(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナーおよび画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/09 20060101AFI20240903BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20240903BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G03G9/09
G03G9/097 374
G03G9/087 331
(21)【出願番号】P 2020120021
(22)【出願日】2020-07-13
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 雄也
(72)【発明者】
【氏名】萱森 隆成
(72)【発明者】
【氏名】上田 昇
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-131879(JP,A)
【文献】特開2002-268311(JP,A)
【文献】特開2019-184793(JP,A)
【文献】特開2014-106535(JP,A)
【文献】特開2000-112179(JP,A)
【文献】特表2007-528006(JP,A)
【文献】特開2011-022576(JP,A)
【文献】特開平03-177846(JP,A)
【文献】特開2019-184795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/09
G03G 9/097
G03G 9/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂と、少なくとも2種類の有機顔料と、カーボンブラックと、を含むトナー母体粒子と、
外添剤としてのチタン酸ストロンチウムと、
を含む、
静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記少なくとも2種類の有機顔料は、ブルー顔料およびバイオレット顔料を含む、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記ブルー顔料は、C.I.Pigment blue 15:3、またはC.I.Pigment blue 15:4を含む、請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記バイオレット顔料は、C.I.Pigment violet 23を含む、請求項2または3に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記トナー母体粒子は、前記静電荷像現像用トナーの全質量に対して0.1質量%より多く3.0質量%未満となる量のカーボンブラックを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記トナー母体粒子は、前記トナー母体粒子および外添剤を合計した全質量に対して0.1質量%より多く1.0質量%未満となる量のカーボンブラックを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
前記結着樹脂は、結晶性樹脂を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
前記結着樹脂は、結晶性ポリエステルを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを記録媒体に付着させる工程と、
前記付着させた静電荷像現像用トナーを前記記録媒体に定着させる工程と、
を有する、画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナーおよび画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる色調の有機顔料を1つのトナー母体粒子中に内添したトナーが知られている。このようなトナーは、吸収する波長域を調整したり、吸収する波長域を広げたりすることができるため、上記トナーにより形成される画像の色調をより所望の色域に近づけることが期待される。
【0003】
たとえば、特許文献1には、フタロシアニン系青顔料、ジスアゾ系黄顔料、アゾ系赤顔料、およびキナクリドン系赤顔料のうち少なくとも3種以上の顔料と、特定のペリレン系化合物と、を含むことにより、カーボンブラックを含まずに黒色度を高めたトナーとし得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの知見によると、特許文献1に記載のように、複数種の有機顔料を含むトナーは、帯電性が不安定であり、現像性が安定しない、という問題があった。
【0006】
上記問題に鑑み、本発明は、複数種の有機顔料を1つのトナー母体粒子中に内添したトナーであって、帯電安定性をより高めた静電荷像現像用トナーおよび当該トナーを用いた画像形成方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、結着樹脂と、少なくとも2種類の有機顔料と、カーボンブラックと、を含むトナー母体粒子と、外添剤としてのチタン酸ストロンチウムと、を含む、静電荷像現像用トナーに関する。
【0008】
また、上記目的を達成するための本発明の別の態様は、上記静電荷像現像用トナーを記録媒体に付着させる工程と、前記付着させた静電荷像現像用トナーを前記記録媒体に定着させる工程と、を有する画像形成方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数種の有機顔料を1つのトナー母体粒子中に内添したトナーであって、帯電安定性をより高めた静電荷像現像用トナーおよび当該トナーを用いた画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に関する画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.静電荷像現像用トナー
本発明の一実施形態は、感光体などの像担持体に形成された静電荷像(静電潜像)を現像するためのトナーに関する。上記トナーは、一成分系の現像剤であってもよいし、キャリア粒子とトナー粒子とを有する二成分系の現像剤であってもよい。
【0012】
上記トナーは、トナー母体粒子と、上記トナー母体粒子の表面に付着した外添剤と、を有する。そして、上記トナー母体粒子は、結着樹脂と少なくとも2種類の有機顔料とカーボンブラックとを含み、上記外添剤は、チタン酸ストロンチウムを含む。
【0013】
本発明者らの知見によれば、2種類以上の有機顔料を含むトナーは、用いる有機顔料の種類の増加に伴い、トナー母体粒子中に含有する有機顔料の量も多くなりやすい。そして、抵抗が大きい有機顔料の含有量が多くなると、トナーの帯電性が不安定になってしまう。トナーの帯電性が不安定になると、たとえば連続印刷の初期にはトナーの現像性が低く、所望の濃度の画像が形成されないことがある。また、トナーの帯電性が不安定になると、像担持体に付着されなかったトナーが画像形成装置内を飛散して、装置へ悪影響を及ぼすこともある。
【0014】
これに対し、本実施形態では、トナー母体粒子がカーボンブラックを含む。カーボンブラックは帯電性が高いため、トナーの帯電性を安定化させ、担持されなかったトナーの飛散を抑制できると考えられる。
【0015】
また、上記トナーにおいて外添剤に含まれるチタン酸ストロンチウムは、外添剤として用いられる他の物質(たとえばシリカなど)と比較して抵抗が低い。そのため、チタン酸ストロンチウムは、上記トナーにおいて抵抗調整剤としても作用し、顔料により高抵抗となったトナーの過剰な帯電を抑制することができる。また、外添剤としてトナー母体粒子の表面に付着したチタン酸ストロンチウムは、トナー母体粒子に内添される他の抵抗調整剤と比べて、印刷開始の早期から上記抵抗調整剤としての作用を発現しやすい。のこれにより、チタン酸ストロンチウムは、トナーの帯電性を安定化させて印刷初期からトナーの現像性を高め、かつトナーの飛散を抑制できると考えられる。
【0016】
なお、チタン酸ストロンチウムによる帯電性の安定化は、上記のように印刷開始の初期からその効能を発揮できる。一方で、長期にわたって画像形成を繰り返したときに、像担持体に付着せず繰り返し流動するトナーから外添剤であるチタン酸ストロンチウムが脱離することがあり、そのため長期使用時にはチタン酸ストロンチウムによる帯電性の安定化が維持できないことがある。これに対し、本実施形態では、トナー母体粒子に内添されるカーボンブラックにより、長期の帯電安定性も担保することができる。つまり、チタン酸ストロンチウムおよびカーボンブラックは、いずれもトナー粒子の帯電性を安定化させるが、外添剤であるチタン酸ストロンチウムによる効果は特に連続印刷の初期において顕著であり、カーボンブラックによる効果は特に帯電安定性の長期維持において顕著である。
【0017】
以下、上記知見に基づく本発明のトナーについて、より詳細に説明する。
【0018】
1-1.トナー母体粒子
トナー母体粒子は、結着樹脂と、2種類以上の有機顔料と、カーボンブラックを有する。
【0019】
トナー母体粒子は、体積基準の平均粒子径が3.0μm以上10.0μm以下であることが好ましく、5.0μm以上8.0μm以下であることがより好ましく、5.5μm以上7.0μm以下であることがさらに好ましい。特に、トナー母体粒子の体積基準の平均粒子径を5.0μm以上とすることで、2種類以上の顔料を十分にトナー母体粒子に内添させて発色性を良好とすることができ、かつトナーの転写効率を高めることができる。トナー母体粒子の体積基準の平均粒子径を8.0μm以下とすることで、形成される画像の解像度をより高めることができる。
【0020】
トナー母体粒子の体積基準の平均粒子径は、粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製、コールターマルチサイザー3)に、データ処理用ソフトSoftware V3.51を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定することができる。具体的には、0.02gの試料(トナー母体粒子)を、20mLの界面活性剤溶液(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加してなじませた後、1分間の超音波分散処理を行い、トナー母体粒子の分散液を調製する。この分散液を、サンプルスタンド内の電解液(ベックマン・コールター社製、ISOTONII)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。この濃度にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を100μmにし、測定範囲である2~60μmの範囲を256分割して頻度値を算出し、これをもとに体積基準の平均粒子径を算出する。
