(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】カール矯正装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 29/70 20060101AFI20240903BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B65H29/70
G03G21/00 530
(21)【出願番号】P 2020125244
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 嘉輝
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-225115(JP,A)
【文献】特開平05-150677(JP,A)
【文献】特開2011-191607(JP,A)
【文献】特開平06-003900(JP,A)
【文献】特開平06-075490(JP,A)
【文献】特開2003-233227(JP,A)
【文献】特開2015-138081(JP,A)
【文献】特開2013-088564(JP,A)
【文献】特開2007-022756(JP,A)
【文献】特開2007-055717(JP,A)
【文献】特開2006-106668(JP,A)
【文献】特開2005-255308(JP,A)
【文献】特開2005-089079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 29/70
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路を挟んで配される一対の部材
であるハードローラーとソフトローラーとのローラー対によって
形成されるニップ部に用紙を通過させることで、当該用紙にカール矯正処理を施すカール矯正部と、
前記ハードローラーを空冷により冷却する第1のファンと、前記ソフトローラーを空冷により冷却する第2のファンと、で構成される冷却部と、
前記第1のファン及び前記第2のファンを制御する制御部と、
を備え
、
前記制御部は、前記用紙の紙種に基づいて、前記第1のファン及び前記第2のファンの風量を決定する、
ことを特徴とするカール矯正装置。
【請求項2】
前記第1のファンは、前記第2のファンよりも風量の多い風を送風可能である、
ことを特徴とする請求項
1に記載のカール矯正装置。
【請求項3】
前記制御部は、更に、前記用紙のカバレッジに基づいて、前記第1のファン及び前記第2のファンの風量を決定する、
ことを特徴とする請求項
1又は2に記載のカール矯正装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記用紙の紙種及び/又はカバレッジが所定の条件を満たす場合には、前記第2のファンの風量が前記第1のファンの風量よりも多くなるように当該第1のファン及び当該第2のファンの風量を決定可能である、
ことを特徴とする請求項
3に記載のカール矯正装置。
【請求項5】
前記第2のファンは、前記カール矯正部に対して用紙搬送方向の下流側に配設されている、
ことを特徴とする請求項
1~4のいずれか一項に記載のカール矯正装置。
【請求項6】
前記第1のファンは、前記カール矯正部に対して用紙搬送方向の上流側に配設されている、
ことを特徴とする請求項
1~5のいずれか一項に記載のカール矯正装置。
【請求項7】
前記ハードローラーと前記ソフトローラーとの軸間距離を可変することにより、前記ニップ部のニップ幅を調整するニップ幅調整機構を設けた、
ことを特徴とする請求項
1~6のいずれか一項に記載のカール矯正装置。
【請求項8】
前記ハードローラーは、表層部が高離型性材料によって形成されている、
ことを特徴とする請求項
1~7のいずれか一項に記載のカール矯正装置。
【請求項9】
用紙上にトナー画像を転写する画像形成部と、
前記用紙上に前記トナー画像を定着させる定着装置と、
前記定着装置の下流側に配設される請求項1~
8のいずれか一項に記載のカール矯正装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カール矯正装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置では、像担持体からトナー像が転写された用紙を加熱・加圧することで、用紙上にトナー像を定着させているが、加熱・加圧によるストレスで用紙がカールしてしまう場合がある。そのため、かかる場合に発生するカールを矯正するカール矯正装置が開発され、実用化されている。
【0003】
