(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】マスターバッチ、繊維含有樹脂組成物、繊維強化樹脂成形体、繊維強化樹脂発泡成形体及び繊維強化樹脂発泡成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/22 20060101AFI20240903BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20240903BHJP
C08J 9/04 20060101ALI20240903BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20240903BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C08J3/22 CES
C08J3/22 CFG
C08J5/04 CEP
C08J9/04 101
C08J9/04 CFD
C08L1/02
C08K3/04
(21)【出願番号】P 2020115024
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】木村 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 豊
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 啓信
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/150907(WO,A1)
【文献】特開2012-241055(JP,A)
【文献】特開2000-264975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28
C08J 9/00-9/42
B29B 11/16;15/08-15/14
C08J 5/04-5/10;5/24
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)、前記熱可塑性樹脂(A)とは異なる熱可塑性樹脂(B)、セルロース繊維およびカーボンブラックを主成分とする炭素系粒子を含有する樹脂組成物からなるマスターバッチであって、
熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、セルロース繊維およびカーボンブラックを主成分とする炭素系粒子の合計100質量%に対して、
熱可塑性樹脂(A)が10~50質量%、熱可塑性樹脂(B)が10~50質量%、セルロース繊維が30~79.99質量%およびカーボンブラックを主成分とする炭素系粒子が0.01~30質量%であり、
前記熱可塑性樹脂(A)が、結晶性の、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、
前記熱可塑性樹脂(B)が、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂及びポリスルホン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つの非晶性樹脂である、ことを特徴とするマスターバッチ。
【請求項2】
前記セルロース繊維の平均繊維幅が1000μm以下である、請求項1に記載のマスターバッチ。
【請求項3】
前記炭素系粒子が、窒素吸着比表面積50m
2/g以上でありかつpH8以下である、請求項1又は2に記載のマスターバッチ。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂(A)が、融点80℃以上の結晶性樹脂である、請求項1~3のいずれか1項に記載のマスターバッチ。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂(B)が、ガラス転移点が150℃以下でありかつ融点を持たない非晶性樹脂である、請求項1~4のいずれか1項に記載のマスターバッチ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のマスターバッチと、融点が100℃以上の熱可塑性樹脂(C)とを含有する繊維含有樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の繊維含有樹脂組成物を溶融成形してなる、繊維強化樹脂成形体。
【請求項8】
前記マスターバッチ中の熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、セルロース繊維およびカーボンブラックを主成分とする炭素系粒子と、熱可塑性樹脂(C)との合計100質量%に対して、
前記炭素系粒子の含有率が0.01~3質量%である、請求項7に記載の繊維強化樹脂成形体。
【請求項9】
請求項8に記載の繊維強化樹脂成形体によって形成されたセル壁と、該セル壁によって画定された複数の発泡セルとを有し、比重が1.5以下である、繊維強化樹脂発泡成形体。
【請求項10】
熱可塑性樹脂(A)、前記熱可塑性樹脂(A)とは異なる熱可塑性樹脂(B)、セルロース繊維およびカーボンブラックを主成分とする炭素系粒子を配合して樹脂組成物からなるマスターバッチを準備する工程(I)と、
前記マスターバッチと、融点が100℃以上の熱可塑性樹脂(C)とを、溶融混錬によって繊維含有樹脂組成物を得る工程(II)と、
前記繊維含有樹脂組成物を用いて超臨界成形法によって繊維強化樹脂発泡成形体を得る工程(III)と、
を有し、
前記熱可塑性樹脂(A)が、結晶性の、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、
前記熱可塑性樹脂(B)が、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂及びポリスルホン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つの非晶性樹脂である、繊維強化樹脂発泡成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスターバッチ、繊維含有樹脂組成物、繊維強化樹脂成形体、繊維強化樹脂発泡成形体及び繊維強化樹脂発泡成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース繊維は、植物由来の天然原料フィラーであり、低比重かつ高強度な樹脂用複合材料として注目されている。また、ポリエステル系樹脂中でセルロースを微細化して得られたセルロース繊維を高濃度で含有するマスターバッチが知られている。セルロース繊維は比重が小さいため、セルロース繊維を強化繊維として樹脂中に分散させた繊維強化樹脂は、高強度を実現しつつ他の強化繊維を用いた場合よりも軽量化できるという利点を有する。よって自動車などの移動体に用いられる部材を成形する材料として、マスターバッチや繊維強化樹脂組成物などの様々な研究、開発が進められている。
【0003】
例えば、微細セルロース繊維とカーボンブラックとを含有する微細セルロース繊維分散液の製造方法であって、セルロース繊維とカーボンブラックとを含有する原料分散液中でセルロース繊維を解繊して微細セルロース繊維分散液を製造する方法が提案されている(特許文献1)。本製造方法によれば、高い破断強度及び高い破断伸度を有する微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物を実現できるとされている。
【0004】
また、マトリックス樹脂と、該マトリックス樹脂中に分散したセルロース繊維と、ルチル型酸化チタンを主成分とする酸化チタン系粒子とを含有する成形体が提案されている(特許文献2)。本成形体では、セルロース繊維によって強度及び剛性を向上しつつ、白色顔料である酸化チタン系粒子によって高い白色度を発現できるとされている。
【0005】
酸化金属成形体としては、例えば、透明な硝子からなる容器本体の外表面に設けられた酸化亜鉛皮膜であって、波長420nmにおける透過率が70%以上、波長380nmにおける透過率が30%以下であるものが提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-122289号公報
【文献】特開2017-057273号公報
【文献】特開2019-147695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂とセルロース繊維を溶融混錬させると、未解繊繊維の塊が多数残存し、成形時に外観不良が発生する。また、セルロースの解繊には非常に強い剪断が必要であることから、マスターバッチを経ることで高濃度高粘度の状態下での混練により解繊を進行させるが、このとき解繊時の剪断発熱によりセルロースが茶色く着色したり、黒く焼けてしまうという問題点がある。このため、セルロース繊維を強化繊維として用いた繊維強化樹脂成形体は黄味が強く、上記従来技術では色味の改善が十分とは言えず、未だ改善の余地がある。特に近年、車両等に取り付けられる内装材などの成形品として、高強度且つ軽量でありながら、高い黒色度を発現して審美性を高めた繊維強化樹脂成形体が求められている。
