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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】移動体制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/02 20060101AFI20240903BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240903BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240903BHJP
【FI】
B60W40/02
G08G1/16 C
B60W60/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020122253
(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公開番号】P2022018853
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】金山 光浩
(72)【発明者】
【氏名】栗本 昌幸
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/058720(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0277962(US,A1)
【文献】特開2022-097561(JP,A)
【文献】特開2019-101453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を検知する領域である検知領域、及び物体を検知する特性である検知特性の少なくともいずれかが互いに異なる複数の検知装置(21~23)を備える移動体(10)において、前記複数の検知装置による移動体周囲の検知情報に基づいて、移動体の自動運転制御を実施する移動体制御装置(40)であって、
前記移動体は自車両であり、前記複数の検知装置は、少なくとも、自車両の側方を検知領域とする側方検知装置及び自車両の後方を検知領域とする後方検知装置を有しており、
自車両における分岐及び車線形態を含む道路種別と、自車両周囲に存在する他車両の有無及びその他車両と自車両との関係を示す周辺車両情報とに対応する走行シーンが定められているとともに、前記道路種別に対応する走行シーンごとに、前記複数の検知装置に含まれる各検知装置の作動態様を示す作動パターン情報が定められており、
自動運転状態下において、自車両が走行する道路における前記道路種別と前記周辺車両情報とに基づいて前記走行シーンを判定する判定部と、
前記作動パターン情報を用い、前記道路種別及び前記周辺車両情報に対応する前記走行シーンの判定結果に基づいて、前記複数の検知装置に対する作動制限を実施する作動制限部と、
を備え、
前記作動パターン情報において、前記道路種別を同じとする走行シーンに、自車両が他車両に追従走行する走行シーンと追従走行しない走行シーンとが含まれており、前記道路種別を同じとする走行シーンのうち、前記追従走行する走行シーンでは、前記追従走行しない走行シーンよりも前記側方検知装置及び前記後方検知装置の少なくとも一方に対する作動制限の度合が大きくなっている、移動体制御装置。
【請求項2】
物体を検知する領域である検知領域、及び物体を検知する特性である検知特性の少なくともいずれかが互いに異なる複数の検知装置(21~23)を備える移動体(10)において、前記複数の検知装置による移動体周囲の検知情報に基づいて、移動体の自動運転制御を実施する移動体制御装置(40)であって、
前記移動体は自車両であり、前記複数の検知装置は、少なくとも自車両前方と自車両の左右側方とをそれぞれ検知範囲とする検知装置を有しており、
自車両の周囲に存在する他車両の有無及びその他車両と自車両との関係を示す周辺車両情報に対応する走行シーンが定められているとともに、前記周辺車両情報に対応する走行シーンごとに、前記複数の検知装置に含まれる各検知装置の作動態様を示す作動パターン情報が定められており、
自動運転状態下において、自車両周囲における前記周辺車両情報に基づいて前記走行シーンを判定する判定部と、
前記作動パターン情報を用い、前記周辺車両情報に対応する前記走行シーンの判定結果に基づいて、前記複数の検知装置に対する作動制限を実施する作動制限部と、
を備え、
他車両に対する自車両の追従走行として、車線変更を含めて他車両への追従を可能とする機能を有し、
前記作動制限部は、自車両が他車両に追従走行する場合に、自車両の左右側方を検知範囲とする前記検知装置の作動を制限し、追従対象の他車両が車線変更する場合に、左右両側のうち車線変更先となる側を検知範囲とする前記検知装置の作動制限を解除する、移動体制御装置。
【請求項3】
物体を検知する領域である検知領域、及び物体を検知する特性である検知特性の少なくともいずれかが互いに異なる複数の検知装置(21~23)を備える移動体(10)において、前記複数の検知装置による移動体周囲の検知情報に基づいて、移動体の自動運転制御を実施する移動体制御装置(40)であって、
前記移動体は自車両であり、前記複数の検知装置は、少なくとも自車両前方と自車両の左右側方とをそれぞれ検知範囲とする検知装置を有しており、
自車両における分岐及び車線形態を含む道路種別と、自車両周囲に存在する他車両の有無及びその他車両と自車両との関係を示す周辺車両情報とに対応する走行シーンが定められているとともに、前記道路種別に対応する走行シーンごとに、前記複数の検知装置に含まれる各検知装置の作動態様を示す作動パターン情報が定められており、
自動運転状態下において、自車両が走行する道路における前記道路種別と前記周辺車両情報とに基づいて前記走行シーンを判定する判定部と、
前記作動パターン情報を用い、前記道路種別及び前記周辺車両情報に対応する前記走行シーンの判定結果に基づいて、前記複数の検知装置に対する作動制限を実施する作動制限部と、
を備え、
他車両に対する自車両の追従走行として、車線変更を含めて他車両への追従を可能とする機能を有し、
前記作動制限部は、自車両が他車両に追従走行する場合に、自車両の左右側方を検知範囲とする前記検知装置の作動を制限し、追従対象の他車両が車線変更する場合に、左右両側のうち車線変更先となる側を検知範囲とする前記検知装置の作動制限を解除する、移動体制御装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記自車両の走行速度を含めて前記走行シーンを判定し、
前記作動制限部は、自車両が所定の低速走行状態である場合に、当該低速走行状態でない場合に比べて、前記複数の検知装置に対する作動制限の度合を大きくする請求項1~までのいずれか一項に記載の移動体制御装置。
【請求項5】
物体を検知する領域である検知領域、及び物体を検知する特性である検知特性の少なくともいずれかが互いに異なる複数の検知装置(21~23)を備える移動体(10)において、前記複数の検知装置による移動体周囲の検知情報に基づいて、移動体の自動運転制御を実施するプログラムであって、
