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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】マルチピースソリッドゴルフボール
(51)【国際特許分類】
   A63B 37/00 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
A63B37/00 644
A63B37/00 624
A63B37/00 658
A63B37/00 640
A63B37/00 632
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020127860
(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公開番号】P2022025190
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 英郎
【審査官】田中 洋行
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-095369(JP,A)
【文献】特開2018-148990(JP,A)
【文献】特開2020-089633(JP,A)
【文献】特開平10-165542(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0048326(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00-47/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア、内側包囲層、外側包囲層、中間層及びカバーを具備するマルチピースソリッドゴルフボールであって、コアは単層又は複数層でゴム組成物により形成され、内側包囲層は単層又は複数層で樹脂材料により形成され、外側包囲層は単層で樹脂材料により形成され、中間層は単層で樹脂材料により形成され、カバーは厚さ1.0mm以下の単層で樹脂材料により形成されており、上記コアを内側包囲層で被覆した球体(内側包囲層被覆球体)の表面のショアC硬度と、該内側包囲層被覆球体を外側被覆球体で被覆した球体(外側包囲層被覆球体)の表面のショアC硬度と、該外側包囲層被覆球体を中間層で被覆した球体(中間層被覆球体)の表面のショアC硬度と、ボールの表面のショアC硬度とが、(外側包囲層被覆球体の表面のショアC硬度)>(内側包囲層被覆球体の表面のショアC硬度)、及び(中間層被覆球体の表面のショアC硬度)>(ボール表面のショアC硬度)の条件を満たすと共に、ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量が3.0mm以上であり、更には、コアの体積(mm 3 )×コア表面とコア中心との中点のショアC硬度(Cm)を Core vh、内側包囲層の体積(mm 3 )×内側包囲層被覆球体の表面硬度(ショアC)をIE vh、外側包囲層の体積(mm 3 )×外側包囲層被覆球体の表面硬度(ショアC)をOE vh とするとき、1.0≦(OE vh + IE vh)/Core vh ≦4.5 の条件を満たすことを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項2】
コアに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をC(mm)、ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をB(mm)とするとき、2.5≦C-B≦5.0である請求項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項3】
各層の表面硬度の関係が、下記式
(ボール表面のショアC硬度)<(中間層被覆球体の表面のショアC硬度)>(外側包囲層被覆球体の表面のショアC硬度)>(内側包囲層被覆球体の表面のショアC硬度)>(コアの表面のショアC硬度)の条件を満たす請求項1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項4】
各層の厚さの関係が、(カバー厚さ)<(中間層厚さ)≦(包囲層厚さの総厚)の条件を満たす請求項1~のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項5】
各層の厚さの比が、(包囲層厚さの総厚)/(カバー厚さ+中間層厚さ)≧1.0の条件を満たす請求項1~のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項6】
ボールの初速が76.8m/s以上である請求項1~のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項7】
コア直径とボール直径との関係が、0.65≦(コア直径)/(ボール直径)≦0.80の条件を満たす請求項1~のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項8】
コア、内側包囲層、外側包囲層、中間層及びカバーを具備するマルチピースソリッドゴルフボールであって、コアは単層又は複数層でゴム組成物により形成され、内側包囲層は単層又は複数層で樹脂材料により形成され、外側包囲層は単層で樹脂材料により形成され、中間層は単層で樹脂材料により形成され、カバーは厚さ1.0mm以下の単層で樹脂材料により形成されており、上記コアの内部硬度について、コアの中心のショアC硬度をCc、コアの表面のショアC硬度をCs、コア表面とコア中心との中点のショアC硬度をCmとしたとき、(Cs-Cm)/(Cm-Cc)≧1.1の条件を満たし、上記コアを内側包囲層で被覆した球体(内側包囲層被覆球体)の表面のショアC硬度と、該内側包囲層被覆球体を外側被覆球体で被覆した球体(外側包囲層被覆球体)の表面のショアC硬度と、該外側包囲層被覆球体を中間層で被覆した球体(中間層被覆球体)の表面のショアC硬度と、ボールの表面のショアC硬度とが、(外側包囲層被覆球体の表面のショアC硬度)>(内側包囲層被覆球体の表面のショアC硬度)、及び(中間層被覆球体の表面のショアC硬度)>(ボール表面のショアC硬度)の条件を満たすと共に、ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量が3.0mm以上であることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア、単層又は複数層の内側包囲層、外側包囲層、中間層及びカバーを具備する5層以上からなるマルチピースソリッドゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりボールを多層構造に設計する工夫が多くなされており、プロゴルファーのみならず、上級者や中級者のアマチュアゴルファーが満足するボールが多く開発されている。例えば、コア、包囲層、中間層及びカバー(最外層)の各層の硬度を適正化した機能的なマルチピースソリッドゴルフボールが普及している。また、ボールの大部分の体積を占めるコア硬度分布に着目し、様々な態様のコア内部硬度を設計することにより、プロや中上級者用の高性能のゴルフボールを提供する技術がいくつか提案されている。
【0003】
このような技術文献としては、例えば、下記の特許文献1~7が挙げられる。これらのゴルフボールは4層又は5層の多層構造のゴルフボールに関するものであり、コア、包囲層、中間層及びカバー(最外層)の各層の硬度、各層の厚さやコア硬度分布などに着目した特許文献である。
【0004】
しかしながら、上記提案のゴルフボールは、コアの硬度分布や各層との厚さ関係の最適化においては未だ改善の余地がある。即ち、上記提案のゴルフボールは、良好なドライバー(W#1)打撃時の飛距離を保つことができたとしても、アイアンショット時の飛距離については不十分なものも多い。また、上記提案のゴルフボールの中には、ドライバー打撃時だけでなくアイアンショット時においても優位な飛距離性能を得ようとすると、アプローチした時のスピン性能においては十分な高いスピン性能を発揮させることができず、ゲーム性の高いものではなく、あるいはフルショットにおける打感が良好とはいえないゴルフボールもある。よって、所望の飛距離を得るゴルフボールとして、ドライバーショット時の飛距離増大を図るだけではなく、アイアンショット時の飛距離も改善されたボールが望まれており、そのほかの特性である打感及び耐久性を良好に得るとともに、ショートゲーム性の高いゴルフボールの提案や開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-095364号公報
【文献】特開2016-101254号公報
【文献】特開2009-095358号公報
【文献】特開2016-101256号公報
【文献】特開2008-149131号公報
【文献】特開2009-095365号公報
