(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】画像形成方法及びインクセット
(51)【国際特許分類】
D06P 5/00 20060101AFI20240903BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240903BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20240903BHJP
D06M 15/507 20060101ALI20240903BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20240903BHJP
D06P 5/30 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
D06P5/00 104
B41M5/00 114
B41M5/00 132
C09D11/322
D06M15/507
D06M15/53
D06P5/30
(21)【出願番号】P 2020090059
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仁藤 謙
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中村 正樹
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-053975(JP,A)
【文献】特開2002-302870(JP,A)
【文献】特開2004-124293(JP,A)
【文献】特表2020-524757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06P 5/00
B41M 5/00
C09D 11/322
D06M 15/507
D06M 15/53
D06P 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)少なくとも一部の表面が前処理された前処理布帛であって、
SP値が11未満の疎水性樹脂に由来する疎水性ブロックと、SP値が11以上の親水性樹脂に由来する親水性ブロックとを有し、前記疎水性樹脂のSP値と前記親水性樹脂のSP値の差が1.0以上であるブロック共重合体を含む前処理布帛を準備する工程と、
2)前記前処理布帛の表面に、インクジェット方式で、顔料を含むインクを付与する工程とを有し、
前記ブロック共重合体
の重量平均分子量が1000~30000であり、
前記ブロック共重合体はアニオン性基をさらに有する、
画像形成方法。
【請求項2】
前記疎水性樹脂は、ポリエステルである、
請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記ブロック共重合体における前記疎水性ブロックの含有量は、前記親水性ブロックの含有量よりも多い、
請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記疎水性ブロックの含有量は、前記疎水性ブロックと前記親水性ブロックの合計含有量に対して60~95質量%である、
請求項3に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記疎水性ブロックの重量平均分子量は、500~10000であり、
前記親水性ブロックの重量平均分子量は、500~6000である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記ブロック共重合体のガラス転移温度または融点は、25~70℃である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記親水性樹脂は、ポリアルキレンオキサイドである、
請求項1~6のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記ブロック共重合体は、ウレタン結合を有しない、
請求項1~7のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前処理液と、顔料を含むインクとを有するインクセットであって、
前記前処理液は、
SP値が11未満の疎水性樹脂に由来する疎水性ブロックと、SP値が11以上の親水性樹脂に由来する親水性ブロックとを有し、前記疎水性樹脂のSP値と前記親水性樹脂のSP値の差が1.0以上であるブロック共重合体と、水とを含み、
前記ブロック共重合体
の重量平均分子量が1000~30000であり、
前記ブロック共重合体はアニオン性基をさらに有する、
インクセット。
【請求項10】
前記ブロック共重合体の含有量は、前記前処理液に対して2~40質量%である、
請求項9のいずれか一項に記載のインクセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前処理液、前処理布帛およびその製造方法、ならびに画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
捺染方法として、近年では、短時間で染色でき、生産効率が高いことなどから、インクジェット方式により布帛への画像形成を行う、所謂、インクジェット捺染が広く行われている。
【0003】
インクジェット捺染では、インクの微小液滴をインクジェット記録ヘッドから吐出させ、布帛に着弾させて画像形成を行う。そのようなインクジェット捺染で使用されるインクに含まれる色材の種類には、染料や顔料が含まれる。
【0004】
インクジェット捺染に用いられる染料インクは、通常、布帛の種類に応じた染料インクが用いられる。例えば、ポリエステル繊維を含む布帛には、分散染料インクが用いられ、綿、レーヨンなどのセルロース繊維を含む布帛には、反応性染料インクが用いられる。
【0005】
ところで、インクジェット捺染に用いられる布帛は、インクの定着性を高めたり、滲みを抑制したりする観点から、前処理液で処理されることがある。例えば、ポリエステル布帛用の前処理液としては、ポリエステル樹脂粒子と、スチレン-ブタジエン樹脂エマルジョンとを含む前処理液が知られている(特許文献1参照)。また、ポリエステル繊維と綿との混紡布帛用の前処理液としては、ポリエステル樹脂粒子と、ウレタン樹脂エマルジョンとを含む前処理液が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-90150号公報
【文献】特開2019-90149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、布帛の種類によらず、高いインクの定着性を付与しうる前処理液が望まれている。具体的には、極性の異なる繊維の混紡布帛や極性の異なる種々の布帛に対しても、高いインクの定着性を付与し、良好な洗濯堅牢性を有し、インクの滲みが抑制された画像を形成可能にする前処理液が望まれている。
【0008】
しかしながら、特許文献1の前処理液は、ポリエステル繊維などの疎水性繊維を含む布帛に対するインクの定着性を付与しうるものの、綿などの親水性繊維を含む布帛に対するインクの定着性を付与しうるものではなかった。
【0009】
一方、特許文献2の前処理液は、ポリエステル繊維と綿の混紡布帛に対するインクの定着性をある程度は付与しうるものの、良好な洗濯堅牢性を有し、インクの滲みが抑制された画像を形成可能にするものではなかった。
【0010】