このカール矯正装置においては、例えば、用紙のトナー担持面側に接触するローラーを冷却することで、溶融/軟化しているトナーを固化させ、当該ローラーによってトナー像が乱されることを防止する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術では、用紙のトナー担持面側に接触するローラーと対向するバックアップローラーは冷却しておらず、冷却効率が低い。そのため、画像形成装置の高速化・省エネルギー化に伴いトナーの低融点化が進む昨今においては、冷却時間が不十分となるおそれがあり、画像荒れやワックスムラ、タッキング等の画像不具合が発生してしまうという問題がある。特に、両面印刷の場合、例えば、裏面の加熱・加圧処理の際に、表面の定着済みのトナーが再溶融してしまうおそれがあり、当該トナーが固化する前に排紙されてしまうと、用紙の両面側にトナー像が形成されていることからタッキングの問題が顕著となる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、画像不具合を抑制することができるカール矯正装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明のカール矯正装置は、
搬送路を挟んで配される一対の部材であるハードローラーとソフトローラーとのローラー対によって形成されるニップ部に用紙を通過させることで、当該用紙にカール矯正処理を施すカール矯正部と、
前記ハードローラーを空冷により冷却する第1のファンと、前記ソフトローラーを空冷により冷却する第2のファンと、で構成される冷却部と、
前記第1のファン及び前記第2のファンを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記用紙の紙種に基づいて、前記第1のファン及び前記第2のファンの風量を決定する、
ことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカール矯正装置において、
前記第1のファンは、前記第2のファンよりも風量の多い風を送風可能である、
ことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のカール矯正装置において、
前記制御部は、更に、前記用紙のカバレッジに基づいて、前記第1のファン及び前記第2のファンの風量を決定する、
ことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のカール矯正装置において、
前記制御部は、前記用紙の紙種及び/又はカバレッジが所定の条件を満たす場合には、前記第2のファンの風量が前記第1のファンの風量よりも多くなるように当該第1のファン及び当該第2のファンの風量を決定可能である、
ことを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載のカール矯正装置において、
前記第2のファンは、前記カール矯正部に対して用紙搬送方向の下流側に配設されている、
ことを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載のカール矯正装置において、
前記第1のファンは、前記カール矯正部に対して用紙搬送方向の上流側に配設されている、
ことを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1~6のいずれか一項に記載のカール矯正装置において、
前記ハードローラーと前記ソフトローラーとの軸間距離を可変することにより、前記ニップ部のニップ幅を調整するニップ幅調整機構を設けた、
ことを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項1~7のいずれか一項に記載のカール矯正装置において、
前記ハードローラーは、表層部が高離型性材料によって形成されている、
ことを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載の発明は、
用紙上にトナー画像を転写する画像形成部と、
前記用紙上に前記トナー画像を定着させる定着装置と、
前記定着装置の下流側に配設される請求項1~8のいずれか一項に記載のカール矯正装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、画像不具合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】画像形成装置の全体構成を示す概略断面図である。
【