前記移動体は自車両であり、前記複数の検知装置は、少なくとも、自車両の側方を検知領域とする側方検知装置及び自車両の後方を検知領域とする後方検知装置を有しており、
自車両における分岐及び車線形態を含む道路種別と、自車両周囲に存在する他車両の有無及びその他車両と自車両との関係を示す周辺車両情報とに対応する走行シーンが定められているとともに、前記道路種別に対応する走行シーンごとに、前記複数の検知装置に含まれる各検知装置の作動態様を示す作動パターン情報が定められており、
コンピュータに、
自動運転状態下において、自車両が走行する道路における前記道路種別と前記周辺車両情報とに基づいて前記走行シーンを判定する判定処理と、
前記作動パターン情報を用い、前記道路種別及び前記周辺車両情報に対応する前記走行シーンの判定結果に基づいて、前記複数の検知装置に対する作動制限を実施する作動制限処理と、
を実行させるものであり、
前記作動パターン情報において、前記道路種別を同じとする走行シーンに、自車両が他車両に追従走行する走行シーンと追従走行しない走行シーンとが含まれており、前記道路種別を同じとする走行シーンのうち、前記追従走行する走行シーンでは、前記追従走行しない走行シーンよりも前記側方検知装置及び前記後方検知装置の少なくとも一方に対する作動制限の度合が大きくなっている、プログラム。
【請求項6】
物体を検知する領域である検知領域、及び物体を検知する特性である検知特性の少なくともいずれかが互いに異なる複数の検知装置(21~23)を備える移動体(10)において、前記複数の検知装置による移動体周囲の検知情報に基づいて、移動体の自動運転制御を実施するプログラムであって、
前記移動体は自車両であり、前記複数の検知装置は、少なくとも自車両前方と自車両の左右側方とをそれぞれ検知範囲とする検知装置を有しており、
自車両の周囲に存在する他車両の有無及びその他車両と自車両との関係を示す周辺車両情報に対応する走行シーンが定められているとともに、前記周辺車両情報に対応する走行シーンごとに、前記複数の検知装置に含まれる各検知装置の作動態様を示す作動パターン情報が定められており、
コンピュータに、
自動運転状態下において、自車両周囲における前記周辺車両情報に基づいて前記走行シーンを判定する判定処理と、
前記作動パターン情報を用い、前記周辺車両情報に対応する前記走行シーンの判定結果に基づいて、前記複数の検知装置に対する作動制限を実施する作動制限処理と、
を実行させるものであり、
他車両に対する自車両の追従走行として、車線変更を含めて他車両への追従を可能としており、
前記作動制限処理において、自車両が他車両に追従走行する場合に、自車両の左右側方を検知範囲とする前記検知装置の作動を制限し、追従対象の他車両が車線変更する場合に、左右両側のうち車線変更先となる側を検知範囲とする前記検知装置の作動制限を解除する、プログラム。
【請求項7】
物体を検知する領域である検知領域、及び物体を検知する特性である検知特性の少なくともいずれかが互いに異なる複数の検知装置(21~23)を備える移動体(10)において、前記複数の検知装置による移動体周囲の検知情報に基づいて、移動体の自動運転制御を実施するプログラムであって、
前記移動体は自車両であり、前記複数の検知装置は、少なくとも自車両前方と自車両の左右側方とをそれぞれ検知範囲とする検知装置を有しており、
自車両における分岐及び車線形態を含む道路種別と、自車両周囲に存在する他車両の有無及びその他車両と自車両との関係を示す周辺車両情報とに対応する走行シーンが定められているとともに、前記道路種別に対応する走行シーンごとに、前記複数の検知装置に含まれる各検知装置の作動態様を示す作動パターン情報が定められており、
コンピュータに、
自動運転状態下において、自車両が走行する道路における前記道路種別と前記周辺車両情報とに基づいて前記走行シーンを判定する判定処理と、
前記作動パターン情報を用い、前記道路種別及び前記周辺車両情報に対応する前記走行シーンの判定結果に基づいて、前記複数の検知装置に対する作動制限を実施する作動制限処理と、
を実行させるものであり、
他車両に対する自車両の追従走行として、車線変更を含めて他車両への追従を可能としており、
前記作動制限処理において、自車両が他車両に追従走行する場合に、自車両の左右側方を検知範囲とする前記検知装置の作動を制限し、追従対象の他車両が車線変更する場合に、左右両側のうち車線変更先となる側を検知範囲とする前記検知装置の作動制限を解除する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の自動運転時に車両走行を支援する技術として、アダプティブクルーズコントロール(ACC)やレーンキープアシスト(LKA)等が知られている。このような技術を可能とするために、車両には自車両周囲を検知する複数のセンサが搭載されている。車両に複数のセンサが搭載されていると、各センサにおけるデータ情報の取得や、取得されたデータ情報の処理により電力消費が増大する。
【0003】
そこで、電力消費を抑制するための種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1に記載の技術では、渋滞または車両停止と判定された場合に、外部との通信機能を備える通信装置の通信を動作停止または作動制限することで、通信装置による電力消費を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-101453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動運転制御の実現のためには、車両に多数のセンサを搭載する必要があるとともに、各センサから取得されたデータ情報を高速に処理する必要がある。そのため、通信装置による電力消費の抑制では、十分に車両の電力消費を抑制することができない場合がある。なお、このような課題は、車両に限られず、船や飛行体(例えばドローン)などの移動体にも共通の課題である。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、自動運転制御を実施する移動体において、電力消費を抑制することができる移動体制御装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の手段は、物体を検知する領域である検知領域、及び物体を検知する特性である検知特性の少なくともいずれかが互いに異なる複数の検知装置を備える移動体において、前記複数の検知装置による移動体周囲の検知情報に基づいて、移動体の自動運転制御を実施する移動体制御装置であって、自動運転状態下において移動体の現時点の移動シーンを判定する判定部と、前記移動シーンの判定結果に基づいて、前記複数の検知装置のうち少なくともいずれかの検知装置の作動を制限する作動制限部と、を備える。
【0008】
