂を溶融させて強化繊維に含侵させる方法(commingled yarn法)、組紐技術により強化繊維を熱可塑性樹脂の繊維で覆った後、熱可塑性樹脂を溶融させて強化繊維に含侵させる方法(micro-braiding法)等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、8000~26000程度であることが好ましく、10000~20000程度であることがより好ましい。かかる重量平均分子量の熱可塑性樹脂は、強化繊維により確実に浸透させることができる。
【0018】
シート材の平均厚さは、50μm以下であるのが好ましく、20~40μm程度であることがより好ましい。かかる厚さのシート材を用いることにより、十分に薄い繊維強化基材3を得ることができる。
かかるシート材は、熱硬化性樹脂ではなく、熱可塑性樹脂を含むため、タック性を有しない。したがって、シート材に対して、台紙、保護フィルム等を貼着する必要がない。
【0019】
本実施形態では、上側送出ロール301と下側送出ロール302とは、それぞれ第1のシート材1を、第2のシート材2の搬送方向に対して直交する方向に搬送するように構成されている。このように、第1のシート材1および第2のシート材2のいずれをも送出ロールを用いて搬送するようにすることで、繊維強化基材3の製造工程の自動化に寄与する。なお、かかる操作は、本発明で使用するシート材がタック性を有しないため実施できる操作である。
また、本実施形態では、上側送出ロール301と下側送出ロール302とは、第2のシート材2の搬送方向を中心として、互いに反対側に配置されている。すなわち、第2のシート材2の上側に搬送される第1のシート材1の搬送方向と、第2のシート材2の下側に搬送される第1のシート材1の搬送方向とが互いに異なっている。かかる構成によれば、2つの第1のシート材2が互いに干渉するのを防止することができる。また、上側送出ロール301と下側送出ロール302との配置の自由度が高まる。
【0020】
まず、上側送出ロール301および下側送出ロール302にそれぞれ巻き付けられた第1のシート材1と、送出ロール201に巻き付けられた第2のシート材2とを準備する(第1の工程)。
次に、送出ロール201から第2のシート材2を送り出して搬送するとともに、上側送出ロール301および下側送出ロール302からそれぞれ第1のシート材1を送り出して搬送する。このとき、2つの第1のシート材1は、第2のシート材2の搬送方向を中心として、互いに反対側から第2のシート材2に接近し、第2のシート材2と重なって重なり部11が生じる。そして、第1のシート材1を、重なり部11のロール側の端部で切断することにより、重なり部11を分断する。これにより、第2のシート材2の両面側に、矩形状の第1のシート材1が配置される(第2の工程)。
【0021】
なお、重なり部11の長さ(搬送方向の長さ)は、第2のシート材2の幅(搬送方向と直交する方向の長さ)とほぼ等しく設定してもよく、長くなるように設定してもよいが、後者の方が好ましい。その効果については、後に説明する。
【0022】
ここで、本実施形態では、第1のシート材1および第2のシート材2において、強化繊維の配向方向は、各シート材の長手方向(搬送方向)とほぼ一致している。したがって、第2のシート材2の両面側に矩形状の第1のシート材1が配置された状態で、2つの第1のシート材1の強化繊維は、その配向方向を、得られる繊維強化基材3の短手方向として揃っている。換言すれば、強化繊維の配向方向を0°方向に揃えた2つの矩形状の第1のシート材1同士の間に、強化繊維の配向方向を90°方向とした第2のシート材2が介在した状態となっている。
第2のシート材2の強化繊維の配向方向を第1のシート材1の強化繊維の配向方向と直交(交差)させることにより、得られる繊維強化基材3の機械的強度をより向上させることができる。また、第1のシート材1の強化繊維の配向方向を、得られる繊維強化基材3の短手方向とすることにより、繊維強化基材3の長手方向の曲げ剛性が高くなり過ぎることが防止されるため、繊維強化基材3を巻取ロール202により確実に巻き取ることができる。
なお、「0°方向」とは、得られる繊維強化基材3から作製されたシャッター羽根10の長手方向に対応する。
【0023】
次に、両面側に2つの矩形状の第1のシート材1が配置された状態の第2のシート材2を、一対の加熱ローラ400同士の間を通過させた後、一対の冷却ローラ500同士の間を通過させる。
このとき、一対の加熱ローラ400により、第1のシート材1および第2のシート材2が加熱されるとともに加圧される。そして、第1のシート材1の熱可塑性樹脂および第2のシート材2の熱可塑性樹脂を溶融させた後、一対の冷却ローラ500により冷却して、2つの第1のシート材1および第2のシート材2を一体化させる。これにより、帯状の繊維強化基材3が得られる。なお、熱可塑性樹脂の溶融(加熱)には、複数対の加熱ローラ400を用いてもよく、冷却には、複数対の冷却ローラ500を用いてもよい。
