(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】車両用表示装置の搭載構造
(51)【国際特許分類】
B60K 35/215 20240101AFI20240903BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20240903BHJP
【FI】
B60K35/215
B60K35/23
(21)【出願番号】P 2020048442
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-02-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎木 佑真
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-103589(JP,A)
【文献】特開2016-597(JP,A)
【文献】特開2003-237411(JP,A)
【文献】特開平6-219221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-35/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席の車両前方側に配置され、インストルメントパネルの内部に設けられた第1反射面に第1光源から発する光を反射させ、前記第1反射面よりも車両前方側の位置に第1虚像を結像するメータ表示装置と、
前記メータ表示装置の車両前方側に配置され、前記インストルメントパネルの車両上方側に設けられた第2反射面に第2光源から発する光を反射させ、前記第2反射面よりも車両前方側、且つ、前記第1虚像に対して車両前後方向に異なる位置に第2虚像を結像するヘッドアップディスプレイ装置と、を備え、
前記ヘッドアップディスプレイ装置の車両前方側には、前記インストルメントパネルの車両前後方向の前端部に設けられたデフロスタ用開口部と前記インストルメントパネルの内部に設けられた空調装置とを連結するデフロスタ装置が配置され、
前記インストルメントパネルには、前記第2光源から発する光が通過するHUD用開口部の車両前方側に前記デフロスタ用開口部が設けられて
おり、
前記第1虚像は、車両幅方向から見て、前記第2光源を内部に有する前記ヘッドアップディスプレイ装置のケース体と重なる位置に結像される、
車両用表示装置の搭載構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置の搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、運転席の車両前方側にインストルメントパネルが配置されており、インストルメントパネルの内部には、車両の各種情報を表示するためのメータ表示装置やヘッドアップディスプレイ装置等の車両用表示装置が設けられている。これらの車両用表示装置の表示は運転操作と同時に確認されるため、ドライバの認知負担をできる限り軽減させることが望ましい。
【0003】
ところで、ドライバは、通常時、進行方向前方側の遠方に焦点を合わせている。このため、各装置の表示がドライバから近距離の位置で表示されると、進行方向から視線を動かして各装置の表示を確認するのに要する焦点の調整時間が長くなり、ドライバの認知負担が大きくなる。
【0004】
下記特許文献1に記載のメータ表示装置及びヘッドアップディスプレイ装置では、各装置の光源から発せられた光が運転席の前方側に配置されたミラー又はウインドシールドガラスで反射されてドライバに表示される構成となっている。ドライバは、ミラー又はウインドシールドガラスの車両前方側に結像される虚像を各装置の表示として視認可能となっている。これにより、各装置の表示がドライバに対して車両前方側の遠方に設けられるため、ドライバが、進行方向から視線を動かして各装置の表示を確認するのに要する焦点の調整時間を短くすることができ、ドライバの認知負担が軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、メータ表示装置とヘッドアップディスプレイ装置の各表示の位置(虚像の位置)が、車両前後方向に一致している。このため、例えば、ドライバがヘッドアップディスプレイ装置の表示に焦点を合わせようとすると、メータ表示装置の表示にも焦点が合ってしまう。これにより、必要以上に情報量が多くなり、却って、ドライバの認知負担を増やすことになりかねない。