移動体には、検知領域及び検知特性の少なくともいずれかが互いに異なる複数の検知装置が備えられており、移動体制御装置は、これら複数の検知装置による自車両周囲の検知情報に基づいて、移動体の自動運転制御を実施する。かかる場合、各検知装置から検知情報を繰り返し取得する必要があるとともに、取得された検知情報を高速で処理する必要があり、移動体における電力消費が増大することが考えられる。その点、上記構成では、自動運転状態下において移動体の現時点の移動シーンを判定し、その判定結果に基づいて、複数の検知装置のうち少なくともいずれかの検知装置の作動を制限するようにした。つまり、移動シーンによっては、作動を制限しても移動体の自動運転制御における安全性能が低下しない検知装置が存在することから、その検知装置の作動を制限するようにした。これにより、移動体の自動運転制御において、電力消費を抑制することができる。
【0009】
第2の手段では、前記移動シーンは、移動体としての自車両における分岐及び車線形態を含む道路種別に対応する走行シーンであり、前記道路種別に対応する走行シーンごとに、前記複数の検知装置に含まれる各検知装置の作動態様を示す作動パターン情報が定められており、前記判定部は、自動運転状態下において、自車両が走行する道路における前記道路種別に基づいて前記走行シーンを判定し、前記作動制限部は、前記作動パターン情報を用い、前記道路種別に対応する前記走行シーンの判定結果に基づいて、前記複数の検知装置に対する作動制限を実施する。
【0010】
分岐及び車線形態を含む道路種別が変わると、作動を制限可能な検知装置が変化する。上記構成では、自車両における道路種別に対応する走行シーンごとに、各検知装置の作動態様を示す作動パターン情報が定められており、自動運転状態下において、道路種別に対応する作動パターン情報を用いて、複数の検知装置に対する作動制限を実施するようにした。これにより、道路種別に基づいて複数の検知装置の作動を適正に制限することができ、電力消費を抑制することができる。
【0011】
第3の手段では、前記作動パターン情報において、前記走行シーンは、前記道路種別に加えて、自車両周囲に存在する他車両の有無及びその他車両と自車両との関係を示す周辺車両情報に対応するものであり、前記判定部は、自動運転状態下において、自車両が走行する道路における前記道路種別と前記周辺車両情報とに基づいて前記走行シーンを判定し、前記作動制限部は、前記作動パターン情報を用い、前記道路種別及び前記周辺車両情報に対応する前記走行シーンの判定結果に基づいて、前記複数の検知装置に対する作動制限を実施する。
【0012】
作動を制限可能な検知装置は、道路種別だけでなく、自車両周囲に存在する他車両の有無及びその他車両と自車両との関係を示す周辺車両情報によっても変化する。上記構成では、作動パターン情報において、走行シーンは、道路種別に加えて周辺車両情報に対応しており、自動運転状態下において、道路種別及び周辺車両情報に対応する作動パターン情報を用いて、複数の検知装置に対する作動制限を実施するようにした。これにより、道路種別及び周辺車両情報に基づいて複数の検知装置の作動を適正に制限することができ、電力消費を抑制することができる。
【0013】
第4の手段では、前記作動パターン情報において、前記道路種別を同じとする走行シーンに、自車両が他車両に追従走行する走行シーンと追従走行しない走行シーンとが含まれており、前記追従走行する走行シーンでは、前記追従走行しない走行シーンに比べて作動制限の度合が大きくなるように前記各検知装置の作動態様が定められている。
【0014】
周辺車両情報に対応する走行シーンとしては、例えば自車両が他車両に追従走行する走行シーンと、追従走行しない走行シーンとが存在する。追従走行する走行シーンでは、自車両は、追従対象の他車両である先行車両が走行する車線を走行するため、自ら車線認識等を実施する必要がなく、追従走行しない走行シーンに比べて作動を制限できる検知装置が存在する。上記構成では、道路種別を同じとする走行シーンにおいて、追従走行する走行シーンでは、追従走行しない走行シーンに比べて作動制限の度合が大きくなるように各検知装置の作動態様を定めるようにした。これにより、追従走行する走行シーンにおいて、追従走行しない走行シーンに比べて電力消費を抑制することができる。
【0015】
第5の手段では、前記複数の検知装置は、少なくとも、自車両の前方を検知領域とする前方検知装置を有しており、前記作動パターン情報において、前記道路種別を同じとする走行シーンのうち、前記追従走行する走行シーンでは、前記追従走行しない走行シーンよりも前記前方検知装置に対する作動制限の度合が大きくなっている。
【0016】
追従走行する走行シーンでは、自車両の前方に一定の先行車両が存在するため、追従走行しない走行シーンに比べて、この前方を検知領域とする前方検知装置の作動を制限できる。上記構成によれば、道路種別を同じとする走行シーンのうち、追従走行する走行シーンでは、追従走行しない走行シーンよりも前方検知装置に対する作動制限の度合が大きくなるようにした。これにより、前方検知装置に対する作動制限の度合の違いにより、追従走行する走行シーンにおいて、追従走行しない走行シーンに比べて電力消費を抑制することができる。
【0017】
第6の手段では、前記複数の検知装置は、少なくとも、自車両の側方を検知領域とする側方検知装置及び自車両の後方を検知領域とする後方検知装置を有しており、前記作動パターン情報において、前記道路種別を同じとする走行シーンのうち、前記追従走行する走行シーンでは、前記追従走行しない走行シーンよりも前記側方検知装置及び前記後方検知装置の少なくとも一方に対する作動制限の度合が大きくなっている。
【0018】
追従走行する走行シーンでは、自車両は先行車両に追従走行しているため、前方以外の物体を検知する必要がなく、追従走行しない走行シーンに比べて、前方以外の側方を検知領域とする側方検知装置、及び後方を検知領域とする後方検知装置の作動を制限できる。上記構成によれば、道路種別を同じとする走行シーンのうち、追従走行する走行シーンでは、追従走行しない走行シーンよりも側方検知装置及び後方検知装置の少なくとも一方に対する作動制限の度合が大きくなるようにした。これにより、側方検知装置及び後方検知装置の少なくとも一方に対する作動制限の度合の違いにより、追従走行する走行シーンにおいて、追従走行しない走行シーンに比べて電力消費を抑制することができる。
【0019】
第7の手段では、前記移動シーンは、移動体としての自車両周囲に存在する他車両の有無及びその他車両と自車両との関係を示す周辺車両情報に対応する走行シーンであり、前記周辺車両情報に対応する走行シーンごとに、前記複数の検知装置に含まれる各検知装置の作動態様を示す作動パターン情報が定められており、前記判定部は、自動運転状態下において、自車両周囲における前記周辺車両情報に基づいて前記走行シーンを判定し、前記作動制限部は、前記作動パターン情報を用い、前記周辺車両情報に対応する前記走行シーンの判定結果に基づいて、前記複数の検知装置に対する作動制限を実施する。
【0020】
