IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大日本印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-積層フィルム及び複合ゴム成形体 図1
  • 特許-積層フィルム及び複合ゴム成形体 図2
  • 特許-積層フィルム及び複合ゴム成形体 図3
  • 特許-積層フィルム及び複合ゴム成形体 図4
  • 特許-積層フィルム及び複合ゴム成形体 図5
  • 特許-積層フィルム及び複合ゴム成形体 図6
  • 特許-積層フィルム及び複合ゴム成形体 図7
  • 特許-積層フィルム及び複合ゴム成形体 図8
  • 特許-積層フィルム及び複合ゴム成形体 図9
  • 特許-積層フィルム及び複合ゴム成形体 図10
  • 特許-積層フィルム及び複合ゴム成形体 図11
  • 特許-積層フィルム及び複合ゴム成形体 図12
  • 特許-積層フィルム及び複合ゴム成形体 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】積層フィルム及び複合ゴム成形体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20240903BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B32B27/30 D
B32B27/34
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020125564
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2021020461
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2019136963
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】工藤 卓磨
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悟
(72)【発明者】
【氏名】森本 太郎
(72)【発明者】
【氏名】小柴 誠一郎
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/148071(WO,A1)
【文献】特開平03-114829(JP,A)
【文献】特開2010-234777(JP,A)
【文献】特開2001-340425(JP,A)
【文献】特開2013-107961(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079768(WO,A1)
【文献】特開平10-030764(JP,A)
【文献】特開2018-178063(JP,A)
【文献】特開2018-201671(JP,A)
【文献】特開2018-177845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素系樹脂フィルムと、ポリアミド系樹脂フィルムとを備える積層フィルムであって、
前記積層フィルムの厚さが、180μm以下であり、
前記積層フィルムの破断強度が、31N/cm以上であり、
前記フッ素系樹脂フィルム表面のX線光電子分光法によるC1s軌道の測定で得られたピーク面積において、フルオロエチレン単位由来のピーク面積に対するエチレン単位由来のピーク面積の割合が、60%以下であることを特徴とする、積層フィルム。
【請求項2】
前記ポリアミド系樹脂フィルムは、表面の一部の領域に炭素、窒素、酸素の3元素を含み、
前記領域において、炭素、窒素、酸素の3元素の合計100%に対して、酸素の割合が12%以上である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記フッ素系樹脂フィルムの厚さが、100μm以下である、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記ポリアミド系樹脂フィルムの厚さが、80μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記フッ素系樹脂フィルムが、エチレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体樹脂を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項6】
医薬医療用複合ゴム成形体の表面に用いられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項7】
ゴム素材の表面に積層フィルムがラミネートされた複合ゴム成形体であって、
前記積層フィルムが、フッ素系樹脂フィルムと、ポリアミド系樹脂フィルムとを備え、 前記積層フィルムの厚さが、180μm以下であり、
前記ポリアミド系樹脂フィルムの厚さが、80μm以下であり、
前記ポリアミド系樹脂フィルムが、前記フッ素系樹脂フィルムと、前記ゴム素材との間に介在しており、
前記フッ素系樹脂フィルム表面のX線光電子分光法によるC1s軌道の測定で得られたピーク面積において、フルオロエチレン単位由来のピーク面積に対するエチレン単位由来のピーク面積の割合が、80%以下であることを特徴とする、複合ゴム成形体。
【請求項8】
前記フッ素系樹脂フィルムの厚さが、100μm以下である、請求項7に記載の複合ゴム成形体。
【請求項9】
前記積層フィルムが、前記ゴム素材の脚部又は天面部にラミネートされている、請求項7又は8に記載の複合ゴム成形体。
【請求項10】
前記ポリアミド系樹脂フィルムと前記ゴム素材との剥離強度が、250N/cm以上である、請求項7~9のいずれか一項に記載の複合ゴム成形体。
【請求項11】
医薬医療用複合ゴム成形体である、請求項7~10のいずれか一項に記載の複合ゴム成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムに関し、より詳細には、フッ素系樹脂フィルムとポリアミド系樹脂フィルムとを備える積層フィルムに関する。また、本発明は、フッ素系樹脂フィルムとポリアミド系樹脂フィルムとを備える積層フィルムがラミネートされた複合ゴム成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素系樹脂フィルムは、一般に、極めて不活性であることから、注射器の滑栓や医薬バイアルの栓等の種々のゴム製品の耐薬品性、滑り性、付着防止性を向上させるために、ゴム基材の表面(脚部や天面部)を被覆するフィルムとして多用されている。
【0003】
しかしながら、フッ素系樹脂フィルムは、耐薬品性、滑り性、付着防止性に優れるものの、ゴム素材の表面に接着し難いという欠点がある。引用文献1では、フッ素系樹脂フィルムとゴム素材の間にポリオレフィンフィルムが介在したゴム成形品が開示されている。引用文献1では、フッ素系樹脂フィルム及びゴム素材の双方に優れた密着性を示すポリオレフィンフィルムを用いることでフッ素系樹脂フィルムの接着性の問題を解決している。
【0004】
ところで、フッ素系樹脂フィルムは、フィルムの厚みや樹脂の特性等により、破断強度及び破断するまでの伸び率を調整することができる。ゴム素材の成形時において、上記したゴム素材の表面を被覆するフィルムは、フィルムの破断を抑制するために、ある程度のフィルムの厚さ及び高い伸び率が必要とされている。
【0005】
近年、薬価の切り下げに伴い、医薬医療用製品におけるコストダウンの要望が根強い。この要望に応えるために、より安価な伸び率の低いフッ素系樹脂フィルムの使用や、厚さの薄いフッ素系樹脂フィルムの使用が検討されている。しかしながら、このようなフッ素系樹脂フィルムを用いて複合ゴム成形体の成形する場合には、フッ素系樹脂フィルムが破断する可能性があるという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2009/082034号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、引用文献1に記載のポリオレフィンフィルムを用いて、伸び率の低いフッ素系樹脂フィルムとの積層フィルムを作製し、該積層フィルムがラミネートされた複合ゴム成形体の作製を試みた。しかしながら、該複合ゴム成形体の成形時において、積層フィルムが破断するという問題が生じた。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その解決しようとする課題は、経済性に優れると共に、破断が抑制された積層フィルムを提供することである。
また、本発明の別の課題は、経済性に優れると共に、ゴム成分の溶出が抑制された複合ゴム成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、フッ素系樹脂フィルムと、ポリアミド系樹脂フィルムとを備える積層フィルムであって、
前記積層フィルムの厚さが、180μm以下であり、
前記積層フィルムの破断強度が、31N/cm以上であり、
前記フッ素系樹脂フィルム表面のX線光電子分光法によるC1s軌道の測定で得られたピーク面積において、フルオロエチレン単位由来のピーク面積に対するエチレン単位由来のピーク面積の割合が、80%以下であることを特徴とする、積層フィルムである。
【0010】
一実施形態においては、前記ポリアミド系樹脂フィルムは、前記フッ素系樹脂フィルムと反対側の表面の一部の領域に炭素、窒素、酸素の3元素を含み、
前記領域において、炭素、窒素、酸素の3元素の合計100%に対して、酸素の割合が12%以上であることが好ましい。
【0011】
一実施形態においては、前記フッ素系樹脂フィルムの厚さが、100μm以下であることが好ましい。
【0012】
一実施形態においては、前記ポリアミド系樹脂フィルムの厚さが、80μm以下であることが好ましい。
【0013】
一実施形態においては、前記フッ素系樹脂フィルムが、エチレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体樹脂を含むことが好ましい。
【0014】