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、ドライバの認知負担を軽減させることができる車両用表示装置の搭載構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明に係る車両用表示装置の搭載構造は、運転席の車両前方側に配置され、インストルメントパネルの内部に設けられた第1反射面に第1光源から発する光を反射させ、前記第1反射面よりも車両前方側の位置に第1虚像を結像するメータ表示装置と、前記メータ表示装置の車両前方側に配置され、前記インストルメントパネルの車両上方側に設けられた第2反射面に第2光源から発する光を反射させ、前記第2反射面よりも車両前方側、且つ、前記第1虚像に対して車両前後方向に異なる位置に第2虚像を結像するヘッドアップディスプレイ装置と、を備え、前記ヘッドアップディスプレイ装置の車両前方側には、前記インストルメントパネルの車両前後方向の前端部に設けられたデフロスタ用開口部と前記インストルメントパネルの内部に設けられた空調装置とを連結するデフロスタ装置が配置され、前記インストルメントパネルには、前記第2光源から発する光が通過するHUD用開口部の車両前方側に前記デフロスタ用開口部が設けられており、前記第1虚像は、車両幅方向から見て、前記第2光源を内部に有する前記ヘッドアップディスプレイ装置のケース体と重なる位置に結像される。
【0009】
請求項1に記載の本発明に係る車両用表示装置の搭載構造では、運転席の車両前方側にメータ表示装置とヘッドアップディスプレイ装置が配置されている。メータ表示装置では、インストルメントパネルの内部に設けられた第1反射面よりも車両前方側に第1虚像が結像される。また、ヘッドアップディスプレイ装置では、インストルメントパネルの車両上方側に配置された第2反射面よりも車両前方側に第2虚像が結像される。これにより、第1虚像及び第2虚像は、運転席に着座したドライバに対して車両前方側の遠方に表示されるため、ドライバが、車両前方側の風景から視線を動かして各装置の表示を確認するのに要する焦点の調整時間を短くすることができるため、ドライバの認知負担が軽減される。
【0010】
更に、第1虚像と第2虚像の表示位置が、車両前後方向に異なる位置とされているため、メータ表示装置及びヘッドアップディスプレイ装置の各虚像の焦点位置が異なる。つまり、一方の虚像に焦点を合わせると、他方の虚像の焦点はぼやける。これにより、必要な情報が認知しやすくなり、メータ表示装置及びヘッドアップディスプレイ装置の虚像が同時に視界に入ることによる煩わしさが低減されて、ドライバの認知負担が軽減される。
また、請求項1に記載の本発明に係る車両用表示装置の搭載構造では、前記第1虚像は、車両幅方向から見て、前記第2光源を内部に有する前記ヘッドアップディスプレイ装置のケース体と重なる位置に結像されるように構成される。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、請求項1に係る車両用表示装置の搭載構造は、ドライバの認知負担を軽減させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る車両用表示装置の搭載構造が適用された車両の運転席を一部断面で示す側面図である。
【
図2】本実施形態に係るメータ表示装置及びヘッドアップディスプレイ装置によって表示される第1虚像及び第2虚像の位置を概略的に示す拡大側面図である。
【
図3】変形例1に係る車両用表示装置の搭載構造を示す
図2に対応する拡大側面図である。
【
図4】変形例2に係る車両用表示装置の搭載構造を示すが適用された
図2に対応する拡大側面図である。
【
図5】比較例としての車両用表示装置の搭載構造を示す
図1に対応する車両の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1~
図2に基づいて本実施形態に係る車両用表示装置の搭載構造について説明する。なお、各図に適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示している。また、以下の説明で特記なく前後、上下、左右の方向を用いる場合は、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下、進行方向を向いた場合の左右を示すものとする。
【0014】
(全体構成)
図1及び
図2に示されるように、車両10の車室12の前方には、ウインドシールドガラス14が配置されている。ウインドシールドガラス14は、車室12のルーフ(天井)16の前端部から車両前方斜め下方へ向けて延びている。このウインドシールドガラス14の前端部は、図示しないカウルに支持されており、ウインドシールドガラス14の左右両端部は、図示しない左右のフロントピラーに支持されている。ウインドシールドガラス14の後端部は、ルーフ16の前端部に設けられたフロントヘッダ16Fに支持されている。