また最近では、インクジェット捺染では、染料インクに代わり、顔料インクが用いられることがある。顔料インクは、染料インクとは異なり、布帛の繊維中に溶解または繊維と反応するわけではないため、インクの定着性が(染料インクよりも)得られにくい。そのため、前処理液によって高いインクの定着性を付与できることが特に望まれている。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、極性の異なる種々の布帛に対しても高いインクの定着性を付与することができ、良好な洗濯堅牢性を有し、かつインクの滲みが少ない画像を形成可能な前処理液、前処理布帛およびその製造方法、ならびに画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の前処理液、前処理布帛およびその製造方法、画像形成方法に関する。
【0013】
本発明の前処理液は、インクジェット捺染に使用される布帛の前処理液であって、SP値が11未満の疎水性樹脂に由来する疎水性ブロックと、SP値が11以上の親水性樹脂に由来する親水性ブロックとを有し、前記疎水性樹脂のSP値と前記親水性樹脂のSP値の差が1.0以上であるブロック共重合体と、水とを含有する。
【0014】
本発明の前処理布帛は、少なくとも一部の表面が前処理された、インクジェット捺染インクが付与されるための布帛であって、SP値が11未満の疎水性樹脂に由来する疎水性ブロックと、SP値が11以上の親水性樹脂に由来する親水性ブロックとを有し、前記疎水性ブロックのSP値と前記親水性ブロックのSP値の差が1.0以上であるブロック共重合体を含む。
【0015】
本発明の前処理布帛の製造方法は、布帛の少なくとも一部の表面に、本発明の前処理液を付与して、前処理布帛を得る工程を含む。
【0016】
本発明の前処理布帛の製造方法は、1)少なくとも一部の表面が前処理された前処理布帛であって、SP値が11未満の疎水性樹脂に由来する疎水性ブロックと、SP値が11以上の親水性樹脂に由来する親水性ブロックとを有し、前記疎水性樹脂のSP値と前記親水性樹脂のSP値の差が1.0以上であるブロック共重合体を含む前処理布帛を準備する工程と、2)前記前処理布帛の表面に、インクジェット方式で、色材を含むインクを付与する工程とを有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、極性の異なる布帛に対しても高いインクの定着性を付与することができ、良好な洗濯堅牢性を有し、かつインクの滲みが少ない画像を形成可能な前処理液、前処理布帛およびその製造方法、ならびに画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
前述の通り、特許文献2に示されるような、親水性のバインダ樹脂と、疎水性のバインダ樹脂とを含む前処理液は、極性の異なる布帛に対してインクの定着性を十分に付与するものではなく、良好な洗濯堅牢性や十分なインクの滲み抑制効果を付与するものではなかった。
【0019】
これに対し、本発明者らは、ポリエステルなどのSP値が11未満の疎水性樹脂に由来する疎水性ブロックと、SP値が11以上の親水性樹脂に由来する親水性ブロックとを有するブロック共重合体を含む前処理液は、布帛の極性にかかわらず、良好な洗濯堅牢性と滲み抑制効果とを付与しうることを見出した。
【0020】
この理由は明らかではないが、以下のように推測される。
疎水性のバインダ樹脂と親水性のバインダ樹脂とを含む特許文献2の前処理液を親水性繊維を含む布帛に付与した場合、親水性のバインダ樹脂は布帛に結着するが、疎水性のバインダ樹脂は結着しない。そのような布帛を用いて得られる画像形成物の表面に摩擦を加えると、(布帛に結着していない)疎水性のバインダ樹脂がインク成分とともに剥がれやすく、洗濯堅牢性や滲み抑制効果が得られにくい。
【0021】
これに対し、疎水性ブロックと親水性ブロックを有するブロック共重合体を含む本発明の前処理液を親水性繊維を含む布帛に付与した場合、当該ブロック共重合体の親水性ブロックは布帛に結着し、疎水性ブロックは(布帛に直接には結着しなくても)親水性ブロックと結合している。そのため、得られる画像形成物の表面に摩擦を加えても、疎水性ブロックはインク成分とともに剥がれにくく、洗濯堅牢性や滲み抑制効果が得られやすい。
【0022】
また、当該ブロック共重合体を含む前処理液を、ポリエステル繊維などの疎水性繊維を含む布帛に付与した場合でも、当該ブロック共重合体の疎水性ブロックは布帛に結着しやすく、親水性ブロックは疎水性ブロックと結合しているため、摩擦が加えられても脱離しにくい。つまり、本発明の前処理液は、綿などの親水性繊維を含む布帛と、ポリエステル繊維などの疎水性繊維を含む布帛の両方に対して、高いインクの定着性を付与し、良好な洗濯堅牢性と滲み抑制効果を付与しうる。以下、本発明の構成について、説明する。
【0023】
1.前処理液
前処理液は、特定のブロック共重合体と、水とを含む。
【0024】
1-1.特定のブロック共重合体
特定のブロック共重合体は、SP値が11未満の疎水性樹脂に由来する疎水性ブロックと、SP値が11以上の親水性樹脂に由来する親水性ブロックとを有する。そして、(親水性ブロックを構成する)親水性樹脂のSP値(SPB)と、(疎水性ブロックを構成する)疎水性樹脂のSP値(SPA)との差ΔSP(SPB-SPA)は、1.0以上であることが好ましい。ΔSPが1.0以上であるブロック共重合体は、綿などの親水性繊維を含む布帛と、ポリエステル繊維などの疎水性繊維を含む布帛の両方に対して、高いインクの定着性を付与し、良好な洗濯堅牢性と滲み抑制効果を付与しうる。同様の観点から、ΔSPは、2.0以上であることがより好ましい。
【0025】
SP値とは、溶解度パラメータ(Solubility Parameter)と呼ばれるものである。本発明における樹脂材料のSP値は、分子引力定数から求める方法、すなわち、樹脂分子を構成する各官能基または原子団の分子引力定数(G)およびモル容積(V)から、SP値=ΣG/Vにより求める方法(D.A.Small,J.Appl.Chem.,3,71,(1953)、K.L.Hoy,J.Paint Technol.,42,76(1970))により求めることができる。
【0026】
また、疎水性ブロックが2種類以上ある場合(例えば、疎水性樹脂1に由来する疎水性ブロック1と疎水性樹脂2に由来する疎水性ブロック2とを有する場合)、下記式に基づいて疎水性ブロックのSP値を求めることができる。
疎水性ブロックのSP値=(SP1×c1)+(SP2×c2)
(SP1:疎水性樹脂1のSP値、
SP2:疎水性樹脂2のSP値、
c1:疎水性ブロック1の含有割合(質量比)、
c2:疎水性ブロック2の含有割合(質量比))
親水性ブロックのSP値も同様にして特定することができる。
【0027】
[疎水性ブロック]
疎水性ブロックは、SP値が11未満の疎水性樹脂に由来するブロックである。
【0028】
SP値が11未満の疎水性樹脂のSP値は、SP値が11未満であり、かつ使用する布帛を構成する疎水性繊維のSP値±2以下であることが好ましく、±1以下であることがより好ましく、±0.5以下であることがさらに好ましい。布帛を構成する疎水性繊維が、例えばSP値が10.7のポリエステル繊維である場合、疎水性ブロックを構成する疎水性樹脂のSP値は、8.7~11であることが好ましく、9.5~11であることがより好ましく、10.2~11であることがさらに好ましい。
【0029】