【0008】
本発明の目的は、セルロース繊維によって高い機械的特性及び軽量化を実現しつつ、優れた外観、高い黒色度を実現することができるマスターバッチ、繊維含有樹脂組成物、繊維強化樹脂成形体、繊維強化樹脂発泡成形体及び繊維強化樹脂発泡成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、発明者らは鋭意研究を重ねた結果、異種の複数の熱可塑性樹脂に、セルロース繊維とカーボンブラックを主成分とする炭素系粒子とを添加してマスターバッチを製造し、得られたマスターバッチとベース樹脂とを混合して混合物中で上記セルロース繊維を解繊することで、セルロース繊維とカーボンブラックとの良好な相性によって凝集が防止され、その結果セルロース繊維及びカーボンブラックの分散性が向上し、成形体の外観が良好となると共に機械的強度を高めることができ、加えて、黄味が抑制された黒色度の高い外観が得られることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は以下の手段を提供する。
[1]熱可塑性樹脂(A)、前記熱可塑性樹脂(A)とは異なる熱可塑性樹脂(B)、セルロース繊維およびカーボンブラックを主成分とする炭素系粒子を含有する樹脂組成物からなるマスターバッチであって、
熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、セルロース繊維およびカーボンブラックを主成分とする炭素系粒子の合計100質量%に対して、
熱可塑性樹脂(A)が10~50質量%、熱可塑性樹脂(B)が10~50質量%、セルロース繊維が30~79.99質量%およびカーボンブラックを主成分とする炭素系粒子が0.01~30質量%である、ことを特徴とするマスターバッチ。
【0011】
[2]前記セルロース繊維の平均繊維幅が1000μm以下である、上記[1]に記載のマスターバッチ。
【0012】
[3]前記炭素系粒子が、窒素吸着比表面積50m2/g以上でありかつpH8以下である、上記[1]又は[2]に記載のマスターバッチ。
【0013】
[4]前記熱可塑性樹脂(A)が、融点80℃以上の結晶性樹脂である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のマスターバッチ。
【0014】
[5]前記熱可塑性樹脂(B)が、ガラス転移点が150℃以下でありかつ融点を持たない非晶性樹脂である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のマスターバッチ。
【0015】
[6]上記[1]~[5]のいずれかに記載のマスターバッチと、融点が100℃以上の熱可塑性樹脂(C)とを含有する繊維含有樹脂組成物。
【0016】
[7]上記[6]に記載の繊維含有樹脂組成物を溶融成形してなる、繊維強化樹脂成形体。
【0017】
[8]前記マスターバッチ中の熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、セルロース繊維およびカーボンブラックを主成分とする炭素系粒子と、熱可塑性樹脂(C)との合計100質量%に対して、
前記炭素系粒子の含有率が0.01~3質量%である、上記[7]に記載の繊維強化樹脂成形体。
【0018】
[9]上記[8]に記載の繊維強化樹脂成形体によって形成されたセル壁と、該セル壁によって画定された複数の発泡セルとを有し、比重が1.5以下である、繊維強化樹脂発泡成形体。
【0019】
[10]熱可塑性樹脂(A)、前記熱可塑性樹脂(A)とは異なる熱可塑性樹脂(B)、セルロース繊維およびカーボンブラックを主成分とする炭素系粒子を配合して樹脂組成物からなるマスターバッチを準備する工程(I)と、
前記マスターバッチと、融点が100℃以上の熱可塑性樹脂(C)とを、溶融混錬によって繊維含有樹脂組成物を得る工程(II)と、
前記繊維含有樹脂組成物を用いて超臨界成形法によって繊維強化樹脂発泡成形体を得る工程(III)と、
を有する、繊維強化樹脂発泡成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、セルロース繊維によって機械的特性を向上しつつ軽量化を実現し、更には高い黒色度を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0022】
<マスターバッチ>
本実施形態のマスターバッチは、熱可塑性樹脂(A)、前記熱可塑性樹脂(A)とは異なる熱可塑性樹脂(B)、セルロース繊維およびカーボンブラックを主成分とする炭素系粒子を含有する樹脂組成物からなる。このマスターバッチでは、好ましくは、熱可塑性樹脂(A)が10~50質量%、熱可塑性樹脂(B)が10~50質量%、セルロース繊維が30~79.99質量%およびカーボンブラックを主成分とする炭素系粒子が0.01~30質量%である。マスターバッチとは、セルロース繊維を高濃度で含有する樹脂組成物であって、粉砕されて、セルロース繊維強化樹脂の成形体を得る際にベース樹脂に配合される着色剤を意味する。
【0023】
[熱可塑性樹脂(A)]
上記マスターバッチ中の熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、セルロース繊維及び炭素系粒子の合計の質量を100質量%としたときの、熱可塑性樹脂(A)の含有率は、上述のように10質量%以上から50質量%以下までの範囲であってよく、好ましくは12質量%以上、より好ましくは14質量%以上、更に好ましくは16質量%以上の範囲としてよく、また、好ましくは48質量%以下、より好ましくは46質量%以下、更に好ましくは44質量%以下の範囲としてよい。熱可塑性樹脂(A)の含有率が10質量%未満であると、溶融時の流動性が著しく低下し、加工が困難となる。また、熱可塑性樹脂(A)の含有率が50質量%を超えると、セルロースの解繊性が低下し、凝集塊が多数発生する。したがって熱可塑性樹脂(A)の含有率を上記範囲内の値とする。
【0024】
熱可塑性樹脂(A)としては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ(1-ブテン)等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリアミド6(ナイロンー6)、ポリアミド66(ナイロン-66)、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド系樹脂;エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体等のエチレン・不飽和エステル系共重合体;エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体またはそのアイオノマー樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂等のポリ(メタ)アクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル等のフッ素系樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等のポリエーテル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリフェニレンオキシド樹脂やポリフェニレンスルフィド樹脂等のポリフェニレン系樹脂;ポリ酢酸ビニル樹脂;ポリアクリロニトリル樹脂;熱可塑性エラストマー等が挙げられる。また、これらの熱可塑性樹脂のうちから選択される1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
ポリオレフィン系樹脂は、少なくとも1種のオレフィンを重合してなるポリオレフィン樹脂であり、単独重合体であっても共重合体であってもよい。
このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、イソブテン(1-ブテン)を含む炭素原子数4~12のα-オレフィン、ブタジエン、イソプレン、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0026】
なお、炭素原子数4~12のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、2-メチル-1-プロペン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ペンテン、エチル-1-ペンテン、トリメチル-1-ブテン、メチルエチル-1-ブテン、1-オクテン、メチル-1-ペンテン、エチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ヘキセン、プロピル-1-ヘプテン、メチルエチル-1-ヘプテン、トリメチル-1-ペンテン、プロピル-1-ペンテン、ジエチル-1-ブテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセンなどが挙げられる。
