(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】ミスト発生装置及びそれを備える水回り機器
(51)【国際特許分類】
A61H 33/06 20060101AFI20240903BHJP
A47K 3/00 20060101ALI20240903BHJP
A47K 1/00 20060101ALI20240903BHJP
E03C 1/044 20060101ALI20240903BHJP
E03C 1/20 20060101ALI20240903BHJP
E03C 1/18 20060101ALI20240903BHJP
A47K 4/00 20060101ALI20240903BHJP
B05B 17/06 20060101ALI20240903BHJP
F24F 6/00 20060101ALI20240903BHJP
A47L 15/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
A61H33/06 Q
A61H33/06 N
A47K3/00 Z
A47K1/00 J
E03C1/044
E03C1/20 Z
E03C1/18
A47K4/00
B05B17/06
F24F6/00 Z
A47L15/00 D
(21)【出願番号】P 2020062113
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 元太
(72)【発明者】
【氏名】戸崎 正道
(72)【発明者】
【氏名】碇 洋平
(72)【発明者】
【氏名】八板 遼平
(72)【発明者】
【氏名】奥野 祐一
(72)【発明者】
【氏名】三尾 俊平
(72)【発明者】
【氏名】牧 愛子
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-068586(JP,A)
【文献】特開2012-200533(JP,A)
【文献】特開2016-067831(JP,A)
【文献】特開2008-018062(JP,A)
【文献】特開2005-334223(JP,A)
【文献】特開2013-176428(JP,A)
【文献】特開2019-173540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00-37/00
F24F 6/00-6/18
A47K 1/00-4/00
E03C 1/00-1/33
B05B 17/00-17/08
A47L 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水回り機器に用いられるミスト発生装置であって、
加熱され水温を制御された水からミストを生成する、又は、水から生成されたミストを加熱することで温度制御されたミストを生成するミスト生成部と、
上記水回り機器が使用される室内に向けて上方が開放された滞留空間を形成する滞留部内に、上記ミスト生成部により生成されたミストを供給するミスト供給部と、を備え、
上記ミスト生成部及び上記ミスト供給部は、上記ミスト供給部から上記滞留空間に供給されたミストの温度が、ミストの供給開始前の上記水回り機器が使用される室内の温度と同じ温度、又は室内の温度よりも高い温度になるように構成され、
上記滞留空間は、上記ミスト供給部よりも下方に位置する空間を含み、
上記ミスト供給部から供給されたミストは、上記ミスト供給部から供給されたミストの自重により落下しながら上記滞留空間内に滞留されるように構成され
、
上記ミスト生成部は、60℃以上に加熱された水を温度制御すると共に温度制御された水からミストを生成する、又は、水から生成されたミストを60℃以上に加熱すると共に加熱されたミストを温度制御する、ミスト発生装置。
【請求項2】
上記滞留空間は、浴槽本体の内側の空間、浴室の洗い場床上の空間、シャワールームの下部の空間、洗面室の洗面本体の内側の空間、又はキッチンシンク本体の内側の空間である、請求項1に記載のミスト発生装置。
【請求項3】
上記ミスト供給部から供給されたミストは、上記滞留空間の下部におけるミストの密度が、上記滞留空間の上部におけるミストの密度よりも高くなるように滞留される、請求項1又は2に記載のミスト発生装置。
【請求項4】
上記ミスト生成部及び上記ミスト供給部は、上記温度差によって生じる上昇気流のミストを上昇させようとする力が上記ミスト供給部から供給されたミストの粒径に応じたミストの重さを超えないような、上記温度差を生じるように構成される、請求項1乃至3の何れか1項に記載のミスト発生装置。
【請求項5】
上記ミスト生成部及び上記ミスト供給部は、上記温度差が、100℃以下且つ上記ミスト供給部から供給されたミストの温度が100℃以下とされるように構成される、請求項1乃至4の何れか1項に記載のミスト発生装置。
【請求項6】
上記ミスト生成部及び上記ミスト供給部は、上記温度差が、60℃以下且つ上記ミスト供給部から供給されたミストの温度が100℃以下とされるように構成される、請求項1乃至5の何れか1項に記載のミスト発生装置。
【請求項7】
上記ミスト生成部及び上記ミスト供給部は、上記温度差が、45℃以下且つ上記ミスト供給部から供給されたミストの温度が100℃以下とされるように構成される、請求項1乃至6何れか1項に記載のミスト発生装置。
【請求項8】
上記ミスト供給部から供給されるミストのザウター平均粒径が、3.1μm以上であると共に、上記ミスト供給部から供給されるミストのザウター平均粒径が、40μm以下である、請求項1乃至
7何れか1項に記載のミスト発生装置。
【請求項9】
上記ミスト供給部から供給されるミストのザウター平均粒径が、3.6μm以上であると共に、上記ミスト供給部から供給されるミストのザウター平均粒径が、20μm以下とされる、請求項1乃至
8何れか1項に記載のミスト発生装置。
【請求項10】
上記ミスト供給部から供給されるミストのザウター平均粒径が、4.1μm以上であり且つ10μm以下とされる、請求項1乃至
9何れか1項に記載のミスト発生装置。
【請求項11】
水回り機器であって、
請求項1乃至
10何れか1項に記載のミスト発生装置と、
上記ミスト発生装置の上記ミスト供給部から供給されるミストを受け入れる上記滞留空間を形成する上記滞留部と、
を備える水回り機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミスト発生装置に係り、特に、水回り機器に用いられるミスト発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、汚れを除去するためにミストを発生させるキッチンシンクが知られている。このようなキッチンシンクにおいては、シンク槽や食器等を洗浄するため、シンク槽の上面をスライド天板により封鎖し、ミストを内部の封鎖空間に閉じ込めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-146420号公報
【文献】特開2014-057952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すようなキッチンシンクにおいては、ミストを内部の封鎖空間に充満させるためにスライド天板が設けられることが必要であり、利便性に欠けるという問題があった。
【0005】
これに対し、特許文献2に示すように、超音波霧化ユニットが提案され、上昇気流によって霧が拡散しやすくならないように、霧化槽の水温を上昇させないように制御することが提案されている。
【0006】
しかしながら、このような超音波霧化ユニットを採用しようとすれば、ミストの温度を高めると霧が拡散してしまう問題が生じてしまい、結局、ミストの拡散を防ごうとすれば特許文献1に示すようなスライド天板を設ける必要が生じてしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、加熱された状態のミストが、上方が開放された滞留空間内に滞留できるミスト発生装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の一実施形態は、水回り機器に用いられるミスト発生装置であって、加熱され水温を制御された水からミストを生成する、又は、水から生成されたミストを加熱することで温度制御されたミストを生成するミスト生成部と、上記水回り機器が使用される室内に向けて上方が開放された滞留空間を形成する滞留部内に、上記ミスト生成部により生成されたミストを供給するミスト供給部と、を備え、上記ミスト生成部及び上記ミスト供給部は、上記ミスト供給部から上記滞留空間に供給されたミストの温度とミストの供給開始前の上記水回り機器が使用される室内の温度との温度差が、0℃以上とされ、上記ミスト供給部から供給されたミストが上記滞留空間内に滞留されるように構成されることを特徴としている。
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記ミスト生成部及び上記ミスト供給部は、上記ミスト供給部から上記滞留空間に供給されたミストの温度とミストの供給開始前の上記水回り機器が使用される室内の温度との温度差が、0℃以上とされ、上記ミスト供給部から供給されたミストが上記滞留空間内に滞留されるように構成される。よって、加熱された状態のミストが、上方が開放された滞留空間内に滞留できる。
【0009】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記ミスト生成部及び上記ミスト供給部は、上記温度差によって生じる上昇気流のミストを上昇させようとする力が上記ミスト供給部から供給されたミストの粒径に応じたミストの重さを超えないような、上記温度差を生じるように構成される。
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記温度差によって生じる上昇気流のミストを上昇させようとする力が上記ミスト供給部から供給されたミストの粒径に応じたミストの重さを超えないようにでき、ミストが上昇気流により滞留空間から拡散することを抑制することができる。よって、加熱された状態のミストが滞留空間内により確実に滞留できる。
【0010】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記ミスト生成部及び上記ミスト供給部は、上記温度差が、100℃以下且つ上記ミスト供給部から供給されたミストの温度が100℃以下とされるように構成される。
このように構成された本発明の一実施形態においては、温度差が100℃以下且つミストの温度が100℃以下とされる。これにより、滞留部の洗浄にミストを使用する時に、ミストの洗浄性を向上できる。
【0011】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記ミスト生成部及び上記ミスト供給部は、上記温度差が、60℃以下且つ上記ミスト供給部から供給されたミストの温度が100℃以下 とされるように構成される。
