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特許7547859位相計算装置、端末、通信システム、位相計算方法、及び位相計算プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】位相計算装置、端末、通信システム、位相計算方法、及び位相計算プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/18 20090101AFI20240903BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20240903BHJP
   H04W 4/42 20180101ALI20240903BHJP
   H04W 24/08 20090101ALI20240903BHJP
   H04W 88/02 20090101ALI20240903BHJP
【FI】
H04W28/18 110
H04L27/26 410
H04W4/42
H04W24/08
H04W88/02 150
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020140711
(22)【出願日】2020-08-24
(65)【公開番号】P2022036483
(43)【公開日】2022-03-08
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】中野 友聖
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 和紀
(72)【発明者】
【氏名】内藤 浩介
【審査官】齋藤 浩兵
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-309517(JP,A)
【文献】特開2011-166797(JP,A)
【文献】特開2014-160891(JP,A)
【文献】特開2007-081952(JP,A)
【文献】国際公開第2009/110053(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/178573(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
H04L 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末が存在した第1位置を表す情報、前記端末の移動の後に前記端末が存在した第2位置を表す情報、及び前記端末と無線通信を行う基地局が存在する第3位置を表す情報に基づいて、前記移動の方向を計算する移動方向計算手段と、
計算された前記方向、前記移動のときの前記端末の速さを表す情報、前記無線通信に使用されるキャリアの周波数を表す情報、及び前記キャリアの上で変調されたパイロット信号の繰り返し周期を表す情報に基づいて、前記キャリアを受信した際の前記移動に起因するドップラーシフトに対応する、受信した前記キャリアにおける位相差を計算するドップラーシフト計算手段と
を備え、
前記位相差を表す回転数の取り得る値の範囲の大きさは1回転より大きい
位相計算装置。
【請求項2】
前記ドップラーシフト計算手段は、前記回転数の整数部分を計算して、前記位相差の計算結果とする
請求項1に記載の位相計算装置。
【請求項3】
前記移動方向計算手段は、前記端末の測位を行う測位システムから前記第1位置及び前記第2位置を表す情報を取得し、前記端末が有する加速度センサー若しくは速度センサー、又は前記測位システムから前記端末の速さを表す情報を取得する
請求項1又は2に記載の位相計算装置。
【請求項4】
前記移動方向計算手段は、前記第1位置、前記第2位置、及び前記端末305の速さを表す情報として、前記端末が存在する航走体の位置を管理する運行管理システムから前記航走体の位置及び速さに関する情報を取得する
請求項1乃至3の何れか1項に記載の位相計算装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の位相計算装置と、
前記基地局から受信した前記パイロット信号のチャネルを推定するチャネル推定手段と、
前記位相計算装置によって計算された前記位相差の計算結果、及び前記チャネル推定手段によって推定された前記パイロット信号のチャネルの推定結果に基づいて、前記基地局から受信されたデータ信号のチャネルを推定するチャネル補間手段と、
前記チャネル補間手段によって推定された前記データ信号のチャネルの推定結果に基づいて、前記データ信号を復調するデータ信号復調手段と
を備えた端末。
【請求項6】
請求項5に記載の端末と、
前記パイロット信号及び前記データ信号を送信する前記基地局と
を備えた通信システム。
【請求項7】
前記端末は、前記端末から前記基地局へのアップリンクにおいても別の前記パイロット信号及び別の前記データ信号を送信し、
前記アップリンクにおける前記別の前記データ信号は、前記位相計算装置によって計算された前記位相差の計算結果を含み、
前記基地局は、前記端末から受信した前記位相差の計算結果に基づいて、前記アップリンクについて、前記別の前記パイロット信号及び前記別の前記データ信号のチャネルを推定し、推定結果に基づいて前記別の前記データ信号を復調する
請求項6に記載の通信システム。
【請求項8】
端末が存在した第1位置を表す情報、前記端末の移動の後に前記端末が存在した第2位置を表す情報、及び前記端末と無線通信を行う基地局が存在する第3位置を表す情報に基づいて、前記移動の方向を計算し、
計算された前記方向、前記移動のときの前記端末の速さを表す情報、前記無線通信に使用されるキャリアの周波数を表す情報、及び前記キャリアの上で変調されたパイロット信号の繰り返し周期を表す情報に基づいて、前記キャリアを受信した際の前記移動に起因するドップラーシフトに対応する、受信した前記キャリアにおける位相差を計算する
位相計算方法であって、
前記位相差を表す回転数の取り得る値の範囲の大きさは1回転より大きい
位相計算方法。
【請求項9】