【文献】特開2009-095369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ドライバー(W#1)のみならずアイアンフルショットでの飛距離が十分に得られると共に、アプローチショット時にボールにスピンを掛けやすく、ショートゲームに優位であり、打感もソフトで良好に得られるものであり、且つ、繰り返し打撃による割れ耐久性が良好なマルチピースソリッドゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、コア、内側包囲層、外側包囲層、中間層及びカバーを具備するゴルフボールについて、カバーを比較的軟らかく、中間層を比較的硬く形成すると共に、中間層の内側に隣接する外側包囲層を、中間層より軟らかく且つ内側包囲層の表面より硬くなるように形成することに着目したところ、本発明の課題を解決できることを見出した。即ち、コアを単層又は複数層でゴム組成物により形成し、内側包囲層を単層又は複数層で樹脂材料により形成し、外側包囲層を単層で樹脂材料により形成し、中間層を単層で樹脂材料により形成し、カバーを厚さ1.0mm以下の単層で樹脂材料により形成し、内側包囲層被覆球体の表面のショアC硬度と、外側包囲層被覆球体の表面のショアC硬度と、中間層被覆球体の表面のショアC硬度と、ボールの表面のショアC硬度とを、(外側包囲層被覆球体の表面のショアC硬度)>(内側包囲層被覆球体の表面のショアC硬度)、及び(中間層被覆球体の表面のショアC硬度)>(ボール表面のショアC硬度)の条件を満たすように硬度関係を特定すると共に、ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量が3.0mm以上になるようにゴルフボールを設計したところ、ドライバー(W#1)及びアイアンでのフルショット時に低スピンで良好な飛距離が得られ、ソフトで良い打感が得られると共に、繰り返し打撃による割れ耐久性、グリーン周りでのコントロール性の両方とも良好であることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
言い換えれば、本発明のゴルフボールは、4層以上のカバー層を有し、グリーン周りのコントロール性を付加したゴルフボールである。ドライバー(W#1)及びアイアンでの両方のフルショットにおいて低スピン化による飛距離を十分に確保できるものであるが、特にアイアン打撃時の飛距離の優位性に特徴がある。そのうえ、本発明のゴルフボールは、飛距離の確保だけではなく、ショートゲームではスピンがかかり、グリーン周りのコントロール性を要望するユーザーのニーズを満足すると共に、全てのショットにおいてソフトで良好な打感が得られる。
【0009】
従って、本発明は、下記のマルチピースソリッドゴルフボールを提供する。
1.コア、内側包囲層、外側包囲層、中間層及びカバーを具備するマルチピースソリッドゴルフボールであって、コアは単層又は複数層でゴム組成物により形成され、内側包囲層は単層又は複数層で樹脂材料により形成され、外側包囲層は単層で樹脂材料により形成され、中間層は単層で樹脂材料により形成され、カバーは厚さ1.0mm以下の単層で樹脂材料により形成されており、上記コアを内側包囲層で被覆した球体(内側包囲層被覆球体)の表面のショアC硬度と、該内側包囲層被覆球体を外側被覆球体で被覆した球体(外側包囲層被覆球体)の表面のショアC硬度と、該外側包囲層被覆球体を中間層で被覆した球体(中間層被覆球体)の表面のショアC硬度と、ボールの表面のショアC硬度とが、(外側包囲層被覆球体の表面のショアC硬度)>(内側包囲層被覆球体の表面のショアC硬度)、及び(中間層被覆球体の表面のショアC硬度)>(ボール表面のショアC硬度)の条件を満たすと共に、ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量が3.0mm以上であり、更には、コアの体積(mm 3 )×コア表面とコア中心との中点のショアC硬度(Cm)を Core vh、内側包囲層の体積(mm 3 )×内側包囲層被覆球体の表面硬度(ショアC)をIE vh、外側包囲層の体積(mm 3 )×外側包囲層被覆球体の表面硬度(ショアC)をOE vh とするとき、1.0≦(OE vh + IE vh)/Core vh ≦4.5 の条件を満たすことを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
.コアに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をC(mm)、ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をB(mm)とするとき、2.5≦C-B≦5.0である上記記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
.各層の表面硬度の関係が、下記式
(ボール表面のショアC硬度)<(中間層被覆球体の表面のショアC硬度)>(外側包囲層被覆球体の表面のショアC硬度)>(内側包囲層被覆球体の表面のショアC硬度)>(コアの表面のショアC硬度)の条件を満たす上記1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
.各層の厚さの関係が、(カバー厚さ)<(中間層厚さ)≦(包囲層厚さの総厚)の条件を満たす上記1~のいずれかに記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
.各層の厚さの比が、(包囲層厚さの総厚)/(カバー厚さ+中間層厚さ)≧1.0の条件を満たす上記1~のいずれかに記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
.ボールの初速が76.8m/s以上である上記1~のいずれかに記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
.コア直径とボール直径との関係が、0.65≦(コア直径)/(ボール直径)≦0.80の条件を満たす上記1~のいずれかに記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
コア、内側包囲層、外側包囲層、中間層及びカバーを具備するマルチピースソリッドゴルフボールであって、コアは単層又は複数層でゴム組成物により形成され、内側包囲層は単層又は複数層で樹脂材料により形成され、外側包囲層は単層で樹脂材料により形成され、中間層は単層で樹脂材料により形成され、カバーは厚さ1.0mm以下の単層で樹脂材料により形成されており、上記コアの内部硬度について、コアの中心のショアC硬度をCc、コアの表面のショアC硬度をCs、コア表面とコア中心との中点のショアC硬度をCmとしたとき、(Cs-Cm)/(Cm-Cc)≧1.1の条件を満たし、上記コアを内側包囲層で被覆した球体(内側包囲層被覆球体)の表面のショアC硬度と、該内側包囲層被覆球体を外側被覆球体で被覆した球体(外側包囲層被覆球体)の表面のショアC硬度と、該外側包囲層被覆球体を中間層で被覆した球体(中間層被覆球体)の表面のショアC硬度と、ボールの表面のショアC硬度とが、(外側包囲層被覆球体の表面のショアC硬度)>(内側包囲層被覆球体の表面のショアC硬度)、及び(中間層被覆球体の表面のショアC硬度)>(ボール表面のショアC硬度)の条件を満たすと共に、ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量が3.0mm以上であることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
【発明の効果】
【0010】
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールによれば、ドライバー(W#1)及びアイアンでのフルショット時に低スピンで良好な飛距離が得られ、ソフトで良い打感が得られると共に、繰り返し打撃による割れ耐久性、グリーン周りでのコントロール性の両方とも良好であり、特に、アイアン打撃時の飛距離に優位性がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のマルチピースソリッドゴルフボール(5層構造)の概略断面図である。
図2】各実施例及び各比較例に共通するディンプルの態様(パターン)を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、図1に示されているように、コア1と、該コアを被覆する内側包囲層2a及び外側包囲層2bと、該包囲層を被覆する中間層3と、該中間層を被覆するカバー4とを有する4層又はそれ以上の多層を有するゴルフボールGである。上記カバー4の表面には、通常、ディンプルDが多数形成される。また、カバー4の表面には、特に図示していないが、通常、塗装による塗膜層が形成される。上記カバー4は、塗膜層を除き、ゴルフボールの層構造での最外層に位置するものである。上記のコア1又は内側包囲層2aは、それぞれ単層に限られず2層以上の複数層に形成することができるが、外側包囲層2b、中間層3又はカバー4は単層に形成される。
【0013】
コアの直径は、24.7mm以上であることが好ましく、より好ましくは25.7mm以上、さらに好ましくは26.7mm以上である。この直径の上限値は、好ましくは34.7mm以下、より好ましくは33.3mm以下、さらに好ましくは31.7mm以下である。
【0014】
また、コアの直径/ボール直径の値は、好ましくは0.65以上、より好ましくは0.67以上、さらに好ましくは0.70以上であり、上限値としては、好ましくは0.80以下、より好ましくは0.76以下、さらに好ましくは0.73以下である。この値が小さすぎると、ボール初速が低くなったり、ボール全体のたわみ硬度が硬くなり、フルショット時のスピン量が増加してしまい狙いの飛距離が得られなくなることがある。上記値が大きすぎると、アイアンフルショット時のスピン量が増加してしまい狙いの飛距離が得られなくなったり、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0015】
コアに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量(mm)は、特に制限はないが、好ましくは5.0mm以上、より好ましくは5.5mm以上、更に好ましくは6.0mm以上であり、上限値として、好ましくは9.0mm以下、より好ましくは8.5mm以下、さらに好ましくは8.0mm以下である。上記コアのたわみ量が小さすぎる、即ち、コアが硬すぎると、ボールのスピン量が増えすぎて飛ばなくなったり、打感が硬くなりすぎることがある。一方、上記コアのたわみ量が大きすぎる、即ち、コアが軟らかすぎると、ボールの反発性が低くなりすぎて飛ばなくなったり、打感が軟らかくなりすぎ、あるいは繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0016】