【0021】
1-1-1.結着樹脂
結着樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0022】
上記熱可塑性樹脂の例には、スチレン樹脂、ビニル樹脂(アクリル樹脂およびスチレン-アクリル樹脂など)、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、およびエポキシ樹脂などが含まれる。
【0023】
結着樹脂は、非晶性樹脂であってもよいし、結晶性樹脂であってもよい。あるいは、結晶性樹脂と非晶性樹脂とがハイブリッド化された複合樹脂であってもよい。
【0024】
(非晶性樹脂)
本明細書において、非晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)による測定において、融点が観測されない樹脂を意味する。また、本明細書において、樹脂に融点が観測されるとは、DSCにおいて、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークが観測されることを意味する。
【0025】
また、DSC測定における1度目の昇温過程において観測されたガラス転移温度をTg1とし、2度目の昇温過程において観測されたガラス転移温度をTg2としたとき、上記非晶性樹脂は、Tg1が35℃以上80℃以下であることが好ましく、45℃以上65℃以下であることがより好ましい。また、上記非晶性樹脂は、Tg2が20℃以上70℃以下であることが好ましく、30℃以上55℃以下であることがより好ましい。上記非晶性樹脂のTg1が35℃以上またはTg2が20℃以上であると、トナーの耐熱性(耐熱保管性など)をより高めることができる。上記非晶性樹脂のTg1が80℃以下またはTg2が70℃以下であると、トナーの低温定着性をより高めることができる。
【0026】
本明細書において、樹脂のガラス転移温度(Tg)は、公知のDSC測定機(たとえば、パーキンエルマー社製、ダイヤモンドDSC)を用いて測定した値とすることができる。具体的には、測定試料(樹脂)3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、DSC測定機のサンプルホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用する。そして、昇温速度10℃/分で0℃から200℃まで昇温する第1昇温過程、冷却速度10℃/分で200℃から0℃まで冷却する冷却過程、および昇温速度10℃/分で0℃から200℃まで昇温する第2昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によってDSC曲線を得る。この測定によって得られたDSC曲線に基づいて、それぞれの昇温過程における第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移温度(Tg1およびTg2)とする。
【0027】
上記非晶性樹脂の含有量は、トナー母体粒子の全質量に対して20質量%以上99質量%以下であることが好ましく、30質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上90質量%以下であることがさらに好ましい。上記非晶性樹脂の含有量が20質量%以上であると、形成される画像の強度をより高めることができる。
【0028】
上記非晶性樹脂の例には、スチレン樹脂、ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、およびポリエーテル樹脂などが含まれる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうち、非晶性ポリエステル樹脂およびスチレン-アクリル樹脂などのビニル樹脂が好ましい。
【0029】
上記非晶性ポリエステル樹脂は、トナーの低温定着性を高めることができる。上記非晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる非晶性の樹脂であればよい。上記多価カルボン酸の例に、不飽和脂肪族多価カルボン酸、芳香族多価カルボン酸、およびこれらの誘導体などが含まれるが、得られるポリエステル樹脂が非晶性となる限りにおいて、飽和脂肪族多価カルボン酸を併用してもよい。上記多価アルコールの例には、不飽和脂肪族多価アルコール、芳香族多価アルコール、およびこれらの誘導体などが含まれるが、得られるポリエステル樹脂が非晶性となる限りにおいて、飽和脂肪族多価アルコールを併用してもよい。上記多価脂肪酸および多価アルコールは、単独でもまたは2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
上記ビニル樹脂は、トナー母体粒子を硬くして、トナー母体粒子への外添剤の埋没を抑制し、チタン酸ストロンチウムによる帯電性の向上およびクリーニング性の向上効果をより高めることができる。上記ビニル樹脂の例には、炭素原子数6以上30以下の直鎖炭素鎖を有する(メタ)アクリル酸エステルの(共)重合体、スチレンの(共)重合体、その他の(メタ)アクリル酸エステルの(共)重合体、ビニルエステル類の(共)重合体、ビニルエーテル類の(共)重合体、ビニルケトン類の(共)重合体、およびアクリル酸またはメタクリル酸の(共)重合体などが含まれる。
【0031】
上記ビニル樹脂の含有量は、結着樹脂の全質量に対して0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。上記ビニル樹脂の含有量が0.1質量%以上であると、上記外添剤の埋没抑制効果が十分に奏される。上記ビニル樹脂の含有量が20質量%以下であると、他の樹脂(特には非晶性ポリエステル樹脂)の含有量を増やして、トナーの低温定着性を高めやすい。
【0032】
(結晶性樹脂)
本明細書において、結晶性樹脂とは、DSCによる測定において、融点が観測される樹脂を意味する。
【0033】
結晶性樹脂は、トナー母体粒子の柔軟性を高め、外添剤に含まれるチタン酸ストロンチウム粒子を固着しやすくする。また、結晶性樹脂は、トナーの定着性を高める。また、結晶性樹脂は顔料粒子を被覆して顔料粒子の分散性を高める。その結果、顔料粒子同士の間に一定の間隔を保つことができ、画像内部においても顔料粒子の重なり合いを抑えて均等に分散させることができるため、画像濃度を向上させることができると考えられる。
【0034】
上記結晶性樹脂の含有量は、トナー母体粒子の全質量に対して3質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。上記非晶性樹脂の含有量が3質量%以上であると、トナーの定着性をより高めることができる。
【0035】
上記結晶性樹脂の例には、スチレン樹脂、ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、およびポリエーテル樹脂などが含まれる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうち、非晶性ポリエステル樹脂およびスチレン-アクリル樹脂などのビニル樹脂が好ましい。
【0036】
上記結晶性ポリエステル樹脂は、トナーの低温定着性を高めることができる。特に本実施形態では、トナー母体粒子が内添する有機顔料の量が多くなりやすいが、この有機顔料が結晶性ポリエステル樹脂に対する核剤として作用し、トナー製造時および定着時(冷却時)の結晶性ポリエステル樹脂の分散性を高めるため、上記定着性の向上効果および画像濃度の向上が顕著である。
【0037】
上記結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる結晶性の樹脂であればよい。
【0038】
上記多価カルボン酸は、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、ドデカン二酸(1,12-ドデカンジカルボン酸)、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸などを含む2価の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸などを含む2価の芳香族ジカルボン酸などとすることができる。これらは、無水物または低級アルキルエステルであってもよい。
【0039】
あるいは、上記多価カルボン酸は、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等、およびこれらの無水物または低級アルキルエステルなどの3価以上のカルボン酸であってもよい。さらに、マレイン酸、フマル酸、3-ヘキセンジオイック酸、および3-オクテンジオイック酸などを含む不飽和多価カルボン酸を用いてもよい。
【0040】
上記多価アルコールは、脂肪族ジオールであることが好ましく、主鎖部分の炭素数が7以上20以下である直鎖脂肪族ジオールであることがより好ましい。特に上記直鎖脂肪族ジオールは、ポリエステル樹脂の結晶性を高めやすく、溶融温度を降下させにくい。そのため、上記直鎖脂肪族ジオールは、トナーの耐ブロッキング性、画像保存性、および低温定着性をより高めることができる。このとき直鎖脂肪族ジオールの、炭素数が7以上20以下であると、多価カルボン酸成分と重縮合させる際の融点をより低くすることができ、合成が容易である。
【0041】
上記脂肪族ジオールの例には、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、および1,18-オクタデカンジオールなどが含まれる。あるいは、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどを含む3価以上のアルコールを用いてもよい。
【0042】
上記結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、5,000以上50,000以下であることが好ましい。なお、本明細書において、結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)によって、たとえば以下の方法で測定される値である。
【0043】
装置として東ソー株式会社製、HLC-8120GPCを用い、カラムとして東ソー株式会社製、TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZ-M3連を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/分で流す。測定試料(樹脂)は、濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解した溶液を使用する。当該溶液は、超音波分散機を用いて、室温にて5分間処理を行い、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して得ることができる。10μLのこの試料溶液を上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出する。単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成された検量線に基づいて、測定試料の分子量分布を算出する。