一実施形態においては、前記積層フィルムは、医薬医療用複合ゴム成形体の表面に用いられることが好ましい。
【0015】
本発明は、ゴム素材の表面に積層フィルムがラミネートされた複合ゴム成形体であって、
前記積層フィルムが、フッ素系樹脂フィルムと、ポリアミド系樹脂フィルムとを備え、
前記積層フィルムの厚さが、180μm以下であり、
前記ポリアミド系樹脂フィルムの厚さが、80μm以下であり、
前記ポリアミド系樹脂フィルムが、前記フッ素系樹脂フィルムと、前記ゴム素材との間に介在しており、
前記フッ素系樹脂フィルム表面のX線光電子分光法によるC1s軌道の測定で得られたピーク面積において、フルオロエチレン単位由来のピーク面積に対するエチレン単位由来のピーク面積の割合が、80%以下であることを特徴とする、複合ゴム成形体である。
【0016】
一実施形態においては、前記フッ素系樹脂フィルムの厚さが、100μm以下であることが好ましい。
【0017】
一実施形態においては、前記積層フィルムが、前記ゴム素材の脚部又は天面部にラミネートされていることが好ましい。
【0018】
一実施形態においては、前記ポリアミド系樹脂フィルムと前記ゴム素材との剥離強度が、250N/cm以上であることが好ましい。
【0019】
一実施形態においては、前記複合ゴム成形体は、医薬医療用複合ゴム成形体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、経済性に優れると共に、破断が抑制された積層フィルムを提供できる。
また、経済性に優れると共に、ゴム成分の溶出が抑制された複合ゴム成形体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の積層フィルムの一実施形態を示した断面概略図である。
図2】プラズマ処理に用いるプラズマ処理装置の一例を示す概略構成図である。
図3】本発明の複合ゴム成形体(ラミネートゴム栓)の一実施形態を示した断面概略図である。
図4】本発明の複合ゴム成形体(ラミネートゴム栓)の一実施形態を示した外観斜視図である。
図5】本発明の複合ゴム成形体(ラミネートゴム栓)の一実施形態を示した断面概略図である。
図6】PTPシートの一実施形態を示した外観斜視図である。
図7】PTPシートのポケット部の断面概略図である。
図8】注射器の一実施形態を示した外観斜視図である。
図9】注射器の構成要素を示した外観正面図である。
図10】ラミネートガスケットの断面概略図である。
図11】真空採血管の一実施形態を示した外観斜視図である。
図12】真空採血管のラミネートゴム栓の概略断面図である。
図13】突き刺し強度の測定方法の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<積層フィルム>
本発明の積層フィルム10は、図1に示すように、フッ素系樹脂フィルム11と、ポリアミド系樹脂フィルム12とを備える。図1に示すように、積層フィルム10は、フッ素系樹脂フィルム11と、ポリアミド系樹脂フィルム12とが接しており、2層構成である。
一実施形態において、積層フィルム10は、フッ素系樹脂フィルム11と、ポリアミド系樹脂フィルム12との間に接着剤層をさらに備えてもよい(図示せず)。
【0023】
本発明の積層フィルムは、厚さが180μm以下であることを特徴とする。これにより、経済性に優れる積層フィルムとすることができる。積層フィルムの厚さは、経済性の観点からは、150μm以下であることが好ましく、130μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。また、積層フィルムの厚さは、破断強度の観点からは、20μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、70μm以上であることがさらに好ましい。
【0024】
本発明の積層フィルムの破断強度は、31N/cm以上であることを特徴とする。これにより、積層フィルムの破断を抑制することができる。積層フィルムの破断強度は、40N/cm以上であることが好ましく、50N/cm以上であることがより好ましく、60N/cm以上であることがさらに好ましい。積層フィルムの破断強度は、成形性の観点からは、100N/cm以下であることが好ましく、90N/cm以下であることがより好ましく、80N/cm以下であることがさらに好ましい。
なお、本発明の積層フィルムの破断強度は、フィルムの単位幅当たりの数値である。従って、単位は「N/cm」となる。
【0025】
積層フィルムの破断時の伸びは、30mm以上であることが好ましく、40mm以上であることがより好ましく、45mm以上であることがさらに好ましく、65mm以上であることがさらにより好ましく、75mm以上であることが特に好ましい。これにより、積層フィルムの破断をより抑制することができる。
【0026】
本発明において、破断強度及び破断時の伸びは、以下に記載した条件であること以外は、JIS K7127:1999に準拠して測定されたものである。
・装置:引張圧縮試験機STA-1150((株)オリエンテック社製)
・フィルム幅:10mm(1cm)
・フィルム長さ:20mm
・引張速度:50mm/分
・試験温度:22℃
【0027】
積層フィルムの突き刺し強度は、4N以上であることが好ましく、15.0N以上であることはより好ましく、20N以上であることがさらに好ましい。突き刺し強度の測定方法については、後述する実施例において説明する。
【0028】
(フッ素系樹脂フィルム)
本発明の積層フィルムが備えるフッ素系樹脂フィルムは、不活性であり、耐薬品性・耐溶剤性や滑り性や付着防止性に優れるため、ゴム素材にラミネートすることで、ゴム素材の表面(脚部や天面部)に優れた耐薬品性・耐溶剤性や滑り性や付着防止性を付与することができる。
【0029】
本発明の積層フィルムが備えるフッ素系樹脂フィルムは、フッ素系樹脂フィルム表面のX線光電子分光法によるC1s軌道の測定(XPS測定とも称する)で得られたピーク面積において、フルオロエチレン単位由来のピーク面積に対するエチレン単位由来のピーク面積の割合が、80%以下であることを特徴とする。これにより、経済性に優れる積層フィルムとすることができる。上記ピーク面積の割合は、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましい。
上記ピーク面積の割合は、1%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。
該ピーク面積の割合は、フッ素系樹脂フィルム表面の少なくとも一部の測定で得られたピーク面積から算出したものである。
一実施形態において、上記フルオロエチレン単位由来のピーク面積は、テトラフルオロエチレン単位由来のピーク面積である。
本発明において、フッ素系樹脂フィルム表面のXPS測定は、以下の条件により行う。
・装置:AXIS-Nova((株)島津製作所製)
・測定手法:Narrow(PassEnergy:40eV)
・測定範囲:C1s(280eV~305eV)
・X線源:モノクロAlKα
・X線出力:150W(エミッション電流:10mA、加速電圧:15kV)
・帯電中和機構:ON
・測定領域:300μm×700μm
・解析:CH-CHとフルオロエチレンの各ピーク面積の比を算出
【0030】
フッ素系樹脂フィルムは、特に限定されるものではないが、例えば、エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体樹脂(ETFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンの共重合体樹脂(ECTFE)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるパーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体樹脂(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体樹脂(EPE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、ポリフッ化ビニル系樹脂(PVF)等が挙げられ、2種以上を組み合わせたものであってもよい。これらの中でも、ポリアミド系樹脂フィルムとの接着性の観点、及び耐薬品性、耐溶剤性や滑り性を備えることから、ETFE、ECTFE、PTFEが好ましい。フッ素系樹脂フィルムは、突き刺し性の観点から、ETFE、ECTFEを含むことがより好ましく、ポリアミド系樹脂フィルムとの接着性および突き刺し性の観点から、ETFEを含むことがさらに好ましい。さらには、変性タイプのETFEが使用可能である。
変性タイプのETFEは、エチレンとテトラフルオロエチレンとこれらと共重合可能な含フッ素ビニルモノマーとを三元共重合させてなるものが好ましい。
【0031】
フッ素系樹脂フィルムの厚さは、100μm以下であることが好ましい。これにより、経済性により優れる積層フィルムとすることができる。フッ素系樹脂フィルムの厚さは、経済性の観点からは、70μm以下であることが好ましく、55μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。また、フッ素系樹脂フィルムの厚さは、破断強度の観点からは、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。
【0032】
フッ素系樹脂フィルムは、下記の改質処理を行うことで、ポリアミド系樹脂フィルムとの接着性を向上させることができる。本発明においては、フッ素系樹脂フィルムの一方の面のみに改質処理を施し、改質領域面をポリアミド系樹脂フィルムにラミネートすることが好ましい。他の面には改質処理を施さないことで、フッ素系樹脂フィルムが元来有する性能が損なわれず、フッ素系樹脂フィルムを備える積層フィルムを複合ゴム成形体に用いた場合に、複合ゴム成形体の表面に耐薬品性・耐溶剤性や滑り性、及び付着防止性を付与することができる。
【0033】