上記コアは、ゴム材を主材とするゴム組成物を加硫することにより得られる。このゴム組成物としては、通常、基材ゴムを主体とし、これに、共架橋剤、架橋開始剤、不活性充填剤、有機硫黄化合物等を配合させてゴム組成物を得るものである。
【0017】
基材ゴムとしては、ポリブタジエンを用いることが好ましい。ポリブタジエンの種類としては、市販品を用いることができ、例えば、BR01、BR51、BR730(JSR社製)などが挙げられる。また、基材ゴム中のポリブダジエンの割合は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。上記基材ゴムには、上記ポリブタジエン以外にも他のゴム成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合し得る。上記ポリブタジエン以外のゴム成分としては、上記ポリブタジエン以外のポリブタジエン、その他のジエンゴム、例えばスチレンブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等を挙げることができる。
【0018】
共架橋剤は、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩である。不飽和カルボン酸として、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。不飽和カルボン酸の金属塩としては特に限定されるものではないが、例えば上記不飽和カルボン酸を所望の金属イオンで中和したものが挙げられる。具体的にはメタクリル酸、アクリル酸等の亜鉛塩やマグネシウム塩等が挙げられ、特にアクリル酸亜鉛が好適に用いられる。
【0019】
上記不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩は、上記基材ゴム100質量部に対し、通常5質量部以上、好ましくは6質量部以上、更に好ましくは7質量部以上、上限として通常50質量部以下、好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下配合する。配合量が多すぎると、硬くなりすぎて耐え難い打感になる場合があり、配合量が少なすぎると、反発性が低下してしまう場合がある。
【0020】
架橋開始剤としては、有機過酸化物を使用することが好適である。具体的には市販品の有機過酸化物を用いることができ、例えば、パークミルD(日本油脂(株)製)、パーヘキサC-40、パーヘキサ3M(日本油脂(株)製)、Luperco 231XL(アトケム社製)等を好適に用いることができる。これらは1種を単独であるいは2種以上を併用してもよい。有機過酸化物の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、上限として、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、最も好ましくは2.5質量部以下配合する。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると好適な打感、耐久性及び反発性を得ることができない場合がある。
【0021】
充填材としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を好適に用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。充填剤の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは100質量部以下とすることができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると適正な質量、及び好適な反発性を得ることができない場合がある。
【0022】
老化防止剤としては、例えば、ノクラックNS-6、同NS-30、同200、同MB(大内新興化学工業(株)製)等の市販品を採用することができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
老化防止剤の配合量については、特に制限はないが、基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、上限として好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.7質量部以下、更に好ましくは0.5質量部以下である。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると、適正なコア硬度傾斜が得られずに好適な反発性、耐久性及びフルショット時の低スピン効果を得ることができない場合がある。
【0024】
更に、上記ゴム組成物には、優れた反発性を付与するために有機硫黄化合物を配合することができ、具体的には、チオフェノール、チオナフトール、ハロゲン化チオフェノール又はそれらの金属塩を配合することが推奨され、より具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール等の亜鉛塩、硫黄数が2~4のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド等が挙げられるが、特に、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、ジフェニルジスルフィドを好適に用いることができる。
【0025】
有機硫黄化合物は、上記基材ゴム100質量部に対し、0.05質量部以上、好ましくは0.07質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、上限として5質量部以下、好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、最も好ましくは2質量部以下配合する。配合量が多すぎると硬さが軟らかくなり過ぎてしまい、少な過ぎると反発性の向上が見込めない。
【0026】
上記コアは、上記各成分を含有するゴム組成物を加硫硬化させることにより製造することができる。例えば、バンバリーミキサーやロール等の混練機を用いて混練し、コア用金型を用いて圧縮成形又は射出成型し、有機過酸化物や共架橋剤が作用するのに十分な温度として、100~200℃、好ましくは140~180℃、10~40分の条件にて成形体を適宜加熱することにより、該成形体を硬化させて製造することができる。
【0027】
また、上記コアは単層のみならず、内層コア及び外層コアの2層に形成することができる。コアを内層コア及び外層コアの2層に形成する場合、内層及び外層コアの材料としては、いずれも上述したゴム材を主材として用いることができる。また、内層コアを被覆する外層コアのゴム材は、内層コアの材料と同種であっても異種であってもよい。具体的には、上記コアのゴム材料の各成分で説明したのと同様である。
【0028】
次に、上記コアの硬度分布については説明する。なお、以下に説明するコアの硬度はショアC硬度を意味する。このショアC硬度は、ASTM D2240規格に準拠したショアC硬度計にて計測した硬度値である。
【0029】
上記コアの中心硬度(Cc)は、好ましくは33以上、より好ましくは38以上、さらに好ましくは43以上であり、その上限値は、好ましくは62以下、より好ましくは59以下、さらに好ましくは54以下である。この値が大きすぎると、打感が硬くなり、あるいはフルショットでスピン量が増えて狙いの飛距離が得られない場合がある。一方、上記の値が小さすぎると、反発性が低くなり飛ばなくなり、あるいは繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0030】
上記コアの表面硬度(Cs)は、好ましくは45以上、より好ましくは50以上、さらに好ましくは55以上であり、その上限値は、好ましくは74以下、より好ましくは70以下、さらに好ましくは66以下である。これらの硬度を逸脱した場合、上記コアの中心硬度(Cc)で説明したのと同様の不利な結果を招くおそれがある。
【0031】
上記コア表面とコア中心との中点の硬度(Cm)は、好ましくは37以上、より好ましくは42以上、さらに好ましくは47以上であり、その上限値は、好ましくは66以下、より好ましくは63以下、さらに好ましくは58以下である。これらの硬度を逸脱した場合、上記コアの中心硬度(Cc)で説明したのと同様の不利な結果を招くおそれがある。
【0032】
コアの表面硬度(Cs)とコアの中心硬度(Cc)との差は、好ましくは5以上、より好ましくは7以上、さらに好ましくは10以上であり、上限値として、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下である。この値が小さすぎると、ドライバーでフルショットした時のスピン量が多くなり、所望の飛距離が得られなくなることがある。上記の値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなり、或いは実打初速が低くなり狙いの飛距離が得られなくなることがある。
【0033】
また、コアの内部硬度については、(Cs-Cm)/(Cm-Cc)の値が1.1以上となることが好ましく、より好ましくは1.3以上、さらに好ましくは1.6以上であり、上限値としては、好ましくは8.0以下、より好ましくは6.0以下、さらに好ましくは5.0以下である。この値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなったり、実打初速が低くなり狙いの飛距離が得られなくなることがある。一方、上記の値が小さくなりすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなり、狙いの飛距離が得られなくなることがある。
【0034】
次に、包囲層について説明する。
本発明では、包囲層は、単層又は複数層の内側包囲層と単層の外側包囲層とから構成される。なお、本明細書において、単に包囲層の材料硬度及び表面硬度という場合、外側包囲層の材料硬度及び表面硬度を意味するものとする。