このように構成された本発明の一実施形態においては、温度差が、60℃以下とされることにより、水回り機器の使用者がミストにより火傷する可能性を低減することができる。さらに、例えば、水回り機器の滞留部の洗浄にミストを使用する時に、火傷する可能性を低減しつつもミストの洗浄性を向上できる。
【0012】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記ミスト生成部及び上記ミスト供給部は、上記温度差が、45℃以下且つ上記ミスト供給部から供給されたミストの温度が100℃以下 とされるように構成される。
このように構成された本発明の一実施形態においては、水回り機器の使用者がミストにより火傷する可能性をより低減することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、上記ミスト生成部は、60℃以上に加熱された水を温度制御すると共に温度制御された水からミストを生成する、又は、水から生成されたミストを60℃以上に加熱すると共に加熱されたミストを温度制御する。
このように構成された本発明の一実施形態においては、水又はミストを60℃以上に加熱することにより、仮に菌が水中に含まれていた場合でも、少なくとも一部の菌(例えばレジオネラ菌)の影響を抑制できる。
【0014】
本発明において、好ましくは、上記ミスト供給部から供給されるミストのザウター粒径が、3.1μm以上であると共に、上記ミスト供給部から供給されるミストのザウター平均粒径が、40μm以下である。
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミストのザウター平均粒径が3.1μm以上とされることにより、ミスト供給部から供給されたミストの内、滞留空間内に滞留されずに滞留空間外へ浮遊するミストの割合を減少できるとともに、ミストのザウター平均粒径が40μm以下とされることにより、滞留空間内に滞留されずに滞留空間の底へ比較的早期に落下するミストの割合を減少できる。従って、ミストが滞留空間内に滞留される割合を増加させ、ミストが滞留空間内に効率的に滞留されるようにできる。
【0015】
本発明において、好ましくは、上記ミスト供給部から供給されるミストの20%タイル値粒径とザウター平均粒径との平均値が、3.6μm以上であると共に、上記ミスト供給部から供給されるミストのザウター平均粒径が、20μm以下とされる。
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミストのザウター平均粒径が3.6μm以上とされることにより、ミスト供給部から供給されたミストの内、滞留空間内に滞留されずに滞留空間外へ浮遊するミストの割合をより減少できるとともに、ミストのザウター平均粒径が20μm以下とされることにより、滞留空間内に滞留されずに滞留空間の底へ比較的早期に落下するミストの割合をより減少できる。従って、ミストが滞留空間内に滞留される割合をより増加させ、ミストが滞留空間内により効率的に滞留されるようにできる。
【0016】
本発明において、好ましくは、上記ミスト供給部から供給されるミストのザウター平均粒径が、4.1μm以上であり且つ10μm以下とされる。
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミストのザウター平均粒径が4.1μm以上とされることにより、ミスト供給部から供給されたミストの内、滞留空間内に滞留されずに滞留空間外へ浮遊するミストの割合をさらに減少できるとともに、ミストのザウター平均粒径が10μm以下とされることにより、滞留空間内に滞留されずに滞留空間の底へ比較的早期に落下するミストの割合をさらに減少できる。従って、ミストが滞留空間内に滞留される割合をさらに増加させ、ミストが滞留空間内にさらに効率的に滞留されるようにできる。
【0017】
本発明において、好ましくは、水回り機器であって、上記ミスト発生装置と、上記ミスト発生装置の上記ミスト供給部から供給されるミストを受け入れる上記滞留空間を形成する上記滞留部と、を備える。
また、本発明の一実施形態は、浴槽装置、洗い場床装置、シャワールーム装置、洗面装置、キッチンシンク装置等の水回り機器であって、本発明の一実施形態のミスト発生装置と、ミスト発生装置の上記ミスト供給部から供給されるミストを受け入れる上記滞留空間を形成する上記滞留部とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明のミスト発生装置によれば、加熱された状態のミストが、上方が開放された滞留空間内に滞留できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態によるミスト発生装置を備えた浴槽装置の斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態によるミスト発生装置を備えた浴槽装置の構造を説明する断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態によるミスト発生装置からのミスト供給動作を説明する図である。
【
図4】本発明の第1実施形態によるミスト発生装置からのミスト供給動作を説明する図である。
【
図5】本発明の第1実施形態によるミスト発生装置からのミスト供給動作を説明する図である。
【
図6】本発明の第1実施形態によるミスト発生装置からのミスト供給動作を説明する図である。
【
図7】本発明の第1実施形態によるミスト発生装置からのミスト供給動作を説明する図である。
【
図8】本発明の第1実施形態によるミスト発生装置からのミスト供給動作を説明する図である。
【
図9】本発明の第1実施形態によるミスト発生装置のミスト供給部から滞留空間に供給されたミストの温度を仮想滞留空間において測定する測定装置の上面図である。
【
図10】本発明の第1実施形態によるミスト発生装置のミスト供給部から滞留空間に供給されたミストの温度を仮想滞留空間において測定する測定装置の正面図である。
【
図11】本発明の第1実施形態によるミスト発生装置のミスト供給部から滞留空間に供給されたミストの温度を仮想滞留空間において測定する測定装置の側面図である。
【
図12】本発明の第1実施形態によるミスト発生装置から供給されたミストによるミスト雰囲気温度の変化の様子を示す図である。
【
図13】本発明の第1実施形態によるミスト発生装置のミスト供給部から滞留空間に供給されたミストの温度とミストの供給開始前の水回り機器が使用される室内の温度との温度差の範囲を示す図である。
【
図14】本発明の第1実施形態によるミスト発生装置のミスト供給部から供給されるミストの粒径の計測装置の斜視図である。
【
図15】本発明の第1実施形態によるミスト発生装置のミスト供給部から供給されるミストの粒径の計測装置の上面図である。
【
図16】本発明の第1実施形態によるミスト発生装置のミスト供給部から供給されるミストの粒径を、粒子径分布測定装置により測定した粒子径分布データの一例を示す図である。
【
図17】本発明の第1実施形態によるミスト発生装置のミスト供給部から供給されるミストに関し、ミストの温度と室内の温度との温度差と、ミストの粒径との関係を示す図である。
【
図18】本発明の第1実施形態によるミスト発生装置のミスト供給部から供給されるミストが仮想滞留空間に供給された状態を観察する観察装置の斜視図である。
【
図19】本発明の第1実施形態によるミスト発生装置のミスト供給部から供給されるミストが仮想滞留空間に供給された状態を、温度差と、ミストの粒径とに応じて比較する図である。
【
図20】本発明の第1実施形態によるミスト発生装置のミスト供給部から供給されるミストが滞留しているかの判定に関し、透過率の測定装置を示す図である。
【
図21】本発明の第1実施形態によるミスト発生装置のミスト供給部から供給されるミストによるミスト入浴と、通常の湯船浴との違いを、熱流束と時間経過により示す図である。
【
図22】本発明の第1実施形態によるミスト発生装置のミスト供給部から供給されるミストによるミスト入浴と、通常の湯船浴とのそれぞれにおいて、10分入浴後に使用者の皮膚温を測定した結果を示す図である。
【
図23】本発明の第2実施形態によるミスト発生装置を備えた洗い場床装置の斜視図である。
【
図24】本発明の第3実施形態によるミスト発生装置を備えたシャワールーム装置の斜視図である。
【
図25】本発明の第4実施形態によるミスト発生装置を備えた洗面装置の斜視図である。
【
図26】本発明の第5実施形態によるミスト発生装置を備えたキッチンシンク装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本明細書に開示する本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。以下の説明から、当業者にとって、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、以下の説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更することができる。
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の第1実施形態によるミスト発生装置を備えた水回り機器である浴槽装置について説明する。
図1は本発明の第1実施形態によるミスト発生装置を備えた浴槽装置の斜視図であり、
図2は本発明の第1実施形態によるミスト発生装置を備えた浴槽装置を側面から見た側面図である。
図1及び
図2に示すように、本発明の第1実施形態によるミスト発生装置1を備えた水回り機器である浴槽装置2は、浴室3に設けられる。水回り機器は、浴室、浴室の洗い場床、トイレ、洗面所、キッチン等の水を使うための吐水装置が設けられている機器である。ミスト発生装置1は、水回り機器の浴槽、浴室の洗い場床、シャワールーム、手洗いボウル、洗面台ボウル、キッチンシンクに用いられるミスト発生装置である。浴室3は、箱型の空間であり、内部で水を使用するため一定程度密閉された室内空間5を形成している。水には、外気温(常温)より温度の高い水、加熱された水(いわゆる湯)も含む。浴室3内には、ミスト発生装置1を操作する操作部28が設けられている。操作部28は、浴槽装置2への水の貯水操作、温度設定等も行うことができる。操作部28は、供給されるミストの温度を設定できる操作機能、供給されるミストの粒径を設定できる操作機能等を有していてもよい。操作部28は、浴室3外に設けられてもよく、又は、リモコン等の遠隔操作部でもよい。浴槽装置2には、水の供給を行う供給装置7が設けられている。浴槽装置2は、さらに、ミスト発生装置1の後述するミスト供給部から供給されるミストを受け入れる滞留空間4を形成する浴槽本体6を備えている。
【0022】
浴槽本体6は、浴槽装置2が使用される室内空間5に向けて上方が開放された滞留空間4を形成する。浴槽本体6は、浴槽(湯船)であり、内側の滞留空間4内に水が貯水できるようになっている。浴槽本体6は、上面視で長方形に形成され、長方形の長辺側に長辺側部分6dが形成され、短辺側に短辺側部分6eが形成されている。短辺側部分6eは、長辺側部分6dに比べて浴槽の幅が短くなっている。