【0044】
1-1-2.有機顔料
有機顔料は、有機化合物からなる顔料である。本実施形態では、呈される色味の調整およびトナーの物性などの調整を目的として、2種類以上の有機顔料が1つのトナー母体粒子中に内添される。
【0045】
上記2種類以上の有機顔料は、トナーにより呈すべき色調に応じた組み合わせとすることができる。たとえば、黒色のトナーとするときは、上記2種類以上の有機顔料はブルー顔料およびバイオレット顔料を含むことが好ましい。これらの有機顔料を含むと、トナーによって呈される画像の濃度をより高め、かつ黒色トナーとしたときの黒色の色相をより良好とすることができる。
【0046】
上記ブルー顔料の例には、C.I.C.I.Pigment Blue 15、C.I.Pigment Blue 15:1、C.I.Pigment Blue 15:2、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:4、C.I.Pigment Blue 15:5、C.I.Pigment Blue 15:6、C.I.Pigment Blue 16、C.I.Pigment Blue 56、C.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Blue 61、およびC.I.Pigment Blue 80などが含まれる。
【0047】
これらのうち、色相をより良好とし、導電性および耐光性をより高め、および近赤外領域の電磁波の透過性を低下させにくい観点からは、上記ブルー顔料は、フタロシアニン顔料であることが好ましい。フタロシアニン顔料であるブルー顔料の例には、C.I.Pigment Blue 15、C.I.Pigment Blue 15:1、C.I.Pigment Blue 15:2、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:4、C.I.Pigment Blue 15:5、C.I.Pigment Blue 15:6およびC.I.Pigment Blue 16などが含まれる。
【0048】
さらに形成される画像の濃度を高める観点からは、上記ブルー顔料は銅フタロシアニンであることが好ましく、C.I.Pigment Blue 15:3またはC.I.Pigment Blue 15:4であることが好ましい。
【0049】
上記バイオレット顔料の例には、C.I.Pigment Violet 19、C.I.Pigment Violet 23、C.I.Pigment Violet 24、およびC.I.Pigment Violet 32などが含まれる。
【0050】
これらのうち、形成される画像の濃度を高める観点からは、C.I.Pigment Violet 19、C.I.Pigment Violet 23、およびC.I.Pigment Violet 32が好ましく、C.I.Pigment Violet 23がより好ましい。
【0051】
なお、トナー母体粒子はこれら以外の有機顔料を含んでもよい。このとき、トナーによって呈される画像の濃度をより高め、かつ黒色トナーとしたときの黒色の色相をより良好とする観点からは、上記他の顔料は、吸収極大波長λmaxの差が50nm以上240nm以下となる有機顔料の組み合わせがトナー母体粒子に内添されるように選択されることが好ましい。
【0052】
また、可視光領域におけるより幅広い波長の電磁波を吸収して、黒色トナーとしたときの黒色の色相をより良好とする観点からは、トナー母体粒子は、上記ブルー顔料およびバイオレット顔料に加えて、メチルエチルケトンに分散させたときの吸収極大波長λmaxが400nmより大きく530nm以下となる領域に含まれる有機顔料P1をさらに含むことがよい。
【0053】
さらに、有機顔料P1は、吸収極大波長λmaxが400nmより大きく460nm未満となる有機顔料P1-1、および吸収極大波長λmaxが460nm以上530nm以下となる有機顔料P1-2のうち、少なくとも有機顔料P1-2を含むことが好ましい。有機顔料P1-2は、抵抗が低い顔料であることが多く、トナーの過剰帯電による帯電性の低下を生じさせにくい。
【0054】
一方で、可視光領域におけるより幅広い波長の電磁波をより十分に吸収する観点からは、トナー母体粒子は、有機顔料P1-1および有機顔料P1-2の両方を含むことが好ましい。より多くの種類の有機顔料をトナー母体粒子が含有すると、いずれかの有機顔料が退色しても他の有機顔料が当該退色した有機顔料の波長域をカバーできるため、形成された画像の耐光性もより高めることができる。さらには、本発明者らの知見によれば、有機顔料の種類が多いほど、おそらくは結晶性樹脂(特には結晶性ポリエステル樹脂)の分散性が高まることにより、トナー定着性がより高まる。
【0055】
有機顔料P1-1は、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、ベンズイミダゾリン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料およびペリノン顔料などであり得る。具体的には、有機顔料P1-1は、C.I.Pigment Yellow 1、C.I.Pigment Yellow 3、C.I.Pigment Yellow 12、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 14、C.I.Pigment Yellow 16、C.I.Pigment Yellow 17、C.I.Pigment Yellow 73、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Yellow 81、C.I.Pigment Yellow 83、C.I.Pigment Yellow 87、C.I.Pigment Yellow 97、C.I.Pigment Yellow 111、C.I.Pigment Yellow 120、C.I.Pigment Yellow 126、C.I.Pigment Yellow 127、C.I.Pigment Yellow 128、C.I.Pigment Yellow 139、C.I.Pigment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 154、C.I.Pigment Yellow 155、C.I.Pigment Yellow 173、C.I.Pigment Yellow 174、C.I.Pigment Yellow 175、C.I.Pigment Yellow 176、C.I.Pigment Yellow 180、C.I.Pigment Yellow 181、C.I.Pigment Yellow 185、C.I.Pigment Yellow 191、C.I.Pigment Yellow 194、C.I.Pigment Yellow 196、C.I.Pigment Yellow 213、C.I.Pigment Yellow 214、C.I.Pigment Yellow 217、C.I.Pigment Green 7、C.I.Pigment Green 36、C.I.Pigment Green 254、およびC.I.Pigment orange 43などとすることができる。
【0056】
これらのうち、有機顔料P1-1としては、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Yellow 120、C.I.Pigment Yellow 139、C.I.Pigment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 155、C.I.Pigment Yellow 180、C.I.Pigment Yellow 181、C.I.Pigment Yellow 185、C.I.Pigment Yellow 213、C.I.Pigment Green 7、C.I.Pigment Green 36、およびC.I.Pigment Green 254が好ましい。
【0057】
有機顔料P1-2は、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、縮合アゾ顔料、ナフトールAS顔料、ベンズイミダゾロン顔料などの顔料であり得る。具体的には、有機顔料P1-2は、C.I.Pigment Brown 23、C.I.Pigment Brown 25、C.I.Pigment Brown 41、およびC.I.Pigment Red 38などとすることができる。
【0058】
上記有機顔料の合計含有量は、トナー母体粒子の全質量に対して1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、7質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。上記非晶性樹脂の含有量をより多くすることで、形成される画像の発色性をより良好にすることができる。一方で、上記有機顔料の合計含有量が30質量%以下であると、トナー母体粒子に十分な量の結着樹脂を含ませることができるので、トナーが柔軟になって画像の定着性が十分に高まり、かつ、チタン酸ストロンチウムの脱離がより生じにくくなる。
【0059】
特に、上記有機顔料の合計含有量が5質量%以上あるいは7質量%以上であると、少ない量のトナーで十分な濃度の画像を形成できるため、トナーの付着量を減らし、トナーの使用量を低下させて環境負荷の低減に貢献できる。
【0060】
1-1-3.カーボンブラック
カーボンブラックは、炭素原子を主成分とする黒色顔料である。カーボンブラックの種類は特に限定されず、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、およびランプブラックなどのいずれであってもよい。なお、カーボンブラックは、表面処理を施されていてもよい。
【0061】
本実施形態では、トナー母体粒子がカーボンブラックを含有することで、2種類以上の有機顔料を内添することにより高抵抗化したトナーの帯電を安定化させる。
【0062】
カーボンブラックの含有量は、トナー母体粒子および外添剤を合計した全質量に対して0.1質量%より多く3.0質量%未満となる量であることが好ましく、0.1質量%より多く1.0質量%未満となる量であることがより好ましい。上記含有量が0.1質量%より多ければ、カーボンブラックによる帯電の安定化効果が十分に奏される。上記含有量が3.0質量%未満であれば、導電性が高いカーボンブラックがトナーによる電荷の保持性を低下させ、リークさせてしまうことによる、特には印刷初期におけるトナーの帯電性の低下が生じにくい。