【0035】
内側包囲層の材料硬度は、特に制限はないが、ショアC硬度で、好ましくは67以上、より好ましくは70以上、さらに好ましくは72以上であり、上限値として、好ましくは90以下、より好ましくは89以下、さらに好ましくは88以下である。ショアD硬度では、好ましくは43以上、より好ましくは45以上、さらに好ましくは47以上であり、上限値として、好ましくは60以下、より好ましくは56以下、さらに好ましくは54以下である。
【0036】
コアを内側包囲層で被覆した球体(内側包囲層被覆球体)の表面硬度は、ショアC硬度で、好ましくは75以上、より好ましくは78以上、さらに好ましくは80以上であり、上限値として、好ましくは95以下、より好ましくは93以下、さらに好ましくは92以下である。ショアD硬度では、好ましくは49以上、より好ましくは51以上、さらに好ましくは53以上であり、上限値として、好ましくは66以下、より好ましくは62以下、さらに好ましくは60以下である。
【0037】
外側包囲層の材料硬度は、特に制限はないが、ショアC硬度で、好ましくは67以上、より好ましくは70以上、さらに好ましくは72以上であり、上限値として、好ましくは90以下、より好ましくは89以下、さらに好ましくは88以下である。ショアD硬度では、好ましくは43以上、より好ましくは45以上、さらに好ましくは47以上であり、上限値として、好ましくは60以下、より好ましくは56以下、さらに好ましくは54以下である。
【0038】
コアを外側包囲層で被覆した球体(外側包囲層被覆球体)の表面硬度は、ショアC硬度で、好ましくは75以上、より好ましくは78以上、さらに好ましくは80以上であり、上限値として、好ましくは95以下、より好ましくは93以下、さらに好ましくは92以下である。ショアD硬度では、好ましくは49以上、より好ましくは51以上、さらに好ましくは53以上であり、上限値として、好ましくは66以下、より好ましくは62以下、さらに好ましくは60以下である。
【0039】
上記の包囲層各層の材料硬度及び表面硬度が上記範囲より軟らかすぎると、フルショット時にスピンが掛かりすぎたり、初速が低くなり飛距離が出なくなることがある。一方、上記包囲層各層の材料硬度及び表面硬度が上記範囲より硬すぎると、打感が硬くなったり、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなったり、フルショット時のスピン量が増えて飛距離が出なくなることがある。
【0040】
内側包囲層の表面硬度より外側包囲層の表面硬度の方が高いことが好ましく、内側包囲層と外側包囲層との間に1層又は2層以上の層が介在する場合は、内側包囲層から外側包囲層に向かって、各層が漸次高くなるように設計することが好適である。そうでない場合、フルショット時のスピン量が増えて飛距離が出なくなることがある。
【0041】
包囲層の総厚さ(2層の場合は内側包囲層の厚さと外側包囲層の厚さとの合計)は、好ましくは2.0mm以上であり、より好ましくは2.7mm以上、さらに好ましくは3.5mm以上である。一方、包囲層の厚さの上限値としては、好ましくは7.0mm以下、より好ましくは6.5mm以下、さらに好ましくは6.0mm以下である。包囲層の総厚
が薄すぎると、アイアンフルショット時の低スピン効果が足りずに狙いの飛距離が得られなくなることがある。包囲層が厚すぎると、ボール全体の初速が低くなり、全般的に飛距離が出なくなることがある。
【0042】
また、包囲層の総厚さは、後述する中間層及びカバーの厚さとの関係において、(カバー厚さ)<(中間層厚さ)≦(包囲層厚さの総厚)の条件を満たすことが好適である。また、各層の厚さの比について、(包囲層厚さの総厚)/(カバー厚さ+中間層厚さ)の値が1.0以上を満たすことが好ましく、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは1.8以上であり、上限値しては、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.6以下である。上記の値が大きすぎると、初速が低くなり、飛距離が出なくなったり、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。上記の値が小さすぎると、低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなることがある。
【0043】
上記の内側包囲層及び外側包囲層の材料については、特に制限はないが、公知の樹脂材料を用いることができる。内側包囲層及び外側包囲層の材料は同種の樹脂であっても異なる樹脂であってもよい。これらの樹脂材料の中で特に好ましい材料の例としては、下記(a)~(c)成分、
(a)オレフィン-不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はオレフィン-不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の金属イオン中和物と、
(b)オレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体の金属イオン中和物とを質量比で100:0~0:100になるように配合したベース樹脂と、
(c)非アイオノマー熱可塑性エラストマーとを質量比で100:0~50:50になるように配合した樹脂組成物を例示することができる。
【0044】
上記(a)~(c)成分については、例えば、特開2010-253268号公報に記載される中間層の樹脂材料を好適に採用することができる。
【0045】
上記の樹脂材料には、任意の添加剤を用途に応じて適宜配合することができる。例えば、顔料,分散剤,老化防止剤,紫外線吸収剤,光安定剤などの各種添加剤を加えることができる。これら添加剤を配合する場合、その配合量としては、上記ベース樹脂の総和100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、上限として、好ましくは10質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
【0046】
次に、中間層について説明する。
中間層の材料硬度は、特に制限はないが、ショアD硬度で、好ましくは58以上、より好ましくは60以上、さらに好ましくは63以上であり、上限値として、好ましくは70以下、より好ましくは68以下、さらに好ましくは65以下である。ショアC硬度では、好ましくは87以上、より好ましくは89以上、さらに好ましくは93以上であり、上限値として、好ましくは100以下、より好ましくは98以下、さらに好ましくは96以下である。
【0047】
また、上記外側包囲層被覆球体を中間層で被覆した球体(中間層被覆球体)の表面硬度は、ショアD硬度で、好ましくは64以上、より好ましくは66以上、さらに好ましくは69以上であり、上限値としては、好ましくは76以下、より好ましくは74以下、さらに好ましくは71以下である。ショアC硬度では、好ましくは90以上、より好ましくは93以上、さらに好ましくは96以上であり、上限値として、好ましくは100以下、より好ましくは99以下、さらに好ましくは98以下である。
【0048】
上記の中間層の材料硬度及び表面硬度が上記範囲よりも軟らかすぎると、フルショット時にスピンが掛かりすぎたり、初速が低くなり飛距離が出なくなることがある。一方、中間層の材料硬度及び表面硬度が上記範囲よりも硬すぎると、繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなったり、パターやショートアプローチ実施時の打感が硬くなりすぎることがある。
【0049】
また、中間層被覆球体の表面硬度は、ボール表面硬度との関係において、
(中間層被覆球体の表面のショアC硬度)>(ボール表面のショアC硬度)
の条件を満たすことが望ましい。そうでない場合は、フルショット時のスピン量が増えて飛距離が出なくなったり、ショートゲーム時のコントロール性が悪くなることがある。
【0050】
中間層の厚さは、好ましくは0.7mm以上であり、より好ましくは0.8mm以上、さらに好ましくは1.0mm以上である。一方、中間層の厚さの上限値としては、好ましくは1.8mm以下、より好ましくは1.4mm以下、さらに好ましくは1.2mm以下である。中間層の厚さは、後述するカバー(最外層)よりも厚くすることが好適である。中間層の厚さが上記範囲を逸脱したり、カバーよりも薄く形成すると、ドライバー(W#1)打撃時の低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなることがある。また、中間層が薄すぎると、繰り返し打撃時の割れ耐久性や低温時の耐久性が悪くなることがある。
【0051】
中間層の材料については、ゴルフボール材料として使用される各種の熱可塑性樹脂、特に、包囲層各層の材料で述べた(a)~(c)成分を含有する高中和型樹脂材料やアイオノマー樹脂を採用することが好適である。
【0052】
アイオノマー樹脂材料としては、具体的には、ナトリウム中和型アイオノマー樹脂や亜鉛中和型アイオノマー樹脂などが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上併用することができる。
【0053】
特に好ましいのは、亜鉛中和型アイオノマー樹脂とナトリウム中和型アイオノマー樹脂とを混合して主材として用いる態様が望ましい。その配合比率は、亜鉛中和型/ナトリウム中和型(質量比)で25/75~75/25、好ましくは35/65~65/35、更に好ましくは45/55~55/45である。この比率内にZn中和アイオノマーとNa中和アイオノマーを含めないと、反発が低くなりすぎて所望の飛びが得られなかったり、常温での繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなったり、さらに低温(零下)での割れ耐久性が悪くなることがある。
