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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/02 20060101AFI20240903BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240903BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B41J11/02
B41J2/01 305
B41J2/17 201
B41J2/17 207
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020119652
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2022016747
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】谷口 慶充
(72)【発明者】
【氏名】若草 敬介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】市川 翔平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真豪
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-196110(JP,A)
【文献】特表2020-519498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/01,
2/165- 2/20,
2/21 - 2/215,
11/00 -11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
上記記録ヘッドと上下方向に対向しており、搬送方向に搬送される被記録媒体を支持するプラテンと、
上記プラテンの下方に位置しており、インクを保持する吸収体と、
上記吸収体の下面を覆う吸収体カバーと、を具備しており、
上記吸収体カバーは、下面に退避孔を有しており、
上記退避孔の下方に被記録媒体を搬送するローラが位置しており、
上記プラテンは、
画像記録において上記ノズルと対向するインク受け領域と、
上記インク受け領域と上記吸収体とをインクが流通可能に接続するインク流路と、を有しており、上記ローラの一部が上記退避孔に入り込むように、上下方向の位置が変動可能であり、
上記退避孔と上記吸収体との間にインクが通過しないシートが位置するインクジェット記録装置。
【請求項2】
上記プラテンは、上記インク受け領域より上記搬送方向の下流に位置しており、上記プラテンを上下方向に貫通する貫通孔をさらに有しており、
上記インク流路は、上記インク受け領域と上記貫通孔とを接続しており、
上記吸収体は、上記貫通孔の下方に位置する請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
上記貫通孔は、上下方向に沿って視た外形が矩形であり、その四隅のうち上記搬送方向の下流側に位置する2つの隅が湾曲面である請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
インクを吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
上記記録ヘッドと上下方向に対向しており、搬送方向に搬送される被記録媒体を支持するプラテンと、
上記プラテンの下方に位置しており、インクを保持する吸収体と、
上記吸収体の下面を覆う吸収体カバーと、を具備しており、
上記プラテンは、
画像記録において上記ノズルと対向するインク受け領域と、
上記インク受け領域と上記吸収体とをインクが流通可能に接続するインク流路と、
上記インク受け領域より上記搬送方向の下流に位置しており、上記プラテンを上下方向に貫通する貫通孔と、を有しており、
上記インク流路は、上記インク受け領域と上記貫通孔とを接続しており、
上記吸収体は、上記貫通孔の下方に位置しており、
上記貫通孔は、上下方向に沿って視た外形が矩形であり、その四隅のうち上記搬送方向の下流側に位置する2つの隅が湾曲面であるインクジェット記録装置。
【請求項5】
上記プラテンは、上記搬送方向の上流において上記貫通孔を区画して下方へ突出しており、上記吸収体と接触する接触部を有しており、
上記吸収体カバーは、上向きに突出する凸部を有しており、
上記搬送方向において、上記接触部が占める範囲と上記凸部が占める範囲とは少なくとも一部が重複している請求項2から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
インクを吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
上記記録ヘッドと上下方向に対向しており、搬送方向に搬送される被記録媒体を支持するプラテンと、
上記プラテンの下方に位置しており、インクを保持する吸収体と、
上記吸収体の下面を覆う吸収体カバーと、を具備しており、
上記プラテンは、
画像記録において上記ノズルと対向するインク受け領域と、
上記インク受け領域と上記吸収体とをインクが流通可能に接続するインク流路と、
上記インク受け領域より上記搬送方向の下流に位置しており、上記プラテンを上下方向に貫通する貫通孔と、
上記搬送方向の上流において上記貫通孔を区画して下方へ突出しており、上記吸収体と接触する接触部と、を有しており、
上記インク流路は、上記インク受け領域と上記貫通孔とを接続しており、
上記吸収体は、上記貫通孔の下方に位置しており、
上記吸収体カバーは、上向きに突出する凸部を有しており、
上記搬送方向において、上記接触部が占める範囲と上記凸部が占める範囲とは少なくとも一部が重複しているインクジェット記録装置。
【請求項7】
上記プラテンは、上記インク受け領域より上記搬送方向の下流に位置しており、上記搬送方向及び上下方向と直交する左右方向に延びる凹溝を有しており、