図2】画像形成装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図3】カール矯正装置の要部構成を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に係る画像形成装置の実施の形態について説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
【0022】
〔画像形成装置の構成〕
図1は、本発明を適用した実施形態における画像形成装置100の全体構成を示す概略断面図である。
画像形成装置100は、外部機器から受信した画像データ、又は、原稿から画像を読み取って得られた画像データに基づいて、電子写真方式により、カラー画像を形成する画像形成装置である。
【0023】
図1に示すように、画像形成装置100は、操作部13、表示部14、スキャナー部30、画像形成部40、給紙部50、定着装置60、カール矯正装置70、用紙搬送部80等を備えて構成される。
【0024】
操作部13は、表示部14の表示画面上を覆うように形成されたタッチパネルや、数字ボタン、スタートボタン等の各種操作ボタンを備え、ユーザーの操作に基づく操作信号を制御部110(
図2参照)に出力する。操作部13は、ユーザーからの操作指示を受け付ける。
【0025】
表示部14は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成され、制御部110から入力される表示信号の指示に従って各種画面を表示する。
【0026】
スキャナー部30は、自動原稿送り装置301及びスキャナー302を有する。スキャナー部30は、制御部110の制御に従って、自動原稿送り装置301により原稿dを給紙し、スキャナー302のCCD(Charge Coupled Device)センサー32により原稿dをスキャンして入力画像データを取得する。
【0027】
画像形成部40は、制御部110の制御に従って、YMCKの各色トナーによる画像を形成する画像形成ユニット41Y,41M,41C,41Kを有する。これらは、収容されるトナー以外はいずれも同じ構成を有するので、以後、色を表す記号を省略することがある。画像形成部40は、さらに、中間転写ユニット42及び二次転写ユニット43を有する。
【0028】
画像形成ユニット41は、露光部411、現像部412、感光体ドラム413、帯電部414及びドラムクリーニング部415を有する。感光体ドラム413は、例えば負帯電型の有機感光体である。感光体ドラム413の表面は、光導電性を有する。帯電部414は、例えばコロナ帯電器である。帯電部414は、帯電ローラーや帯電ブラシ、帯電ブレードなどの接触帯電部材を感光体ドラム413に接触させて帯電させる接触帯電装置であってもよい。露光部411は、例えば、光源としてレーザー光を出力するLD(LASER Diode)411aと、形成すべき画像に応じたレーザー光を感光体ドラム413に向けて照射する光偏向装置(ポリゴンモーター)とを含む。
【0029】
現像部412は、二成分現像方式の現像装置である。現像部412は、例えば、二成分現像剤を収容する現像容器と、当該現像容器の開口部に回転自在に配置されている現像ローラー(磁性ローラー)と、二成分現像剤が連通可能に現像容器内を仕切る隔壁と、現像容器における開口部側の二成分現像剤を現像ローラーに向けて搬送するための搬送ローラーと、現像容器内の二成分現像剤を撹拌するための撹拌ローラーと、を有する。上記現像容器には、二成分現像剤としての上記トナーが収容されている。
【0030】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421を感光体ドラム413に圧接させる一次転写ローラー422、二次転写ローラーUp(バックアップローラー)423Aを含む複数の支持ローラー423及びクリーニング装置426を有する。中間転写ベルト421は、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも一つの駆動ローラーが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印a方向に一定速度で走行する。
【0031】
二次転写ユニット43は、無端状の二次転写ベルト432及び二次転写ローラーLw(下側)431Aを含む複数の支持ローラー431を有する。二次転写ベルト432は、二次転写ローラーLw431A及び支持ローラー431によってループ状に張架される。
【0032】
給紙部50は、制御部110の制御に従って、用紙Sを画像形成部40に給紙する。給紙部50を構成する三つの給紙トレイユニット51a,51b,51cには、坪量やサイズなどに基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。
