(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】放射線検出器
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20240903BHJP
G01T 1/202 20060101ALI20240903BHJP
A61B 6/42 20240101ALI20240903BHJP
【FI】
G01T1/20 L
G01T1/20 E
G01T1/20 G
G01T1/202
A61B6/42 500S
(21)【出願番号】P 2020136141
(22)【出願日】2020-08-12
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 浩
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-101053(JP,A)
【文献】特開2014-006233(JP,A)
【文献】特開2019-196944(JP,A)
【文献】特開2015-200606(JP,A)
【文献】特開2000-028736(JP,A)
【文献】特開2009-232257(JP,A)
【文献】特開2013-250103(JP,A)
【文献】特開2011-058999(JP,A)
【文献】特開2004-064087(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0320495(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00-1/16,
1/167-7/12
A61B 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、放射線を光に変換する波長変換部と、前記光を電気信号に変換する光電変換部で構成される放射線検出部と、電子回路基板とを備える放射線検出器であって、
前記光電変換部が、可撓性基板を備え、前記可撓性基板の面上に少なくとも複数の半導体素子を有しており、
当該複数の半導体素子が、前記可撓性基板の前記波長変換部と接する撮像面に配列されており、
前記放射線検出部が、前記電子回路基板側の面に、発泡体で形成されている支持部材を備え、
前記電子回路基板が、複数の層を有し、
前記複数の層のうち少なくとも1層が、グランド層であり、
前記電子回路基板の同じ面に、駆動時に、熱を発生する電気・電子部品と磁界を発生する電気・電子部品が設けら
れ、
前記
熱を発生する電気・電子部品と前記磁界を発生する電気・電子部品が、前記電子回路基板の前記放射線検出部側と反対側の面に設けられ
、かつ、
前記電子回路基板と前記放射線検出部とが、前記発泡体の基台の表面と裏面のそれぞれ逆側に固定されている
ことを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
前記グランド層が、筐体のグランドと接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記波長変換部が、シンチレータを備えている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記シンチレータにヨウ化セシウム結晶(CsI)が用いられている
ことを特徴とする請求項
3に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記光電変換部が、前記可撓性基板の面上に、少なくとも複数の光センサの機能を有する光ダイオードと複数のアドレス指定可能な薄膜トランジスタ(TFT)が配列された光センサパネルの構成を有している
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線検出器に関する。より詳しくは、製品の軽量化と内部電子回路に備えられた電気・電子部品に起因する熱及び電磁界の画像に対する影響の低減化とを両立させた放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線を光に変換する波長変換素子と前記光を電気信号に変換する光電変換素子とを含む放射線検出部及び電子回路基板を備える放射線検出器(Flat Panel Detector:FPD)が従来知られている。
従来の放射線検出器は、センサパネルが主にガラスで形成されていた。
このため、例えばベッドに横たわる被検者の下に放射線検出器を敷き被検者の上方から放射線を照射して撮影するような場合に、放射線検出器に被検者の荷重がかかることで放射線検出器がたわみ、中のセンサパネルが割れてしまう可能性があった。
【0003】
また、持ち歩き時に放射線検出器を誤ってぶつけたり落下させたりすることで、放射線検出器が衝撃を受け、センサパネルが割れてしまう可能性もあった。
上記のような問題を解決するためには、製品を軽量化することや、柔軟性のある部材を用いることが重要である。
【0004】
上記のように、従来の放射線検出器における放射線検出部には、ガラス製の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、「TFT」と略称する。)センサパネルが用いられていたが、これを可撓性を有するTFTセンサパネル(「フレキシブルTFTセンサパネル」ともいう。)とすることで、製品を軽量化することができ、落下衝撃を抑えることができ、堅牢性を高めることができる。
【0005】
しかし、可撓性TFTセンサパネルに用いられている可撓性基材は、表面に画素を形成するため、その他構成部材に比べて熱膨張係数が大きいという特徴がある。
そのため、可撓性基材が、大きな電流を消費して発熱する電気・電子部品から熱を受けた場合、局所的に膨張し、放射線検出器の波長変換部(例えばシンチレータ)から剥離することがあり、また、画素に熱ノイズやオフセットが生じるため画像に影響がでるという問題を生じることが、本発明者の検討で明らかになった。
【0006】
その他、次のような問題が生じるということも明らかになった。
すなわち、電気・電子部品が、例えばDC-DC電源回路で使用されるインダクタの場合には、熱だけでなく交流磁界も発生し、交流磁界が画素読み出し信号線に作用して交流電流ノイズを発生させ、交流電流がセンサ信号線に誘導電流を生じさせ、信号線が持つインピーダンスにより、画素電圧値に変換されて、画像に横すじが現れることがある。
また、交流磁界から交流電界が生じて寄生容量を介して画素読み出し信号線にノイズとして伝わることもある。
【0007】
上記のような問題を解決するため、熱の影響に関して一般的には、発熱を抑制するために、例えば部材として熱拡散材を追加して熱を拡散させること、断熱材を挿入して熱の伝導を抑制すること、充電時間が長くなってしまうトレードオフを許容して充電電流を絞ること、及び通信機能の通信速度を落とすこと、CPUの演算処理など、処理時間が長くなってしまうトレードオフを許容して処理速度を落とす等が行われてきた。
【0008】
また、電磁界の影響に関して一般的には、高透磁率シート又は導体板を追加して電磁界を遮蔽したりすることで悪影響を低減すること等が行われてきた。
【0009】
特許文献1には、断熱材とシールド材を使用して、TFTセンサパネルに対する電気・電子部品からの熱と電磁界の影響を低減する技術が開示されている。
しかし、金属製の筐体等を使用していて堅牢ではあるが、製品重量が重くなるという問題があった。
【0010】
特許文献2には、可撓性基板上に配置された光センサ・アレイにシンチレータが光学的に結合された構成の放射線イメージャが、可撓性がありかつ堅牢性を有するイメージャとして開示されている。
しかし、上記イメージャでは、熱と電磁界の影響を低減することについては考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2000-116633号公報
【文献】特開2004-64087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、製品の軽量化と内部電子回路に備えられた電気・電子部品に起因する熱及び電磁界の画像に対する影響の低減化とを両立させた放射線検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、放射線検出器の電子回路基板中に設けられる電気・電子部品の配置等が放射線画像等に重大な影響を与えることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0014】