上記貫通孔は、上記凹溝の底面に開口する請求項2からのいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
インクを吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
上記記録ヘッドと上下方向に対向しており、搬送方向に搬送される被記録媒体を支持するプラテンと、
上記プラテンの下方に位置しており、インクを保持する吸収体と、
上記吸収体の下面を覆う吸収体カバーと、を具備しており、
上記プラテンは、
画像記録において上記ノズルと対向するインク受け領域と、
上記インク受け領域と上記吸収体とをインクが流通可能に接続するインク流路と、
上記インク受け領域より上記搬送方向の下流に位置しており、上記プラテンを上下方向に貫通する貫通孔と、
上記インク受け領域より上記搬送方向の下流に位置しており、上記搬送方向及び上下方向と直交する左右方向に延びる凹溝と、を有しており、
上記インク流路は、上記インク受け領域と上記貫通孔とを接続しており、
上記吸収体は、上記貫通孔の下方に位置しており、
上記貫通孔は、上記凹溝の底面に開口するインクジェット記録装置。
【請求項9】
上記貫通孔は、左右方向に沿って複数が位置しており、且つ、上記底面において、上記左右方向の長さが最大の被記録媒体の両端が通過する位置の下方にない請求項7又は8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
上記吸収体は、上記搬送方向の上流へ延びる延出片を有しており、
上記延出片が左右方向において占める範囲は、複数の上記貫通孔のうちの一部の貫通孔が左右方向に占める範囲と重複する請求項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
上記プラテンの下面に、上記一部の貫通孔と上記延出片とをインクが流通可能に接続する下面流路を有する請求項10に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを用いてプラテン上の被記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、記録紙等を支持するプラテンと、プラテンに対向して配置された記録部とを有する。記録部は、シートの搬送方向と交差する方向(走査方向)に往復移動するキャリッジと、当該キャリッジに搭載された記録ヘッドと、を有する。記録ヘッドは、例えばキャリッジによって走査方向へ往復移動しつつ、プラテンに向かってインク滴を吐出する。
【0003】
インクジェット記録装置は、シートの端まで印刷を行う、いわゆる「縁無し印刷」を実行可能である。縁無し印刷では、プラテンに支持されたシートより広い領域に対して記録ヘッドがインク滴を吐出する。したがって、シートの端より外に吐出されたインク滴は、シートに着弾することなく、プラテンに到達する。
【0004】
特許文献1には、プラテンに着弾したインクをプラテンの下面へ導く構成が開示されている。プラテンの下面へ導かれたインクは、プラテンの下方に位置するフォームなどの吸収部材に吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-116052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
吸収体が吸収して保持可能なインクの量を多くするには、吸収体の体積を増やすこととなる。しかしながら、吸収体の下方には、他の部材が配置されるので、吸収体の体積を増やすと、装置が大型化するという問題がある。他方、例えば縁無し印刷を多用するユーザにおいては、吸収体の体積が小さければ、使用によって吸収体からインクが漏れ出して、装置内がインクで汚れるおそれがある。また、メンテナンスにおいて、ユーザが吸収体に触れてしまい、ユーザの手が汚れるおそれもある。
【0007】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、プラテンの下方に位置する吸収体の大きくすることなく、吸収体が保持するインクが汚れの原因となることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係るインクジェット記録装置は、インクを吐出するノズルを有する記録ヘッドと、上記記録ヘッドと上下方向に対向しており、搬送方向に搬送される被記録媒体を支持するプラテンと、上記プラテンの下方に位置しており、インクを保持する吸収体と、上記吸収体の下面を覆う吸収体カバーと、を具備する。上記プラテンは、画像記録において上記ノズルと対向するインク受け領域と、上記インク受け領域と上記吸収体とをインクが流通可能に接続するインク流路と、を有する。
【0009】
吸収体の上下方向の厚みを薄くするとともに、吸収体の下方に位置する部材がインクで汚れることを防止できる。
【0010】
(2) 好ましくは、上記プラテンは、上記インク受け領域より上記搬送方向の下流に位置しており、上記プラテンを上下方向に貫通する貫通孔をさらに有しており、上記インク流路は、上記インク受け領域と上記貫通孔とを接続しており、上記吸収体は、上記貫通孔の下方に位置する。
【0011】
プラテンに付着したインクを貫通孔を通じて吸収体へ導くことができる。貫通孔がインク受け領域より搬送方向の下流に位置するので、記録ヘッドのノズルとプラテンとの上下方向に沿った距離が貫通孔によって長くならないので、インクミストの発生を抑制できる。
【0012】
(3) 好ましくは、上記貫通孔は、上下方向に沿って視た外形が矩形であり、その四隅のうち上記搬送方向の下流側に位置する2つの隅が湾曲面である。
【0013】
貫通孔の搬送方向の上流側に位置する2つの隅によって、インクを吸収体へ導きやすい。貫通孔の搬送方向の下流側に位置する2つの隅が湾曲面なので、吸収体からインクが上昇し難い。
【0014】