【0027】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、ポリイソブテン樹脂、ポリイソプレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、などが挙げられる。これらの樹脂のうち、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0028】
密度もしくは形状で分類した場合、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)が挙げられ、このうち高密度ポリエチレンが好ましい。
【0029】
熱可塑性樹脂(A)は、耐熱性の観点からは、融点80℃以上の結晶性樹脂であるのが好ましく、90℃以上の結晶性樹脂であるのがより好ましく、100℃以上の結晶性樹脂であるのが更に好ましい。
【0030】
[熱可塑性樹脂(B)]
上記マスターバッチ中の熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、セルロース繊維及び炭素系粒子の合計の質量を100質量%としたときの、熱可塑性樹脂(B)の含有率は、上述のように10質量%以上から50質量%以下までの範囲であってよく、好ましくは12質量%以上、より好ましくは14質量%以上、更に好ましくは16質量%以上の範囲としてよく、また、好ましくは48質量%以下、より好ましくは46質量%以下、更に好ましくは44質量%以下の範囲としてよい。熱可塑性樹脂(B)の含有率が10質量%未満であると、セルロースの解繊性が低下し凝集塊が多数発生する。また、熱可塑性樹脂(A)の含有率が50質量%を超えると、溶融時の流動性が著しく低下し、加工が困難となる。したがって熱可塑性樹脂(B)の含有率を上記範囲内の値とする。
【0031】
非晶性樹脂(B)としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂等が挙げられる。また、これらの非晶性樹脂のうちから選択される1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
アクリル系樹脂としては、例えばポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリアクリル酸ナトリウム樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂などが挙げられ、これらのうちから選択される1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
熱可塑性樹脂(A)が結晶性樹脂である場合、熱可塑性樹脂(B)は非晶性樹脂であるのが好ましい。結晶性樹脂である熱可塑性樹脂(A)と非晶性樹脂である熱可塑性樹脂(B)を併用することにより、マスターバッチにおけるセルロース繊維の分散性が向上し、後述する繊維強化樹脂成形体の優れた外観が得られると共に、機械的特性を向上することができる。
【0034】
熱可塑性樹脂(B)は、溶融加工性と耐熱性の観点からは、ガラス転移点が150℃以下でありかつ融点を持たない非晶性樹脂であるのが好ましい。また、熱可塑性樹脂(B)のガラス転移点は、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下の範囲としてよい。
【0035】
[セルロース繊維]
上記マスターバッチ中の熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、セルロース繊維及び炭素系粒子の合計の質量を100質量%としたときの、セルロース繊維の含有率は、上述のように30質量%以上から79.99質量%以下までの範囲であってよく、好ましくは31質量%以上、より好ましくは32質量%以上、更に好ましくは33質量%以上の範囲としてよく、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下の範囲としてよい。セルロース繊維の含有率が30質量%未満であると、解繊不良が発生する。また、セルロース繊繊の含有率が79.99質量%を超えると、溶融流動性が低下し加工性が低下する。したがってセルロース繊維の含有率を上記範囲内の値とする。
【0036】
セルロース繊維の平均繊維幅は、好ましくは1000μm以下であり、より好ましくは100μm以下であり、更に好ましくは10μm以下の範囲としてよく、また、好ましくは0.001μm以上であり、より好ましくは0.01μm以上であり、更に好ましくは0.1μm以上である。セルロース繊維の平均繊維幅が1000μm以下であると、後述する繊維強化樹脂成形体の強度及び剛性をより向上することができる。また、セルロース繊維の平均繊維幅が0.001μm以上であると、繊維強化樹脂成形体の強度及び剛性をより向上することができる。
セルロース繊維の平均繊維幅の測定は、走査電子顕微鏡により10000倍に拡大して形態観察を行い、任意の200点の繊維径を測定し、その数平均により算出することができる。
【0037】
セルロース繊維のアスペクト比は、特に制限されないが、好ましくは5~10000、より好ましくは10~8000、更に好ましくは50~5000である。
セルロース繊維のアスペクト比は、複合材料の樹脂分を洗い出しセルロースを分離したのち走査電子顕微鏡により測定することができる。
【0038】
セルロース繊維の種類は、特に制限されず、木材から製造された木材系セルロース繊維、草本類から製造された非木材系セルロース繊維等が挙げられる。
木材系セルロース繊維としては、針葉樹、広葉樹をクラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法などで蒸解した化学パルプ繊維、レファイナー、グラインダーなどの機械力によってパルプ化した機械パルプ繊維、薬品による前処理の後、機械力によってパルプ化したセミケミカルパルプ繊維、或いは古紙パルプ繊維などが挙げられる。これらは、各々、未晒(漂白前)もしくは晒(漂白後)の状態で使用することができる。
非木材系セルロース繊維としては、例えば、綿、マニラ麻、亜麻、藁、竹、バガス、ケナフなどを木材パルプと同様の方法でパルプ化した繊維が挙げられる。
上記セルロース繊維は、これらのうちから選択される1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
セルロース繊維の原料として用いられる植物繊維は、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、綿、ビート、農産物残廃物、布といった天然植物原料から得られるパルプや、レーヨン、セロファン等の再生セルロース繊維等が挙げられる。木材としては、例えば、シトカスプルース、スギ、ヒノキ、ユーカリ、アカシア等が挙げられ、紙としては、脱墨古紙、段ボール古紙、雑誌、コピー用紙等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。植物繊維は、これらのうちから選択される1種を単独でも用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
上記パルプとしては、植物原料を化学的、若しくは機械的に、又は両者を併用してパルプ化することで得られるケミカルパルプ(クラフトパルプ(KP)、亜硫酸パルプ(SP))、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドパルプ(CGP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、砕木パルプ(GP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、及びこれらのパルプを主成分とする脱墨古紙パルプ、段ボール古紙パルプ、雑誌古紙パルプが好ましいものとして挙げられる。これらの原材料は、必要に応じ、脱リグニン、又は漂白を行い、当該パルプ中のリグニン量を調整することができる。
【0041】
クラフトパルプ(KP)としては、例えば繊維の強度が強い針葉樹由来の各種クラフトパルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹酸素晒し未漂白クラフトパルプ(NOKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP))等が挙げられる。
【0042】
セルロース繊維は、リグノセルロース、セルロースナノファイバー(CNF)、セルロースナノクリスタル(CNC)及びミクロフィブリル化セルロース(NFC)の1種又は複数種を含んでいてもよい。リグノセルロースは、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンで構成される。セルロースナノファイバーやセルロースナノクリスタルは、木材パルプ等に含まれるセルロース繊維をナノサイズレベルまで解繊処理されたものである。ミクロフィブリル化セルロースは、植物の基本骨格物質である幅4nm程のセルロースミクロフィブリル(シングルセルロースナノファイバー)を含有するものである。
【0043】
[炭素系粒子]