【0063】
1-1-4.その他の成分
トナー母体粒子は、離型剤(ワックス)および荷電制御剤などを含有してもよい。
【0064】
上記離型剤は、定着部材などからのトナーの離型性を高めることができる。
【0065】
上記離型剤の例には、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、およびフィッシャートロプシュワックスなどを含む炭化水素ワックス、ジステアリルケトンなどを含むジアルキルケトンワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘニルベヘネート、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスルトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、およびジステアリルマレエートなどを含むエステルワックス、ならびにエチレンジアミンジベヘニルアミド、およびトリメリット酸トリステアリルアミドなどを含むアミドワックスなどが含まれる。
【0066】
上記離型剤の含有量は、トナー母体粒子の全質量に対して2質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。上記離型剤の含有量が2質量%以上であると、定着部材からのトナーの離型性が十分に高まる。上記離型剤の含有量が30質量%以下であると、トナー母体粒子に十分な量の結着樹脂を含ませることができるので、画像の定着性が十分に高まる。
【0067】
上記荷電制御剤は、トナー母体粒子の帯電性を調整することができる。
【0068】
上記荷電制御剤の例には、ニグロシン染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第四級アンモニウム塩化合物、アゾ金属錯体、サリチル酸金属塩またはその金属錯体などが含まれる。
【0069】
上記荷電制御剤の含有量は、結着樹脂の全質量に対して0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下がより好ましい。なお、荷電制御剤を過剰に添加するなどの方法でトナーの帯電性を制御しようとすると、トナー母体粒子の他の特性が大きく変化することがある。これに対し、本実施形態では、チタン酸ストロンチウムによりトナーの帯電性を調整することで、他の要求される特性を満たしつつ、トナーの帯電性も所望の程度に調整することができる。
【0070】
1-2.外添剤
外添剤は、チタン酸ストロンチウムの粒子を含む。外添剤は、他の成分を含んでいていてもよい。
【0071】
1-2-1.チタン酸ストロンチウム
チタン酸ストロンチウムは、トナーの帯電性を安定化させ、かつトナーのクリーニング性を向上させることができる。本実施形態では、外添剤にチタン酸ストロンチウムを含ませることによりトナーの帯電性等を調整する。そのため、トナー母体粒子の成分等を大きく変化させる必要がなく、トナー母体粒子の特性を維持したまま、帯電性およびクリーニング性を調整することが可能となる。
【0072】
また、チタン酸ストロンチウムは、正帯電性が高い。そのため、現像時にトナー母体粒子同士が摩擦して脱落したチタン酸ストロンチウムは、上記摩擦によりトナーとは逆の極性が付与されるため、トナーと分離して非画像部に集まりやすく、その結果、記録媒体に転写されずに像担持体に残存しやすい。この残存したチタン酸ストロンチウムが、クリーニング部材と像担持体との間に蓄積することにより、クリーニング部材からのトナーの漏れをせき止める。これにより、チタン酸ストロンチウムは、トナーのクリーニング性をより高めることができると考えられる。
【0073】
チタン酸ストロンチウムは、その製造方法または組成により、立方体状または直方体状、不定形、および角が取れた立方体形の、複数の粒子形状のいずれかとなり得る。本実施形態において、チタン酸ストロンチウムは、これらのうちいずれの粒子形状を有してもよい。たとえば、立方体状または直方体状のチタン酸ストロンチウムは、その形状のエッジにより像担持体の表面に薄く付着している帯電生成物を除去できるため、トナーの帯電性を良好にしやすい。また、不定形状のチタン酸ストロンチウムは、トナー母体粒子の表面に付着しやすいため、像担持体へのトナー母体粒子の融着(フィルミング)を抑制し、トナーのクリーニング性を高めやすい。角が取れた立方体形のチタン酸ストロンチウムは、これらの両方の特性を有することから、トナーの帯電性を良好としつつ、クリーニング性も高めやすい。
【0074】
チタン酸ストロンチウムの粒子の形状は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察によって確認することができる。
【0075】
立方体状または直方体状のチタン酸ストロンチウムは、焼成工程を経由しない製造方法(湿式法)により得ることができる。具体的には、硫酸チタニル水溶液を加水分解して得た含水酸化チタンスラリーのpHを調整して得たチタニアゾル分散液に、ストロンチウムの水酸化物を添加して、反応温度まで加温することで合成することができる。上記含水酸化チタンスラリーは、チタニアゾルの結晶化度および粒子径を所望の範囲にする観点から、pHを0.5以上1.0以下とすることが好ましい。また、チタニアゾル粒子に吸着しているイオンを除去する目的で、当該チタニアゾルの分散液に、たとえば水酸化ナトリウムおよびSr(OH)2・8H2Oなどのアルカリ性物質を添加することが好ましい。このとき、アルカリ金属イオンなどを含水酸化チタン表面に吸着させないために、スラリーはpH7以上にしないことが好ましい。また、反応温度は60℃以上100℃以下が好ましく、所望の粒度分布を得るためには、昇温速度を30℃/時間以下にすることが好ましく、反応時間は3時間以上12時間以下であることが好ましい。
【0076】
不定形状のチタン酸ストロンチウムは、焼成工程を経由する焼成法によって得ることができる。具体的には、炭酸ストロンチウムと酸化チタンをほぼ等モル秤量し、ボールミルなどで混合した後、圧力成形し、1000℃以上1500℃以下で焼成し、次いで、機械粉砕して分級する方法で、不定形のチタン酸ストロンチウムを得ることができる。なお、原料、原料組成、成形圧、焼成温度、粉砕および分級を適宜変更することにより、得られるチタン酸ストロンチウムの形状および粒子径などを調整することができる。
【0077】
角が取れた立方体形のチタン酸ストロンチウムは、チタン酸ストロンチウムにランタンをドープする方法によって得ることができる。具体的には、酸化ストロンチウム、酸化ランタンおよび酸化チタンを含むスラリーを攪拌混合しながら加熱する方法で、角が取れた立方体形のチタン酸ストロンチウムを得ることができる。
【0078】
なお、チタン酸ストロンチウムにランタンをドープすると、上記粒子形状の調整のほか、ドープ量によって球形化度を調整することができたり、像担持体の表面の角な減耗や傷つきを抑制したりすることもできる。さらには、チタン酸ストロンチウムにランタンをドープすると、電気抵抗がより低下しやすいため、トナーの帯電性をより安定化させやすく、特に低温低湿(LL)環境条件でのトナーの過剰帯電を防ぐことができる。
【0079】
チタン酸ストロンチウムがランタンを含有するときのランタン含有率は、3.0質量%15.0質量%以下であることが好ましい。上記ランタン含有率が3.0質量%以上であると、チタン酸ストロンチウムの形状が球形状により近くなり、水分吸着性をより小さくすることができる。また、上記ランタン含有率が15.0質量%以下であると、粗大粒子の発生を防ぎ、帯電性をより安定化させることができる。
【0080】
チタン酸ストロンチウムがランタンを含有すること、およびその含有量は、蛍光X線分析(XRF)により確認することができる。具体的には、3gのチタン酸ストロンチウムを加圧してペレット化し、蛍光X線分析装置(株式会社島津製作所製、XRF-1700など)を用いた定性分析にて測定を行、2θテーブルより測定した元素のKαピーク角度を決定することで、ランタンの存在を確認することができる。
【0081】
チタン酸ストロンチウムは、個数粒度分布におけるピークトップの粒子径が300nm未満であることが好ましく、10nm以上200nm以下であることがより好ましく、10nm以上100nm以下であることがさらに好ましく、30nm以上80nm以下であることが特に好ましい。チタン酸ストロンチウムの上記粒子径が300nm未満であると、チタン酸ストロンチウムとトナー母体粒子との接触点を十分に多くして、帯電性の調整作用をより十分に奏させることができるほか、チタン酸ストロンチウムの脱離にyほるトナーの帯電性の不安定化が生じにくい。また、チタン酸ストロンチウムの上記粒子径が100nm未満であると、チタン酸ストロンチウムの角が接触することによる像担持体の傷つきが生じにくい。チタン酸ストロンチウムの上記粒子径が10nm以上であると、帯電性の調整効果がより十分となり、またトナーの流動性が高くなりすぎないため、トナーのクリーニング性が良好になりやすい。
【0082】
チタン酸ストロンチウムの個数粒度分布におけるピークトップの粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して撮像された画像を画像解析して得ることができる。具体的には、上記撮像された画像中に含まれる100個のチタン酸ストロンチウム粒子の、粒子ごとの最長径および最短径を測定し、この中間値から当該チタン酸ストロンチウム粒子の球相当径を求める。そして、100個のチタン酸ストロンチウム粒子の上記球相当径の個数粒度分布における、ピークトップの粒子径を、上記ピークトップの粒子径とする。
【0083】
チタン酸ストロンチウムの含有量は、トナー母体粒子の全質量に対して、0.3質量%以上3.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上2.0質量%以下であることがより好ましい。上記チタン酸ストロンチウムの含有量が0.3質量%以上であると、帯電性をより安定させやすく、かつクリーニング性もより高めやすい。また、上記チタン酸ストロンチウムの含有量が3.0質量部以下であると、トナー母体粒子から脱離したチタン酸ストロンチウムによる過剰帯電が生じにくい。
【0084】
1-2-2.その他の外添剤
外添剤は、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、酸化亜鉛粒子、酸化クロム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化タングステン粒子、酸化スズ粒子、酸化テルル粒子、酸化マンガン粒子および酸化ホウ素粒子などの、チタン酸ストロンチウム以外の無機材料を主成分とする粒子を含んでいてもよい。これらの無機材料を主成分とする粒子は、必要に応じて、シランカップリング剤やシリコーンオイルなどの表面処理剤によって疎水化処理されていてもよい。これらの粒子径は、チタン酸ストロンチウムと同様の方法で測定されるピークトップの粒子径が20nm以上500nmであることが好ましく、70nm以上300nm以下であることがより好ましい。