(4) 好ましくは、上記プラテンは、上記搬送方向の上流において上記貫通孔を区画して下方へ突出しており、上記吸収体と接触する接触部を有しており、上記吸収体カバーは、上向きに突出する凸部を有しており、上記搬送方向において、上記接触部が占める範囲と上記凸部が占める範囲とは少なくとも一部が重複している。
【0015】
吸収体を貫通孔の周囲に確実に接触させることができる。
【0016】
(5) 好ましくは、上記プラテンは、上記インク受け領域より上記搬送方向の下流に位置しており、上記搬送方向及び上下方向と直交する左右方向に延びる凹溝を有しており、上記貫通孔は、上記凹溝の底面に開口する。
【0017】
貫通孔より搬送方向の下流へインクが流れることが抑制される。
【0018】
(6) 好ましくは、上記貫通孔は、左右方向に沿って複数が位置しており、且つ、上記底面において、上記左右方向の長さが最大の被記録媒体の両端が通過する位置の下方にない。
【0019】
プラテン上を搬送される被記録媒体の両端が貫通孔に引っかかることが抑制される。
【0020】
(7) 好ましくは、上記吸収体は、上記搬送方向の上流へ延びる延出片を有しており、上記延出片が左右方向において占める範囲は、複数の上記貫通孔のうちの一部の貫通孔が左右方向に占める範囲と重複する。
【0021】
例えば縁なし印刷においてインクが流れ出す量が多い貫通孔に対して、延出片によってより多くのインクを保持できる。
【0022】
(8) 好ましくは、上記プラテンの下面に、上記一部の貫通孔と上記延出片とをインクが流通可能に接続する下面流路を有する。
【0023】
一部の貫通孔から延出片へインクが流れやすい。
【0024】
(9) 好ましくは、上記吸収体カバーは、下面に退避孔を有しており、上記退避孔の下方に被記録媒体を搬送するローラが位置しており、上記プラテンは、上記ローラの一部が上記退避孔に入り込むように、上下方向の位置が変動可能である。
【0025】
プラテンとローラとの隙間を小さくして、装置の薄型化を実現できる。
【0026】
(10) 好ましくは、上記退避孔と上記吸収体との間にインクが通過しないシートが位置する。
【0027】
吸収体からローラへインクが移動することを抑制できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、プラテンの下方に位置する吸収体の大きくすることなく、吸収体が保持するインクが汚れの原因となることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の実施形態の一例であるインクジェット記録装置10の斜視図である。
図2図2は、インクジェット記録装置10の構成を説明するための模式図である。
図3図3は、プラテン60、吸収体70、及び吸収体カバー80の斜視図である。
図4図4は、プラテン60、吸収体70、シート84、及び吸収体カバー80の分解斜視図である。
図5図5は、図3におけるV-V断面を示す断面図である。
図6図6は、プラテン60の平面図である。
図7図7は、図6において2点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。
図8図8は、プラテン60の下面図である。
図9図9は、プラテン60、吸収体70、及び吸収体カバー80の下面側の斜視図である。
図10図10は、変形例を示すプラテン60の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置10について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。また、以下の説明においては、インクジェット記録装置10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、排出口14が設けられている側を手前側(前面)として前後方向8が定義され、インクジェット記録装置10を手前側(前面)から視て左右方向9が定義される。
【0031】
図1に示されるインクジェット記録装置10は、プリンタ機能、ファクシミリ機能、コピー機能等の各種の機能を有する。インクジェット記録装置10は、概ね直方体形状に構成された装置本体11と、装置本体11の排出口14に対して着脱可能になった給送トレイ13とを有する。
【0032】
図2に示されるように、給送トレイ13内には、画像が記録される記録紙12(被記録媒体の一例)が積み重ねられた状態で収容されている。給送トレイ13は、装置本体11に装着された図1の状態で、前後方向8の前向きへ引き出し可能になっている。本実施形態では、例えば、記録紙12としてA4サイズの普通紙が、長辺を前後方向8に沿った状態とされて給送トレイ13内に収容される。給送トレイ13内のA4サイズの記録紙12は、装置本体11内に設けられた第1搬送路28を搬送される。
【0033】
記録紙12は、長辺又は短辺の中央部が、第1搬送路28における第1搬送向き3と直交する方向、すなわち左右方向9における中央部に一致した状態で搬送される。なお、以下においては、記録紙12の中央部が、第1搬送路28において左右方向9における中央部に一致して搬送される場合を、「中央基準」と称する。
【0034】
図2に示されるように、装置本体11の上部には、インクジェット方式で記録紙12に画像を記録する記録部31が設けられている。記録部31の下方には、記録紙12を支持するプラテン60が設けられている。プラテン60上に支持された記録紙12には、記録部31によって画像が記録される。
【0035】
プラテン60と給送トレイ13との間には、給送トレイ13内の記録紙12を第1搬送向き3へ向けて給紙する給紙部15が設けられている。装置本体11の後端部には、給紙部15によって給送トレイ13から給紙される記録紙12を、記録部31へ案内する給送ガイド部材16が設けられている。
【0036】