位相計算装置が備えるコンピュータに、
端末が存在した第1位置を表す情報、前記端末の移動の後に前記端末が存在した第2位置を表す情報、及び前記端末と無線通信を行う基地局が存在する第3位置を表す情報に基づいて、前記移動の方向を計算する移動方向計算処理と、
計算された前記方向、前記移動のときの前記端末の速さを表す情報、前記無線通信に使用されるキャリアの周波数を表す情報、及び前記キャリアの上で変調されたパイロット信号の繰り返し周期を表す情報に基づいて、前記キャリアを受信した際の前記移動に起因するドップラーシフトに対応する、受信した前記キャリアにおける位相差を計算するドップラーシフト計算処理と
を実行させる位相計算プログラムであって、
前記位相差を表す回転数の取り得る値の範囲の大きさは1回転より大きい
位相計算プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信において、端末の高速移動に伴うドップラーシフトを補償する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
移動無線通信においてデータシンボルを高精度に復調するためには、高精度なチャネル推定を実現することが重要である。特に新幹線やリニアモーターカー等の高速移動環境下では、ドップラーシフトに起因してチャネル推定精度が大きく劣化することがある。
【0003】
そこで、チャネル補間において、パイロットシンボルを用いた自動周波数制御(Automatic Frequency Control:AFC)によって、ドップラーシフト量を推定することがある。
【0004】
ドップラーシフトを補償する自動周波数制御技術の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の移動無線通信システムは、基地局と移動局とを含む。基地局は、基地局の位置情報を記憶する自局位置情報記憶部を有する。基地局は、基地局の位置情報を含む送信データを移動局へ送信する。移動局は、ドップラー効果計算部と、内部発振器とを含む。ドップラー効果計算部は、自己が取得した移動局の位置情報、速度情報、移動方向情報と、送信データに含められた基地局の位置情報とを基に、送信データのドップラー効果による周波数誤差を計算する。内部発振器は、送信データの周波数のドップラー効果による周波数誤差を補正した周波数信号を発振する。上述した構成の結果、特許文献1に記載の移動無線通信システムでは、移動局がドップラー効果による、送信データの周波数の誤差を補正した周波数追従を行う。
【0005】
又、ドップラーシフトを補償する技術の一例が、特許文献2に開示されている。特許文献2に記載のマルチキャリア受信装置は、複数のサブキャリアについてパイロットシンボル受信信号により推定されるチャネル特性に基づいてデータシンボル位置のチャネル特性を第1次チャネル推定値として演算する。そして、マルチキャリア受信装置は、該第1次チャネル推定値に基づいて各データシンボル受信信号をチャネル補償して復号する。そして、マルチキャリア受信装置は、その復号信号により推定される各シンボル位置におけるチャネル再推定値に重みを付けて加算して所定シンボル位置におけるチャネル特性を第2次チャネル推定値として演算する。上述した構成の結果、特許文献2に記載のマルチキャリア受信装置は、周波数選択性フェージングが存在し、ドップラー周波数変動を受ける動的なフェージングが存在する環境下においても、チャネル推定値を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-160891号公報
【文献】特開2004-364094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、端末の移動速度が速くなるほどドップラー効果による位相の回転量が大きくなる。そのため、高速移動環境下においてドップラー効果による位相の回転量が一定値(例えば、2π)を超えた場合、位相を正しく推定することが困難になる。例えば、特許文献1及び2に記載の技術では、ドップラー効果による位相の回転量が大きい場合に位相を正しく推定する方法が開示されていない。このような場合、自動周波数制御におけるチャネル推定精度が著しく劣化するという問題がある。
【0008】
チャネル推定精度が劣化するという問題を解決する方法として、一般的に、パイロットシンボルの挿入間隔を短くすることが考えられる(例えば、特許文献2の段落[0059]における記載を参照)。しかしながら、パイロットシンボルの挿入間隔を短くすると、伝送データの中でパイロットシンボルが占める比率が大きくなる結果、伝送効率が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、無線通信においてドップラーシフトが大きい場合にも、伝送信号の中にパイロット信号が占める比率を増加させることなく、ドップラーシフトに対応する位相差を正しく計算することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様において、位相計算装置は、端末が存在した第1位置を表す情報、端末の移動の後に端末が存在した第2位置を表す情報、及び端末と無線通信を行う基地局が存在する第3位置を表す情報に基づいて、移動の方向を計算する移動方向計算手段と、計算された方向、移動のときの端末の速さを表す情報、無線通信に使用されるキャリアの周波数を表す情報、及びキャリアの上で変調されたパイロット信号の繰り返し周期を表す情報に基づいて、キャリアを受信した際の移動に起因するドップラーシフトに対応する、受信したキャリアにおける位相差を計算するドップラーシフト計算手段とを含む。位相差を表す回転数の取り得る値の範囲の大きさは1回転より大きい。
【0011】