改質処理として下記のプラズマ処理を行ったフッ素系樹脂フィルムの改質領域では、炭素、窒素、酸素、フッ素の4元素の合計100%に対して、炭素の割合は45%以上70%以下であることが好ましく、50%以上68%以下であることがより好ましく、55%以上65%以下であることがさらに好ましく、窒素の割合は0.1%以上5%以下であることが好ましく、0.5%以上4%以下であることがより好ましく、1.0%以上3.0%以下であることがさらに好ましく、酸素の割合は13%以上であることが好ましく、14%以上30%以下であることがより好ましく、15%以上25%以下であることがさらに好ましく、フッ素の割合は35%以下であることが好ましく、10%以上33%以下であることがより好ましく、15%以上30%以下であることがさらに好ましい。フッ素系樹脂フィルムの改質領域において、炭素、窒素、酸素、フッ素の4元素の割合が上記範囲内にあることで、ポリアミド系樹脂フィルムとの接着性を向上することができる。なお、各元素の割合は、下記の改質処理の条件を制御することにより調節することができる。
【0034】
フッ素系樹脂フィルムの表面の改質処理としては、特に限定されないが、薬液による処理、電子ビームによる処理、コロナ処理、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理等があげられる。生産性の観点から、コロナ処理、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理が好ましい。経済性の観点からは、コロナ処理、大気圧プラズマ処理が好ましい。プラズマ雰囲気の制御の容易性、及び官能基導入のためのガス種の割合を広い範囲で使用できるという観点からは、低圧プラズマ処理が好ましい。
【0035】
フッ素系樹脂の表層部を低圧プラズマ処理等により活性化すると、フッ素系樹脂の骨格からフッ素原子が離脱して、炭素ラジカルが生成するようになる。その後、雰囲気中の酸素と結合し、さらに雰囲気中から供給される水素原子により、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、ケトン基等の官能基が形成される。また、フッ素系樹脂の骨格に水素原子が結合している場合には、同様にフッ素系樹脂の骨格から水素原子が離脱して、炭素ラジカルが生成する。その後、雰囲気中の酸素と結合し、さらに離脱した水素原子や雰囲気中から供給される水素原子により、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、ケトン基等の官能基が形成される。
或いは、低圧プラズマ処理により雰囲気中に発生した酸素ラジカルにより、フッ素系樹脂の骨格からフッ素原子の引き抜きとフッ素系樹脂への酸素の付加反応が起こり、さらに雰囲気中から供給される水素原子により、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、ケトン基等の酸素含有官能基が形成される。
また、フッ素系樹脂の骨格に水素原子が結合している場合には、同様にフッ素系樹脂の骨格から水素原子の引き抜きとフッ素系樹脂への酸素の付加反応が起こり、さらに引き抜かれた水素原子や雰囲気中から供給される水素原子により、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、ケトン基等の官能基が形成される。
低圧プラズマ処理により活性化した表面は、大気圧に戻した際に、空気中の酸素や窒素由来の官能基が形成される。このため、プラズマ雰囲気中に酸素や窒素がない処理条件であっても、表面に酸素や窒素が検出される。
これらの官能基が存在するようになった表層は、他の樹脂との親和性と反応性が著しく向上するようになり、フッ素系樹脂の接着性が発現するものと考えられる。
【0036】
低圧プラズマ処理装置としては、ICP型のプラズマ処理装置、並行平板型のプラズマ処理装置、ロールツーロール型のプラズマ処理装置等を用いることができる。生産性の観点から、ロールツーロール型のプラズマ処理装置が好ましい。
プラズマ生成に用いる電源としては、高周波電源、パルス波電源等の従来公知の電源を用いることができる。電源の周波数は100kHz以下の範囲であれば、ガスの自由度は高く、官能基を積極的に導入するためのガス種の割合を多く使用できる。そのようなガスとしては、O、CO、CO、NH、NO、SO、HS等が挙げられる。
【0037】
ロールツーロール型プラズマ処理装置の一例として図2に概略構成図を示す。図2に示すプラズマ処理装置は、樹脂フィルム42に対してプラズマ処理を行うことにより、樹脂フィルム42に表面改質処理を施して、表面改質樹脂フィルム41を作製する装置である。このようなプラズマ処理装置は、チャンバ21と、チャンバ21内に配置されたフィルム供給部22及びフィルム巻取部23と、チャンバ21内にマスク43と磁場発生部44と、チャンバ21内にプラズマ処理用の処理ガスを供給する処理ガス供給部31とを備えている。
【0038】
このうちフィルム供給部22は、樹脂フィルム42が巻装されるとともに樹脂フィルム42を供給する供給ローラ22aを含んでいる。また、フィルム巻取部23は、表面改質樹脂フィルム41が巻装されるとともに表面改質フッ素系樹脂フィルム41を巻き取る巻取ローラ23aを含んでいる。さらに、フィルム供給部22とフィルム巻取部23との間には、回転式のメインロール24が配置されている。このメインロール24には、その表面に沿って樹脂フィルム42が巻き付けられており、このメインロール24上の樹脂フィルム42に対してプラズマ処理が施されるようになっている。さらに、フィルム供給部22とメインロール24との間、及びメインロール24とフィルム巻取部23との間には、樹脂フィルム42をフィルム供給部22からフィルム巻取部23へ案内する複数の案内ロール26が設けられている。なお、これらフィルム供給部22と、フィルム巻取部23と、メインロール24と、案内ロール26とにより、ロールツーロール(Roll to Roll)式のフィルム搬送装置25が構成されている。また、チャンバ21には、連結管28を介してチャンバ21内を真空排気する排気ポンプ27が連結されている。また連結管28には、チャンバ21内の真空度(圧力)を調整するバルブ29が設けられている。
【0039】
さらに、処理ガス供給部31は、処理ガスをチャンバ21内に噴出するガスノズル30と、処理ガスを供給するガス供給管35、36、37と、処理ガスを貯留する処理ガス貯留部32、33、34とを有している。なお、ガス供給管35、36、37には、それぞれガスの流量を制御するマスフローコントローラー(MFC)38、39、40が設けられている。供給ガスとしては、例えば、アルゴン、ヘリウム、酸素の3種を用いることができる。
【0040】
さらにまた、チャンバ21内のマスク43の開口部に対向する位置に、スパッタリング装置で用いられるようなマグネット45を含む磁場発生部44が設けられている。メインロールには40kHzの高周波電源を接続する。処理ガスの導入、チャンバ21内の圧力の調整、高周波電力の導入により、プラズマPが発生する。磁場発生部44の設置とメインロールへの高周波電力の導入により、樹脂フィルム42の近傍にプラズマ密度の高い領域が形成され、効率良くプラズマ処理を施すことが可能となる。なお、チャンバ21内には隔壁46が設けられている。この隔壁46は、発生したプラズマPがフィルム供給部22及びフィルム巻取部23側に広がり、フィルム供給部22及びフィルム巻取部23側にプラズマ処理による発生物が堆積することを抑制する役割を果たす。
【0041】
一実施形態において、ロールツーロール型プラズマ処理装置を用いる場合、例えば、長尺の樹脂フィルムに処理でき、メインロールが直径400mm、幅350mmである装置を用いる。放電部(マスクの開口部)は、流れ方向に170mm、幅方向に275mmとする。放電部にはスパッタリング装置で用いられるようなマグネットをメインロールからの距離70mmに配置する。また、放電部近傍にガスを導入するためのT字型のガスノズルを設け、T字の頭の部分に設けた多数の孔からガスを供給する。メインロールには40kHzの高周波電力を導入可能とする。
【0042】
(ポリアミド系樹脂フィルム)
本発明の積層フィルムが備えるポリアミド系樹脂フィルムは、高い破断強度を有するため、積層フィルムの破断を抑制することができる。また、積層フィルムがポリアミド系樹脂フィルムを備えることにより、空気や水蒸気等のガスバリア性を向上することができる。
【0043】
ポリアミド系樹脂フィルムは、特に限定されるものではないが、例えば、ポリカプラミド樹脂(ナイロン-6)、ポリ-ω-アミノヘプタン酸樹脂(ナイロン-7)、ポリ-ω-アミノノナン酸樹脂(ナイロン-9)、ポリウンデカンアミド樹脂(ナイロン-11)、ポリラウリルラクタム樹脂(ナイロン-12)、ポリエチレンジアミンアジパミド樹脂(ナイロン-2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド樹脂(ナイロン-4,6)、ポリヘキサメチレンアジパミド樹脂(ナイロン-6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド樹脂(ナイロン-6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド樹脂(ナイロン-6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド樹脂(ナイロン-8,6)、ポリデカメチレンアジパミド樹脂(ナイロン-10,8)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体樹脂(ナイロン-6/12)、カプロラクタム/ω-アミノノナン酸共重合体樹脂(ナイロン-6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体樹脂(ナイロン-6/6,6)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体樹脂(ナイロン-12/6,6)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体樹脂(ナイロン-2,6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体樹脂(ナイロン-6/6,6/6,10)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体樹脂(ナイロン-6/6,6/6,10)等の脂肪族ポリアミド系樹脂、並びにメタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン等の芳香族ジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる結晶性芳香族ポリアミド系樹脂、及びヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンと、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる非晶性芳香族ポリアミド系樹脂(アモルファスナイロン)等の芳香族ポリアミド系樹脂が挙げられ、2種以上を組み合わせたものであってもよい。これらの中でも、フッ素系樹脂フィルム及びゴム素材との接着性、積層フィルムの破断強度や経済性の観点から、ナイロン-6、ナイロン-6,6であることが好ましい。ポリアミド系樹脂フィルムは、成形性の観点から、無延伸フィルムであることが好ましい。