給紙部15は、軸線が左右方向9に沿って配置された給紙ローラ15Aを有する。給紙ローラ15Aは、支持アーム15Bの一端部(先端部)に回転可能に支持されている。支持アーム15Bの他端部(基端部)は、給紙ローラ15Aの軸線と平行な軸線の支持軸15Cに回動可能に支持されている。給紙ローラ15Aは、支持アーム15Bが支持軸15Cを中心として図2における反時計回りに回動されると、給送トレイ13内における最上部の記録紙12に当接し、図2における時計回りに回動されると記録紙12から離間する。給紙ローラ15Aは、図示しないモータの動力が伝達されて回転される。給紙ローラ15Aが記録紙12に当接した状態で回転されると、記録紙12は、給送ガイド部材16の下端部内に導入される。
【0037】
給送ガイド部材16は、後方へ向かって突出する円弧形状の空間を画定する。給送ガイド部材16の内部空間は、記録紙12が搬送される第1搬送路28の上流部分を画定している。給送ガイド部材16内に導入された記録紙12は、給送ガイド部材16内における第1搬送路28の上流部分を、中央基準で搬送される。
【0038】
図2に示されるように、装置本体11の内部には、記録紙12が通過する第1搬送路28及び第2搬送路29が形成されている。
【0039】
第1搬送路28は、湾曲された湾曲搬送路と、直線的に延びる直線搬送路とで構成されている。湾曲搬送路は、給送ガイド部材16により区画されており、装置本体11の後部において下方から上方に延びつつUターンする経路である。直線搬送路は、第1搬送ローラ部21から記録部31、排出ガイド部材18を経て排出トレイ17に至る経路である。排出ガイド部材18は、前後方向8に沿って直線的に延びる空間を区画している。なお、第1搬送路28は、図2に示されたような湾曲搬送路と直線搬送路よりなる構成に限らない。例えば、第1搬送路28は、直線搬送路のみによって構成されていてもよい。
【0040】
第2搬送路29は、装置本体11の内部において所定間隔を隔てて対向するガイド部材30によって画定される空間を指す。第2搬送路29は、記録部31によって画像が記録された記録紙12を、表裏を反転させて再び記録部31に到達させるための経路である。本実施形態に係る第2搬送路29は、分岐位置29A及び合流位置29Bにおいて第1搬送路28と繋がっている。分岐位置29Aは、記録部31よりも第1搬送向き3の下流に位置する。合流位置29Bは、記録部31よりも第1搬送向き3の上流に位置する。
【0041】
第1搬送向き3は、記録紙12が第1搬送路28を搬送される向きである。第1搬送向き3は、給送トレイ13に支持された記録紙12が第1搬送路28を通って排出トレイ17に排出されるときに記録紙12が搬送される向きである。第1搬送向き3は、第1搬送路28に沿っており、図2に一点鎖線の矢印で示されている。
【0042】
記録紙12が第2搬送路29を搬送される向きは、第2搬送向き4である。第2搬送向き4は、第1搬送路28に位置する記録紙12が第2搬送路29を通って表裏反転した状態で再び第1搬送路28へ導かれるために記録紙12が搬送される向きである。第2搬送向き4は、分岐位置29Aから合流位置29Bへ向かう向きであり、図2に二点鎖線の矢印で示されている。
【0043】
[第1搬送ローラ部21、第2搬送ローラ部41、反転ローラ部45、再搬送ローラ部56]
図2に示されるように、第1搬送ローラ部21は、第1搬送路28における合流位置29Bより第1搬送向き3の下流に配置されている。第1搬送ローラ部21は、互いに対向する第1搬送ローラ22及びピンチローラ26を備える。第1搬送ローラ22は、不図示のモータによって駆動されて、左右方向9に沿った軸周りに回転する。ピンチローラ26は、第1搬送ローラ22の回転に伴って連れ回る。
【0044】
第2搬送ローラ部41は、第1搬送路28における第1搬送ローラ部21及び分岐位置29Aの間に配置されている。第2搬送ローラ部41は、互いに対向する第2搬送ローラ42A及び第1拍車43を備える。第2搬送ローラ42Aは、不図示のモータによって駆動されて、左右方向9に沿った軸42B周りに回転する。第1拍車43は、第2搬送ローラ42Aの回転に伴って連れ回る。
【0045】
反転ローラ部45は、第1搬送路28における分岐位置29Aよりも第1搬送向き3の下流に配置されている。反転ローラ部45は、互いに対向する反転ローラ46及び第2拍車47を備える。反転ローラ46は、不図示のモータによって駆動されて、左右方向9に沿った軸周りに回転する。第2拍車47は、反転ローラ46の回転に伴って連れ回る。
【0046】
なお、後述するように、第1搬送ローラ22、第2搬送ローラ42A、及び反転ローラ46は、記録紙12を第1搬送向き3へ搬送する向き、及び当該方向と逆向きに回転可能である。以下の説明において、第1搬送ローラ22、第2搬送ローラ42A、及び反転ローラ46の回転のうち、記録紙12を第1搬送向き3へ搬送する方向の回転は、順回転と記される。また、第1搬送ローラ22、第2搬送ローラ42A、及び反転ローラ46の回転のうち、当該順回転と逆向きの回転は、逆回転と記される。
【0047】
再搬送ローラ部56は、第2搬送路29に配置されている。再搬送ローラ部56は、互いに対向する再搬送ローラ57及び従動ローラ58(ローラの一例)を備える。再搬送ローラ57は、不図示のモータによって駆動されて、左右方向9に沿った軸周りに回転する。従動ローラ58は、再搬送ローラ57の回転に伴って連れ回る。
【0048】
再搬送ローラ57は、記録紙12を第2搬送向き4へ搬送する向きに回転可能である。以下の説明において、再搬送ローラ57の回転のうち、記録紙12を第2搬送向き4へ搬送する向きの再搬送ローラ57の回転は、順回転と記される。また、再搬送ローラ57の回転のうち、当該順回転と逆向きの回転は、逆回転と記される。
【0049】
記録部31は、プラテン60の上方向6に配置されたキャリッジ32を有する。キャリッジ32は、不図示のガイドフレームに支持されており、左右方向9に沿って移動可能である。なお、本実施形態では、キャリッジ32が往復移動する方向(走査方向)は、第1搬送向き3に直交する方向であるが、走査方向は必ずしも第1搬送向き3と直交している必要はなく、第1搬送向き3と交差していればよい。
【0050】