1.少なくとも、放射線を光に変換する波長変換部と、前記光を電気信号に変換する光電変換部で構成される放射線検出部と、電子回路基板とを備える放射線検出器であって、
前記光電変換部が、可撓性基板を備え、前記可撓性基板の面上に少なくとも複数の半導体素子を有しており、
当該複数の半導体素子が、前記可撓性基板の前記波長変換部と接する撮像面に配列されており、
前記放射線検出部が、前記電子回路基板側の面に、発泡体で形成されている支持部材を備え、
前記電子回路基板が、複数の層を有し、
前記複数の層のうち少なくとも1層が、グランド層であり、
前記電子回路基板の同じ面に、駆動時に、熱を発生する電気・電子部品と磁界を発生する電気・電子部品が設けられ、
前記熱を発生する電気・電子部品と前記磁界を発生する電気・電子部品が、前記電子回路基板の前記放射線検出部側と反対側の面に設けられ、かつ、
前記電子回路基板と前記放射線検出部とが、前記発泡体の基台の表面と裏面のそれぞれ逆側に固定されている
ことを特徴とする放射線検出器。
【0018】
2.前記グランド層が、筐体のグランドと接続されている
ことを特徴とする第1項に記載の放射線検出器。
【0019】
3.前記波長変換部が、シンチレータを備えている
ことを特徴とする第1項又は第2項に記載の放射線検出器。
【0020】
4.前記シンチレータにヨウ化セシウム(CsI)結晶が用いられていることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の放射線検出器。
【0021】
5.前記光電変換部が、前記可撓性基板の面上に、少なくとも複数の光センサの機能を有する光ダイオードと複数のアドレス指定可能な薄膜トランジスタ(TFT)が配列された光センサパネルの構成を有している
ことを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の放射線検出器。
【発明の効果】
【0022】
本発明の上記手段により、製品の軽量化と内部電子回路に備えられた電気・電子部品に起因する熱及び電磁界の画像に対する影響の低減化とを両立させた放射線検出器を提供することができる。
【0023】
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、必ずしも明確にはなっていない面があるが、以下のように推察している。
【0024】
製品の軽量化については、一般に、熱・電磁界遮蔽対策部材を使わない手段が考えられるが、本発明においては、電気・電子部品を、前記電子回路基板の前記放射線検出部側と反対側の面に設けることによって、電気・電子部品に起因する熱及び電磁界の画像に対する影響を低減化するとともに、熱・電磁界遮蔽対策部材を使わないことができ、それにより軽量化が実現できたと考えられる。
また、上記方法により電気・電子部品に起因する熱の影響を低減化できたことから、放射線検出部の波長変換部と光電変換部とを含むセンサパネルの熱膨張を低減でき、その結果、波長変換部(例えばシンチレータ)の剥離を防止することが実現できたと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図3】本発明の第1,第2実施形態に係る放射線検出器の斜視図
【
図4】
図3の放射線検出器(第1実施形態の場合)のA-A断面図
【
図6】
図3の放射線検出器の一部(光電変換部)の一例を示す平面図
【
図7】
図3の放射線検出器が備える支持部材の一例を示す側面図
【
図8】
図3の放射線検出器の製造途中の状態を示す側面図
【
図9】
図3の放射線検出器の製造途中の状態を示す斜視図
【
図10】(a)は取付部材の一例を示す斜視図、(b)は支持部材に固定された状態の(a)の取付部材を示す断面図
【
図11】(a)は取付部材の一例を示す斜視図、(b)は支持部材に固定された状態の(a)の取付部材を示す断面図
【
図12】(a)は取付部材の一例を示す斜視図、(b)~(d)は支持部材に固定された状態の(a)の取付部材を示す断面図
【
図14】
図3の放射線検出器(第2実施形態の場合)のA-A断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の放射線検出器は、少なくとも、放射線を光に変換する波長変換部と、前記光を電気信号に変換する光電変換部で構成される放射線検出部と、電子回路基板とを備える放射線検出器であって、前記光電変換部が、可撓性基板を備え、前記可撓性基板の面上に少なくとも複数の半導体素子を有しており、当該複数の半導体素子が、前記可撓性基板の前記波長変換部と接する撮像面に配列されており、前記放射線検出部が、前記電子回路基板側の面に、発泡体で形成されている支持部材を備え、前記電子回路基板が、複数の層を有し、前記複数の層のうち少なくとも1層が、グランド層であり、前記電子回路基板の同じ面に、駆動時に、熱を発生する電気・電子部品と磁界を発生する電気・電子部品が設けられ、前記熱を発生する電気・電子部品と前記磁界を発生する電気・電子部品が、前記電子回路基板の前記放射線検出部側と反対側の面に設けられ、かつ、前記電子回路基板と前記放射線検出部とが、前記発泡体の基台の表面と裏面のそれぞれ逆側に固定されていることを特徴とする。
この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
【0027】
本発明の実施形態としては、前記電子回路基板の同じ面に、駆動時に、熱を発生する電気・電子部品と磁界を発生する電気・電子部品が設けられている。
【0028】
また、前記放射線検出部が、前記電子回路基板側の面に、発泡体で形成されている支持部材を備えており、断熱性に優れ、絶縁体でもある発泡材により熱や磁界の影響を低減化できるとともに、軽量化できる。
【0029】
さらに、前記電子回路基板が、複数の層を有し、前記複数の層のうち少なくとも1層が、グランド層であることで、熱拡散と磁界遮蔽に優れる。
なお、前記グランド層が、筐体のグランドと接続されていることが、電界遮蔽の観点から好ましい。
【0030】
本発明の実施形態においては、前記波長変換部が、シンチレータを備えていることが、軽量化等の観点から好ましい。
【0031】
前記シンチレータにヨウ化セシウム(CsI)結晶が用いられていることが、効果発現の観点から好ましい。
【0032】
また、前記光電変換部が、前記可撓性基板の面上に、少なくとも複数の光センサの機能を有する光ダイオードと複数のアドレス指定可能な薄膜トランジスタ(TFT)が配列された光センサパネルの構成を有していることが、軽量化と柔軟性等の観点から好ましい。
【0033】
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0034】
[本発明の放射線検出器の概要]
本発明の放射線検出器は、少なくとも、放射線を光に変換する波長変換部と、前記光を電気信号に変換する光電変換部で構成される放射線検出部と、電子回路基板とを備える放射線検出器であって、前記光電変換部が、可撓性基板を備え、前記可撓性基板の面上に少なくとも複数の半導体素子を有しており、当該複数の半導体素子が、前記可撓性基板の前記波長変換部と接する撮像面に配列されており、前記放射線検出部が、前記電子回路基板側の面に、発泡体で形成されている支持部材を備え、前記電子回路基板が、複数の層を有し、前記複数の層のうち少なくとも1層が、グランド層であり、前記電子回路基板の同じ面に、駆動時に、熱を発生する電気・電子部品と磁界を発生する電気・電子部品が設けられ、前記熱を発生する電気・電子部品と前記磁界を発生する電気・電子部品が、前記電子回路基板の前記放射線検出部側と反対側の面に設けられ、かつ、前記電子回路基板と前記放射線検出部とが、前記発泡体の基台の表面と裏面のそれぞれ逆側に固定されていることを特徴とする。
【0035】
図1は、本発明の放射線検出器の一例を示す概念図である。また、
図2は、従来の放射線検出器の一例を示す概念図である。
【0036】
図1に示すように、本発明の放射線検出器は、従来の放射線検出器と異なり、駆動時に熱又は磁界を発生する電気・電子部品を、前記電子回路基板の前記放射線検出部側と反対側の面に設けることにより、電気・電子部品から発せられた熱や磁界の影響を直接的には放射線検出部に与えない配置構成になっている。
したがって、波長変換部及び光電変換部を含むセンサパネルの熱による局所的な膨張を抑制することができ、シンチレータ等の波長変換部との貼合界面での剥離を防ぐことができる。