炭素系粒子は、カーボンブラックを主成分とする粒子である。主成分とは、炭素系粒子全体の質量を100質量%としたときのカーボンブラックの含有率が、50質量%を超えていることを意味する。上記マスターバッチ中の熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、セルロース繊維及び炭素系粒子の合計の質量を100質量%としたときの、炭素系粒子の含有率は、上述のように0.01質量%以上から30質量%以下までの範囲であってよく、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上の範囲としてよく、また、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下の範囲としてよい。炭素系粒子の含有率が0.01質量%未満であると、本発明の効果を得にくくなり、また、炭素系粒子の含有率が30質量%を超えると、溶融流動性が低下し加工性が低下する。したがって炭素系粒子の含有率を上記範囲内の値とする。
【0044】
カーボンブラックとしては、特に制限されないが、ケッチェンブラック、チャネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックなどが挙げられ、これらのうちから選択される1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
炭素系粒子は、カーボンブラックの1種で構成されてもよいし、カーボンブラックと、カーボンブラック以外の炭素系粒子とで構成されてもよい。カーボンブラック以外の炭素系粒子としては、特に制限されないが、例えばナノカーボン、三次元結晶、カーボンブラック以外の非晶質カーボンなどが挙げられ、これらのうちから選択される1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このうち、本実施形態では、炭素系粒子がカーボンブラックで構成されるのが好ましい。
【0046】
ナノカーボンとしては、例えばフラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが挙げられる。三次元結晶としては、例えばグラファイトなどが挙げられる。非晶質カーボン非晶質カーボンとしては、例えばカーボンファイバー、メソポーラスカーボンなどが挙げられる。
【0047】
炭素系粒子は、セルロース繊維の分散性向上の観点からは、酸性カーボンブラックを主成分とするのが好ましく、また、酸性カーボンブラックで構成されるのがより好ましい。酸性カーボンブラックを主成分とする炭素系粒子とセルロース繊維とを併用することにより、得られるマスターバッチにおけるセルロース繊維の分散性が向上し、優れた外観を得ることができる。また、酸性カーボンブラックを用いることにより、黄味をより抑制して外観を更に向上することができる。
【0048】
炭素系粒子の比表面積及びpHは、特に限定されるものではないが、機械的特性の更なる向上及び外観の更なる向上の観点からは、窒素吸着比表面積50m2/g以上でありかつpH8以下であるのが好ましい。炭素系粒子の窒素吸着比表面積は、より好ましくは60m2/g以上、更に好ましくは70m2/g以上の範囲としてよい。また、炭素系粒子のpHは、より好ましくは7以下、更に好ましくは5以下の範囲としてよい。
【0049】
上記炭素系粒子の窒素吸着比表面積は、BET法により測定することができる。
【0050】
炭素系粒子の平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.5μm以上の範囲としてよく、また、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは25μm以下の範囲としてよい。炭素系粒子の平均粒子径が上記下限値以上であれば、繊維強化樹脂成形体において炭素系粒子の含有割合を少なくしても黒色度を充分に改善できる。
上記炭素系粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定機(Microtrac MT3300EXII)を用いて常法(JIS Z8825)に従って測定した粒度分布に基づき求められる平均粒子径(D50)である。
【0051】
[その他の成分]
マスターバッチは、その機能の主旨を逸脱しない範囲において、上記熱可塑性樹脂(A)、上記熱可塑性樹脂(B)、上記セルロース繊維及び上記炭素系粒子以外の他の成分が含まれてもよい。
その他の成分としては、具体的には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、滑剤、難燃剤、充填材等が挙げられる。
上記その他の成分のうち、酸化防止剤をマスターバッチに含有させると、後述する繊維強化樹脂成形体の黒色度をより改善することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられ、これらのうちから選択された1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。黒色度の改善効果がより大きくなる点では、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤とを併用することが好ましい。
【0052】
<マスターバッチの製造方法>
マスターバッチは、例えば熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、セルロース繊維およびカーボンブラックを主成分とする炭素系粒子を、得られるマスターバッチにおける各成分の割合が上記範囲内の値となるように、これらを配合、溶融混錬することにより得ることができる。
【0053】
配合工程では、熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、セルロース繊維およびカーボンブラックを主成分とする炭素系粒子以外の他の成分を更に配合してもよい。例えば、配合工程において、熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、セルロース繊維およびカーボンブラックを主成分とする炭素系粒子と共に、酸化防止剤を配合することができる。
【0054】
溶融混練工程では、必要に応じて、配合工程で得られた配合物を乾式混合などの予備混合を行ってから、熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、セルロース繊維およびカーボンブラックを主成分とする炭素系粒子を含む混合物を溶融混錬し、熱可塑性樹脂中にセルロース繊維及び炭素系粒子を分散させる。このとき、結晶性樹脂である熱可塑性樹脂(A)と、非晶性樹脂である熱可塑性樹脂(B)とを用いることが好ましく、融点80℃以上の結晶性樹脂である熱可塑性樹脂(A)と、ガラス転移点が150℃以下でありかつ融点を持たない非晶性樹脂である熱可塑性樹脂(B)とを用いることがより好ましい。これにより、未解繊繊維の塊の発生が抑制され、セルロース繊維の分散性をより向上させることができる。また、酸性カーボンブラックを主成分とする炭素系粒子を用いることが好ましく、酸性カーボンブラックで構成される炭素系粒子を用いることがより好ましい。このような酸性カーボンブラックとセルロース繊維を併用してマスターバッチを成形することにより、セルロース繊維の分散性をより向上することができる。
【0055】
溶融混練の際には、押出機(単軸押出機、二軸押出機)、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用いることができ、なかでも、連続的に混練できる点で、混錬押出機が好ましい。
溶融混練工程における加熱温度は、マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂の溶融のし易さに応じて決定されるが、例えば好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃の範囲としてよく、また、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下の範囲としてよい。加熱温度が100℃以上であれば、熱可塑性樹脂を溶融し易くなり、該熱可塑性樹脂中にセルロース繊維を分散させやすくなり、300℃以下であれば、各成分の熱劣化を抑制して黒色度をより改善することができる。
【0056】
溶融混練した後には、マスターバッチの使用目的に応じた形状(例えば、粉末状、ペレット状)に成形又は加工することができる。
マスターバッチをペレット状とする場合には、溶融混練後、ストランドを形成し、そのストランドを、ペレタイザを用いて切断してペレット状にする。ペレット状のマスターバッチは、さらなる成形を行うための材料として使用することができ、例えば後述する繊維強化樹脂成形体用の材料として用いることができる。ペレット状のマスターバッチは、成形機(例えば、射出成形機、押出成形機等)によって成形することができる。
【0057】
<繊維含有樹脂組成物及び繊維強化樹脂成形体>