本発明の一態様において、端末は、位相計算装置と、データ信号復調手段とを含む。位相計算装置は、端末が存在した第1位置を表す情報、端末の移動の後に端末が存在した第2位置を表す情報、及び端末と無線通信を行う基地局が存在する第3位置を表す情報に基づいて、移動の方向を計算する移動方向計算手段と、計算された方向、移動のときの端末の速さを表す情報、無線通信に使用されるキャリアの周波数を表す情報、及びキャリアの上で変調されたパイロット信号の繰り返し周期を表す情報に基づいて、キャリアを受信した際の移動に起因するドップラーシフトに対応する、受信したキャリアにおける位相差を計算するドップラーシフト計算手段とを含む。位相差を表す回転数の取り得る値の範囲の大きさは1回転より大きい。端末は、チャネル推定手段と、チャネル補間手段と、データ信号復調手段とを含む。チャネル推定手段は、基地局から受信したパイロット信号のチャネルを推定する。チャネル補間手段は、位相計算装置によって計算された位相差の計算結果、及びチャネル推定手段によって推定されたパイロット信号のチャネルの推定結果に基づいて、基地局から受信されたデータ信号のチャネルを推定する。データ信号復調手段は、チャネル補間手段によって推定されたデータ信号のチャネルの推定結果に基づいて、データ信号を復調する。
【0012】
本発明の一態様において、通信システムは、端末と、基地局とを含む。端末は、位相計算装置と、データ信号復調手段とを含む。位相計算装置は、端末が存在した第1位置を表す情報、端末の移動の後に端末が存在した第2位置を表す情報、及び端末と無線通信を行う基地局が存在する第3位置を表す情報に基づいて、移動の方向を計算する移動方向計算手段と、計算された方向、移動のときの端末の速さを表す情報、無線通信に使用されるキャリアの周波数を表す情報、及びキャリアの上で変調されたパイロット信号の繰り返し周期を表す情報に基づいて、キャリアを受信した際の移動に起因するドップラーシフトに対応する、受信したキャリアにおける位相差を計算するドップラーシフト計算手段とを含む。位相差を表す回転数の取り得る値の範囲の大きさは1回転より大きい。端末は、チャネル推定手段と、チャネル補間手段と、データ信号復調手段とを含む。チャネル推定手段は、基地局から受信したパイロット信号のチャネルを推定する。チャネル補間手段は、位相計算装置によって計算された位相差の計算結果、及びチャネル推定手段によって推定されたパイロット信号のチャネルの推定結果に基づいて、基地局から受信されたデータ信号のチャネルを推定する。データ信号復調手段は、チャネル補間手段によって推定されたデータ信号のチャネルの推定結果に基づいて、データ信号を復調する。基地局は、パイロット信号及びデータ信号を送信する。
【0013】
本発明の一態様において、位相計算方法は、端末が存在した第1位置を表す情報、端末の移動の後に端末が存在した第2位置を表す情報、及び端末と無線通信を行う基地局が存在する第3位置を表す情報に基づいて、移動の方向を計算し、計算された方向、移動のときの端末の速さを表す情報、無線通信に使用されるキャリアの周波数を表す情報、及びキャリアの上で変調されたパイロット信号の繰り返し周期を表す情報に基づいて、キャリアを受信した際の移動に起因するドップラーシフトに対応する、受信したキャリアにおける位相差を計算する。位相差を表す回転数の取り得る値の範囲の大きさは1回転より大きい。
【0014】
本発明の一態様において、位相計算プログラムは、位相計算装置が備えるコンピュータに、端末が存在した第1位置を表す情報、端末の移動の後に端末が存在した第2位置を表す情報、及び端末と無線通信を行う基地局が存在する第3位置を表す情報に基づいて、移動の方向を計算する移動方向計算処理と、計算された方向、移動のときの端末の速さを表す情報、無線通信に使用されるキャリアの周波数を表す情報、及びキャリアの上で変調されたパイロット信号の繰り返し周期を表す情報に基づいて、キャリアを受信した際の移動に起因するドップラーシフトに対応する、受信したキャリアにおける位相差を計算するドップラーシフト計算処理とを実行させる。位相差を表す回転数の取り得る値の範囲の大きさは1回転より大きい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、無線通信において、ドップラーシフトが大きい場合にも、伝送信号の中にパイロット信号が占める比率を増加させることなく、ドップラーシフトに対応する位相差を正しく計算できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態における通信システムの構成の一例を示すブロックである。
図2】本発明の第1実施形態における基地局の構成の一例を示すブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態における送信側無線通信部の構成の一例を示すブロック図である。
図4】本発明の第1実施形態における端末の構成の一例を示すブロック図である。
図5】本発明の第1実施形態における受信側無線通信部の構成の一例を示すブロック図である。
図6】本発明の第1実施形態における位相計算部の構成の一例を示すブロック図である。
図7】本発明の第1実施形態における位相計算部の動作を示すフローチャートである。
図8】本発明の第1実施形態における位相計算部の動作を示すフローチャートである。
図9】本発明の第1実施形態における端末の動作を示すフローチャートである。
図10】本発明の第1実施形態におけるリソースブロックの一例を示す模式図である。
図11】本発明の第1実施形態における通信システムの構成の一例を示すブロック図である。
図12】本発明の第2実施形態における端末の構成の一例を示すブロック図である。
図13】本発明の第2実施形態における基地局の構成の一例を示すブロック図である。
図14】本発明の第3実施形態における位相計算装置の構成の一例を示すブロック図である。
図15】本発明の第4実施形態における位相計算装置の動作環境である通信システムの構成の一例を示すブロック図である。
図16】本発明の第4実施形態における位相計算装置の構成の一例を示すブロック図である。
図17】本発明の第4実施形態における位相計算装置の動作を示すフローチャートである。
図18】本発明の各実施形態における位相計算装置を実現可能なハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、すべての図面において、同等の構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。