【0054】
また、中間層の樹脂材料として、市販品のアイオノマー樹脂のうち酸含量16質量%以上の高酸含量アイオノマー樹脂を通常のアイオノマー樹脂にブレンドして用いることもでき、このブレンドにより高反発性且つ低スピン化によるドライバー(W#1)打撃時の飛距離を良好に得ることができる。
【0055】
高酸含量アイオノマー樹脂に含まれる不飽和カルボン酸の含量(酸含量は通常16質量%以上であり、好ましくは17質量%以上、より好ましくは18質量%以上であり、上限値としては、好ましくは22質量%以下、より好ましくは21質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。この値が小さすぎると、フルショット時にスピンが増え、狙いの飛距離が得られなくなることがある。逆に、上記の値が大きすぎると、打感が硬くなりすぎ、或いは繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0056】
また、高酸含量アイオノマー樹脂が樹脂材料100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。上記の高酸含量アイオノマー樹脂の配合量が少なすぎると、ドライバー(W#1)打撃時にスピンが多くなり、飛距離が出なくなることがある。
【0057】
中間層材料には、任意の添加剤を用途に応じて適宜配合することができる。例えば、顔料,分散剤,老化防止剤,紫外線吸収剤,光安定剤などの各種添加剤を加えることができる。これら添加剤を配合する場合、その配合量としては、基材樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、上限として、好ましくは10質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
【0058】
中間層材料については、後述するカバー材で好適に用いられるポリウレタンとの密着度を高めるために中間層表面を研磨することが好適である。更に、その研磨処理の後にプライマー(接着剤)を中間層表面に塗布するか、もしくは材料中に密着強化材を添加することが好ましい。
【0059】
中間層材料の比重は、通常1.1未満であり、好ましくは0.90~1.05、さらに好ましくは0.93~0.99である。その範囲を逸脱すると、ボール全体の反発が低くなり飛距離が出なくなり、または繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。
【0060】
次に、カバー(最外層)について説明する。
カバーの材料硬度は、特に制限はないが、ショアD硬度で、好ましくは35以上、より好ましくは40以上であり、さらに好ましくは45以上であり、上限値として、好ましくは60以下、より好ましくは55以下、さらに好ましくは50以下である。ショアC硬度では、好ましくは57以上、より好ましくは63以上、さらに好ましくは70以上であり、上限値として、好ましくは89以下、より好ましくは83以下、さらに好ましくは76以下である。
【0061】
また、中間層被覆球体をカバーで被覆した球体(ボール被覆球体)の表面硬度は、ショアD硬度で、好ましくは50以上、より好ましくは53以上、さらに好ましくは56以上であり、上限値としては、好ましくは70以下、より好ましくは67以下、さらに好ましくは64以下である。ショアC硬度では、好ましくは75以上、より好ましくは80以上、さらに好ましくは85以上であり、上限値として、好ましくは95以下、より好ましくは92以下、さらに好ましくは90以下である。
【0062】
これらのカバーの材料硬度及びボール表面硬度が上記範囲よりも軟らかすぎると、アイアンフルショットでスピン量が多くなり飛距離が出なくなることがある。一方、上記カバーの材料硬度及びボール表面硬度が上記範囲よりも硬すぎると、アプローチでスピンがかからなくなったり、耐擦過傷性が悪くなることがある。
【0063】
カバーの厚さは、好ましくは0.3mm以上であり、より好ましくは0.45mm以上、さらに好ましくは0.6mm以上である。一方、カバーの厚さの上限値としては、1.0mm以下であり、好ましくは0.9mm以下、さらに好ましくは0.85mm以下である。上記カバーが厚すぎると、アイアンフルショット時に反発が足りなくなったりスピンが多くなったりして飛距離が出なくなることがある。一方、上記カバーが薄すぎると、耐擦過傷性が悪くなったり、アプローチでのスピンが掛からなくなりコントロール性が不足することがある。
【0064】
上記カバーの材料としては、ゴルフボールのカバー材で使用される各種の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を使用することができるが、コントロール性と耐擦過傷性の観点から、ウレタン樹脂を好適に使用することができる。特に、ボール製品の量産性の観点から、熱可塑性ポリウレタンを主体としたものを使用することが好適であり、より好ましくは、(I)熱可塑性ポリウレタン及び(II)ポリイソシアネート化合物を主成分とする樹脂配合物により形成することができる。
【0065】
上記の(I)成分と(II)成分とを合わせた合計質量が、カバーの樹脂組成物全量に対して、60%以上であることが推奨され、より好ましくは、70%以上である。上記(I)成分及び(II)成分については以下に詳述する。
【0066】
上記(I)熱可塑性ポリウレタンについて述べると、その熱可塑性ポリウレタンの構造は、長鎖ポリオールである高分子ポリオール(ポリメリックグリコール)からなるソフトセグメントと、鎖延長剤およびポリイソシアネート化合物からなるハードセグメントとを含む。ここで、原料となる長鎖ポリオールとしては、従来から熱可塑性ポリウレタンに関する技術において使用されるものはいずれも使用でき、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、共役ジエン重合体系ポリオール、ひまし油系ポリオール、シリコーン系ポリオール、ビニル重合体系ポリオールなどを挙げることができる。これらの長鎖ポリオールは1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうちでも、反発弾性率が高く低温特性に優れた熱可塑性ポリウレタンを合成できる点で、ポリエーテルポリオールが好ましい。
【0067】
鎖延長剤としては、従来の熱可塑性ポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、例えば、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量400以下の低分子化合物であることが好ましい。鎖延長剤としては、1,4-ブチレングリコール、1,2-エチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。鎖延長剤としては、これらのうちでも、炭素数2~12の脂肪族ジオールが好ましく、1,4-ブチレングリコールがより好ましい。
【0068】
ポリイソシアネート化合物としては、従来の熱可塑性ポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限はない。具体的には、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-(又は)2,6-トルエンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン1,5-ジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネートからなる群から選択された1種又は2種以上を用いることができる。ただし、イソシアネート種によっては射出成形中の架橋反応をコントロールすることが困難なものがある。本発明においては生産時の安定性と発現される物性とのバランスとの観点から、芳香族ジイソシアネートである4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが最も好ましい。
【0069】
具体的な(I)成分の熱可塑性ポリウレタンとしては市販品を用いることもでき、例えば、パンデックスT8295,同T8290,同T8260(いずれもディーアイシーコベストロポリマー社製)などが挙げられる。
【0070】
必須成分ではないが、上記(I)及び(II)成分に、別の成分である(III)成分として、上記熱可塑性ポリウレタン以外の熱可塑性エラストマーを配合することができる。この(III)成分を上記樹脂配合物に配合することにより、樹脂配合物の更なる流動性の向上や反発性、耐擦過傷性等、ゴルフボールカバー材として要求される諸物性を高めることができる。
【0071】
上記(I)、(II)及び(III)成分の組成比については、特に制限はないが、本発明の効果を十分に有効に発揮させるためには、質量比で(I):(II):(III)=100:2~50:0~50であることが好ましく、さらに好ましくは、(I):(II):(III)=100:2~30:8~50(質量比)とすることである。
【0072】
さらに、上記の樹脂配合物には、必要に応じて、上記の熱可塑性ポリウレタンを構成する成分以外の種々の添加剤を配合することができ、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤等を適宜配合することができる。
【0073】
上述したコア,内側包囲層,外側包囲層,中間層及びカバー(最外層)の各層を積層して形成されたマルチピースソリッドゴルフボールの製造方法については、公知の射出成形法等の常法により行なうことができる。例えば、コアの周囲に、内側包囲層,外側包囲層,中間層の各材料を順次、それぞれの射出成形用金型で射出して各被覆球体を得、最後に、最外層であるカバーの材料を射出成形することによりマルチピースのゴルフボールを得ることができる。また、各被覆層として、予め半殻球状に成形した2枚のハーフカップで該被覆球体を包み加熱加圧成形することによりゴルフボールを作製することもできる。
