(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】検出装置、硬貨鑑別装置および検出プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/72 20060101AFI20240903BHJP
G07D 5/08 20060101ALI20240903BHJP
G07D 5/02 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G01N27/72
G07D5/08 104
G07D5/02 103
(21)【出願番号】P 2020129909
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【氏名又は名称】大山 夏子
(74)【代理人】
【識別番号】100190942
【氏名又は名称】風間 竜司
(72)【発明者】
【氏名】山野内 理晃
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 晃規
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-011229(JP,A)
【文献】特開平08-086773(JP,A)
【文献】特開2008-003666(JP,A)
【文献】特開2004-126796(JP,A)
【文献】特開2003-317129(JP,A)
【文献】特開2010-231705(JP,A)
【文献】国際公開第2017/164347(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0218036(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72-27/9093
G01B 7/00-7/34
G07D 5/00-5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象が検知される検知範囲を通過する磁束を発生可能な位置に配置される第一のコイルと、
前記第一のコイルによって発生されて前記検知範囲を通過した磁束を検知可能な位置に配置された第二のコイルと、
少なくとも前記第一のコイルに接続される入力部と、
前記第一のコイルおよび前記第二のコイルに接続される出力部と、
を備え、
前記入力部は、第一のタイミングにおいて、前記第一のコイルを励磁して磁束を発生させ、
前記出力部は、前記第一のタイミングにおいて、前記第二のコイルに磁束を検知させるとともに、前記第一のコイルに磁束を検知させ、
前記入力部は、前記第一のタイミングとは異なる第二のタイミングにおいて、前記第二のコイルを励磁して磁界を発生させ、
前記出力部は、前記第二のタイミングにおいて、前記第二のコイルに磁束を検知させる、
検出装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記第二のタイミングにおいて、前記第二のコイルに磁束を検知させるとともに、前記第一のコイルに磁束を検知させる、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記入力部は、前記第一のタイミングにおいて、透過型センサの励磁信号と反射型センサの励磁信号とが合成された合成励磁信号に基づいて前記第一のコイルに磁束を発生させ、
前記検出装置は、
前記第一のタイミングにおける前記第二のコイルによる検知結果に基づいて、前記第一のタイミングにおける前記透過型センサの検知信号を取得するとともに、前記第一のタイミングにおける前記第一のコイルによる検知結果に基づいて、前記第一のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号を取得する取得部を備える、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項4】
前記入力部は、前記第一のタイミングにおいて、透過型センサと反射型センサとに共通の励磁信号に基づいて前記第一のコイルに磁束を発生させ、
前記出力部は、前記第一のタイミングにおける前記第二のコイルによる検知結果を前記第一のタイミングにおける前記透過型センサの検知信号として出力し、前記第一のタイミングにおける前記第一のコイルによる検知結果を前記第一のタイミングにおける前記反射型センサの検出信号として出力する、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項5】
前記入力部は、前記第一のタイミングにおいて、透過型センサの励磁信号と反射型センサの励磁信号とが合成された合成励磁信号に基づいて前記第一のコイルに磁束を発生させ、
前記検出装置は、
前記第一のタイミングにおける前記第二のコイルによる検知結果に基づいて、前記第一のタイミングにおける前記透過型センサの検知信号を取得するとともに、前記第一のタイミングにおける前記第一のコイルによる検知結果に基づいて、前記第一のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号を取得する取得部を備え、
前記入力部は、前記第二のタイミングにおいて、前記反射型センサの励磁信号に基づいて前記第二のコイルに磁束を発生させ、
前記取得部は、前記第二のタイミングにおける前記第二のコイルによる検知結果に基づいて、前記第二のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号を取得する、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項6】
前記入力部は、前記第一のタイミングにおいて、透過型センサと反射型センサとに共通の励磁信号に基づいて前記第一のコイルに磁束を発生させ、
前記出力部は、前記第一のタイミングにおける前記第二のコイルによる検知結果を前記第一のタイミングにおける前記透過型センサの検知信号として出力し、前記第一のタイミングにおける前記第一のコイルによる検知結果を前記第一のタイミングにおける前記反射型センサの検出信号として出力し、
前記入力部は、前記第二のタイミングにおいて、前記共通の励磁信号に基づいて前記第二のコイルに磁束を発生させ、
前記出力部は、前記第二のタイミングにおける前記第二のコイルによる検知結果を前記第二のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号として出力する、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項7】
前記検出装置は、
前記第一のタイミングにおける前記透過型センサの検知信号と前記第一のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号とに基づいて前記検出対象の特徴を導出する処理部を備える、
請求項3または4に記載の検出装置。
【請求項8】
前記処理部は、
前記第一のタイミングにおける前記透過型センサの検知信号に基づいて前記検出対象の第一の位置を導出し、前記第一の位置に基づいて前記第一のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号を補正し、補正後の前記第一のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号に基づいて前記検出対象の特徴を導出する、
請求項
7に記載の検出装置。
【請求項9】
前記検出装置は、
前記第一のタイミングにおける前記透過型センサの検知信号と、前記第一のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号と、前記第二のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号とに基づいて、前記検出対象の特徴を導出する処理部を備える、
請求項5または6に記載の検出装置。
【請求項10】
前記処理部は、
前記第一のタイミングにおける前記透過型センサの検知信号に基づいて前記検出対象の第一の位置を導出し、前記第一の位置と第一の減衰率とに基づいて前記第一のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号を補正し、
前記第一の位置と、前記第一の減衰率とは異なる第二の減衰率とに基づいて、前記第二のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号を補正し、
補正後の前記第一のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号と、補正後の前記第二のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号とに基づいて前記検出対象の特徴を導出する、
請求項
9に記載の検出装置。
【請求項11】
前記第一のタイミングおよび前記第二のタイミングのうち、一方のタイミングは、他方のタイミングから、前記検出対象が所定の距離だけ移動した後のタイミングである、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項12】
前記検出対象は、板状の物体である、
請求項1~
11のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項13】
前記検出対象の特徴は、前記検出対象の厚さである、
請求項
7~
10のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項14】
前記検出対象は、硬貨である、
請求項1~
13のいずれか一項に記載の検出装置を備える硬貨鑑別装置。
【請求項15】
コンピュータを、
検出対象が検知される検知範囲に到達する磁束を発生可能な位置に配置される第一のコイルに少なくとも接続される入力部と、
前記第一のコイルによって発生されて前記検知範囲を通過した磁束を検知可能な位置に配置された第二のコイルおよび前記第一のコイルに接続される出力部と、
を制御する制御部として機能させる検出プログラムであって、
前記制御部は、
第一のタイミングにおいて、前記第一のコイルを励磁して磁束を発生させるように前記入力部を制御するとともに、前記第二のコイルに磁束を検知させるとともに、前記第一のコイルに磁束を検知させるように、前記出力部を制御し、
前記第一のタイミングとは異なる第二のタイミングにおいて、前記第二のコイルを励磁して磁界を発生させるように前記入力部を制御するとともに、前記第二のコイルに磁束を検知させるように、前記出力部を制御する、
検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置、硬貨鑑別装置および検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、検出対象(例えば、硬貨)の特徴(例えば、検出対象の外径、材質または厚さなど)を検出するための主な技術として、磁気センサを用いる技術と、光学センサを用いる技術とがある。磁気センサとしては、棒状、E型またはU型のフェライトコアにコイルを巻いた形状の磁気センサが用いられることが多い。磁気センサが用いられる場合には、磁気センサのコイルに電流を流すことによって磁界を発生させ、検出対象の搬送前(以下、「無媒体状態」とも言う。)と搬送中(以下、「有媒体状態」とも言う。)との間の磁界の変化に基づいて、検出対象の特徴を検出する技術がよく用いられる。