【0018】
本実施形態における構成について説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態における通信システムの構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態の通信システム100は、基地局200と端末300とを含む。以下では、基地局200から端末300への下り信号(ダウンリンク)について説明し、端末300から基地局200への上り信号(アップリンク)については説明を省略する。基地局200と端末300は無線通信で接続されている。
【0020】
図2は、本発明の第1実施形態における基地局200の構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、基地局200は、チャネル制御部210と送信側無線通信部220とを含む。
【0021】
チャネル制御部210は、チャネルを推定するために、あらかじめ決められた設定に従って、既知のパターンであるパイロットシンボル(パイロット信号の一例)をリソースブロックに対して離散的に配置する。又、チャネル制御部210は、送信すべきデータを入力して、データシンボル(データ信号の一例)をリソースブロックに配置する。チャネル制御部210は、データシンボルやパイロットシンボル等を含むリソースブロック(送信データ)を送信側無線通信部220へ出力する。データシンボルは、送信すべきデータ(ビット列、音声データ、映像データ等)を変調したシンボルである。送信すべきデータは、例えば、サーバ又は他端末のデータを中継するプロセスによって供給される。
【0022】
図3は、本発明の第1実施形態における送信側無線通信部220の構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、送信側無線通信部220は、D/A変換器510(Digital to Analog変換器)、搬送波発振器520、乗算器530、増幅器540、アンテナ550等を含む。送信側無線通信部220は、電波を介して、受信側無線通信部310(後述)へ、チャネル制御部210から入力したデータシンボル(データ信号の一例)やパイロットシンボル等を含む送信データを送信する。送信側無線通信部220は、データシンボルやパイロットシンボル等を無線送信する一般的な送信回路である。そこで、送信側無線通信部220の構成の更なる詳細の説明を省略する。
【0023】
図4は、本発明の第1実施形態における端末300の構成の一例を示すブロック図である。図4に示すように、端末300は、受信側無線通信部310と、チャネル推定部320と、位相計算部400と、チャネル補間部330と、データシンボル復調部340とを含む。
【0024】
図5は、本発明の第1実施形態における受信側無線通信部310の構成の一例を示すブロック図である。図5に示すように、受信側無線通信部310は、A/D変換器610(Analog to Digital変換器)、搬送波発振器620、乗算器630、増幅器640、アンテナ650等を含む。受信側無線通信部310は、電波を介して、送信側無線通信部220からデータシンボルやパイロットシンボル等の受信を行う。受信側無線通信部310は、自動周波数制御機能を有し、無線受信したデータシンボルやパイロットシンボル等を出力する一般的な受信回路である。そこで、受信側無線通信部310の構成の更なる詳細の説明を省略する。受信側無線通信部310は、データシンボルやパイロットシンボル等を含む受信データを、データシンボル復調部340及びチャネル推定部320へ出力する。
【0025】
チャネル推定部320は、受信側無線通信部310からパイロットシンボルを入力し、入力したパイロットシンボルのチャネル推定値をチャネル補間部330へ出力する。
【0026】
位相計算部400は、端末300及び基地局200の位置(例えば、緯度、経度、及び高度)に関する情報を保持する。そして、位相計算部400は、保持している端末300及び基地局200の位置に関する情報に基づいて、端末300の移動に伴いドップラーシフトに起因して変化する、受信されたパイロットシンボルの位相を計算する。そして、位相計算部400は、計算した位相をチャネル補間部330へ出力する。ここで、位相計算部400は、端末300及び基地局200の位置に関する情報を、必要に応じて、センサーから取得してもよいし、ネットワークを経由して取得してもよい。
【0027】
チャネル補間部330は、チャネル推定部320から入力したパイロットシンボルのチャネル推定値と、位相計算部400から入力したパイロットシンボルの位相とに基づいて、データシンボルのチャネル推定値を補間する。チャネル補間部330は、補間したチャネルをデータシンボル復調部340へ出力する。
【0028】
データシンボル復調部340は、受信側無線通信部310から入力したデータシンボルと、チャネル補間部330から入力した、補間したチャネルとに基づいて、送信元のシンボルを復調する。具体的には、データシンボル復調部340は、受信したデータシンボルをチャネル推定値で除算することで、伝送路で受けた影響を取り除き、送信元のシンボルを復調する。そして、データシンボル復調部340は、送信元のデータを出力する。送信元のデータは、例えば、アプリケーションプログラムのプロセスによって処理される。
【0029】
図6は、本発明の第1実施形態における位相計算部400の構成の一例を示すブロック図である。図6に示すように、位相計算部400は、パラメータ取得部410と、位置情報取得部420と、位置情報格納部430と、移動方向計算部440と、速度情報取得部450と、ドップラーシフト計算部460とを含む。
【0030】