滞留空間4は、浴槽本体6の内側において概ね直方体形状に形成される空間である。
図2に示すように使用者Aが入浴する際には、滞留空間4の下部側に34℃乃至45℃の水Bが貯水され、使用者Aが座った状態で入浴することができる。なお、後述するように、
図2においては、滞留空間4内の水Bの上方にはミストが滞留した状態(ミストの滞留層Cが形成されている状態)となっている。滞留空間4は、浴槽本体6の上端部6aまで形成され、天面側が開口されている。浴槽本体6は、滞留空間4の天面を覆うような蓋を省略した状態で、後述するようにミストが滞留空間4内に滞留されるようになっている。なお、滞留空間4内に水Bが貯水されずにミストが滞留されていてもよい。浴槽本体6の形状は実施形態のような箱状に限定されず、滞留空間を形成できる形状であればよい。例えば、浴槽本体6が上面視で円形や楕円形に形成され、内側にボウル状の滞留空間が形成されていてもよい。浴槽本体6の底面は使用者が寝浴姿勢や座り姿勢に近い姿勢をとれるように斜めに形成されていてもよく、底面に段部が形成されていてもよく又は形成されていなくてもよい。浴槽本体6の壁部の頂辺部が、一定の高さで水平に形成されている必要はなく高さが変化するように形成されていてもよい。例えば、浴槽本体6の壁部の頂辺部が、側面視で、斜め上方又は下方に延びる形状、一部が下方に凹む弓状に延びる形状や、略直角を形成するような形状とされてもよい。
【0023】
ミスト発生装置1は、水回り機器である浴槽装置2に用いられる。ミスト発生装置1は、ミストを生成するミスト生成部8と、ミストを浴槽本体6内に供給するミスト供給部10とを備えている。
【0024】
ミスト生成部8は、加熱され水温を制御された水からミストを生成する、又は、水から生成されたミストを加熱することで温度制御されたミストを生成する。ミスト生成部8は、浴槽本体6の短辺側の短辺側部分6eに配置されている。短辺側部分6eの上部には、ミスト生成部8を配置する台状の部分が形成されている。
【0025】
ミスト生成部8は、内部に水を貯溜するタンク12と、水を給水源からタンク12に給水する給水路14と、水をタンク12から排水管に排水する排水路16と、タンク12の内側の底部に設けられた超音波振動子18と、タンク12の内側の底部に設けられたヒーター20と、タンク12の内側に設けられた水温検知手段である水温計測器22と、タンク12の外側に設けられた気温検知手段である室内温度計測器24と、超音波振動子18及びヒーター20を制御する制御部26と、を備えている。
【0026】
タンク12は、直方体形状に形成されている。タンク12の下部の側壁に給水路14と排水路16とが接続されている。タンク12の中央近傍の側壁にミスト供給部10が接続されている。給水路14には、給水路14を開閉する給水路開閉弁30が設けられている。排水路16には、排水路16を開閉する排水路開閉弁32が設けられている。
【0027】
超音波振動子18は、タンク12内の水に超音波を発振して、液面の水を振動させ、液面から水を微粒子状にさせ、所定の粒径のミスト(霧)を生じさせることができる。超音波振動子18は、制御部26と電気的に接続され、超音波振動子18の超音波の発振出力、周波数等を調整することにより、発生させるミストの粒径を変更できるようになっている。超音波振動子18は、所定の粒径のミストを生じさせる他の装置、例えばスチームによるミスト発生装置、圧力噴霧によるミスト発生装置、アーク放電によるミスト発生装置等に変更されてもよい。また、本実施形態においては、超音波振動子18は、タンク12内に1つ設けられているが、タンク12内に複数設けられていてもよい。
【0028】
制御部26は、ヒーター20により、タンク12内の水を加熱する機能を有すると共にタンク12内の水の温度を制御する機能を有する。例えば、ヒーター20は、給水温(例えば20℃程度の室温)の水温の水を室温以上の60℃以上まで加熱することができる。また例えば、制御部26は、ヒーター20により、一旦60℃以上に加熱された水を以後、後述する所定の温度差が0℃以上とされるように上昇又は低下させるように温度制御することができる。よって、ミスト生成部8は、60℃以上に加熱された水を温度制御すると共に温度制御された水からミストを生成する。なお、ミスト生成部8は、給湯器において60℃以上に加熱された上でミスト生成部8に供給された水からミストを生成してもよい。ミスト生成部8は、タンク12内の水を室温以上の温度に加熱し、室温以上の温度で上昇気流を生じさせるようなミストを、ミストの粒径等の状態に応じて、ミストの温度を調整しながら滞留しやすいように設定によりコントロールする機能を有する。なお、水を60℃以上に加熱するので、少なくとも一部の菌(例えばレジオネラ菌)の繁殖を抑制する対策も可能となる。なお、ヒーター20が水(又はミスト)を一旦60℃以上に加熱する工程を省略し、この工程の代わりに他の菌抑制手段、例えば、UV光による除菌手段、除菌剤を添加する菌抑制手段等が設けられてもよい。このとき、ヒーター20は水(又はミスト)を60℃未満の温度まで加熱できる。
なお、ヒーター20は、タンク12内の水の水位よりも高い位置に設けられ、水から生成されたミストを加熱してもよい。このとき、ヒーター20は、水から生成されたミストを60℃以上に加熱することができる。また例えば、制御部26は、ヒーター20により、60℃以上に加熱されたミストを以後後述する所定の温度差が0℃以上とされるようにタンク12内のミストの温度を上昇又は低下させるように温度制御することができる。このとき、ミスト生成部8は、水から生成されたミストを60℃以上に加熱すると共に加熱されたミストを温度制御する。
なお、ヒーター20は、ヒーター20がタンク12内の水の水位よりも低い位置に設けられた状態で、水から生成されたミストを加熱してもよい。このとき、タンク12からタンク12内の水の水位よりも低い位置に設けられたヒーター20までミストを通すダクトが設けられ、このダクトを通ってヒーター20に供給されるミストをヒーター20が加熱させる。このダクトの下流側はミスト供給部10又はタンク12に接続され、ヒーター20が加熱したミストが再びミスト供給部10又はタンク12に戻される。
【0029】
水温計測器22は、タンク12内の水の水温を検知する。制御部26は、水温計測器22と電気的に接続され、制御部26がタンク12内の水の水温を認識できる。
室内温度計測器24は、浴槽本体6が配置される室内空間5のタンク12の外側の空気の温度を検知する。制御部26は、室内温度計測器24と電気的に接続され、制御部26が室内空間5の空気の温度を認識できる。なお、ミストの供給開始前(ミスト生成部8が駆動される前)の状態においては、室内空間5の空気の温度と、滞留空間4内の空気の温度とはほぼ等しい又は比較的近い温度であると仮定されるので、制御部26は、室内温度計測器24が測定した室内空間5の空気の温度を、滞留空間4内の空気の温度と推定できる。
【0030】
制御部26は、CPU及びメモリ等を内蔵し、メモリ等に記録された所定の制御プログラムに基づいてミストの発生を実行するように接続された機器を制御する。制御部26は、超音波振動子18、ヒーター20、水温計測器22、室内温度計測器24、操作部28等と電気的に接続されている。制御部26は、さらに、給水路14に設けられた給水路開閉弁30と、排水路に設けられた排水路開閉弁32とも電気的に接続され、これらを制御できる。
【0031】
ミスト供給部10は、ミスト生成部8により生成されたミストを、浴槽が使用される室内に向けて上方が開放された滞留空間4を形成する滞留部である浴槽本体6内に供給する。ミスト供給部10は、
図2に示す流路の断面により示されるように、ミスト生成部8から滞留空間4の一端の上部まで直線的に延びる流路を形成している。ミスト供給部10の開口部は、正面から(滞留空間4側から)見て、浴槽本体6の短辺側部分6eに沿って横長の長方形に形成されている。開口部は、短辺側部分6eのほぼ全体にわたる幅を有するように形成されている。ミスト供給部10は浴槽本体6内の水の溢れ部6cより上方に配置される。本実施形態においては、この溢れ部6cは、浴槽本体6の溢れ面6bである。変形例として溢れ部6cは、浴槽本体6内に設けられたオーバーフロー口でもよい。また、ミスト供給部10は、浴槽本体6の短辺側の短辺側部分6eに配置されている。短辺側部分6eの上部には、ミスト供給部10を配置する台状の部分が形成されている。ミスト供給部10は、体積あたりの供給量を、例えば0.03mL/min・L~1.5mL/min・Lの範囲にしている。ミスト供給部10は、例えば、浴槽本体6の体積330Lの滞留空間4に11mL/minの単位時間あたりの供給量のミストを供給できる。また、例えば、ミスト供給部10は、温度差や粒径の測定の仮想滞留空間や、他の水回り機器等の体積4.32Lの滞留空間4に6mL/minの単位時間あたりの供給量のミストを供給できる。超音波振動子18の個数、出力、超音波を照射する向き、ミスト生成部8内の水位、又は、ミスト生成部8内やミスト供給部10内の流路形状等によりミストの供給量が制御できる。
【0032】
ミスト生成部8及びミスト供給部10は、加温された状態のミストを生成すると共に、ミストの温度を制御し、このミストを滞留空間4内に滞留させやすくする。この内容について説明する。
ミスト生成部8及びミスト供給部10は、ミスト供給部10から滞留空間4に供給されたミストの温度とミストの供給開始前の水回り機器が使用される室内の温度との温度差が、0℃以上とされ、ミスト供給部10から供給されたミストが浴槽本体6の滞留空間4内に滞留されるように構成される。また、ミスト発生装置1のミスト生成部8及びミスト供給部10は、温度差によって生じる上昇気流がミストを上昇させようとする力がミスト供給部10から供給されたミストの粒径に応じたミストの重さを超えないような、温度差を生じるように構成される。想定される室内空間5の空気の温度範囲に応じてミスト生成部8に供給される水の温度、ヒーター20による加熱温度、又は超音波振動子18の周波数を予め設定することで、室内温度計測器24を用いず(室内温度計測器24の計測結果に依ることなく)、このようなミスト供給が達成されてもよい。また、供給時の設定の調整によりこのようなミスト供給が達成されてもよい。ミスト生成部8及びミスト供給部10は、温度差が、好ましくは100℃以下、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは45℃以下とされるように構成される。ミスト生成部8及びミスト供給部10は、加温された状態のミストを生成すると共に、ミストの粒径を制御し、このミストを滞留空間4内に滞留させやすくする。
【0033】
次に、
図2、
図3乃至
図8により、上述した本発明の第1実施形態によるミスト発生装置の動作を説明する。
図3乃至
図8においては、ミスト発生装置1は、浴槽装置2の浴槽本体6とほぼ一体に見えるように浴槽本体6の上部に組み込まれている。
図3乃至
図8に示すミスト発生装置1の基本構造は、
図2に示すミスト発生装置1の基本構造とほぼ同じであるので、