【0037】
なお、
図1及び
図2において電気・電子部品1(E1)は発熱部品であり、電気・電子部品2(E2)は磁界発生部品である。
【0038】
ここで、「発熱部品」とは、電気・電子部品のうち放射線検出器全体に与える熱の影響が他の電気・電子部品に比べて著しく大きいものをいい、状況に応じて発熱部品を磁界発生部品ととらえることもできる。
【0039】
また、「磁界発生部品」とは、電気・電子部品のうち放射線検出器全体に与える磁界の影響が他の電気・電子部品に比べて著しく大きいものをいい、状況に応じて磁界発生部品を発熱部品ととらえることもできる。
【0040】
1.放射線検出部
本発明に係る放射線検出部は、少なくとも、波長変換部と光電変換部で構成されていることを特徴とする。
後述するように、パネル状の波長変換部と光電変換部とが積み重ねられて積層体のセンサパネルを構成する形態であることが好ましい。
以下において、各種機能を有する主要な構成部について説明する。
【0041】
(1.1)波長変換部
波長変換部は、放射線を、可視光を含む別の波長の電磁波(光)に変換する機能を有する素子、例えばシンチレータ等を備えていることを要する。
ここで、「シンチレータ」とは、放射線により励起されることにより蛍光を発光する特性を示す物質の総称である。
シンチレータとしては、従来、放射線の検出のために用いられている各種シンチレータを用いることができる。
X線などの放射線を可視光などの異なる波長に変換することが可能な物質であれば、シンチレータとして用いることができる。
これらの物質の中でも、例えばヨウ化セシウム(CsI)は、X線などの放射線エネルギーを可視光に変換する効率が比較的高い。
ヨウ化セシウム(CsI)は蒸着法により、柱状結晶から構成されるシンチレータ薄膜を形成することができる。
柱状結晶は光学特性に優れる反面、熱膨張率(54×10-6/C)が小さい。
【0042】
(1.2)光電変換部
本発明に係る光電変換部は、光電効果により、物質の電気的性質や電子の状態が変化することを利用して、光の持つ情報を電気信号に変換する機能を有する。
本発明に係る光電変換部は、可撓性基板の面上に少なくとも複数の半導体素子を有していることを特徴とする。
【0043】
ここでいう「半導体素子」とは、光を電気信号に変換できる光導電素子、光ダイオード(「フォトダイオード」ともいう。)及びフォトトランジスタ等、並びに電子回路において、電流の増幅やスイッチ等の機能を有するトランジスタ等である。
【0044】
本発明の実施形態としては、例えば前記光電変換部が、前記可撓性基板の面上に、少なくとも複数の光センサの機能を有する光ダイオード(フォトダイオード)と複数のアドレス指定可能な薄膜トランジスタ(TFT)が配列された光センサパネルの構成を有しているいわゆる「TFTセンサパネル」又は「光センサ・アレイ」であることが好ましい。
【0045】
従来の放射線検出器における放射線検出部のTFTセンサパネルは、ガラス製の基板を用いていた。
しかし、TFTセンサパネルを可撓性基板を用いた上記のような構成の可撓性(フレキシブル)TFTセンサパネルにすることが、落下衝撃等によるガラス破損等を防ぎ、堅牢性及び柔軟性が高くなる上に、軽量化できる点で好ましい。
【0046】
一方、可撓性基板は、一般に、その他構成部材に比べて熱膨張係数が大きい。
そのため、大きな電流を消費して発熱する電気部品からの熱を受けた場合、局所的に膨張し、シンチレータ等の波長変換部が剥離することがある。
【0047】
しかし、本発明の放射線検出器では、
図1に示すように、電気・電子部品を放射線検出部側と反対側の面に設けることにより、可撓性基板を有する光電変換部に対する熱の影響は、低減することができる。
また、同時に磁界の影響も低減することができる。
【0048】
さらに、熱や磁界の影響を低減するために、従来のような熱拡散材、断熱材、高透磁率シート等を備える必要性が軽減でき、製品の軽量化ができる。
【0049】
2.電子回路基板と電気・電子部品
本発明に係る「電子回路基板」とは、受動素子(抵抗、コイル、コンデンサ等)と能動素子(トランジスタ、IC、ダイオード等)を使って構成された回路を備えた基板をいう。
具体的には、走査回路、読み出し回路、無線通信回路、制御回路、電源回路、バッテリー、コネクター等の電子回路又は電気回路を備えた基板をいう。
【0050】
本発明に係る「電気・電子部品」とは、上記電子回路を構成する又は関連して用いられる電子部品及び電気部品をいう。
【0051】
「電気・電子部品」としては、例えば受動部品として、DC-DC電源回路で使用されるインダクタを挙げることができる。
大きな電流を流す場合は、インダクタが持つ抵抗成分により、ジュール熱が発生する。
また、DC-DC電源回路の後段にある回路を駆動する際に、回路の負荷が時間的に変化することで、交流磁界が発生し、交流磁界が画素読み出し信号線に作用して誘導電流を生じさせ、信号線が持つインピーダンスにより、画素電圧値に変換されて、画像に横すじが現れることがある。
【0052】
また、能動部品として、無線通信用LSIを挙げることができる。
送信時には大きな電流を消費し、発熱源になる。
一方、受信時には比較的消費電流が小さい。
【0053】
TCP(Transmission Control Protocol)のように、通信状況を送信側と受信側で相互にハンドシェークで確認し合いながら通信をする場合、送信と受信を交互に行うため、大きな交流電流が発生し、前記DC-DC電源回路で使用されるインダクタの説明と同様の作用機序で画像に横すじが現れることがある。
【0054】
(グランド層)
本発明の実施形態としては、前記電子回路基板が複数の層を有し、前記複数の層のうち少なくとも1層がグランド層すなわちベタグランド(ベタGND)である。
ここで、本発明に係る「グランド層」とは、電子回路を動作させる上での基準電位となる部分(層)をいう。
すなわち、電子回路において、基準電位との電位差が0Vである部分のことである。
【0055】
なお、「ベタグランド」とは、電子回路基板が有する複数の層のうち絶縁層に設けられ、面的な広がりを有するグランド電極である。
実施形態としては、前記グランド層が、筐体のグランドと接続されていることが電界遮蔽の観点から好ましい。
【0056】
3.支持部材
本発明に係る放射線検出部は、電子回路基板側の面に、発泡体で形成されている支持部材を備えている形態であり、電気部品の影響の軽減及び放射線検出器の軽量化の点で優れる。
【0057】
発泡体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリウレタン、アクリル、エポキシ、これらの樹脂のうちの少なくとも二種以上が混合された樹脂からなる発泡体であることが好ましい。
【0058】
一般に、軟質樹脂は、硬質樹脂に比べて剛性が低い。一方、軟質樹脂からなる発泡体は、発泡倍率が低いほど剛性が高いことが知られている。
このため、発泡体を製造する際の発泡倍率を調整することにより必要な剛性を得ることができる。
【0059】
発泡体は軽量であり、断熱性に優れ絶縁体でもあるため、本発明に係る電子回路基板と放射線検出部とを、発泡体の基台の表面と裏面のそれぞれ逆側に固定することで、熱・磁界発生源と画素との間の断熱又は絶縁距離を離すことができ、軽量かつ熱拡散可能であり、電磁界遮蔽もかね備えさせることができる。
【0060】
4.実施形態
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
しかし、本発明は、図面に図示されたものに限定されるものではない。
【0061】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態について、
図3~
図13を参照しながら説明する。
図3は、放射線検出器(以下、「検出器100」と略記する。)の斜視図である。
図3に示すように、本実施形態に係る検出器100は、例えば筐体110と、内部モジュール120と、を備えている。
さらに、検出器100は、各種スイッチS(電源スイッチ、操作スイッチ等)、インジケーターI等をも備えている。
以下において、当該検出器100の各構成要素について説明する。
【0062】
[1]筐体
図3において、筐体110は、放射線を光に変換する波長変換部と、前記光を電気信号に変換する光電変換部で構成される放射線検出部、電子回路基板及び電気・電子部品等を含む内部モジュール120を収容するための箱、すなわちフレームを含めた外装である。
図4は、