SP値が11未満の疎水性樹脂の例には、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(6.2)、ポリイソブチレン(7.7)、ポリエチレン(8.1)、ポリイソプレン(8.15)、ポリラウリルメタクリレート(8.2)、ポリステアリルメタクリレート(8.2)、ポリイソボニルメタクリレート(8.2)、ポリ-t-ブチルメタクリレート(8.2)、ポリブタジエン(8.4)、ポリスチレン(9.1)、ポリエチルメタクリレート(9.1)、ポリエチルアクリレート(9.2)、ポリメチルメタクリレート(9.3)、ポリメチルアクリレート(9.7)、ポリ塩化ビニル(10.1)、ポリエステル(10.7)が含まれる。中でも、ポリエステルが好ましい。
【0030】
ポリエステルは、特に制限されず、ジカルボン酸と、ジオールとを反応させて得られる重合体である。すなわち、ポリエステルは、ジカルボン酸に由来する成分単位と、ジオールに由来する成分単位とを含む。
【0031】
(ジカルボン酸に由来する成分単位)
ジカルボン酸に由来する成分単位は、特に制限されないが、ポリエステル繊維を含む布帛との親和性を高める観点では、芳香族ジカルボン酸に由来する成分単位を含むことが好ましい。
【0032】
芳香族ジカルボン酸の例には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸(オルトフタル酸)、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などが含まれ、好ましくはテレフタル酸である。
【0033】
これらの芳香族ジカルボン酸は、アニオン性基(例えばカルボキシル基、スルホニル基など)をさらに有してもよい。アニオン性基を有する芳香族ジカルボン酸の例には、トリメリット酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸、スルホフタル酸などが含まれる。
【0034】
芳香族ジカルボン酸に由来する成分単位は、ジカルボン酸に由来する成分単位の総モル数に対して5~100モル%、好ましくは10~100モル%でありうる。
【0035】
ジカルボン酸に由来する成分単位は、必要に応じて上記以外の他のジカルボン酸に由来する成分単位をさらに含んでもよい。他のジカルボン酸の例には、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸や、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸が含まれる。
【0036】
(ジオールに由来する成分単位)
ジオールに由来する成分単位は、特に制限されないが、ポリエステル繊維を含む布帛との親和性を高める観点では、脂肪族ジオールに由来する成分単位を含むことが好ましい。
【0037】
脂肪族ジオールは、炭素原子数が1~10、好ましくは1~4の脂肪族ジオールであることが好ましい。そのような脂肪族ジオールの例には、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどのアルキレンジオールが含まれ、好ましくはエチレングリコールである。
【0038】
脂肪族ジオールは、前述と同様に、アニオン性基をさらに有してもよい。アニオン性基を有する脂肪族ジオールの例には、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(CAS番号:10191-18-1)、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールなどが含まれる。
【0039】
脂肪族ジオールに由来する成分単位は、ジオールに由来する成分単位の総モル数に対して5~100モル%、好ましくは10~100モル%でありうる。
【0040】
ジオールに由来する成分単位は、必要に応じて上記以外の他のジオールに由来する成分単位をさらに含んでもよい。他のジオールの例には、キシリレングリコールなどの芳香族ジオールや、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオールが含まれる。
【0041】
疎水性ブロックを構成するポリエステルは、布帛に含まれるポリエステル繊維と同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
【0042】
(疎水性ブロックを構成するポリエステル)
疎水性ブロック(またはポリエステル)の重量平均分子量は、特に制限されないが、500~10000であることが好ましい。疎水性ブロックの重量平均分子量が500以上であると、疎水性ブロックの特性が発現しやすく、例えばポリエステル繊維などの疎水性繊維を含む布帛に対して良好に結着しやすい。疎水性ブロックの重量平均分子量が10000以下であると、画像形成物の風合いが損なわれにくい。同様の観点から、疎水性ブロックの重量平均分子量は、500~5000であることがより好ましい。
【0043】
疎水性ブロックの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリスチレン換算して測定することができる。
具体的には、高速液体クロマトグラフィー(日本Water社製の「Waters 2695(本体)」および「Waters 2414(検出器)」)に、カラム(Shodex(登録商標) GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm))を3本直列に配置し、測定することができる。
【0044】
ブロック共重合体における疎水性ブロックの含有量は、ブロック共重合体における親水性ブロックの含有量よりも多いことが好ましい。具体的には、疎水性ブロックの含有量は、疎水性ブロックと親水性ブロックの合計含有量に対して60~95質量%であることが好ましい。疎水性ブロックの含有量が60質量%以上であると、ブロック共重合体の、ポリエステル繊維などの疎水性繊維を含む布帛に対する結着性を高めやすく、95質量%以下であると、親水性ブロックの含有量が少なすぎないため、例えば綿などの親水性繊維を含む布帛に対する結着性が損なわれにくい。同様の観点から、疎水性ブロックの含有量は、疎水性ブロックと親水性ブロックの合計含有量に対して70~90質量%であることがより好ましい。
【0045】
[親水性ブロック]
親水性ブロックは、SP値が11以上の親水性樹脂に由来するブロックである。
【0046】
SP値が11以上の親水性樹脂は、SP値が11以上であり、かつΔSPが上記範囲を満たすものであればよく、特に制限されないが、使用する布帛を構成する親水性繊維のSP値の±2.0以下であることが好ましく、±1.0以下であることがより好ましく、±0.5以下であることがさらに好ましい。布帛を構成する親水性繊維が、SP値が15.7のセロース繊維である場合、親水性ブロックを構成する親水性樹脂のSP値は、13.7~17.7であることが好ましく、14.7~16.7であることがより好ましく、15.2~16.2であることがさらに好ましい。
【0047】
SP値が11以上の親水性樹脂の例には、ポリアルキレンオキサイドやポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドンなどが含まれ、好ましくはポリアルキレンオキサイドである。
【0048】
ポリアルキレンオキサイドは、特に制限されないが、ポリ(C2~6アルキレンオキサイド)であることが好ましい。ポリアルキレンオキサイドの例には、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(トリメチレンオキサイド)、ポリ(テトラメチレンオキサイド)、ポリ(ヘキサメチレンオキサイド)、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体、ポリ(プロピレンオキサイド)のエチレンオキシド付加物、およびエチレンオキサイドとテトラヒドロフランの共重合体が含まれる。中でも、綿などの親水性繊維を含む布帛との親和性が高く、良好に結着させやすい観点では、ポリエチレンオキサイドが好ましい。