図3乃至
図8においても
図2と同様の符号を付して説明する。
【0034】
図2に示すように、ミスト発生装置1の動作の開始前の待機状態において、浴槽本体6の滞留空間4の下半分には約38℃の水が貯溜された状態となっている。浴室3内の室内空間5の空気の温度と滞留空間4内の空気の温度とはほぼ等しい温度となっている。給水路開閉弁30及び排水路開閉弁32は閉弁されている。タンク12内には水が無い状態となっている。超音波振動子18及びヒーター20は停止された状態である。
【0035】
使用者が操作部28を操作しミスト発生装置1のミストの供給制御を開始させる。ミストの供給開始前に、室内温度計測器24は、室内空間5の空気の温度を測定し、制御部26は、室内空間5の空気の温度を認識する。制御部26は、給水路開閉弁30を開弁し、水を給水路14からタンク12内に供給する。排水路開閉弁32は閉弁されたままである。タンク12内に予め決められた水量の水が貯溜されると、給水路開閉弁30は開弁される。次に、制御部26は、ヒーター20を作動させ、水を給水された水の水温から60℃以上まで加熱する。制御部26は、水が60℃以上まで加熱された後、ミスト供給部10から滞留空間4に供給されたミストの温度とミストの供給開始前の浴槽装置2が使用される浴室3内の温度との温度差が、0℃以上とされるように、タンク12内の水の温度をヒーター20の起動及び停止により調整する。次いで、制御部26は、超音波振動子18を作動させ、タンク12内にミストを生じさせる。
【0036】
図3においては、ミスト供給部10から滞留空間4内へのミストの供給が開始された直後の状態が示される。
タンク12内に生じたミストは、ミスト供給部10から浴槽本体6内の滞留空間4に供給される。ミストは、ミスト供給部10から自然に溢れ出し、矢印F1に示すように、ミストの自重により自由落下しながら滞留空間4内に供給される。このように、ミストが下方への移動速度以外の他の方向への移動速度を持つことが抑制されている。従って、ミストが滞留空間4内において、撹拌、拡散、上昇等の移動をしにくくされている。
【0037】
図4においては、ミストの供給開始から約10秒経過後の状態が示される。
ミスト供給部10から滞留空間4へのミストの供給は継続されている。供給されたミストは、水Bの水面の上方且つ滞留空間4内の低い部分に滞留を開始している。ミストは、ミスト供給部10から滞留空間4に供給されたミストの温度とミストの供給開始前の浴槽装置2が使用される室内空間5の温度との温度差が、0℃以上とされているので、自身の自重に打ち勝つほどの上昇気流をミストの温度により生じさせにくくなっている。よって、ミストは、滞留空間4内の比較的低い部分に滞留する。
【0038】
図5においては、ミストの供給開始から約30秒経過後の状態が示される。
ミスト供給部10から滞留空間4へのミストの供給は継続されている。滞留空間4内に供給されたミストが、徐々に増加し、ミストが滞留空間4内の徐々に高い部分まで滞留されるようになってきている。
【0039】
図6においては、ミストの供給開始から約1分経過後の状態が示される。
ミスト供給部10から滞留空間4へのミストの供給は継続されている。滞留空間4内に供給されたミストが、徐々に増加し、ミストが滞留空間4内のさらに高い部分まで滞留されるようになってきている。
【0040】
図7においては、ミストの供給開始から約1分30秒経過後の状態が示される。
ミスト供給部10から滞留空間4へのミストの供給は継続されている。滞留空間4内に供給されたミストが、さらに増加し、ミストが滞留空間4内の頂部(浴槽本体6の上端部6a)に近い部分まで滞留されている。
【0041】
図8においては、ミストの供給開始から約2分経過後の状態が示される。
ミスト供給部10から滞留空間4へのミストの供給は継続されている。滞留空間4内に供給されたミストが、滞留空間4内の頂部(浴槽本体6の上端部6a)に近い部分まで滞留されている。ミストは、主に滞留空間4内において水Bの水面より上方且つ滞留空間4内の頂部より下方の領域に滞留している。ミストのうち一部は、水Bに落下して吸収され、又は浴槽本体6の壁面に水滴となって付着され、又は浴槽本体6の上端部6aの縁を超えて流出する。このようにミストのうち一部は消失又は拡散されるものの、主なミストは、滞留空間4内に滞留する。すなわち、ミストは滞留空間4内において緩やかに流動しつつも滞留空間4から拡散するには至らず安定的な滞留層Cを形成する。滞留層Cは、水Bの水面より上方において、一定以上の密度のミストが単位空間内に存在することにより形成される。滞留層は、白い雲状に認識される。滞留層は下部側においてミストの密度が比較的高く、上部側においてミストの密度が比較的低くなるように形成されている。滞留層の存在により、滞留空間4の頂部までミストが満たされているように視認される。
【0042】
滞留されたミストの上部側の滞留境界面66は、浴槽本体6の溢れ面6bの高さ(高さ位置M0)に、上記浴槽本体6の深さL1に相当する高さを加えた高さ位置M1よりも下方に形成される。滞留境界面66はミストが空気中に一定以上の濃度となっている滞留層Cと、ミストが空気中に一定未満の濃度となっている空気層Jとの間の境界領域を示している。滞留境界面66は、ミストが滞留しながらある程度動いているため、上下方向にやや高さを持った領域で規定されると共に、水平方向に広がる領域として規定される。なお、浴槽本体6の溢れ面6bは、浴槽本体6の側壁のうち最も高さが低い部分、すなわち水が浴槽本体6の上限まで溜まると最初に溢れ出す部分である。
【0043】
また、滞留されたミストの上部側の滞留境界面66は、浴槽本体6の溢れ面6bの高さ位置M0よりも上方に形成されている。さらに、滞留されたミストの上部側の滞留境界面66は、浴槽本体6の溢れ面6bの高さ(高さ位置M0)に、100mm~200mmの間の数値を加えた高さ位置(高さ位置M2~高さ位置M3)よりも下方に形成されている。滞留境界面66が浴槽本体6の溢れ面6bの高さよりも高い位置となる場合には、使用者は浴槽を越える位置までのミスト入浴効果、すなわち湯船より高い高さまでの温浴効果を得ることができる。ミスト生成部8を駆動(使用)している間は、ミストが浴槽本体6内に供給されミストの滞留が継続されている。
ミスト生成部8及びミスト供給部10は、滞留境界面66の高さ位置が、上述のような所定の高さ位置になるような、ミストの温度と室内の温度との温度差、ミストの粒径、ミストの供給量等を規定するように構成されている。
【0044】
次に、
図9乃至
図11を参照して、ミスト供給部10から滞留空間4に供給されたミストの温度、及びミストの供給開始前の浴槽装置2が使用される室内の温度のそれぞれの計測方法について説明する。
ミスト供給部10から滞留空間4に供給されたミストの温度は、想定される水回り機器の形状に対応する箱状装置35により測定できる。箱状装置35は、想定される水回り機器の滞留空間の形状を模擬した仮想滞留空間34と、仮想滞留空間34の中央に配置され且つ温度を測定するK熱電対36とを備えている。
仮想滞留空間34は実際の滞留空間4の形状を模擬しつつもサイズを小さくして形成されている。仮想滞留空間の大きさ及び形状は、想定される水回り機器により決定され、浴槽装置2の場合の浴槽、浴室の洗い場床、シャワールーム、洗面台の場合の洗面シンク、キッチンの場合のキッチンシンク等の大きさ及び形状に対応するように決定される。仮想滞留空間34は、例えば、上面視で、短辺が120mm、長辺が300mmの長方形を形成し、正面視で、高さが120mm、長辺が300mmの直方体を形成する。箱状装置35の仮想滞留空間34は、天井面が省略されて開口されている。このような仮想滞留空間34の中心位置に、K熱電対36の感温部が配置され、仮想滞留空間34内の空気の温度を測定している。K熱電対36は、上面視で、短辺に沿う方向において側壁から内側に60mmの位置、且つ長辺に沿う方向において側壁から内側に150mmの位置、且つ高さ方向において底部から上方に60mmの位置に位置する。例えば、K熱電対の感温部サイズは、φ4.5mm×50mmとされている。K熱電対36は、温度ロガー(図示せず)に電気的に接続される。例えば、K熱電対36(アズワン社製型番L-TN-4-K)の測定データを温度ロガー(キーエンス社製NR-500シリーズNR-TH08)で測定、記録し、温度ロガーの情報をパソコンに記録する。なお、ミストを生じさせるもととなる水は水道水であり、ミストを生じさせるもととなる水の水質は水道水の水質に基づく。さらに、各計測方法(測定方法)が実施される室内においては、室内に空気の流れを生じさせるような空調等の風は供給されない状態である。
【0045】
図12に示すように、ミスト供給部10から滞留空間4に供給されたミストの温度は、本実施形態のミスト供給部10から箱状装置35内の仮想滞留空間34に対し、ミスト供給を開始した後、十分に時間が経過(例えば2500[s]経過)し、温度上昇がほぼ止まった際の最高温度であるミスト雰囲気温度T1(例えば43℃)により規定されている。
図12においては、縦軸は仮想滞留空間34内のK熱電対36が計測した温度(ミスト雰囲気温度)[℃]であり、横軸は計測開始からの経過時間[s]である。
図12において、ミスト雰囲気温度の計測例が示されている。この計測例においては、開始時の室内の温度T0=-5℃、ミスト生成部8において生成された当初のミスト温度が60℃である。ミスト供給部10から滞留空間に供給されたミストの温度はやや低下された温度となっており、この温度をミスト雰囲気温度により測定する。ミスト供給が開始された後、時間経過とともに、仮想滞留空間34内の温度が上昇し、温度上昇がほぼ一定の値T1に収束される。ミスト供給部10からのミストの供給が継続している場合、仮想滞留空間34内のミストの温度が収束する値は、ミスト供給部10から仮想滞留空間34に供給されたミストの温度となる。よって、実際にミスト供給部10から滞留空間4に供給されるミストの温度は仮想滞留空間34において得られたミストの温度(ミスト雰囲気温度)となると想定される。
【0046】
次に、ミストの供給開始前の水回り機器が使用される室内の温度の計測方法について説明する。ミストの供給開始前の水回り機器が使用される室内の温度は、水回り機器が使用される室内のうち仮想滞留空間34の外側に配置された室温用K熱電対50により測定される。仮想滞留空間34の外側の室温用K熱電対50は、箱状装置35と同じ室内空間内に配置され、室内温度計測器24を模擬している。よって、室温用K熱電対50により測定された温度が、室内温度計測器24が測定した室内の温度に対応する。仮想滞留空間等を用いたシミュレーション等においてはこの室温用K熱電対50により測定された温度を室内の温度として使用する。室温用K熱電対50は、仮想滞留空間34の頂部の高さに配置され、上面視で、短辺に沿う方向において側壁から外側に60mm離れた位置、且つ長辺に沿う方向において仮想滞留空間34の一端の側壁から内側方向に150mmの位置に位置する。室温用K熱電対50は、仮想滞留空間34の外側に延びる支持部38により仮想滞留空間34の外部で固定されている。水回り機器が使用される室内の温度は、ミスト供給が仮想滞留空間34に開始される前に、室温用K熱電対50により測定される。室温用K熱電対は、仮想滞留空間内のK熱電対36と同じK熱電対を使用している。室温用K熱電対50は、このような場所に限られず、ミスト生成部8の外側且つ近傍の位置に配置できる。また、室温用K熱電対50は、ミストの供給開始前の水回り機器が使用される室内の温度を測定できればよいので、仮想滞留空間34内に配置されたK熱電対36によりミストの供給開始前の仮想滞留空間34内の空気の温度を計測してもよい。