【0085】
また、外添剤は、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体などを含む有機材料を主成分とする粒子を含んでいてもよい。これらの粒子径は、チタン酸ストロンチウムと同様の方法で測定されるピークトップの粒子径が10nm以上1000nmであることが好ましい。
【0086】
また、外添剤は、高級脂肪酸の金属塩などの滑剤を含んでいてもよい。上記高級脂肪酸典枝には、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸およびリシノール酸などが含まれる。上記金属塩を構成する金属の例には、亜鉛、マンガン、アルミニウム、鉄、銅、マグネシウムおよびカルシウムなどが含まれる。
【0087】
これらの外添剤の含有量は、チタン酸ストロンチウムと合計した外添剤の合計量が、トナー母体粒子の全質量に対して0.05質量%以上5.0質量部%以下となる量であることが好ましい。
【0088】
1-3.トナー母体粒子の製造方法
上記トナー母体粒子は、乳化重合凝集法および乳化凝集法などの方法により、公知のトナーと同様に製造することができる。
【0089】
乳化重合凝集法によれば、乳化重合法によって得られる結着樹脂の粒子の分散液と、顔料の粒子の分散液とを、任意に添加される離型剤および荷電制御剤などの粒子とともに混合し、所望の粒子径の粒子が得られるまでこれらを凝集、会合または融着させ、その後、外添剤を添加することにより、得ることができる。
【0090】
乳化凝集法によれば、結着樹脂を溶解させた溶液を貧溶媒に滴下して得られる結着樹脂の粒子の分散液を、顔料の粒子の分散液とを、任意に添加される離型剤および荷電制御剤などの粒子とともに混合し、所望の粒子径の粒子が得られるまでこれらを凝集、会合または融着させ、その後、外添剤を添加することにより、得ることができる。
【0091】
なお、本実施形態では、2種類以上の顔料をトナー粒子に内添するため、顔料の添加量が多くなりやすい。そのため、顔料の粒子の分散液を調製するときには、顔料の分散安定性を高めるため界面活性剤を分散液に添加することが好ましい。
【0092】
1-4.キャリア
キャリアは、上述したトナー粒子と混合して2成分磁性トナーを構成する。上記キャリアは、トナーに含有され得る公知の磁性粒子であればよい。
【0093】
上記磁性粒子の例には、鉄、鋼、ニッケル、コバルト、フェライト、およびマグネタイト、ならびに、これらとアルミニウムおよび鉛などとの合金などの磁性体を含む粒子が含まれる。上記キャリアは、上記磁性体からなる粒子の表面を樹脂などで被覆したコートキャリアであってもよいし、バインダー樹脂中に上記磁性体を分散させた樹脂分散型キャリアであってもよい。上記被覆用の樹脂の例には、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、スチレン・アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、およびフッ素樹脂などが含まれる。上記バインダー樹脂の例には、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、およびフェノール樹脂などが含まれる。
【0094】
キャリアの平均粒子径は、体積基準の平均粒子径が20μm以上100μm以下であることが好ましく、25μm以上80μm以下であることがより好ましい。上記キャリアの平均粒子径は、湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置であるシンパテック(SYMPATEC)社製へロス(HELOS)などにより測定することができる。
【0095】
キャリアの含有量は、トナー粒子およびキャリアの合計質量に対して、2質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0096】
2.画像形成装置
本発明の他の実施形態は、静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するトナー像形成部と、記録媒体への上記トナー像の転写により、上記トナー像を上記記録媒体に定着させる定着装置と、を有する画像形成装置、ならびに当該画像形成層を用いた画像形成方法に関する。本実施形態において、上記定着装置は、上述したトナーを上記記録媒体に定着させる。
【0097】
上記画像形成装置は、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックの4種類のカラー現像装置と、1つの電子写真感光体と、により構成される4サイクル方式の画像形成装置であってもよいし、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックの4種類のカラー現像装置と、それぞれの色ごとに設けられた4つの電子写真感光体と、により構成されるタンデム方式の画像形成装置であってもよい。
【0098】
図1は、本実施形態に関する画像形成装置100の一例を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置100は、画像読取部110、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50および定着装置60を有する。
【0099】
画像形成部40は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナーによる画像を形成する画像形成ユニット41Y、41M、41Cおよび41Kを有する。これらは、収容されるトナー以外はいずれも同じ構成を有するので、以後、色を表す記号を省略することがある。画像形成部40は、さらに、中間転写ユニット42および二次転写ユニット43を有する。これらは、転写装置に相当する。
【0100】
本実施形態では、Kのトナーとして上述したトナーを使用する。
【0101】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、電子写真感光体(像担持体)413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415を有する。帯電装置414は、例えばコロナ帯電器である。帯電装置414は、帯電ローラーや帯電ブラシ、帯電ブレードなどの接触帯電部材を電子写真感光体413に接触させて帯電させる接触帯電装置であってもよい。露光装置411は、例えば、光源としての半導体レーザーと、形成すべき画像に応じたレーザー光を電子写真感光体413に向けて照射する光偏向装置(ポリゴンモータ)とを含む。電子写真感光体413は、光導電性を有する負帯電型の有機感光体である。電子写真感光体413は、帯電装置414により帯電される。
【0102】
現像装置412は、二成分現像方式の現像装置である。現像装置412は、例えば、二成分現像剤を収容する現像容器と、現像容器の開口部に回転自在に配置されている現像ローラー(磁性ローラー)と、二成分現像剤が連通可能に現像容器内を仕切る隔壁と、現像容器における開口部側の二成分現像剤を現像ローラーに向けて搬送するための搬送ローラーと、現像容器内の二成分現像剤を撹拌するための撹拌ローラーと、を有する。現像容器には、例えば、二成分現像剤が収容されている。
【0103】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト(中間転写体)421、中間転写ベルト421を電子写真感光体413に圧接させる一次転写ローラー422、バックアップローラー423Aを含む複数の支持ローラー423、およびベルトクリーニング装置426を有する。中間転写ベルト421は、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも一つの駆動ローラーが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0104】
ベルトクリーニング装置426は、弾性部材426aを有する。弾性部材426aは、二次転写した後の中間転写ベルト421に当接して、中間転写ベルト421の表面上の付着物を除去する。弾性部材426aは、弾性体で構成されており、クリーニングブレード、ブラシなどが含まれる。
【0105】
二次転写ユニット43は、無端状の二次転写ベルト432、および二次転写ローラー431Aを含む複数の支持ローラー431を有する。二次転写ベルト432は、二次転写ローラー431Aおよび支持ローラー431によってループ状に張架される。
【0106】
定着装置60は、例えば、定着ローラー62と、定着ローラー62の外周面を覆い、用紙S上のトナー画像を構成するトナーを加熱、融解するための無端状の発熱ベルト10と、用紙Sを定着ローラー62および発熱ベルト10に向けて押圧する加圧ローラー63と、を有する。用紙Sは、記録媒体に相当する。
【0107】
画像形成装置100は、さらに、画像読取部110、画像処理部30および用紙搬送部50を有する。画像読取部110は、給紙装置111およびスキャナー112を有する。用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、および搬送経路部53を有する。給紙部51を構成する三つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量やサイズなどに基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53aなどの複数の搬送ローラー対を有する。
【0108】
画像形成装置100による画像の形成を説明する。
スキャナー112は、コンタクトガラス上の原稿Dを光学的に走査して読み取る。原稿Dからの反射光がCCDセンサー112aにより読み取られ、入力画像データとなる。入力画像データは、画像処理部30において所定の画像処理が施され、露光装置411に送られる。
【0109】
電子写真感光体413は一定の周速度で回転する。帯電装置414は、電子写真感光体413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411では、ポリゴンモータのポリゴンミラーが高速で回転し、各色成分の入力画像データに対応するレーザー光が、電子写真感光体413の軸方向に沿って展開し、当該軸方向に沿って電子写真感光体413の外周面に照射される。こうして電子写真感光体413の表面には、静電潜像が形成される。
【0110】
現像装置412では、現像容器内の二成分現像剤の撹拌、搬送によってトナー粒子が帯電し、二成分現像剤は現像ローラーに搬送され、現像ローラーの表面で磁性ブラシを形成する。帯電したトナー粒子は、磁性ブラシから電子写真感光体413における静電潜像の部分に静電的に付着する。こうして、電子写真感光体413の表面の静電潜像が可視化され、電子写真感光体413の表面に、静電潜像に応じたトナー画像が形成される。なお、「トナー画像」とは、トナーが画像状に集合した状態を言う。