【0015】
また、ウインドシールドガラス14の車両下方側には、インストルメントパネル20が配置されている。インストルメントパネル20は、運転席18の車両前方側に配置され、車室12における前部の意匠面を構成している。インストルメントパネル20は、樹脂材によってテーブル状に形成されたパネル構造体とされ、車両幅方向の両側に設けられたフロントピラー(不図示)間に掛け渡された略円柱状のインパネリインフォースメント22に取り付けられている。このインストルメントパネル20の内部には、各種車両情報を表示するメータ表示装置40及びヘッドアップディスプレイ装置50等の車載機器が配置されている。
【0016】
(インストルメントパネル)
インストルメントパネル20は、ウインドシールドガラス14と対向して配置されてインパネリインフォースメント22を車両上方側から覆うアッパ部20Aと、インパネリインフォースメント22を車両後方側から覆うロア部20Bと、を備えている。アッパ部20Aは、インストルメントパネル20の車両前後方向の前部かつ上面を構成しており、車両幅方向及び車両前後方向に延在する板状部材とされている。
【0017】
インストルメントパネル20のアッパ部20Aは、インストルメントパネル20の車両前後方向の前部かつ車両上下方向の上部を構成しており、車両幅方向及び車両前後方向に延在する板状部材とされている。このアッパ部20Aには、車両前後方向の前端部にデフロスタ用開口部24が設けられている。このデフロスタ用開口部24は空調空気の吹出し口とされており、デフロスタ用開口部24の車両下方側には、空調装置26の吹出し口とデフロスタ用開口部24とを連結するデフロスタ装置28が配置されている。また、アッパ部20Aには、デフロスタ用開口部24の車両後方側にHUD用開口部30が設けられている。このHUD用開口部30の車両下方側には、ヘッドアップディスプレイ装置(以下、「HUD装置」と称する。)50が配置されており、HUD用開口部30は、HUD装置50のHUD光源54から発せられた光が通過する投光口とされている。
【0018】
インストルメントパネル20のロア部20Bは、上述したアッパ部20Aの車両後方側の端部から車両下方側に延在する縦壁とされており、インストルメントパネル20の車両前後方向の後部を構成している。ロア部20Bの上端部には、運転席18に面して配置されたメータ用開口部32が設けられている。このメータ用開口部32の車両前方側には、メータ表示装置40が配置されており、運転席18に着座したドライバDは、メータ用開口部32を通してメータ表示装置の表示を視認することができるように構成されている。また、ロア部20Bには、メータ用開口部32の車両下方側にコラム用開口部34が設けられている。コラム用開口部34には、コラムブラケット36を介してインパネリインフォースメント22に支持されたステアリングコラム38が貫通している。
【0019】
(メータ表示装置)
メータ表示装置40は、一例として、車速計や回転計、燃料残量計、水温計等の車両に搭載された各種メータ類の計測値に係る車両情報を、ドライバDに向けて表示する機能を有している。メータ表示装置40は、各種メータ類と電気的に接続された第1光源としてのメータ光源42と、メータ光源42から発せられる光をドライバDが視認できる位置に反射する反射パネル部44と、を備えている。メータ光源42及び反射パネル部44は、車両の外部からの光の影響を受け難いように、インストルメントパネル20の内部に設けられている。
【0020】
メータ光源42は、一例として、液晶パネルや、有機ELパネルによって構成されたディスプレイで構成されており、メータ光源42から発せられた光は、メータ類の計測値を表示する画像42Aとされている。メータ光源42は、画像42Aが出力される表示部を略車両上方側に向けた姿勢でメータ用開口部32の下端部の近傍に配置されている。
【0021】
反射パネル部44は、メータ光源42の車両上方側に離間して配置されている。この反射パネル部44は、メータ光源42からの光をドライバDが視認できる位置に反射するミラー46と、ミラー46を支持する本体パネル部48を有している。本体パネル部48は、側面視で略L字状に折り曲げられた板状部材とされており、ミラー46が固定された縦壁部48Aと、縦壁部48Aの車両上方側の端部から車両後方側に延在する上壁部48Bを備えている。上壁部48Bは、アッパ部20Aの車両後方側の端部に内側から固定されている。
【0022】