キャリッジ32の下部には記録ヘッド33が設けられている。記録ヘッド33は、上下方向7に向かってインクを吐出する複数のノズル34を有する。各ノズル34には、インクカートリッジ(不図示)から、顔料を含むインク、所謂顔料インクが供給される。各ノズル34は、供給されるインクをインク滴としてプラテン60へ向かって吐出する。
【0051】
プラテン60上に搬送された記録紙12に対して記録部31によって画像を記録する場合には、プラテン60上において記録紙12が所定位置に停止される。次いで、キャリッジ32が走査方向(左右方向9)に沿って往復移動され、この往復移動の間に、ノズル34からインク滴が選択的に吐出される。その後は、記録紙12の第1搬送向き3への間欠搬送と、記録紙12が停止されている間のキャリッジ32の往復移動及びノズル34からのインク滴の選択的な吐出とが繰り返される。これにより、記録紙12上に付着したインクによって画像が形成される。
【0052】
[当接部材110]
図2に示されるように、第1搬送路28におけるノズル34よりも第1搬送向き3の上流には、当接部材110が設けられている。当接部材110は、左右方向9において間隔を空けて複数配置されている。当接部材110は、取付部111と、湾曲部112と、当接部113とを備える。
【0053】
取付部111は、概ね平板形状である。各取付部111は、装置本体11の内部に位置する不図示のフレームに取り付けられている。
【0054】
湾曲部112は、取付部111から前方(第1搬送向き3の下流)へ向けて突出している。湾曲部112は、前方に延びながら下方に向かって湾曲している。湾曲部112の先端部、つまり前端部からは当接部113が前方に突出している。
【0055】
当接部113は、概ね平板形状である。当接部113は、第1搬送路28における第1搬送ローラ22及びノズル34の間に位置している。当接部113は、上下方向7においてプラテン60と対向している。当接部113の下面とプラテン60との間を、記録紙12が搬送される。
【0056】
[経路切替部材38]
図2に示されるように、第1搬送路28における第2搬送ローラ部41及び再搬送ローラ部56の間に、経路切替部材38が位置する。経路切替部材38は、フラップ39と、軸40とを備えている。フラップ39は、左右方向9に延びた軸40から概ね第1搬送向き3に延出されている。フラップ39は、左右方向9に延びた軸40周りに回動可能である。フラップ39は、第1搬送路28を閉塞させる反転位置(図2に実線で示される姿勢)と、第1搬送路28上の記録紙12の通過を許容する排出位置(図2に破線で示される姿勢)との間を回動する。なお、フラップ39は、回動以外によって、例えば上下方向7に沿ったスライドによって、反転位置と排出位置とに移動してもよい。
【0057】
通常状態におけるフラップ39は、自重によって反転位置となっている。なお、フラップ39は、バネなどによって反転位置に付勢されていてもよい。フラップ39は、第1搬送向き3に搬送される記録紙12に持ち上げられることによって、反転位置から排出位置へ向けて回動する。以後、フラップ39は、第1搬送向き3に搬送される記録紙12を案内する。フラップ39は、第1搬送向き3に搬送される記録紙12の後端(第1搬送向き3の上流端)が分岐位置29Aに到達したことに応じて、自重によって排出位置から反転位置へ回動する。このとき、記録紙12の後端は、反転位置へ回動したフラップ39に下方へ押されることによって、第2搬送路29を向く。
【0058】
この状態において反転ローラ部45の反転ローラ46が順回転を継続すると、記録紙12は、第1搬送向き3に搬送されて排出トレイ17へ排出される。一方、反転ローラ46の反転ローラ46が順回転から逆回転に切り替えられると、記録紙12は、第1搬送向き3の上流端を先端として、第2搬送路29に沿って第2搬送向き4に搬送される。
【0059】
[プラテン60、吸収体70、吸収体カバー80]
図2に示されるように、プラテン60は、記録部31の下方であって第1搬送ローラ部21と再搬送ローラ部56との間に位置する。図4及び図5に示されるように、プラテン60の下方に吸収体70が位置しており、さらに下方に吸収体カバー80が位置している。プラテン60、吸収体70、及び吸収体カバー80は、一体に組み付けられている。
【0060】
図6に示されるように、プラテン60は、平面視(上下方向7に沿った視線)において概ね長方形の平板形状である。プラテン60の前後方向8の前端から前方へ向かって、3個の軸支持部61が延びている。軸支持部61は、第2搬送ローラ42Aの軸42Bを回転可能に支持する。軸支持部61は、左右方向9においてプラテン60の両端付近及び中央付近に位置する。各軸支持部61には、下方へ凹む凹部61Aがそれぞれ形成されている。各凹部61Aの前後方向8の位置は同じである。各凹部61Aに第2搬送ローラ42Aの軸42Bが嵌め込まれることによって回転可能に支持される。
【0061】
プラテン60は、前後方向8において、第1ガイド部62、インク受け部63、第2ガイド部64に大別される。第1ガイド部62は、第1搬送ローラ部21によって第1搬送向き3に搬送される記録紙12をインク受け部63へ案内する。インク受け部63は、記録ヘッド33のノズル34と対向しており、記録紙12を支持して記録ヘッド33に対向させる。第2ガイド部64は、記録紙12を第2搬送ローラ部41へ案内する。
【0062】
図3及び図6に示されるように、第1ガイド部62は、上面62Aから上方へ突出する複数のガイドリブ62Bを有する。ガイドリブ62Bは、前後方向8に沿って延びる細長な板形状である。ガイドリブ62Bは、左右方向9に間隔を空けて複数が上面62Aに配置されている。上面62Aは、前後方向8及び左右方向9に沿って拡がる面である。
【0063】
図3及び図6に示されるように、インク受け部63は、上面63Aから上方へ突出する複数の支持リブ63Bを有する。上面63A及び支持リブ63Bは、記録ヘッド33と上下方向7に対向している。図3に示されるように、支持リブ63Bは、上面63Aから上方へ突出し、前後方向8に沿って延びる細長な板形状である。上面63Aは、前後方向8及び左右方向9に沿って拡がる面である。上面63Aがインク受け領域の一例である。