【0003】
磁気センサの方式には、透過型と反射型とがある。透過型は2つのコイルを1組として用いる。そして、2つのコイルのうちのいずれか一方のコイルが搬送路の下方に配置され、他方のコイルが搬送路の上方に配置される。すなわち、2つのコイルは、搬送路を挟んで上下に対向する位置に配置される。このとき、一方のコイルが磁束を発生させる発信側として機能し、他方のコイルが磁束を検知する受信側として機能する。これによって、2つのコイルに挟まれた区間の磁界の変化が検知される。それに対して反射型は、1つのコイルが発信側および受信側として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、透過型の磁気センサおよび反射型の磁気センサの双方が検出対象の検出に用いられる場合がある。このとき、透過型の磁気センサおよび反射型の磁気センサそれぞれが独立して(すなわち、2対のコイルとして)設けられるのが一般的である。しかし、透過型の磁気センサおよび反射型の磁気センサそれぞれが独立して設けられると、磁気センサの製造コストが高くなってしまうとともに、磁気センサが実装されるスペースも広くなってしまう。
【0006】
そこで、透過型の磁気センサおよび反射型の磁気センサの双方によって検出対象が検知される場合において、磁気センサの製造コストを低減するとともに、磁気センサが実装されるスペースを低減することが可能な技術が提供されることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、本発明のある観点によれば、検出対象が検知される検知範囲を通過する磁束を発生可能な位置に配置される第一のコイルと、前記第一のコイルによって発生されて前記検知範囲を通過した磁束を検知可能な位置に配置された第二のコイルと、少なくとも前記第一のコイルに接続される入力部と、前記第一のコイルおよび前記第二のコイルに接続される出力部と、を備え、前記入力部は、第一のタイミングにおいて、前記第一のコイルを励磁して磁束を発生させ、前記出力部は、前記第一のタイミングにおいて、前記第二のコイルに磁束を検知させるとともに、前記第一のコイルに磁束を検知させ、前記入力部は、前記第一のタイミングとは異なる第二のタイミングにおいて、前記第二のコイルを励磁して磁界を発生させ、前記出力部は、前記第二のタイミングにおいて、前記第二のコイルに磁束を検知させる、検出装置が提供される。
【0009】
前記出力部は、前記第二のタイミングにおいて、前記第二のコイルに磁束を検知させるとともに、前記第一のコイルに磁束を検知させてもよい。
【0010】
前記入力部は、前記第一のタイミングにおいて、透過型センサの励磁信号と反射型センサの励磁信号とが合成された合成励磁信号に基づいて前記第一のコイルに磁束を発生させ、前記検出装置は、前記第一のタイミングにおける前記第二のコイルによる検知結果に基づいて、前記第一のタイミングにおける前記透過型センサの検知信号を取得するとともに、前記第一のタイミングにおける前記第一のコイルによる検知結果に基づいて、前記第一のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号を取得する取得部を備えてもよい。
【0011】
前記入力部は、前記第一のタイミングにおいて、透過型センサと反射型センサとに共通の励磁信号に基づいて前記第一のコイルに磁束を発生させ、前記出力部は、前記第一のタイミングにおける前記第二のコイルによる検知結果を前記第一のタイミングにおける前記透過型センサの検知信号として出力し、前記第一のタイミングにおける前記第一のコイルによる検知結果を前記第一のタイミングにおける前記反射型センサの検出信号として出力してもよい。
【0012】
前記入力部は、前記第一のタイミングにおいて、透過型センサの励磁信号と反射型センサの励磁信号とが合成された合成励磁信号に基づいて前記第一のコイルに磁束を発生させ、前記検出装置は、前記第一のタイミングにおける前記第二のコイルによる検知結果に基づいて、前記第一のタイミングにおける前記透過型センサの検知信号を取得するとともに、前記第一のタイミングにおける前記第一のコイルによる検知結果に基づいて、前記第一のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号を取得する取得部を備え、前記入力部は、前記第二のタイミングにおいて、前記反射型センサの励磁信号に基づいて前記第二のコイルに磁束を発生させ、前記取得部は、前記第二のタイミングにおける前記第二のコイルによる検知結果に基づいて、前記第二のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号を取得してもよい。
【0013】
前記入力部は、前記第一のタイミングにおいて、透過型センサと反射型センサとに共通の励磁信号に基づいて前記第一のコイルに磁束を発生させ、前記出力部は、前記第一のタイミングにおける前記第二のコイルによる検知結果を前記第一のタイミングにおける前記透過型センサの検知信号として出力し、前記第一のタイミングにおける前記第一のコイルによる検知結果を前記第一のタイミングにおける前記反射型センサの検出信号として出力し、前記入力部は、前記第二のタイミングにおいて、前記共通の励磁信号に基づいて前記第二のコイルに磁束を発生させ、前記出力部は、前記第二のタイミングにおける前記第二のコイルによる検知結果を前記第二のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号として出力してもよい。
【0016】
前記検出装置は、前記第一のタイミングにおける前記透過型センサの検知信号と前記第一のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号とに基づいて前記検出対象の特徴を導出する処理部を備えてもよい。
【0017】
前記処理部は、前記第一のタイミングにおける前記透過型センサの検知信号に基づいて前記検出対象の第一の位置を導出し、前記第一の位置に基づいて前記第一のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号を補正し、補正後の前記第一のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号に基づいて前記検出対象の特徴を導出してもよい。
【0018】
前記検出装置は、前記第一のタイミングにおける前記透過型センサの検知信号と、前記第一のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号と、前記第二のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号とに基づいて、前記検出対象の特徴を導出する処理部を備えてもよい。
【0019】
前記処理部は、前記第一のタイミングにおける前記透過型センサの検知信号に基づいて前記検出対象の第一の位置を導出し、前記第一の位置と第一の減衰率とに基づいて前記第一のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号を補正し、前記第一の位置と、前記第一の減衰率とは異なる第二の減衰率とに基づいて、前記第二のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号を補正し、補正後の前記第一のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号と、補正後の前記第二のタイミングにおける前記反射型センサの検知信号とに基づいて前記検出対象の特徴を導出してもよい。
【0022】
前記第一のタイミングおよび前記第二のタイミングのうち、一方のタイミングは、他方のタイミングから、前記検出対象が所定の距離だけ移動した後のタイミングであってもよい。
【0023】
前記検出対象は、板状の物体であってもよい。
【0024】
前記検出対象の特徴は、前記検出対象の厚さであってもよい。
【0025】
前記検出対象は、硬貨であってもよい。
【0026】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、検出対象が検知される検知範囲に到達する磁束を発生可能な位置に配置される第一のコイルに少なくとも接続される入力部と、前記第一のコイルによって発生されて前記検知範囲を通過した磁束を検知可能な位置に配置された第二のコイルおよび前記第一のコイルに接続される出力部と、を制御する制御部として機能させる検出プログラムであって、前記制御部は、第一のタイミングにおいて、前記第一のコイルを励磁して磁束を発生させるように前記入力部を制御するとともに、前記第二のコイルに磁束を検知させるとともに、前記第一のコイルに磁束を検知させるように、前記出力部を制御し、前記第一のタイミングとは異なる第二のタイミングにおいて、前記第二のコイルを励磁して磁界を発生させるように前記入力部を制御するとともに、前記第二のコイルに磁束を検知させるように、前記出力部を制御する、検出プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように本発明によれば、透過型の磁気センサおよび反射型の磁気センサの双方によって検出対象が検知される場合において、磁気センサの製造コストを低減するとともに、磁気センサが実装されるスペースを低減することが可能な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施形態に係る釣銭機の外観構成を示した説明図である。
【
図3】釣銭機が有する硬貨鑑別装置の外観を示す斜視図である。
【
図4】センサ固定部を外した状態における硬貨鑑別装置の上面図である。
【
図5】センサ固定部を外した状態における一般的な硬貨鑑別装置の上面図である。
【
図6】
図3のB-B線に沿った硬貨鑑別装置の断面図である。
【
図7】第1の実施形態の概要を説明するための図である。
【
図8】第1の実施形態に係る検出装置の構成例を示す図である。
【
図9】アナログ加算回路の処理の例を説明するための図である。
【
図10】アナログLPFおよびアナログHPFの処理の例を説明するための図である。
【
図11】第1の実施形態に係る制御部の動作例を示すフローチャートである。
【
図12】横ずれ量に対するセンサ出力との関係の例を示す図である。
【
図13】第1の実施形態に係るセンサ出力の補正例を示す図である。
【
図14】第1の実施形態に係る上側センサからの材厚センサのセンサ出力と、下側センサからの材厚センサのセンサ出力との関係の例を示す図である。
【
図15】第2の実施形態の概要を説明するための図である。
【
図16】第2の実施形態に係る検出装置の構成例を示す図である。
【
図17】第2の実施形態に係る制御部の動作例を示すフローチャートである。
【
図18】第2の実施形態に係るセンサ出力の補正例を示す図である。
【
図19】第2の実施形態に係る上側センサからの材厚センサのセンサ出力と、下側センサからの材厚センサのセンサ出力との関係の例を示す図である。
【
図20】第1の実施形態の変形例に係る検出装置の構成例を示す図である。
【
図21】第1の実施形態の変形例に係る制御部の動作例を示すフローチャートである。
【
図22】第2の実施形態の変形例に係る検出装置の構成例を示す図である。
【
図23】第2の実施形態の変形例に係る制御部の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0030】