【0049】
親水性ブロック(または親水性樹脂)の重量平均分子量は、特に制限されないが、500~6000であることが好ましい。親水性ブロックの重量平均分子量が500以上であると、親水性ブロックの特性が発現しやすいため、例えば綿などの親水性繊維を含む布帛に対して良好に結着させやすい。親水性ブロックの重量平均分子量が6000以下であると、画像形成物の風合いが損なわれにくい。同様の観点から、親水性ブロックの重量平均分子量は、500~5000であることがより好ましい。親水性ブロックの重量平均分子量は、前述と同様の方法で測定することができる。
【0050】
親水性ブロックの含有量は、疎水性ブロックと親水性ブロックの合計含有量に対して5~40質量%であることが好ましい。親水性ブロックの含有量が5質量%以上であると、綿などの親水性繊維を含む布帛に対する結着性を高めやすく、40質量%以下であると、疎水性ブロックの含有量が少なくなりすぎないので、ポリエステル繊維などの疎水性繊維を含む布帛に対する結着性が損なわれにくい。同様の観点から、親水性ブロックの含有量は、疎水性ブロックと親水性ブロックの合計含有量に対して10~30質量%であることがより好ましい。
【0051】
[ブロック共重合体]
特定のブロック共重合体は、上記の疎水性ブロックと親水性ブロックとを有するが、ウレタン結合を有しないことが好ましい。ウレタン結合を有する樹脂は、光劣化により布帛に対する定着性が損なわれやすいからである。
【0052】
特定のブロック共重合体の重量平均分子量は、特に制限されないが、例えば1000~30000であることが好ましい。ブロック共重合体の重量平均分子量が1000以上であると、布帛に対する結着性を高めやすく、30000以下であると、布帛のごわつきが顕著にならず、風合いが損なわれにくい。同様の観点から、特定のブロック共重合体の重量平均分子量は、2000~25000であることがより好ましい。
【0053】
特定のブロック共重合体のガラス転移温度Tgまたは融点Tmは、特に制限されないが、25~70℃であることが好ましく、30~50℃であることがより好ましい。Tgが一定以上であると、洗濯時の樹脂の脱落を防止しやすく、一定以下であると、画像形成物の風合いが損なわれにくい。
【0054】
ブロック共重合体のTgまたはTmは、DSC(示差走査熱量測定装置)を用いて-30~100℃の温度域で昇温速度10℃/分の条件で昇温させたときの吸熱ピークから、ガラス転移温度TgまたはTmを読み取ることによって特定することができる。
【0055】
ブロック共重合体は、前述の通り、アニオン性基を有することが好ましい。具体的には、疎水性ブロックと親水性ブロックの少なくとも一方、好ましくは両方が、アニオン性基を有することが好ましい。
【0056】
アニオン性基の含有量は、特に制限されないが、ブロック共重合体の水溶性が高くなりすぎることによる布帛への定着性や洗濯堅牢性の低下を抑制しうる範囲に設定されることが好ましい。
【0057】
特定のブロック共重合体の含有量は、特に限定されないが、前処理液に対して2~40質量%であることが好ましい。当該ブロック共重合体の含有量が2質量%以上であると、例えば洗濯後でも十分なインクの定着性を維持でき(洗濯堅牢性に優れ)、40質量%以下であると、布帛へ付着量が多くなりにくいため、布帛の風合いが損なわれにくい。同様の観点から、特定のブロック共重合体の含有量は、前処理液に対して5~20質量%であることがより好ましい。
【0058】
1-2.他の成分
前処理液は、必要に応じて上記以外の他の成分をさらに含んでもよい。他の成分の例には、溶剤や防腐剤、pH調整剤などが含まれる。
【0059】
(溶剤)
溶剤は、特に制限されないが、保湿性や粘度調整などの観点から、水溶性有機溶剤を含むことが好ましい。特にインクジェット方式で前処理液を布帛に付与する場合、前処理液は、水溶性有機溶剤をさらに含むことが好ましい。
【0060】
水溶性有機溶剤の例には、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル)、アミン類(例えば、エタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド)、複素環類(例えば、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、2-オキサゾリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジン)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)、スルホン類(例えば、スルホラン)が含まれる。
【0061】
水溶性有機溶剤の含有量は、前処理液に含まれる溶媒全体(水と溶剤の合計)に対して20~50質量%としうる。
【0062】
(防腐剤)
防腐剤の例には、芳香族ハロゲン化合物(例えば、Preventol CMK)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(例えば、PROXEL GXL)などが含まれる。
【0063】
(pH調整剤)
pH調整剤の例には、クエン酸、クエン酸ナトリウム、塩酸、水酸化ナトリウムなどが含まれる。
【0064】
なお、布帛の素材の風合いを損なわないようにする観点では、前処理液は、水溶性樹脂や水分散性樹脂(樹脂粒子)などのバインダ樹脂を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、例えば前処理液に対して5質量%未満であること、好ましくは0質量%以下であることをいう。
【0065】
1-3.物性
前処理液の、25℃における粘度は、布帛への付与方法にもよって適宜調整されうる。例えば、前処理液をインクジェット方式で付与する場合、前処理液の粘度は、4~20mPa・sであることが好ましい。前処理液の粘度は、E型粘度計により、25℃で測定することができる。
【0066】
2.前処理布帛の製造方法および前処理布帛
[前処理布帛の製造方法]
前処理布帛は、布帛の少なくとも一部の表面に、本発明の前処理液を付与して、前処理布帛を得る工程を経て得ることができる。
【0067】
布帛を構成する繊維素材は、特に制限されないが、綿(セルロース繊維)、麻、羊毛、絹などの天然繊維や、レーヨン、ビニロン、ナイロン、アクリル、ポリウレタン、ポリエステルまたはアセテートなどの化学繊維でありうる。布帛は、これらの繊維を、織布、不織布、編布など、いずれの形態にしたものであってもよい。また、布帛は、2種類以上の繊維の混紡織布または混紡不織布であってもよい。中でも、布帛は、綿およびポリエステル繊維の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0068】
(前処理液の付与)
布帛への前処理液の付与は、布帛の表面全体に行ってもよいし、インクを付与する領域のみに選択的に行ってもよい。前処理液の付与量は、特に制限されず、前処理液中のブロック共重合体の含有量やインクの付与量などに応じて調整されうるが、例えば前述のブロック共重合体の付着量が、未処理の布帛に対して好ましくは0.1~20g/m2、より好ましく0.5~10g/m2となるように設定される。
【0069】
前処理液の付与方法は、特に制限されず、スプレー法、コーター法、インクジェット法、グラビア法のいずれであってもよい。例えば、後述する画像形成方法において、インク付与工程と連続的に行えるようにする観点では、インクジェット法が好ましく、短時間で所定量の前処理液を付与する観点では、コーター法が好ましい。