自車両周囲に存在する他車両の有無及びその他車両と自車両との関係を示す周辺車両情報が変わると、作動を制限可能な検知装置が変化する。上記構成では、周辺車両情報に対応する走行シーンごとに、複数の検知装置に含まれる各検知装置の作動態様を示す作動パターン情報が定められており、自動運転状態下において、周辺車両情報に対応する作動パターン情報を用いて、複数の検知装置に対する作動制限を実施するようにした。これにより、周辺車両情報に基づいて複数の検知装置の作動を適正に制限することができ、電力消費を抑制することができる。
【0021】
第8の手段では、前記複数の検知装置は、少なくとも自車両前方と自車両の左右側方とをそれぞれ検知範囲とする検知装置を有しており、他車両に対する自車両の追従走行として、車線変更を含めて他車両への追従を可能とする移動体制御装置であって、前記作動制限部は、自車両が他車両に追従走行する場合に、自車両の左右側方を検知範囲とする前記検知装置の作動を制限し、追従対象の他車両が車線変更する場合に、左右両側のうち車線変更先となる側を検知範囲とする前記検知装置の作動制限を解除する。
【0022】
自車両が他車両を追従走行する場合に、車線変更を含めて他車両への追従を実施することがある。かかる場合、追従対象の他車両である先行車両は、変更先となる車線に先行車両が走行可能なスペースが確保されている場合に車線変更を実施するため、変更先となる車線に自車両が走行可能なスペースが確保されていない場合が存在する。上記構成では、自車両が他車両に追従走行する場合に、自車両の左右側方を検知範囲とする検知装置の作動を制限することで、電力消費を抑制する。そして、追従対象の他車両が車線変更する場合に、左右両側のうち車線変更先となる側を検知範囲とする検知装置の作動制限を解除するようにした。そのため、変更先となる車線に自車両が走行可能なスペースが確保されているかを判定した上で、自車両の車線変更を実施することができる。これにより、電力消費を抑制しつつ、自車両の自動運転制御における安全性能を確保することができる。
【0023】
第9の手段では、前記判定部は、移動体としての自車両の走行速度を含めて前記移動シーンとしての走行シーンを判定し、前記作動制限部は、自車両が所定の低速走行状態である場合に、当該低速走行状態でない場合に比べて、前記複数の検知装置に対する作動制限の度合を大きくする。
【0024】
自車両が低速走行状態である場合、低速走行状態でない場合に比べて、自車両の自動運転制御における安全性能が低下する可能性が低く、作動を制限可能な検知装置が増加する。上記構成では、低速走行状態である場合に、低速走行状態でない場合に比べて、複数の検知装置に対する作動制限の度合を大きくするようにした。これにより、低速走行状態において、低速走行状態でない場合に比べて電力消費を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】車載システムの構成を示すブロック図。
図2】自車両におけるセンサ装置の配置を示す図。
図3】制御処理を示すフローチャート。
図4】第1,第2,第4マップ情報を示す図。
図5】第3,第5マップ情報を示す図。
図6】単独走行状態から並列走行状態への切替動作を示す図。
図7】隊列走行状態における車線変更動作を示す図。
図8】路車通信による並列走行状態から単独走行状態への切替動作を示す図。
図9】隊列走行状態における先行車両と追従車両との入替動作を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施形態)
以下、本発明に係る移動体制御装置を具体化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。まず、本実施形態に係る車載システム100の構成について説明する。車載システム100は、自動運転による走行が可能な車両に搭載されている。
【0027】
図1に示すように、車載システム100は、センサ装置20と、走行状態認識装置30と、移動体制御装置としての車両制御装置40と、ナビゲーション装置50と、通信装置60と、を備えている。概要として、センサ装置20は、自車両周囲の物体を検知する複数のセンサを有しており、車両制御装置40は、各センサで検知された自車両周囲の検知情報に基づいて、移動体としての自車両10(図2参照)の自動運転制御を実施する。ここで自動運転とは、車両制御装置40が、走行環境を観測しつつ、ハンドル操作と加減速との両方を制御するレベルである。
【0028】
センサ装置20は、物体を検知する特性である検知特性が互いに異なる複数種類のセンサを有しており、具体的には画像センサ21と、レーダセンサ22と、レーザセンサ23と、を有している。なお、センサ装置20として、自車両周辺の物体までの距離を計測するソナーが含まれていてもよい。本実施形態において、画像センサ21、レーダセンサ22、及びレーザセンサ23が「検知装置」に相当する。
【0029】
画像センサ21は、車載カメラであり、CCDカメラやCMOSイメージセンサ、近赤外線カメラ等で構成されている。なお、画像センサ21は、単眼カメラであってもよいし、ステレオカメラであってもよい。画像センサ21は、撮像軸を中心に所定の撮影角度の範囲で広がる領域を撮影し、撮影した画像を表す画像データを生成する。
【0030】
レーダセンサ22は、ミリ波等の指向性のある電磁波を利用して自車両周辺の物体を検出するものである。レーダセンサ22は、所定時間ごとに所定範囲で広がる領域をレーダ信号で走査するとともに、自車両周辺の物体から反射された電磁波を受信することで、自車両10から中・遠距離に存在する当該物体との距離や、当該物体との相対速度等を第1検知情報として取得する。
【0031】
レーザセンサ23は、指向性のあるレーダ光を送信波とし、この送信波に応じて自車両周辺の物体から反射される反射波を受信する。レーザセンサ23は、所定時間ごとに所定範囲で広がる領域に送信波を送信するとともに、反射波を受信することで、自車両10から近距離に存在する他車両の位置や、自車両10と他車両との車間距離等を第2検知情報として取得する。画像センサ21で生成された画像データ、レーダセンサ22で取得された第1検知情報、及びレーザセンサ23で取得された第2検知情報を含む検知情報は、車両制御装置40に入力される。
【0032】
車載システム100は、物体を検知する領域である検知領域が互いに異なる複数のセンサ装置20を備えている。図2に示すように、複数のセンサ装置20は、少なくとも自車両前方の前方領域、自車両側方の左右側方領域、自車両後方の後方領域をそれぞれ検知領域とするものを含んでいる。各センサ装置20では、画像センサ21の撮影範囲、レーダセンサ22の走査範囲、及びレーザセンサ23の送信範囲を含む各センサ装置20の検出範囲HDが、自車両10の周方向において隣接するセンサ装置20の検出範囲HDの一部と重なるように配置されている。これにより、車両制御装置40は、自車両10の全周囲における検知情報を取得することができる。なお、本実施形態において、前方領域を検知領域とする各センサ21~23が「前方検知装置」に相当し、左右側方領域を検知領域とする各センサ21~23が「側方検知装置」に相当し、後方領域を検知領域とする各センサ21~23が「後方検知装置」に相当する。