パラメータ取得部410は、キャリア周波数及び基地局200の位置情報を取得する。パラメータ取得部410は、取得したキャリア周波数をドップラーシフト計算部460へ出力し、取得した基地局200の位置情報を移動方向計算部440へ出力する。パラメータ取得部410は、例えば、キャリア周波数と基地局200の位置情報を、端末300が通信エリアで接続開始した際に得られる報知情報から取得する。基地局200の位置情報は、例えば、GPS(Global Positioning System)等の測位システムを用いて取得されてもよいし、基地局200が設置されている場所に関する情報(緯度及び経度、住所等)に基づいて取得されてもよい。
【0031】
位置情報取得部420は、端末300の位置情報を取得する。位置情報取得部420は、取得した位置情報を移動方向計算部440及び位置情報格納部430へ出力する。位置情報は、例えば、端末300の位置を管理するシステム(例えば、GPSや基地局測位等を用いた測位システム)から取得されてもよいし、端末300が属する通信エリアの識別番号等に基づいて取得されてもよい。又は、位置情報は、端末300が有する加速度センサー若しくは速度センサー等を用いて算出されてもよい。
【0032】
位置情報格納部430は、端末300の過去の位置情報を格納する。位置情報格納部430は、格納している位置情報を移動方向計算部440へ出力する。
【0033】
移動方向計算部440は、端末300の移動方向を計算する。移動方向計算部440は、計算した移動方向をドップラーシフト計算部460へ出力する。
【0034】
速度情報取得部450は、端末300の移動速度(移動の速さ)を取得する。速度情報取得部450は、取得した移動速度をドップラーシフト計算部460へ出力する。移動速度は、例えば、端末300が有する加速度センサー若しくは速度センサー等から取得されてもよい。又は、移動速度は、端末300の位置を管理するシステム(例えば、GPSや基地局測位等を用いた測位システム)から取得されてもよい。
【0035】
ドップラーシフト計算部460は、ドップラーシフトを計算する。ドップラーシフト計算部460は、計算したドップラーシフトをチャネル補間部330へ出力する。
【0036】
本実施形態における動作について説明する。
【0037】
図7及び図8は、本発明の第1実施形態における位相計算部400の動作を示すフローチャートである。
【0038】
まず、パラメータ取得部410は、基地局200の位置情報(位置O)を取得し、取得した位置情報を移動方向計算部440へ出力する(ステップS110)。
【0039】
次に、位置情報取得部420は、端末300の現在の位置情報(位置P)を取得し、取得した位置情報を移動方向計算部440へ出力する(ステップS120)。
【0040】
次に、位置情報格納部430は、過去の端末300の位置情報(位置P’)を取得し、取得した位置情報を移動方向計算部440へ出力する(ステップS130)。ここで、上記ステップS110乃至S130の処理順は任意であってよい。
【0041】
次に、移動方向計算部440は、例えば、式(1)を用いて端末300の移動方向θを計算する(ステップS140)。ここで、移動方向θとは、角P’OPのことである。
【0042】
ここで、OPは位置Oと位置Pの距離、OP’は位置Oと位置P’の距離、PP’は位置Pと位置P’の距離である。又、移動方向θは、例えば、弧度法(単位:ラジアン)で表現されてもよいし、度数法(単位:度)で表現されてもよいし、回転数(単位:回転)で表現されてもよい。以下では、移動方向θが、弧度法で表現され、0(ラジアン)以上且つπ(ラジアン)未満の値を取る場合を例に説明する。
【0043】
次に、移動方向計算部440は、算出した端末300の移動方向をドップラーシフト計算部460へ出力する(ステップS150)。
【0044】
次に、位置情報取得部420は、端末300の現在の位置情報を位置情報格納部430へ保存する(ステップS160)。位置情報格納部430に保存されている端末300の現在の位置情報の初期値は、端末300の通信開始時に得られた端末300の位置情報や人が手動で設定した端末300の座標等であってもよい。尚、上記ステップS150乃至S160の処理順は任意であってよい。
【0045】
次に、パラメータ取得部410は、キャリア周波数情報(キャリア周波数f)を取得し、取得したキャリア周波数情報をドップラーシフト計算部460へ出力する(ステップS210)。
【0046】
次に、速度情報取得部450は、端末300の現在の速度情報(速度v)を取得し、取得した速度情報をドップラーシフト計算部460へ出力する(ステップS220)。ここで、上記ステップS210乃至S220の処理順は任意であってよい。
【0047】
次に、ドップラーシフト計算部460は、例えば、式(2)を用いてドップラーシフトに対応する位相差θ(以下、単に「ドップラーシフト」とも称す)を計算する(ステップS230)。
【0048】
ここで、cは光速であり、vは端末の移動の速さであり、Tは移動方向又は端末の移動の速さの計算周期(以下では、予め決められた定数であることとする)である。又、ドップラーシフトθは、例えば、弧度法で表現されてもよいし、度数法で表現されてもよいし、回転数で表現されてもよい。以下では、ドップラーシフトθが、弧度法で表現される場合を例に説明する。又、ドップラーシフトθは、例えば、0(ラジアン)以上の値を取ることとし、例えば、2π(ラジアン)以上の値も取り得る。
【0049】
次に、ドップラーシフト計算部460は、算出したドップラーシフトを表す情報をチャネル補間部330へ出力する(ステップS240)。
【0050】
図9は、本発明の第1実施形態における端末300の動作を示すフローチャートである。
【0051】
まず、チャネル推定部320は、受信したパイロットシンボルに基づいて、パイロットシンボルのチャネル推定値θを算出して、チャネル補間部330へ出力する(ステップS310)。ここで、チャネル推定値θは、0(ラジアン)以上且つ2π(ラジアン)未満であることとする。尚、本実施形態では、チャネル推定値として位相にのみ着目する。
【0052】
次に、チャネル推定部320は、例えば、式(3)を用いてパイロットシンボルの真のチャネル推定値θ’を算出する(ステップS320)。
【0053】