【0064】
支持リブ63Bは、左右方向9に間隔を空けて複数が上面63Aに配置されている。各支持リブ63Bの配置は、プラテン60に支持される記録紙12の定型サイズの幅、例えば、L版サイズ、はがきサイズ、A5サイズ、B5サイズ、A4サイズ、レターサイズなどの各幅を考慮して設定されている。複数の支持リブ63Bは、各定型サイズの記録紙12の記録面が平坦となるように適宜配置されている。
【0065】
上面63Aと支持リブ63Bの下端とによって区画される隅63Cは、前後方向8に沿って延びる。隅63Cが、インク流路の一例である。上面63Aに着弾したインク滴は、上面63Aに沿って拡がることによって、上面63Aと支持リブ63Bの下端との隅63Cに到達し、隅63Cに沿って前後方向8に流れる。
【0066】
なお、左右方向9におけるガイドリブ62B及び支持リブ63Bの配置は、相互に合致していてもいなくてもよい。また、ガイドリブ62B及び支持リブ63Bは、前後方向8において一部が重複していてもよい。また、上面62Aと上面63Aとは必ずしも同じ平面でなくてもよい。また、本実施形態では、上面63Aの一部が後方へ延びることによって、前後方向8において上面62Aと上面63Aとが重複する。前後方向8における上面62Aと上面63Aとの重複は、例えば、記録紙12に対するいわゆる縁なし印刷において、縁なし印刷が多用される定型の記録紙12の左右方向9の両端が位置する範囲において存在する。すなわち、縁なし印刷においてインク滴が付着しやすい位置に上面63Aが存在する。
【0067】
図3及び図6に示されるように、第2ガイド部64は、上面64Aから上方へ突出する複数のガイドリブ64Bを有する。ガイドリブ64Bは、前後方向8に沿って延びる細長な板形状である。ガイドリブ64Bは、左右方向9に間隔を空けて複数が上面64Aに配置されている。上面64Aは、左右方向9に沿っており、前方且つ上方へ延びる面である。つまり、上面64Aの前端が後端より低い傾斜面である。ガイドリブ64Bの上面も同様に、ガイドリブ64Bの前端が後端より低い傾斜面である。
【0068】
図3及び図6に示されるように、前後方向8におけるインク受け部63と第2ガイド部64との間には、左右方向9に沿って延びる凹溝65が位置する。図5に示されるように、凹溝65の底面65Aは、上面63A,54Aより下方に位置する。凹溝65は、左右方向9においてプラテン60のほぼ全域に亘っている。
【0069】
図5及び図6に示されるように、凹溝65には、底面65Aに開口する貫通孔66が位置する。したがって、貫通孔66は、インク受け部63の上面63Aより第1搬送向き3の下流に位置する。貫通孔66は、底面65Aにおいて左右方向9に間隔を空けて複数が位置する。各貫通孔66は、プラテン60を上下方向7に沿って貫通している。したがって、貫通孔66は、プラテン60の下面60Aにも開口する。
【0070】
図6に示されるように、複数の貫通孔66の大半は、左右方向9の左方又は右方において、支持リブ63Bと隣り合う。上面63Aと支持リブ63Bの下端との隅63Cに沿ってインクが流れるので、支持リブ63Bの下端に沿って流れるインクが貫通孔66へ導かれる。つまり、上面63Aと支持リブ63Bの下端との隅63Cは、上面63Aと貫通孔66とをインクが流通可能に接続している。
【0071】
複数の貫通孔66のうち、左右方向9において両端に位置する2個の貫通孔66の位置は、インクジェット記録装置10が画像記録可能な最大の記録紙12の左右方向9の両端がプラテン60上を通過する位置の下方にはない。本実施形態では、例えば、記録紙12として最大サイズであるA4サイズの普通紙が、長辺を前後方向8に沿った状態でプラテン60上を搬送される。図6において、A4サイズの記録紙12の両端が位置Eとして矢印で示されている。左右方向9において両端に位置する2個の貫通孔66は、2つの位置Eの間に位置する。
【0072】
複数の貫通孔66は、左右方向9の位置が異なるほかは同じ形状なので、以下、図7を参照しつつ一の貫通孔66について説明する。図7に示されるように、貫通孔66は、平面視(上下方向7に沿った視線)において、左右方向9に沿った長辺と前後方向8に沿った短辺とで構成される長方形の外形である。
【0073】
平面視が長方形の貫通孔66には四隅があり、後方(第1搬送向きの上流)に2つの隅66RCが位置しており、前方(第1搬送向きの下流)に2つの隅66FCが位置する。2つの隅66RCのそれぞれは、いわゆるR加工が施されていない。ここで、R加工は、サイズが0.5以上のものをいい、例えばサイズが0.2から0.3程度のものはR加工が施されていないとする。これに対して、2つの隅66FCのそれぞれは、R加工が施されており、隅66FCが上下方向7に沿って拡がる湾曲面である。
【0074】
図5及び図8に示されるように、プラテン60の下面60Aにおいて、貫通孔66の周縁において前後方向8及び左右方向9へ拡がる接触部67が形成されている。接触部67は、下面60Aから下方へ突出する凸形状である。接触部67は、貫通孔66の下方部分を区画している。接触部67は、全ての貫通孔66の周囲において連続して一体に形成されており、左右方向9の2カ所において一部分が後方へ延びている。接触部67において後方へ延びる一部分は、例えば、縁なし印刷において使用頻度が高い記録紙12の左右方向9の両端の位置に対応している。接触部67は、プラテン60の下方に位置する吸収体70と接触する。
【0075】
図7に示されるように、隅66RCは、上面63Aと支持リブ63Bの下端とにより形成される隅63Cと連続する。これにより、上面63Aから吸収体70へと連続するインク流路が構成される。
【0076】
図8及び図9に示されるように、プラテン60の下面60Aの周縁には、下方へ突出する縁部60Bが位置する。縁部60Bと下面60Aとによって、下方が開放された空間が区画される。この空間には、吸収体70が収容される。下面60Aの左右方向9の両端付近には、下方へ突出する円柱形状のボス68がそれぞれ位置する。ボス68は、吸収体70を位置決めする。
【0077】