【0024】
熱可塑性樹脂の融点をX[℃]としたとき、加熱の温度(加熱ローラ400の表面温度)は、特に限定されないが、X+5~X+20℃程度であることが好ましく、X+10~X+15℃程度であることがより好ましい。かかる温度で加熱を行えば、第1のシート材1および第2のシート材2の劣化を防止しつつ、これらの一体化を促進することができる。
また、本実施形態では、一対の加熱ローラ400同士の間の距離を調整することにより、得られる繊維強化基材3の厚さを制御するように構成されている。これにより、簡単な構成で、繊維強化基材3の厚さの正確な制御が可能となる。
【0025】
一方、熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg[℃]としたとき、冷却温度(冷却ローラ500の表面温度)は、Tg-5~Tg-20℃程度であることが好ましく、Tg-10~Tg-15℃程度であることがより好ましい。かかる温度で冷却を行えば、熱可塑性樹脂の結晶化を促進して、繊維強化基材3の機械的強度をより向上させることができる。
また、一対の冷却ローラ500同士の間の距離は、好ましくは一対の加熱ローラ400同士の間の距離とほぼ等しく設定される。
なお、一対の冷却ローラ500を省略して、溶融した熱可塑性樹脂の冷却は、自然冷却によって行ってもよい。
【0026】
また、図示しないが、第2のシート材2の下側に配置される矩形状の第1のシート材1が落下しないように、搬送板または搬送ベルトが配置される。この搬送板または搬送ベルトは、第1のシート材1および第2のシート材2とともに、一対の加熱ローラ400同士の間および一対の冷却ローラ500同士の間を通過するように構成される。
繊維強化基材3の平均厚さは、50~150μm程度であることが好ましく、70~120μm程度であることがより好ましい。したがって、一対の加熱ローラ400同士の間の距離および一対の冷却ローラ500同士の間の距離は、それぞれ同程度に設定される。
その後、得られた繊維強化基材3は、巻取ロール202に巻き取られる。巻取ロール202の周速は、特に限定されないが、0.05~5m/分程度であることが好ましく、0.1~2m/分程度であることがより好ましい。この場合、歪の少ない繊維強化基材3を得易い。
【0027】
以上のような製造方法によれば、シート材に熱可塑性樹脂を使用するため、複数のシート材を一括して一体化することができる。したがって、得られる繊維強化基材3の厚さ方向において熱履歴のムラが生じるのを防止することができる。その結果、繊維強化基材3の反りの発生を低減または防止することができる。また、表面平滑性の高い繊維強化基材3を得ることもできる。
また、熱硬化性樹脂を使用する従来のシート材に比べて、シート材自体がタック性を有しないため、人手で行っていた工程を自動化することができ、繊維強化基材3の製造の効率を飛躍的に高めることができる。
【0028】
<第2実施形態>
次に、本発明の繊維強化基材の製造方法の第2実施形態について説明する。
図2は、本発明の繊維強化基材の製造方法の第2実施形態で使用される製造装置を示す模式図である。以下、図2中の上側を「上」または「上方」と言い、下側を「下」または「下方」と言う。
以下、第2実施形態の繊維強化基材の製造方法について説明するが、上記第1実施形態の繊維強化基材の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
繊維強化基材の製造方法の第2実施形態で使用される製造装置100は、上側送出ロール301が省略されている以外は、上記繊維強化基材の製造方法の第1実施形態で使用される製造装置100と同様である。
【0029】
まず、下側送出ロール302に巻き付けられた第1のシート材1と、送出ロール201に巻き付けられた第2のシート材2とを準備する(第1の工程)。
次に、送出ロール201から第2のシート材2を送り出して搬送するとともに、下側送出ロール302から第1のシート材1を送り出して搬送する。このとき、第1のシート材1は、第2のシート材2対して側方(交差する方向)から第2のシート材2に接近した後、さらに第2のシート材2の下方を通過し、第2のシート材2と重なる重なり部11と、重なり部11より搬送方向前方の余剰部12とが生じる。
【0030】