【0070】
(前処理液の乾燥)
次いで、布帛に付与した前処理液を乾燥させる。
【0071】
乾燥方法は、特に制限されず、温風、ホットプレート、またはヒートローラーによる加熱でありうる。短時間で十分に溶媒成分を除去する観点では、加熱乾燥が好ましい。乾燥温度は、100~130℃でありうる。
【0072】
[前処理布帛]
得られる前処理布帛は、少なくとも表面に、前述のブロック共重合体を含む。
【0073】
それにより、ブロック共重合体は、親水性繊維を含む布帛に対しては親水性ブロックを介して結着し、疎水性繊維を含む布帛に対しては疎水性ブロックを介して結着しうる。また、親水性ブロックと疎水性ブロックのうち一方が布帛と結着しなくても、他方と結合しているため、布帛の表面に摩擦を加えても脱落しにくい。そのようなブロック共重合体を含む前処理布帛は、高い洗濯堅牢性を有し、インクの滲みも少なくすることができる。
【0074】
3.画像形成方法および画像形成物
[画像形成方法]
本発明の画像形成方法は、1)本発明の前処理布帛を準備する工程と、2)前処理布帛の表面に、インクジェット方式でインクを付与する工程とを有する。画像形成は、例えば、本発明の前処理液とインクとを含む、後述するインクセットを用いることができる。
【0075】
1)の工程について
まず、前処理布帛を準備する。前処理布帛は、前述の製造方法により布帛に前処理液を付与して得てもよいし、予めオフライン(別工程)で準備しておいた前処理布帛を使用してもよい。
【0076】
2)の工程について
次いで、得られた前処理布帛の処理面(前処理が施された表面)に、インクジェット方式でインクを付与する。具体的には、インクジェット記録ヘッドからインクを吐出させて、インクの液滴を付与する。
【0077】
インクは、後述するように、顔料などの色材と、水とを含む水系インクである。インクの構成の詳細については、後述する。
【0078】
そして、前処理布帛に付与したインクを乾燥および定着させて、色材層を形成する。
【0079】
乾燥および定着は、加熱により行うことが好ましい。すなわち、乾燥方法は、特に制限されず、ヒーター、温風乾燥機、加熱ローラなどを用いた方法でありうる。中でも、温風乾燥機とヒーターを用いて、布帛の両面を加熱して乾燥させることが好ましい。
【0080】
乾燥温度は、特に制限されないが、付与したインクに含まれる水などの溶媒成分を十分に除去する観点から、110℃以上であることが好ましく、130~180℃であることがより好ましい。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、例えば0.5~10分間程度としうる。
【0081】
[画像形成物]
本発明の画像形成方法で得られる画像形成物は、前処理布帛と、色材層とを有する。
【0082】
色材層は、前処理布帛上に、それに付与された特定のブロック共重合体を介して配置されており、良好に結着している。
【0083】
色材層の組成は、後述するインクの固形分の組成と同じである。
【0084】
4.インクセット
本発明のインクセットは、本発明の前処理液と、インクとを含む。
【0085】
インクは、色材と、水とを含む。
【0086】
4-1.色材
色材は、特に制限されず、染料であってもよいし、顔料などの分散性色材であってもよい。中でも、本発明の前処理液による定着性向上効果が得られやすく、耐候性に優れる画像を形成しやすい観点などから、分散性色材が好ましく、顔料がより好ましい。
【0087】
顔料は、特に限定されないが、例えばカラーインデックスに記載される下記番号の有機顔料または無機顔料でありうる。
【0088】
赤またはマゼンタ顔料の例には、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36が含まれる。
【0089】
青またはシアン顔料の例には、Pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17-1、22、27、28、29、36、60が含まれる。
【0090】
緑顔料の例には、Pigment Green 7、26、36、50が含まれる。黄顔料の例には、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94,95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193が含まれる。
【0091】
黒顔料の例には、Pigment Black 7、28、26が含まれる。
【0092】
顔料の市販品の例には、クロモファインイエロー2080、5900、5930、AF-1300、2700L、クロモファインオレンジ3700L、6730、クロモファインスカーレット6750、クロモファインマゼンタ6880、6886、6891N、6790、6887、クロモファインバイオレット RE、クロモファインレッド6820、6830、クロモファインブルーHS-3、5187、5108、5197、5085N、SR-5020、5026、5050、4920、4927、4937、4824、4933GN-EP、4940、4973、5205、5208、5214、5221、5000P、クロモファイングリーン2GN、2GO、2G-550D、5310、5370、6830、クロモファインブラックA-1103、セイカファストエロー10GH、A-3、2035、2054、2200、2270、2300、2400(B)、2500、2600、ZAY-260、2700(B)、2770、セイカファストレッド8040、C405(F)、CA120、LR-116、1531B、8060R、1547、ZAW-262、1537B、GY、4R-4016、3820、3891、ZA-215、セイカファストカーミン6B1476T-7、1483LT、3840、3870、セイカファストボルドー10B-430、セイカライトローズR40、セイカライトバイオレットB800、7805、セイカファストマルーン460N、セイカファストオレンジ900、2900、セイカライトブルーC718、A612、シアニンブルー4933M、4933GN-EP、4940、4973(大日精化工業製);KET Yellow 401、402、403、404、405、406、416、424、KET Orange 501、KET Red 301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、336、337、338、346、KET Blue 101、102、103、104、105、106、111、118、124、KET Green 201(大日本インキ化学製);Colortex Yellow 301、314、315、316、P-624、314、U10GN、U3GN、UNN、UA-414、U263、Finecol Yellow T-13、T-05、Pigment Yellow1705、Colortex Orange 202、Colortex Red101、103、115、116、D3B、P-625、102、H-1024、105C、UFN、UCN、UBN、U3BN、URN、UGN、UG276、U456、U457、105C、USN、Colortex Maroon601、Colortex BrownB610N、Colortex Violet600、Pigment Red 122、ColortexBlue516、517、518、519、A818、P-908、510、Colortex Green402、403、Colortex Black 702、U905(山陽色素製);Lionol Yellow1405G、Lionol Blue FG7330、FG7350、FG7400G、FG7405G、ES、ESP-S(東洋インキ製)、Toner Magenta E02、Permanent RubinF6B、Toner Yellow HG、Permanent Yellow GG-02、Hostapeam BlueB2G(ヘキストインダストリ製);Novoperm P-HG、Hostaperm Pink E、Hostaperm Blue B2G(クラリアント製);カーボンブラック#2600、#2400、#2350、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#850、MCF88、#750、#650、MA600、MA7、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA77、#52、#50、#47、#45、#45L、#40、#33、#32、#30、#25、#20、#10、#5、#44、CF9(三菱化学製)が含まれる。