【0033】
定着装置60は、制御部110の制御に従って、画像形成部40によりトナー像が形成された用紙を加熱及び加圧する。定着装置60は、加熱部材である無端状の定着ベルト61と、加熱ローラー62と、加圧ローラー64に対向して配置された定着ローラー63と、加圧ローラー64と、分離ファン65と、を備える。定着ベルト61は、加熱ローラー62と定着ローラー63とに張架されている。加熱ローラー62は、定着ベルト61を加熱するハロゲンヒーター(図示略)などの加熱手段を内蔵する。定着ローラー63は、定着ベルト61と加圧ローラー64との間にニップ部を形成する。
【0034】
以上の構成において、不図示の駆動手段によって加圧ローラー64が反時計方向に回転すると、定着ベルト61、加熱ローラー62、定着ローラー63が時計方向に回動・回転する。定着ベルト61は当接する加熱ローラー62により加熱され、定着ローラー63も加熱される。そして、トナー像が形成された用紙は、ニップ部を通ることにより、加熱・加圧され、用紙上に転写されたトナー像が溶融定着する。
【0035】
また、分離ファン65は、ニップ部から排出される用紙に対してエアーを吹き付けて定着ベルト61から用紙を分離する。エアー分離部は、外部から空気を吸引してニップ部の方向へ送り出す吸引ファン(図示略)と、送り出した空気の経路であるダクトと、を有する。分離ファン65により用紙を定着ベルト61から分離することにより、定着ベルト61の表面に分離爪などの部材を接触させずに用紙を分離させることができるため、定着ベルト61の表面を損傷させることはない。
【0036】
カール矯正装置70は、カール矯正部71を通過する用紙Sを強制的に曲げ変形させることで、用紙Sのカールを矯正する。カール矯正装置70は、ハードローラー(金属ローラー)71aとソフトローラー71bと、によって構成されるカール矯正部71と、ハードローラー71aを冷却する上側冷却ファン72と、ソフトローラー71bを冷却する下側冷却ファン73と、を備える。なお、カール矯正装置70の詳細については後述する。
【0037】
用紙搬送部80は、排紙部82及び搬送経路部83を有する。用紙搬送部80は、制御部110に従って、搬送経路部83により用紙Sを画像形成部40に搬送し、その後、定着装置60及びカール矯正装置70を経た後、排紙部82により用紙Sを排紙する。搬送経路部83は、レジストローラー対83aなどの複数の搬送ローラー対を有する。用紙搬送部80は、1面を画像形成した用紙を反転して再度画像形成部40に搬送する反転経路部を有する。
【0038】
図2は、画像形成装置100の機能的構成を示すブロック図である。
図2に示すように、画像形成装置100は、制御部110、記憶部12、操作部13、表示部14、通信部15、画像生成部16、画像メモリー18、画像処理部19、スキャナー部30、画像形成部40、給紙部50、定着装置60、カール矯正装置70、用紙搬送部80等を備えて構成される。なお、既に説明した機能部については、説明を省略する。
【0039】
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成される。CPUは、操作部13から入力される操作信号又は通信部15により受信される指示信号に応じて、記憶部12に記憶されている各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って、画像形成装置100の各部の動作を集中制御する。
例えば、制御部110は、画像生成部16又はスキャナー部30により生成され、画像メモリー18に保持された原画像を、画像処理部19により画像処理させて、画像処理後の原画像に基づいて、画像形成部40により用紙上に画像を形成させる。
【0040】
記憶部12は、制御部110により読み取り可能なプログラム、プログラムの実行時に用いられるファイル等を記憶している。記憶部12としては、ハードディスク等の大容量メモリーを用いることができる。
【0041】
通信部15は、ネットワーク上の外部装置、例えばユーザー端末、サーバー、他の画像形成システム等と通信する。
通信部15は、ユーザー端末からネットワークを介して、画像を形成する指示内容がページ記述言語(PDL:Page Description Language)で記述されたベクトルデータを受信する。
【0042】
画像生成部16は、通信部15により受信したベクトルデータをラスタライズ処理し、ビットマップ形式の原画像を生成する。原画像は、各画素がC(シアン)、M(マジェンタ)、Y(イエロー)及びK(黒)の4色の画素値を有する。画素値は画像の濃淡を表すデータ値であり、例えば8bitのデータ値は0~255階調の濃淡を表す。