【0047】
次に、
図13を参照して、ミスト供給部10から滞留空間4に供給されたミストの温度とミストの供給開始前の水回り機器が使用される室内の温度との温度差の範囲(
図13中の点が付された領域により示す)について説明する。
上述のようにしてミスト供給部10から滞留空間4に供給されたミストの温度とミストの供給開始前の水回り機器が使用される室内の温度とが規定できる。よって、これらのミストの温度と室内の温度との温度差が規定できる。この温度差が0℃以上とされることにより、加熱後に調整されるミストの温度がミストの供給開始前の室温と同じ温度かより高い温度に設定される。
図13においては、縦軸においてミストの温度[℃]を示し、横軸において室内の温度[℃]を示している。さらに、ミストの温度と室内の温度との温度差が0℃となる線C1が示される。よって、温度差が0℃以上とされる範囲が線C1より上方に示される。また、
図13には、ミストの温度と室内の温度との温度差が100℃となる線C2が示される。ミスト発生装置1のミスト生成部8及びミスト供給部10は、温度差が、0℃以上且つ100℃以下とされるように構成される。温度差が100℃までとなる比較的高温のミストの温度を設定できることにより、水回り機器の浴槽本体6の洗浄にミストを使用する時に、ミストの洗浄性や汚れを落としやすくする能力を向上させることができる。例えば、水が沸騰する温度に近い高温のミストを利用して比較的高い洗浄性能を奏することができる。なお、ミストは沸騰温度(例えば100℃)になると、水蒸気の態様に変化してミストの霧の粒が消失するので、ミスト供給部10から供給されたミスト温度は100℃以下とされる(線C5以下の領域により示す)。
【0048】
また、ミスト発生装置1のミスト生成部8及びミスト供給部10は、上記温度差が、0℃以上且つ60℃以下とされるように構成される。ミストの温度と室内の温度との温度差が60℃となる線C3が示される。温度差が60℃までとなるような比較的高温のミストの使用を抑制することにより、水回り機器の浴槽本体6の洗浄にミストを使用する時に、火傷する可能性をより低減しつつもミストの洗浄性を向上させることができる。
【0049】
また、ミスト発生装置1のミスト生成部8及びミスト供給部10は、上記温度差が、0℃以上且つ45℃以下とされるように構成される。ミストの温度と室内の温度との温度差が45℃となる線C4が示される。温度差が45℃までに比較的低温のミストを使用することにより、水回り機器の使用者がミストにより火傷する可能性をほぼなくすことができる。
【0050】
また、
図13において、ミストの温度が、35度以上(線D1により示す)且つ45度以下(線D2により示す)に設定されれば、使用者の体温程度又は体温より温かい温度に設定しつつ、使用者がミストにより火傷する可能性をほぼなくすことができる。
【0051】
次に、
図14を参照して、ミスト供給部10から供給されるミストの粒径の計測装置及び計測方法について説明する。
ミストの粒径の計測装置37は、前述と同じ大きさ及び形状の仮想滞留空間34を設定する箱状装置39と、粒子径分布測定装置53とを備えている。この箱状装置39の側壁、すなわち仮想滞留空間34の側方の壁の中央近傍に、20mm×20mmの正方形の開口52を形成し、この開口52に蓋55が取り付けられている。
【0052】
図15に示すように、粒子径分布測定装置53は、開口52の近傍且つ正面に粒径計測レーザーの計測領域Eが位置するように配置された粒径計測レーザー54を備えている。上面視で、粒径計測レーザー54のレーザー光が仮想滞留空間34の長辺と平行になるように粒径計測レーザー54が配置されている。粒径計測レーザー54から発信されるレーザー光が通過する計測領域Eが開口52の正面に位置している。計測領域Eは、開口52から150mmの距離に位置する。粒子径分布測定装置53は、さらに、このレーザー光の回折・散乱光を検出するように計測レンズ56を備えている。
【0053】
この開口に蓋55を取付けた状態で、仮想滞留空間34内にミストの供給を開始する。ミスト供給部10からのミストの供給口は図示を省略している。ミストの供給開始から1分後に蓋55を開放し、ミストを粒径計測レーザー54の計測領域Eに向けて漏出させる。粒径計測レーザー54の透過率60%~90%の状態で計測レンズ56により散乱光分布を計測する。例えば、粒径計測レーザー54及び計測レンズ56は、マイクロトラック・ベル株式会社製のスプレー粒子径分布測定装置のエアロトラック LDSA-SPRシリーズのLDSA-SPR1500Aを使用する。粒子径分布データを10回測定し、この粒子径分布データをPCに記録する。PCにおいて10回の粒子径分布データを平均化する。
図16には、粒子径分布測定装置53により測定された粒子径分布データの一例を示す。
図16においては、左側縦軸において頻度[%]を示し、右側縦軸において累積[%]を示し、横軸において粒径[μm]を示している。例えば、PCは、このように得られた粒子径分布データを分析し、この粒子径分布データの20%タイル値粒径G、ザウター平均粒径Hを粒径データとして取得する。ザウター平均粒径は、全粒子の全表面積に対する全粒子の全体積と同じ表面積対体積率を有する粒径を示す。ザウター平均粒径により平均粒径をもとめることにより少ない数の大粒径を有する粒子による測定値への影響を抑制できる。
【0054】
ミスト供給部10から供給されるミストの大部分の粒径は、3.1μm以上且つ40μm以下となるように、ミスト生成部8等が構成される。この範囲の上限及び下限において、少ない数の大粒径の粒子や小粒径の粒子の測定に与える影響等を受けにくくするため、ミストのザウター平均粒径が、40μm以下であると共に、ミストのザウター平均粒径が、3.1μm以上とされる、このような条件を満たすようにミストの粒径を規定している。
ミスト供給部10から供給されるミストの大部分の粒径は、3.6μm以上且つ20μm以下となるように、ミスト生成部8等が構成される。この範囲の上限及び下限において、少ない数の大粒径の粒子や小粒径の粒子の測定に与える影響等を受けにくくするため、ミストのザウター平均粒径とザウター平均粒径との平均値が、3.6μm以上であると共に、ミスト供給部から供給されるミストのザウター平均粒径が、20μm以下とされる、このような条件を満たすようにミストの粒径を規定している。
ミスト供給部10から供給されるミストの大部分の粒径は、4.1μm以上且つ10μm以下となるように、ミスト生成部8等が構成される。この範囲の上限及び下限において、少ない数の大粒径の粒子や小粒径の粒子の影響等を受けにくくするため、ミストのザウター平均粒径が、4.1μm以上であり且つ10μm以下とされる、このような条件を満たすようにミストの粒径を規定している。
【0055】
次に、
図17を参照して、温度差と粒径との関係を説明する。
図17においては、縦軸において粒径[μm]を示し、横軸において温度差ΔT[℃]を示している。これらの粒径と温度差ΔTとの好ましい範囲を
図17において点状の領域により示している。ミスト生成部8及びミスト供給部10により、ミストの温度と室内の温度との温度差が0℃以上且つ100℃以下となる範囲において所定の温度差が設定できる。上述同様に、温度差は0℃以上且つ60℃以下、0℃以上且つ45℃以下等に変更可能である。
【0056】
ミストのザウター平均粒径が、40μm以下となるように、ミスト生成部8及びミスト供給部10が構成されている。よってミストの大部分の粒径が40μm以下となっている。
なお、仮にミストの粒径が40μmである場合には、終端速度vは45.3mm/sと求められる。水滴の終端速度vの算定方法については、次のように表すことができる。空気の分子粘性係数をμ、水滴の半径(ミストの粒径の半分)をrとすると、ρ=103kg/m
-3、g=9.8m/s
2、μ=1.8X10
-5N・sec/m
2(15℃)より、
となり、終端速度v(∞)は水滴の半径の2乗に比例する。なお、この式が適用できる範囲は、Re<1、すなわちr<0.1mmの範囲である。
ミストの粒径が40μmであることによりミストの終端速度が45.3mm/sとなる場合、供給されたミストはおよそ10秒で滞留空間の底部に到達(例えばミスト供給部10から滞留空間4の底部まで45cmとする)し、ミストが消失すると仮定される。すなわちミストの供給から消失まで少なくとも10秒前後ミストが滞留することになる。このように10秒前後ミストが滞留すれば、この間にさらに新しくミストが供給でき、ミストの滞留層Cが維持しやすくなる。
図17において、ザウター平均粒径が40μmよりも大きくなる場合には、ミストの消失までの平均時間がより短くなるため、ミストの消失によりミストの滞留層が形成されにくくなる。
【0057】
ミストのザウター平均粒径が、20μm以下となるように、ミスト生成部8及びミスト供給部10が構成されてもよい。このときミストの大部分の粒径が20μm以下となっている。仮にミストの粒径が20μmである場合には、終端速度vは11.3mm/sと求められ、供給されたミストが滞留空間の底部に到達するまでに少なくともおよそ40秒を要することになり、滞留空間4の底へ比較的早期に落下するミストの割合をより減少できる。
【0058】
ミストのザウター平均粒径が、10μm以下となるように、ミスト生成部8及びミスト供給部10が構成されてもよい。このときミストの大部分の粒径が10μm以下となっている。仮にミストの粒径が10μmである場合には、終端速度vは2.8mm/sと求められ、供給されたミストが滞留空間4の底部に到達するまでに少なくともおよそ160秒を要することになり、滞留空間4内に滞留されるミストの継続時間をより長くでき、滞留空間4の底へ比較的早期に落下するミストの割合をさらに減少できる。
【0059】
ミストのザウター平均粒径が、3.1μm以上となるように、ミスト生成部8及びミスト供給部10が構成されてもよい。このときミストの大部分の粒径が3.1μm以上となっている。ミスト供給部10から供給されたミストの内、滞留空間4内に滞留されずに滞留空間4外へ拡散するミストの割合を減少できるとともにミストが滞留空間4内に滞留される割合を増加させ、ミストが滞留空間4内に効率的に滞留される。
【0060】
ミストのザウター平均粒径が、3.6μm以上となるように、ミスト生成部8及びミスト供給部10が構成されてもよい。このときミストの大部分の粒径が3.6μm以上となっている。ミスト供給部10から供給されたミストの内、滞留空間4内に滞留されずに滞留空間4外へ拡散するミストの割合をより減少できるとともにミストが滞留空間4内に滞留される割合をより増加させ、ミストが滞留空間4内により効率的に滞留される。