【0093】
顔料は、自己分散性顔料であってもよい。自己分散性顔料は、顔料粒子の表面を、親水性基を有する基で修飾したものであり、顔料粒子と、その表面に結合した親水性を有する基とを有する。
【0094】
親水性基の例には、カルボキシル基、スルホン酸基、およびリン含有基が含まれる。リン含有基の例には、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、ホスファイト基、ホスフェート基が含まれる。中でも、前処理液に含まれる酸の金属塩との親和性が高い観点から、リン含有基が好ましく、リン酸基またはホスホン酸基がより好ましい。
【0095】
リン含有基を有する基は、例えば特開2012-51357号の段落0026~0035に記載のものと同様のものであってよい。例えば、(親水性基として)ホスホン酸基を有する基の例には、ジェミナルビスホスホン酸基やビシナルビスホスホン酸基、具体的には、-CQ(PO3H2)2を有する基、-X-(CH2)n-CQ(PO3H2)2を有する基、-X-(CH2)n-CQ(PO3H2)2を有する基、-X-Sp-(CH2)n-CQ(PO3H2)2を有する基、-N-[(CH2)m(PO3H2)]2を有する基、-CR=C(PO3H2)2を有する基、-X-[CQ(PO3H2)2]pを有する基などが含まれる。
【0096】
なお、上記式において、
Qは、H、R、OR、SRまたはNR2(Rは、H、C1~C6アルキル基またはアリール基)、好ましくはH、OHまたはNH2であり;
nは、0~9、好ましくは0~3、より好ましくは0または1であり;
Xは、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アルキレン基、ビニリデン基、アルカリーレン基、アラルキレン基、環式または複素環式基、好ましくはフェニレン基、ナフタレン基またはビフェニレン基などのアリーレン基であり;
Spは、-CO2-、-O2C-、-CO-、-OSO2-、-SO3-、-SO2-、-SO2C2H4O-、-SO2C2H4S-、-SO2C2H4NR-、-O-、-S-、-NR-、-NRCO-、-CONR-、NRCO2-、-O2CNR-、-NRCONR、-N(COR″)CO-、-CON(COR)-、-NRCOCH(CH2CO2R″)-、アリーレン基、アルキレン基などの連結基であり(Rは、H、C1~C6アルキル基またはアリール基);
pは、1~4、好ましくは2である。
【0097】
(親水性基として)リン酸基を有する基の例には、上記ホスホン酸基を有する基として挙げた基において、ホスホン酸基をリン酸基に置き換えたものが含まれる。
【0098】
自己分散性顔料の市販品の例には、Cabot社Cab-0-Jet(登録商標)200K、250C、260M、270V(スルホン酸基含有自己分散性顔料)、Cab-0-Jet(登録商標)300K(カルボン酸基含有自己分散性顔料)、Cab-0-Jet(登録商標)400K、450C、465M、470V、480V(リン酸基含有自己分散性顔料)が含まれる。
【0099】
顔料の含有量は、特に限定されないが、インクの粘度を上記範囲内に調整しやすく、かつ高濃度の画像を形成可能にする観点では、インクに対して1.5~15質量%であることが好ましい。顔料の含有量が1.5質量%以上であると、高濃度の画像を形成しやすく、15質量%以下であると、インクの粘度が高くなりすぎないため、射出安定性が損なわれにくい。顔料の含有量は、同様の観点から、インクに対して5~15質量%であることがより好ましい。
【0100】
4-2.他の成分
インクは、必要に応じて他の成分をさらに含みうる。他の成分の例には、溶剤や顔料分散剤、防腐剤、pH調整剤などが含まれる。
【0101】
(溶剤)
溶媒は、特に制限されないが、好ましくは水溶性有機溶剤である。水溶性有機溶剤は、前処理液に用いられる水溶性有機溶剤と同様のものを用いることができる。中でも、インクを前処理布帛の内部まで浸透させやすくする観点、インクジェット方式での射出安定性を損なわれにくくする観点では、インクが乾燥により増粘しにくいことが好ましい。したがって、インクは、沸点が200℃以上の高沸点溶剤を含むことが好ましい。
【0102】
沸点が200℃以上の高沸点溶剤は、沸点が200℃以上である水溶性有機溶剤であればよく、ポリオール類やポリアルキレンオキサイド類であることが好ましい。
【0103】
沸点が200℃以上のポリオール類の例には、1,3-ブタンジオール(沸点208℃)、1,6-ヘキサンジオール(沸点223℃)、ポリプロピレングリコールなどの2価のアルコール類;グリセリン(沸点290℃)、トリメチロールプロパン(沸点295℃)などの3価以上のアルコール類が含まれる。
【0104】
沸点が200℃以上のポリアルキレンオキサイド類の例には、
ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点202℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点245℃)、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点305℃)、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点256℃);および
ポリプロピレングリコールなどの2価のアルコール類のエーテルや、グリセリン(沸点290℃)、ヘキサントリオールなどの3価以上のアルコール類のエーテルが含まれる。
【0105】
(顔料分散剤)
顔料が自己分散性顔料ではない場合、顔料を分散させやすくする観点から、インクは、顔料分散剤をさらに含むことが好ましい。
【0106】
顔料分散剤は、顔料の分散性に優れる観点から、高分子分散剤であることが好ましい。高分子分散剤の種類は、特に制限されず、カチオン性分散剤、アニオン性分散剤、非イオン性分散剤のいずれであってもよい。中でも、前処理布帛に含まれるブロック共重合体がアニオン性基を有する場合は、カチオン性分散剤または非イオン性分散剤が好ましい。
【0107】
カチオン性分散剤は、カチオン性基(第2級アミノ基(イミノ基)、第3級アミノ基または第4級アンモニウム基)を有する化合物または重合体でありうる。カチオン性分散剤の例には、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムブロミドなどのテトラアルキル4級アンモニウム塩;アミン塩、トリアルキル4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルキノリニウム塩、カチオン性基を有する(メタ)アクリレート(共)重合体などが含まれる。