【0074】
ゴルフボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量(mm)は、3.0mm以上であることを要し、好ましくは3.2mm以上、より好ましくは3.4mm以上である。一方、上記たわみ量の上限値としては、好ましくは4.5mm以下、より好ましくは4.2mm以下、更に好ましくは4.0mm以下である。ゴルフボールのたわみ量が小さすぎる、即ち、硬すぎると、スピン量が増えすぎて飛ばなくなったり、打感が硬くなりすぎることがある。一方、上記のたわみ量が大きすぎる、即ち、上記球体が軟らかすぎると、ボールの反発性が低くなりすぎて飛ばなくなったり、打感が軟らかくなりすぎ、あるいは繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0075】
コアに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をC(mm)、ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をB(mm)とするとき、C-Bの値は、好ましくは2.5mm以上、より好ましくは2.7mm以上、さらに好ましくは2.8mm以上であり、上限値としては、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは4.6mm以下、さらに好ましくは4.3mm以下である。上記値が大きすぎると、実打初速が低くなり、飛距離が出なくなり、または繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。上記値が小さすぎると、低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなることがある。
【0076】
各層の硬度関係
本発明では、コアを内側包囲層で被覆した球体(内側包囲層被覆球体)の表面のショアC硬度と、該内側包囲層被覆球体を外側包囲層で被覆した球体(外側包囲層被覆球体)の表面のショアC硬度と、該外側包囲層被覆球体を中間層で被覆した球体(中間層被覆球体)の表面のショアC硬度と、ボールの表面のショアC硬度とが、
(外側包囲層被覆球体の表面のショアC硬度)>(内側包囲層被覆球体の表面のショアC硬度)、及び
(中間層被覆球体の表面のショアC硬度)>(ボール表面のショアC硬度)
の条件を満たすことを要する。
【0077】
外側包囲層被覆球体の表面硬度から内側包囲層の表面硬度を引いた値は、ショアC硬度で0より大きく、好ましくは2以上、より好ましくは4以上であり、上限値としては、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは7以下である。外側包囲層被覆球体の表面硬度が内側包囲層の表面硬度よりも小さくなると、フルショットした時のスピン量が多くなり、狙いの飛距離が得られなくなることがある。
【0078】
中間層被覆球体の表面硬度からボール表面硬度を引いた値は、ショアC硬度で0より大きく、好ましくは3以上、より好ましくは5以上であり、上限値としては、好ましくは30以下、より好ましくは22以下、さらに好ましくは15以下である。上記値が小さすぎると、ショートゲームにおけるコントロール性が悪くなることがある。一方、上記値が大きすぎると、フルショットにおけるスピン量が多くなり、狙いの飛距離が得られなくなることがある。
【0079】
また、外側包囲層被覆球体の表面硬度からコアの表面硬度を引いた値は、ショアC硬度で0より大きく、好ましくは8以上、より好ましくは15以上であり、上限値としては、好ましくは50以下、より好ましくは43以下、さらに好ましくは37以下である。上記値が上記数値範囲を逸脱すると、フルショットした時のスピン量が多くなり、狙いの飛距離が得られなくなることがある。
【0080】
また、外側包囲層被覆球体の表面硬度からコアの中心硬度を引いた値は、ショアC硬度で29以上であることが好ましく、より好ましくは32以上、さらに好ましくは35以上であり、上限値としては、好ましくは55以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは45以下である。上記値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなったり、実打初速が低くなり狙いの飛距離が得られなくなることがある。一方、上記値が小さくなりすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなり、狙いの飛距離が得られなくなることがある。
【0081】
さらに、中間層被覆球体の表面硬度は、フルショット時の低スピン効果を得るために、外側包囲層被覆球体の表面硬度よりも高いことが好適である。中間層被覆球体の表面硬度から外側包囲層被覆球体の表面硬度を引いた値は、ショアC硬度で0より大きいことが好ましく、より好ましくは4以上、さらに好ましくは8以上であり、上限値としては、好ましくは28以下、より好ましくは22以下、さらに好ましくは16以下である。上記値が上記数値範囲を逸脱すると、フルショットした時のスピン量が多くなり、狙いの飛距離が得られなくなることがある。
【0082】
中間層被覆球体の表面硬度からコアの中心硬度を引いた値は、ショアC硬度で33以上であることが好ましく、より好ましくは38以上、さらに好ましくは43以上であり、上限値としては、好ましくは65以下、より好ましくは60以下、さらに好ましくは56以下である。上記値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなったり、実打初速が低くなり狙いの飛距離が得られなくなることがある。一方、上記値が小さくなりすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなり、狙いの飛距離が得られなくなることがある。
【0083】
コア及び包囲層の体積と硬度との関係
コアの体積(mm3)×コア表面とコア中心との中点のショアC硬度(Cm)を Core vh、内側包囲層の体積(mm3)×内側包囲層被覆球体の表面硬度(ショアC)をIE vh、外側包囲層の体積(mm3)×外側包囲層被覆球体の表面硬度(ショアC)をOE vh とするとき、(OE vh + IE vh)/Core vh の値は、1.0以上であることが好ましく、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.4以上であり、上限値としては、好ましくは4.5以下、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.5以下である。上記値が大きすぎると、実打初速が低くなり、飛距離が出なくなったり、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。一方、上記値が小さすぎると、低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなることがある。
【0084】
最外層であるカバーの外表面には多数のディンプルを形成することができる。カバー表面に配置されるディンプルについては、特に制限はないが、好ましくは250個以上、好ましくは300個以上、より好ましくは320個以上であり、上限として、好ましくは380個以下、より好ましくは350個以下、さらに好ましくは340個以下具備することができる。ディンプルの個数が上記範囲より多くなると、ボールの弾道が低くなり、飛距離が低下することがある。逆に、ディンプル個数が少なくなると、ボールの弾道が高くなり、飛距離が伸びなくなる場合がある。
【0085】
ディンプルの形状については、円形、各種多角形、デュードロップ形、その他楕円形など1種類又は2種類以上を組み合わせて適宜使用することができる。例えば、円形ディンプルを使用する場合には、直径は2.5mm以上6.5mm以下程度、深さは0.08mm以上0.30mm以下とすることができる。
【0086】
ディンプルがゴルフボールの球面に占めるディンプル占有率、具体的には、ディンプルの縁に囲まれた平面の面縁で定義されるディンプル面積の合計が、ディンプルが存在しないと仮定したボール球面積に占める比率(SR値)については、空気力学特性を十分に発揮し得る点から70%以上90%以下であることが望ましい。また、各々のディンプルの縁に囲まれた平面下のディンプルの空間体積を、前記平面を底面とし、かつこの底面からのディンプルの最大深さを高さとする円柱体積で除した値V0は、ボールの弾道の適正化を図る点から0.35以上0.80以下とすることが好適である。更に、ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成されるディンプル容積の合計がディンプルが存在しないと仮定したボール球容積に占めるVR値は、0.6%以上1.0%以下とすることが好ましい。上述した各数値の範囲を逸脱すると、良好な飛距離が得られない弾道となり、十分満足した飛距離を出せない場合がある。
【0087】
カバー表面には塗膜層(コーティング層)を形成することができる。この塗膜層は、各種塗料を用いて塗装することができ、塗料としては、ゴルフボールの過酷な使用状況に耐えうる必要から、ポリオールとポリイソシアネートとからなるウレタン塗料を主成分とする塗料用組成物を用いることが好適である。
【0088】
上記ポリオール成分としては、アクリル系ポリオールやポリエステルポリオールなどが挙げられる。なお、これらのポリオールには、ポリオールの変性体が含まれ、更に作業性を向上させるため、他のポリオールを追加することもできる。
【0089】