プラテン60の前端側に位置する縁部60Bにおいて、縁部60Bの下端から後方へ突出する複数の爪67Aが位置する。爪67Aは、左右方向9に間隔を空けて複数が位置している。上下方向7において爪67Aと下面60Aとの間には、吸収体カバー80の前端部が挿入可能な空間が形成されている。プラテン60の下面60Aの後端側には、下方且つ前方へ向かって鈎形状に突出する爪67Bが位置する。爪67Bは、左右方向9に間隔を空けて複数が位置している。上下方向7において、爪67Bにおいて前方へ突出する下端部と下面60Aとの間には、吸収体カバー80の後端部が挿入可能な空間が形成されている。爪67Bは、後方へ倒れるように弾性変形可能である。
【0078】
図8に示されるように、プラテン60の前端側に位置する縁部60Bの中央は連続せずに空間があり、その空間に下方へ突出するボス69が位置する。図9に示されるように、ボス69は、コイルバネ90を位置決めする。ボス69及び下面60Aはコイルバネ90の上側のバネ座として機能する。各図には現れていないが、コイルバネ90の下端は、装置本体11の内部空間に位置するフレームなどに当接することによって位置決めされる。プラテン60は、コイルバネ90によって上方へ付勢された状態で使用される。プラテン60と当接部材110との間に進入した記録紙12の厚みによって、プラテン60が下方へ押し下げられると、コイルバネ90が収縮して、図2において破線で示されるように、プラテン60が下方へ移動する。
【0079】
図4及び図5に示されるように、プラテン60の下方には、インクを保持する吸収体70が位置する。吸収体70は、例えば発泡合成樹脂や不織布などである。吸収体70は、概ね平板形状である。吸収体70の上下方向7に沿った寸法は、プラテン60の縁部60Bが下面60Aから突出する寸法と同程度又は若干大きい。
【0080】
吸収体70の左右方向9に沿った寸法は、プラテン60の下面60Aの左右方向9に沿った寸法と同程度である。吸収体70の前後方向8に沿った寸法は、左右方向9の両端部よりも中央部が長い。換言すれば、吸収体70は、左右方向9の中央において後方(第1搬送向き3の上流)へ延びる延出片71を有する。延出片71は、平面視において長方形である。
【0081】
吸収体70の左右方向9の両端部には、上下方向7に吸収体を貫通する貫通孔72がそれぞれ位置する。貫通孔72には、プラテン60のボス68がそれぞれ挿入される。ボス68が貫通孔72にそれぞれ挿通されることによって、プラテン60の下面60Aに対して吸収体70が前後方向8及び左右方向9に位置決めされる。
【0082】
プラテン60の下面60Aに対して位置決めされた吸収体70は、プラテン60の複数の貫通孔66の下方に位置する。これにより、各貫通孔66を通じて下方へ流れるインクが吸収体70に吸収されて保持される。吸収体70の延出片71は、各貫通孔66よりも後方に位置する。また、延出片71は、複数の貫通孔66のうち左右方向9の両端側に位置する数個の貫通孔66の後方には位置しておらず、左右方向9の中央に位置する大半の貫通孔66の後方に位置する。換言すれば、延出片71が左右方向9において占める範囲は、左右方向9の中央に位置する一部の貫通孔66が占める範囲と重複している。
【0083】
図4及び図5に示されるように、吸収体70の下方には吸収体カバー80が位置する。吸収体カバー80は、プラテン60の爪67A,67Bと係合されることによって、プラテン60に組み付けられて吸収体70の下面を覆う。
【0084】
吸収体カバー80は、平面視において吸収体70と同様の外形であり、外形寸法は吸収体70よりも若干大きい。吸収体カバー80は、トレイ形状であり、平板形状の支持板81と、支持板81の周縁から上方へ突出する縁部82と、を有する。支持板81の上面は、吸収体70の下面と当接する。縁部82から支持板81の上面から突出する上下方向7に沿った寸法は、吸収体70の上下方向7の寸法と同程度又は若干小さい。吸収体70は、圧縮により弾性変形して体積が縮小するので、プラテン60の接触部67と吸収体カバー80の上面とに挟み込まれて圧縮変形することにより、吸収体70は、吸収体カバー80の上面及び縁部82で区画される空間に収容される。
【0085】
支持板81には、左右方向9に離れて2つの退避孔83が位置する。退避孔83は、支持板81を上下方向7に貫通している。退避孔83は、平面視が長方形である。退避孔83は、再搬送ローラ部56の従動ローラ58の上方に位置する。従動ローラ58は、左右方向9に離れて2個が配置されている。各退避孔83は、2個の従動ローラ58それぞれの上方に位置する。退避孔83の外形は、円柱形状の従動ローラ58の外形よりも大きい。したがって、従動ローラ58の一部は退避孔83の内側へ入り込むことができる。前述されたように、プラテン60は、下方への外力が加わることによって、コイルバネ90が収縮して下方へ移動する。このとき、従動ローラ58の一部が退避孔83に入り込む。
【0086】
退避孔83の上端はシート84により封止されている。シート84は、退避孔83の外形より大きな概ね長方形である。シート84の左右方向9の両端には、鍔部84Aがそれぞれ形成されている。鍔部84Aが、退避孔83の左右側に位置するスリット85に挿入されることによって、シート84が退避孔83の上端に固定される。シート84の上面は、吸収体70と当接する。シート84は、例えばインクを透過しない合成樹脂である。
【0087】
前後方向8において退避孔83と同じ位置には、退避孔83から左右へ延びる凸部86が位置する。凸部86は、支持板81の上面から上方へ突出している。凸部86が支持板81の上面から上方へ突出する寸法は、縁部82が支持板81の上面から上方へ突出する寸法よりも小さい。凸部86は、吸収体70の下面と接触する。図5に示されるように、前後方向8において、凸部86が占める範囲R1と、プラテン60の接触部67が占める範囲R2とは、一部が重複している。したがって、吸収体70は、前後方向8において同じ位置で、接触部67と凸部86とによって上下方向7に挟み込まれる。
【0088】