本実施形態に係る繊維含有樹脂組成物は、上記マスターバッチと、熱可塑性樹脂(C)とを含有する。また、繊維強化樹脂成形体は、上記繊維含有樹脂組成物を溶融成形してなる部材である。熱可塑性樹脂(C)は、上記マスターバッチの粉砕物に配合される希釈樹脂であって、繊維強化樹脂成形体におけるマトリックス樹脂の主成分である。熱可塑性樹脂(C)とマスターバッチとにより、繊維強化樹脂成形体におけるマトリックス樹脂が構成される。上記のように構成されるマスターバッチを経て繊維含有樹脂組成物を得ることにより、セルロース繊維の分散性が向上し、従来の発泡成形体と比較して、繊維強化樹脂成形体の優れた外観が得られると共に機械的特性を向上することができ、加えて高い黒色度を有する優れた外観を得ることができる。
【0058】
[熱可塑性樹脂(A)]
上記繊維含有樹脂組成物又は上記繊維強化樹脂成形体中の熱可塑性樹脂(A)の含有率は、特に制限されないが、前記マスターバッチ中の熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、セルロース繊維およびカーボンブラックを主成分とする炭素系粒子と、熱可塑性樹脂(C)との合計100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上の範囲としてよく、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下の範囲としてよい。
【0059】
[熱可塑性樹脂(B)]
上記繊維含有樹脂組成物又は上記繊維強化樹脂成形体中の熱可塑性樹脂(B)の含有率は、特に制限されないが、前記マスターバッチ中の熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、セルロース繊維およびカーボンブラックを主成分とする炭素系粒子と、熱可塑性樹脂(C)との合計100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上の範囲としてよく、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下の範囲としてよい。
【0060】
[熱可塑性樹脂(C)]
上記繊維含有樹脂組成物又は上記繊維強化樹脂成形体中の熱可塑性樹脂(C)の含有率は、特に制限されないが、前記マスターバッチ中の熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、セルロース繊維およびカーボンブラックを主成分とする炭素系粒子と、熱可塑性樹脂(C)との合計100質量%に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上の範囲としてよく、また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下の範囲としてよい。
【0061】
熱可塑性樹脂(C)としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ(1-ブテン)等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド系樹脂;エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体等のエチレン・不飽和エステル系共重合体;エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体またはそのアイオノマー樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂等のポリ(メタ)アクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル等のフッ素系樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等のポリエーテル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリフェニレンオキシド樹脂やポリフェニレンスルフィド樹脂等のポリフェニレン系樹脂;ポリ酢酸ビニル樹脂;ポリアクリロニトリル樹脂;熱可塑性エラストマー等が挙げられる。また、これらの熱可塑性樹脂のうちから選択される1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
上記繊維含有樹脂組成物又は上記繊維強化樹脂成形体における熱可塑性樹脂(C)は、上記熱可塑性樹脂(A)と同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0063】
熱可塑性樹脂(C)の融点は、耐熱性の観点からは、好ましくは100℃以上、より好ましくは105℃以上、更に好ましくは110℃以上の範囲としてよい。
【0064】
[セルロース繊維]
上記繊維含有樹脂組成物又は上記繊維強化樹脂成形体中のセルロース繊維の含有率は、前記マスターバッチ中の熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、セルロース繊維およびカーボンブラックを主成分とする炭素系粒子と、熱可塑性樹脂(C)との合計100質量%に対して、セルロース繊維の含有率が好ましくは0.01質量%以上から3質量%以下までの範囲であることにより、繊維強化樹脂成形体のより高い強度、剛性を実現することができる。
【0065】
[炭素系粒子]
上記繊維含有樹脂組成物又は上記繊維強化樹脂成形体中の炭素系粒子の含有率は、前記マスターバッチ中の熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、セルロース繊維およびカーボンブラックを主成分とする炭素系粒子と、熱可塑性樹脂(C)との合計100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上の範囲としてよく、また、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下の範囲としてよい。炭素系粒子の含有率が0.01~3質量%であることにより、繊維強化樹脂成形体の黒色度をより改善することができる。
【0066】
[その他の成分]
上記繊維含有樹脂組成物又は上記繊維強化樹脂成形体には、その機能の主旨を逸脱しない範囲において、上記熱可塑性樹脂(A)、上記熱可塑性樹脂(B)、上記熱可塑性樹脂(C)、上記セルロース繊維及び上記炭素系粒子以外の他の成分が含まれてもよい。
その他の成分としては、具体的には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、滑剤、難燃剤、充填材等が挙げられる。
上記その他の成分のうち、酸化防止剤を成形体に含有させると、繊維強化樹脂成形体の黒色度をより改善することができ、しかも、セルロース繊維の酸化劣化を防いでセルロース繊維が本来有する樹脂の強化機能を充分に発揮させることができる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられ、これらのうちから選択された1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。黒色度の改善効果がより大きくなる点では、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤とを併用することが好ましい。
繊維強化樹脂成形体におけるフェノール系酸化防止剤の含有率は、繊維強化樹脂成形体100質量%に対して、好ましくは0.01~2質量%、より好ましくは0.1~1質量%の範囲としてよい。フェノール系酸化防止剤の含有率が上記下限値以上であれば、黒色度の改善効果がより高くなり、上記上限値以下であれば、強度低下を抑制できる。
繊維強化樹脂成形体におけるリン系酸化防止剤の含有率は、繊維強化樹脂成形体100質量%に対して、好ましくは0.01~2質量%、より好ましくは0.1~1質量%の範囲としてよい。リン系酸化防止剤の含有率が上記下限値以上であれば、黒色度の改善効果がより高くなり、上記上限値以下であれば、強度低下を抑制できる。
フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤との質量比(フェノール系酸化防止剤の質量:リン系酸化防止剤の質量)は、黒色度の改善効果がより高くなることから、好ましくは1:10~10:1、より好ましくは3:7~7:3の範囲としてよい。
【0067】
<繊維含有樹脂組成物及び繊維強化樹脂成形体の製造方法>
繊維含有樹脂組成物は、上記マスターバッチと、熱可塑性樹脂(C)とを配合、溶融混錬することにより得ることができる。例えば、熱可塑性樹脂(C)を、得られる繊維含有樹脂組成物及び繊維強化樹脂成形体におけるセルロース繊維や炭素系粒子の割合が上記範囲内の値となるように、これらを配合、溶融混錬することにより得ることができる。
【0068】
配合工程では、マスターバッチ及び熱可塑性樹脂(C)以外の他の成分を更に配合してもよい。例えば、配合工程において、マスターバッチ及び熱可塑性樹脂(C)と共に、酸化防止剤を混合することができる。
【0069】
溶融混練の際には、押出機(単軸押出機、二軸押出機)、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用いることができ、なかでも、連続的に混練できる点で、混錬押出機が好ましい。