ポリオール成分としては、2種類のポリエステルポリオールを併用することが好適である。この場合、2種類のポリエステルポリオールを(a)成分及び(b)成分とすると、(a)成分のポリエステルポリオールとしては、樹脂骨格に環状構造が導入されたポリエステルポリオールを採用することができ、例えば、シクロヘキサンジメタノール等の脂環構造を有するポリオールと多塩基酸との重縮合、或いは、脂環構造を有するポリオールとジオール類又はトリオールと多塩基酸との重縮合により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。一方、(b)成分のポリエステルポリオールとしては、多分岐構造を有するポリエステルポリオールを採用することができ、例えば、東ソー社製の「NIPPOLAN 800」等の枝分かれ構造を有するポリエステルポリオールが挙げられる。
【0090】
一方、ポリイソシアネートについては、特に制限はなく、一般的に用いられている芳香族、脂肪族、脂環式などのポリイソシアネートであり、具体的には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-4-イソシアナトメチルシクロヘキサン等が挙げられる。これらは,単独で或いは混合して使用することができる。
【0091】
塗料組成物には、塗装条件により、各種の有機溶剤を混合することができる。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶剤、ミネラルスピリット等の石油炭化水素系溶剤等が使用できる。
【0092】
上記塗料組成物からなる塗膜層の厚さについては、特に制限はないが、通常5~40μm、好ましくは10~20μmである。なお、ここで言う塗膜層の厚さとは、ディンプルの中心部、ディンプル中心部とディンプルエッジの間の位置2箇所の計3箇所を測定し、平均した塗膜の厚さを意味する。
【0093】
本発明では、上記塗料組成物からなる塗膜層の弾性仕事回復率が60%以上とすることを要し、好ましくは80%以上である。この塗膜層の弾性仕事回復率が上記範囲であれば、塗膜層が高弾性力を有するため自己修復機能が高く、耐摩耗性に非常に優れる。また、上記塗料組成物で塗装されたゴルフボールの諸性能を向上させることができる。上記の弾性仕事回復率の測定方法については以下のとおりである。
【0094】
弾性仕事回復率は、押し込み荷重をマイクロニュートン(μN)オーダーで制御し、押し込み時の圧子深さをナノメートル(nm)の精度で追跡する超微小硬さ試験方法であり、塗膜層の物性を評価するナノインデンテーション法の一つのパラメータである。従来の方法では最大荷重に対応した変形痕(塑性変形痕)の大きさしか測定できなかったが、ナノインデンテーション法では自動的・連続的に測定することにより、押し込み荷重と押し込み深さとの関係を得ることができる。そのため、従来のような変形痕を光学顕微鏡で目視測定するときのような個人差がなく、精度高く塗膜層の物性を評価することができると考えられる。ボール表面の塗膜層がドライバーや各種のクラブの打撃により大きな影響を受け、塗膜層がゴルフボールの物性に及ぼす影響は小さくないことから、塗膜層を超微小硬さ試験方法で測定し、従来よりも高精度に行うことは、非常に有効な評価方法となる。
【0095】
また、上記塗膜層の硬度は、ショアM硬度は、好ましくは40以上、より好ましくは60以上であり、上限として、好ましくは95以下、より好ましくは85以下である。なお、このショアM硬度は、ASTM D2240に準ずるものである。また、上記塗膜層の硬度は、ショアC硬度で好ましくは40以上、より好ましくは50以上であり、上限として、好ましくは80以下、より好ましくは70以下である。なお、このショアC硬度は、ASTM D2240に準ずるものである。塗膜層が上記硬度範囲よりも高すぎると、繰り返し打撃した際に塗膜が脆くなり、カバー層を保護できなくなるおそれがある。塗膜層が上記硬度範囲よりも小さすぎると、ボール表面が硬いものに当たった際に傷がつきやすくなり好ましくない。
【0096】
上記の塗料組成物を使用する際は、公知の方法で製造されたゴルフボールに対し、本発明の塗料組成物を塗装時に調整し、通常の塗装工程を採用して表面に塗布し、乾燥工程を経てボール表面に塗膜層を形成することができる。この場合、塗装方法としては、スプレー塗装法、静電塗装法、ディッピング法などを好適に採用することができ、特に制限はない。
【0097】
なお、本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、競技用としてゴルフ規則に従うものとすることができ、ボール外径は42.672mm内径のリングを通過しない大きさであり、質量は好ましくは45.0~45.93gに形成することができる。
【0098】
また、R&Aゴルフルールに基づくゴルフボールの初速は、通常、76.8m/s以上であり、好ましくは77.0m/s以上、より好ましくは77.1m/s以上であり、上限値としては、77.724m/s以下である。この初速値が77.724m/sを超えると、公認ルール外となってしまう。一方、上記の初速値が低すぎると、フルショットでの飛距離が出なくなる場合がある。
【実施例
【0099】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0100】
〔実施例1~4、比較例1~8〕
コアの形成
表1に示した各実施例及び比較例のゴム組成物を調製した後、表1に示す各例の加硫条件により加硫成形することによりソリッドコアを作製した。
【0101】
但し、実施例3,4及び比較例7,8については、上記と同様に、表1の配合に基づいてコアを作製する。
【0102】
【表1】
【0103】
なお、表1に記載した各成分の詳細は以下の通りである。
・ポリブタジエン:JSR社製、商品名「BR730」
・アクリル酸亜鉛:「ZN-DA85S」(日本触媒社製)
・有機過酸化物:1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンとシリカとの混合物、商品名「パーヘキサC-40」(日油社製)
・ジンクステアレート:商品名「ジンクステアレートG」(日油社製)
・老化防止剤:2,2-メチレンビス(4-メチル-6-ブチルフェノール)、商品名「ノクラックNS-6」(大内新興化学工業社製)
・酸化亜鉛:商品名「三種酸化亜鉛」(堺化学工業社製)
・ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩:和光純薬工業社製
【0104】
包囲層(内側・外側)
次に、比較例4~6を除く各実施例及び各比較例については、コアの周囲に、表2に示したNo.1の配合の内側包囲層材料を用いて射出成形法により内側包囲層を形成し、その後に、同表に示したNo.1,No.2又はNo.3の配合の外側包囲層材料を用いて射出成形法により外側包囲層を形成した。比較例4~6については、表2のNo.1又はNo.3の配合の材料を用いて、射出成形法によりコアの周囲に単層の包囲層(表では「外側包囲層」欄に詳細を記載)を形成した。
【0105】
但し、実施例3,4及び比較例7,8については、上記と同様に、表2の配合に基づいて包囲層を作製する。
【0106】
中間層及びカバー(最外層)の形成
次に、全ての実施例及び比較例については、上記で得た包囲層被覆球体の周囲に、表2に示した配合のNo.4又はNo.5の配合の中間層材料を用いて射出成形法により中間層を形成した。次いで、上記の各例の中間層被覆球体の周囲に、表2に示した配合のNo.6又はNo.7の配合のカバー材料を用いて射出成形法によりカバー(最外層)を形成した。この際、カバー表面には、全ての実施例及び比較例に共通する所定の多数のディンプルを形成した。
【0107】
但し、実施例3,4及び比較例7,8については、上記と同様に、表2の配合に基づいて中間層及びカバーを作製する。
【0108】
【表2】
【0109】
表中に記載した主な材料の商品名は以下の通りである。
「HPF1000」「HPF2000」THE DOW CHEMICAL COMPANY社製の(商標)「HPF」
「ハイミラン1605」「ハイミラン1557」「ハイミラン1706」三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー
「サーリン8120」THE DOW CHEMICAL COMPANY社製のアイオノマー
「ダイナロン6100P」JSR社製の水添ポリマー
「ベヘニン酸」日油社製の「NAA222-S」(ビーズ指定)
「水酸化カルシウム」白石工業社製の「CLS-B」
「トリメチロールプロパン」東京化成工業社製
「TPU(1)」「TPU(2)」ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」、エーテルタイプの熱可塑性ポリウレタン
【0110】
全ての実施例及び比較例に共通するディンプルは、8種類の円形ディンプルを用い、その詳細については下記表3に示し、その配置態様は図2に示すとおりである。図2(A)は、ディンプルの平面図を示し、図2(B)は、その側面図を示す。
【0111】
【表3】
【0112】
ディンプルの定義
縁:ディンプル中心を通る断面において最も高いところ
直径:ディンプルの縁に囲まれた平面の直径
深さ:ディンプルの縁に囲まれた平面からのディンプルの最大深さ
SR:ディンプルの縁に囲まれた平面で定義されるディンプル面積の合計が、ディンプルが存在しないと仮定したボール球面積に占める比率
ディンプル体積:ディンプルの縁に囲まれた平面下のディンプル体積
円柱体積比:ディンプルと同直径の深さの円柱の体積に対する、ディンプル体積の比
VR:ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成されるディンプル容積の合計が、ディンプルが存在しないと仮定したボール球容積
【0113】
塗料層(コーティング層)の形成
次に、全ての実施例及び比較例に共通する塗料組成物として、下記表4に示す塗料組成物を使用し、多数形成されたカバー(最外層)表面に、エアースプレーガンにより上記塗料を塗装し、厚み15μmの塗料層を形成したゴルフボールを作製した。
但し、実施例3,4及び比較例7,8については、上記と同様に、上記塗料を塗装し、厚み15μmの塗料層を形成したゴルフボールを作製する。