【0044】
ポリアミド系樹脂フィルムの厚さは、80μm以下であることが好ましい。これにより、経済性により優れる積層フィルムとすることができる。また、積層フィルムが、ポリアミド系樹脂フィルムの厚さを80μm以下とすることにより、注射針を穿刺する際の穿刺抵抗を低減することができるため、バイアル瓶等のフタとして用いられる複合ゴム成形体に好適に用いることができる。ポリアミド系樹脂フィルムの厚さは、50μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。また、ポリアミド系樹脂フィルムの厚さは、破断強度及びガスバリア性の観点からは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。
【0045】
ポリアミド系樹脂フィルムは、上記した改質処理を行ってもよい。これにより、フッ素系樹脂フィルムとの接着性を向上させることができる。また、積層フィルムを複合ゴム成形体に用いた場合には、ゴム素材等との接着性を向上することができる。ポリアミド系樹脂フィルムの改質処理は、片面又は両面であってもよいが、フッ素系樹脂フィルムとの接着性及びゴム素材等との接着性を向上できることから、両面であることが好ましい。
【0046】
改質処理の好ましい態様については、上記で説明したため、ここでは省略する。
【0047】
ポリアミド系樹脂フィルムは、表面の一部の領域に炭素、窒素、酸素の3元素を含み、該領域において、炭素、窒素、酸素の3元素の合計100%に対して、酸素の割合が12%以上であることが好ましい。これにより、フッ素系樹脂フィルムとの接着性を向上させることができる。また、積層フィルムを複合ゴム成形体に用いた場合には、ゴム素材等との接着性を向上することができる。該領域では、炭素、窒素、酸素の3元素の合計100%に対して、炭素の割合は45%以上76%以下であることが好ましく、50%以上75以下であることがより好ましく、55%以上74%以下であることがさらに好ましく、窒素の割合は11%以上20%以下であることが好ましく、11.5%以上15%以下であることがより好ましい、酸素の割合は12%以上であることが好ましく、13%以上30%以下であることがより好ましく、14%以上25%以下であることがさらに好ましい。なお、各元素の割合は、上記の改質処理の条件を制御することにより調節することができる。また、炭素、窒素、酸素の3元素の合計は100%以下である。
【0048】
本発明の積層フィルムは、フッ素系樹脂フィルムと、ポリアミド系樹脂フィルムとの剥離強度が、250N/cm以上であることが好ましく、400N/cm以上であることがより好ましく、500N/cm以上であることがさらに好ましい。本発明において、該剥離強度の測定方法は、以下の通りである。
まず、フッ素系樹脂フィルムと、ポリアミド系樹脂フィルムとを長辺方向において10mm以上剥離させた矩形状の試験片を準備する。試験片の幅(短辺の長さ)は10mmとする。フッ素系樹脂フィルム及びポリアミド系樹脂フィルムの既に剥離している部分を、それぞれ測定装置のつかみ具で把持する。つかみ具をそれぞれ、フッ素系樹脂フィルムと、ポリアミド系樹脂フィルムとがまだ接着されている部分の面方向に対して直交する方向において互いに逆向きに、50mm/分の速度で引っ張り、安定領域における引張応力の平均値を測定する。この引張応力の平均値を剥離強度とする。安定領域とは、剥離初期における引張応力の上昇領域を除いた、引張応力の変化率の小さい領域を意味する。
【0049】
(接着剤層)
接着剤層は、ドライラミネート法により2枚のフィルムを接着する場合に、積層しようとするフィルムの表面に、接着剤を塗布して乾燥させることにより形成することができる。
接着剤としては、例えば、1液型あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他等の溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型等の接着剤を1種又は2種以上用いることができる。上記のラミネート用接着剤のコーティング方法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法、トランスファーロールコート法、その他の方法で積層フィルムを構成するフィルムの塗布面に塗布することができる。塗布量としては、0.1g/m以上10g/m以下(乾燥状態)が好ましく、1g/m以上5g/m以下(乾燥状態)がより好ましい。
【0050】
<積層フィルムの製造方法>
本発明の積層フィルムは、フッ素系樹脂フィルムと、ポリアミド系樹脂フィルムとをラミネート加工をすることにより製造することができる。ラミネート方法としては、例えば、熱によりフィルム同士を直接貼り合せる熱ラミネート加工や、上記した接着剤を介してフィルム同士を貼り合せるドライラミネート加工等が挙げられる。これらの中でも、接着剤成分の混入を防止する観点から、熱ラミネート加工により積層フィルムを製造することが好ましい。また、フィルムの接着性の観点から、改質処理面を重ね合わせてラミネートすることが好ましい。フィルム同士のラミネートは、生産性の観点から長尺状のフィルムを用いて、ロールツーロールで実施することが好ましい。
【0051】
熱ラミネート加工において、ラミネート温度は、80℃以上250℃以下であることが好ましく、100℃以上230℃以下であることがより好ましく、150℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。
ラミネート温度を上記範囲とすることにより、フッ素系樹脂フィルムと、ポリアミド系樹脂フィルムとの剥離強度を向上できると共に、熱によるフィルムの劣化を抑制することができる。
【0052】
<用途>
本発明の積層フィルムは、耐薬品性、滑り性、付着防止性に優れていることから、医薬医療用途に用いることが好ましい。また、ゴム成分の溶出の抑制に優れていることから、複合ゴム成形体の表面に用いることが好ましい。複合ゴム成形体としては、例えば、ラミネートゴム栓、PTPシートの容器フィルム、注射器のラミネートゴムガスケット等が挙げられる。
【0053】
(ゴム素材)
本発明の複合ゴム成形体に用いるゴム素材としては、特に限定されないが、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。その中でも気体不透過性の観点から、ブチルゴムが好ましく、特に塩素化ブチルゴムが好ましい。
【0054】
ゴム素材には、必要に応じて、無機質補強剤、加硫剤、加硫活性助剤、及び着色剤等の各種配合剤が用いられる。無機質補強剤としては、例えば、焼成クレー、硫酸バリウム、タルク、シリカ等が挙げられる。無機質補強剤の配合量は、ゴム素材100重量部に対して好ましくは5~60重量部である。加硫剤としては、例えば、トリアジンチオール系、有機イオウ系、アミン系、及びシランカップリング剤等が挙げられる。加硫剤の配合量は、ゴム素材100重量部に対して好ましくは0.2~3重量部である。加硫活性助剤としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、及び合成ハイドロタルサイト等が挙げられる。加硫活性助剤の配合量は、ゴム素材100重量部に対して好ましくは0.2~5重量部である。着色剤としては、酸化チタン、カーボンブラック、有機顔料等が挙げられる。着色剤の配合量は、ゴム素材100重量部に対して好ましくは0.01~5重量部である。
【0055】
<複合ゴム成形体>
本発明の複合ゴム成形体は、表面に積層フィルムがラミネートされたものである。積層フィルムは、フッ素系樹脂フィルムと、ポリアミド系樹脂フィルムとを備え、ポリアミド系樹脂フィルムが、フッ素系樹脂フィルムと、ゴム素材との間に介在している。本発明の複合ゴム成形体は、優れた耐薬品性、耐溶剤性、滑り性及び付着防止性等を有するため、医薬医療容器のゴム栓、PTPシートの容器フィルム、及び注射器のガスケット等の種々の医薬医療用ゴム製品に用いることができる。また、本発明の複合ゴム成形体は、複合ゴム成形体の表面にラミネートされた積層フィルムの破断が抑制されているため、ゴム成分の溶出を抑制することができる。
ゴム栓の場合、天面部あるいは脚部のみに積層フィルムをラミネートしてもよいし、天面部と脚部の両方に積層フィルムをラミネートしてもよい。
【0056】
本発明の複合ゴム成形体の一実施形態としては、例えば、積層フィルムをゴム栓の脚部にラミネートしたラミネートゴム栓が挙げられる。図3には、ラミネートゴム栓50の断面概略図を示し、図4には、本発明のラミネートゴム栓50の一実施形態の外観斜視図を示す。図3に示すラミネートゴム栓50は、フッ素系樹脂フィルム52と、ポリアミド系樹脂フィルム53とを備える積層フィルム54を、ゴム栓51の脚部にラミネートしたものである。このような構成とすることで、例えば液体を収容する容器の栓として用いた場合、ゴムに含まれる成分が液体中に溶出することを防ぎつつ、容器に入れた液体が漏出するのを効果的に防ぐことができる。
【0057】