また、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なる数字を付して区別する場合がある。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素等の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。また、異なる実施形態の類似する構成要素については、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合がある。ただし、異なる実施形態の類似する構成要素等の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。
【0031】
<<1.基本構成>>
以下では、本発明の一実施形態に係る検出装置によって検出される検出対象として、硬貨を例に挙げて主に説明する。しかし、検出対象は、硬貨に限定されず、他の物体であってもよい。例えば、検出装置によって検出される検出対象は、板状の物体であってもよい(硬貨も板状の物体の一例である)。検出対象が板状の物体であれば、検出対象が他の形状の物体である場合と比較して、磁気センサによって検出対象の特徴がより高精度に検出され得る。
【0032】
さらに、以下では、検出対象が移動する場合を主に想定する。特に、検出対象が硬貨である場合などには、検出対象が搬送ベルトによって搬送される。しかし、検出対象は、必ずしも搬送される物体でなくてもよく、自ら移動する物体であってもよい。あるいは、検出対象は、必ずしも移動する物体でなくてもよい。
【0033】
本発明の一実施形態に係る釣銭機(硬貨処理機の一例)は、例えば、百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストアなどといった小売業の店舗のレジ精算場に設置され、POS(Point Of Sales)レジスタなどに接続されて入出金処理を行う。しかし、釣銭機が設置される場所は限定されない。以下では、まずこのような本発明の一実施形態に係る釣銭機の基本構成について、
図1および
図2を参照して説明する。
【0034】
図1は、本実施形態に係る釣銭機1の外観構成を示した説明図である。本実施形態に係る釣銭機1は、
図1に示すように、紙幣釣銭機2と硬貨釣銭機3とを含んで構成され、POSレジスタ4と接続される。また、
図1に示すように、釣銭機1は、装置正面左側に入金口5、出金口6、リジェクト部7が設けられ、装置正面右側に、操作表示部9、回収カセット部19、紙幣入出金口20が設けられている。
【0035】
入金口5は、レジ担当の係員が顧客から受け取った硬貨が投入される投入口である。出金口6は、顧客へ釣銭として支払う硬貨を払い出す受取口である。
【0036】
リジェクト部7は、受け入れ不能と判別された(リジェクトされた)硬貨を収納する。リジェクト部7は、
図1に示すようにリジェクト扉33を有し、リジェクト扉33を開くと、リジェクトされた硬貨を保管するリジェクト収納部(不図示)が開放される構造になっている。また、リジェクト扉33の上部には錠34が設けられ、錠34を施錠することで、リジェクト扉33が開かないように設定することができる。
【0037】
操作表示部9は、レジ担当の係員が入力に用いるキーなどの操作部91と、係員が入力した内容や装置の情報などを表示する表示部92を有する。
【0038】
回収カセット部19は、紙幣釣銭機2の内部に収納された紙幣を回収し、収納するための紙幣カセットである。紙幣入出金口20は、顧客から受け取った紙幣を入金し、顧客へ釣銭として支払う紙幣を払い出す入出金口である。
【0039】
図2は、硬貨釣銭機3の機構を示す概略側面図である。
図2に示すように、硬貨釣銭機3は、顧客から受け取った入金硬貨を入金する入金口5と、入金口5に設けられたセンサ31と、釣銭硬貨を出金するための出金口6と、入金した硬貨を金種毎に収納する1円ホッパー21、50円ホッパー22、5円ホッパー23、100円ホッパー24、10円ホッパー25、500円ホッパー26と、入金した硬貨の金種、真偽などを判別する硬貨鑑別装置100と、硬貨鑑別装置100を配置した入金搬送路28と、リジェクト収納部29、出金搬送路30と、を有する。また、入金搬送路28と出金搬送路30はモータ32により駆動される。
【0040】
以上、本発明の一実施形態に係る釣銭機1(硬貨処理機の一例)について説明した。続いて、釣銭機1が有する硬貨鑑別装置100について説明する。
【0041】
<<2.硬貨鑑別装置の構成>>
図3は、釣銭機1が有する硬貨鑑別装置100の外観を示す斜視図である。
図4は、センサ固定部130(
図3)を外した状態における硬貨鑑別装置100の上面図である。
図5は、センサ固定部を外した状態における一般的な硬貨鑑別装置900の上面図である。
図6は、
図3のB-B線に沿った硬貨鑑別装置100の断面図である。
図3に示すように、硬貨鑑別装置100は、搬送路102と、搬送部材の一例である搬送ベルト104と、搬送基準部材112とを備える。
【0042】
搬送路102は、硬貨Cが搬送方向に搬送される搬送面103を有する。すなわち、硬貨Cは、搬送面103に沿って搬送方向に搬送される。
【0043】
搬送ベルト104は、搬送路102の上方に配置されており、搬送路102上の硬貨Cを搬送方向に搬送する。
【0044】
搬送基準部材112は、搬送ベルト104に沿って搬送路102の一端側に形成されており、搬送路102の幅方向(
図3および
図4に示したX方向)における硬貨Cの搬送位置を規制するガイド部である。搬送基準部材112は、搬送ベルト104により搬送される硬貨Cをガイドする搬送基準面113(ガイド面)を有する。すなわち、硬貨Cは、搬送ベルト104によって与えられる搬送力によって搬送基準面113に当接されながら、搬送基準面113に沿って搬送方向に搬送される。
【0045】
ここで、本発明の一実施形態に係る硬貨鑑別装置100の特徴をより把握しやすくするため、
図5を参照しながら、一般的な硬貨鑑別装置900について簡単に説明する。
【0046】
図5を参照すると、一般的な硬貨鑑別装置900の上面図が示されている。硬貨鑑別装置900は、硬貨の特徴を検出する磁気センサの例として、材厚センサ(上側材厚センサ171と下側材厚センサ172との組み合わせ)と、幅寄せセンサ181とを備える。その他、硬貨鑑別装置900は、硬貨の特徴を検出する他の磁気センサの例として、外径センサ(受信側外径センサ141と発信側外径センサ142との組み合わせ)と、材質センサ(受信側材質センサ161と発信側材質センサ162との組み合わせ)とを備える。
【0047】
一般的には、
図5に示されるように、搬送基準面113に当接されながら搬送される硬貨Cの中央付近よりも搬送基準面113側に搬送ベルト104が配置される。そのため、硬貨Cの中央付近が通過する位置の上方および下方に、材厚センサ(上側材厚センサ171と下側材厚センサ172との組み合わせ)が配置され得る。これによって、硬貨Cが搬送基準面113から離れてしまったとしても、硬貨Cが搬送基準面113に当接されながら搬送される場合と同様に、材質センサ(上側材厚センサ171と下側材厚センサ172との組み合わせ)によって、硬貨Cの材厚(すなわち、厚さ)が精度良く検出され得る。なお、この例では、材厚センサは、透過型の磁気センサである。
【0048】
また、幅寄せセンサ181(ずれ量検出センサ)は、搬送基準面113を基準とした硬貨Cのずれ量(以下、「横ずれ量」とも言う。)を検出する。搬送基準面113を基準とした硬貨Cのずれ量は、外径センサ(受信側外径センサ141と発信側外径センサ142との組み合わせ)によって検出される硬貨Cの外径の補正に用いられ得る。搬送基準面113を基準とした硬貨Cのずれ量を検出するためには、幅寄せセンサ181は、搬送基準面113の付近の上方または下方に配置されればよい。一般的には、搬送ベルト104が搬送路102の上方に配置されるため、幅寄せセンサ181は、搬送ベルト104との干渉を避けるべく、搬送路102の下方に配置される。なお、この例では、幅寄せセンサ181は、反射型の磁気センサである。
【0049】
このように、一般的には、材厚センサ(上側材厚センサ171と下側材厚センサ172との組み合わせ)は、硬貨Cの中央付近が通過する位置の上方および下方に配置され、幅寄せセンサ181は、搬送基準面113の付近の下方に配置される。そのため、材厚センサ(上側材厚センサ171と下側材厚センサ172との組み合わせ)および幅寄せセンサ181それぞれは、独立して設けられるしかなく、磁気センサの製造コストが高くなってしまうとともに、磁気センサが実装されるスペースも広くなってしまうという事情がある。
【0050】
仮に、硬貨Cの搬送性能を向上させるために、硬貨Cの中央付近が通過する位置の上方に搬送ベルト104を配置する場合を想定する。かかる場合には、材厚センサ(上側材厚センサ171と下側材厚センサ172との組み合わせ)は、搬送ベルト104との干渉を避けるために、硬貨Cの中央付近が通過する位置の上方および下方に配置されなくなってしまう。例えば、硬貨Cの中央付近が通過する位置よりも搬送基準面113側に材厚センサ(上側材厚センサ171と下側材厚センサ172との組み合わせ)が配置されれば、材厚センサから発生される磁束に掛かる硬貨Cの面積が変化してしまうため、材厚センサによって検出される硬貨Cの特徴(材厚)が不安定になってしまうという事情がある。
【0051】
そこで、本実施形態では、後に説明するように、硬貨鑑別装置100が備える検出装置は、磁気センサを備える。磁気センサは、第一のコイルと第二のコイルとを含んで構成される。第一のコイルは、硬貨Cが検知される検知範囲(ここでは、搬送路102の一部)を通過する磁束を発生可能な位置に配置される。そして、第二のコイルは、第一のコイルによって発生されて検知範囲を通過した磁束を検知可能な位置に配置される。なお、検知範囲は、検出対象が存在し得る領域(ここでは、搬送路102であり、検出対象が移動し得る領域を含み得る)の一部または全部に対して適宜に設定されてよい。
【0052】
以下では、第一のコイルが搬送路102の下方に配置されるコイルであり、第二のコイルが搬送路102の上方に配置されるコイルである場合を主に想定する。したがって、以下では、第一のコイルを「下側センサ」とも言い(
図4に示した下側センサ192)、第二のコイルを「上側センサ」とも言う(
図4に示した上側センサ191)。しかし、第一のコイルが搬送路102の上方に配置されてもよく(すなわち、以下に説明する「上側センサ」として機能してもよく)、第二のコイルが搬送路102の下方に配置されてもよい(すなわち、以下に説明する「下側センサ」として機能してもよい)。
【0053】
その他、検出装置は、少なくとも下側センサ192に接続される入力部と、下側センサ192および上側センサ191それぞれに接続される出力部とを備える。入力部は、下側センサ192を励磁して磁束を発生させる。出力部は、下側センサ192によって発生された磁束を上側センサ191に検知させるとともに、下側センサ192によって発生された磁束を下側センサ192にも磁束を検知させる。
【0054】
かかる構成によれば、磁束を発生させる下側センサ192と磁束を検知させる上側センサ191との組み合わせによって透過型の磁気センサが実現され得る。そして、磁束を発生させるとともに磁束を検知する下側センサ192によって反射型の磁気センサが実現され得る。すなわち、上側センサ191と下側センサ192とによって、透過型の磁気センサと反射型の磁気センサとが実現され得るため、磁気センサの製造コストを低減するとともに、磁気センサが実装されるスペースを低減することが可能となる。