溶融混練工程における加熱温度は、マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂の溶融のし易さに応じて決定されるが、例えば、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上の範囲としてよく、また、好ましくは350℃以下、より好ましく250℃以下の範囲としてよい。加熱温度が120℃以上であれば、熱可塑性樹脂を溶融し易くなり、該熱可塑性樹脂中にセルロース繊維を分散させやすくなり、200℃以下であれば、各成分の熱劣化を抑制して黒色度をより改善することができる。
【0070】
溶融混練した後には、上記繊維含有樹脂組成物を、繊維強化樹脂成形体の使用目的に応じた形状(例えば、ペレット状、シート状、チューブ状、棒状、柱状等)に溶融成形又は加工することができる。
繊維強化樹脂成形体をペレット状とする場合には、溶融混練後、ストランドを形成し、そのストランドを、ペレタイザを用いて切断してペレット状にする。ペレット状の繊維強化樹脂成形体は、さらなる成形用の材料として使用することができ、例えば車両等に取り付けられる成形品用の材料として用いることができる。ペレット状の繊維強化樹脂成形体は、成形機(例えば、射出成形機、押出成形機等)によって成形することができる。
繊維強化樹脂成形体をシート状とする場合には、溶融混練後、溶融樹脂をスリット状の孔から吐出させることによりシート状にすることができる。シート状の繊維強化樹脂成形体は、さらにプレス成形法又は真空成形法によって成形してもよい。
繊維強化樹脂成形体をチューブ状にする場合には、溶融混練後、溶融樹脂を環状の孔から吐出させることによりチューブ状にすることができる。
繊維強化樹脂成形体を棒状又は柱状にする場合には、溶融混練後、溶融樹脂を孔から吐出させることにより棒状又は柱状にすることができる。
【0071】
繊維強化樹脂成形体は、特に制限されず、例えば車両部品、建築部材、電気・電子機器、OA機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、モバイル機器、各種容器、照明機器等の部品が挙げられる。このうち車両部品としては、例えばインストルメントパネル、ピラートリム、グローブボックス、サイドトリム、ドアトリムなどの内装材が挙げられる。
【0072】
<繊維強化樹脂発泡成形体>
本実施形態に係る繊維強化樹脂発泡成形体は、上記繊維含有樹脂成形体によって形成されたセル壁と、該セル壁によって画定された複数の発泡セルとを有している。セル壁は、複数の発泡セル間の隔壁をなしており、この隔壁が一体となって三次元構造を構成している。上述のようにセルロース繊維の分散性が向上した繊維含有樹脂組成物を用いて繊維強化樹脂発泡成形体を得ることにより、従来の発泡成形体と比較して、繊維強化樹脂発泡成形体の機械的特性を向上しつつ、高い黒色度を有する優れた外観を得ることができる。
【0073】
本実施形態の繊維強化樹脂発泡成形体は、比重が1.5以下である。比重とは、同体積の水(液体)の質量に対する繊維強化樹脂発泡成形体の質量の割合を意味する。繊維強化樹脂発泡成形体の比重が1.5以下であることにより、高強度、高剛性を維持しつつ、更なる軽量化を実現することができる。繊維強化樹脂発泡成形体の比重は、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.1以下の範囲としてよい。
【0074】
繊維強化樹脂発泡成形体は、特に制限されず、例えば車両部品、建築部材、電気・電子機器、OA機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、モバイル機器、各種容器、照明機器等の部品が挙げられる。このうち車両部品としては、例えばインストルメントパネル、ピラートリム、グローブボックス、サイドトリム、ドアトリムなどの内装材が挙げられる。
【0075】
<繊維強化樹脂発泡成形体の製造方法>
繊維強化樹脂発泡成形体の製造方法は、前記繊維含有樹脂組成物を用いて化学発泡法、物理発泡法など、公知の方法で繊維強化樹脂発泡成形体を製造することができるが、物理発泡法が好ましい。物理発泡法としてはブタン、窒素、二酸化炭素などの高温高圧下で気体となる物質を発泡剤(物理発泡剤)として用い、加圧状態で、前記繊維含有樹脂組成物に注入した後、物理的変化(気液相分離)により気泡を発生させる方法であれば特に限定されず、超臨界発泡やビーズ発泡であってもよい。これらの物理発泡法の中でも、超臨界発泡成形法とよばれ、超臨界流体を発泡剤として用い、前記繊維含有樹脂組成物に飽和状態まで注入した後、圧力や温度の変化を与えることで微細気泡を発生方法が特に好ましい。以下、超臨界成形法を用いた本発明の繊維強化樹脂発泡成形体の製造方法について、さらに説明する。
【0076】
本発明の繊維強化樹脂発泡成形体の製造方法は、上記マスターバッチを準備する工程(I)と、前記マスターバッチと、融点が100℃以上の熱可塑性樹脂(C)とを混合して、溶融成形によって繊維含有樹脂組成物を得る工程(II)と、前記繊維含有樹脂組成物を用いて超臨界成形法によって繊維強化樹脂発泡成形体を得る工程(III)とを有する。
【0077】
繊維強化樹脂発泡成形体を成形するための成形機としては、射出成形機、押出し成形機、ブロー成形機などが使用され、好ましくは射出成形機が使用される。
超臨界成形法としては、特に制限されず、公知の各種方法を適用することができる。例えば、先ず、得られた繊維含有樹脂組成物のペレットを、射出成形機のホッパーから成形機に投入し、成形機スクリューの搬送ゾーン、圧縮ゾーンにて加熱溶融された後、溶融樹脂組成物を成形機スクリューの計量ゾーン及び圧縮ゾーンに送出する。そして、窒素又は二酸化炭素ガスを超臨界流体としたものを計量ゾーン部に設けた注入口より注入し、この超臨界流体と溶融樹脂とを加圧、単一相化し、次いで射出成形機のノズルから射出して、スプルー、ランナー内を単一相を維持しながら流動し金型キャビティへ送出する。ゲートを通過後に気泡核が発生し、気泡が拡大しながら金型内への充填が進行することにより、超臨界発泡成形が行われる。気泡核の生成は、金型における圧力が窒素又は二酸化炭素の臨界圧力以下に低下することで、窒素または二酸化炭素を過飽和状態にし、過飽和状態になった溶融樹脂組成物に多数のセル核が発生することにより行われる。
【実施例】
【0078】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。実施例中、特段の記載がない限り、「部」は質量%を示し、表中の数値の単位は質量部である。
【0079】
[実施例1]
(マスターバッチの製造)
熱可塑性樹脂(A)である高密度ポリエチレン(HDPE、融点130℃、旭化成株式会社製)22.5部、熱可塑性樹脂(B)であるアクリル系ポリマー(DICNAL、ガラス転移点65℃、DIC株式会社製)25部、セルロース繊維として針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)(幅:50μm、繊維長:2mm、含水率50質量%:Howe Sound Pulp and Paper社製)50部、炭素系粒子(ファーネス法カーボンブラック、pH3.5、比表面積110m2/g、三菱化学株式会社製)2.5部を混合し、混練装置(株式会社テクノベル製、KZW25)にて190℃の条件で溶融混練しマスターバッチ1(以下、マスターバッチを「MB」ともいう)を製造した。
【0080】
(繊維含有樹脂組成物の製造)
得られたMB1 20部と熱可塑性樹脂(C)である高密度ポリエチレン(HDPE、融点130℃、旭化成株式会社製)80部を混ぜ、混練装置(株式会社テクノベル製、KZW25)にて190℃の条件で溶融混練し、繊維含有樹脂組成物1(以下、繊維含有樹脂組成物を「CP」ともいう)を製造した。
【0081】
(射出成形による評価)
得られたCP1を射出成形機(株式会社日本製鋼所製、J110AD)のシリンダーを経て溶融し、溶融させた樹脂組成物を金型内へ射出し、肉厚2mm、縦150mm×横150mmの繊維強化樹脂成形体を得た。成形条件は、シリンダー温度190℃、金型温度40℃、冷却時間30秒、背圧15MPa、保圧12MPa、射出保圧時間2秒とした。
【0082】
(超臨界発泡成形の評価)
また、得られたCP1を、MuCell(登録商標)用超臨界ガス供給装置(SCF高圧定量供給装置)(TREXEL社製、T-100J)を用いて超臨界状態にした窒素を、射出成形機(日本製鋼所社製、J110AD)のシリンダーへと所定量注入し、溶融した樹脂組成物と混合させて金型内へ射出し、ショートショット法にて超臨界発泡成形を行い、肉厚2mm、縦150mm×横150mmの繊維強化樹脂発泡成形体を得た。成形条件は、シリンダー温度190℃、金型温度40℃、冷却時間30秒、背圧15MPa、保圧2MPa、窒素流入量0.6質量%、射出保圧時間2秒とした。繊維強化樹脂成形体と比較して凡そ15%の軽量化となるように繊維強化樹脂発泡成形体を得た。
【0083】
実施例1で得られた繊維含有樹脂成形体及び繊維強化樹脂発泡成形体を測定、評価した結果を、表1に示す。
【0084】
【0085】