そして、第1のシート材1を、重なり部11のロール側の端部、および、重なり部11と余剰部12との境界部で切断することにより、重なり部11および余剰部12を分断する。その後、余剰部12を第2のシート材2を介して重なり部11と反対側に反転させる。これにより、第2のシート材2の両面側に、矩形状の第1のシート材1が配置される(第2の工程)。なお、重なり部11および余剰部12の長さ(搬送方向の長さ)は、それぞれ第2のシート材2の幅(搬送方向と直交する方向の長さ)とほぼ等しく設定される。
【0031】
次に、両面側に2つの矩形状の第1のシート材1が配置された状態の第2のシート材2は、一対の加熱ローラ400同士の間を通過した後、一対の冷却ローラ500同士の間を通過する。
このとき、一対の加熱ローラ400により、第1のシート材1および第2のシート材2が加熱されるとともに加圧される。そして、第1のシート材1の熱可塑性樹脂および第2のシート材2の熱可塑性樹脂を溶融させた後、一対の冷却ローラ500により冷却して、2つの第1のシート材1および第2のシート材2を一体化させる。これにより、帯状の繊維強化基材3が得られる。
かかる構成によれば、繊維強化基材3の製造工程の自動化に寄与する。また、第2実施形態で使用される製造装置100は、上側送出ロール301が省略されているため、装置全体としての小型化を図ることができる。
また、第2のシート材2の上側および下側に配置される第1のシート材1が同一のシート材を分断して得られたものなので、強化繊維の目付け量のばらつき方がほぼ同じとなる。そのため、より反りが発生し難い繊維強化基材3を得ることができる。
【0032】
以上のようにして、図3に示す繊維強化基材3が得られる。図3は、本発明の繊維強化基材を長手方向に沿って切断した断面図である。
図3に示す繊維強化基材3は、帯状をなし、配向した強化繊維Fが熱可塑性樹脂30に埋め込まれて構成されている。そして、繊維強化基材3は、その長手方向に沿って、複数の厚肉部31と、厚肉部31同士の間に位置し、厚肉部31の厚さより厚さが小さい薄肉部32とを有している。
かかる構成によれば、薄肉部32に沿って繊維強化基材3を切断すれば、後の工程において、取り扱い易い目的とするサイズの繊維強化基材3を得ることができる。
【0033】
また、各厚肉部31の表面付近に存在する強化繊維Fの配向方向と、厚さ方向の途中に存在する強化繊維Fの配向方向とが直交している。これにより、繊維強化基材3の機械的強度をより高めることができる。
特に、各厚肉部31の表面付近に存在する強化繊維Fは、その配向方向が繊維強化基材3の短手方向となっている。これにより、繊維強化基材3の長手方向の曲げ剛性が高くなり過ぎることが防止されるため、繊維強化基材3を巻取ロール202により確実に巻き取ることができるとともに、この状態で安定して保管することもできる。
【0034】
なお、繊維強化基材3から加工されるシャッター羽根の用途によっては、第2のシート材2には、強化繊維Fが含まれていなくてもよい。すなわち、第2のシート材2は、単なる樹脂シートで構成されていてもよい。
この場合、図4に示すような繊維強化基材3が得られる。図4は、本発明の繊維強化基材の他の構成例を長手方向に沿って切断した断面図である。
図4に示す繊維強化基材3では、強化繊維Fは、各厚肉部31の表面付近に偏在している。かかる構成によれば、シャッター羽根(最終製品)の用途に応じて、繊維強化基材3の反りの程度を調整することができる。
【0035】
以上のように製造された繊維強化基材3の表面に遮光膜を形成した後、遮光膜が形成された繊維強化基材3を、シャッター羽根の形状に加工することにより、シャッター羽根が得られる。すなわち、本発明のシャッター羽根の製造方法は、本発明の繊維強化基材の製造方法により得られた繊維強化基材3または本発明の繊維強化基材3の表面に、遮光膜を形成する工程と、この遮光膜が形成された繊維強化基材3を、シャッター羽根10の形状に加工して、シャッター羽根10を得る工程とを有することを特徴とする。
【0036】
かかるシャッター羽根10の製造方法によれば、精度の高いシャッター羽根10を得ることができる。
遮光膜は、例えば、カーボンブラック、グラファイト等を含有するコーティング材を用いて形成することができる。
加工の方法としては、例えば、打ち抜き加工、レーザー加工、ウォータージェット加工、カッティングプロッタによる加工等が挙げられる。
【0037】
なお、加工に際しては、例えば、繊維強化基材3を一定の速度で金型へ搬送しながら、シャッター羽根10の形状に打ち抜き(プレス)加工することが行われる。
図5は、薄肉部の存在割合が異なる2つの繊維強化基材を示す平面図である。図5(a)に示す繊維強化基材3の方が、図5(b)に示す繊維強化基材3より、薄肉部32の存在割合が大きい。
このとき、薄肉部32の存在割合が小さい方(図5(b)参照)が、金型へ搬送した際にシャッター羽根10に加工が困難な薄肉部32(製品としての使用が不可な部分)が頻繁に現れないため、シャッター羽根10の加工効率が高まる。