本発明の複合ゴム成形体の他の実施形態としては、上記の積層フィルムをゴム栓の天面部にラミネートしたラミネートゴム栓が挙げられる。図5に、ラミネートゴム栓50の断面概略図を示す。図5に示すラミネートゴム栓50は、フッ素系樹脂フィルム52と、ポリアミド系樹脂フィルム53とを備える積層フィルム54を、ゴム栓51の天面部にラミネートしたものである。このような構成とすることで、凍結乾燥用のバイアル瓶のゴム栓として使用できる。このゴム栓の使用方法としては、薬液を充填したバイアル瓶の瓶口にゴム栓を半打栓し、その状態で凍結乾燥庫に入れて薬液を凍結乾燥する。そして、同庫内でゴム栓を全打栓する。このとき、積層フィルムがラミネートしてあることで、打栓用プレス板にゴム栓が付着することを防止できる。
【0058】
本発明の複合ゴム成形体の一実施形態としては、例えば、PTPシートの容器フィルムが挙げられる。
図6は、PTPシートの一実施形態を示した外観斜視図である。図6に示すように、PTPシート60は、錠剤等を入れるための複数のポケット部を有している。
図7は、PTPシートのポケット部の断面概略図である。図7に示すように、PTPシート60は、カバーフィルム61と、容器フィルム62とを有している。容器フィルム62は、カバーフィルム61と接する部分において接着されている。PTPシート60のポケット部は、容器フィルム62に形成され、ポケット部はドーム形状を有している。カバーフィルム61は、例えば、ポリプロピレン樹脂等からなるシーラントが表面に設けられた不透明材料(例えばアルミニウム箔等)により構成されている。容器フィルム62は、ゴム素材により構成されるゴムシート63と、フッ素系樹脂フィルム64及びポリアミド系樹脂フィルム65を備える積層フィルム66とにより構成されている。このような構成とすることで、錠剤を外気から保護することができる。
【0059】
本発明の複合ゴム成形体の一実施形態としては、例えば、注射器のラミネートゴムガスケットが挙げられる。
図8は、注射器の一実施形態を示した外観斜視図であり、図9は、注射器の構成要素を示した外観正面図である。図8及び図9に示すように、注射器70は、外筒71と、ラミネートゴムガスケット72と、押子73とを備える。図8及び図9に示すように、ラミネートゴムガスケット72は、押子73の先端に取り付けられている。図8に示すように、ラミネートゴムガスケット72及び押子73は、外筒71内に摺動可能に収容されている。
【0060】
図10は、ラミネートガスケットの断面概略図である。図10に示すように、ラミネートガスケット72は、フッ素系樹脂フィルム75と、ポリアミド系樹脂フィルム76とを備える積層フィルム77を、ゴム素材により構成されるゴムガスケット74にラミネートしたものである。このような構成とすることで、ゴムガスケットを薬液から保護することができ、ゴムに含まれる成分が液体中に溶出することを防ぐことができる。
一実施形態において、注射器は、ダブルチャンバー注射器であってもよい。ダブルチャンバー注射器の場合に、積層フィルム77は、ダブルチャンバー注射器が備える2つのゴムガスケットの表面に用いることができる。
【0061】
図11は、真空採血管の一実施形態を示した外観斜視図である。図11に示すように、真空採血管80は、ラミネートゴム栓81と、有底管82と、を備える。図11に示すように、真空採血管80は、ラミネートゴム栓81を有底管82の開口部に挿入して密閉されている。
【0062】
図12は、真空採血管のラミネートゴム栓の概略断面図である。図12に示すように、ラミネートゴム栓81は、フッ素系樹脂フィルム84と、ポリアミド系樹脂フィルム85とを備える積層フィルム86を、ゴム素材により構成されるゴム栓83の脚部にラミネートしたものである。このような構成とすることで、真空採血管に血液等の液体を収容した際に、ゴムに含まれる成分が液体中に溶出することを防ぐことができる。
【0063】
(積層フィルム)
本発明の複合ゴム成型体が備える積層フィルムは、フッ素系樹脂フィルムと、ポリアミド系樹脂フィルムとを備える。一実施形態において、該積層フィルムは、フッ素系樹脂フィルムと、ポリアミド系樹脂フィルムとの間に接着剤層をさらに備えてもよい。
【0064】
本発明の複合ゴム成型体が備える積層フィルムは、厚さが180μm以下であることを特徴とする。これにより、経済性に優れる積層フィルムとすることができる。積層フィルムの厚さは、経済性の観点からは、150μm以下であることが好ましく、130μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。また、積層フィルムの厚さは、破断強度の観点からは、20μm以上であることが好ましく、50μm以上であることより好ましく、70μm以上であることがさらに好ましい。
【0065】
積層フィルムの破断強度は、31N/cm以上であることが好ましい。これにより、積層フィルムの破断を抑制することができる。積層フィルムの破断強度は、40N/cm以上であることがより好ましく、50N/cm以上であることがさらに好ましく、60N/cm以上であることがさらにより好ましい。積層フィルムの破断強度は、成形性の観点からは、100N/cm以下であることが好ましく、90N/cm以下であることがより好ましく、80N/cm以下であることがさらに好ましい。
なお、積層フィルムの破断強度は、フィルムの単位幅当たりの数値である。従って、単位は「N/cm」となる。
【0066】
積層フィルムの破断時の伸びは、30mm以上であることが好ましく、40mm以上であることがより好ましく、45mm以上であることがさらに好ましく、65mm以上であることがさらにより好ましく、75mm以上であることが特に好ましい。これにより、積層フィルムの破断をより抑制することができる。
【0067】
積層フィルムの破断強度及び破断時の伸びは、以下に記載した条件であること以外は、JIS K7127:1999に準拠して測定されたものである。
・装置:引張圧縮試験機STA-1150((株)オリエンテック社製)
・フィルム幅:10mm(1cm)
・フィルム長さ:20mm
・引張速度:50mm/分
・試験温度:22℃
【0068】
積層フィルムの突き刺し強度は、4N以上であることが好ましく、15.0N以上であることはより好ましく、20N以上であることがさらに好ましい。突き刺し強度の測定方法については、後述する実施例において説明する。
【0069】
(フッ素系樹脂フィルム)
本発明の複合ゴム成型体における積層フィルムが備えるフッ素系樹脂フィルムは、不活性であり、耐薬品性・耐溶剤性や滑り性や付着防止性に優れるため、ゴム素材にラミネートすることで、ゴム素材の表面(脚部や天面部)に優れた耐薬品性・耐溶剤性や滑り性や付着防止性を付与することができる。
【0070】
フッ素系樹脂フィルムは、フッ素系樹脂フィルム表面のXPS測定で得られたピーク面積において、フルオロエチレン単位由来のピーク面積に対するエチレン単位由来のピーク面積の割合が、80%以下であることを特徴とする。これにより、経済性に優れる積層フィルムとすることができる。上記ピーク面積の割合は、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましい。
上記ピーク面積の割合は、1%以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。
該ピーク面積の割合は、フッ素系樹脂フィルム表面の少なくとも一部の測定で得られたピーク面積から算出したものである。
一実施形態において、上記フルオロエチレン単位由来のピーク面積は、テトラフルオロエチレン単位由来のピーク面積である。
本発明において、フッ素系樹脂フィルム表面のXPS測定は、以下の条件により行う。
・装置:AXIS-Nova((株)島津製作所製)
・測定手法:Narrow(PassEnergy:40eV)
・測定範囲:C1s(280eV~305eV)
・X線源:モノクロAlKα
・X線出力:150W(エミッション電流:10mA、加速電圧:15kV)
・帯電中和機構:ON
・測定領域:300μm×700μm
・解析:CH-CHとフルオロエチレンの各ピーク面積の比を算出
【0071】
フッ素系樹脂フィルムは、特に限定されるものではないが、例えば、エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体樹脂(ETFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンの共重合体樹脂(ECTFE)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるパーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体樹脂(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体樹脂(EPE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、ポリフッ化ビニル系樹脂(PVF)等が挙げられ、2種以上を組み合わせたものであってもよい。これらの中でも、ポリアミド系樹脂フィルムとの接着性の観点、及び耐薬品性、耐溶剤性や滑り性を備えることから、ETFE、ECTFE、PTFEが好ましい。フッ素系樹脂フィルムは、突き刺し性の観点から、ETFE、ECTFEを含むことがより好ましく、ポリアミド系樹脂フィルムとの接着性および突き刺し性の観点から、ETFEを含むことがさらに好ましい。
さらには、変性タイプのETFEが使用可能である。変性タイプのETFEは、エチレンとテトラフルオロエチレンとこれらと共重合可能な含フッ素ビニルモノマーとを三元共重合させてなるものが好ましい。
【0072】
フッ素系樹脂フィルムの厚さは、100μm以下であることが好ましい。これにより、経済性により優れる積層フィルムとすることができる。フッ素系樹脂フィルムの厚さは、経済性の観点からは、70μm以下であることが好ましく、55μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。また、フッ素系樹脂フィルムの厚さは、破断強度の観点からは、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。