ここで、[]は小数点以下の切り捨てを表す。第1項のチャネル推定値に加え、第2項で位相の回転数の整数部分を加算することによって、真のチャネル推定値が得られる。ここで、真のチャネル推定値θ’は、0(ラジアン)以上の値を取り、例えば、2π(ラジアン)以上の値も取り得る。
【0054】
次に、チャネル補間部330は、データシンボルのチャネル推定値を補間する(ステップS330)。チャネル補間部330は、例えば、式(4)を用いて、パイロットシンボルの推定値θとθp+1の間にあるN個のデータシンボルのチャネル推定値θ’p,nを算出する。
【0055】
このとき、データシンボルのチャネル推定値の補間は、他の手法を用いて行われてもよい。
【0056】
データシンボル復調部340は、受信側無線通信部310を介して得られたデータシンボルと、チャネル補間部330によって補間されたチャネル推定値とに基づいて、送信元のシンボルを復調する(ステップS340)。
【0057】
図10は、本発明の第1実施形態におけるリソースブロックの一例を示す模式図である。尚、図10では簡略化のためリソースブロックのうち時間方向にのみシンボルを配置している。図10に示すように、受信した各データシンボルに対応して、式(4)に示したチャネル推定値θ’p,nが補間される。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の通信システム100では、移動方向計算部440は、基地局200の位置情報と端末300の位置情報とを用いて、端末300の移動方向を算出する。そして、ドップラーシフト計算部460は、端末300の移動方向と移動速度とを用いて、ドップラーシフトθを算出する。ここで、一般的な手法で得られるチャネル推定におけるパイロットシンボルの推定値θのとりうる範囲は0≦θ<2πである。そのため、ドップラーシフトθが大きい場合に、算出したドップラーシフトをそのままチャネル推定の補間に使用すると補間精度が劣化する可能性がある。しかしながら、チャネル推定部320は、式(3)に示す様に、ドップラーシフトθが2π以上の場合であっても、真のチャネル推定値θ’を算出する。そして、チャネル補間部330は、真のチャネル推定値θ’を用いて、データシンボルのチャネル推定値θ’p,nを算出する。そして、データシンボル復調部340は、データシンボルのチャネル推定値θ’p,nを用いて、送信元のシンボルを復調する。
【0059】
又、本実施形態の通信システム100では、ドップラーシフトθが2π以上になり得る場合であっても、チャネル推定精度の劣化を抑制するために、パイロットシンボルの繰り返し周期を短くする必要がない。つまり、伝送データの中でパイロットシンボルが占める比率が大きくならないので、伝送効率が低下しない。
【0060】
従って、本実施形態の通信システム100には、無線通信においてドップラーシフトが大きい場合にも、伝送信号の中にパイロット信号が占める比率を増加させることなく、ドップラーシフトに対応する位相差を正しく計算できるという効果がある。
【0061】
又、本実施形態の通信システム100では、式(3)に示す様に、ドップラーシフトθは、位相の回転数の整数部分の算出のみに利用される。従って、本実施形態の通信システム100には、端末300の、位置情報又は移動速度の、精度又は取得頻度が低い場合であっても、チャネル推定精度の劣化を抑制することができるという効果がある。
【0062】
一般的に、通信機は1つの搬送波発振器しか含まない。例えば、特許文献1に記載の技術では、ドップラーシフトが1つの内部発振器(搬送波発振器)に入力され、その内部発振機がドップラーシフトを補正した周波数信号を発振する。そのため、通信機が1対n(nは2以上の整数)通信をしている場合に、ある通信機に関するドップラーシフトの補正が別の通信機との通信に悪影響を与える恐れがある。一方、本実施形態の通信システム100では、位相計算部400によって計算されたドップラーシフトはチャネル補間部330に入力される。そのため、本実施形態の通信システム100では、ドップラーシフトを各通信機に合わせてフィードバックすることが可能である。
(第2実施形態)
本発明の第1実施形態を基本とする、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態は基地局から端末へのダウンリンクの通信に関するのに対して、本実施形態は端末から基地局へのアップリンクの通信に関する。尚、本実施形態は単独で用いられてもよいし、第1実施形態と組み合わせて用いられてもよい。
【0063】
本実施形態における構成について説明する。
【0064】
図11は、本発明の第1実施形態における通信システムの構成の一例を示すブロック図である。図11に示すように、本実施形態の通信システム101は、基地局201と端末301とを含む。基地局201と端末301は無線通信で接続されている。以下では、端末301から基地局201への上り信号(アップリンク)について説明し、基地局201から端末301への下り信号(ダウンリンク)については説明を省略する。
【0065】
図12は、本発明の第2実施形態における端末301の構成の一例を示すブロック図である。図12に示すように、端末301は、チャネル制御部210と、送信側無線通信部221と、位相計算部400とを含む。
【0066】
送信側無線通信部221は、電波を介して、受信側無線通信部311(後述)へ、チャネル制御部210及び位相計算部400から入力したデータシンボルやパイロットシンボル等を含む送信データを送信する。ここで、データシンボルは、位相計算部400によって算出されたドップラーシフト(端末301の移動に伴いドップラーシフトに起因して変化する、受信されたパイロットシンボルの位相)の情報を含む。送信側無線通信部221のその他の構成は、第1実施形態における送信側無線通信部220の構成と同様である。
【0067】
端末301のその他の構成は、第1実施形態における基地局200の構成と同様である。
【0068】
図13は、本発明の第2実施形態における基地局201の構成の一例を示すブロック図である。図13に示すように、基地局201は、受信側無線通信部311と、チャネル推定部320と、チャネル補間部330と、データシンボル復調部340とを含む。
【0069】