図2に示されるように、メータ光源42の画像42Aは、第1反射面としてのミラー46の反射面R1で反射されることによりドライバDが視認可能とされている。ここで、
図2には、ドライバDの目の位置がアイポイントEPで図示されている。なお、アイポイントEPとは、ドライバDの両眼の中間点であり、ドライバDの両眼を結ぶ線の中央点である。また、本実施形態におけるアイポイントEPの位置は、例えば、AM50ダミー(米国人成人男性の50パーセンタイル)と同程度の体格を有するドライバDが運転席18に運転姿勢で着座した状態におけるアイポイントEPの位置に基づいて設定される。また、
図2には、画像42Aの光の光路L1が模式的に図示されている。
【0023】
ドライバDは、反射面R1で反射された画像42Aを反射面R1に映る虚像V1として視認することができる。この虚像V1は、ミラー46の反射面R1よりも車両前方側の位置で結像されているため、ドライバDは、メータ光源42から出力された画像42Aを、実際の反射面R1よりも車両前方側の位置で視認する構成となっている。
【0024】
(ヘッドアップディスプレイ装置)
図1に示されるように、HUD装置50は、インストルメントパネル20の内部において、メータ表示装置40の車両前方側に配置されている。HUD装置50は、一例として、走行経路のナビゲーションや、道路上の障害物、及び道路情報等の車両の走行に関する車両情報を車両の前景に重ねた態様でドライバDに向けて表示する機能を有している。HUD装置50は、一例として、車両上方側に開口したケース体52と、ケース体52の内部に設置され、図示しない車載ECU(Electronic Control Unit)と電気的に接続されて各種車両情報に係る画像を投光するHUD光源54と、を有している。なお、HUD光源54が本発明における「第2光源」に相当する。
【0025】
図2には、HUD光源54から投光された光の光路L2が模式的に図示されている。この図に示されるように、HUD光源54から投稿された光は、インストルメントパネル20のHUD用開口部30を通過してウインドシールドガラス14に投光される。このウインドシールドガラス14の車室12側の面は、HUD光源54から発せられた光をドライバDが視認できる位置に反射する反射面R2を構成している。ドライバDは、反射面R2で反射された光(画像)を反射面R2に映る虚像V2として視認することができる。つまり、虚像V2は、ドライバDがウインドシールドガラス14を通して視認する車両前方の実空間の風景に重ねられた態様で表示される。この虚像V2は、反射面R2よりも車両前方側の位置で結像されているため、ドライバDは、HUD光源54から出力された画像を、実際の反射面R2よりも車両前方側の位置で視認する構成となっている。なお、ウインドシールドガラス14の反射面R2が本発明における「第2反射面」とされている。
【0026】
ここで、虚像V2は、メータ表示装置40によって表示される虚像V1よりも車両前後方向の前方側に位置している。このように、虚像V1と虚像V2は、ドライバDから見て車両前後方向に異なる位置に表示されるため、各虚像V1、V2の焦点位置が異なる。このため、ドライバDが一方の虚像に焦点を合わせると、他方の虚像は焦点がぼやけた状態で視認されるため、一方の虚像の認知を迅速に行うことができる構成となっている。
【0027】
また、HUD装置50によって表示される虚像V2は、ドライバDがウインドシールドガラス14を通して視認する車両前方の実空間の風景に重ねられた態様で表示されているため、ドライバDは、視線をほとんど移動させることなく虚像V2を確認することができる。この点において、ドライバDが虚像V2を視認する際の認知負担が、虚像V1を認知する場合の認知負担よりも軽くなるように構成されている。
【0028】
更に、虚像V2は、虚像V1よりも車両前後方向の前方側に位置していることから、虚像V2は、虚像V1よりもドライバDから車両前方側に遠い位置に表示されることとなる。換言すると、虚像V2の焦点位置は、虚像V1の焦点位置よりも、ドライバDが車両の前景に焦点を合わせる場合の焦点位置に近づけられている。このため、ドライバDは、車両の前景から視線を動かして虚像V2を視認する際、目の焦点を調整するために要する焦点調整時間は、ドライバDが車両の前景から視線を動かして虚像V1を視認する際に要する焦点調整時間よりも短い。この点においても、ドライバDが虚像V2を視認する際の認知負担が、虚像V1を認知する場合の認知負担よりも軽くなるように構成されている。
【0029】
(作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0030】