【0111】
電子写真感光体413の表面のトナー画像は、中間転写ユニット42によって中間転写ベルト421に転写される。転写後に電子写真感光体413の表面に残存する転写残トナーは、電子写真感光体413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレードを有するドラムクリーニング装置415によって除去される。
【0112】
一次転写ローラー422によって中間転写ベルト421が電子写真感光体413に圧接することにより、電子写真感光体413と中間転写ベルト421とによって、一次転写ニップが電子写真感光体ごとに形成される。当該一次転写ニップにおいて、各色のトナー画像が中間転写ベルト421に順次重なって転写される。
【0113】
一方、二次転写ローラー431Aは、中間転写ベルト421および二次転写ベルト432を介して、バックアップローラー423Aに圧接される。それにより、中間転写ベルト421と二次転写ベルト432とによって、二次転写ニップが形成される。当該二次転写ニップを用紙Sが通過する。用紙Sは、用紙搬送部50によって二次転写ニップへ搬送される。用紙Sの傾きの補正および搬送のタイミングの調整は、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により行われる。
【0114】
二次転写ニップに用紙Sが搬送されると、二次転写ローラー431Aへ転写バイアスが印加される。この転写バイアスの印加によって、中間転写ベルト421に担持されているトナー画像が用紙Sに転写される(静電荷像現像用トナーを記録媒体に付着させる工程)。トナー画像が転写された用紙Sは、二次転写ベルト432によって、定着装置60に向けて搬送される。
【0115】
二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残存する転写残トナーなどの付着物は、中間転写ベルト421の表面に摺接されるクリーニングブレードを有するベルトクリーニング装置426によって除去される。このとき、中間転写ベルトとして前述の中間転写体を使用するため、経時的に動摩擦力を低減させることができる。
【0116】
定着装置60は、発熱ベルト10と加圧ローラー63とによって、定着ニップを形成し、搬送されてきた用紙Sを定着ニップ部で加熱、加圧する。こうしてトナー画像が用紙Sに定着する(静電荷像現像用トナーを記録媒体に定着させる工程)。トナー像が定着された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
【0117】
なお、上述した装置構成および画像形成方法は、本発明を実施するための例示的な形態であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0118】
たとえば、上述したトナーによる単色の画像のみ、あるいは上述したトナーと、近赤外領域の電磁波を吸収するトナーとによる画像のみ、を形成する装置により、これらのトナーのみによる画像を形成してもよい。
【実施例】
【0119】
以下、実施例を挙げて本発明についてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0120】
なお、以下の実施例において、特に言及がない場合、各粒子の平均粒子径は、マイクロトラック社製、マイクロトラックUPA-150(「MICROTRAC」は同社の登録商標)を用いて測定された値である。
【0121】
1.トナーの作製
1-1.顔料粒子分散液の調製
1-1-1.顔料粒子分散液(P1)の調製
・C.I.Pigment Blue 15:3(PB15:3): 50質量部
・C.I.Pigment Violet 23(PV23): 50質量部
・アニオン性界面活性剤: 15質量部
・イオン交換水: 400質量部
上記成分を混合し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)により10分間予備分散した後、高圧衝撃式分散機(株式会社スギノマシン製、アルティマイザー)を用い、圧力245MPaで30分間分散処理を行い、これらの顔料を含む粒子の水系分散液を得た。得られた分散液にイオン交換水を添加して、固形分が15質量%となるように調整することにより、顔料粒子分散液(P1)を調製した。顔料粒子分散液(P1)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、120nmであった。
【0122】
なお、上記アニオン性界面活性剤は、第一工業製薬株式会社製、ネオゲンSC(「ネオゲン」は同社の登録商標)である。
【0123】
1-1-2.顔料粒子分散液(P2)の調製
PV23の代わりに同量のC.I.Pigment Violet 24(PV24)を用いた以外は顔料粒子分散液(P1)の調製と同様にして、顔料粒子分散液(P2)を調製した。顔料粒子分散液(P2)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、120nmであった。
【0124】
1-1-3.顔料粒子分散液(P3)の調製
PB15:3の代わりに同量のC.I.Pigment Blue 16(PB16)を用いた以外は顔料粒子分散液(P1)の調製と同様にして、顔料粒子分散液(P3)を調製した。顔料粒子分散液(P3)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、120nmであった。
【0125】
1-1-4.顔料粒子分散液(P4)の調製
PB15:3およびPV23を用いず、代わりに同量のC.I.Pigment Brown 25(PBr25)およびC.I.Pigment Red 269(PR269)を用いた以外は顔料粒子分散液(P1)の調製と同様にして、顔料粒子分散液(P4)を調製した。顔料粒子分散液(P4)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、120nmであった。
【0126】
1-1-5.顔料粒子分散液(P5)の調製
PV23を用いず、代わりにPB15:3の配合量を100質量部とした以外は顔料粒子分散液(P1)の調製と同様にして、顔料粒子分散液(P5)を調製した。顔料粒子分散液(P5)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、120nmであった。
【0127】
1-1-6.顔料粒子分散液(CB)の調製
PB15:3およびPV23を用いず、代わりに100質量部のカーボンブラック(CB)を用いた以外は顔料粒子分散液(P1)の調製と同様にして、顔料粒子分散液(CB)を調製した。なお、カーボンブラック(CB)は、キャボット社製、リーガル330(「リーガル」は同社の登録商標)を用いた。顔料粒子分散液(CB)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、120nmであった。
【0128】
1-2.非晶性樹脂粒子分散液の調製
1-2-1.非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(a1)の調製
下記ビニル樹脂の単量体、非晶性ポリエステル樹脂とビニル樹脂のいずれとも反応する置換基を有する単量体、および重合開始剤(ジ-t-ブチルパーオキサイド)の混合液を滴下ロートに入れた。
スチレン: 80.0質量部
n-ブチルアクリレート: 20.0質量部
アクリル酸: 10.0質量部
重合開始剤: 16.0質量部
【0129】
また、下記非晶性ポリエステル樹脂の原料となる単量体を、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を備えた四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物: 50.2質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物: 249.8質量部
テレフタル酸: 120.1質量部
ドデセニルコハク酸: 46.0質量部
【0130】
撹拌下で、滴下ロートに入れた混合液を四つ口フラスコへ90分かけて滴下し、60分間熟成を行った後、減圧下(8kPa)にて未反応の単量体を除去した。その後、エステル化触媒として0.4質量部のTi(OBu)4を投入し、235℃まで昇温して、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間、反応を行った。次いで200℃まで冷却し、減圧下(20kPa)にて反応を行った後、脱溶剤を行い、非晶性ポリエステル樹脂(A1)を含む非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(a1)を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂(A1)の重量平均分子量(Mw)は24000、酸価は18.2mgKOH/gであった。
【0131】
1-2-2.非晶性ビニル樹脂粒子分散液(s1)の調製
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、8質量部のドデシル硫酸ナトリウムおよび3000質量部のイオン交換水を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、10質量部の過硫酸カリウムを200質量部のイオン交換水に溶解させた溶液を添加し、再度液温を80℃として、下記単量体の混合液を1時間かけて滴下した。
スチレン: 480.0質量部
n-ブチルアクリレート: 250.0質量部
メタクリル酸: 68.0質量部
上記混合液の滴下後、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより単量体の重合を行い、ビニル系樹脂粒子分散液S1を調製した。
【0132】
(第2段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、1100質量部のイオン交換水と、固形分換算で55質量部の前記第1段重合により調製したビニル系樹脂粒子分散液S1と、を仕込み、87℃に加熱した。その後、下記単量体、連鎖移動剤(n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート)および離型剤(パラフィンワックス:日本精蝋株式会社製、HNP0190)を85℃にて溶解させた混合液に対し、循環経路を有する機械式分散機(エム・テクニック株式会社製、CLEARMIX)により、10分間の混合分散処理を行い、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。この分散液を上記5Lの反応容器に追加し、5.4質量部の過硫酸カリウムを103質量部のイオン交換水に溶解させた重合開始剤の溶液を添加し、この系を87℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行って、ビニル系樹脂粒子分散液S1’を調製した。