図3の放射線検出器(第1実施形態の場合)のA-A断面図であり、
図4に示すように、筐体110は、箱体1と蓋体2とを備えている。
本実施形態に係る筐体110は、矩形のパネル状をしている。
【0063】
〔1.1〕箱体
図4に示すように、箱体1は、前面部11を有している。
また、本実施形態に係る箱体1は、側面部12をさらに有している。
本実施形態に係る前面部11及び側面部12は一体に形成されている。
なお、前面部11と側面部12とは別部材であってもよい。
【0064】
(1.1.1)前面部
図4に示すように、前面部11は、内部モジュール120が備える後述する撮像面312gと対向するとともに当該撮像面312g(
図5及び
図6参照。)と平行に広がっている。
なお、
図5は、
図4の部分断面図である。
また、前面部11の外側表面が検出器100(筐体110)の放射線入射面11a(前面)となる。
【0065】
本実施形態に係る前面部11は、矩形の板状に形成されている。
本実施形態に係る放射線入射面11aには、センサパネル31(
図4及び
図5参照。)の有効画像領域(複数の半導体素子312b(
図6参照。)が配列された領域)の範囲が図示しない枠で示されている。
なお、
図6は、
図3の放射線検出器の一部(光電変換部)の一例を示す平面図である。
【0066】
前面部11は、放射線を透過する材料で形成されている。
本実施形態に係る筐体110の材料は、炭素繊維強化樹脂(Carbon Fiber Reinforced Plastic:CFRP)、ガラス繊維強化樹脂(Glass Fiber Reinforced Plastic:GFRP)、軽金属、又は軽金属を含む合金である。
【0067】
なお、筐体110の材料は、炭素繊維強化熱可塑性樹脂(Carbon Fiber Renforced Thermo Plastics:CFRTP)であってもよい(
図4参照。)。
また、筐体110の材料を炭素繊維強化(熱可塑性)樹脂又はガラス繊維強化樹脂とする場合、プリプレグよりも短い繊維を含む材料であるSMC(Sheet Molding Compound))を用いて形成されたものとしてもよい。
【0068】
軽金属には、アルミニウムやマグネシウムのような相対的に比重が低い金属が含まれる。
こうすることで、筐体110の剛性を保ちつつ筐体110を軽量化することができる。
特に、炭素繊維強化樹脂は、放射線透過率が大きいため、被検者を透過してきた放射線が途中で減衰することなく内部モジュール120へ到達する。
このため、放射線画像の画質を、筐体110を他の材料とした場合よりも高くすることができる。
【0069】
(1.1.2)側面部
図4に示すように、側面部12は、前面部11の周縁部から、放射線入射面11aと直交する方向であって背面部21が存在する方向に延設されている。
また、側面部12の外側表面が検出器100(筐体110)の側面となる。
【0070】
〔1.2〕蓋体
図4に示すように、蓋体2は、背面部21を有している。
本実施形態に係る蓋体2は、全体が背面部21となっている。
背面部21は、内部モジュール120を挟んで箱体1の前面部11と対向するとともに当該前面部11と平行に広がっている。
また、背面部21の外側表面が検出器100(筐体110)の背面となる。
【0071】
また、本実施形態に係る背面部21は、前面部11とほぼ等しい矩形に形成されている。
本実施形態に係る背面部21の材料は、炭素繊維強化樹脂、ガラス繊維強化樹脂、軽金属、又は軽金属を含む合金である。
なお、背面部21の材料は、箱体1と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0072】
このように構成された蓋体2(背面部21)は、箱体1の側面部12に当接するとともに側面部12に取り付けられる。
これにより、側面部12は、前面部11と背面部21とをつなぐことになる。
【0073】
本実施形態に係る蓋体2は、箱体1にネジ止めされる。
このため、検出器100を修理したりメンテナンスしたりする場合に、ネジを緩めて取り外すだけで背面部21を前面部11と側面部12から分離することができる。
すなわち、検出器100をメンテナンスする者は、前面部11と側面部12により収納された内部モジュール120に容易にアクセスすることができる。
【0074】
また、蓋体2と箱体1の間にパッキンを挟んでネジ止め、あるいは接着することにより、防水構造としてもよい。
水分が浸入しないことで、発泡体が吸水してセンサパネルや電気・電子部品に影響することを防止できる。
【0075】
〔1.3〕その他
なお、
図4には、側面部12が前面部11と一体形成された筐体110(箱体1)を例示したが、筐体110は、側面部12が背面部21と一体になったものであってもよいし、前面部11、側面部12及び背面部21がそれぞれ別々の部材となっているものであってもよい。
また、前面部11と背面部21の両方が側面部を備えたものであってもよい。
また、
図4には、箱体1と蓋体2とを備える筐体110を例示したが、前面部11と、背面部21と、前面部11の両端と背面部21の両端とをそれぞれつなぐ一対の側面部12と、を有し筒状に形成された筒体と、筒体の開口部を閉塞する蓋体と、を備えたものであってもよい。
【0076】
また、筐体110は、背面部21における周縁部に凹部が設けられたものであってもよい。
このようにすれば、凹部に指をかけることができるため、検出器100の把持性が向上し、持ち運ぶ人が検出器100を落としにくくなる。
また、筐体110は、表面全体又は材料自体に練りこまれた抗菌加工が施されたものであってもよい。
【0077】
また、筐体110は、角部(前面部11の四隅及び背面部21の四隅のうちの少なくともいずれか)に保護部材が設けられたものであってもよい。
保護部材の材料は、金属であってもよいが、本実施形態に係る検出器100は軽量で、衝突によって受ける衝撃が小さいため、弾性体(樹脂やゴム、エラストマー等)であってもよい。
【0078】
なお、少なくとも一つの保護部材は、色及び形状のうちの少なくとも一方が他の保護部材と異なっていてもよい。
このようにすれば、色及び形状のうちの少なくとも一方が他と異なる保護部材の位置によって、検出器100の向きを容易に識別することができる。
【0079】
[2]内部モジュール
「内部モジュール120」とは、筐体の内部に収容される放射線を光に変換する波長変換部と、前記光を電気信号に変換する光電変換部、等で構成される放射線検出部、電子回路基板、電気・電子部品及び支持部材等をいう。
【0080】
図4に示すように、内部モジュール120は、筐体110の前面部11の内面に固定されている。
【0081】
内部モジュール120の筐体110への固定方法には、接着剤を用いた接着、粘着テープを用いた粘着、内面に形成された凹部又は凸部への嵌合、内面に形成された係合部への係合等が含まれる。
こうすることで、検出器100の側面とほぼ直交する方向から衝撃を受けたときに、内部モジュール120が移動してしまうことを抑制することができる。
【0082】
また、本実施形態に係る内部モジュール120は、
図4に示すように側面部12の内面と所定距離dだけ離間している。
すなわち、内部モジュール120と側面部12との間には幅がd以上の空隙が存在する。
【0083】
こうすることで、検出器100は、検出器100の側面とほぼ直交する方向から衝撃を受けたときに、内部モジュール120が側面部12に衝突して破損してしまうことを防ぐことができる。
【0084】
内部モジュール120は、放射線検出部3と、支持部材4と、電子回路基板51及び電気・電子部品53と、を備えている。
【0085】
〔2.1〕放射線検出部
本発明に係る放射線検出部は、少なくとも、波長変換部と光電変換部で構成されている。
図5に示すように、放射線検出部3は、筐体の前面部11と支持部材4との間に設けられている。
本実施形態に係る放射線検出部3は、接着層6を介して前面部11と支持部材4との間に設けられている。
【0086】
放射線検出部3は、
図5に示すように、波長変換部311と光電変換部312とからなる積層体のセンサパネル31を備えている。
また、本実施形態に係る放射線検出部3は、放射線遮蔽層32と、電磁界シールド層33と、緩衝材34と、をさらに備えていてもよい。
【0087】
(2.1.1)センサパネル
図5に示すように、本実施形態に係るセンサパネル31は、放射線遮蔽層32と電磁界シールド層33との間に設けられている。
また、本実施形態に係るセンサパネル31は、波長変換部311と光電変換部312と、を備えている。