本実施形態では、運転席18の車両前方側にメータ表示装置40とHUD装置50が配置されている。メータ表示装置40では、インストルメントパネル20の内部に設けられた反射面R1よりも車両前方側に虚像V1が結像される。また、HUD装置50では、ウインドシールドガラス14の反射面R2よりも車両前方側に虚像V2が結像される。これにより、虚像V1、V2は、運転席18に着座したドライバDに対して車両前方側の遠方に表示されるため、ドライバDが、車両前方側の風景から視線を動かして各装置の表示を確認するのに要する焦点の調整時間を短くすることができる。その結果、ドライバDの認知負担が軽減される。
【0031】
更に、虚像V1と虚像V2の表示位置が、車両前後方向に異なる位置とされているため、メータ表示装置40及びHUD装置50の各表示の焦点位置が異なる。つまり、一方の虚像に焦点を合わせると、他方の虚像の焦点はぼやける。これにより、必要な情報が認知しやすくなり、メータ表示装置40及びHUD装置50の虚像V1、V2が同時に視界に入ることによる煩わしさが低減されて、ドライバDの認知負担が軽減される。
【0032】
また、HUD装置50によって表示される虚像V2は、メータ表示装置40の虚像V1よりも車両前方側に表示されるため、ドライバDが虚像V2を視認する際の認知負担が、虚像V1を認知する場合の認知負担よりも軽くなるように構成されている。このため、例えば、ドライバDが走行中に確認する情報として優先度の高いものを虚像V2で優先的に表示する構成とすれば、ドライバDに、重要度の高い情報から効率的に認知させることができるため、走行中の安全性を高めることができる。
【0033】
また、本実施形態では、メータ表示装置40の車両前方側にHUD装置50が配置されているため、メータ表示装置40の表示を虚像V1とすることにより、ドライバDの認知負担の軽減とインストルメントパネル20内のスペースの効率化を両立している。この点について
図5の比較例に基づいて説明する。
【0034】
図5の比較例では、運転席100の車両前方側に配置されたインストルメントパネル102の内部には液晶ディスプレイ等のディスプレイで構成されたメータ表示装置104が配置されている。また、メータ表示装置104の車両前方側には、光源106Aを有するHUD装置106は設けられている。この比較例では、メータ表示装置104に表示された実像の画像104Aを運転席100に着座したドライバDが視認する構成とされている。
【0035】
上述した通り、ドライバDの認知負担を軽減する観点では、メータ表示装置104の画像104AをドライバDに対して車両前方側の遠方に表示し、メータ表示装置104の画像104Aに対するドライバDの視距離を適切に確保することが望ましい。
図5に示すように、画像104Aに対するドライバDの視距離を第1実施形態における虚像V1に対するドライバDの視距離と同様にするには、メータ表示装置104を標準位置S1から、車両前方側の遠方位置S2に移動させる必要がある。この場合、第1実施形態のHUD装置50と同一サイズのHUD装置106では、メータ表示装置104に干渉することから、HUD装置を小型化させる必要が生じる。また、インストルメントパネル102内におけるステアリングコラム108の上方側のスペースがデッドスペースとなる。更に、HUD装置106をメータ表示装置104と干渉しない大きさまで小型化すると、光源106Aから投光された画像を表示するウインドシールドガラス110の画像表示領域が、上記実施形態と同様の大きさの領域A1から、
図5に示す領域A2まで縮小されてしまう。
【0036】
これに対し、本実施形態では、メータ表示装置40の表示を虚像V1にすることにより、メータ表示装置40のメータ光源42及び反射パネル部44といったハードウエアを車両前方側に移動させることなくメータ表示装置40の表示(虚像V1)に対するドライバDの視距離を確保することができる。このため、インストルメントパネル20内にメータ表示装置40とHUD装置50を配置するためのスペースを確保することができる。
【0037】
また、本実施形態では、
図5に示す比較例と比べて、メータ表示装置40とHUD装置50を配置するためのスペースを車両前後方向に省スペース化させることができるため、HUD装置50の車両前方側にデフロスタ装置28を配置させることができる。これにより、インストルメントパネル20のアッパ部20Aに、デフロスタ用開口部24とHUD用開口部30とを車両前後方向に並べて配置可能とされる。その結果、デフロスタ用開口部とHUD用開口部が車両幅方向に並んで配置される構成と比較して、デフロスタ用開口部からウインドシールドガラス14に向けて送風する車両幅方向の送風幅を大きくすることができる。
【0038】
(変形例1)