スチレン: 256.5質量部
2-エチルヘキシルアクリレート: 95.3質量部
メタクリル酸: 38.2質量部
連鎖移動剤: 4.0質量部
離型剤: 131.0質量部
【0133】
(第3段重合)
上記第2段重合により得られたビニル系樹脂粒子分散液S1’にさらに、7.3質量部の過硫酸カリウムを157.9質量部のイオン交換水に溶解させた溶液を添加した。さらに、84℃の温度条件下で、下記単量体および連鎖移動剤(n-オクチル-3-メルカプトプロピオネー)の混合液を90分かけて滴下した。
スチレン: 370.0質量部
nーブチルアクリレート: 165.0質量部
メタクリル酸: 40.0質量部
メタクリル酸メチル: 47.2質量部
連鎖移動剤: 8.6質量部
【0134】
滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、非晶性ビニル樹脂粒子分散液(s1)を得た。
【0135】
1-3.結晶性樹脂粒子分散液の調製
1-3-1.結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(c1)の調製
両反応性モノマーを含む、下記の付加重合系樹脂(スチレンアクリル樹脂:StAc)ユニットの原料モノマーおよび重合開始剤(ジ-t-ブチルパーオキサイド)を滴下ロートに入れた。
スチレン: 40.0質量部
n-ブチルアクリレート: 16.0質量部
アクリル酸: 3.5質量部
重合開始剤: 8.0質量部
【0136】
また、下記の重縮合系樹脂(結晶性ポリエステル樹脂:CPEs)ユニットの原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、攪拌機および熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
テトラデカン二酸: 280質量部
1,4-ブタンジオール: 105質量部
次いで、撹拌器、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応容器に上記モノマーを入れ、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した。得られた混合液に0.4質量部のTi(O-n-Bu)4を添加し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。次いで、得られた反応液を200℃まで冷却したのち、減圧下(20kPa)にて、上述の測定方法により算出される酸価が核剤部位導入後に20.0mgKOH/gになるよう反応を行った。
【0137】
次いで、反応槽の圧力を徐々に開放して常圧に戻した後、結晶核剤として20.3質量部のステアリン酸を加え、常圧下にて温度200℃で1.5時間反応させた。その後、200℃にて反応槽を5kPa以下に減圧して2.5時間反応させ、結晶性樹脂(C)を得た。結晶性樹脂(C)の重量平均分子量(Mw)は11,500、酸価は20.0mgKOH/gであった。
【0138】
174.3質量部の結晶性樹脂(C)を102質量部のメチルエチルケトンに添加し、75℃で30分攪拌して溶解させた。次に、この溶解液に、3.1質量部の25質量%水酸化ナトリウム水溶液を添加した。この溶解液を、撹拌機を有する反応容器に入れ、撹拌しながら、375質量部の70℃に温めた水を70分間かけて滴下混合した。滴下の途中で容器内の液は白濁化し、全量滴下後に均一に乳化状の状態を得た。
【0139】
次いで、この乳化液を70℃で保温したまま、ダイヤフラム式真空ポンプ(BUCHI社製、V-700)を使用し、15kPa(150mbar)に減圧下で3時間撹拌することで、メチルエチルケトンを蒸留除去した後、冷却速度6℃/minで冷却し、結晶性ポリエステル樹脂(C1)の微粒子が分散された結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(c1)を得た。結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(c1)中の、樹脂粒子の体積平均粒径は202nmであった。
【0140】
1-3-2.結晶性ポリウレタン樹脂粒子分散液(c2)の調製
撹拌機および温度計を備えた反応装置に、1000質量部のイソフォロンジイソシアネート、830質量部の1,4-アジペート(1,4-ブタンジオールとアジピン酸とからなるポリエステルジオール)、96.3質量部の結晶核剤としてのステアリン酸、および250重量部のメチルエチルケトンを、窒素を導入しながら投入した。その後、80℃で6時間ウレタン化反応させた。次に、撹拌しながら2128質量部のイオン交換水を加え、その後反応系を減圧にして脱溶剤し、結晶性ポリウレタン樹脂(C2)の微粒子が分散された結晶性ポリウレタン樹脂粒子分散液(c2)を得た。
【0141】
1-4.離型剤粒子分散液(w1)の調製
離型剤 270.0質量部
アニオン性界面活性剤 13.5質量部
(有効成分60%、離型剤に対して3%)
イオン交換水 21.6質量部
上記の材料を混合し、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリン社製ゴーリンホモジナイザー)で、内液温度120℃にて離型剤を溶解した後、分散圧力5MPaで120分間、続いて40MPaで360分間分散処理し、冷却して、分散液を得た。当該分散液に、イオン交換水を加えて固形分量が20%になるように調整し、これを離型剤粒子分散液(w1)とした。当該離型剤粒子分散液(w1)中の離型剤粒子の体積基準のメジアン径(D50)は215nmであった。
【0142】
なお、上記離型剤は、パラフィン系ワックス(日本精蝋製HNP0190、融解温度85℃)であり、上記アニオン性界面活性剤は、第一工業製薬株式会社製、ネオゲンRKである。
【0143】
1-5.トナー母体粒子の作製
1-5-1.トナー母体粒子(1)の作製
撹拌装置、温度センサーおよび冷却管を取り付けた反応容器に、480質量部(固形分換算)の非晶性ビニル樹脂粒子分散液(s1)および350質量部のイオン交換水を投入した。室温下(25℃)で、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。さらに、3.5質量部(固形分換算)の顔料粒子分散液(CB)、および82.5質量部(固形分換算)の顔料粒子分散液(P1)を投入し、80質量部の50質量%塩化マグネシウム水溶液を、撹拌下、30℃で10分間かけて添加した。得られた分散液を5分間静置した後、60分間かけて80℃まで昇温し、80℃に到達後、60質量部(固形分換算)の結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(c1)を20分かけて投入し、粒子径の成長速度が0.01μm/分となるように撹拌速度を調整して、コールターマルチサイザー3(コールター・ベックマン社製)により測定した体積基準のメジアン径が6.0μmになるまで成長させた。
【0144】
次いで、60質量部の非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(a1)(固形分換算)を30分間かけて投入し、反応液の上澄みが透明になった時点で、80質量部の塩化ナトリウムを300質量部のイオン交換水に溶解させた水溶液を添加して、粒子径の成長を停止させた。次いで、80℃の状態で撹拌し、トナー粒子の平均円形度が0.970になるまで粒子の融着を進行させ、その後0.5℃/分以上の降温速度で冷却し30℃以下まで液温を下げた。
【0145】
次いで、固液分離を行い、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し、固液分離する操作を3回繰り返して洗浄した。洗浄後、35℃で24時間乾燥させることにより、トナー母体粒子(1)を得た。
【0146】
1-5-2.トナー母体粒子(2)の作製
非晶性ビニル樹脂粒子分散液(s1)を用いず、代わりに425.6部(固形分換算)の非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(a1)と、54.4部(固形分換算)の離型剤粒子分散液(w1)とを用いた以外はトナー母体粒子(1)の調製と同様にして、トナー母体粒子(2)を得た。
【0147】
1-5-3.トナー母体粒子(3)の作製
結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(c1)を用いず、代わりに固形分量が同量となる量の結晶性ポリウレタン樹脂粒子分散液(c2)を用いた以外はトナー母体粒子(2)の調製と同様にして、トナー母体粒子(3)を得た。
【0148】
1-5-4.トナー母体粒子(4)の作製
結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(c1)を用いず、代わりに固形分量が同量となる量の非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(a1)を用いた以外はトナー母体粒子(2)の調製と同様にして、トナー母体粒子(4)を得た。
【0149】
1-5-5.トナー母体粒子(5)の作製
顔料粒子分散液(CB)の添加量を0.35質量部(固形分換算)とし、代わりに非晶性ビニル樹脂粒子分散液(s1)の添加量を483.15質量部(固形分換算)とした以外はトナー母体粒子(2)の調製と同様にして、トナー母体粒子(5)を得た。
【0150】
1-5-6.トナー母体粒子(6)の作製
顔料粒子分散液(CB)の添加量を20.0質量部(固形分換算)とし、代わりに非晶性ビニル樹脂粒子分散液(s1)の添加量を463.5質量部(固形分換算)とした以外はトナー母体粒子(2)の調製と同様にして、トナー母体粒子(6)を得た。
【0151】
1-5-7.トナー母体粒子(7)の作製
顔料粒子分散液(CB)の添加量を21.0質量部(固形分換算)とし、代わりに非晶性ビニル樹脂粒子分散液(s1)の添加量を462.5質量部(固形分換算)とした以外はトナー母体粒子(2)の調製と同様にして、トナー母体粒子(7)を得た。
【0152】
1-5-8.トナー母体粒子(8)の作製
顔料粒子分散液(P1)の代わりに、固形分量が同量となる量の顔料粒子分散液(P2)を用いた以外はトナー母体粒子(2)の調製と同様にして、トナー母体粒子(8)を得た。
【0153】
1-5-9.トナー母体粒子(9)の作製
顔料粒子分散液(P1)の代わりに、固形分量が同量となる量の顔料粒子分散液(P3)を用いた以外はトナー母体粒子(2)の調製と同様にして、トナー母体粒子(9)を得た。
【0154】
1-5-10.トナー母体粒子(10)の作製
顔料粒子分散液(P1)の代わりに、固形分量が同量となる量の顔料粒子分散液(P4)を用いた以外はトナー母体粒子(2)の調製と同様にして、トナー母体粒子(10)を得た。