【0088】
<波長変換部>
図5に示すように、波長変換部311は、放射線を、可視光を含む別の波長の電磁波(光)に変換する機能を有する素子部であり、例えばシンチレータ等を備えていることを要する。
ここで、「シンチレータ」とは、放射線により励起されることにより蛍光を発光する特性を示す物質(蛍光体)の総称である。
【0089】
本実施形態に係る波長変換部311は、電磁界シールド層33と光電変換部312との間に設けられている。
また、本実施形態に係る波長変換部311は、筐体110の放射線入射面11aと平行に広がるように配置されている。
また、本実施形態に係る波長変換部311は、図示しない支持層と蛍光体層とを有している。
【0090】
支持層は、可撓性材料でフィルム状(薄い板状)に形成されている。
可撓性材料には、例えばポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、アラミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はこれらのうちの少なくとも二種以上を混合させた複合材料が含まれる。
特に、上記材料のうち、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、PTFE、又はこれらの複合材料とするのが、耐熱性を向上させる観点から好ましい。
また、本実施形態に係る支持層は、矩形に形成されている。
【0091】
また、蛍光体層は、支持層の表面に蛍光体で形成されている。
蛍光体は、α線、γ線、X線等の電離放射線が照射されたときに原子が励起されることにより発光する物質のことである。
すなわち、蛍光体は、放射線を紫外線や可視光に変換するものである。
蛍光体には、例えばヨウ化セシウム(CsI)の柱状結晶等を用いることができる。
【0092】
本実施形態に係る蛍光体層は、支持層における光電変換部312と対向する面全体に形成されている。
すなわち、波長変換部311は、矩形に形成されていることになる。
また、本実施形態に係る蛍光体層は、支持層が撓んだときに共に撓む(弾性変形する)ことが可能な厚さとなっている。
【0093】
このように構成された波長変換部311は、可撓性を有する板状をなし、放射線を受けた領域が、受けた放射線の線量に応じた強度で発光する。
【0094】
<光電変換部>
図5に示すように、光電変換部312は、光を電気信号に変換する機能を有する素子部である。
本実施形態に係る光電変換部312は、波長変換部311と放射線遮蔽層32との間に設けられている。
また、本実施形態に係る光電変換部312は、波長変換部311と平行に広がるように配置されている。
【0095】
図5に示すように、光電変換部312は、波長変換部311に貼り合わされている。
また、
図6に示すように、光電変換部312は、基板312aと、複数の半導体素子312b(例えば光ダイオード)とを有している。
また、本実施形態に係る光電変換部312は、複数の走査線312cと、複数の信号線312dと、複数のスイッチ素子312e(例えば薄膜トランジスタ:TFT)と、複数のバイアス線312fとを有している。
【0096】
基板312aは、可撓性材料でフィルム状(薄い板状)に形成されている。
本実施形態に係る基板312aの正面視形状は、波長変換部311とほぼ等しい矩形となっている。
本実施形態に係る基板312aは、上記波長変換部311の支持層と同じ材料で形成されている。
【0097】
すなわち、本実施形態に係る可撓性基材を用いた光電変換部312が、大きな電流を消費して発熱する電気・電子部品から熱を受けた場合、熱膨張率が大きいために、局所的に膨張し、比較的熱膨張率が小さい波長変換部311から剥離することがあり得る。
【0098】
複数の半導体素子312bは、それぞれ受けた光の強度に応じた量の電荷を発生させるようになっている。
また、複数の半導体素子312bは、基板312aの表面に二次元状に分布するように形成されている。
【0099】
具体的には、複数の半導体素子312bは、基板312aにおける、波長変換部311と接する(貼り合わされる)面にマトリクス(行列状)に配列されている。
本実施形態に係る複数の半導体素子312bは、撮像面312gの中央部に、マトリクス(行列)状に配列されている。
【0100】
具体的には、基板312aの表面における、等間隔且つ互いに平行に伸びるように形成された図示しない複数の走査線312cと、等間隔且つ走査線と直交するように形成された図示しない複数の信号線312dと、によって囲まれる複数の矩形領域(放射線画像の各画素に対応)内にそれぞれ配置されている。
【0101】
また、各矩形領域内には、スイッチ素子312eがそれぞれ設けられている。スイッチ素子312eは、例えばTFTで構成されており、各スイッチ素子312eのゲートは走査線312cに、ソースは信号線312dに、ドレインは半導体素子312bに、それぞれ接続されている。
【0102】
なお、基板312aにおける半導体素子312bが形成されている面を「撮像面312g」と称する。
このように構成された光電変換部312は、可撓性を有し、半導体素子312bが形成された撮像面312gが波長変換部311の方を向くように配置されている。
【0103】
(2.1.2)放射線遮蔽層
放射線遮蔽層32は、散乱線が電子回路基板51へ到達するのを防ぐためのものである。
本実施形態に係る放射線遮蔽層32は、例えば
図5に示したように、センサパネル31(光電変換部312)と電磁界シールド層33との間に設けられている構成であってもよい。
また、本実施形態に係る放射線遮蔽層32は、図示しない取り付け部によってセンサパネル31を固定している。
【0104】
(2.1.3)電磁界シールド層
電磁界シールド層33は、ノイズをシールドするためのものである。
電磁界シールド層33は、放射線検出部3の撮像面312g、及び撮像面312gと反対側の面のうちの少なくとも一方の面側に設けられている。
【0105】
本実施形態に係る電磁界シールド層33は、撮像面312g側と反対側の面側の両方にそれぞれ設けられている。
なお、撮像面312gと反対側の面側の電磁界シールド層33は、支持部材4に貼りつけられていてもよい。
【0106】
電磁界シールド層33は、一部に導電性材料を含む層状部材である。
本実施形態に係る電磁界シールド層33には、樹脂フィルムの表面に金属層が形成されたもの、透明導電材料(例えば酸化インジウムスズ(ITO)等)で形成されたフィルム等が含まれる。
【0107】
金属には、例えばアルミ、銅等が含まれる。
金属層の形成方法には、例えば金属箔を貼りつける方法、金属を蒸着する方法等が含まれる。
電磁界シールド層33には、アルペット(登録商標、パナック株式会社)のようなフィルムが好適である。
電磁界シールド層33は、一の面に少なくとも1層以上設けられている。
【0108】
撮像面312g側に電磁界シールド層33が設けられていれば、前面部側から入り込む外部ノイズをシールドすることができる。
一方、撮像面312gと反対側に電磁界シールド層33が設けられれば、電子回路基板51が発生させるノイズをシールドすることができる。
【0109】
なお、電磁界シールド層33は、例えばグランド(GND)と接続されていてもよい。
このようにすれば、電磁界シールド層33の電位が一定に保たれ、ノイズのシールド効果をより高めることができる。
【0110】
また、この場合、アルミや銅とのイオン化傾向の差が小さい金属(例えば、ニッケル)を介在させるようにするのが好ましい。
イオン化傾向の差が小さい金属は、例えば、イオン化傾向の差が小さい金属でメッキされた中間部材や、イオン化傾向の差が小さい金属を導電フィラーとして含む導電テープの形で介在させる。
イオン化傾向の差が大きい金属同士(例えば、アルミと銅)が接触すると、電蝕が起きてしまう場合があるが、このようにすれば、電食を防止することができる。
【0111】
(2.1.4)緩衝材
図5に示すように、緩衝材34は、外からの荷重や衝撃を吸収するためのものである。
本実施形態に係る緩衝材34は、筐体110の前面部11と電磁界シールド層33との間に設けられている。
こうすることで、前面部11側から受けた荷重や衝撃がセンサパネル31に伝わってしまうのを防ぐことができる。
【0112】
〔2.2〕支持部材
支持部材4は、放射線検出部3を支持するものである(
図4及び
図5参照)。
この「支持する」には、前面部11側から受けた荷重に対し放射線検出部3を支えることだけではなく、支持部材4上に放射線検出部3が設けられていることも含まれる。