【0055】
以下では、下側センサ192と上側センサ191との組み合わせによって実現される透過型の磁気センサの例として、幅寄せセンサが用いられる場合を想定する。しかし、下側センサ192と上側センサ191との組み合わせによって実現される透過型の磁気センサは、幅寄せセンサに限定されない。一方、下側センサ192によって実現される反射型の磁気センサの例として、材厚センサが用いられる場合を想定する。
【0056】
ただし、上側センサ191の出力は、上側センサ191と硬貨Cの上面との距離によって変化し得る。しかし、上側センサ191と硬貨Cの上面との距離は、硬貨Cの材厚だけでなく、硬貨Cが搬送路102からどの程度浮いているか(すなわち、硬貨浮きの度合い)によっても変化し得る。そこで、下側センサ192の出力も上側センサ191の出力と同様に、硬貨浮きの影響を受けることを考慮し、上側センサ191および下側センサ192それぞれの出力の相対的な関係に基づいて、硬貨Cの材厚が検出されるのが望ましい。
【0057】
すなわち、材厚センサは、下側センサ192と上側センサ191との組み合わせによって実現され、下側センサ192と上側センサ191との間で(磁束の発生および検知を共に行う)センサが切り替えられるのが望ましい。下側センサ192によって実現される反射型の磁気センサも、材厚センサに限定されない。例えば、下側センサ192によって実現される反射型の磁気センサは、硬貨Cの材厚以外の何らかの特徴を検出する磁気センサであってもよい。
【0058】
さらに、幅寄せセンサによって検出された横ずれ量に基づいて、反射型の磁気センサによって検知された検知信号(センサ出力)が補正され得る。これによって、硬貨Cの中央付近が通過する位置の上方に搬送ベルト104を配置し、材厚センサが、硬貨Cの中央付近が通過する位置よりも搬送基準面113側に配置され、材厚センサから発生される磁束に掛かる硬貨Cの面積が変化してしまうことが防げるため、硬貨Cの特徴(材厚)の検出精度の低下が抑制され得る。なおかつ、硬貨Cの中央付近が通過する位置の上方に搬送ベルト104が配置され得るため、硬貨Cの搬送性能を向上させることが可能となる。
【0059】
なお、本実施形態では、搬送ベルト104を硬貨Cの中央付近の上方を通すことが可能となる。したがって、搬送ベルト104がピンベルトによって構成され得る。ピンベルトには、搬送路102側の面にピン105(突起)が形成されており、硬貨Cにピン105が接触した状態において搬送ベルト104が搬送方向に回転することによって、ピン105によって硬貨C(搬送ベルト104が硬貨Cの中央付近の上方を通る場合には、硬貨Cの外径の中央付近に)搬送方向への力(搬送力)が与えられる。これによって、硬貨Cの搬送性能がより高まる。
【0060】
しかし、搬送ベルト104にはピン105が形成されていなくてもよい。すなわち、搬送ベルト104は、搬送面103との間に硬貨Cを挟んだ状態において搬送方向に回転することによって、摩擦力を搬送力として硬貨Cに与えてもよい。
【0061】
硬貨鑑別装置100は、これらの磁気センサ(すなわち、上側センサ191と下側センサ192との組み合わせ)と、幅寄せセンサ181とを備える他、外径センサ(受信側外径センサ141と発信側外径センサ142との組み合わせ)および材質センサ(受信側材質センサ161と発信側材質センサ162との組み合わせ)も備える。本実施形態では、外径センサおよび材質センサそれぞれも、透過型の磁気センサである場合を主に想定するが、反射型の磁気センサであってもよい。
【0062】
図6に示すように、上側センサ191と下側センサ192との組み合わせ、受信側外径センサ141と発信側外径センサ142との組み合わせ、および、受信側材質センサ161と発信側材質センサ162との組み合わせは、センサ固定部130に内蔵される。搬送方向の上流側から見た場合のセンサ固定部130の形状は、
図6に示すように逆コの字形状であってよい。すなわち、センサ固定部130は、搬送路102を上下から挟むように設けられている。
【0063】
なお、
図4に示された例では、受信側材質センサ161と発信側材質センサ162との組み合わせが、上側センサ191と下側センサ192との組み合わせ、および、受信側外径センサ141と発信側外径センサ142との組み合わせよりも、搬送方向の上流側に配置されている。しかし、受信側材質センサ161と発信側材質センサ162との組み合わせが、上側センサ191と下側センサ192との組み合わせ、および、受信側外径センサ141と発信側外径センサ142との組み合わせよりも、搬送方向の下流側に配置されていてもよい。
【0064】
以上、本実施形態に係る硬貨鑑別装置100の構成について説明した。かかる硬貨鑑別装置100の構成を前提とした上で、以下では、硬貨鑑別装置100が備える検出装置の例として、第1の例(第1の実施形態)について説明する。その後、硬貨鑑別装置100が備える検出装置の他の例として、第2の例(第2の実施形態)について説明する。
【0065】
<<3.第1の実施形態>>
まず、第1の実施形態について説明する。
【0066】
(3.1.第1の実施形態の概要)
まず、第1の実施形態の概要について説明する。
図7は、第1の実施形態の概要を説明するための図である。上記したように、透過型の磁気センサの例としての幅寄せセンサは、磁束を発生させる下側センサ192と磁束を検知させる上側センサ191との組み合わせによって実現され得る。一方、反射型の磁気センサの例としての材厚センサは、下側センサ192によって実現され得る。しかし、上記したように、材厚センサは、下側センサ192と上側センサ191との組み合わせによって実現され、下側センサ192と上側センサ191との間で(磁束の発生および検知を共に行う)センサが切り替えられるのが望ましい。
【0067】
図7に示された「センサ配置」が「上側」であるセンサは、上側センサ191に該当する。「センサ配置」が「下側」であるセンサは、下側センサ192に該当する。「幅寄せ」は、幅寄せセンサに該当し、「材厚(L)」は、下側センサを用いる材厚センサに該当し、「材厚(U)」は、上側センサを用いる材厚センサに該当する。「発信」は、磁束を発生させることを意味し、「受信」は、磁束を検知することを意味する。「タイミングT1」は、第一の状態の例であり、「タイミングT2」は、第二の状態の例である。
【0068】
ここでは、「タイミングT1」が先に到来し、その後に「タイミングT2」が到来する場合を主に想定する。しかし、「タイミングT1」と「タイミングT2」との先後関係は、かかる例に限定されない。すなわち、「タイミングT2」が先に到来し、その後に「タイミングT1」が到来してもよい。以下では、「タイミングT2」が、硬貨Cが、「タイミングT1」から所定の距離だけ搬送路102上を搬送方向に移動した後の状態である場合を想定する。換言すると、「タイミングT2」は、硬貨Cが「タイミングT1」から所定の距離だけ搬送路102上を搬送方向に移動する前の状態であってもよい。
【0069】
図7に示すように、「タイミングT1」においては、下側センサ192によって、幅寄せセンサに対応する磁束(
図7において破線で記載)と、材厚センサに対応する磁束(
図7において実線で記載)とが発信される(発生される)。さらに、「タイミングT1」においては、上側センサ191によって、硬貨Cを貫通した幅寄せセンサに対応する磁束が受信される(検知される)。また、「タイミングT1」においては、下側センサ192によって、硬貨Cから反射した材厚センサに対応する磁束が受信される(検知される)。なお、「タイミングT1」においては、上側センサ191による材厚センサに対応する磁束の発信および受信は停止される。
【0070】
「タイミングT2」においては、上側センサ191によって、材厚センサに対応する磁束(
図7において実線で記載)が発信される(発生される)。そして、「タイミングT2」においては、上側センサ191によって、硬貨Cから反射した材厚センサに対応する磁束が受信される(検知される)。なお、「タイミングT2」においては、下側センサ192による材厚センサに対応する磁束の発信および受信は停止される。さらに、「タイミングT2」においては、上側センサ191および下側センサ192による幅寄せセンサに対応する磁束の発信および受信は停止される。
【0071】
以上、本発明の第1の実施形態の概要について説明した。
【0072】
(3.2.第1の実施形態の構成)
続いて、第1の実施形態の構成について説明する。
図8は、第1の実施形態に係る検出装置の構成例を示す図である。
図8を参照すると、第1の実施形態に係る検出装置40Aは、アナログ加算回路410と、入力部420Aと、上側センサ191と、下側センサ192と、出力部430Aと、アナログLPF(Low-Pass Filter)441と、アナログHPF(High-Pass Filter)442と、増幅・波形整形回路451と、増幅・波形整形回路452と、A/D(アナログ/デジタル)変換部460と、制御部400Aと、処理部470Aとを備える。
【0073】
なお、上側センサ191および下側センサ192は上記した通りであるため、上側センサ191および下側センサ192についての詳細な説明は省略する。
【0074】
(アナログ加算回路410)
アナログ加算回路410は、材厚センサの励磁信号と、幅寄せセンサの励磁信号とを合成することによって合成励磁信号を生成する。
図9は、アナログ加算回路410の処理の例を説明するための図である。ここで、材厚センサの励磁信号の周波数と、幅寄せセンサの励磁信号の周波数とが異なる場合を想定する。一例として、
図9には、材厚センサの励磁信号の周波数が、幅寄せセンサの励磁信号の周波数よりも高い場合が示されている。しかし、材厚センサの励磁信号の周波数が、幅寄せセンサの励磁信号の周波数よりも低くてもよい。
【0075】
(入力部420A)
図8に戻って説明を続ける。入力部420Aには、材厚センサの励磁信号とアナログ加算回路410によって生成された合成励磁信号とが入力される。
【0076】
例えば、入力部420Aは、制御部400Aによる制御に従って、(例えば、スイッチW21をONにすることによって)材厚センサの励磁信号を上側センサ191に入力して、上側センサ191に材厚センサの励磁信号に基づく磁束を発生させる。また、入力部420Aは、制御部400Aによる制御に従って(例えば、スイッチW21をOFFにすることによって)材厚センサの励磁信号を上側センサ191に入力せず、上側センサ191による材厚センサの励磁信号に基づく磁束の発生を停止させる。
【0077】
また、入力部420Aは、制御部400Aによる制御に従って、(例えば、スイッチW22をONにすることによって)合成励磁信号を下側センサ192に入力して、下側センサ192に合成励磁信号に基づく磁束を発生させる。また、入力部420Aは、制御部400Aによる制御に従って、(例えば、スイッチW22をOFFにすることによって)合成励磁信号を下側センサ192に入力せず、下側センサ192による合成励磁信号に基づく磁束の発生を停止させる。
【0078】
(出力部430A)
出力部430Aには、上側センサ191による検知結果と下側センサ192による検知結果とが入力される。
【0079】