また、インストルメントパネル20内のスペースの効率化を図るという観点から、
図3に示す変形例1に係るメータ表示装置60を第1実施形態のメータ表示装置40に替えて適用してもよい。なお、変形例1において、上記第1実施形態と同様の構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。この変形例1では、第1光源としてのメータ光源62が、ミラー46と一体的に形成される点に特徴がある。その他の構成は、第1実施形態と同一である。
【0039】
変形例1に係るメータ光源62は、反射パネル部44を構成する本体パネル部48の上壁部48Bに設けられることにより、本体パネル部48の縦壁部48Aに固定されたミラー46と一体的に形成されている。このメータ光源62は、第1実施形態のメータ光源42と同様に、液晶パネルや、有機ELパネルによって構成されたディスプレイによって構成することができる。若しくは、LED等によりメータ光源62を構成することもできる。
【0040】
図3に光路L3で示されるように、ミラー46の反射面R1は、メータ光源62からの光をドライバDが視認できる位置に反射する。これにより、ドライバDはミラー46の反射面R1よりも車両前方側の位置で結像された虚像V3を視認することができる。
【0041】
上記変形例1の構成によれば、メータ表示装置60のメータ光源62とミラー46が一体的に構成されているため、メータ光源62とミラー46を別体で構成する場合と比較して、メータ表示装置60の配置スペースが省スペース化される。これにより、インストルメントパネル20内のスペースの効率化を図ることができる。また、メータ表示装置60の部品点数を減らすことができる。
【0042】
(変形例2)
また、変形例1と同様にインストルメントパネル20内のスペースの効率化を図るという観点から、
図4に示す変形例2に係るメータ表示装置70を第1実施形態のメータ表示装置40に替えて適用してもよい。なお、変形例2において、上記第1実施形態と同様の構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。この変形例2では、メータ表示装置70は、第1光源としてのメータ光源72と、反射面R1を構成するミラー46を備えた反射パネル部74を備えており、メータ光源72が、ルーフ16に配置されている点に特徴がある。その他の構成は、第1実施形態と同一である。
【0043】
メータ光源72は、一例として、LED等によって構成され、ルーフ16の前端部に取り付けられている。メータ光源72は、車室12の天井からミラー46の反射面R1に向けて画像を投光する。
図4に光路L4で示されるように、ミラー46の反射面R1は、メータ光源72からの光をドライバDが視認できる位置に反射する。これにより、ドライバDは、ミラー46の反射面R1よりも車両前方側の位置で結像された虚像V4を視認することができる。
【0044】
上記変形例2の構成によれば、メータ表示装置70のメータ光源72をインストルメントパネル20の外部に配置することができるため、メータ光源がインストルメントパネル20の内部に配置される構成と比較して、インストルメントパネル20の内部におけるメータ表示装置70の配置スペースが省スペース化される。これにより、インストルメントパネル20内のスペースの効率化を図ることができる。また、メータ光源72をルーフ16に設けることにより、メータ光源72とミラー46間の距離を充分に確保することができる。このため、メータ表示装置70によって表示される虚像V4に対するドライバDの視距離を大きくすることができる。
[補足説明]
【0045】
上記実施形態では、HUD装置50から発せられる光がウインドシールドガラス14の反射面R1で反射される構成となっている。しかし、本発明はこれに限らない。ウインドシールドガラス14の車両後方側に配置されたディスプレイでもよい。この場合、ディスプレイは、運転席18に面して配置された反射鏡を有するディスプレイでもよく、全体が透明なパネル部材で構成されたディスプレイでもよい。この場合であっても、本発明の課題を解決することができる。また、HUD装置50から発せられる光(画像)をウインドシールドガラス14と別体のディスプレイに表示させる構成のため、反射面の傾き等を任意に設計することができるため、より鮮明な虚像を表示することができる。
【符号の説明】
【0046】
18 運転席
20 インストルメントパネル
40 メータ表示装置
42 メータ光源(第1光源)
50 ヘッドアップディスプレイ装置
52 HUD光源(第2光源)
R1 反射面(第1反射面)
R2 反射面(第2反射面)
V1 虚像(第1虚像)
V2 虚像(第2虚像)