【0043】
画像メモリー18は、画像生成部16又はスキャナー部30により生成された原画像を一時的に保持するバッファーメモリーである。画像メモリー18としては、DRAM(Dynamic RAM)等を用いることができる。
【0044】
画像処理部19は、画像メモリー18から原画像を読み出して、濃度補正処理、中間調処理等の画像処理を施す。
濃度補正処理は、原画像の各画素の画素値を、用紙上に形成された画像の濃度が目標の濃度と一致するように補正した画素値に変換する処理である。
中間調処理は、中間調を疑似的に再現するための処理であり、例えば誤差拡散処理、組織的ディザ法を用いたスクリーン処理等である。
【0045】
〔カール矯正装置の要部構成〕
次に、カール矯正装置70の詳細について説明する。
図3は、カール矯正装置70の要部構成を示す拡大図である。
【0046】
図3に示すように、カール矯正装置70は、定着装置60の下流側に設けられており、定着装置60で加熱・加圧された際に発生する用紙Sのカールを矯正する。カール矯正装置70は、用紙Sにカール矯正処理を施すカール矯正部71と、上側冷却ファン72と、下側冷却ファン73と、を備える。
【0047】
カール矯正部71は、用紙Sの搬送路Dを挟んで配される一対の部材としてのハードローラー71aとソフトローラー71bと、で構成されている。カール矯正部71は、ハードローラー71aとソフトローラー71bとのローラー対により形成されるニップ部(ニップ幅)に用紙Sを通過させることで、用紙Sにカール矯正処理を施す。
【0048】
ハードローラー71aは、金属ローラーであって、例えば、ステンレス鋼等により形成されている。また、ハードローラー71aは、ワックスの付着(剥がれ)等による画像不具合を抑制することを目的として、離型性の高い材料(例えば、PFA(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂で形成されたチューブ(図示省略)によって被覆されている。なお、ハードローラー71aは、例えば、外面を上記PFAでコーティングするようにしてもよい。
【0049】
ソフトローラー71bは、例えば、スポンジや発泡シリコン等により形成されたローラーである。ソフトローラー71bは、搬送路Dを挟んでハードローラー71aと対向するように配設されている。なお、ソフトローラー71bは、ハードローラー71aとの間でニップ部を形成することが可能な弾性ローラーであればよく、その材質は上記のスポンジや発泡シリコンに限定されるものではない。
【0050】
上側冷却ファン(第1のファン)72は、ハードローラー71aの上方に配設され、ハードローラー71aに対して上方からエアーを吹き付けることで当該ハードローラー71aを冷却する。上側冷却ファン72は、下側冷却ファン73よりも大型のファンであり、下側冷却ファン73よりも風量の多い風を送風することが可能となっている。
【0051】
ここで、定着装置60においてトナー像が溶融定着されるのは用紙Sの定着ローラー63と接触する側の面(以下、上面と称す)である。つまり、用紙Sが定着装置60を通過した際、用紙Sの上面の温度は、反対側の加圧ローラー64と接触する面(以下、下面と称す)よりも高くなっている。そのため、本実施形態のカール矯正装置70では、通常時において、上側冷却ファン72の風量を下側冷却ファン73の風量よりも多くすることで、用紙Sの上面の冷却効率を高めている。更に、カール矯正装置70では、用紙Sの上面の冷却効率をより高めるため、当該用紙Sの上面と接触する側(搬送路Dを挟んで上側)に熱伝導率の高いハードローラー71aが配設されている。
【0052】
また、上側冷却ファン72は、ハードローラー71aの上方に配設されているが、このハードローラー71aの軸心を通る鉛直線よりも右側、すなわち用紙搬送方向の上流側にずれた位置に配設されている。これは、上側冷却ファン72によって、ハードローラー71aを冷却するだけではなく、カール矯正部71の上流側に設けられているガイド板(搬送路D)を冷却するためである。なお、ガイド板に切り欠きを設けることで、上側冷却ファン72から送られる風が当該ガイド板を通り抜ける構成とし、当該風によって用紙Sを直接冷却できるようにしてもよい。
【0053】
下側冷却ファン(第2のファン)73は、ソフトローラー71bの下方に配置され、ソフトローラー71bに対して下方からエアーを吹き付けることでソフトローラー71bを冷却する。また、下側冷却ファン73は、ソフトローラー71bの下方に配設されているが、このソフトローラー71bの軸心を通る鉛直線よりも左側、すなわち用紙搬送方向の下流側にずれた位置に配設されている。これは、下側冷却ファン73によって、ソフトローラー71bを冷却するだけではなく、カール矯正部71の下流側の搬送路Dに沿ってエアフローを形成することで、用紙Sの冷却効率を高めるためである。