支持板81の上面には、左右方向9に離れて2個の凹部87が位置する。凹部87は、支持板81の上面から下方へ凹んでいる。前後方向8及び左右方向9において、凹部87の位置は、プラテン60のボス68の位置に対応している。吸収体70の貫通孔72に挿通されたボス68の下端部は、凹部87に進入する。凹部87によって、ボス68の下端部が前後方向8及び左右方向9に対して位置決めされる。
【0089】
[プラテン60に着弾したインクの流れ]
縁なし印刷や、通常の印刷において生じたインクミストがプラテン60に付着することがある。例えば、縁なし印刷においては、記録紙12の左右方向9の両端より外側(左方及び右方)まで記録ヘッド33のノズル34からインク滴が吐出される。したがって、記録紙12の記録面に着弾しなかったインク滴は、プラテン60のインク受け部63の上面63Aに着弾する。なお、支持リブ63Bは記録紙12を支持しているので、支持リブ63Bにはインク滴は着弾しない。
【0090】
インク受け部63の上面63Aに着弾したインク滴は、縁なし印刷が進むと共に、或いは、縁なし印刷の回数が増えると共に、累積的に量が増加して、上面63Aに沿って拡がる。そして、上面63Aと支持リブ63Bの下端の隅に沿って前後方向8へインクが移動する。前方へ移動したインクは、貫通孔66に到達し、貫通孔66の隅66RCに沿って下方へ流れて吸収体70に到達する。これにより、プラテン60の上面63Aに着弾したインク滴が、吸収体70に吸収されて保持される。
【0091】
[本実施形態の作用効果]
前述された実施形態によれば、吸収体70の上下方向7の厚みを薄くするとともに、吸収体70の下方に位置する再搬送ローラ部56などがインクで汚れることを防止できる。
【0092】
また、プラテン60に付着したインクを貫通孔66を通じて吸収体70へ導くことができる。貫通孔66がインク受け部63より第1搬送向き3の下流に位置するので、記録ヘッド33のノズル34とプラテン60との上下方向7に沿った距離が貫通孔66によって長くならないので、インクミストの発生を抑制できる。
【0093】
また、貫通孔66の2つの隅66RCによって、インクを吸収体70へ導きやすい。他方、貫通孔66の2つの隅66FCが湾曲面なので、吸収体70からインクが上昇し難い。
【0094】
また、第1搬送向き3において、プラテン60の接触部67が占める範囲R1と、吸収体カバー80の凸部86が占める範囲R2との一部が重複しているので、吸収体70を貫通孔66の周囲に確実に接触させることができる。
【0095】
また、貫通孔66が凹溝65の底面65Aに開口するので、貫通孔66より第1搬送向き3の下流へインクが流れることが抑制される。
【0096】
また、インクジェット記録装置10において画像記録が可能な左右方向9の長さが最大の記録紙12の両端が通過する位置の下方に、貫通孔66がないので、プラテン60上を搬送される記録紙12の両端が貫通孔66に引っかかることが抑制される。
【0097】
また、吸収体70の延出片71が左右方向9において占める範囲は、左右方向9の中央部に位置する一部の貫通孔66が左右方向9に占める範囲と重複するので、例えば縁なし印刷においてインクが流れ出す量が多い貫通孔66に対して、延出片71によってより多くのインクを保持できる。
【0098】
プラテン60は、再搬送ローラ部56の従動ローラ58の一部が、吸収体カバー80の退避孔83に入り込むように、上下方向7の位置が変動可能なので、プラテン60と従動ローラ58との上下方向7の隙間を小さくして、インクジェット記録装置10の薄型化を実現できる。
【0099】
また、退避孔83と吸収体70との間にインクが通過しないシート84が位置するので、吸収体70から従動ローラ58へインクが移動することが抑制できる。
【0100】
[変形例]
前述された実施形態におけるプラテン60の下面60Aにおいて、貫通孔66から吸収体70の延出片71の後端付近まで前後方向8に延びる下面流路が形成されてもよい。例えば、図10に示されるように、プラテン60の接触部67に、貫通孔66から前後方向8に沿って延びる凹溝91が、左右方向9に離れて複数が形成されてもよい。凹溝91によって、貫通孔66から延出片711までインクが流れやすくなる。
【0101】
また、前述された実施形態では、接触部67は、貫通孔66の周囲において前後方向8へ拡がっているが、接触部67は、貫通孔66から後方(搬送方向の上流)へのみ拡がっていてもよい。
【0102】
また、前述された実施形態では、吸収体カバー80に形成された退避孔83は貫通孔であるが、退避孔83に代えて、吸収体カバー80の下面から上方へ凹む凹部が形成されてもよい。凹部には、再搬送ローラ部56の従動ローラ58の一部が進入可能である。また、凹部が形成された実施形態では、シート84は設けられなくてもよい。
【0103】
また、前述された実施形態では、第1搬送向き3において、プラテン60の接触部67が占める範囲R1と、吸収体カバー80の凸部86が占める範囲R2との一部が重複しているが、範囲R1と範囲R2とは、いずれか一方に他方が全て含まれてもよいし、完全に合致していてもよい。
【0104】
また、前述された実施形態では、記録紙12が中央基準で搬送される場合について説明したが、このような構成に限らない。すなわち、記録紙12における左右方向9の一端を、第1搬送路28における左右方向9の一端に一致させて搬送する構成、すなわち端基準で記録紙12が搬送されてもよい。
【符号の説明】
【0105】
10・・・インクジェット記録装置
33・・・記録ヘッド
34・・・ノズル
60・・・プラテン
60A・・・下面
63・・・インク受け部(インク受け領域)
63C・・・隅(インク流路)
65・・・凹溝
65A・・・底面
66・・・貫通孔
66FC、66RC・・・隅
67・・・接触部
70・・・吸収体
71・・・延出片
80・・・吸収体カバー
83・・・退避孔
84・・・シート
86・・・凸部
91・・・凹溝(下面流路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10