【0033】
走行状態認識装置30は、自車両10の走行状態を認識する複数特性のセンサを有しており、具体的には車速センサ31、アクセルセンサ32、ブレーキセンサ33、操舵センサ34、及びシフトセンサ35を備える。車速センサ31は、車速VMを検出するセンサである。アクセルセンサ32は、アクセル開度すなわちアクセルペダルの操作量を検出するセンサである。ブレーキセンサ33は、ブレーキペダルの操作量を検出するセンサである。操舵センサ34は、自車両10の操舵量を検出するセンサである。シフトセンサ35は、シフトレバー(図示省略)の操作位置を示すシフト情報を検出するセンサである。
【0034】
ナビゲーション装置50は、道路地図データ及び各種情報を記録した地図記憶媒体、及びネットワークを介して接続される外部のクラウドサーバの少なくとも一方から地図データを取得し、現在地から目的地まで経路を含む走行計画を設定する。また、ナビゲーション装置50は、GPSアンテナを介して受信したGPS信号等に基づいて、自車両10の現在位置を算出し、自車両10の現在位置を表示画面に表示する。
【0035】
通信装置60は、外部との通信機能を有しており、具体的には車車通信及び路車通信を行う。車車通信では、他車両に搭載された通信装置との間で無線通信を行い、無線通信可能圏内に存在する他車両から走行計画の情報を含む各種情報を取得する。路車間通信では、路上に設置された路側装置70(図8参照)との間で無線通信を行い、路側装置70から提供される他車両の位置情報や自車両周辺に存在する障害物情報を取得する。
【0036】
車両制御装置40は、CPU、ROM、RAM及びI/O等を備えるマイクロコンピュータにより構成されており、センサ装置20、走行状態認識装置30、ナビゲーション装置50、及び通信装置60から各種情報を取得する。車両制御装置40と各装置20,30,50,60とは、CAN等の有線通信や、LAN、Bluetooth(登録商標)等の無線通信で接続されている。車両制御装置40は、ROMに記憶されている各種プログラムをCPUが実行することにより自車両10の自動運転制御を実施する。
【0037】
具体的には、車両制御装置40は、複数のセンサ装置20から、検知領域及び検知特性の少なくともいずれかが互いに異なる複数のセンサ21~23による検知情報を取得するとともに、取得されたこれらの検知情報を処理する。車両制御装置40は、複数のセンサ21~23による自車両周囲の検知情報に基づいてアクセル開度、ブレーキペダルの操作量、及び自車両10の操舵量を制御することで、自車両10の安全性能を確保しつつ自動運転制御を実施する。
【0038】
ところで、自動運転制御の実現のためには、自車両10に多数のセンサ21~23を搭載する必要があるとともに、各センサ21~23から取得された大量の検知情報を高速に処理する必要がある。そのため、各センサ21~23における検知情報の取得動作や、各センサ21~23から取得された検知情報の処理動作により自車両10の電力消費が増大する。
【0039】
そこで、本実施形態では、自動運転状態下において自車両10の現時点の走行シーン(移動シーン)を判定し、その判定結果に基づいて、複数のセンサ21~23のうち少なくともいずれかのセンサ21~23の作動を制限する制限処理を実施するようにした。
【0040】
ここでセンサ21~23の作動制限には、各センサ21~23における検知情報の取得周期を延長するクロックダウンの他、規定期間に亘って検知情報の取得を休止するスリープ、及び各センサ21~23への電力供給を停止して検知情報の取得を停止する電源オフが含まれる。
【0041】
次に、本実施形態の制限処理について、図3のフローチャートを参照して説明する。本制限処理は、自車両10の自動運転制御下において、車両制御装置40により所定期間ごとに繰り返し実施される。
【0042】
まず、ステップS10では、自車両10が前進走行する走行シーンであるか否かを判定する。具体的には、シフトセンサ35から取得されたシフト情報及び車速センサ31から取得された車速VMにより前進走行しているか否かを判定する。
【0043】
自車両10が後退走行している場合、ステップS10で否定判定する。この場合、ステップS12において、車両制御装置40の記憶部42に記憶された複数のマップ情報MP1~MP5のうち、第1マップ情報MP1を選択し、ステップS40に進む。
【0044】
ここでマップ情報MP1~MP5は、分岐及び車線形態を含む道路種別に対応する走行シーンごとに、複数のセンサ21~23に含まれる各センサ21~23の作動様態を示す作動パターン情報が定められた情報である。道路種別に対応する走行シーンには、例えば直進の他、交差点、横断歩道、及び踏切が含まれる。例えば、直進と交差点とでは他車両との衝突可能性が変化するように、自車両10の現時点の走行シーンは、道路種別に対応するものとなる。
【0045】
また、各センサ21~23の作動様態は、自車両の前方領域、左右側方領域、及び後方領域の検知領域ごとに設定されており、作動様態には、各センサ21~23の作動が制限されていない様態と制限されている様態とが含まれる。制限されている様態には前述のクロックダウン、スリープ、及び電源オフが含まれる。各マップ情報MP1~MP5の具体的な作動パターン情報については、後述する。
【0046】
自車両10が前進走行している場合、ステップS10で肯定判定する。この場合、ステップS14において、自車両10が所定の低速走行状態であるか否かを判定する。つまり、ステップS14では、自車両10の走行速度を含めて走行シーンを判定する。
【0047】
車速センサ31から取得された車速VM、又はアクセルセンサ32から取得されたアクセル開度と車速VMとから予測される予測車速が所定の速度閾値よりの低い場合、ステップS14で肯定判定する。この場合、ステップS16において、記憶部42から第2マップ情報MP2を選択し、ステップS40に進む。なお、ステップS14では、センサにおけるデータ情報や外部との通信による情報から算出した車速で判定を行ってもよい。
【0048】
一方、車速VM又は予測車速が速度閾値よりの高い場合、ステップS14で否定判定する。この場合、ステップS18,S20において、自車両周囲に存在する他車両の有無及びその他車両と自車両との関係を示す周辺車両情報に基づいて走行シーンを判定する。まずステップS18では、各センサ21~23から取得された検知情報に基づいて、自車両周囲に存在する他車両の有無を判定する。
【0049】
自車両周囲に他車両が存在せず、自車両10が単独走行する走行シーンである場合、ステップS18で否定判定する。この場合、ステップS22において、記憶部42から第3マップ情報MP3を選択し、ステップS40に進む。
【0050】
一方、自車両周囲に他車両が存在している場合、ステップS18で否定判定する。この場合、ステップS20において、その他車両と自車量との関係を判定する。具体的には、自車両10がその他車両を追従走行する走行シーンであるか否かを判定する。
【0051】