【0038】
したがって、繊維強化基材3の製造に際して、上述したように第2のシート材2の両面側に配置される第1のシート材1の長さ(搬送方向の長さ)を、第2のシート材2の幅(搬送方向と直交する方向の長さ)より長くなるように設定すれば、得られる繊維強化基材3において、薄肉部32が現れる頻度をより少なくすることができる。よって、図5(b)に示す繊維強化基材3は、図5(a)に示す繊維強化基材3よりも、シャッター羽根10の連続加工性に優れる。
【0039】
図6は、シャッター羽根の一例を示す斜視図である。図7は、図6に示すシャッター羽根を用いて組み立てられたシャッターを示す模式的な平面図である。図8は、図6に示すシャッター羽根の取付構造を示す斜視図である。
図6に示すシャッター羽根10は、細長い板状をなし、その一端部には、固定用の一対の連結孔20が形成されている。
【0040】
図7に示すシャッターが有するシャッター基板11の中央部には、長方形状のシャッター開口12(一点鎖線で示す)が設けられている。
休止状態において、4枚のシャッター羽根10が互いに部分的に重なり合って配置された先羽根群が、シャッター開口12を遮蔽している。なお、図示しないが先羽根群の下方には後羽根群が重なって配置されている。
各シャッター羽根10の先端部は、羽根押え14によって不要な動きが制限されている。
【0041】
また、シャッター基板11の左端部には、一組の主アーム15および従アーム16が互いに平行関係を保って回転自在に支持されている。
先羽根群を構成する各シャッター羽根10は、その先端部において一組の主アーム15および従アーム16に接続している。後羽根群を構成する各シャッター羽根10も、同様に図示しない一組のアームに接続している。
主アーム15には、長孔17が設けられており、主アーム15の回転に伴う長孔17の移動軌跡に沿って、長溝18がシャッター基板11に設けられている。なお、図示しないが、長孔17には、長溝18を介してシャッター基板11を貫通する駆動ピンが接続している。
【0042】
図示しないシャッターレリースボタンを押すと、駆動ピンは、シャッター基板11に設けられた長溝18に沿って与えられた付勢力により上方に移動する。これに伴って長孔17において駆動ピンと接続している主アーム15およびこれと連動する従アーム16は、上方に回転する。この回転により先羽根群を構成する各シャッター羽根10は、上方に縦走り走行しシャッター開口12を開口する。
次いで、図示しない後羽根群を構成する各シャッター羽根10が縦走り走行し、シャッター開口12を遮蔽し露光が終了する。
【0043】
ここで、各シャッター羽根10の一組の主アーム15および従アーム16への連結は、図8に示すように、主アーム15および従アーム16に形成された貫通孔19を介して、対応する連結孔20に連結ピン13を挿入することにより行われる。
ここで、各シャッター羽根10は、熱可塑性樹脂を含有して構成されているため、連結ピン13のピン部に周方向に沿った溝を形成しておけば、連結孔20付近を溶融変形させることにより、連結ピン13により確実に固定(連結)することができる。
【0044】
以上、本発明の繊維強化基材およびその製造方法、並びに、シャッター羽根の製造方法について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、第2のシート材2の強化繊維の配向方向は、90°に限定されず、45~135°程度としてもよい。すなわち、上記実施形態では、第2の工程において、第2のシート材2の強化繊維の配向方向を、第1のシート材1の強化繊維の配向方向と交差させることが好ましい。
また、第1のシート材1は、第2のシート材2に対して、任意の斜め方向から接近させるようにしてもよい。かかる斜め方向としては、第2のシート材2の搬送方向に対して45~135°程度とすることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 第1のシート材
2 第2のシート材
3 繊維強化基材
F 強化繊維
30 熱可塑性樹脂
31 厚肉部
32 薄肉部
10 シャッター羽根
11 シャッター基板
12 シャッター開口
13 連結ピン
14 羽根押え
15 主アーム
16 従アーム
17 長孔
18 長溝
19 貫通孔
20 連結孔
100 製造装置
201 送出ロール
202 巻取ロール
301 上側送出ロール
302 下側送出ロール
400 加熱ローラ
500 冷却ローラ
90 繊維強化基材
91 プリプレグ
910 積層体
92 台紙
93 保護フィルム
94 離型フィルム
95 プレス板
96 被プレス物
97 熱プレス機

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9