【0114】
【表4】
【0115】
[ポリエステルポリオール(A)の合成例]
環流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管及び温度計を備えた反応装置に、トリメチロールプロパン140質量部、エチレングリコール95質量部、アジピン酸157質量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール58質量部を仕込み、撹拌しながら200~240℃まで昇温させ、5時間加熱(反応)させた。その後、酸価4,水酸基価170,重量平均分子量(Mw)28,000の「ポリエステルポリオール(A)」を得た。
次に、上記の合成したポリエステルポリオール(A)を酢酸ブチルで溶解させ、不揮発分70質量%のワニスを調整した。
【0116】
表4の塗料組成物「C」は、上記ポリエステルポリオール溶液23質量部に対して、「ポリエステルポリオール(B)」(東ソー(株)製の飽和脂肪族ポリエステルポリオール「NIPPOLAN 800」、重量平均分子量(Mw)1,000、固形分100%)を15質量部と有機溶剤とを混合し、主剤とした。この混合物は、不揮発分38.0質量%であった。
【0117】
弾性仕事回復率
塗料の弾性仕事回復率の測定には、厚み50μmの塗膜シートを使用して測定する。測定装置は、エリオニクス社の超微小硬度計「ENT-2100」が用いられ、測定の条件は、以下の通りである。
・圧子:バーコビッチ圧子(材質:ダイヤモンド、角度α:65.03°)
・荷重F:0.2mN
・荷重時間:10秒
・保持時間:1秒
・除荷時間:10秒
塗膜の戻り変形による押し込み仕事量Welast(Nm)と機械的な押し込み仕事量Wtotal(Nm)とに基づいて、下記数式によって弾性仕事回復率が算出される。
弾性仕事回復率=Welast / Wtotal × 100(%)
【0118】
ショアC硬度及びショアM硬度
上記表3のショアC硬度及びショアM硬度は、厚さ2mmのシートを作成し、3枚重ねて試験片としてASTM D2240規格に準拠したショアC硬度計及びショアM硬度計を用いてそれぞれ計測した。
【0119】
得られた各ゴルフボールにつき、コアの内部硬度、コアや各被覆球体の外径、各層の厚さ及び材料硬度、各被覆球体の表面硬度などの諸物性を下記の方法で評価し、表5及び表6に示す。
【0120】
コア、(内側・外側)包囲層被覆球体及び中間層被覆球体の各球体の外径
23.9±1℃の温度で、任意の表面5箇所を測定し、その平均値を1個の各球体の測定値とし、測定個数10個での平均値を求めた。
【0121】
ボールの直径
23.9±1℃の温度で、任意のディンプルのない部分を15箇所測定し、その平均値を1個のボールの測定値とし、測定個数10個のボールの平均値を求めた。
【0122】
コア、各層の被覆球体及びボールのたわみ量
コア、各層の被覆球体またはボールの対象被覆球体を硬板の上に置き、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)に負荷したときのたわみ量を計測する。なお、上記のたわみ量は23.9℃に温度調整した後の測定値である。ヘッドの加圧速度は10mm/sとした。
【0123】
コア硬度分布
コアの表面は球面であるが、その球面に硬度計の針をほぼ垂直になるようにセットし、ASTM D2240に従ってショアC硬度でコア表面硬度を計測した。硬度の測定には、ショアC型硬度計を備えた高分子計器株式会社製の自動ゴム硬度計「P2」が用いられる。硬度の値は最大値を読み取る。測定は、全て、23±2℃の環境下でなされる。コアの中心硬度Cc、表面硬度Cs、コアの中心と表面との中点硬度Cmの各コアの所定位置における断面硬度については、コアを半球状にカットして断面を平面にして測定部分に硬度計の針を垂直に押し当てて測定した。ショアC硬度の値で示される。
【0124】
(内側・外側)包囲層、中間層及びカバーの材料硬度(ショアC硬度,ショアD硬度)
各層の樹脂材料を厚さ2mmのシート状に成形し、23±2℃の温度下にて2週間放置した。測定時には3枚のシートが重ね合わされる。ASTM D2240規格に準拠したショアC硬度計及びショアD硬度計にて、それぞれショアC硬度及びショアD硬度を計測した。硬度の測定には、ショアC型硬度計もしくはショアD型硬度計を取り付けた高分子計器株式会社製の自動ゴム硬度計「P2」が用いられる。硬度の値は最大値を読み取る。
【0125】
(内側・外側)包囲層被覆球体、中間層被覆球体及びボールの各球体の表面硬度(ショアC硬度,ショアD硬度)
各球体の表面に対して針を垂直になるように押し当てて計測した。なお、ボール(カバー)の表面硬度は、ボール表面においてディンプルが形成されていない陸部における測定値である。ASTM D2240規格に準拠したショアC硬度計及びショアD硬度計にて、それぞれショアC硬度及びショアD硬度を計測した。硬度の測定には、ショアC型硬度計もしくはショアD型硬度計を取り付けた高分子計器株式会社製の自動ゴム硬度計「P2」が用いられる。硬度の値は最大値を読み取る。
【0126】
ボール初速
R&Aの承認する装置であるUSGAのドラム回転式の初速計と同方式の初速測定器を用いて測定した。ボールを23.9±1℃環境下で3時間以上温度調整した後、室温23.9±2℃の部屋でテストした。250ポンド(113.4kg)のヘッド(ストライキングマス)を用いて打撃速度143.8ft/s(43.83m/s)にてボールを打撃し、1ダースのボールを各々4回打撃して6.28ft(1.91m)の間を通過する時間を測定し、初速(m/s)を算出した。約15分間でこのサイクルを行った。
【0127】
【表5】
【0128】
【表6】
【0129】
各ゴルフボールの飛び性能(W#1)(I#6)、アプローチ時のスピン量、打感及び繰り返し打撃による耐久性について下記の方法で評価する。その結果を表7に示す。
【0130】
飛び性能(W#1)
ゴルフ打撃ロボットにドライバー(W#1)をつけて、ヘッドスピード45m/sにて打撃した時の飛距離を測定し、下記の基準で判定した。クラブは、ブリヂストンスポーツ社製の「TourB XD-5」(W#1)(ロフト角9.5°)を使用した。また、スピン量は同様に打撃した直後のボールを初期条件計測装置により測定した。
〈判定基準〉
トータル飛距離235.0m以上 ・・・ ○
トータル飛距離235.0m未満 ・・・ ×
【0131】
飛び性能(I#6)
ゴルフ打撃ロボットにアイアン(I#6)をつけて、ヘッドスピード44m/sにて打撃した時の飛距離を測定し、下記の基準で判定した。クラブは、ブリヂストンスポーツ社製の「TourB X-CB」(I#6)を使用した。また、スピン量は同様に打撃した直後のボールを初期条件計測装置により測定した。
〈判定基準〉
トータル飛距離180.0m以上 ・・・ ○
トータル飛距離180.0m未満 ・・・ ×
【0132】
アプローチ時のスピン量の評価
ゴルフ打撃ロボットにサンドウエッジ(SW)をつけてヘッドスピード(HS)20m/sにて打撃した時のスピンの量で判断した。スピン量は同様に打撃した直後のボールを初期条件計測装置により測定した。サンドウエッジ(SW)は、ブリヂストンスポーツ社製の「TourB XW-1」(SW)を使用した。
〈判定基準〉
スピン量が5900rpm以上 ・・・ ○
スピン量が5900rpm未満 ・・・ ×
【0133】
打感
アマチュアゴルファーでハンディキャップ15~25のユーザーが、ドライバー(W#1)及びアイアン(I#6)でフルショットしたときの打感を下記の基準で評価する。
〈判定基準〉
非常にソフトで良い打感と評価した人の人数が20人中15人以上 ・・・ ○
ソフトで良い打感と評価した人の人数が20人中10人以上14人以下 ・・・ △
ソフトで良い打感と評価した人の人数が20人中9人以下 ・・・ ×
【0134】
繰り返し打撃による割れ耐久性
ゴルフ打撃ロボットにドライバー(W#1)を付けて、ヘッドスピードが45m/sで、測定数N=10個のボールを繰り返し打撃し、下記の基準で判定した。
〈判定基準〉
10個のボールを用いて各ボールの割れ始めた時の打撃回数をカウントし、このうち打撃回数が少ないボールを3個選び、当該3個のボールの割れ回数の平均値を各例の「割れ回数」として評価した。実施例2の割れ回数を指数で100とした。
指数90以上 ・・・ 〇
指数90未満 ・・・ ×
【0135】
【表7】
【0136】
表7の結果に示されるように、比較例1~8のゴルフボールは、本発明品(実施例)に比べて以下の点で劣る。
比較例1は、外側包囲層の表面硬度が内側包囲層の表面硬度より大きくなく、その結果、ドライバー(W#1)打撃時のスピン量が多くなり、実打初速が低くなり飛距離が出ない。また、繰り返し打撃による割れ耐久性も悪い。
比較例2は、外側包囲層の表面硬度が内側包囲層の表面硬度より大きくなく、その結果、ドライバー(W#1)打撃時のスピン量が多くなり、実打初速が低くなり飛距離が出ない。
比較例3は、外側包囲層の表面硬度が内側包囲層表面硬度より大きくなく、その結果、アイアン(I#6)打撃時のスピン量が多くなり、実打初速が低くなり飛距離が出ない。
比較例4は、ボールたわみが3.0mm未満で、且つ、ボール構造が4層構造であり、その結果、アイアン(I#6)打撃時のスピン量が多くなり、飛距離が出ない。
比較例5は、ボールのたわみ量が3.0mm未満で、且つ、ボール構造が4層構造であり、その結果、アイアン(I#6)打撃時のスピン量が多くなり、飛距離が出ない。
比較例6は、ボールのたわみ量が3.0mm未満で、且つ、ボール構造が4層構造であり、その結果、アイアン(I#6)打撃時のスピン量が多くなり、飛距離が出ない。
比較例7は、中間層表面硬度よりボール表面硬度が大きくなり、その結果、アイアン(I#6)打撃時のスピン量が多くなり飛距離が劣るとともに、アプローチ時のスピン量が少ない。
比較例8は、カバー(最外層)の厚さが1.0mmより大きくなり、その結果、アイアン打撃時のスピン量が増えると共に、実打初速が低くなり、飛距離が劣る。
図1
図2