例えば、出力部430Aは、制御部400Aによる制御に従って、(例えば、スイッチW31をアナログLPF441側に接続させることによって)上側センサ191による検知結果をアナログLPF441に出力する。また、出力部430Aは、制御部400Aによる制御に従って、(例えば、スイッチW32をアナログHPF442側に接続させることによって)下側センサ192による検知結果をアナログHPF442に出力する。
【0080】
さらに、出力部430Aは、制御部400Aによる制御に従って、(例えば、スイッチW31をアナログHPF442に接続させ、スイッチW32を上側センサ191に接続させることによって)上側センサ191による検知結果をアナログHPF442に出力する。
【0081】
(アナログLPF441およびアナログHPF442)
アナログLPF441は、出力部430Aから上側センサ191による検知結果が出力された場合には、上側センサ191による検知結果に基づいて、幅寄せセンサの検知信号を取得する。また、アナログHPF442は、出力部430Aから下側センサ192による検知結果が出力された場合には、下側センサ192による検知結果に基づいて、材厚センサの検知信号を取得する。また、アナログHPF442は、出力部430Aから上側センサ191による検知結果が出力された場合には、上側センサ191による検知結果に基づいて、材厚センサの検知信号を取得する。
【0082】
図10は、アナログLPF441およびアナログHPF442の処理の例を説明するための図である。
図10に示した例では、材厚センサの励磁信号と幅寄せセンサの励磁信号との合成励磁信号に基づく磁束の検知結果(合成検知信号)が、アナログLPF441に出力される場合と、アナログHPF442に出力される場合とが示されている。アナログLPF441によって、より周波数が低い幅寄せセンサの検知信号が取得され、アナログHPF442によって、より周波数が高い材厚センサの検知信号が取得される。
【0083】
このように、アナログ加算回路410によって、材厚センサの励磁信号と幅寄せセンサの励磁信号との合成励磁信号が生成され、アナログLPF441およびアナログHPF442によって、検知結果に基づく幅寄せセンサの検知信号と材厚センサの検知信号との分離(周波数分離)が行われる。すなわち、アナログ信号に対する合成および分離が行われる。
【0084】
このように、アナログ信号に対する合成および分離が行われることによって、デジタル信号に対してFFT(Fast Fourier Transform)を掛けて周波数展開が行われるよりも処理時間を短くすることができる。さらに、デジタル信号に対してFFTを掛ける場合には、逓倍の周波数を用いることができないが、アナログ信号に対する合成および分離が行われることによって、逓倍の周波数を用いることが可能になる。なお、アナログLPF441およびアナログHPF442は、取得部の例として機能する。
【0085】
(増幅・波形整形回路451および増幅・波形整形回路452)
増幅・波形整形回路451は、アナログLPF441によって取得された幅寄せセンサの検知信号に対して、信号の増幅を行うとともに信号波形の整形を行う。増幅・波形整形回路451による処理後のアナログ信号は、A/D変換部460に出力される。一方、増幅・波形整形回路452は、アナログHPF442によって取得された材厚センサの検知信号に対して、信号の増幅を行うとともに信号波形の整形を行う。増幅・波形整形回路452による処理後のアナログ信号は、A/D変換部460に出力される。
【0086】
(A/D変換部460)
A/D変換部460は、増幅・波形整形回路451による処理後のアナログ信号をデジタル信号に変換して、デジタル形式の幅寄せセンサの検知信号を得る。A/D変換部460は、デジタル形式の幅寄せセンサの検知信号を処理部470Aに出力する。また、A/D変換部460は、増幅・波形整形回路452による処理後のアナログ信号をデジタル信号に変換して、デジタル形式の材厚センサの検知信号を得る。A/D変換部460は、デジタル形式の材厚センサの検知信号を処理部470Aに出力する。
【0087】
(制御部400A)
制御部400Aは、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置を含み、ROM(Read Only Memory)により記憶されているプログラム(検出プログラム)が演算装置によりRAM(Random Access Memory)に展開されて実行されることにより、その機能が実現され得る。このとき、当該プログラムを記録した、コンピュータに読み取り可能な記録媒体も提供され得る。あるいは、制御部400Aは、専用のハードウェアにより構成されていてもよいし、複数のハードウェアの組み合わせにより構成されてもよい。演算装置による演算に必要なデータは、図示しない記憶部によって適宜記憶される。
【0088】
図11は、第1の実施形態に係る制御部400Aの動作例を示すフローチャートである。
図11に示すように、釣銭機1の電源がONにされない間は(S11において「NO」)、S11に動作が戻る。一方、釣銭機1の電源がONにされた場合には(S11において「YES」)、図示しない信号処理基板から発信側材質センサ162に電流が流され、発信側材質センサ162によって磁束が発生される。発信側材質センサ162によって発生された磁束によって受信側材質センサ161に誘導起電力が発生し、受信側材質センサ161に電流が流れる。
【0089】
このときの受信側材質センサ161の電流変化は、電圧変化に変換され、変換によって得られる電圧に対して、増幅、ノイズ除去および平滑化といった処理が行われる。このようにして得られる処理後の電圧が、硬貨が搬送路102を搬送されていない状態(無媒体状態)における材質センサ(受信側材質センサ161および発信側材質センサ162)の出力電圧として検知される。
【0090】
さらに、制御部400Aは、
図7の「タイミングT1」に示した制御を行う。すなわち、制御部400Aは、材厚センサの励磁信号と幅寄せセンサの励磁信号との合成励磁信号が下側センサ192に入力されるように入力部420Aを制御する(S12)。一方、制御部400Aは、材厚センサの励磁信号が上側センサ191に入力されないように入力部420Aを制御する。下側センサ192は、合成励磁信号に基づく磁界を発生させる。このとき、上側センサ191および下側センサ192の無媒体状態における出力電圧も同様の手法により検知される。
【0091】
釣銭機1において所定の取引が開始されると、搬送路102を搬送された硬貨は、搬送ベルト104により搬送方向に搬送され、材質センサ(受信側材質センサ161および発信側材質センサ162)の磁束に掛かると、発信側材質センサ162が発生させている磁束の影響を受け、硬貨の表面に渦電流が発生する。その渦電流が、発信側材質センサ162が発生させている磁束の方向と逆向きに磁束を発生させる。
【0092】
そのため、受信側材質センサ161と発信側材質センサ162との間の区間の磁界が無媒体状態から変化する。その磁界の変化が、受信側材質センサ161によって無媒体状態と有媒体状態との出力電圧の変化として捉えられる。無媒体状態と有媒体状態との出力電圧の変化は、硬貨の材質によって異なるため、受信側材質センサ161によって捉えられた出力電圧の変化に基づいて、硬貨の材質が検出され得る。硬貨の材質は、硬貨の鑑別に用いられ得る。
【0093】
続いて、硬貨が搬送ベルト104により搬送方向にさらに搬送され、外径センサ(受信側外径センサ141および発信側外径センサ142)の磁束に掛かると、受信側外径センサ141と発信側外径センサ142との間の区間の磁界が無媒体状態から変化する。その磁界の変化が、受信側外径センサ141によって、(受信側材質センサ161による出力電圧の変化の捉え方と同様にして)無媒体状態と有媒体状態との出力電圧の変化として捉えられる。
【0094】
磁束に掛かる硬貨の度合いは、硬貨の外径(すなわち、硬貨の金種)によって異なるため、受信側外径センサ141によって捉えられた出力電圧の変化に基づいて硬貨の外径が検出され得る。このとき、受信側外径センサ141によって捉えられた出力電圧の変化は、搬送基準面113から硬貨がどの程度離れているかにも依存し得る。そのため、幅寄せセンサによって捉えられた出力電圧の変化に応じた補正値が、処理部470Aによって硬貨の外径に掛けられることによって、硬貨の外径の検出精度がさらに向上する。硬貨の外径は、硬貨の鑑別に用いられ得る。
【0095】
一方、下側センサ192によって発生された合成励磁信号に基づく磁束に硬貨が掛かると、上側センサ191と下側センサ192との間の区間の磁界が無媒体状態から変化する。その磁界の変化が、上側センサ191および下側センサ192によって、無媒体状態と有媒体状態との出力電圧の変化として捉えられる。出力部430Aには、下側センサ192によって発生された合成励磁信号に基づく磁束の、上側センサ191による検知結果が入力される。また、出力部430Aには、下側センサ192によって発生された合成励磁信号に基づく磁束の、下側センサ192による検知結果が入力される。
【0096】
制御部400Aは、合成励磁信号に基づく磁束の下側センサ192による検知結果をアナログHPF442に出力するように出力部430Aを制御するとともに、合成励磁信号に基づく磁束の上側センサ191による検知結果をアナログLPF441に出力するように出力部430Aを制御する(S13)。アナログHPF442は、合成励磁信号に基づく磁束の下側センサ192による検知結果に基づいて、幅寄せセンサの検知信号を取得する。一方、アナログLPF441は、合成励磁信号に基づく磁束の上側センサ191による検知結果に基づいて、材厚センサの検知信号を取得する。
【0097】
幅寄せセンサの検知信号は、増幅・波形整形回路451によって、信号増幅および信号波形の整形が行われ、A/D変換部460によってデジタル形式に変換された後、タイミングT1における幅寄せセンサの検知信号(センサ出力)として、処理部470Aによって取得される。一方、材厚センサの検知信号は、増幅・波形整形回路452によって、信号増幅および信号波形の整形が行われ、A/D変換部460によってデジタル形式に変換された後、タイミングT1における材厚センサの検知信号(センサ出力)として処理部470Aによって取得される。
【0098】
続いて、制御部400Aは、タイミングT1を基準として、硬貨Cの搬送量が所定の距離に到達したか否かを判断する(S14)。制御部400Aが、タイミングT1を基準として、硬貨Cの搬送量が所定の距離に到達していないと判断する間は(S14において「NO」)、動作がS14に戻る。一方、制御部400Aは、タイミングT1を基準として、硬貨Cの搬送量が所定の距離に到達したと判断した場合には(S14において「YES」)、
図7の「タイミングT2」に示した制御を行う。
【0099】
すなわち、制御部400Aは、材厚センサの励磁信号が上側センサ191に入力されるように入力部420Aを制御する(S15)。一方、制御部400Aは、合成励磁信号が下側センサ192に入力されないように入力部420Aを制御する。上側センサ191は、材厚センサの励磁信号に基づく磁界を発生させる。
【0100】
上側センサ191によって発生された材厚センサの励磁信号に基づく磁束に硬貨が掛かると、上側センサ191と下側センサ192との間の区間の磁界が無媒体状態から変化する。その磁界の変化が、上側センサ191によって、無媒体状態と有媒体状態との出力電圧の変化として捉えられる。出力部430Aには、上側センサ191によって発生された材厚センサの励磁信号に基づく磁束の、上側センサ191による検知結果が入力される。また、出力部430Aには、上側センサ191によって発生された材厚センサの励磁信号に基づく磁束の、下側センサ192による検知結果が入力される。