受信側無線通信部311は、電波を介して、送信側無線通信部221からデータシンボルやパイロットシンボル等の受信を行う。受信側無線通信部311は、送信側無線通信部221から受信したデータシンボルに含まれるドップラーシフトの情報をチャネル補間部330へ出力する。受信側無線通信部311は、データシンボルやパイロットシンボル等を含む受信データを、データシンボル復調部340、チャネル推定部320、及びチャネル補間部330へ出力する。
【0070】
チャネル補間部330は、チャネル推定部320から入力したパイロットシンボルのチャネル推定値と、受信側無線通信部311から入力した受信データに含まれるドップラーシフトの情報とに基づいて、データシンボルのチャネル推定値を補間する。チャネル補間部330は、補間したチャネルをデータシンボル復調部340へ出力する。
受信側無線通信部311のその他の構成は、第1実施形態における受信側無線通信部310の構成と同様である。
【0071】
基地局201のその他の構成は、第1実施形態における端末300の構成と同様である。
【0072】
本実施形態における動作について説明する。
【0073】
本実施形態の通信システム101は、ドップラーシフトが送信側(端末301)で計算されることを除いて、第1実施形態と同様に動作する。
【0074】
以上説明したように、本実施形態の通信システム101では、ドップラーシフトが送信側(端末301)で計算されることを除いて、第1実施形態と同様に動作する。従って、本実施形態の通信システム101には、第1実施形態と同様な効果がある。
(第3実施形態)
本発明の第1実施形態又は第2実施形態を基本とする、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態及び第2実施形態では計測された端末の位置及び速さに基づいてドップラーシフトが計算されるのに対して、本実施形態では端末が存在している航走体の位置及び速さに基づいてドップラーシフトが計算される。
【0075】
本実施形態における構成について説明する。
【0076】
図14は、本発明の第3実施形態における位相計算装置402の構成の一例を示すブロック図である。図14に示すように、本実施形態における位相計算装置402は、パラメータ取得部410と、運行情報取得部472と、位置情報格納部430と、移動方向計算部440と、ドップラーシフト計算部460とを含む。位相計算装置402は、第1実施形態及び第2実施形態における位相計算部400を代替する装置である。即ち、第1実施形態及び第2実施形態における位相計算部400の位置情報取得部420及び速度情報取得部450の代わりに、本実施形態では運行情報取得部472が使用される。
【0077】
運行情報取得部472は、端末が存在している航走体(列車、航空機、衛星等)の運行情報を保持する。運行情報取得部472は、例えば、鉄道会社や宇宙航空会社等の運行管理システムと連携することによって、端末と共に移動している航走体のリアルタイムの位置情報及び速度情報を格納している。運行情報取得部472は、航走体の位置情報を端末の位置情報として位置情報格納部430へ出力する。又、運行情報取得部472は、航走体の速度情報を端末の速度情報としてドップラーシフト計算部460へ出力する。ここで、例えば、端末における電波の受信範囲(セル)を限定することによって、端末と航走体の移動(位置及び速さ)を一致させてもよい。
【0078】
位相計算装置402のその他の構成及び動作は、第1実施形態及び第2実施形態における位相計算部400の構成及び動作と同じである。
【0079】
以上説明したように、本実施形態における位相計算装置402は、第1実施形態及び第2実施形態における位相計算部400と同様に動作する。従って、本実施形態における位相計算装置402には、無線通信においてドップラーシフトが大きい場合にも、伝送信号の中にパイロット信号が占める比率を増加させることなく、ドップラーシフトに対応する位相差を正しく計算できるという効果がある。
【0080】
更に、本実施形態における位相計算装置402は、第1実施形態及び第2実施形態における、位置情報取得部420及び速度情報取得部450を含まない。従って、本実施形態における位相計算装置402には、端末のGPSや加速度センサー等を使用できない場合であっても、ドップラーシフトに対応する位相差を正しく計算できるという効果がある。
(第4実施形態)
本発明の各実施形態の基本である、本発明の第4実施形態について説明する。
【0081】
本実施形態における構成について説明する。
【0082】
図15は、本発明の第4実施形態における位相計算装置の動作環境である通信システム105の構成の一例を示すブロック図である。図15に示すように、本実施形態の通信システム105は、基地局205と端末305とを含む。基地局205と端末305は無線通信で接続されている。無線通信に使用されるキャリアは周波数f(予め決められた値)を有することとする。又、キャリアの上で変調されたパイロット信号の繰り返し周期は周期T(予め決められた値)であることとする。又、基地局205が存在する位置を第1位置Oで表すこととする。又、端末305が存在した位置を第1位置P’で表し、端末305の移動の後に端末305が存在した位置を第2位置Pで表すこととする。又、移動のときの端末305の速さを速さvで表すこととする。端末305は、位相計算装置405を含む。
【0083】
図16は、本発明の第4実施形態における位相計算装置405の構成の一例を示すブロック図である。図16に示すように、本実施形態の位相計算装置405は、移動方向計算部445と、ドップラーシフト計算部465とを含む。
【0084】
本実施形態における動作について説明する。
【0085】
図17は、本発明の第4実施形態における位相計算装置405の動作を示すフローチャートである。
【0086】
移動方向計算部445は、第1位置P’、第2位置P、及び第3位置Oを表す情報に基づいて、移動の方向を計算する(ステップS510)。
【0087】