【0061】
ミストのザウター平均粒径が、4.1μm以上となるように、ミスト生成部8及びミスト供給部10が構成されてもよい。このときミストの大部分の粒径が4.1μm以上となっている。ミスト供給部10から供給されたミストの内、滞留空間4内に滞留されずに滞留空間4外へ拡散するミストの割合をさらに減少できるとともにミストが滞留空間4内に滞留される割合をさらに増加させ、ミストが滞留空間4内にさらに効率的に滞留される。
【0062】
次に、
図18及び
図19を参照して、温度差と、粒径と、仮想滞留空間58内のミストの状態との関係を、さらに説明する。
図18は、仮想滞留空間内の状態を観察する箱状観察装置を示している。
図19においては、温度差と、ザウター平均粒径との9通りの組み合わせについて、仮想滞留空間58内のミストの状態を、比較して示している。
【0063】
図19に示すように、仮想滞留空間58内のミストの状態は、想定される水回り機器の形状に対応する箱状観察装置55により測定できる。箱状観察装置55は、想定される水回り機器の滞留空間の形状を模擬した仮想滞留空間58と、仮想滞留空間58内のミストの様子を観察、記録するカメラ62とを備えている。
図18に示すように、箱状観察装置55の仮想滞留空間58は、斜視図で、短辺が120mm、長辺が300mm、高さが240mmの直方体を形成する。仮想滞留空間58は、天井面が省略されて上方に開口されている。箱状観察装置55の仮想滞留空間58の1つの側壁は透明板60により形成され、箱状観察装置55の斜め上方に配置されたカメラ62により仮想滞留空間58の内部を観察、記録できるようになっている。箱状観察装置55の仮想滞留空間58の短辺側の側壁の高さ120mmの位置に横幅70mm、高さ40mmの供給口64が形成されている。この供給口64がミスト供給部10に接続されている。
【0064】
図19においては、ミスト供給部10から所定の粒径及び温度差を生じるミストを供給し、滞留状態をカメラ62により撮影した写真を9つのパターンで比較して示している。各パターンの写真図において、参考として滞留境界面が生じると想定される位置を、点線により示している。
図19においては、縦軸にミスト供給部10から供給されるミストのザウター平均粒径を示し、横軸に、ミストの温度と室内の温度との温度差ΔTを示している。
図19のパターン例Aにおいては、ミストのザウター平均粒径が50μm~60μm、且つ温度差5℃(ミストの温度20℃且つミストの供給開始前の室内の温度15℃)のとき、ミスト供給部10から供給されたミストが仮想滞留空間58内において比較的早く底部に向けて落下し、消失するため、ミストが仮想滞留空間58内に滞留していない状態となっている。この写真の撮影のタイミングはミストの供給開始後2分を経過した時刻である。よって、仮想滞留空間58内において上面に滞留境界面66を形成するようなミストの滞留層Cは形成されていない。
【0065】
図19のパターン例Bにおいては、ミストのザウター平均粒径が50μm~60μm、且つ温度差25℃(ミストの温度40℃且つミストの供給開始前の室内の温度15℃)のとき、ミスト供給部10から供給されたミストが仮想滞留空間58内において比較的早く底部に向けて落下し、消失するため、ミストが仮想滞留空間58内に滞留していない状態となっている。
図19のパターン例Cにおいても、ミストのザウター平均粒径が50μm~60μm、且つ温度差45℃(ミストの温度60℃且つミストの供給開始前の室内の温度15℃)のとき、ミスト供給部10から供給されたミストが仮想滞留空間58内において比較的早く底部に向けて落下し、消失するため、ミストが仮想滞留空間58内に滞留していない状態となっている。
【0066】
図19のパターン例Dにおいては、ミストのザウター平均粒径が4μm~8μm、且つ温度差5℃(ミストの温度20℃且つミストの供給開始前の室内の温度15℃)のとき、ミスト供給部10から供給されたミストが仮想滞留空間58内において濃度はやや薄いながらも滞留層Cを形成している状態となっている。ミストの粒径が比較的小さいため、終端速度も比較的小さく、落下速度は遅くなっている。一方で、温度差により生じる上昇気流も小さい。これにより、ミストが滞留しながら、仮想滞留空間58内において上面に滞留境界面66を形成するようなミストの滞留層が形成されている。
【0067】
図19のパターン例Eにおいては、ミストのザウター平均粒径が4μm~8μm、且つ温度差25℃(ミストの温度40℃且つミストの供給開始前の室内の温度15℃)のとき、ミスト供給部10から供給されたミストが仮想滞留空間58内において濃度の高い滞留層Cを形成している状態となっている。ミストの粒径が比較的小さいため、終端速度も比較的小さく、落下速度は遅くなっている。温度差により生じる上昇気流も若干生じている。ここで、温度差によって生じる上昇気流がミストを上昇させようとする力がミストの重さを超えないようにしつつも、ミストの落下を抑制してミストの滞留が比較的長く生じている。よって、仮想滞留空間58内において上面に滞留境界面66を形成するようなミストの滞留層Cが形成されている。
【0068】
図19のパターン例Fにおいては、ミストのザウター平均粒径が4μm~8μm、且つ温度差45℃(ミストの温度60℃且つミストの供給開始前の室内の温度15℃)のとき、ミスト供給部から供給されたミストが仮想滞留空間58内において濃度の高い滞留層Cを形成している状態となっている。ミストの粒径が比較的小さいため、終端速度も比較的小さく、落下速度は遅くなっている。さらに、温度差により生じる上昇気流が温度差25℃の場合と比べてやや強まっている。しかしながら、依然として、温度差によって生じる上昇気流がミストを上昇させようとする力がミストの重さを超えないようになっており、ミストの落下を抑制してミストの滞留が比較的長く生じている。上昇気流がやや強くなっているため、局所的にミストが滞留層Cから浮き上がるような状態となっている部分があるが、全体としてはミストの滞留層Cが引き続き維持されている。よって、仮想滞留空間58内において上面に滞留境界面66を形成するようなミストの滞留層が形成されている。局所的にミストが上昇している部分があったとしても仮想滞留空間58の半分以上の領域において滞留境界面66が維持されている場合には、滞留境界面66が形成されているとする。
【0069】
図19のパターン例Gにおいては、ミストのザウター平均粒径が1.2μm、且つ温度差5℃(ミストの温度20℃且つミストの供給開始前の室内の温度15℃)のとき、ミスト供給部10から供給されたミストが仮想滞留空間58内において浮き上がるように拡散している状態となっている。温度差により生じる上昇気流は比較的小さい。しかしながら、ミストの粒径がさらに小さいため、終端速度がさらに小さく、落下速度はさらに遅くなっている。よって、ミストの重さが軽く、わずかな上昇気流により拡散している。よって、仮想滞留空間58内において上面に滞留境界面66を形成するようなミストの滞留層Cは形成されていない。
図19のパターン例Hにおいては、ミストのザウター平均粒径が1.2μm、且つ温度差25℃(ミストの温度40℃且つミストの供給開始前の室内の温度15℃)のとき、ミスト供給部10から供給されたミストが仮想滞留空間58内において浮き上がるように拡散している状態となっている。ミストの粒径がさらに小さいため、終端速度もさらに小さく、落下速度はさらに遅くなっている。その上、温度差により生じる上昇気流がさらに強くなっている。よって、ミストの重さが軽く、より強い上昇気流により拡散している。よって、仮想滞留空間58内において上面に滞留境界面66を形成するようなミストの滞留層Cは形成されていない。
図19のパターン例Iにおいては、ミストのザウター平均粒径が1.2μm、且つ温度差45℃(ミストの温度60℃且つミストの供給開始前の室内の温度15℃)のとき、ミスト供給部10から供給されたミストが仮想滞留空間58内において浮き上がるように拡散している状態となっている。ミストの粒径がさらに小さいため、終端速度もさらに小さく、落下速度はさらに遅くなっている。その上、温度差により生じる上昇気流がさらに強くなっている。よって、ミストの重さが軽く、さらに強い上昇気流により拡散している。よって、仮想滞留空間58内において上面に滞留境界面を形成するようなミストの滞留層Cは形成されていない。
【0070】
次に、
図20を参照して、浴槽本体6内の滞留空間4(又は仮想滞留空間等)において、ミストが滞留状態となっているか(上面に滞留境界面66を形成するようなミストの滞留層Cを形成しているか)否かの判定装置及びその判定方法について説明する。
図20に示すように、透過率の測定装置68を用いて浴槽本体6内の滞留空間4内部において測定された内部透過率と、滞留空間4外部において測定された外部透過率と、を比較し、外部透過率よりも内部透過率が低い場合に、滞留空間4内部にミストが滞留していると判定できる。より具体的には、内部透過率/外部透過率<1となることにより滞留空間4内部にミストが滞留していると判定される。
【0071】
例えば、
図19のパターン例Eに示すように、滞留空間4内部にミストが滞留している状態では、内部透過率が低下する。一方で、ミストは主に滞留空間4内部に留まっており、滞留境界面66より上方において測定される外部透過率は、比較的高い値となっている。よって、内部透過率/外部透過率<1となり、滞留空間4内部にミストが滞留していると判定される。
図19のパターン例Aに示すように、滞留空間4内部にミストが滞留せず、ミストが主に落下して消失している状態では、内部透過率及び外部透過率は、いずれも比較的高い値のままである。よって、内部透過率/外部透過率=1となり、滞留空間4内部にミストが滞留していると判定されない。
図19のパターン例Iに示すように、滞留空間4内部から外部にミストが拡散していく状態では、内部透過率及び外部透過率は、いずれも透過率がやや低い同様の値となると考えられる。よって、内部透過率/外部透過率=1となり、滞留空間4内部にミストが滞留していると判定されない。
【0072】
次に、
図20を参照して、透過率の測定装置68について説明する。
透過率の測定装置68は、滞留空間4内部に配置された第1レーザー装置70と、レーザーを受ける第1透過率計測装置72とを備えている。第1レーザー装置70と、第1透過率計測装置72とは、滞留空間4の上端より下方側に150mmの位置(例えば滞留空間4の深さに対して3割程度の深さ位置)において水平方向に150mm離れて配置されている。第1レーザー装置70と、第1透過率計測装置72とは、上面視で滞留空間4の中央近傍に配置される。第1レーザー装置70から発振されるレーザー光の強度に対し、第1透過率計測装置72で測定したレーザー光の強度を測定し、透過率を測定する。