【0101】
制御部400Aは、材厚センサの励磁信号に基づく磁束の上側センサ191による検知結果をアナログHPF442に出力するように出力部430Aを制御するとともに、材厚センサの励磁信号に基づく磁束の下側センサ192による検知結果の出力を停止するように出力部430Aを制御する(S16)。アナログHPF442は、材厚センサの励磁信号に基づく磁束の上側センサ191による検知結果に基づいて、材厚センサの検知信号を取得する。一方、アナログLPF441は、幅寄せセンサの検知信号を取得しない。
【0102】
タイミングT2における幅寄せセンサの検知信号は、処理部470Aによって取得されない。一方、材厚センサの検知信号は、増幅・波形整形回路452によって、信号増幅および信号波形の整形が行われ、A/D変換部460によってデジタル形式に変換された後、タイミングT2における材厚センサの検知信号(センサ出力)として処理部470Aによって取得される。
【0103】
なお、
図11に示した例は、制御部400AによってS16が実行された後に、制御部400Aの動作が終了する例である。しかし、制御部400Aは、S16を実行した後、タイミングT2を基準として硬貨Cの搬送量が所定の距離に到達したか否かを判断する処理と、搬送量が所定の距離に到達した場合におけるS12~S16とを、1または複数回繰り返し実行してよい。このとき、タイミングT1およびタイミングT2における材厚センサのセンサ出力が処理部470Aによって複数回得られる。同様に、タイミングT1における幅寄せセンサのセンサ出力も処理部470Aによって複数回得られる。
【0104】
かかる場合には、複数回得られる材厚センサのセンサ出力の中で、最大値を取る材厚センサのセンサ出力が処理部470Aによって用いられればよい。このとき、最大値を取る材厚センサのセンサ出力が得られたタイミングと対応するタイミングに得られた幅寄せセンサのセンサ出力が処理部470Aによって用いられればよい。
【0105】
(処理部470A)
処理部470Aは、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置を含み、ROM(Read Only Memory)により記憶されているプログラム(処理プログラム)が演算装置によりRAM(Random Access Memory)に展開されて実行されることにより、その機能が実現され得る。このとき、当該プログラムを記録した、コンピュータに読み取り可能な記録媒体も提供され得る。あるいは、処理部470Aは、専用のハードウェアにより構成されていてもよいし、複数のハードウェアの組み合わせにより構成されてもよい。演算装置による演算に必要なデータは、図示しない記憶部によって適宜記憶される。
【0106】
一例として、処理部470Aは、タイミングT1における材厚センサのセンサ出力と、タイミングT1における幅寄せセンサのセンサ出力とに基づいて、硬貨Cの材厚を導出し得る。これによって、硬貨Cの材厚の検出精度が向上する。
【0107】
ここで、幅寄せセンサ181のセンサ出力は、搬送基準面113を基準とした硬貨Cのずれ量(横ずれ量)が大きくなるに従って減衰する。このときの幅寄せセンサ181のセンサ出力の減衰は、横ずれ量と線形に近い。一方、材厚センサのセンサ出力も、横ずれ量が大きくなるに従って減衰する。しかし、上記したように、材厚センサのセンサ出力は、硬貨浮きの影響も大きく受ける。
【0108】
そこで、処理部470Aは、タイミングT1における幅寄せセンサのセンサ出力に基づいて、タイミングT1における硬貨の横ずれ量(第一の位置)を導出する。そして、処理部470Aは、タイミングT1における硬貨Cの横ずれ量に基づいて、タイミングT1における材厚センサのセンサ出力を補正する。その後、処理部470Aは、補正後のタイミングT1における材厚センサのセンサ出力に基づいて硬貨Cの材厚を導出する。なお、補正量は、横ずれ量に対してあらかじめ定められた減衰量の割合(減衰率)を乗じることによって算出し得る。タイミングT1では、下側センサ192によって材厚センサの励磁信号に基づく磁束が検知されるため、下側センサ192からの材厚センサのセンサ出力の減衰量が用いられる。
【0109】
例えば、タイミングT1における幅寄せセンサのセンサ出力をAとし、横ずれ量に対する幅寄せセンサのセンサ出力の減衰量の割合(減衰率)をαとし、搬送基準面113に沿って硬貨が搬送される場合における幅寄せセンサのセンサ出力をA0とする。さらに、タイミングT1における下側センサ192からの材厚センサのセンサ出力をBとし、横ずれ量に対する下側センサ192からの材厚センサのセンサ出力の減衰量の割合(減衰率)をβとし、搬送基準面113に沿って硬貨が搬送される場合における下側センサ192からの材厚センサのセンサ出力をB0とする。また、搬送基準面113からの硬貨の距離(横ずれ量)をXとする。
【0110】
このとき、タイミングT1における幅寄せセンサのセンサ出力Aに基づいて、横ずれ量Xを算出すると、下記の式(1)に示されるようにXが算出される。
【0111】
X=(A-A0)/α・・・(1)
【0112】
また、搬送基準面113に沿って硬貨が搬送される場合における下側センサ192からの材厚センサのセンサ出力B0は、上記の式(1)と以下の式(2)とを考慮すると、以下の式(3)に示されるように算出される。
【0113】
B=X*β+B0・・・(2)
B0=B-X*β=B-(A-A0)*β/α・・・(3)
【0114】
さらに、処理部470Aは、タイミングT1における材厚センサのセンサ出力と、タイミングT1における幅寄せセンサのセンサ出力とに追加して、タイミングT2における材厚センサのセンサ出力をさらに加味して、硬貨Cの材厚を導出し得る。これによって、硬貨Cの材厚の検出精度がさらに向上する。
【0115】
ここで、タイミングT2では、上側センサ191によって材厚センサの励磁信号に基づく磁束が検知されるため、上側センサ191からの材厚センサのセンサ出力の減衰量が用いられる。しかし、横ずれ量Xに対する上側センサ191からの材厚センサのセンサ出力の減衰量の割合(減衰率)(γとする)は、横ずれ量に対する下側センサ192からの材厚センサのセンサ出力の減衰量の割合(減衰率)βと異なることが想定される。
【0116】
そこで、処理部470Aは、タイミングT1における幅寄せセンサのセンサ出力に基づいて、タイミングT1における硬貨の横ずれ量(第一の位置)を導出する。そして、処理部470Aは、タイミングT1における硬貨Cの横ずれ量Xと横ずれ量に対する下側センサ192からの材厚センサのセンサ出力の減衰量の割合(第一の減衰率)βとに基づいて、タイミングT1における材厚センサのセンサ出力Bを補正する。
【0117】
一方、処理部470Aは、タイミングT1における硬貨Cの横ずれ量(第一の位置)と、横ずれ量Xに対する上側センサ191からの材厚センサのセンサ出力の減衰量の割合(第二の減衰率)γとに基づいて、タイミングT2における材厚センサのセンサ出力Cを補正する。
【0118】
その後、処理部470Aは、補正後のタイミングT1における材厚センサのセンサ出力と、補正後のタイミングT2における材厚センサのセンサ出力とに基づいて、硬貨Cの材厚を導出する。
【0119】
例えば、タイミングT2における上側センサ191からの材厚センサのセンサ出力をCとし、搬送基準面113に沿って硬貨が搬送される場合における上側センサ191からの材厚センサのセンサ出力をC0とする。このとき、搬送基準面113に沿って硬貨が搬送される場合における上側センサ191からの材厚センサのセンサ出力C0は、上記の式(1)と以下の式(4)とを考慮すると、以下の式(5)に示されるように算出される。
【0120】
C=X*γ+C0・・・(4)
C0=C-X*γ=C-(A-A0)*γ/α・・・(5)
【0121】
図12は、横ずれ量に対するセンサ出力との関係の例を示す図である。
図12を参照すると、横ずれ量Xに対する上側センサ191からの材厚センサのセンサ出力のグラフが「上側センサ」として示されている。また、横ずれ量Xに対する下側センサ192からの材厚センサのセンサ出力のグラフが「下側センサ」として示されている。
図12に示されるように、例えば、上側センサ191と硬貨Cとの距離が下側センサ192と硬貨Cとの距離よりも小さい場合には、「上側センサ」からの材厚センサのセンサ出力は、「下側センサ」からの材厚センサのセンサ出力よりも大きく減衰することが考えられる。
【0122】
図13は、第1の実施形態に係るセンサ出力の補正例を示す図である。
図13を参照すると、
図12に示された場合と同様に、横ずれ量Xに対する上側センサ191からの材厚センサのセンサ出力の変化率(=減衰率の絶対値)「2」が、横ずれ量Xに対する下側センサ192からの材厚センサのセンサ出力の変化率「1」よりも大きくなっている。しかし、横ずれ量Xは、タイミングT1にしか得られていない。そのため、上側センサ191に対応する横ずれ量と下側センサ192に対応する横ずれ量としては、同じ値「1」が用いられている。
【0123】
このとき、一例として、上側センサ191からの材厚センサのセンサ出力の補正量は、上側センサ191からの材厚センサのセンサ出力に対応する変化率「2」と横ずれ量「1」との乗算によって「2」と算出される。また、補正後の上側センサ191からの材厚センサのセンサ出力は、補正前の上側センサ191からの材厚センサのセンサ出力「5」に補正量「2」が加算されることによって、「7」として算出され得る。
【0124】
同様に、一例として、下側センサ192からの材厚センサのセンサ出力の補正量は、下側センサ192からの材厚センサのセンサ出力に対応する変化率「1」と横ずれ量「1」との乗算によって「1」と算出される。また、補正後の下側センサ192からの材厚センサのセンサ出力は、補正前の下側センサ192からの材厚センサのセンサ出力「5」に補正量「1」が加算されることによって、「6」として算出され得る。これらの補正後のセンサ出力(硬貨の材厚)は、硬貨の鑑別に用いられ得る。
【0125】
図14は、第1の実施形態に係る上側センサ191からの材厚センサのセンサ出力と、下側センサ192からの材厚センサのセンサ出力との関係の例を示す図である。
図14を参照すると、センサ出力の「正常範囲」が示されている。また、材厚センサのセンサ出力は、「横ずれ量の変化」に伴って変化する。それに加えて、材厚センサのセンサ出力は、「硬貨浮きの変化」に伴って変化する。「横ずれ量の変化」に伴う材厚センサのセンサ出力の変化の方向と、「硬貨浮きの変化」に伴う材厚センサのセンサ出力の変化の方向とは、直交している。
【0126】
E0は、補正前の材厚センサのセンサ出力(「上側センサ」=5、「下側センサ」=5)を示す。E11は、上側センサ191からの材厚センサのセンサ出力の補正量「2」に従って、補正された後の材厚センサのセンサ出力(「上側センサ」=7、「下側センサ」=5)を示す。E21は、下側センサ192からの材厚センサのセンサ出力の補正量「1」に従って、補正された後の材厚センサのセンサ出力(「上側センサ」=7、「下側センサ」=6)を示す。
図14に示された例では、補正後の材厚センサのセンサ出力E21が「正常範囲」に収まるように補正されていることが把握される。
【0127】
(3.3.第1の実施形態のまとめ)
以上に説明したように、第1の実施形態によれば、上側センサ191と下側センサ192とによって、透過型の磁気センサと反射型の磁気センサとが実現され得る。そのため、磁気センサの製造コストを低減するとともに、磁気センサが実装されるスペースを低減することが可能となる。