ドップラーシフト計算部465は、移動方向計算部445によって計算された方向、速さv、周波数f、及び周期Tを表す情報に基づいて、キャリアを受信した際の移動に起因するドップラーシフトに対応する、受信したキャリアにおける位相差を計算する(ステップS520)。ここで、位相差を表す回転数の取り得る値の範囲の大きさは1回転より大きい(位相差は1回転より大きい値も取り得る)。
【0088】
以上説明したように、本実施形態の位相計算装置405では、移動方向計算部445が端末305の移動の方向を計算する。そして、ドップラーシフト計算部465は、計算された移動の方向及び速さvを表す情報等に基づいて、ドップラーシフトに対応する、受信したキャリアにおける位相差を計算する。ここで、ドップラーシフト計算部465は、ドップラーシフトに対応する位相差を表す回転数が1回転以上の場合であっても、位相差を計算できる。そのため、ドップラーシフト計算部465では、位相差を正しく計算するために、パイロット信号の繰り返し周期Tを短くする必要がない。従って、本実施形態の位相計算装置405には、無線通信においてドップラーシフトが大きい場合にも、伝送信号の中にパイロット信号が占める比率を増加させることなく、ドップラーシフトに対応する位相差を正しく計算できるという効果がある。
【0089】
尚、ドップラーシフト計算部465は、位相差を表す回転数の整数部分を計算して、位相差の計算結果としてもよい。この場合には、位相差を表す回転数の小数部分は、受信側無線通信手段(例えば、受信側無線通信部310、311)の自動周波数制御機能によって処理される。
【0090】
又、移動方向計算部445は、端末305の測位を行う測位システムから第1位置P’及び第2位置Pを表す情報を取得してもよい。又、移動方向計算部445は、端末305が有する加速度センサー若しくは速度センサー、又は測位システムから端末305の速さvを表す情報を取得してもよい。
【0091】
又、移動方向計算部445は、第1位置P’、第2位置P、及び端末305の速さvを表す情報として、端末305が存在する航走体の位置を管理する運行管理システムから航走体の位置及び速さに関する情報を取得してもよい。
【0092】
図18は、本発明の各実施形態における位相計算部400並びに位相計算装置402及び405(以下、「位相計算装置等」と称す)を実現可能なハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0093】
位相計算装置等901は、記憶装置902と、CPU(Central Processing Unit)903と、キーボード904と、モニタ905と、I/O(Input/Output)装置908とを備え、これらが内部バス906によって接続されている。記憶装置902は、位相計算装置等901のCPU903の動作プログラムを格納する。CPU903は、位相計算装置等901の全体を制御し、記憶装置902に格納された動作プログラムを実行し、I/O装置908によって位相計算装置等901のプログラムの実行やデータの送受信を行なう。尚、上記の位相計算装置等901の内部構成は一例である。位相計算装置等901は、必要に応じて、キーボード904、モニタ905を接続する装置構成であってもよい。
【0094】
上述した本発明の各実施形態における位相計算装置等901は、専用の装置によって実現してもよいが、I/O装置908が外部との通信を実行するハードウェアの動作以外は、コンピュータ(情報処理装置)によっても実現可能である。この場合、係るコンピュータは、記憶装置902に格納されたソフトウェア・プログラムをCPU903に読み出し、読み出したソフトウェア・プログラムをCPU903において実行する。上述した各実施形態の場合、係るソフトウェア・プログラムには、上述したところの、図6、14、16に示した、位相計算装置等の各部の機能を実現可能な記述がなされていればよい。但し、これらの各部には、適宜ハードウェアを含むことも想定される。そして、このような場合、係るソフトウェア・プログラム(コンピュータ・プログラム)は、本発明を構成すると捉えることができる。更に、係るソフトウェア・プログラムを格納した、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体も、本発明を構成すると捉えることができる。
【0095】
以上、本発明を、上述した各実施形態およびその変形例によって例示的に説明した。しかしながら、本発明の技術的範囲は、上述した各実施形態およびその変形例に記載した範囲に限定されない。当業者には、係る実施形態に対して多様な変更又は改良を加えることが可能であることは明らかである。そのような場合、係る変更又は改良を加えた新たな実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれ得る。そしてこのことは、特許請求の範囲に記載した事項から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、無線通信において高速移動端末のドップラーシフトの影響を補正する用途において利用できる。
【符号の説明】
【0097】
100、101、105 通信システム
200、201、205 基地局
210 チャネル制御部
220、221 送信側無線通信部
300、301、305 端末
310、311 受信側無線通信部
320 チャネル推定部
330 チャネル補間部
340 データシンボル復調部
400 位相計算部
402、405 位相計算装置
410 パラメータ取得部
420 位置情報取得部
430 位置情報格納部
440、445 移動方向計算部
450 速度情報取得部
460、465 ドップラーシフト計算部
472 運行情報取得部
510 D/A変換器
520 搬送波発振器
530 乗算器
540 増幅器
550 アンテナ
610 A/D変換器
620 搬送波発振器
630 乗算器
640 増幅器
650 アンテナ
901 位相計算装置等
902 記憶装置
903 CPU
904 キーボード
905 モニタ
906 内部バス
908 I/O装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18