透過率の測定装置68は、さらに、滞留空間4外部に配置された第2レーザー装置74と、レーザーを受ける第2透過率計測装置76とを備えている。第2レーザー装置74と、第2透過率計測装置76とは、滞留空間4の上端より上方側に150mmの位置(例えば滞留空間4の上端に対して。第1レーザー装置70及び第1透過率計測装置72と対称の位置)において水平方向に150mm離れて配置されている。第1レーザー装置70と、第1透過率計測装置72とは、上面視で滞留空間4の中央近傍に配置される。第2レーザー装置74から発振されるレーザー光の強度に対し、第2透過率計測装置76で測定したレーザー光の強度を測定し、透過率を測定する。なお、透過率の測定装置68は、滞留空間4内部に第1レーザー装置70と、第1透過率計測装置72とを配置しているが、滞留空間4に代えて上述のような仮想滞留空間内にこれらの装置を配置して仮想的に透過率の予想測定を行ってもよい。このときには、仮想滞留空間の外部に第2レーザー装置74と第2透過率計測装置76とが配置される。
より具体的な装置構成としては、キーエンス社製デジタルファイバアンプFS-N11MNから発せられたレーザー光を同社製FU-77TZ(第1レーザー装置70又は第2レーザー装置74)を通して発振し、同社製FU-77TZ(第1透過率計測装置72又は第2透過率計測装置76)にて受光する。受光した光はファイバアンプFS-N11MNへと返され、光量に応じて例えば1-5Vの電圧出力を行う。出力された電圧は、同社製NR-500シリーズNR-HA08にて計測し、PC上で0~100%の値にスケーリングする。透過率のデータは例えばサンプリング周期100msにて計測される。例えば、ミストをほぼ定量で供給開始してから15分以内において、最初に定常状態と判断できる30秒間の透過率のデータを平均して算出する。
【0073】
次に、
図21及び
図22を参照して、ミスト入浴と通常の湯船浴との使用者への熱の伝わり方の違いについて説明する。
図21においては、浴槽装置2の浴槽本体6内に使用者が座って入浴している状態において、40℃の水を通常の入浴水位(入浴した際に使用者の脇の上かつ肩の下になる水位で、例えば、入浴した際に450mmとなる)まではって湯船浴の入浴をした場合の水から使用者に伝わる熱流束と、40℃のミストを同じ浴槽本体6内に満たした状態(ミスト雰囲気状態)でミスト入浴をした場合の使用者に伝わる熱流束と、43℃のミストを同じ浴槽本体6内に満たした状態(ミスト雰囲気状態)でミスト入浴をした場合の使用者に伝わる熱流束と、45℃のミストを同じ浴槽本体6内に満たした状態(ミスト雰囲気状態)でミスト入浴をした場合の使用者に伝わる熱流束と、の時間経過を示している。縦軸は、熱流束[W/m
2]を示し、横軸は入浴開始からの時間[s]を示している。熱流束[W/m
2]は、平均的な体形の使用者の背中の中央部に計測部を配置し、使用者に伝わる熱流束を計測する。ミスト雰囲気状態は、浴槽本体6内に十分にミストが満たされている状態を示している。
時間0[S]から40℃の水で使用者が湯船浴をした場合には、熱流束が初期に急激に上昇する。よって、入浴開始時に使用者に与える熱の刺激が大きいことが分かる。一方で、ミスト入浴をした場合には、熱流束の初期の上昇は比較的抑えられ、緩やかに上昇する。よって、入浴開始時に使用者に与える熱の刺激が湯船浴に比べて小さいことが分かる。
また、40℃の水で使用者が湯船浴をした場合と、40℃のミストで使用者がミスト入浴をした場合とでは、40℃のミストの方が熱流束が低く、使用者の温度の体感が低くなる。40℃のミストのミスト入浴によれば、低い刺激でゆるやかに使用者の体を温めることができる。
【0074】
また、
図21に示すように、40℃の水で使用者が湯船浴をした場合と、43℃のミストで使用者がミスト入浴をした場合とでは、使用者に作用する熱流束が同程度となる。
図22においては、10分間湯船入浴又はミスト入浴をした後に使用者の皮膚温を測定した結果が示されている。40℃の水で使用者が湯船浴をした場合と、43℃のミストで使用者がミスト入浴をした場合とでは、使用者にほぼ同等の温まりを生じていることが分かる。このようにミスト入浴によれば、入浴開始時の加温された水による刺激を抑制し、体に優しい入浴を可能にする。例えば、使用者が43℃の水の中に入浴する場合は非常に熱く感じるため短時間しか入浴できないが、使用者が43℃のミストの中に入ってミスト入浴する場合には、やや低い温度に感じるため同じ温度の水と比べて長時間浸かることが可能になる。また、水と比べてミストは、やや低い温度の体感を使用者に与えるので、ゆるやかに使用者の体をやや遅い速度で温めることができ、温めによる使用者への体の負担も少ない。また、ミスト入浴によれば、使用者への水圧の負担が少なく、水によるような体への水圧の圧迫がないため、長時間のミスト入浴を可能にする。さらに、ミスト入浴によれば、水の表面がミストで覆われるような露天風呂のような視覚効果を使用者に与えることができ、贅沢さや癒し効果を使用者に与えることもできる。
【0075】
次に、本実施形態の構成による効果を説明する。
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミスト生成部8及びミスト供給部10は、ミスト供給部10から滞留空間4に供給されたミストの温度とミストの供給開始前の水回り機器が使用される室内の温度との温度差が、0℃以上とされ、ミスト供給部10から供給されたミストが滞留空間4内に滞留されるように構成される。よって、加熱された状態のミストが、上方が開放された滞留空間4内に滞留できる。
【0076】
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記温度差によって生じる上昇気流のミストを上昇させようとする力がミスト供給部10から供給されたミストの粒径に応じたミストの重さを超えないようにでき、ミストが上昇気流により滞留空間4から拡散することを抑制することができる。よって、加熱された状態のミストが滞留空間4内により確実に滞留できる。
【0077】
このように構成された本発明の一実施形態においては、温度差が100℃以下且つミストの温度が100℃以下とされる。これにより、浴槽本体6の洗浄にミストを使用する時に、ミストの洗浄性を向上できる。
【0078】
このように構成された本発明の一実施形態においては、温度差が、60℃以下とされることにより、水回り機器の使用者がミストにより火傷する可能性を低減することができる。さらに、例えば、水回り機器の浴槽本体6の洗浄にミストを使用する時に、火傷する可能性を低減しつつもミストの洗浄性を向上できる。
【0079】
このように構成された本発明の一実施形態においては、水回り機器の使用者がミストにより火傷する可能性をより低減することができる。
【0080】
このように構成された本発明の一実施形態においては、水又はミストを60℃以上に加熱することにより、仮に菌が水中に含まれていた場合でも、少なくとも一部の菌(例えばレジオネラ菌)の影響を抑制できる。
【0081】
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミストのザウター平均粒径が3.1μm以上とされることにより、ミスト供給部10から供給されたミストの内、滞留空間4内に滞留されずに滞留空間4外へ浮遊するミストの割合を減少できるとともに、ミストのザウター平均粒径が40μm以下とされることにより、滞留空間4内に滞留されずに滞留空間4の底へ比較的早期に落下するミストの割合を減少できる。従って、ミストが滞留空間4内に滞留される割合を増加させ、ミストが滞留空間4内に効率的に滞留されるようにできる。
【0082】
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミストのザウター平均粒径が3.6μm以上とされることにより、ミスト供給部10から供給されたミストの内、滞留空間4内に滞留されずに滞留空間4外へ浮遊するミストの割合をより減少できるとともに、ミストのザウター平均粒径が20μm以下とされることにより、滞留空間4内に滞留されずに滞留空間4の底へ比較的早期に落下するミストの割合をより減少できる。従って、ミストが滞留空間4内に滞留される割合をより増加させ、ミストが滞留空間4内により効率的に滞留されるようにできる。
【0083】
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミストのザウター平均粒径が4.1μm以上とされることにより、ミスト供給部10から供給されたミストの内、滞留空間4内に滞留されずに滞留空間4外へ浮遊するミストの割合をさらに減少できるとともに、ミストのザウター平均粒径が10μm以下とされることにより、滞留空間4内に滞留されずに滞留空間4の底へ比較的早期に落下するミストの割合をさらに減少できる。従って、ミストが滞留空間4内に滞留される割合をさらに増加させ、ミストが滞留空間4内にさらに効率的に滞留されるようにできる。
【0084】
次に、
図23により、本発明の第2実施形態によるミスト発生装置を備えた水回り機器である洗い場床装置を説明する。第2実施形態は、本発明によるミスト発生装置を浴室の洗い場床に適用した例である。
図23は本発明の第2実施形態によるミスト発生装置を備えた洗い場床装置の斜視図である。
【0085】
第2実施形態によるミスト発生装置は、上述した第1実施形態によるミスト発生装置と基本構造が類似しているため、本発明の第2実施形態の第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様な部分については図面に同じ参照符号を付する又は図示を省略して説明を省略する。本発明の第2実施形態による洗い場床装置の動作(作用)や各測定方法等については、第1実施形態による浴槽装置の動作(作用)や各測定方法等と同様であるので説明を省略する。
【0086】
図23に示すように、本発明の第2実施形態によるミスト発生装置1を備えた水回り機器である洗い場床装置102は、浴室3に設けられる。洗い場床装置102には、水の供給を行う供給装置107が設けられている。洗い場床装置102は、さらに、ミスト発生装置1の後述するミスト供給部10から供給されるミストを受け入れる滞留空間104を形成する洗い場床本体106を備えている。
【0087】
洗い場床本体106は、洗い場床装置102が使用される室内空間5に向けて上方が開放された滞留空間104を形成する。洗い場床本体106は、浴室の壁面、浴槽本体の外壁、浴室のドア等により形成され、内側の滞留空間104内に水が流れることができるようになっている。このような構造により、洗い場床本体106は、ミストが滞留空間104内に滞留されるようになっている。
【0088】
ミスト発生装置1は、洗い場床装置102に用いられる。ミスト発生装置1は、ミスト生成部8と、ミスト供給部10とを備えている。ミスト生成部8及びミスト供給部10は、ミスト供給部10から滞留空間104に供給されたミストの温度とミストの供給開始前の洗い場床装置102が使用される室内の温度との温度差が、0℃以上とされ、ミスト供給部10から供給されたミストが洗い場床本体106の滞留空間104内に滞留されるように構成される。
図23において上面に滞留境界面66を形成するようなミストの滞留層Cを例示している。
【0089】