【0128】
さらに、第1の実施形態によれば、幅寄せセンサによって検出された横ずれ量に基づいて、反射型の磁気センサによって検知された検知信号(センサ出力)が補正され得る。これによって、硬貨Cの中央付近が通過する位置の上方に搬送ベルト104を配置し、材厚センサが、硬貨Cの中央付近が通過する位置よりも搬送基準面113側に配置され、材厚センサから発生される磁束に掛かる硬貨Cの面積が変化してしまうことを防げるため、硬貨Cの特徴(材厚)の検出精度の低下が抑制され得る。なおかつ、硬貨Cの中央付近が通過する位置の上方に搬送ベルト104が配置され得るため、硬貨Cの搬送性能を向上させることが可能となる。
【0129】
<<4.第2の実施形態>>
まず、第2の実施形態について説明する。
【0130】
(4.1.第2の実施形態の概要)
まず、第2の実施形態の概要について説明する。
図15は、第2の実施形態の概要を説明するための図である。
図15に示したように、第2の実施形態における「タイミングT1」は、第1の実施形態における「タイミングT1」(
図7)と同様である。
【0131】
一方、「タイミングT2」においては、上側センサ191によって、材厚センサに対応する磁束が発信される(発生される)だけではなく、下側センサ192によって、幅寄せセンサに対応する磁束が発信される(発生される)。そして、「タイミングT2」においては、上側センサ191によって、硬貨Cから反射した材厚センサに対応する磁束が受信される(検知される)だけではなく、下側センサ192によって、硬貨Cを貫通した幅寄せセンサに対応する磁束が受信される(検知される)。
【0132】
以上、本発明の第2の実施形態の概要について説明した。
【0133】
(4.2.第2の実施形態の構成)
続いて、第2の実施形態の構成について説明する。
図16は、第2の実施形態に係る検出装置の構成例を示す図である。
図16を参照すると、第2の実施形態に係る検出装置40Bは、第1の実施形態と同様に、アナログ加算回路410と、上側センサ191と、下側センサ192と、アナログLPF441と、アナログHPF442と、増幅・波形整形回路451と、増幅・波形整形回路452と、A/D変換部460とを備える。
【0134】
そして、第2の実施形態に係る検出装置40Bは、第1の実施形態の検出装置40Aが備える、入力部420Aと、出力部430Aと、制御部400Aと、処理部470Aとの代わりに、入力部420Bと、出力部430Bと、制御部400Bと、処理部470Bとを備える。以下では、入力部420B、出力部430B、制御部400Bおよび処理部470Bについて主に説明する。
【0135】
(入力部420B)
入力部420Bには、アナログ加算回路410によって生成された合成励磁信号が入力される。
【0136】
例えば、入力部420Bは、制御部400Bによる制御に従って、(例えば、スイッチW23を上側センサ191側に接続させることによって)合成励磁信号を上側センサ191に入力して、上側センサ191に合成励磁信号に基づく磁束を発生させる。また、入力部420Bは、制御部400Bによる制御に従って(例えば、スイッチW23を下側センサ192側に接続させることによって)合成励磁信号を下側センサ192に入力して、下側センサ192による合成励磁信号に基づく磁束を発生させる。
【0137】
(出力部430B)
出力部430Bには、上側センサ191による検知結果と下側センサ192による検知結果とが入力される。
【0138】
例えば、出力部430Bは、制御部400Bによる制御に従って、(例えば、スイッチW33を上側センサ191側に接続させることによって)上側センサ191による検知結果をアナログLPF441に出力する。また、出力部430Bは、制御部400Bによる制御に従って、(例えば、スイッチW33を下側センサ192側に接続させることによって)下側センサ192による検知結果をアナログLPF441に出力する。
【0139】
さらに、出力部430Bは、制御部400Bによる制御に従って、(例えば、スイッチW34を上側センサ191側に接続させることによって)上側センサ191による検知結果をアナログHPF442に出力する。また、出力部430Bは、制御部400Bによる制御に従って、(例えば、スイッチW34を下側センサ192側に接続させることによって)下側センサ192による検知結果をアナログHPF442に出力する。
【0140】
(制御部400B)
図17は、第2の実施形態に係る制御部400Bの動作例を示すフローチャートである。
図17に示すように、S11~S14は、第1の実施形態におけるS11~S14(
図11)と同様に実行される。
【0141】
制御部400Bは、タイミングT1を基準として、硬貨Cの搬送量が所定の距離に到達したと判断した場合には(S14において「YES」)、
図15の「タイミングT2」に示した制御を行う。すなわち、制御部400Bは、合成励磁信号が上側センサ191に入力されるように入力部420Bを制御する(S25)。上側センサ191は、合成励磁信号に基づく磁界を発生させる。
【0142】
上側センサ191によって発生された材厚センサの励磁信号に基づく磁束に硬貨が掛かると、上側センサ191と下側センサ192との間の区間の磁界が無媒体状態から変化する。その磁界の変化が、上側センサ191および下側センサ192それぞれによって、無媒体状態と有媒体状態との出力電圧の変化として捉えられる。出力部430Bには、上側センサ191によって発生された合成励磁信号に基づく磁束の、上側センサ191による検知結果が入力される。また、出力部430Bには、上側センサ191によって発生された合成励磁信号に基づく磁束の、下側センサ192による検知結果が入力される。
【0143】
制御部400Bは、合成励磁信号に基づく磁束の上側センサ191による検知結果をアナログHPF442に出力するように出力部430Aを制御するとともに、合成励磁信号に基づく磁束の下側センサ192による検知結果をアナログLPF441に出力するように出力部430Bを制御する(S26)。アナログLPF441は、合成励磁信号に基づく磁束の下側センサ192による検知結果に基づいて、幅寄せセンサの検知信号を取得する。一方、アナログHPF442は、合成励磁信号に基づく磁束の上側センサ191による検知結果に基づいて、材厚センサの検知信号を取得する。
【0144】
第2の実施形態においては、幅寄せセンサの検知信号は、増幅・波形整形回路451によって、信号増幅および信号波形の整形が行われ、A/D変換部460によってデジタル形式に変換された後、タイミングT2における幅寄せセンサの検知信号(センサ出力)として処理部470Bによって取得される。一方、第1の実施形態と同様に、材厚センサの検知信号は、増幅・波形整形回路452によって、信号増幅および信号波形の整形が行われ、A/D変換部460によってデジタル形式に変換された後、タイミングT2における材厚センサの検知信号(センサ出力)として処理部470Bによって取得される。
【0145】
なお、
図17に示した例は、制御部400BによってS26が実行された後に、制御部400Bの動作が終了する例である。しかし、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、制御部400Bは、S26を実行した後、タイミングT2を基準として硬貨Cの搬送量が所定の距離に到達したか否かを判断する処理と、搬送量が所定の距離に到達した場合におけるS12~S14、S25、S26とを、1または複数回繰り返し実行してよい。
【0146】
(処理部470B)
第2の実施形態においては、タイミングT2における幅寄せセンサのセンサ出力も得られる。したがって、処理部470Bは、タイミングT1における材厚センサのセンサ出力と、タイミングT1における幅寄せセンサのセンサ出力と、タイミングT2における材厚センサのセンサ出力と、タイミングT2における幅寄せセンサのセンサ出力とに基づいて、硬貨Cの材厚を導出し得る。これによって、硬貨Cの材厚の検出に、タイミングT2における幅寄せセンサのセンサ出力も考慮されるため、タイミングT1からタイミングT2に至るまでに、硬貨Cの横ずれ量が変化した場合であっても、硬貨Cの材厚がより高精度に検出され得る。
【0147】
より詳細に、処理部470Bは、タイミングT1における幅寄せセンサのセンサ出力に基づいて、タイミングT1における硬貨の横ずれ量X1(第一の位置)を導出する。そして、処理部470Bは、タイミングT1における硬貨Cの横ずれ量X1と横ずれ量に対する下側センサ192からの材厚センサのセンサ出力の減衰量の割合(第一の減衰率)βとに基づいて、タイミングT1における材厚センサのセンサ出力Bを補正する。
【0148】
一方、処理部470Bは、タイミングT2における硬貨Cの横ずれ量X2(第二の位置)と、横ずれ量X2に対する上側センサ191からの材厚センサのセンサ出力の減衰量の割合(第二の減衰率)γとに基づいて、タイミングT2における材厚センサのセンサ出力Cを補正する。
【0149】
その後、処理部470Bは、補正後のタイミングT1における材厚センサのセンサ出力と、補正後のタイミングT2における材厚センサのセンサ出力とに基づいて、硬貨Cの材厚を導出する。
【0150】
図18は、第2の実施形態に係るセンサ出力の補正例を示す図である。
図18を参照すると、第1の実施形態(
図13)とは異なり、横ずれ量として、タイミングT1における横ずれ量「1」と、タイミングT2における横ずれ量「3」とが得られている。そのため、第2の実施形態においては、下側センサ192からの材厚センサのセンサ出力の補正量は、下側センサ192からの材厚センサのセンサ出力に対応する変化率「1」と横ずれ量「3」との乗算によって「3」と算出される。また、補正後の下側センサ192からの材厚センサのセンサ出力は、補正前の下側センサ192からの材厚センサのセンサ出力「5」に補正量「3」が加算されることによって、「8」として算出され得る。
【0151】
一方、補正後の上側センサ191からの材厚センサのセンサ出力は、第1の実施形態と同様に、補正前の上側センサ191からの材厚センサのセンサ出力「5」に補正量「2」が加算されることによって、「7」として算出され得る。これらの補正後のセンサ出力(硬貨の材厚)は、硬貨の鑑別に用いられ得る。
【0152】
図19は、上側センサ191からの材厚センサのセンサ出力と、下側センサ192からの材厚センサのセンサ出力との関係の例を示す図である。
図19を参照すると、第1の実施形態(
図14)と同様に、センサ出力の「正常範囲」が示されている。E0およびE11は、第1の実施形態(
図14)におけるE0およびE11と同じ位置である。E22は、下側センサ192からの材厚センサのセンサ出力の補正量「3」に従って、補正された後の材厚センサのセンサ出力(「上側センサ」=7、「下側センサ」=8)を示している。第1の実施形態(
図14)におけるE21と比較して、補正後の材厚センサのセンサ出力E22が、「正常範囲」のより中央に位置するように補正されていることが把握される。
【0153】
(4.3.第2の実施形態のまとめ)
以上に説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態が奏する効果と同様の効果を奏する。さらに、第2の実施形態によれば、硬貨Cの材厚の検出に、タイミングT2における幅寄せセンサのセンサ出力も考慮される。したがって、タイミングT1からタイミングT2に至るまでに、硬貨Cの横ずれ量が変化した場合であっても、硬貨Cの材厚がより高精度に検出され得る。