【0073】
フッ素系樹脂フィルムは、下記の改質処理を行うことで、ポリアミド系樹脂フィルムとの接着性を向上させることができる。本発明においては、フッ素系樹脂フィルムの一方の面のみに改質処理を施し、改質領域面をポリアミド系樹脂フィルムにラミネートすることが好ましい。他の面には改質処理を施さないことで、フッ素系樹脂フィルムが元来有する性能が損なわれず、複合ゴム成形体の表面に耐薬品性・耐溶剤性や滑り性、及び付着防止性を付与することができる。
【0074】
改質処理として下記のプラズマ処理を行ったフッ素系樹脂フィルムの改質領域では、炭素、窒素、酸素、フッ素の4元素の合計100%に対して、炭素の割合は45%以上70%以下であることが好ましく、50%以上68%以下であることがより好ましく、55%以上65%以下であることがさらに好ましく、窒素の割合は0.1%以上5%以下であることが好ましく、0.5%以上4%以下であることがより好ましく、1.0%以上3.0%以下であることがさらに好ましく、酸素の割合は13%以上であることが好ましく、14%以上30%以下であることがより好ましく、15%以上25%以下であることがさらに好ましく、フッ素の割合は35%以下であることが好ましく、10%以上33%以下であることがより好ましく、15%以上30%以下であることがさらに好ましい。フッ素系樹脂フィルムの改質領域において、炭素、窒素、酸素、フッ素の4元素の割合が上記範囲内にあることで、ポリアミド系樹脂フィルムとの接着性を向上することができる。なお、各元素の割合は、下記の改質処理の条件を制御することにより調節することができる。
【0075】
フッ素系樹脂フィルムの表面の改質処理としては、特に限定されないが、薬液による処理、電子ビームによる処理、コロナ処理、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理等があげられる。生産性の観点からコロナ処理、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理が好ましい。経済性の観点からは、コロナ処理、大気圧プラズマ処理が好ましい。プラズマ雰囲気の制御の容易性、及び官能基導入のためのガス種の割合を広い範囲で使用できるという観点からは、低圧プラズマ処理が好ましい。
【0076】
フッ素系樹脂の表層部を低圧プラズマ処理等により活性化すると、フッ素系樹脂の骨格からフッ素原子が離脱して、炭素ラジカルが生成するようになる。その後、雰囲気中の酸素と結合し、さらに雰囲気中から供給される水素原子により、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、ケトン基等の官能基が形成される。また、フッ素系樹脂の骨格に水素原子が結合している場合には、同様にフッ素系樹脂の骨格から水素原子が離脱して、炭素ラジカルが生成する。その後、雰囲気中の酸素と結合し、さらに離脱した水素原子や雰囲気中から供給される水素原子により、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、ケトン基等の官能基が形成される。
或いは、低圧プラズマ処理により雰囲気中に発生した酸素ラジカルにより、フッ素系樹脂の骨格からフッ素原子の引き抜きとフッ素系樹脂への酸素の付加反応が起こり、さらに雰囲気中から供給される水素原子により、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、ケトン基等の酸素含有官能基が形成される。
また、フッ素系樹脂の骨格に水素原子が結合している場合には、同様にフッ素系樹脂の骨格から水素原子の引き抜きとフッ素系樹脂への酸素の付加反応が起こり、さらに引き抜かれた水素原子や雰囲気中から供給される水素原子により、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、ケトン基等の官能基が形成される。
低圧プラズマ処理により活性化した表面は、大気圧に戻した際に、空気中の酸素や窒素由来の官能基が形成される。このため、プラズマ雰囲気中に酸素や窒素がない処理条件であっても、表面に酸素や窒素が検出される。
これらの官能基が存在するようになった表層は、他の樹脂との親和性と反応性が著しく向上するようになり、フッ素系樹脂の接着性が発現するものと考えられる。
【0077】
低圧プラズマ処理装置としては、ICP型のプラズマ処理装置、並行平板型のプラズマ処理装置、ロールツーロール型のプラズマ処理装置等を用いることができる。生産性の観点から、ロールツーロール型のプラズマ処理装置が好ましい。
プラズマ生成に用いる電源としては、高周波電源、パルス波電源等の従来公知の電源を用いることができる。電源の周波数は100kHz以下の範囲であれば、ガスの自由度は高く、官能基を積極的に導入するためのガス種の割合を多く使用できる。そのようなガスとしては、O、CO、CO、NH、NO、SO、HS等が挙げられる。
【0078】
ロールツーロール型プラズマ処理装置の一例としては、図2に示されるものが挙げられる。
【0079】
(ポリアミド系樹脂フィルム)
本発明の複合ゴム成型体における積層フィルムが備えるポリアミド系樹脂フィルムは、高い破断強度を有するため、積層フィルムの破断を抑制することができる。また、積層フィルムがポリアミド系樹脂フィルムを備えることにより、空気や水蒸気等のガスバリア性を向上することができる。
【0080】
ポリアミド系樹脂フィルムは、特に限定されるものではないが、例えば、ポリカプラミド樹脂(ナイロン-6)、ポリ-ω-アミノヘプタン酸樹脂(ナイロン-7)、ポリ-ω-アミノノナン酸樹脂(ナイロン-9)、ポリウンデカンアミド樹脂(ナイロン-11)、ポリラウリルラクタム樹脂(ナイロン-12)、ポリエチレンジアミンアジパミド樹脂(ナイロン-2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド樹脂(ナイロン-4,6)、ポリヘキサメチレンアジパミド樹脂(ナイロン-6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド樹脂(ナイロン-6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド樹脂(ナイロン-6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド樹脂(ナイロン-8,6)、ポリデカメチレンアジパミド樹脂(ナイロン-10,8)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体樹脂(ナイロン-6/12)、カプロラクタム/ω-アミノノナン酸共重合体樹脂(ナイロン-6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体樹脂(ナイロン-6/6,6)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体樹脂(ナイロン-12/6,6)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体樹脂(ナイロン-2,6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体樹脂(ナイロン-6/6,6/6,10)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体樹脂(ナイロン-6/6,6/6,10)等の脂肪族ポリアミド系樹脂、並びにメタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン等の芳香族ジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる結晶性芳香族ポリアミド系樹脂、及びヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンと、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる非晶性芳香族ポリアミド系樹脂(アモルファスナイロン)等の芳香族ポリアミド系樹脂が挙げられ、2種以上を組み合わせたものであってもよい。これらの中でも、フッ素系樹脂フィルム及びゴム素材との接着性、積層フィルムの破断強度や経済性の観点から、ナイロン-6、ナイロン-6,6であることが好ましい。ポリアミド系樹脂フィルムは、成形性の観点から、無延伸フィルムであることが好ましい
【0081】
ポリアミド系樹脂フィルムは、厚さが80μm以下であることを特徴とする。これにより、経済性に優れる積層フィルムとすることができる。また、積層フィルムが、ポリアミド系樹脂フィルムの厚さを80μm以下とすることにより、複合ゴム成形体がバイアル瓶等のフタとして用いられる場合に、注射針を穿刺する際の穿刺抵抗を低減することができる。ポリアミド系樹脂フィルムの厚さは、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。また、ポリアミド系樹脂フィルムの厚さは、破断強度及びガスバリア性の観点からは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。
【0082】
ポリアミド系樹脂フィルムは、上記した改質処理を行ってもよい。これにより、フッ素系樹脂フィルムやゴム素材との接着性を向上させることができる。ポリアミド系樹脂フィルムの改質処理は、片面又は両面であってもよいが、フッ素系樹脂フィルムとの接着性及びゴム素材等との接着性を向上できることから、両面であることが好ましい。
【0083】
改質処理の好ましい態様については、上記で説明したため、ここでは省略する。
【0084】