【0113】
支持部材4は、
図4に示したように、放射線検出部3と背面部21との間に設けられている。
こうすることで、筐体110が外から受けた荷重を支持部材4が分散させるため、放射線検出部3(センサパネル31)が撓むのを抑制することができる。
【0114】
支持部材4は、発泡体で形成されている。
発泡体の材料には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリウレタン、アクリル、エポキシ、これらの樹脂のうちの少なくとも二種以上が混合されたものが含まれる。
【0115】
一般に、軟質樹脂は、硬質樹脂に比べて剛性が低い。
一方、軟質樹脂からなる発泡体は、発泡倍率が低いほど剛性が高いことが知られている。
このため、発泡体を製造する際の発泡倍率を調整することにより必要な剛性を得ることができる。
【0116】
発泡倍率は、例えば30倍以下とすることが好ましい。
このようにすれば、支持部材の一部(例えば表層部)に発泡体よりも剛性の高い材料(例えば繊維強化樹脂や金属)を用いることなく必要な剛性を得つつ、支持部材4を軽量化することができる。
【0117】
なお、支持部材4は、熱膨張率がセンサパネル31と同じ又は差が所定以下の樹脂で形成されたものであってもよい。
また、支持部材4は、弾性を有したものであってもよい。
【0118】
センサパネル31は、従来のガラス基板を備えたものに比べて熱膨張率が大きい。
しかし、上述したようにすれば、センサパネル31が膨張しても、支持部材4も同程度に膨張する、又は弾性変形してセンサパネル31の膨張を吸収するため、センサパネル31だけが膨張してセンサパネル31にしわができてしまうのを防ぐことができる。
【0119】
支持部材4は、第1部分4aと、第2部分4bとを有している。
【0120】
図4及び
図5において、第1部分4aは、センサパネル31の光電変換部312における撮像面312gと反対側の面(光電変換部312の撮像面312gと反対側の面側にある電磁界シールド層33の表面又は接着層6の表面)に沿って隙間なく設けられている部分である。
【0121】
第1部分4aは、撮像面312gと反対側の面と直交する方向に所定の厚さを有し、当該面と平行に広がる板状をなしている。
このようにすることで、筐体110が外から受けた荷重を支持部材4がより一層分散させるため、放射線検出部3のたわみをさらに抑制することができる。
【0122】
第2部分4bは、放射線検出部3から背面部21にかけて隙間なく設けられた部分である。
このようにすることで、筐体110が外から受けた荷重を支持部材4がより一層分散させるため、放射線検出部3のたわみをさらに抑制することができる。
【0123】
また、支持部材4は、上述した第1部分4aと第2部分4bとを有することにより、筐体110の背面部21と対向する面に凹部4cを有することになる。
凹部4cの幅、奥行き及び深さは、後述する電子回路基板51を収容することが可能な大きさとなっている。
本実施形態に係る支持部材4には、凹部4cが複数(少なくとも電子回路基板51の数)形成されている。
【0124】
本実施形態に係る支持部材4は、複数の部材に分割されている。
すなわち、本実施形態に係る支持部材4は、第1支持部41と、第2支持部42と、を有している。
【0125】
(2.2.1)第1支持部
第1支持部41は、一方の面が放射線検出部3に接し他方の面が電子回路基板51に接する(
図4参照。)。
本実施形態に係る第1支持部41は、上述した第1部分4aに相当する。
本実施形態に係る第1支持部41は、放射線検出部3と接する面が平坦になっている。
以下、第1支持部41における放射線検出部3に接する一方の面を支持面41aと称する。
【0126】
本実施形態に係る支持面41aは、センサパネル31と同じ又はそれよりも一回り大きくなっている。
このため、第1支持部41は、センサパネル31全体を支持することができる。
第1支持部41の厚さ(支持面41aとその反対側の面との距離)は、2~5mmの範囲内となっていることが好ましい。
このようにすることで、第1支持部41の剛性を確保しつつ、後述する電子回路基板51を実装するための空間を確保することができる。
【0127】
ここで、
図7は、
図3の放射線検出器が備える支持部材の一例を示す側面図である。
本実施形態に係る第1支持部41は、剛性が異なる2種類の発泡体をそれぞれ含んでいる。
本実施形態に係る第1支持部41は、第1発泡体F
1と、第2発泡体F
2と、を有している(
図7(a)参照。)。
第1発泡体F
1は、放射線検出部3又は第2支持部42と接する表層部をなしている。
第2発泡体F
2は、放射線検出部3と第2支持部42とが並ぶ方向において表層部と接する芯部をなしている。
【0128】
すなわち、第1支持部41は、発泡倍率の分布が支持面41aと直交する方向に沿って変化している。
第1発泡体F1の発泡倍率は、第2発泡体F2よりも小さい。すなわち、第1発泡体F1は第2発泡体F2よりも剛性が高い。
こうすることで、第1支持部41の曲げに対する剛性を向上させることができる。
その結果、検出器100の曲げに対する剛性を向上させることができる。
【0129】
なお、
図4、
図7(a)には、厚さ(支持面41aと直交する方向の幅)が均一の第1支持部41を例示したが、第1支持部41は、支持面41aに沿う方向の周縁部が中央部より厚くなっていてもよい。
このようにすれば、荷重や衝撃に対する剛性をさらに高めることができる。
また、第1支持部41は、中央部が周縁部より厚くなっていてもよい。
【0130】
(2.2.2)第2支持部
第2支持部42は、
図4に示したように、一方の面が第1支持部41に接し他方の面が背面部21に接する。
すなわち、本実施形態に係る第2支持部42は、
図8に示すように、第1支持部41とは別の部材となっている。
本実施形態に係る第2支持部42は、第1支持部41の支持面41aと反対側の面における、後述する電子回路基板51と接しない領域から背面部21へ延びている。
【0131】
このように、第2支持部42は、第1支持部41と異なり、光電変換部312における撮像面312gと反対側の面(光電変換部312の撮像面312gと反対側の面側にある電磁界シールド層33の表面又は接着層6の表面)に沿って一部領域を充填するように形成されるため、背面部21の側方(支持面41aに沿う方向)には、凹部4cが形成される。
【0132】
本実施形態に係る第2支持部42は、上記第1支持部41と同様に、剛性が異なる2種類の発泡体をそれぞれ含む。
本実施形態に係る第2支持部42も、
図7(a)に示したように、第1発泡体F
1と、第2発泡体F
2と、を有している。
第2支持部42における第1発泡体F
1は、第1支持部41から背面部21へと延びる表層部をなしている。
第2支持部42における第2発泡体F
2は、背面部21の内面に沿う方向において表層部と接する芯部をなしている。
【0133】
すなわち、第2支持部42は、発泡倍率の分布が支持面41aに沿う方向に沿って変化しており、分布の仕方が第1支持部41と異なっている。
こうすることで、第2支持部42の支持面41aと直交する方向からかかる荷重に対する剛性を向上させることができる。
その結果、検出器100の前面又は背面と直交する方向からかかる荷重に対する剛性を向上させることができる。
【0134】
(2.2.3)支持部材その他
なお、本実施形態のように、第1支持部41と第2支持部42とで強度に異方性がある(第1発泡体F
1と第2発泡体F
2との並び方向が異なる)場合、厚さ方向(支持面41aと直交する方向)から受ける荷重や衝撃に対する強度が、支持面に沿う方向から受ける荷重や衝撃に対する強度よりも大きくなるようにされていてもよい(
図4及び
図7参照。)。
【0135】
また、第1発泡体F1と第2発泡体F2とで構成されるのは、第1支持部41と第2支持部42のいずれか一方だけでもよい。
その場合、他方は第1発泡体F1又は第2発泡体F2のみで形成されていてもよい。
また、第1支持部41、第2支持部42共に、第1発泡体F1又は第2発泡体F2のみで形成されていてもよい。
【0136】
また、支持部材4は、
図7(b)に示したように、第1支持部41と第2支持部42とが単一の発泡体で一体成形されたものであってもよい。
その場合、凹部4cは、凹部4cとする予定箇所を切削することで形成してもよいし、部分プレスすることで形成してもよいが、部分プレスで形成することが好ましい。
【0137】