【0154】
<5.変形例>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0155】
例えば、第1の実施形態においては、互いに周波数の異なる材厚センサの励磁信号と幅寄せセンサの励磁信号との合成励磁信号をセンサに入力させ、センサによる検知結果に基づいて材厚センサの検知信号と幅寄せセンサの検知信号とに分離する例について説明した。しかし、材厚センサの励磁信号と幅寄せセンサの励磁信号とに共通の励磁信号がセンサに入力され、センサによる検知結果は、分離されずにそのまま材厚センサの検知信号または幅寄せセンサの検知信号として出力される変形例も想定され得る。
【0156】
したがって、以下では、かかる第1の実施形態の変形例について、
図20および
図21を参照しながら説明する。また、第2の実施形態においても、同様の変形例が想定され得る。したがって、第1の実施形態の変形例に続いて、第2の実施形態の変形例について、
図22および
図23を参照しながら説明する。
【0157】
(5.1.第1の実施形態の変形例の構成)
続いて、第1の実施形態の変形例の構成について説明する。
図20は、第1の実施形態の変形例に係る検出装置の構成例を示す図である。
図20を参照すると、第1の実施形態に係る検出装置40Cは、入力部420Bと、上側センサ191と、下側センサ192と、出力部430Bと、増幅・波形整形回路451と、増幅・波形整形回路452と、A/D変換部460と、制御部400Cと、処理部470Aとを備える。以下では、制御部400Cについて主に説明する。
【0158】
(制御部400C)
図21は、第1の実施形態の変形例に係る制御部400Cの動作例を示すフローチャートである。
図21に示すように、釣銭機1の電源がONにされない間は(S11において「NO」)、S11に動作が戻る。一方、釣銭機1の電源がONにされた場合には(S11において「YES」)、第1の実施形態と同様に、無媒体状態における材質センサ(受信側材質センサ161および発信側材質センサ162)の出力電圧が検知される。
【0159】
さらに、制御部400Cは、
図7の「タイミングT1」に示した制御を行う。すなわち、制御部400Cは、材厚センサと幅寄せセンサとに共通の励磁信号(以下、単に「共通の励磁信号」とも言う。)が下側センサ192に入力されるように入力部420Bを制御する(S32)。一方、制御部400Cは、共通の励磁信号が上側センサ191に入力されないように入力部420Bを制御する。下側センサ192は、共通の励磁信号に基づく磁界を発生させる。このとき、上側センサ191および下側センサ192の無媒体状態における出力電圧も同様の手法により検知される。
【0160】
釣銭機1において所定の取引が開始されると、第1の実施形態と同様に、硬貨の材質が検出され得る。続いて、硬貨が搬送ベルト104により搬送方向にさらに搬送され、外径センサ(受信側外径センサ141および発信側外径センサ142)の磁束に掛かると、第1の実施形態と同様に、受信側外径センサ141によって、無媒体状態と有媒体状態との出力電圧の変化が捉えられる。
【0161】
一方、下側センサ192によって発生された共通の励磁信号に基づく磁束に硬貨が掛かると、上側センサ191と下側センサ192との間の区間の磁界が無媒体状態から変化する。その磁界の変化が、上側センサ191および下側センサ192によって、無媒体状態と有媒体状態との出力電圧の変化として捉えられる。出力部430Bには、下側センサ192によって発生された共通の励磁信号に基づく磁束の、上側センサ191による検知結果が入力される。また、出力部430Bには、下側センサ192によって発生された共通の励磁信号に基づく磁束の、下側センサ192による検知結果が入力される。
【0162】
制御部400Cは、共通の励磁信号に基づく磁束の下側センサ192による検知結果を材厚センサの検知信号として増幅・波形整形回路452に出力するように出力部430Bを制御するとともに、共通の励磁信号に基づく磁束の上側センサ191による検知結果を幅寄せセンサの検知信号として増幅・波形整形回路451に出力するように出力部430Bを制御する(S33)。
【0163】
幅寄せセンサの検知信号は、増幅・波形整形回路451によって、信号増幅および信号波形の整形が行われ、A/D変換部460によってデジタル形式に変換された後、タイミングT1における幅寄せセンサの検知信号(センサ出力)として、処理部470Aによって取得される。一方、材厚センサの検知信号は、増幅・波形整形回路452によって、信号増幅および信号波形の整形が行われ、A/D変換部460によってデジタル形式に変換された後、タイミングT1における材厚センサの検知信号(センサ出力)として処理部470Aによって取得される。
【0164】
続いて、制御部400Cは、タイミングT1を基準として、硬貨Cの搬送量が所定の距離に到達したか否かを判断する(S14)。制御部400Cが、タイミングT1を基準として、硬貨Cの搬送量が所定の距離に到達していないと判断する間は(S14において「NO」)、動作がS14に戻る。一方、制御部400Cは、タイミングT1を基準として、硬貨Cの搬送量が所定の距離に到達したと判断した場合には(S14において「YES」)、
図7の「タイミングT2」に示した制御を行う。
【0165】
すなわち、制御部400Cは、共通の励磁信号が上側センサ191に入力されるように入力部420Bを制御する(S35)。一方、制御部400Cは、共通の励磁信号が下側センサ192に入力されないように入力部420Bを制御する。上側センサ191は、共通の励磁信号に基づく磁界を発生させる。
【0166】
上側センサ191によって発生された共通の励磁信号に基づく磁束に硬貨が掛かると、上側センサ191と下側センサ192との間の区間の磁界が無媒体状態から変化する。その磁界の変化が、上側センサ191によって、無媒体状態と有媒体状態との出力電圧の変化として捉えられる。出力部430Bには、上側センサ191によって発生された共通の励磁信号に基づく磁束の、上側センサ191による検知結果が入力される。また、出力部430Bには、上側センサ191によって発生された共通の励磁信号に基づく磁束の、下側センサ192による検知結果が入力される。
【0167】
制御部400Cは、共通の励磁信号に基づく磁束の上側センサ191による検知結果を増幅・波形整形回路452に出力するように出力部430Bを制御するとともに、共通の励磁信号に基づく磁束の下側センサ192による検知結果の出力を停止するように出力部430Bを制御する(S36)。
【0168】
タイミングT2における幅寄せセンサの検知信号は、処理部470Aによって取得されない。一方、材厚センサの検知信号は、増幅・波形整形回路452によって、信号増幅および信号波形の整形が行われ、A/D変換部460によってデジタル形式に変換された後、タイミングT2における材厚センサの検知信号(センサ出力)として処理部470Aによって取得される。
【0169】
なお、
図21に示した例は、制御部400CによってS36が実行された後に、制御部400Cの動作が終了する例である。しかし、第1の実施形態と同様に、制御部400Cは、S36を実行した後、タイミングT2を基準として硬貨Cの搬送量が所定の距離に到達したか否かを判断する処理と、搬送量が所定の距離に到達した場合におけるS32~S36とを、1または複数回繰り返し実行してよい。
【0170】
(5.2.第2の実施形態の変形例の構成)
続いて、第2の実施形態の変形例の構成について説明する。
図22は、第2の実施形態の変形例に係る検出装置の構成例を示す図である。
図22を参照すると、第2の実施形態に係る検出装置40Dは、入力部420Bと、上側センサ191と、下側センサ192と、出力部430Bと、増幅・波形整形回路451と、増幅・波形整形回路452と、A/D変換部460と、制御部400Dと、処理部470Bとを備える。以下では、制御部400Dについて主に説明する。
【0171】
(制御部400D)
図23は、第2の実施形態の変形例に係る制御部の動作例を示すフローチャートである。
図23に示すように、S11、S32、S33は、第1の実施形態の変形例におけるS111、S32、S33(
図21)と同様に実行される。
【0172】
続いて、制御部400Dは、タイミングT1を基準として、硬貨Cの搬送量が所定の距離に到達したか否かを判断する(S14)。制御部400Dが、タイミングT1を基準として、硬貨Cの搬送量が所定の距離に到達していないと判断する間は(S14において「NO」)、動作がS14に戻る。一方、制御部400Dは、タイミングT1を基準として、硬貨Cの搬送量が所定の距離に到達したと判断した場合には(S14において「YES」)、
図15の「タイミングT2」に示した制御を行う。
【0173】
すなわち、制御部400Dは、共通の励磁信号が上側センサ191に入力されるように入力部420Bを制御する(S35)。一方、制御部400Dは、共通の励磁信号が下側センサ192に入力されないように入力部420Bを制御する。上側センサ191は、共通の励磁信号に基づく磁界を発生させる。
【0174】
上側センサ191によって発生された共通の励磁信号に基づく磁束に硬貨が掛かると、上側センサ191と下側センサ192との間の区間の磁界が無媒体状態から変化する。その磁界の変化が、上側センサ191によって、無媒体状態と有媒体状態との出力電圧の変化として捉えられる。出力部430Bには、上側センサ191によって発生された共通の励磁信号に基づく磁束の、上側センサ191による検知結果が入力される。また、出力部430Bには、上側センサ191によって発生された共通の励磁信号に基づく磁束の、下側センサ192による検知結果が入力される。
【0175】
制御部400Dは、共通の励磁信号に基づく磁束の上側センサ191による検知結果を増幅・波形整形回路452に出力するように出力部430Bを制御するとともに、共通の励磁信号に基づく磁束の下側センサ192による検知結果を増幅・波形整形回路451に出力するように出力部430Bを制御する(S46)。
【0176】
幅寄せセンサの検知信号は、増幅・波形整形回路451によって、信号増幅および信号波形の整形が行われ、A/D変換部460によってデジタル形式に変換された後、タイミングT2における幅寄せセンサの検知信号(センサ出力)として処理部470Bによって取得される。一方、タイミングT2における幅寄せセンサの検知信号として処理部470Bによって取得される。一方、材厚センサの検知信号は、増幅・波形整形回路452によって、信号増幅および信号波形の整形が行われ、A/D変換部460によってデジタル形式に変換された後、タイミングT2における材厚センサの検知信号(センサ出力)として処理部470Bによって取得される。
【0177】
なお、
図23に示した例は、制御部400DによってS46が実行された後に、制御部400Dの動作が終了する例である。しかし、第2の実施形態と同様に、制御部400Dは、S46を実行した後、タイミングT2を基準として硬貨Cの搬送量が所定の距離に到達したか否かを判断する処理と、搬送量が所定の距離に到達した場合におけるS32、S33、S14、S35、S46を、1または複数回繰り返し実行してよい。
【符号の説明】
【0178】
40A、40B 検出装置
100 硬貨鑑別装置
191 上側センサ
192 下側センサ
400A、400B 制御部
420A、420B 入力部
430A、430B 出力部
441 アナログLPF
442 アナログHPF
470A、470B 処理部