【0054】
また、本実施形態では、制御部110の制御に従って、上側冷却ファン72及び下側冷却ファン73の各風量を決定可能となっている。
例えば、制御部110は、印刷対象となる用紙Sの紙種に基づいて、上側冷却ファン72及び下側冷却ファン73の各風量を決定することができる。
具体的には、印刷対象となる用紙Sの紙種が薄紙や普通紙の場合、上側冷却ファン72及び下側冷却ファン73の各風量のレベルを“小”とする。これは、薄紙や普通紙の場合、用紙Sがカール矯正部71を通過した際に当該用紙Sの温度が下がりやすいためである。また、上側冷却ファン72及び下側冷却ファン73から吹き付けられる風により起こるJAMなどの影響があるためである。
一方、印刷対象となる用紙Sの紙種が厚紙やコート紙の場合、上側冷却ファン72及び下側冷却ファン73の各風量のレベルを“大”とする。これは、厚紙やコート紙の場合、用紙Sがカール矯正部71を通過した際に当該用紙Sの温度が下がり難いためである。
【0055】
また、制御部110は、用紙Sのカバレッジ(印字率)に基づいて、上側冷却ファン72及び下側冷却ファン73の各風量を決定することができる。
具体的には、例えば、用紙Sのカバレッジをレベル1~レベル3の3段階で分け、用紙Sのカバレッジがレベル1の場合、上側冷却ファン72及び下側冷却ファン73の各風量のレベルを“小”とし、用紙Sのカバレッジがレベル2の場合、上側冷却ファン72及び下側冷却ファン73の各風量のレベルを“中”とし、用紙Sのカバレッジがレベル3の場合、上側冷却ファン72及び下側冷却ファン73の各風量のレベルを“大”とする。ここで、用紙Sのカバレッジのレベルは、当該レベルが高いほど用紙Sのカバレッジが高いことを表している。
【0056】
なお、上側冷却ファン72及び下側冷却ファン73の各風量を決定する際は、互いに異なる風量が決定されるようにしてもよく、制御部110は、用紙Sの紙種及び/又はカバレッジが所定の条件を満たす場合(例えば、用紙Sの上面のカバレッジよりも下面のカバレッジの方が高い場合等)には、下側冷却ファン73の風量が上側冷却ファン72の風量よりも多くなるように当該上側冷却ファン72及び当該下側冷却ファン73の風量を決定してもよい。
【0057】
以上のように、カール矯正装置70によれば、搬送路Dを挟んで配されるハードローラー71aとソフトローラー71bとによって用紙Sにカール矯正処理を施すカール矯正部71と、ハードローラー71aとソフトローラー71bをそれぞれ冷却する上側冷却ファン72及び下側冷却ファン73と、を備える。
したがって、上側冷却ファン72及び下側冷却ファン73によって、ハードローラー71aとソフトローラー71bをそれぞれ冷却することで、カール矯正部71における冷却効率を従来よりも高めることができる。これにより、カール矯正装置70において、定着装置60を通過した際に溶融/軟化したトナーを適切に固化することができるので、画像荒れやワックスムラ、タッキング等の画像不具合を抑制することができる。
【0058】
また、カール矯正装置70によれば、カール矯正部71を構成するハードローラー71aとソフトローラー71bとのローラー対により形成されるニップ部に用紙Sを通過させることで、当該用紙Sにカール矯正処理を施すので、用紙Sのカールを適切に矯正することができる。
【0059】
また、カール矯正装置70によれば、上側冷却ファン72によって、ハードローラー71aを空冷により冷却し、下側冷却ファン73によって、ソフトローラー71bを空冷により冷却するので、ハードローラー71aとソフトローラー71bをそれぞれ的確に冷却することができる。
【0060】
また、カール矯正装置70によれば、上側冷却ファン72は、下側冷却ファン73よりも風量の多い風を送風可能である。
したがって、上側冷却ファン72の風量を下側冷却ファン73の風量よりも多くすることで、用紙Sが定着装置60を通過した際、用紙Sの下面に比べて温度が高くなっている当該用紙Sの上面を適切に冷却することができる。
【0061】
また、カール矯正装置70によれば、上側冷却ファン72及び下側冷却ファン73を制御する制御部110を備え、制御部110は、用紙Sの紙種に基づいて、上側冷却ファン72及び下側冷却ファン73の風量を決定する。
したがって、上側冷却ファン72及び下側冷却ファン73の風量を用紙Sの紙種に適した風量とすることで、当該用紙Sを適切に冷却することができるとともに、例えば、風量が多すぎることで発生するJAM等の不具合を抑制することができる。
【0062】