支持部材4における凹部4cの形成箇所は、それ以外の部分(第2部分4b)よりも薄い(支持面41aと直交する方向の幅が小さい)。
しかし、凹部4cを部分プレスで形成した場合、凹部4cの表面は発泡倍率が低下し強度が向上する。
このため、凹部4cにおける支持部材4の剛性を第2部分4bと同等にすることができる。
また、支持部材4は、シート状に形成された発泡体を複数枚積層することで作製されたものであってもよい。
【0138】
〔2.3〕電子回路と電気・電子部品
図4に示すように、放射線検出器は、電子回路基板51と、配線52と、電気・電子部品53と、を備えている。
【0139】
本実施形態に係る電子回路基板51は、支持部材4に取り付けられている。
すなわち、放射線検出部3、支持部材4、電子回路基板51及び電気・電子部品53は、互いに固定された内部モジュール120を構成している。
【0140】
(2.3.1)電子回路基板
図4に示すように、電子回路基板51は、支持部材4における支持面41aとは反対側の面に配置されている。
電子回路基板51は、支持部材4の凹部4c(第2支持部42と第2支持部42との間)に収容されている。
【0141】
電子回路基板51は電気・電子部品53とグランド層を有し、電気・電子部品53は、電子回路基板の放射線検出部3側と反対側の面に設けられている。
電子回路基板51と筐体110の背面部21とは離間している。
こうすることで、筐体110が外から受けた荷重が電子回路基板51に伝わってしまうのを抑制することができる。
【0142】
電子回路基板51には、走査回路、読み出し回路、無線通信回路、制御回路、電源回路、バッテリー、コネクター等が含まれる。
【0143】
走査回路は、各スイッチ素子を制御する回路である。
読み出し回路は、電荷を信号値として読み出す回路である。
無線通信回路は、他の装置と無線通信するための回路である。
制御回路は、各回路を制御して画像データを生成する回路である。
電源回路は、半導体素子に電圧を印加したり、上記回路へ電力を供給したりするための回路である。
【0144】
コネクターは、
図3に示したように、他の装置と有線通信するためのケーブルを差し込むことが可能となっている。
【0145】
(2.3.2)電子回路の支持部材への取り付け
本実施形態に係る電子回路基板51は、
図8に示したように、取付部材7を介して支持部材4に取り付けられている。
なお、
図8は、
図3の放射線検出器の製造途中の状態を示す側面図である。
本実施形態に係る取付部材7は、例えば
図9に示すように、電子回路基板51と接合する板部71と、凸部72と、を有している。
なお、
図9は、
図3の放射線検出器の製造途中の状態を示す斜視図である。
また、支持部材4の第1支持部41には、凸部72と輪郭が同じ嵌合穴41bが形成されている。
【0146】
本実施形態に係る凸部72は、板部71の中心から板部71の径方向に放射状に広がる放射部72aが複数形成されている(
図9参照。)。
こうすることで、支持部材4に嵌合したときの支持部材4との間の摩擦力が向上し、取付部材7が支持部材4から外れにくくなる。
【0147】
また、電子回路基板51を取付部材7にネジ止めする際に、回転トルクが取付部材7に作用する。
このとき、放射部72aのように回転トルクと直交する方向に突出する部分が存在することで、取付部材7自体がネジとともに回転してしまうことを防止できる。
さらに、放射部72aのように所定以上の面積をもって支持部材4と係合することで、支持部材4が受ける圧力を下げ、剛性の低い発泡体であっても破損することなく、ネジ止め時の回転トルクを大きくすることができ、その結果ネジ緩みを防止できる。
【0148】
なお、取付部材7の構造は、上述したものに限られない。
取付部材7は、例えば
図10に示すように、第1部材7aと、第2部材7bと、を備えたものであってもよい。
なお、
図10(a)は、取付部材の一例を示す斜視図であり、
図10(b)は、支持部材に固定された状態の(a)の取付部材を示す断面図である。
この取付部材7の第1部材7aは、筒部73と、鍔部74と、を有している。
筒部73は、第1支持部41に形成された嵌合穴41bに嵌合するようになっている(
図9、
図10(a)及び
図10(b)参照)。
鍔部74は、支持部材4の支持面41aに当接するようになっている。
【0149】
第2部材7bは、雌ネジ部75と、鍔部76と、を有している。
なお、第2部材7bは、支持部材4と同じ発泡体で形成されていてもよい。
雌ネジ部75は、筒部73に嵌合するようになっている。
雌ネジ部75の中央部にはインサートネジ75aが埋め込まれている。
なお、雌ネジ部75に直接雌ネジが切られていてもよい。
鍔部76は、第1支持部41における支持面41aと当接するようになっている。
すなわち、取付部材7は、鍔部74と鍔部76とで支持部材4を挟みこむようになっている。
【0150】
第2部材7bが発泡体で形成されている場合、支持部材4を形成するときの熱で、第2部材7bを接合することが可能である。
雌ネジ部75には、電子回路基板51のネジ孔51aに通されたネジBが螺合するようになっている。
これにより、電子回路基板51が支持部材4に固定される。
電子回路基板51が有するグランド配線は、ネジ孔51aの周囲まで延びている。
このため、電子回路基板51を取り付ける際にネジBで共締めすることにより、ネジ孔51aの近傍に設けられたグランド端子に接続することができる。
【0151】
また、取付部材7は、例えば
図11に示すように、雌ネジ部75Aと、鍔部76Aと、を有するものであってもよい。
なお、
図11(a)は、取付部材の一例を示す斜視図であり、
図11(b)は、支持部材に固定された状態の(a)の取付部材を示す断面図である。
この取付部材7の鍔部76Aは、支持部材4の支持面41aに当接するようになっている。
雌ネジ部75Aは、第1支持部41に形成された嵌合穴41bに嵌合するようになっている。
雌ネジ部75Aは、側周面が波状になっている。
波の頂と頂との距離d
2は、発泡体の粒の径以上となっている。
こうすることで、雌ネジ部75Aの波と波との間に支持部材4の発泡体の粒が入り込むため、電子回路基板51をネジBで固定するときに、ネジBから取付部材7に回転トルクが作用しても、取付部材7がネジBと共に回転してしまうのを防ぐことができる。
【0152】
また、
図12(a)に示すように、雌ネジ部75Bと、板部71Aと、を有するものであってもよい。
雌ネジ部75Bは、
図12に示したように円筒状になっていてもよいし、
図11に示したように側周面が波状になっていてもよい。
板部71Aは、雌ネジ部75の幅に対して十分に広い接合面71aを有している。
板部71Aの接合面71aは、
図12(b)に示すように、第1支持部41に接着されるようになっている。
なお、取付部材7は、
図12(c)に示すように、板部71Aにおける、雌ネジ部75Bが設けられている面と反対側の面が、第1支持部41に接合されるようになっていてもよい。
また、取付部材7は、
図12(d)に示すように、放射線遮蔽層32と接合されていてもよい。
なお、
図12(a)は、取付部材の一例を示す斜視図であり、
図12(b)、
図12(c)及び
図12(d)は、支持部材に固定された状態の(a)の取付部材を示す断面図である。
【0153】
また、取付部材7は、例えば
図13に示すように、係合部77を有するものであってもよい。
なお、
図13は、取付部材の一例を示す斜視図である。
係合部77は、スナップフィット方式により、電子回路基板51に形成されたネジ孔51aに係合するようになっている。
支持部材4を形成する発泡材は回転トルクに弱いため、電子回路基板51をネジ止めしようとすると、取付部材7が回転してしまいやすい。
しかし、このように、スナップフィット方式で電子回路基板51を係合するようにすれば、電子回路基板51を容易に取り付けることができる。
【0154】
なお、電子回路基板51の支持部材4への取り付けに、取付部材7を用いなくてもよい。
すなわち、電子回路基板51は、接着剤又は粘着テープにより支持部材4に直接固定されていてもよい。
この場合、配線の共締めができないため、端子間を例えば導電テープを用いた配線等で接続するようにしてもよい。
【0155】
(2.3.3)配線
配線52は、例えば可撓性(フレキシブル)プリント配線板(Flexible Printed Circuits)で構成され、光電変換部312と、各種電子回路基板51と、を接続している。