車両制御装置40は、設定された目標速度を上限としつつ、自車両10の前方を走行する先行車両12(図7参照)の速度に合わせて一定の車間距離を確保して自車両10を追従走行させるACC機能を有している。ステップS20では、自車両10の前方を走行する他車両の有無を判定するとともに、自車両10の前方を走行する他車両が存在している場合、その他車両が、ACC機能の対象となる先行車両12であるか否かを判定する。
【0052】
自車両10の前方を走行する他車両が存在しないか、存在している場合でもACC機能の対象となる先行車両12でない場合、つまり自車両10が他車両と並行走行する走行シーンである場合、ステップS20で否定判定する。この場合、ステップS24において、記憶部42から第4マップ情報MP4を選択し、ステップS40に進む。
【0053】
一方、自車両10が先行車両12に対してACC機能を作動させており、自車両10が先行車両12を追従走行する走行シーンである場合、ステップS20で肯定判定する。この場合、ステップS26において、記憶部42から第5マップ情報MP5を選択する。
【0054】
ここで、単独走行、並列走行、及び追従走行する各走行シーンが、周辺車両情報に対応する走行シーンに相当する。本実施形態の制限処理では、ステップS18,S22において、周辺車両情報に基づいて走行シーンを判定し、ステップS20,S24,S26において、周辺車両情報に対応する走行シーンの判定結果に基づいて、マップ情報MP3~MP5を選択する。なお、本実施形態において、単独走行及び並列走行する各走行シーンが「他車両に追従走行しない走行シーン」に相当する。
【0055】
続くステップS28では、先行車両12と自車両10とが隊列走行しているか否かを判定する。ここで隊列走行とは、先行車両12と自車両10とが、現在地から同一の目的地まで隊列を成して追従走行することをいう。そのため、隊列走行では、先行車両12と自車両10との隊列が乱れないようにするために、車両制御装置40は、先行車両12との車車通信により先行車両12の車線変更を含めて先行車両12への追従を可能としている。
【0056】
ステップS28で否定判定すると、ステップS40に進む。一方、ステップS28で否定判定すると、ステップS30において、先行車両12における車線変更の有無を判定する。ステップS30で否定判定すると、ステップS40に進む。一方、ステップS30で肯定判定すると、ステップS32において、第5マップ情報MP5に含まれる各センサ21~23の作動パターン情報において、これらの作動パターン情報に含まれる各センサ21~23の作動制限の一部を解除し、ステップS40に進む。
【0057】
ステップS40では、自車両10が走行する道路における道路種別に基づいて走行シーンを判定する。続くステップS42では、ステップS40における道路種別に対応する走行シーンの判定結果に基づいて、選択されたマップ情報MP1~MP5に含まれる複数の作動パターン情報から1つの作動パターン情報を選択する。なお、本実施形態において、ステップS10~S42の処理が「判定部」に相当する。
【0058】
前述したように、マップ情報MP1~MP5のうちのマップ情報MP3~MP5は、周辺車両情報に対応する走行シーンの判定結果に基づいて選択される。そのため、ステップS42において、マップ情報MP3~MP5から作動パターン情報が選択される場合には、道路種別と周辺車両情報とに基づいて走行シーンが判定され、道路種別及び周辺車両情報に対応する走行シーンの判定結果に基づいて、作動パターン情報が選択される。
【0059】
続くステップS44では、ステップS42で選択された作動パターン情報に基づいて各センサ21~23の作動様態を設定し、制御処理を終了する。そのため、ステップS42で選択された作動パターン情報において、少なくともいずれかのセンサ21~23の作動を制限する情報が含まれている場合、複数のセンサ21~23のうち少なくともいずれかのセンサ21~23の作動が制限される。なお、本実施形態において、ステップS44の処理が「作動制限部」に相当する。
【0060】
次に、各マップ情報MP1~MP5について、図4図5を参照して説明する。
【0061】
図4(A)に、第1マップ情報MP1を示し、図4(B)に、第2マップ情報MP2を示し、図4(C)に、第4マップ情報MP4を示す。図5(A)に、第3マップ情報MP3を示し、図5(B)に、第5マップ情報MP5を示し、図5(C)に、第4マップ情報MP4を示す。なお、本実施形態では、各センサ21~23に対するマップ情報MP1~MP5が互いに等しく設定されており、図4図5では、各センサ21~23に対する共通のマップ情報MP1~MP5が示されている。
【0062】
図4,5に示すように、各マップ情報MP1~MP5では、直進、交差点、横断歩道、及び踏切の各道路種別に対応する走行シーンごとに、前方領域、右側方領域、左側方領域、及び後方領域を検知領域とする各センサ21~23の作動パターン情報が定められている。各マップ情報MP1~MP5では、道路種別を同じとする走行シーンに対応する作動パターン情報がそれぞれ定められている。
【0063】
図4(A)に示すように、後退走行状態で用いられる第1マップ情報MP1では、直進、交差点、横断歩道、及び踏切の各道路種別に対応する走行シーンにおいて、前方領域を検知領域とする各センサ21~23の作動がクロックダウンに制限されており、右側方領域、左側方領域、及び後方領域を検知領域とする各センサ21~23の作動が制限されていない。
【0064】
図4(B)に示すように、低速度走行状態で用いられる第2マップ情報MP2では、直進、交差点、横断歩道、及び踏切の各道路種別に対応する走行シーンにおいて、前方領域、右側方領域、左側方領域、及び後方領域を検知領域とする各センサ21~23の作動がクロックダウンに制限されている。つまり、低速度走行状態では、他車両との衝突可能性が低いため、各センサ21~23の動作が制限されている。
【0065】
一方、図4(C)に示すように、並列走行状態で用いられる第4マップ情報MP4では、直進、交差点、横断歩道、及び踏切の各道路種別に対応する走行シーンにおいて、前方領域、右側方領域、及び左側方領域を検知領域とする各センサ21~23の作動が制限されておらず、後方領域を検知領域とする各センサ21~23の作動がクロックダウンに制限されている。図4(B),(C)に示すように、低速度走行状態である場合、低速度走行状態でない並列走行状態である場合に比べて、複数のセンサ21~23に対する作動制限の度合が大きく設定されている。
【0066】
なお、図4(B)に示すように、第2マップ情報MP2では、前方領域、右側方領域、左側方領域、及び後方領域を検知領域とする各センサ21~23に対する作動制限の度合が等しくなるように設定されている。
【0067】
また、図5(A)に示すように、単独走行状態で用いられる第3マップ情報MP3では、直進、交差点、横断歩道、及び踏切の各道路種別に対応する走行シーンにおいて、前方領域を検知領域とする各センサ21~23の作動が制限されておらず、右側方領域、左側方領域、及び後方領域を検知領域とする各センサ21~23の作動がクロックダウンに制限されている。