実施例1における繊維強化樹脂成形体の外観を目視にて調べたところ、異物等は見られなかった。
また、繊維強化樹脂成形体の色相を分光測色計(コニカミノルタジャパン株式会社製、CM-5)により測定したところ、L*26.5、b*-0.4であった。
繊維強化樹脂成形体の縦に70mmのところを、MD方向に幅25mmを切り出し、MD方向試験片を作製した。得られた試験片を用いて、ISO 178による曲げ試験により曲げ弾性率を測定したところ、曲げ弾性率は2.3GPaであった。
【0086】
実施例1における繊維強化樹脂発泡成形体の外観を目視にて調べたところ、異物等は見られなかった。
また、繊維強化樹脂発泡成形体の色相を分光測色計(コニカミノルタジャパン株式会社製、CM-5)により測定したところ、L*32.1、b*-0.4であった。
繊維強化樹脂発泡成形体の縦に70mmのところを、MD方向に幅25mmを切り出し、MD方向試験片を作製した。得られた試験片を用いて、ISO 178による曲げ試験により曲げ弾性率を測定したところ、曲げ弾性率は1.5GPaであった。
【0087】
[実施例2]
熱可塑性樹脂(A)である高密度ポリエチレンをポリプロピレン(PP、融点164℃)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、MB2を製造した。また、熱可塑性樹脂(C)をポリプロピレン(PP、融点164℃)に変更したこと以外は実施例1と同様にしてCP2を製造した。CP2を用いて、実施例1と同様に射出成形及び超臨界発泡成形を行い、得られた繊維強化樹脂成形体及び繊維強化樹脂発泡成形体を実施例1と同様に評価した。
【0088】
実施例2における繊維強化樹脂成形体の外観を目視にて調べたところ異物は見られなかった。色相はL*26.0、b*-0.5であった。また、繊維強化樹脂成形体から切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、2.7GPaであった。
また、繊維強化樹脂発泡成形体の外観を目視にて調べたところ異物は見られなかった。色相はL*31.0、b*-0.4であった。また、繊維強化樹脂発泡成形体から切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、2.2GPaであった。
【0089】
[実施例3]
CPを経ず、得られたMB1 20部と熱可塑性樹脂(C)であるHDPE80部を混合し、実施例1と同様にして射出成形を行った。また、CPを経ず、得られたMB1 20部と熱可塑性樹脂(C)であるHDPE80部とを混合し、実施例1と同様に超臨界発泡成形を行った。得られた繊維強化樹脂成形体及び繊維強化樹脂発泡成形体を、実施例1と同様に評価した。
【0090】
実施例3における繊維強化樹脂成形体の外観を目視にて調べたところ異物は見られなかった。色相はL*26.8、b*-0.4であった。また、繊維強化樹脂発泡成形体から切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、2.1GPaであった。
また、繊維強化樹脂発泡成形体の外観を目視にて調べたところ異物は見られなかった。色相はL*33.2、b*-0.3であった。また、繊維強化樹脂発泡成形体から切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、1.5GPaであった。
【0091】
[実施例4]
熱可塑性樹脂(A)である高密度ポリエチレンをポリアミド6(PA6、融点226℃)へ変更し且つ溶融混練温度を250℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてMB3を製造した。熱可塑性樹脂(C)をHDPEからポリアミド6(PA6、融点226℃)へ変更し且つシリンダー温度を250℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてCP3を製造し、射出成形を行った。また、熱可塑性樹脂(C)をHDPEからポリアミド6(PA6、融点226℃)へ変更し且つ溶融温度を250℃に変更したこと以外は、実施例1と同様に超臨界発泡成形を行った。得られた繊維強化樹脂成形体及び繊維強化樹脂発泡成形体を、実施例1と同様に評価した。
【0092】
実施例4における繊維強化樹脂成形体の外観を目視にて調べたところ異物は見られなかった。色相はL*27.2、b*-0.1であった。また、繊維強化樹脂成形体から切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、3.3GPaであった。
繊維強化樹脂発泡成形体の外観を目視にて調べたところ異物は見られなかった。色相はL*33.2、b*-0.1であった。また、繊維強化樹脂発泡成形体から切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、2.6GPaであった。
【0093】
[実施例5]
熱可塑性樹脂(A)である高密度ポリエチレンをポリブチレンテレフタレート(PBT、融点233℃)に変更した以外は実施例1と同様にしてMB4を製造した。熱可塑性樹脂(C)をHDPEからポリブチレンテレフタレート(PBT、融点233℃)へ変更したこと以外は、実施例1と同様にしてCP4を製造し、射出成形を行った。また、熱可塑性樹脂(C)をHDPEからポリブチレンテレフタレート(PBT、融点233℃)へ変更したこと以外は、実施例1と同様に超臨界発泡成形を行った。得られた繊維強化樹脂成形体及び繊維強化樹脂発泡成形体を、実施例1と同様に評価した。
【0094】
実施例5における繊維強化樹脂成形体の外観を目視にて調べたところ異物は見られなかった。色相はL*26.8、b*-0.3あった。また、繊維強化樹脂成形体から切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、2.8GPaであった。
繊維強化樹脂発泡成形体の外観を目視にて調べたところ異物は見られなかった。色相はL*34.1、b*-0.3であった。また切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、2.2GPaであった。
【0095】
[実施例6]
炭素系粒子のpH3.5ファーネス法カーボンブラック(比表面積110m2/g、三菱ケミカル株式会社製)をpH8ファーネス法カーボンブラック(比表面積120m2/g、三菱ケミカル株式会社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてMB5を製造した。また、実施例1と同様にしてCP5を製造し、射出成形を行った。また、実施例1と同様に超臨界発泡成形を行った。得られた繊維強化樹脂成形体及び繊維強化樹脂発泡成形体を、実施例1と同様に評価した。
【0096】
実施例6における繊維強化樹脂成形体の外観を目視にて調べたところ異物は見られなかった。色相はL*28.0、b*1.8あった。また、繊維強化樹脂成形体から切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、2.3GPaであった。
繊維強化樹脂発泡成形体の外観を目視にて調べたところ異物は見られなかった。色相はL*33.0、b*1.3であった。また切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、1.5GPaであった。
【0097】
[実施例7]
炭素系粒子のpH3.5ファーネス法カーボンブラック(比表面積110m2/g、三菱ケミカル株式会社製)をpH6.5ファーネス法カーボンブラック(比表面積165m2/g、三菱ケミカル株式会社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にしてMB6を製造した。また、実施例1と同様にしてCP6を製造し、射出成形を行った。また、実施例1と同様に超臨界発泡成形を行った。得られた繊維強化樹脂成形体及び繊維強化樹脂発泡成形体を、実施例1と同様に評価した。
【0098】
実施例7における繊維強化樹脂成形体の外観を目視にて調べたところ異物は見られなかった。色相はL*30.0、b*1.3あった。また、繊維強化樹脂成形体から切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、2.3GPaであった。
繊維強化樹脂発泡成形体の外観を目視にて調べたところ異物は見られなかった。色相はL*33.0、b*1.1であった。また切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、1.5GPaであった。
【0099】
[実施例8]
MB1 20部と熱可塑性樹脂(C)であるPP80部を混合したこと以外は、実施例1と同様にしてCP7を製造し、射出成形を行った。また、実施例1と同様に超臨界発泡成形を行った。得られた繊維強化樹脂成形体及び繊維強化樹脂発泡成形体を、実施例1と同様に評価した。
【0100】
実施例8における繊維強化樹脂成形体の外観を目視にて調べたところ異物は見られなかった。色相はL*26.6、b*-0.4あった。また、繊維強化樹脂成形体から切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、2.6GPaであった。