このように構成された第2実施形態の構造によれば、加熱されたミストが洗い場床本体106の滞留空間104内に滞留される。例えば、加熱されたミストにより洗い場床本体106を温めて洗い場床や滞留空間104を暖房できる。また、加熱されたミストにより、使用者が滞留空間104においてミスト浴をすることもできる。また例えば、加熱されたミストにより、洗い場床本体106を温めるとともに洗い場床本体106に付着した汚れを比較的高い洗浄性能で洗浄又は汚れを落としやすくすることができる。
【0090】
次に、
図24により、本発明の第3実施形態によるミスト発生装置を備えた水回り機器であるシャワールーム装置を説明する。第3実施形態は、本発明によるミスト発生装置をシャワールームに適用した例である。
図24は本発明の第3実施形態によるミスト発生装置を備えたシャワールーム装置の斜視図である。
【0091】
第3実施形態によるミスト発生装置は、上述した第1実施形態によるミスト発生装置と基本構造が類似しているため、本発明の第3実施形態の第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様な部分については図面に同じ参照符号を付する又は図示を省略して説明を省略する。本発明の第3実施形態によるシャワールーム装置の動作(作用)や各測定方法等については、第1実施形態による浴槽装置の動作(作用)や各測定方法等と同様であるので説明を省略する。
【0092】
図24に示すように、本発明の第3実施形態によるミスト発生装置1を備えた水回り機器であるシャワールーム装置202は、シャワールーム203に設けられる。シャワールーム203は、上面視で一辺が0.8m~2m程度の長方形の領域に、半円径の領域が追加された形状に形成され、比較的狭いスペースの室内を形成する。シャワールーム装置202には、水の供給を行う供給装置207が設けられている。シャワールーム装置202は、さらに、ミスト発生装置1の後述するミスト供給部10から供給されるミストを受け入れる滞留空間204を形成するシャワールーム本体206を備えている。
【0093】
シャワールーム本体206は、シャワールーム装置202が使用される室内空間205に向けて上方が開放された滞留空間204を形成する。シャワールーム本体206は、シャワールームの壁面、シャワールームのドア等により形成され、内側の滞留空間204内に水が流れることができるようになっている。このような構造により、シャワールーム本体206は、ミストが滞留空間204内に滞留されるようになっている。なお、本実施形態によれば、シャワールーム203の室内空間205と滞留空間204との境が構造により明確に区画されていなくても、滞留空間204が規定できることを示している。室内空間205と滞留空間204との境は、ミスト発生装置1のミスト供給能力を考慮して異なる位置に設定される。滞留空間204は、ミスト発生装置1のミスト供給能力を考慮してミストを溜めようとする空間として任意に設定できる。このような滞留空間204は、室内空間205に向けて上方が開放された滞留空間である。なお、本実施形態に限られず、室内空間205と滞留空間204との境が構造により明確に区画されていなくても、滞留空間204は、同様の趣旨により設定可能である。
【0094】
ミスト発生装置1は、シャワールーム装置202に用いられる。ミスト発生装置1は、ミスト生成部8と、ミスト供給部10とを備えている。ミスト生成部8及びミスト供給部10は、ミスト供給部10から滞留空間204に供給されたミストの温度とミストの供給開始前の水回り機器が使用される室内の温度との温度差が、0℃以上とされ、ミスト供給部10から供給されたミストがシャワールーム本体206の滞留空間204内に滞留されるように構成される。
図24において上面に滞留境界面66を形成するようなミストの滞留層Cを例示している。
【0095】
このように構成された第3実施形態の構造によれば、加熱されたミストがシャワールーム本体206の滞留空間204内に滞留される。例えば、加熱されたミストによりシャワールーム本体206を温めてシャワールームの床や滞留空間204を暖房できる。また、加熱されたミストにより、使用者が滞留空間204においてミスト浴をすることもできる。また、加熱されたミストが比較的高い位置まで滞留されることにより、使用者が滞留空間204内において内部の椅子208に座った状態や立った状態でもミスト浴をできる。また例えば、加熱されたミストにより、シャワールーム本体206を温めるとともにシャワールーム本体206に付着した汚れを比較的高い洗浄性能で洗浄又は汚れを落としやすくできる。
【0096】
次に、
図25により、本発明の第4実施形態によるミスト発生装置を備えた水回り機器である洗面装置を説明する。第4実施形態は、本発明によるミスト発生装置を洗面装置に適用した例である。
図25は本発明の第4実施形態によるミスト発生装置を備えた洗面装置の斜視図である。
【0097】
第4実施形態によるミスト発生装置は、上述した第1実施形態によるミスト発生装置と基本構造が類似しているため、本発明の第4実施形態の第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様な部分については図面に同じ参照符号を付する又は図示を省略して説明を省略する。本発明の第4実施形態による洗面装置の動作(作用)や各測定方法等については、第1実施形態による浴槽装置の動作(作用)や各測定方法等と同様であるので説明を省略する。
【0098】
図25に示すように、本発明の第4実施形態によるミスト発生装置1を備えた水回り機器である洗面装置302は、洗面室303のカウンター等に設けられる。洗面装置302には、水の供給を行う供給装置307が設けられている。洗面装置302は、さらに、ミスト発生装置1の後述するミスト供給部10から供給されるミストを受け入れる滞留空間304を形成する洗面本体306を備えている。
【0099】
洗面本体306は、洗面装置302が使用される室内空間305に向けて上方が開放された滞留空間304を形成する。洗面本体306は、内側の滞留空間304内に水が貯水できるようになっている。このような構造により、洗面本体306は、ミストが滞留空間304内に滞留されるようになっている。
【0100】
ミスト発生装置1は、洗面装置302に用いられる。ミスト発生装置1は、ミスト生成部8と、ミスト供給部10とを備えている。ミスト生成部8及びミスト供給部10は、ミスト供給部10から滞留空間304に供給されたミストの温度とミストの供給開始前の水回り機器が使用される室内の温度との温度差が、0℃以上とされ、ミスト供給部10から供給されたミストが洗面本体306の滞留空間304内に滞留されるように構成される。
図25において上面に滞留境界面66を形成するようなミストの滞留層Cを例示している。
【0101】
このように構成された第4実施形態の構造によれば、加熱されたミストが洗面本体306の滞留空間304内に滞留される。例えば、加熱されたミストを洗面本体306の滞留空間304内に滞留させ、使用者が顔又は手、足等の体の一部をミストに当てることにより、保湿、洗浄性能の向上、温浴、美容効果等を得られる。また、加熱されたミストにより、使用者が滞留空間304において体の一部のミスト浴をすることもできる。また例えば、加熱されたミストにより、洗面本体306を温めるとともに洗面本体306内の滞留空間304内に付着した汚れを比較的高い洗浄性能で洗浄又は汚れを落としやすくできる。
【0102】
次に、
図26により、本発明の第5実施形態によるミスト発生装置を備えた水回り機器であるキッチンシンク装置を説明する。第5実施形態は、本発明によるミスト発生装置をキッチンシンク装置に適用した例である。
図26は本発明の第5実施形態によるミスト発生装置を備えたキッチンシンク装置の斜視図である。
【0103】
第5実施形態によるミスト発生装置は、上述した第1実施形態によるミスト発生装置と基本構造が類似しているため、本発明の第5実施形態の第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様な部分については図面に同じ参照符号を付する又は図示を省略して説明を省略する。本発明の第5実施形態によるキッチンシンク装置の動作(作用)や各測定方法等については、第1実施形態による浴槽装置の動作(作用)や各測定方法等と同様であるので説明を省略する。
【0104】
図26に示すように、本発明の第5実施形態によるミスト発生装置1を備えた水回り機器であるキッチンシンク装置402は、洗面室403に設けられる。キッチンシンク装置402には、水の供給を行う供給装置407が設けられている。キッチンシンク装置402は、さらに、ミスト発生装置1の後述するミスト供給部10から供給されるミストを受け入れる滞留空間404を形成するキッチンシンク本体406を備えている。
【0105】
キッチンシンク本体406は、キッチンシンク装置402が使用される室内空間405に向けて上方が開放された滞留空間404を形成する。キッチンシンク本体406は、内側の滞留空間404内に水が貯水できるようになっている。このような構造により、キッチンシンク本体406は、ミストが滞留空間404内に滞留されるようになっている。
【0106】
ミスト発生装置1は、キッチンシンク装置402に用いられる。ミスト発生装置1は、ミスト生成部8と、ミスト供給部10とを備えている。ミスト生成部8及びミスト供給部10は、ミスト供給部10から滞留空間404に供給されたミストの温度とミストの供給開始前の水回り機器が使用される室内の温度との温度差が、0℃以上とされ、ミスト供給部10から供給されたミストがキッチンシンク本体406の滞留空間404内に滞留されるように構成される。
図26において上面に滞留境界面66を形成するようなミストの滞留層Cを例示している。
【0107】
このように構成された第5実施形態の構造によれば、加熱されたミストがキッチンシンク本体406の滞留空間404内に滞留される。例えば、加熱されたミストをキッチンシンク本体406の滞留空間404内に滞留させ、食器類、洗いたい機器等をミストに当てることにより、洗いたい対象物を温め、付着した汚れを比較的高い洗浄性能で洗浄することができる。また、加熱されたミストを洗いたい対象物に当てることで、洗浄に至らないまでも、汚れを落ちやすくできる。また、加熱されたミストをキッチンシンク本体406の滞留空間404内に滞留させ、キッチンシンク本体406内の使用者の手指を温めながら、使用者が作業できる。また例えば、加熱されたミストにより、キッチンシンク本体406を温めるとともにキッチンシンク本体406内の滞留空間404内に付着した汚れを比較的高い洗浄性能で洗浄又は汚れを落としやすくできる。
【符号の説明】
【0108】
1 ミスト発生装置
2 浴槽装置
4 滞留空間
6 浴槽本体
6b 溢れ面
6c 溢れ部
8 ミスト生成部
10 ミスト供給部
24 室内温度計測器
102 洗い場床装置
104 滞留空間
202 シャワールーム装置
203 シャワールーム
204 滞留空間
302 洗面装置
304 滞留空間
402 キッチンシンク装置
404 滞留空間
A 使用者
B 水
C 滞留層