【0068】
一方、図5(B)に示すように、追従走行状態で用いられる第5マップ情報MP5では、直進、交差点、横断歩道、及び踏切の各道路種別に対応する走行シーンにおいて、前方領域を検知領域とする各センサ21~23の作動がクロックダウンに制限されており、右側方領域、左側方領域、及び後方領域を検知領域とする各センサ21~23の作動がスリープ又は電源オフに制限されている。つまり、第3,第5マップ情報MP3,MP5では、前方領域、右側方領域、左側方領域、及び後方領域を検知領域とする各センサ21~23に対する作動制限の度合が異なるように設定されている。
【0069】
図5(A),(B)に示すように、追従走行状態及び単独走行状態である場合、図4(C)に示す並列走行状態である場合に比べて、複数のセンサ21~23のうち少なくともいずれかのセンサ21~23の作動が制限されている。そのため、図6(A)に示すように、単独走行状態での直進に対応する走行シーンにおいて、自車両10の前方に駐車車両14である他車両が存在していることを検知した場合には、図6(B)に示すように、並列走行状態での直進に対応する走行シーンに切り替えられ、右側方領域及び左側方領域を検知領域とする各センサ21~23の作動制限が解除される。なお、図6では、各センサ21~23の作動制限の度合を検出範囲HDの大きさにより示しており、作動制限の度合が大きい場合には、小さい場合に比べて検出範囲HDが小さくなるように記載されている。図7図9についても同様である。
【0070】
また、図5(A),(B)に示すように、追従走行状態である場合と単独走行状態である場合とでは、例えば直進に対応する走行シーンにおいて、前方領域を検知領域とする各センサ21~23の作動制限の度合が、右側方領域、左側方領域、及び後方領域を検知領域とする各センサ21~23の作動制限の度合よりも低く設定されている点で共通する。交差点、横断歩道、及び踏切に対応する走行シーンについても同様である。
【0071】
一方、追従走行状態である場合、追従走行状態でない単独走行状態である場合に比べて、道路種別を同じとする各走行シーンにおいて、複数のセンサ21~23に対する作動制限の度合が大きく設定されている。具体的には、直進に対応する走行シーンにおいて、前方領域を検知領域とする各センサ21~23の作動制限の度合を比較すると、追従走行状態で用いられる第5マップ情報MP5ではクロックダウンに制限されている。一方、単独走行状態で用いられる第3マップ情報MP3では制限されていない。そのため、追従走行状態である場合、追従走行状態でない場合よりも前方領域を検知領域とする各センサ21~23の作動制限の度合が大きく設定されている。
【0072】
また、直進に対応する走行シーンにおいて、左右側方領域及び後方領域を検知領域とする各センサ21~23の作動制限の度合を比較すると、追従走行状態で用いられる第5マップ情報MP5ではスリープ又は電源オフに制限されている。一方、単独走行状態で用いられる第3マップ情報MP3ではクロックダウンに制限されている。そのため、追従走行状態である場合、追従走行状態でない場合よりも左右側方領域及び後方領域を検知領域とする各センサ21~23の作動制限の度合が大きく設定されている。
【0073】
なお、第5マップ情報MP5では、隊列走行状態での直進に対応する走行シーンにおいて、先行車両12の車線変更時に各センサ21~23の作動制限が解除される。例えば、図7(A)に示すように、隊列走行状態での直進に対応する走行シーンにおいて、先行車両12が左側に車線変更する場合には、図7(B)に示すように、前方領域、左側方領域、及び後方領域を検知領域とする各センサ21~23の作動制限が解除される。同様に、隊列走行状態での直進に対応する走行シーンにおいて、先行車両12が右側に車線変更する場合には、前方領域、右側方領域、及び後方領域を検知領域とする各センサ21~23の作動制限が解除される。これにより、隊列走行状態において自車両10が先行車両12に続いて車線変更した場合に、自車両10が、変更後の車線を走行している他車両と衝突することを回避することができる。
【0074】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0075】
・本実施形態では、自動運転状態下において自車両10の現時点の走行シーンを判定し、その判定結果に基づいて、複数のセンサ21~23のうち少なくともいずれかのセンサ21~23の作動を制限するようにした。つまり、走行シーンによっては、作動を制限しても自車両10の自動運転制御における安全性能が低下しないセンサ21~23が存在することから、そのセンサ21~23の作動を制限するようにした。これにより、自車両10の自動運転制御において、電力消費を抑制することができる。
【0076】
・分岐及び車線形態を含む道路種別が変わると、作動を制限可能なセンサ21~23が変化する。本実施形態では、道路種別に対応する走行シーンごとに、各センサ21~23の作動態様を示す作動パターン情報が定められており、自動運転状態下において、道路種別に対応する作動パターン情報を用いて、複数のセンサ21~23に対する作動制限を実施するようにした。これにより、道路種別に基づいて複数のセンサ21~23の作動を適正に制限することができ、電力消費を抑制することができる。
【0077】
・作動を制限可能なセンサ21~23は、道路種別だけでなく、自車両周囲に存在する他車両の有無及びその他車両と自車両10との関係を示す周辺車両情報によっても変化する。本実施形態では、作動パターン情報において、走行シーンは、道路種別に加えて周辺車両情報に対応しており、自動運転状態下において、道路種別及び周辺車両情報に対応する作動パターン情報を用いて、複数のセンサ21~23に対する作動制限を実施するようにした。これにより、道路種別及び周辺車両情報に基づいて複数のセンサ21~23の作動を適正に制限することができ、電力消費を抑制することができる。
【0078】
・周辺車両情報に対応する走行シーンとしては、例えば追従走行する走行シーンである追従走行状態と、追従走行しない走行シーンである単独走行状態が存在する。追従走行状態では、自車両10は、追従対象の他車両である先行車両12が走行する車線を走行するため、自ら車線認識等を実施する必要がなく、単独走行状態に比べて作動を制限できるセンサ21~23が存在する。本実施形態では、追従走行状態では、単独走行状態に比べて作動制限の度合が大きくなるように各センサ21~23の作動態様を定めるようにした。これにより、追従走行状態において、単独走行状態に比べて電力消費を抑制することができる。
【0079】
・具体的には、追従走行状態及び単独走行状態での直進に対応する走行シーンにおいて、追従走行状態では、単独走行状態よりも前方領域を検知領域とする各センサ21~23に対する作動制限の度合が大きくなるようにした。これにより、前方領域を検知領域とする各センサ21~23に対する作動制限の度合の違いにより、追従走行状態において、単独走行状態に比べて電力消費を抑制することができる。