【0108】
アニオン性分散剤は、カルボン酸基、リン含有基およびスルホン酸基からなる群より選ばれる親水性基を有する高分子分散剤である。
【0109】
カルボン酸基を有する高分子分散剤の例には、ポリカルボン酸またはその塩が含まれる。ポリカルボン酸の例には、アクリル酸またはその誘導体、マレイン酸またはその誘導体、イタコン酸またはその誘導体、フマル酸またはその誘導体から選ばれる単量体の(共)重合体およびこれらの塩が含まれる。共重合体を構成する他の単量体の例には、スチレンやビニルナフタレンが含まれる。
【0110】
リン含有基を有する高分子分散剤は、リン酸基またはホスホン酸基を有する高分子分散剤である。リン酸基またはホスホン酸基を有する高分子分散剤の例には、アルキルリン酸エステルまたはその塩が含まれる。
【0111】
スルホン酸基を有する高分子分散剤の例には、芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸のホルマリン縮合物が含まれ、好ましくは芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物である。芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物の例には、縮合ナフタレンスルホン酸ナトリウムが含まれる。
【0112】
アニオン性分散剤の酸価は、特に制限されないが、前処理布帛に付着した酸の金属塩との親和性を高める観点では、適度に高いことが好ましく、例えば10~300mgKOH/g以下、好ましくは10~150mgKOH/gとしうる。アニオン性分散剤の酸価は、JIS K 0070の酸価測定により測定することができる。
【0113】
非イオン性分散剤の例には、ポリオキシアルキレン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが含まれる。
【0114】
顔料分散剤の含有量は、顔料に対して20~60質量%であることが好ましい。顔料分散剤の含有量が20質量%以上であると、顔料などの固体着色剤の分散性を十分に高めやすく、60質量%以下であると、粘度の過剰な上昇を抑制しやすい。顔料分散剤の含有量は、同様の観点から、顔料に対して20~40質量%であることが好ましい。
【0115】
(防腐剤、pH調整剤)
防腐剤、pH調整剤は、前処理液に用いられうる防腐剤、pH調整剤と同様のものを使用できる。
【0116】
なお、インクが、顔料分散剤や自己分散性顔料を含む場合、良好な定着性が得られやすい。それにより、従来のように、インクが、水溶性樹脂や樹脂粒子などのバインダ樹脂(例えば分子量が1万を超えるもの)を実質的に含まなくすることができる。実質的に含まないとは、例えばインクの全固形分に対して2質量%以下であることをいう。それにより、ゴアつきがなく、布帛の素材の風合いを損なうことなく、布帛に対する良好な定着性を有する画像形成物を得ることができる。
【0117】
4-3.物性
インクの、25℃における粘度は、インクジェット方式による射出性が良好となる程度であればよく、特に制限されないが、3~20mPa・sであることが好ましく、4~12mPa・sであることがより好ましい。インクの粘度は、E型粘度計により、25℃で測定することができる。
【実施例】
【0118】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0119】
1.前処理液の調製
<材料の準備>
(樹脂)
(ブロック共重合体1の調製)
ジメチルテレフタレートを97g、エチレングリコールを20g、無水酢酸ナトリウム0.2g、チタニウム触媒(堺化学SPC-124)0.1gを添加し、不活性ガス置換の後、165~220℃の温度でエステル交換し、同時に常圧でメタノールを留去した。
次いで、メチルポリエチレングリコール750を36g、メチルポリエチレングリコール1820を46g、ポリエチレングリコール1500を193g添加し、不活性ガス置換の後、160~240℃の温度で縮合反応を行い、過剰のグリコール成分を留去した。その後、冷却して、ポリエチレンテレフタレート(PET)・ポリエチレンオキサイド(PEO)ブロック共重合体(ブロック共重合体1)を含む溶液を得た。得られたブロック共重合体の物性は、以下の通りであった。
Tg(またはTm):25℃
Mw:6200
疎水性ブロック(PET)のSP値:10.7、Mw:1100
親水性ブロック(PEO)のSP値:15.0、Mw:1500
親水性ブロックの含有量:70質量%
アニオン性基:無
【0120】
(ブロック共重合体2の調製)
チタニウム触媒(堺化学SPC-124)を0.02gとした以外はブロック共重合体1と同様の方法でポリエチレンテレフタレート(PET)・ポリエチレンオキサイド(PEO)ブロック共重合体(ブロック共重合体2)を得た。得られたブロック共重合体の物性は、以下の通りであった。
Tg(またはTm):5℃
Mw:2500
疎水性ブロック(PET)のSP値:10.7、Mw:700
親水性ブロック(PEO)のSP値:15.0、Mw:1500
親水性ブロックの含有量:70質量%
アニオン性基:無
【0121】
(ブロック共重合体3の調製)
ジメチルテレフタレートを145g、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムを40g、エチレングリコールを40g、無水酢酸ナトリウム0.2g、チタニウム触媒(堺化学SPC-124)0.01gを添加し、不活性ガス置換の後、165~220℃の温度でエステル交換し、同時に常圧でメタノールを留去した。
次いで、メチルポリエチレングリコール750を21g、メチルポリエチレングリコール1820を26g、ポリエチレングリコール1500を110g添加し、不活性ガス置換の後、160~240℃の温度で縮合反応を行い、過剰のグリコール成分を留去した。その後、冷却して、固形分としてポリエチレンテレフタレート(PET)・ポリエチレンオキサイド(PEO)ブロック共重合体(ブロック共重合体3)を得た。得られたブロック共重合体の物性は、以下の通りであった。
Tg(またはTm):35℃
Mw:9500
疎水性ブロック(PET)のSP値:10.7、Mw:1500
親水性ブロック(PEO)のSP値:15.0、Mw:1500
親水性ブロックの含有量:40質量%
アニオン性基:あり
【0122】
(ブロック共重合体4の調製)
チタニウム触媒(堺化学SPC-124)を0.1gとした以外はブロック共重合体3と同様の方法でポリエチレンテレフタレート(PET)・ポリエチレンオキサイド(PEO)ブロック共重合体(ブロック共重合体4)を得た。得られたブロック共重合体の物性は、以下の通りであった。
Tg(またはTm):40℃
Mw:20000
疎水性ブロック(PET)のSP値:10.7、Mw:2300
親水性ブロック(PEO)のSP値:15.0、Mw:1500
親水性ブロックの含有量:40質量%
アニオン性基:無し
【0123】
(ブロック共重合体5の調製)
親水性ブロック(PEO)の含有量が40質量%となるように、疎水性ブロック(PET)と親水性ブロック(PEO)の仕込み比を変更した以外はブロック共重合体1と同様の方法でポリエチレンテレフタレート(PET)・ポリエチレンオキサイド(PEO)ブロック共重合体(ブロック共重合体5)を得た。得られたブロック共重合体の物性は、以下の通りであった。
Tg(またはTm):32℃
Mw:6200
疎水性ブロック(PET)のSP値:10.7、Mw:1100
親水性ブロック(PEO)のSP値:15.0、Mw:1500