ポリアミド系樹脂フィルムは、表面の一部の領域に炭素、窒素、酸素の3元素を含み、該領域において、炭素、窒素、酸素の3元素の合計100%に対して、酸素の割合が12%以上であることが好ましい。これにより、フッ素系樹脂フィルムとの接着性を向上させることができる。また、積層フィルムを複合ゴム成形体に用いた場合には、ゴム素材等との接着性を向上することができる。該領域では、炭素、窒素、酸素の3元素の合計100%に対して、炭素の割合は45%以上76%以下であることが好ましく、50%以上75以下であることがより好ましく、55%以上74%以下であることがさらに好ましく、窒素の割合は11%以上20%以下であることが好ましく、11.5%以上15%以下であることがより好ましい、酸素の割合は12%以上であることが好ましく、13%以上30%以下であることがより好ましく、14%以上25%以下であることがさらに好ましい。なお、各元素の割合は、上記の改質処理の条件を制御することにより調節することができる。また、炭素、窒素、酸素の3元素の合計は100%以下である。
【0085】
本発明の複合ゴム成形体は、ポリアミド系樹脂フィルムと、ゴム素材との剥離強度が、250N/cm以上であることが好ましく、1000N/cm以上であることがより好ましく、1500N/cm以上であることがさらに好ましい。本発明において、剥離強度の測定は、以下の通りである。
まず、複合ゴム成形体の積層フィルムと、ゴム素材とを長辺方向において10mm以上剥離させた矩形状の試験片を準備する。試験片の幅(短辺の長さ)は10mmとする。ポリアミド系樹脂フィルム及びゴム素材の既に剥離している部分をそれぞれ、測定装置のつかみ具で把持する。つかみ具をそれぞれ、ポリアミド系樹脂フィルムと、ゴム素材とがまだ接着されている部分の面方向に対して直交する方向において互いに逆向きに、50mm/分の速度で引っ張り、安定領域における引張応力の平均値を測定する。この引張応力の平均値を剥離強度とする。安定領域とは、剥離初期における引張応力の上昇領域を除いた、引張応力の変化率の小さい領域を意味する。なお、ゴム素材を補強するために、補強フィルムをゴム素材に貼り合せて、積層フィルムと、ゴム素材との剥離強度を測定してもよい。この場合、ゴム素材及び補強フィルムの両方をつかみ具で把持する。
【0086】
(接着剤層)
接着剤層は、ドライラミネート法により2枚のフィルムを接着する場合に、積層しようとするフィルムの表面に、接着剤を塗布して乾燥させることにより形成することができる。
接着剤としては、例えば、1液型あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他等の溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型等の接着剤を1種又は2種以上用いることができる。上記のラミネート用接着剤のコーティング方法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法、トランスファーロールコート法、その他の方法で積層フィルムを構成するフィルムの塗布面に塗布することができる。塗布量としては、0.1g/m以上10g/m以下(乾燥状態)が好ましく、1g/m以上5g/m以下(乾燥状態)がより好ましい。
【実施例
【0087】
<樹脂フィルムの引張試験>
[参考例1-1]
表面のXPS測定で得られたピーク面積において、フルオロエチレン単位由来のピーク面積に対するエチレン単位由来のピーク面積の割合が40.8%である安価なETFEフィルムA(ダイキン(株)製、ネオフロンEF-0100、厚さ:100μm)を準備した。XPS測定の条件は以下の通りである。
・装置:AXIS-Nova((株)島津製作所製)
・測定手法:Narrow(PassEnergy:40eV)
・測定範囲:C1s(280eV~305eV)
・X線源:モノクロAlKα
・X線出力:150W(エミッション電流:10mA、加速電圧:15kV)
・帯電中和機構:ON
・測定領域:300μm×700μm
・解析:CH-CHとフルオロエチレンの各ピーク面積の比を算出
【0088】
ETFEフィルムAをロールツーロール型プラズマ処理装置内に通し、チャンバを閉めて0.01Pa以下まで減圧した後、Arを200sccm、酸素を200sccm導入した。排気量を調整して真空チャンバ内の圧力を3Paに調整したのち、電力を700Wとし、プラズマ処理を行った。ETFEフィルムAの搬送速度は4.2m/minとし、プラズマ処理を1回行った。プラズマ処理終了後、放電とガスの供給を止めて、0.01Pa以下まで減圧した後、ベントして大気圧に戻した。
改質処理を行ったETFEフィルムAを、長さ20mm、幅10mmにカットし、22℃において破断強度及び破断時の伸びを測定した。測定装置としては、(株)オリエンテック社製の引張圧縮試験機STA-1150を用いた。3つのフィルムについて、破断強度及び破断時の伸びを測定し、その平均値をフィルムの破断強度及び破断時の伸びとした。
測定結果を表1に示す。以下の表において、「EFA_XX」の「EFA」はETFEフィルムAを意味し、「XX」はフィルムの厚さ(単位:μm)を意味する。「フ゜ラス゛マ」は、樹脂フィルムが上記プラズマ処理されていることを意味する。
【0089】
[参考例1-2]
表面のXPS測定で得られたピーク面積において、フルオロエチレン単位由来のピーク面積に対するエチレン単位由来のピーク面積の割合が85.1%である高価なETFEフィルムB(AGC(株)製、アフレックスLM、厚さ:100μm)を用いたこと以外は、参考例1-1と同様にして改質処理を行い、破断強度及び破断時の伸びを測定した。測定結果を表1に示す。以下の表において、「EFB」はETFEフィルムBを意味する。
【0090】
[参考例1-3]
フィルムの片面がコロナ処理されたナイロンフィルム(東レ(株)製、レイファン1401 #30、厚さ:30μm)を準備した。参考例1-1と同様にして、ナイロンフィルムの破断強度及び破断時の伸びを測定した。測定結果を表1に示す。以下の表において、「Ny」はナイロンフィルムを意味する。「コロナ」は樹脂フィルムがコロナ処理されていることを意味する。
【0091】
[参考例1-4]
フィルムの片面がコロナ処理されたナイロンフィルム(東レ(株)製、レイファン1401 #50、厚さ:50μm)を準備した。参考例1-1と同様にして、ナイロンフィルムの破断強度及び破断時の伸びを測定した。測定結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
<ポリアミド系樹脂フィルムの表面組成の測定>
[参考例2-1]
X線光電子分光分析装置(KRATOS社製ESCA-3400)を用いて、X線銃:MgKα、20mA、10kVとして、C1s、N1s、O1sを表2に記載の条件で測定した。解析ソフトにより、測定で得られた各元素のピークにShirley法でバックグラウンドを引き、各元素のピークの積分強度(面積)から、ナイロンフィルム表面の元素濃度を算出した。測定結果を表3に示す。
【表2】
【0094】
[参考例2-2]
ナイロンフィルムをコロナ処理して、コロナ処理されたナイロンフィルム表面の測定したこと以外は、参考例2-1と同様にしてナイロンフィルム表面の元素濃度を算出した。測定結果を表3に示す。
【0095】
[参考例2-3]
ナイロンフィルムをプラズマ処理して、プラズマ処理されたナイロンフィルム表面の測定したこと以外は、参考例2-1と同様にしてナイロンフィルム表面の元素濃度を算出した。測定結果を表3に示す。
【0096】
[参考例2-4]
ナイロンフィルムを、供給ガスをArのみ400sccmにした上記プラズマ処理して、アルゴンプラズマ処理されたナイロンフィルム表面の測定したこと以外は、参考例2-1と同様にしてナイロンフィルム表面の元素濃度を算出した。測定結果を表3に示す。以下の表において、「Arフ゜ラス゛マ」はフィルム表面がアルゴンプラズマ処理されていることを意味する。
【0097】
【表3】
【0098】
<積層フィルムの引張試験及び耐突き刺し性の評価>
[実施例1-1]
フィルムの片面がプラズマ処理されたETFEフィルムA(幅:50mm、長さ:70mm、厚さ:50μm)と、フィルムの片面がコロナ処理されたナイロンフィルム(幅:50mm、長さ:70、厚さ:20μm)を準備した。
2枚のステンレス板(幅:70mm、長さ:90mm、厚さ:3mm)の間に、プラズマ処理面とコロナ処理面が接するように、ETFEフィルムAとナイロンフィルムを重ね合わせ、加熱プレス機で圧着した。荷重は2000kgf、温度は175℃、時間は15分とした。
得られた積層フィルムを幅10mm、長さ50mmにカットし、JIS K7127:1999に準拠して、22℃において破断強度及び破断時の伸びを測定した。チャック間距離20mmとし、測定装置としては、(株)オリエンテック社製の引張圧縮試験機STA-1150を用いた。3つの積層フィルムについて、破断強度及び破断時の伸びを測定し、その平均値を積層フィルムの破断強度及び破断時の伸びとした。測定結果を表4に示す。
【0099】
続いて、積層フィルムの突き刺し強度を、JIS Z1707 7.4に準拠して測定した。測定器としては、A&D製のテンシロン万能材料試験機RTC-1310を用いた。具体的には、図13に示すように、固定されている状態の積層フィルムの試験片91に対して、直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針90を、50mm/分(1分あたり50mm)の速度で突き刺し、針90が試験片91を貫通するまでの応力の最大値を測定した。3つの試験片について、応力の最大値を測定し、その平均値を積層フィルムの突き刺し強度とした。測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%とした。測定結果を表4に示す。
【0100】
[実施例1-2~1-10][比較例1-1]
表4に示した樹脂フィルム1及び樹脂フィルム2を変更したこと以外は実施例1-1と同様にして、積層フィルムを作製し、破断強度、破断時の伸び及び突き刺し強度を測定した。
以下の表において、「CF」はPCPFEフィルム(ハネウエル社製、型番:TR)を意味し、「PF」はPTFEフィルム(バルカー製、型番:7900)を意味する。なお、PCPFEフィルム及びPTFEフィルムの表面のXPS測定で得られたピーク面積において、フルオロエチレン単位由来のピーク面積に対するエチレン単位由来のピーク面積の割合は0%である。
【0101】
【表4】
【0102】