【0155】
1-5-11.トナー母体粒子(11)の作製
顔料粒子分散液(CB)を用いず、代わりに非晶性ビニル樹脂粒子分散液(s1)の添加量を483.5質量部(固形分換算)とした以外はトナー母体粒子(2)の調製と同様にして、トナー母体粒子(11)を得た。
【0156】
1-5-12.トナー母体粒子(12)の作製
顔料粒子分散液(P1)の代わりに、固形分量が同量となる量の顔料粒子分散液(P5)を用いた以外はトナー母体粒子(2)の調製と同様にして、トナー母体粒子(12)を得た。
【0157】
1-6.チタン酸ストロンチウムの作製
硫酸チタニル水溶液を加水分解して得られた含水酸化チタンスラリーをアルカリ水溶液で洗浄した。次に、塩酸を用いて、洗浄後の含水酸化チタンのスラリーのpHを1.0に調整して、チタニアゾル分散液を得た。得られたチタニアゾル分散液にNaOHを添加し、分散液のpHを5.0に調整した。上澄み液の電気伝導度が74μS/cmになるまで洗浄をくり返した後、含水酸化チタンに対して、0.98倍モル量のSr(OH)2・8H2Oを加えてSUS製反応容器に入れ、窒素ガス置換した。さらにSrTiO3換算の濃度が0.47mol/リットルになるように蒸留水を加えた。窒素雰囲気中で反応容器内のスラリーを84℃まで10℃/時間で昇温し、84℃に到達してから4.1時間反応を行った。反応後室温まで冷却し、上澄み液を除去した後純水で洗浄をくり返し、その後、ヌッチェで濾過を行った。得られたケーキを乾燥し、ピークトップ粒子径が35nmのチタン酸ストロンチウム微粒子を得た。
【0158】
イソプロパノールに溶解させたノルマルパラフィンワックス(Mw:500)溶液と、n-オクチルトリエトキシシランと、を上記で得たチタン酸ストロンチウム微粒子に添加し、1時間かけて温度を60℃に昇温することにより、100質量部のチタン酸ストロンチウム微粒子を、3.0質量部のn-オクチルトリエトキシシラン、および9.0質量部のノルマルパラフィンワックスで被覆した。その後、濾過、洗浄して、湿ケーキを得、それを60℃で一昼夜熱処理して乾燥し、表面処理したチタン酸ストロンチウム粒子A1を得た。
【0159】
得られたチタン酸ストロンチウム粒子A1の形状をSEMにより観察したところ、略立方体または直方体の形状をしており、そのピークトップ粒子径は40nmであった。
【0160】
なお、立方体状または直方体状のチタン酸ストロンチウム微粒子のピークトップ粒子径は以下の方法で測定した。走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製、JSM-7401F)を用いて、倍率40000倍でチタン酸ストロンチウム微粒子を観察し、一次粒子の画像解析によって、粒子ごとの最長径及び最短径を測定し、その中間値を球相当径とした。そして、測定した100個の一次粒子の粒子径と個数を元に個数粒度分布を求めた。当該分布に存在するピークのピークトップの粒子径を、チタン酸ストロンチウム粒子の粒子径とした。
【0161】
1-7.静電荷像現像用トナーの作製
1-7-1.トナー(1)の作製
100質量部のトナー母体粒子(1)に、0.6質量部の疎水性シリカ粒子(個数平均一次粒径:12nm、疎水化度:68)と、1.0質量部のチタン酸ストロンチウム粒子A1と、1.0質量部のゾルゲルシリカ(数平均一次粒子径=110nm、)と、を添加し、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)により回転翼周速35mm/秒、32℃で20分間混合した。混合後、45μmの目開きのふるいを用いて粗大粒子を除去した。
【0162】
このようにして得られたトナー粒子に対し、アクリル樹脂を被覆した体積平均粒径32μmのフェライトキャリアを、トナー粒子の濃度が6質量%となるように添加して混合した。こうして、静電荷像現像用トナーとしての、二成分現像剤であるトナー(1)を得た。
【0163】
1-7-2.トナー(2)~トナー(12)の作製
トナー母体粒子(1)の代わりにトナー母体粒子(2)~トナー母体粒子(12)をそれぞれ用いた以外はトナー(1)の作製と同様にして、トナー(2)~トナー(12)を得た。
【0164】
1-7-3.トナー(13)の作製
チタン酸ストロンチウムAを用いず、代わりに疎水性シリカ粒子の量を1.6質量部とした以外はトナー(1)の作製と同様にして、トナー(13)を得た。
【0165】
表1に、トナー(1)~トナー(13)の作製に使用したトナー母体粒子、顔料の種類およびその量(トナー母体粒子の質量を100質量部としたときの各顔料の量(質量部))、樹脂の種類、外添剤としてチタン酸ストロンチウムを添加したか否かを示す。
【0166】
【0167】
2.評価
2-1.画像濃度
市販の複合機(コニカミノルタ株式会社製、bizhub PRO C6500)を使用して、温度30℃、相対湿度80%RHの環境下で、トナー(1)~トナー(13)のそれぞれをブラックトナーとして使用し、他の色のトナーは使用せずに、100枚の連続プリントを実施し、画像を作成した。連続プリントで作成する画像は、A4サイズの記録材(コート紙)上に、人物顔写真画像、相対反射濃度0.4のハーフトーン画像、白地画像、相対反射濃度1.3のベタ画像を4等分に出力させたものにした。なお、ハーフトーン画像およびベタ画像の相対反射濃度は反射濃度計(マクベス社製、RD918)による測定値である。上記100枚の連続プリント終了後に続けてトナー付着量が3.0g/m2のベタ画像を10枚連続でプリントした。
【0168】
上記10枚のプリントのソリッドパターンの画像濃度(絶対濃度)を反射濃度計(X-Rite社製、X-Rite model 404)により測定し、10枚の画像濃度の平均値をもとに、以下の基準で画像濃度を評価した。
◎: 画像濃度の平均値は1.80以上である
〇: 画像濃度の平均値は1.75以上1.80未満である
△: 画像濃度の平均値は1.70以上1.75未満である
×: 画像濃度の平均値は1.7未満である
【0169】
2-2.低温定着性
市販の複合機(コニカミノルタ株式会社製、bizhub PRO C1070)の定着装置について、加圧ローラーおよび定着ローラーの表面温度、トナー付着量、およびシステム速度を変更可能に改造したものを用いた。常温常湿(温度20℃、相対湿度50%RH)の環境下で、トナー(1)~トナー(13)のそれぞれをブラックトナーとして使用し、他の色のトナーは使用せずに、A4サイズの上質紙(日本製紙株式会社製、NPI上質(坪量:127.9g/m2)に、トナー付着量が11.3g/m2、100mm×100mmサイズのベタ画像を形成した。このとき、定着ローラーの温度を110℃から2℃刻みで上げていきながら180℃まで繰り返し画像を形成していった。そして、定着オフセットによる画像汚れが目視で確認されない最低の定着温度を最低定着温度(U.O.回避温度)とし、以下の基準で低温定着性を評価した。
◎: 最低定着温度が135℃未満である
〇: 最低定着温度が135℃以上140℃未満である
×: 最低定着温度が140℃以上である
【0170】
2-3.帯電立ち上がり性
市販の複合機(コニカミノルタ株式会社製、bizhub PRO C6500)を使用して、低温低湿環境下(温度10℃、相対湿度湿度20%RH)の環境下で、A4版の上質紙(65g/m2)上にテスト画像として印字率5%の帯状ベタ画像を形成する画像形成を10万枚行った。100枚目と2000枚目のベタ画像部の画像濃度(絶対濃度)を反射濃度計(マクベス社製、RD918)で測定し、これら2枚の濃度差をもとに、以下の基準で帯電立ち上がり性を評価した。
◎: 濃度差が0.05未満である
〇: 濃度差が0.05以上0.07未満である
△: 濃度差が0.07以上0.1未満である
×: 濃度差が0.1以上である
【0171】
2-4.帯電安定性、
帯電立ち上がり性の評価において行った10万枚の画像形成後、機内を一度清掃した。その後、印字率が5%の文字画像をA4判の上質紙に1万枚プリントし、加えて、10%の文字画像で1万枚、さらにその後、20%の文字画像で1万枚、計3万枚プリントを実施した。トナー飛散量は、そこでの画像形成装置本体、カートリッジ及びトナーフィルターに飛散したトナーの総量とした。
3万枚印字後、カートリッジの上蓋など現像部位周辺に飛散したトナーを吸引してその質量を測定し、トナーフィルターに付着したトナーの質量を測定し、これらの和をトナー飛散量(g)とした。
トナー飛散量が、
◎:0.5g未満
○:0.5g以上1.0g未満
×:1.0g以上
【0172】
表2に、トナー(1)~トナー(13)の評価結果を示す。
【0173】
【0174】
表2から明らかなように、結着樹脂と、少なくとも2種類の有機顔料と、カーボンブラックと、を含むトナー母体粒子と、記トナー母体粒子の表面に付着した、チタン酸ストロンチウムを含む外添剤と、を含むトナー(1)~トナー(10)は、カーボンブラックを含まないトナー(11)よりも帯電性が安定しており、有機顔料を1種類しか含まないトナー(12)よりも画像濃度が高く、チタン酸ストロンチウムを含まないトナー(13)よりも帯電立ち上がり性高くかつ帯電性が安定していた。
【0175】
また、上記有機顔料としてブルー顔料およびバイオレット顔料を含むトナー(1)~トナー(9)は、これらを含まないトナー(10)よりも画像濃度が高かった。特にブルー顔料としてPB15:3またはPB15:4を含み、バイオレット顔料としてPV23を含むと、画像濃度が高くなる傾向が見られた。
【0176】
また、カーボンブラックの含有量を少なくするほど、帯電立ち上がり性が良好になる傾向が見られた(トナー(5)~トナー(7))。
【0177】
また、トナー母体粒子が結晶性樹脂を含むと、低温定着性が向上し、特に結晶性樹脂が結晶性ポリエステルであると、低温定着性がより高くなった。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明によれば、2種類以上の顔料を含有するトナーであって、画像形成時に要求される諸特性に優れ、かつ画像に要求される諸特性にも優れる画像を形成できるトナーが提供される。
【符号の説明】
【0179】
10 発熱ベルト
30 画像処理部
40 画像形成部
41Y、41M、41C、41K 画像形成ユニット
42 中間転写ユニット
43 二次転写ユニット
50 用紙搬送部
51 給紙部
51a、51b、51c 給紙トレイユニット
52 排紙部
52a 排紙ローラー
53 搬送経路部
53a レジストローラー対
60 定着装置
62 定着ローラー
63 加圧ローラー
100 画像形成装置
110 画像読取部
111 給紙装置
112 スキャナー
112a CCDセンサー
411 露光装置
412 現像装置
413 電子写真感光体
414 帯電装置
415 ドラムクリーニング装置
421 中間転写ベルト
422 一次転写ローラー
423、431 支持ローラー
423A バックアップローラー
426 ベルトクリーニング装置
426a 弾性部材
431A 二次転写ローラー
432 二次転写ベルト
D 原稿
S 用紙