具体的には、光電変換部312の各走査線(スイッチ素子)の端子と走査回路、各信号線(半導体素子312b)の端子と読み出し回路、各バイアス線の各端子と電源回路、をそれぞれ接続している。
【0156】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
なお、本実施形態においては、上記第1実施形態と同様の構成に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0157】
図14は、本実施形態に係る
図3の放射線検出器(以下、検出器100A)のA-A断面図である。
本実施形態に係る検出器100Aは、筐体110Aの構造が上記第1実施形態と異なる。
【0158】
[3]蓋体
本実施形態に係る蓋体2Aは、背面部21Aと、キャップ22と、を備えている(
図14参照。)。
【0159】
〔3.1〕背面部
図14において、背面部21Aは、凹部21aを有している。
凹部21aは、背面部21Aの外面から筐体110Aの内部に向かって窪んでいる。
凹部21aの側面には、図示しないスリットが形成されている。
凹部21aの幅、奥行き及び深さは、電子回路基板51を収容することが可能な大きさとなっている。
本実施形態に係る背面部21Aには、凹部21aが複数(電子回路基板51の数)形成されている。
本実施形態に係る凹部21aの底面(最も前面部11に近い面)は平坦になっている。
背面部21Aにおける凹部21aの内壁を形成する部分(凹部21aと凹部21aとの間の部分)は、背面部21Aの背面に沿って形成されるリブとして機能する。
これにより、検出器100が荷重を受けても、筐体110Aがたわんだりねじれたりするのを抑制することができる。
【0160】
〔3.2〕キャップ
図14において、キャップ22は、凹部21aの開口部に嵌合するようになっている。
凹部21aにキャップ22が嵌合すると、凹部21aに収容された電子回路基板51が遮蔽される。
本実施形態に係るキャップ22は、凹部21aに嵌合すると、その外面が、背面部21Aの外面と面一になる。
キャップ22の材料と厚さは、背面部21Aと同じであることが好ましい。このようにすれば、蓋体2Aは、背面部21Aの部分の剛性とキャップ22の部分の剛性との差をなくすことができる。
【0161】
なお、キャップ22は、背面部21Aとの剛性の差をなくすため、背面部21Aより高剛性な材料で薄く形成されていてもよいし、あるいは低剛性な材料で厚く形成されたものであってもよい。
これにより、熱伝導性が良く高剛性な炭素繊維強化樹脂や金属を用いて電子回路の熱を拡散させたり、あるいは低剛性だが電波を透過する樹脂類を用いることにより無線通信に適した構成としたりすることができる。
なお、キャップ22は、その周縁部にパッキンが設けられたものであってもよい。
このようにすれば、凹部21aに塵や液体が入り込むのを防ぎ、電子回路基板51を保護することができる。
本実施形態に係るキャップ22は、背面部21Aに対して着脱可能となっている。こうすることで、検出器100のメンテナンスを行う際に、電子回路基板51に容易にアクセスすることができる。
【0162】
[4]支持部材
支持部材4Aは、支持面41aで放射線検出部3を支持し、対向する他方の面が筐体110Aの背面部21Aの内面に接している。
本実施形態に係る支持部材4Aは、筐体110A内における、放射線検出部3と背面部21とに挟まれる領域(放射線検出部3における撮像面312gに沿う方向の先にある領域及び側面部12の内面近傍を除く領域)全体を充填している(
図4、
図5及び
図6参照。)。
このため、支持部材4Aにおける他方の面(背面部21Aとの接触面)の形状は、背面部21の形状に倣ったものとなっている。
支持部材4Aは、背面部21Aと一体成形されていてもよいし、背面部21Aに固定されていてもよい。
支持部材4Aの背面部21Aへの固定方法には、接着剤を用いた接着、粘着テープを用いた粘着、背面部21Aの凹部へ自身の凸部を嵌合、背面部21Aの凸部を自身の凹部へ嵌合等が含まれる。
【0163】
[5]電子回路基板
本実施形態に係る電子回路基板51は、背面部21Aの凹部21aに収容されている(
図14参照。)。
また、本実施形態に係る電子回路基板51は、凹部21aの底面に取り付けられている。
電子回路基板51は電気・電子部品53とグランド層を有し、電気・電子部品53は、電子回路基板の放射線検出部3側と反対側の面に設けられている。
本実施形態に係る電子回路基板51の背面部21Aへの固定方法には、取付部材7を用いた固定、接着剤を用いた接着、粘着テープを用いた粘着等が含まれる。
電子回路基板51と筐体110Aのキャップ22とは離間している。
こうすることで、筐体110Aが外から受けた荷重が電子回路基板51に伝わってしまうのを抑制することができる。
本実施形態に係る配線52は、凹部21aのスリットに通されている。
【0164】
<第1及び第2実施形態の効果>
電気・電子部品53は、駆動時に熱又は磁界を発生するため、第1及び第2実施形態のように電子回路基板の放射線検出部3側と反対側の面に設けることにより、電気・電子部品53から発せられた熱や磁界の影響を直接的には放射線検出部3に与えずに済む。
したがって、放射線検出部3中の波長変換部311及び光電変換部312を含むセンサパネル3の熱による局所的な膨張を抑制することができ、波長変換部311との貼合界面での剥離を防ぐことができる。
検出器100及び100Aは、センサパネル31が可撓性を有している。
このため、筐体110及び110Aが荷重や衝撃を受けた場合であっても、センサパネル31が損傷しにくくなっている。
また、可撓性材料は、一般にガラスよりも軽量であるため、センサパネル31は、従来のものよりも軽量化されている。
また、センサパネル31が軽量かつ損傷しにくいものとなったことに伴い、センサパネル31を支持する支持部材4及び4Aは、従来ほどの剛性が不要となっている。
このため、支持部材4及び4Aの形成に用いられる材料を従来よりも低減したり、従来のような高剛性の材料(金属や繊維強化樹脂)を用いたりする必要がない。
その結果、支持部材4及び4Aを軽量化することができる。
また、支持部材4及び4Aは発泡体で形成されているためさらに軽いものとなっている。
このため、検出器100によれば、荷重や衝撃を受けたときの基板の破損のしにくさを維持しつつ、軽量化することができる。
【0165】
また、センサパネル31(可撓性材料)は低周波の振動の影響を受け易い。
このため、低周波の振動が届くと振幅が大きくなり、ノイズを発生させ易くなってしまう。
しかし、検出器100及び100Aは、発泡体からなる支持部材4及び4Aでセンサパネル31を支持している。
発泡体は低周波の振動を吸収するため、このようにすることで、センサパネル31が低周波の振動の影響を受けるのを抑制することができる。
この振動抑制効果は、支持部材4及び4Aが筐体110及び110A内における充填率が高いほど高いものとなる。
【符号の説明】
【0166】
100,100A 放射線検出器
110,110A 筐体
1,1C,1D 箱体
11 前面部
11a 放射線入射面
12 側面部
2,2A 蓋体
21,21A 背面部
21a 凹部
22 キャップ
120 内部モジュール
3 放射線検出部
31 センサパネル
311 波長変換部
312 光電変換部
312a 基板
312b 半導体素子
312c 走査線
312d 信号線
312e スイッチ素子
312f バイアス線
312g 撮像面
32 放射線遮蔽層
33 電磁界シールド層
34 緩衝材
4,4A 支持部材
4a 第1部分
4b 第2部分
4c 凹部
41 第1支持部
41a 支持面
41b 嵌合穴
42 第2支持部
51 電子回路基板
51a ネジ孔
52 配線
53 電気・電子部品
6 接着層
7 取付部材
7a 第1部材
7b 第2部材
71,71A 板部
71a 接合面
72 凸部
72a 放射部
73 筒部
74 鍔部
75,75A,75B 雌ネジ部
75a インサートネジ
76,76A 鍔部
77 係合部
B ネジ
F1 第1発泡体
F2 第2発泡体
I インジケーター
S 各種スイッチ
d1 所定距離
d2 距離
2C バック板
E1 電気・電子部品1(発熱部品)
E2 電気・電子部品2(磁界発生部品)
G グランド層
g ガラスエポキシ層
CB 電子回路基板
4C 支持部材1(発泡体)
4D 支持部材2(CFRP製)
RH 熱拡散シート
31C 可撓性(フレキシブル)TFTセンサパネル
31D ガラス製TFTセンサパネル
311C,311D シンチレータ