また、カール矯正装置70によれば、制御部110は、更に、用紙Sのカバレッジに基づいて、上側冷却ファン72及び下側冷却ファン73の風量を決定する。
したがって、上側冷却ファン72及び下側冷却ファン73の風量を用紙Sのカバレッジに適した風量とすることで、当該用紙Sをより適切に冷却することができる。
【0063】
また、カール矯正装置70によれば、制御部110は、用紙Sの紙種及び/又はカバレッジが所定の条件を満たす場合には、下側冷却ファン73の風量が上側冷却ファン72の風量よりも多くなるように当該上側冷却ファン72及び当該下側冷却ファン73の風量を決定可能である。
したがって、例えば、用紙Sの上面のカバレッジよりも下面のカバレッジの方が高い場合等は、下側冷却ファン73の風量が上側冷却ファン72の風量よりも多くなるように当該上側冷却ファン72及び当該下側冷却ファン73の風量を決定することができるので、当該用紙Sをより一層適切に冷却することができる。
【0064】
また、カール矯正装置70によれば、下側冷却ファン73は、カール矯正部71に対して用紙搬送方向の下流側に配設されている。
したがって、下側冷却ファン73をカール矯正部71に対して用紙搬送方向の下流側に配設することで、カール矯正部71の下流側の搬送路Dに沿ってエアフローを形成することができるので、用紙Sの冷却効率を高めることができる。
【0065】
また、カール矯正装置70によれば、上側冷却ファン72は、カール矯正部71に対して用紙搬送方向の上流側に配設されている。
したがって、上側冷却ファン72をカール矯正部71に対して用紙搬送方向の上流側に配設することで、ハードローラー71aを冷却するだけではなく、カール矯正部71の上流側に設けられているガイド板(搬送路D)を冷却することができ、用紙Sの冷却効率を高めることができる。
なお、かかる場合において、ガイド板に切り欠きを設けることで、上側冷却ファン72から送られる風が当該ガイド板を通り抜ける構成とし、当該風によって用紙Sを直接冷却できるようにしてもよい。
【0066】
また、カール矯正装置70によれば、ハードローラー71aは、表層部が離型性の高い材料(例えば、PFA(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂で形成されているので、ワックスの付着(剥がれ)等による画像不具合を抑制することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、実施形態における記述内容は、本発明の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
【0068】
例えば、上記実施の形態では、カール矯正部71は、搬送路Dを挟んで配されるハードローラー71aとソフトローラー71bとで構成される場合を例に挙げて説明したが、この構成は一例に過ぎず、例えば、搬送路Dを挟んで配されるデカールローラーとベルトとによって構成されるようにしてもよい。また、搬送路Dを挟んで配されるベルトとベルトとによって構成されるようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施の形態では、冷却部として上側冷却ファン72及び下側冷却ファン73を用いた場合を例に挙げて説明したが、例えば、水冷方式の上側冷却装置を用いてハードローラー71aを冷却するとともに、同じく水冷方式の下側冷却装置を用いてソフトローラー71bを冷却するようにしてもよい。また、水冷方式の上側冷却装置を用いてハードローラー71aを冷却するとともに、上記実施の形態のように下側冷却ファン73を用いてソフトローラー71bを冷却するといったように、冷却ファンと水冷方式の冷却装置を適宜組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0070】
また、上記実施の形態において、ハードローラー71aとソフトローラー71bとの軸間距離を可変することにより、ニップ部のニップ幅を調整するニップ幅調整機構(図示省略)を設けるようにしてもよい。かかる場合、ニップ幅調整機構を備えることで、用紙Sのカールを矯正する際の矯正力を調整することができるので、用紙Sのカールをより適切に矯正することができるようになる。また、ニップ幅を調整することで、ハードローラー71aとソフトローラー71bとによる冷却効果も調整することができるので、用紙Sを適切に冷却することができる。
【符号の説明】
【0071】
70 カール矯正装置
71 カール矯正部
71a ハードローラー
71b ソフトローラー
72 上側冷却ファン(第1のファン)
73 下側冷却ファン(第2のファン)
100 画像形成装置
110 制御部
D 搬送路
S 用紙