繊維強化樹脂発泡成形体の外観を目視にて調べたところ異物は見られなかった。色相はL*31.2、b*-0.4であった。また切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、2.2GPaであった。
【0101】
[比較例1]
熱可塑性樹脂(A)及び熱可塑性樹脂(C)としてHDPEを84.5部、熱可塑性樹脂(B)としてアクリル系ポリマーを5部、セルロース繊維を10部、炭素系粒子としてpH8ファーネス法カーボンブラック(比表面積120m2/g、三菱ケミカル株式会社製)0.5部を混合したこと以外は、実施例1と同様にしてMB7、CP8を製造した。CP8を用いたこと以外は、実施例1と同様にして射出成形及び超臨界発泡成形を行った。得られた繊維強化樹脂成形体及び繊維強化樹脂発泡成形体を、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0102】
【0103】
比較例1における繊維強化樹脂成形体の外観を目視にて調べたところ、セルロース繊維の焼け異物が多数確認された。色相はL*30.2、b*1.8であり、実施例1~8の繊維強化樹脂成形体のいずれよりも黒色度が劣った。また、繊維強化樹脂成形体から切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、2.0GPaであった。
繊維強化樹脂発泡成形体の外観を目視にて調べたところ、セルロース繊維の焼け異物が多数確認された。色相はL*37.2、b*1.5であり、実施例1~8の繊維強化樹脂発泡成形体のいずれよりも黒色度が劣った。。また、繊維強化樹脂発泡成形体から切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、1.3GPaであり、実施例1~8の繊維強化樹脂発泡成形体のいずれよりも曲げ弾性率が低下した。
【0104】
[比較例2]
炭素系粒子のpH3.5ファーネス法カーボンブラック(比表面積110m2/g、三菱ケミカル株式会社製)を非カーボンブラックである黒鉛(pH6、比表面積6m2/g)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、MB8、CP9を製造した。CP9を用いたこと以外は、実施例1と同様にして射出成形及び超臨界発泡成形を行った。得られた繊維強化樹脂成形体及び繊維強化樹脂発泡成形体を、実施例1と同様に評価した。
【0105】
比較例2における繊維強化樹脂成形体の外観を目視にて調べたところ、セルロース繊維の塊状物が多数確認された。色相はL*39.7、b*1.4であり、実施例1~8の繊維強化樹脂成形体のいずれよりも黒色度が劣った。また、繊維強化樹脂成形体から切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、2.0GPaであり、実施例1~8の繊維強化樹脂成形体のいずれよりも曲げ弾性率が低下した。
繊維強化樹脂発泡成形体の外観を目視にて調べたところ、セルロース繊維の塊状物が多数確認された。色相はL*41.1、b*1.5であり、実施例1~8の繊維強化樹脂発泡成形体のいずれよりも黒色度が劣った。また、繊維強化樹脂発泡成形体から切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、1.4GPaであり、実施例1~8の繊維強化樹脂発泡成形体のいずれよりも曲げ弾性率が低下した。
【0106】
[比較例3]
熱可塑性樹脂(A)であるHDPE 24.999部、熱可塑性樹脂(B)アクリル系ポリマー 25部、セルロース繊維 50部、炭素系粒子0.001部を混合したこと以外は、実施例1と同様にしてMB9を製造した。MB9を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてCP10を製造し、射出成形及び超臨界発泡成形を行った。得られた繊維強化樹脂成形体及び繊維強化樹脂発泡成形体を、実施例1と同様に評価した。
【0107】
比較例3における繊維強化樹脂成形体の外観を目視にて調べたところ、セルロース繊維の塊状物が多数確認された。色相はL*44.2、b*2.2であり、実施例1~8の繊維強化樹脂成形体のいずれよりも黒色度が劣った。また、繊維強化樹脂成形体から切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、2.3GPaであった。
繊維強化樹脂発泡成形体の外観を目視にて調べたところ、セルロース繊維の塊状物が多数確認された。色相はL*53.9、b*1.8であり、実施例1~8の繊維強化樹脂発泡成形体のいずれよりも黒色度が劣った。また、繊維強化樹脂発泡成形体から切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、1.3GPaであり、実施例1~8の繊維強化樹脂発泡成形体のいずれよりも曲げ弾性率が低下した。
【0108】
[比較例4]
熱可塑性樹脂(A)であるHDPE 22.5部、熱可塑性樹脂(B)アクリル系ポリマー 12.5部、セルロース繊維 25部、炭素系粒子40部を混合したこと以外は、実施例1と同様にしてMB10を製造した。MB10を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてCP11を製造し、射出成形及び超臨界発泡成形を行った。得られた繊維強化樹脂成形体及び繊維強化樹脂発泡成形体を、実施例1と同様に評価した。
【0109】
比較例4における繊維強化樹脂成形体の外観を目視にて調べたところ、セルロース繊維の塊状物が多数確認された。色相はL*25.5、b*-0.5であった。また、繊維強化樹脂成形体から切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、1.9GPaであり、実施例1~8の繊維強化樹脂成形体のいずれよりも曲げ弾性率が低下した。
繊維強化樹脂発泡成形体の外観を目視にて調べたところ、セルロース繊維の塊状物が多数確認された。色相はL*29.3、b*0.2であった。また、繊維強化樹脂発泡成形体から切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、1.1GPaであり、実施例1~8の繊維強化樹脂発泡成形体のいずれよりも曲げ弾性率が低下した。
【0110】
[比較例5]
熱可塑性樹脂(A)であるHDPE 90部、熱可塑性樹脂(B)アクリル系ポリマー 2.5部、セルロース繊維 5部、炭素系粒子2.5部を混合したこと以外は、実施例1と同様にしてMB11を製造した。MB11を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてCP12を製造し、射出成形及び超臨界発泡成形を行った。得られた繊維強化樹脂成形体及び繊維強化樹脂発泡成形体を、実施例1と同様に評価した。
【0111】
比較例5における繊維強化樹脂成形体の外観を目視にて調べたところ、セルロース繊維の塊状物が多数確認された。色相はL*30.2、b*-0.4であり、実施例1~8の繊維強化樹脂発泡成形体のいずれよりも黒色度が劣った。また、繊維強化樹脂成形体から切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、1.1GPaであり、実施例1~8の繊維強化樹脂成形体のいずれよりも曲げ弾性率が低下した。
繊維強化樹脂発泡成形体の外観を目視にて調べたところ、セルロース繊維の塊状物が多数確認された。色相はL*37.1、b*1.2であった。また、繊維強化樹脂発泡成形体から切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、0.7GPaであり、実施例1~8の繊維強化樹脂発泡成形体のいずれよりも曲げ弾性率が低下した。
【0112】
[比較例6]
熱可塑性樹脂(A)であるHDPE 7.5部、熱可塑性樹脂(B)アクリル系ポリマー 30部、セルロース繊維 60部、炭素系粒子2.5部を混合したこと以外は、実施例1と同様にしてMB12を製造した。MB12を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてCP13を製造し、射出成形及び超臨界発泡成形を行った。得られた繊維強化樹脂成形体及び繊維強化樹脂発泡成形体を、実施例1と同様に評価した。
【0113】
比較例6における繊維強化樹脂成形体の外観を目視にて調べたところ、セルロース繊維の塊状物が多数確認された。色相はL*31.2、b*0.6であり、実施例1~8の繊維強化樹脂発泡成形体のいずれよりも黒色度が劣った。また、繊維強化樹脂成形体から切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、2.4GPaであった。
繊維強化樹脂発泡成形体の外観を目視にて調べたところ、セルロース繊維の塊状物が多数確認された。色相はL*37.2、b*1.2であり、実施例1~8の繊維強化樹脂発泡成形体のいずれよりも黒色度が劣った。また、繊維強化樹脂発泡成形体から切り出した試験片の曲げ弾性率を測定したところ、1.9GPaであった。