親水性ブロックの含有量:40質量%
アニオン性基:無
【0124】
(ブロック共重合体6の調製)
5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムを用いなかった以外はブロック共重合体3と同様にしてポリエチレンテレフタレート(PET)・ポリエチレンオキサイド(PEO)ブロック共重合体(ブロック共重合体6)を得た。得られたブロック共重合体の物性は、以下の通りであった。
Tg(またはTm):35℃
Mw:9500
疎水性ブロック(PET)のSP値:10.7、Mw:1500
親水性ブロック(PEO)のSP値:15.0、Mw:1500
親水性ブロックの含有量:40質量%
アニオン性基:無し
【0125】
(ブロック共重合体7の調製)
PEGの代わりに、PPG1000(和光純薬)を用いた以外はブロック共重合体1と同様の方法でポリエチレンテレフタレート(PET)・ポリプロピレンオキサイド(PPO)ブロック共重合体(ブロック共重合体7)を得た。得られたブロック共重合体の物性は、以下の通りであった。
Tg(またはTm):27℃
Mw:6500
疎水性ブロック(PET)のSP値:10.7、Mw:1100
親水性ブロック(PPO)のSP値:15.0、Mw:1000
親水性ブロックの含有量:70質量%
アニオン性基:無
【0126】
MD2000(バイナロール社製):ポリエステル樹脂エマルジョン(Tg:67℃、数平均分子量:18×103、樹脂濃度40質量%)
スーパーフレックス300(第一工業製薬社製):ポリウレタン樹脂エマルジョン(Tg:-42℃、樹脂濃度30質量%)
PEG2000(関東化学社製):ポリエチレングリコール
【0127】
樹脂のTg(またはTm)や重量平均分子量、ブロックのSP値や重量平均分子量は、以下の方法で測定した。
【0128】
(TgまたはTm)
得られた樹脂分散液から分離した樹脂について、DSC (メトラー・トレド社製)を用いて-30~100℃の温度域で昇温速度10℃/分の条件で昇温させたときの吸熱ピークから、ガラス転移温度Tgを読み取った。
【0129】
(重量平均分子量)
樹脂の重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフィー(日本Water社製の「Waters 2695(本体)」および「Waters 2414(検出器)」)に、カラム(Shodex(登録商標) GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm))を3本直列に配置し、測定することができる。
【0130】
(SP値)
ブロックのSP値は、上記分子引力定数から求める方法により求めた。
【0131】
(溶剤)
エチレングリコール(沸点197.6℃)
グリセリン(沸点290℃)
【0132】
(他の成分)
防腐剤:プロキセルGXL(1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン)
pH調整剤:クエン酸Na水和物
【0133】
<前処理液A~K、M~Oの調製>
表1に示される樹脂、溶剤および他の成分を、表1に示される組成となるように混合して、前処理液A~K、M~Oを得た。
【0134】
<前処理液Lの調製>
ブロック共重合体に代えて、ポリエステルとしてMD2000と、ポリオキシエチレンとしてPEG200(関東化学社製)とを6:4の質量比で混合して用いた以外は前処理液Aと同様にして、前処理液Lを得た。
【0135】
得られた前処理液A~Gを表1に示し、前処理液H~Oの組成を表2に示す。
【表1】
【表2】
【0136】
2.インクの調製
<インクの調製>
顔料濃度30質量%のカチオン性カーボンブラック分散体(4級アンモニウム塩分散剤で分散させたカーボンブラック、分散剤の含有量は顔料に対して30質量%)を10質量%、グリセリン10質量%、エチレングリコール25質量%、防腐剤(プロキセルGXL)およびpH調整剤(クエン酸Na水和物)を各適量添加し、イオン交換水で合計100質量%となるように調製して、インクを得た。
【0137】
3.画像形成および評価
<試験1~24>
(1)前処理
以下の布帛を準備した。
布帛1:綿100%の布
布帛2:ポリエステル100%の布
布帛3:ナイロン6
【0138】
次いで、表3に示される布帛の表面に、表2に示される種類の前処理液を、前処理液の付量が30g/m2になるようにインクジェット方式で付与した。なお、粘度の高い前処理液については、スプレー方式で付与した。その後、110℃で2分間乾燥させた。それにより、前処理布帛を得た。
【0139】
(2)インクの付与、乾燥および定着
次いで、画像形成装置として、インクジェット用ヘッド(コニカミノルタヘッド KM1024iMAE)を有するインクジェットプリンターを準備した。そして、表3に示されるインクを、上記インクジェット用ヘッドのノズルから吐出させて、前処理布帛上にベタ画像を形成した。具体的には、主走査540dpi×副走査720dpiにて、細線格子、諧調、およびベタ部を含んだ画像(全体で200mm×200mm)を形成した。dpiとは、2.54cm当たりのインク液滴(ドット)の数を表す。吐出周波数は、22.4kHzとした。
【0140】
その後、インクを付与した布帛を、ベルト搬送式乾燥機にて150℃で3分間乾燥させた。それにより、画像形成物を得た。
【0141】
<評価>
試験1~24で得られた画像形成物について、洗濯堅牢性、滲みおよび風合いを、以下の方法で評価した。
【0142】
(洗濯堅牢性)
画像形成物の洗濯堅牢性は、家庭用洗濯機で1回洗濯後(水による洗濯)の画像形成物と、洗濯していない画像形成物とを対比して、色落ちを評価した。そして、以下の評価基準に基づいて評価した。
◎:水濯後の色落ちが全くない
〇:水濯後の色落ちが軽微であるかまたはほとんどなく、実用上全く問題ないレベルである
△:水濯後の色落ちがあるが、実用上問題ないレベルである
×:水濯後の色落ちが顕著であり、実用上問題となるレベルである
△以上であれば、許容範囲とした。
【0143】
(滲み)
画像形成物の滲みは、当該画像形成した細線格子部分を目視観察して評価した。そして、以下の評価基準に基づいて評価した。
〇:滲みが発生していない
△:軽微な滲みが発生しているが、実用上問題ないレベルである
×:滲みが発生しており、実用上問題となるレベルである
△以上であれば、許容範囲とした。
【0144】
(風合い)
得られた画像形成物と生地の風合いを手指で触って、官能的に評価した。評価は、以下の基準に基づいて行った。
○:生地本来の柔らかさを維持しており、ほとんど(画像形成前と)変わらない
△:画像形成前と比べて少し硬くなっているが、生地の風合いは損なわれておらず、実用上問題ないレベル
×:画像形成前と比べて硬くなっており、生地の風合いが損なわれており、実用上問題となるレベル
△以上であれば、許容範囲とした。
【0145】
試験1~24の評価結果を表3に示す。
【0146】
【0147】
表3に示されるように、所定のブロック共重合体を含む前処理液を用いた試験1~18の画像形成物(本発明)は、いずれもインクの定着性に優れるため、良好な洗濯堅牢性を有し、かつ滲みも少なく、風合いも良好であることがわかる。
【0148】
これに対し、所定のブロック共重合体を含まない前処理液を用いた試験19~24の画像形成物(比較例)は、いずれもインクの定着性が低いため、少なくとも洗濯堅牢性が低いことがわかる。
【0149】
本発明によれば、極性の異なる種々の布帛に対しても高いインクの定着性を付与することができ、良好な洗濯堅牢性を有し、かつインクの滲みが少ない画像を形成可能な前処理液を提供することができる。