【0080】
・また、追従走行状態では、単独走行状態よりも左右側方領域及び後方領域を検知領域とする各センサ21~23に対する作動制限の度合が大きくなるようにした。これにより、左右側方領域及び後方領域を検知領域とする各センサ21~23に対する作動制限の度合の違いにより、追従走行状態において、単独走行状態に比べて電力消費を抑制することができる。
【0081】
・自車両周囲に存在する他車両の有無及びその他車両と自車両10との関係を示す周辺車両情報が変わると、作動を制限可能なセンサ21~23が変化する。本実施形態では、周辺車両情報に対応する走行シーンごとに、各センサ21~23の作動態様を示す作動パターン情報が定められており、自動運転状態下において、周辺車両情報に対応する作動パターン情報を用いて、複数のセンサ21~23に対する作動制限を実施するようにした。これにより、周辺車両情報に基づいて複数のセンサ21~23の作動を適正に制限することができ、電力消費を抑制することができる。
【0082】
・自車両10が他車両を追従走行する場合に、車線変更を含めて他車両を追従する隊列走行を行うことがある。かかる場合、追従対象の他車両である先行車両12は、変更先となる車線に先行車両12が走行可能なスペースが確保されている場合に車線変更を実施するため、変更先となる車線に自車両10が走行可能なスペースが確保されていない場合が存在する。本実施形態では、先行車両12と自車両10とが隊列走行する場合に、自車両10の左右側方領域を検知範囲とするセンサ21~23の作動を制限することで、電力消費を抑制する。そして、隊列走行において先行車両12が車線変更する場合に、左右両側のうち車線変更先となる側を検知範囲とするセンサ21~23の作動制限を解除するようにした。そのため、変更先となる車線に自車両10が走行可能なスペースが確保されているかを判定した上で、自車両10の車線変更を実施することができる。これにより、電力消費を抑制しつつ、自車両10の自動運転制御における安全性能を確保することができる。
【0083】
なお、変更先となる車線に自車両10が走行可能なスペースが確保されていなかった場合には、車車通信により先行車両12にその旨を伝え、先行車両12の車線変更を中止するようにしてもよい。
【0084】
・自車両10が低速走行状態である場合、低速走行状態でない場合に比べて、自車両10の自動運転制御における安全性能が低下する可能性が低く、作動を制限可能なセンサ21~23が増加する。本実施形態では、低速走行状態である場合に、低速走行状態でない場合に比べて、複数のセンサ21~23に対する作動制限の度合を大きくするようにした。これにより、低速走行状態において、低速走行状態でない場合に比べて電力消費を抑制することができる。
【0085】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0086】
・移動体は、車両に限られず、例えば船や飛行体などであってもよい。
【0087】
・センサ装置20が有するセンサの検知特性の種類は、3種類に限られない。1種類でもよければ、2種類や4種類以上であってもよい。
【0088】
・道路種別に対応する走行シーンとして、直進、交差点、横断歩道、及び踏切を例示したが、例えば交差点が、左折、右折、及び一時停止の各走行シーンが想定される。そのため、マップ情報MP1~MP5では、左折、右折、及び一時停止の走行シーンごとに作動パターン情報が定められていてもよい。
【0089】
・上記実施形態では、各センサ21~23に対するマップ情報MP1~MP5が互いに等しく設定される例を示したが、別々に設定されてもよい。例えば、後退走行状態で自車両10を駐車場に駐車する場合には、自車両10から近距離に存在する他車両や人の位置を検知する必要がある一方、自車両10から中・遠距離に存在する他車両や人の位置を検知する必要がない。そのため、後退走行状態で用いられる第1マップ情報MP1では、画像センサ21及びレーザセンサ23の作動を、上記実施形態のように設定し、レーダセンサ22の作動を、スリープ又は電源オフに制限してもよい。
【0090】
・上記実施形態では、自車両周囲に存在する他車両の有無を判定するのに、各センサ21~23から取得された検知情報を用いる例を示したが、これに限られない。例えば、路車間通信により路側装置70から提供される他車両の位置情報に基づいて、自車両周囲に存在する他車両の有無を判定してもよい。
【0091】
具体的には、図8(A)に示すように、並列走行状態での直進に対応する走行シーンにおいて、自車両周辺に他車両が存在しないという情報を取得した場合には、図8(B)に示すように、単独走行状態での直進に対応する走行シーンに切り替え、右側方領域及び左側方領域を検知領域とする各センサ21~23の作動をクロックダウンに制限してもよい。これにより、電力消費を抑制することができる。また、単独走行状態での直進に対応する走行シーンにおいて、自車両周辺に他車両が存在しているという情報を取得した場合には、並列走行状態での直進に対応する走行シーンに切り替え、右側方領域及び左側方領域を検知領域とする各センサ21~23の作動制限を解除してもよい。
【0092】
・さらに、地図データを活用して、電力消費を抑制するようにしてもよい。具体的には、ナビゲーション装置50が取得した地図データに基づいて、電力消費を最も抑制可能な経路を判定し、その判定結果に基づいて走行計画を設定してもよい。
【0093】
・先行車両12と自車両10とが隊列走行している場合、自車両10は追従走行状態となるものの、先行車両12は並列走行状態となるため、自車両10に比べて電力消費を抑制することができない。そのため、先行車両12と自車両10とが隊列走行している場合、先行車両12と自車両10との電力消費を平準化するために、先行車両と追従車両とを入れ替えるようにしてもよい。
【0094】
具体的には、図9に示すように、車両制御装置40は、自車両10に搭載された蓄電池の残存容量を算出するとともに、車車通信により先行車両12に搭載された蓄電池の残存容量の情報を取得する。車両制御装置40は、先行車両12の残存容量と自車両10の残存容量との差分が所定の容量閾値以上である場合に、自車両10が先行車両となり、先行車両12が追従車両となるように、先行車両と追従車両とを入れ替えてもよい。
【0095】
・上記実施形態では、走行シーンの変化に伴って各センサ21~23の作動制限を解除する例を示したが、これに限られない。自車両10のユーザ設定により各センサ21~23の作動制限を解除するようにしてもよい。
【0096】
・本開示に記載の制御装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0097】
10…自車両、21…画像センサ、22…レーダセンサ、23…レーザセンサ、40…車両制御装置。
図1
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図7
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図9