本発明の積層フィルムは、破断時の伸びが小さいフッ素系樹脂フィルムであっても、ポリアミド系樹脂フィルムと組み合わせることにより、高価でかつ破断時の伸びが大きいフッ素系樹脂フィルムと比較して同等の伸びを実現できている。
【0103】
<フッ素系樹脂フィルムとポリアミド系樹脂フィルムとの剥離試験>
[実施例2-1]
フィルムの片面がプラズマ処理されたETFEフィルムA(幅:50mm、長さ:70mm、厚さ:50μm)と、フィルムの片面がコロナ処理されたナイロンフィルム(幅:50mm、長さ:70、厚さ:30μm)を準備した。
2枚のステンレス板(幅:70mm、長さ:90mm、厚さ:3mm)の間に、改質処理面同士が接するように、ETFEフィルムAとナイロンフィルムを重ね合わせ、加熱プレス機で圧着した。荷重は2000kgf、温度は175℃、時間は15分とした。
得られた積層フィルムを幅10mm、長さ50mmにカットし、長辺方向において10mm剥離させ、剥離部分をそれぞれ、測定装置のつかみ具で把持する。つかみ具をそれぞれ、ETFEフィルムAと、ナイロンフィルムとがまだ接着されている部分の面方向に対して直交する方向において互いに逆向きに、50mm/分の速度で引っ張り、安定領域における引張応力(剥離強度)を測定した。測定装置としては、(株)オリエンテック社製の引張圧縮試験機STA-1150を用いた。3つの積層フィルムについて、剥離強度を測定し、その平均値を剥離強度とした。測定結果を表5に示す。
【0104】
[実施例2-2~2-14]
表5に示した樹脂フィルム1、樹脂フィルム2、及び加熱温度を変更した以外は実施例2-1と同様にして、積層フィルムを作製し、引張応力(剥離強度)を測定した。
【0105】
【表5】
【0106】
<積層フィルムとゴム素材との剥離試験>
[実施例3-1]
ゴム素材として未加硫の塩素化ブチルゴムシートを準備した。塩素化ブチルゴムには、主な添加剤として焼成クレー・シリカ・酸化マグネシウム・ステアリン酸・酸化チタン・カーボンブラック・加硫剤(2,4,6-Trimercapto-s-triazine)・加硫促進剤(ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛)からなる材質を加え、ニーダーで混錬した。塩素化ブチルゴムシートの配合を表6に示す。また、フィルムの片面がプラズマ処理されたETFEフィルムA(幅:50mm、長さ:70mm、厚さ:50μm)と、フィルムの片面がコロナ処理されたナイロンフィルム(幅:50mm、長さ:70、厚さ:30μm)を準備した。さらに、補強フィルムとして、フィルムの片面がプラズマ処理されたETFEフィルムA(幅:50mm、長さ:70mm、厚さ:100μm)を準備した。
【0107】
【表6】
【0108】
凹部のあるステンレス板(幅:70mm、長さ:90mm、厚さ:5mm、凹部幅:50mm、凹部長さ70mm、凹部深さ2mm)とステンレス板(幅:70mm、長さ:90mm、厚さ:3mm)の間に、ETFEフィルムA、ナイロンフィルム、ゴム素材及び補強フィルムを順に重ね合わせ、加熱プレス機で圧着した。荷重は2000kgf、温度は175℃、時間は15分とした。ETFEフィルムAとナイロンフィルムは、改質処理面同士が接しており、補強フィルムの改質処理面はゴム素材と接している。
得られた積層フィルムを幅10mm、長さ50mmにカットし、長辺方向において、ETFEフィルムA及びナイロンフィルム(積層フィルム)と、ゴム素材及び補強フィルムとを10mm剥離させ、剥離部分をそれぞれ、測定装置のつかみ具で把持する。つかみ具をそれぞれ、積層フィルムと、ゴム素材及び補強フィルムとがまだ接着されている部分の面方向に対して直交する方向において互いに逆向きに、50mm/分の速度で引っ張り、安定領域における引張応力(剥離強度)を測定した。測定装置としては、(株)オリエンテック社製の引張圧縮試験機STA-1150を用いた。3つのものについて、剥離強度を測定し、その平均値を積層フィルムの剥離強度とした。測定結果を表7に示す。
【0109】
[実施例3-2~3-6][比較例3-1~3-2]
表7に示した樹脂フィルム1及び樹脂フィルム2を変更した以外は実施例3-1と同様にして、積層フィルムを作製し、引張応力(剥離強度)を測定した。なお、表7において、「フ゜ラス゛マ+コロナ」は、樹脂フィルムをコロナ処理した後に、さらにその上をプラズマ処理したことを意味する。
【0110】
【表7】
【0111】
<ラミネートゴム栓の外観観察>
[実施例4-1]
フィルムの片面がプラズマ処理されたETFEフィルムA(厚さ:100μm)、及びフィルムの片面がコロナ処理され、フィルムのもう一方の面がプラズマ処理されたナイロンフィルム(厚さ:50μm)を準備した。ETFEフィルムAのプラスマ処理面とナイロンフィルムのコロナ処理面が接するようにETFEフィルムAとナイロンフィルムを重ね合わせ、100℃で1分間熱圧着して、積層フィルムを得た。
続いて、該積層フィルムと、上記ブチルゴムシートとを、積層フィルムのナイロンフィルムと、ブチルゴムシートとが接するように重ね合わせ、脚部長さ10mm、脚径13mm、天面部厚み3mm、天面部外径19mmのゴム栓の寸法に合わせた上下金型で、積層フィルムがゴム栓の脚部側に接触する状態にして真空プレスで加硫成形して、ラミネートゴム栓を得た。成形時の金型温度は170±3℃、加硫時間は420秒、フィルムの予備加熱時間は30秒であった。
得られたラミネートゴム栓において、積層フィルムの破断は確認されなかった。
【0112】
[実施例4-2]
ナイロンフィルムの厚さを30μmにしたこと以外は、実施例4-1と同様にして、ラミネートゴム栓を得た。
得られたラミネートゴム栓において、積層フィルムの破断は確認されなかった。
【0113】
[実施例4-3]
ETFEフィルムAの厚さを50μmにしたこと以外は、実施例4-1と同様にして、ラミネートゴム栓を得た。
得られたラミネートゴム栓において、積層フィルムの破断は確認されなかった。
【0114】
[比較例4-1]
該積層フィルムを、厚さ100μmのETFEフィルムAのみに変更したこと以外は、実施例4-1と同様にして、ラミネートゴム栓を得た。
得られたラミネートゴム栓において、ETFEフィルムAが破断した。
【0115】
[実施例5-1]
フィルムの片面がプラズマ処理されたETFEフィルムA(厚さ:50μm)、及びフィルムの片面がコロナ処理され、フィルムのもう一方の面がプラズマ処理されたナイロンフィルム(厚さ:50μm)を準備した。ETFEフィルムAのプラスマ処理面とナイロンフィルムのコロナ処理面が接するようにETFEフィルムAとナイロンフィルムを重ね合わせ、100℃で1分間熱圧着して、積層フィルムを得た。
続いて、該積層フィルムと、上記ブチルゴムシートとを、積層フィルムのナイロンフィルムと、ブチルゴムシートとが接するように重ね合わせ、脚部長さ10mm、脚径13mm、天面部厚み3mm、天面部外径19mmのゴム栓の寸法に合わせた上下金型で、積層フィルムがゴム栓の天面部側に接触する状態にして真空プレスで加硫成形して、ラミネートゴム栓を得た。成形時の金型温度は170±3℃、加硫時間は420秒、フィルムの予備加熱時間は30秒であった。
得られたラミネートゴム栓において、積層フィルムの破断は確認されなかった。
【0116】
[実施例5-2]
ナイロンフィルムの厚さを30μmにしたこと以外は、実施例5-1と同様にして、ラミネートゴム栓を得た。
得られたラミネートゴム栓において、積層フィルムの破断は確認されなかった。
【0117】
[比較例5-1]
該積層フィルムを、厚さ50μmのETFEフィルムAのみに変更したこと以外は、実施例5-1と同様にして、ラミネートゴム栓を得た。
得られたラミネートゴム栓において、ETFEフィルムAが破断した。
【0118】
[実施例6-1]
フィルムの片面がプラズマ処理されたPTFEフィルム(厚さ:40μm)、及びフィルムの片面がコロナ処理され、フィルムのもう一方の面がプラズマ処理されたナイロンフィルム(厚さ:50μm)を準備した。ETFEフィルムAのプラスマ処理面とナイロンフィルムのコロナ処理面が接するようにETFEフィルムAとナイロンフィルムを重ね合わせ、100℃で1分間熱圧着して、積層フィルムを得た。
続いて、該積層フィルムと、上記ブチルゴムシートとを、積層フィルムのナイロンフィルムと、ブチルゴムシートとが接するように重ね合わせ、高さ18mm、直径10mmのガスケットの寸法に合わせた上下金型で、積層フィルムがガスケットの接液部側に接触する状態にして真空プレスで加硫成形して、ラミネートガスケットを得た。成形時の金型温度は170±3℃、加硫時間は420秒、フィルムの予備加熱時間は30秒であった。
得られたラミネートガスケットにおいて、積層フィルムの破断は確認されなかった。
【符号の説明】
【0119】
10:積層フィルム
11:フッ素系樹脂フィルム
12:ポリアミド系樹脂フィルム
20プラズマ処理装置
P:プラズマ
21:チャンバ
22:フィルム供給部
22a:フィルムローラ
23:フィルム巻取部
23a:巻取ローラ
24:メインロール
25:フィルム搬送装置
26:案内ロール
27:排気ポンプ
28:連結管
29:バルブ
30:ガスノズル
31:処理ガス供給部
32、33、24:ガスボンベ
35、36、37:ガス供給管
38、39、40:マスフローコントローラー
41:表面改質樹脂フィルム
42:樹脂フィルム
43:マスク
44:磁場発生部
45:マグネット
46:隔壁
50:ラミネートゴム栓
51:ゴム栓
52:フッ素系樹脂フィルム
53:ポリアミド系樹脂フィルム
54:積層フィルム
60:PTPシート
61:カバーフィルム
62:容器フィルム
63:ゴムシート
64:フッ素系樹脂フィルム
65:ポリアミド系樹脂フィルム
66:積層フィルム
70:注射器
71:外筒
72:ラミネートゴムガスケット
73:押子
74:ゴムガスケット
75:フッ素系樹脂フィルム
76:ポリアミド系樹脂フィルム
77:積層フィルム
80:真空採血管
81:ラミネートゴム栓
82:有底管
83:ゴム栓
84:フッ素系樹脂フィルム
85:ポリアミド系樹脂フィルム
86:積層フィルム
90:針
91:試験片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13