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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】吐水装置およびトイレ装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20240903BHJP
   E03C 1/08 20060101ALI20240903BHJP
   E03D 9/00 20060101ALI20240903BHJP
   E03D 1/24 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
E03C1/042 B
E03C1/08
E03D9/00 D
E03D1/24
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020145322
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040554
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 克史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】川田 賢志
(72)【発明者】
【氏名】川俣 淳
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-218800(JP,A)
【文献】実開平04-017458(JP,U)
【文献】特開2009-293311(JP,A)
【文献】特開2000-257127(JP,A)
【文献】特開2020-128654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00- 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部の下部に吐水口を有するスパウト本体と、
前記スパウト本体の内部に設けられ、前記吐水口に水を導く流路と
を備え、
前記流路は、
前記スパウト本体の基端部から前記先端部に前記水を導く上流側流路と、
前記上流側流路から屈曲し、前記水の吐水方向に沿って延びて前記上流側流路と前記吐水口とを接続する下流側流路と
を備え、
前記下流側流路の内周面よりも内側に、前記下流側流路から前記上流側流路に突出する突起部と、
前記下流側流路に設けられ、前記下流側流路における前記水の流れを整える整流部材と
をさらに備え
前記突起部は、前記整流部材に設けられ、
前記整流部材を前記吐水方向に沿って上流から下流に見た場合の開口面積は、吐水装置の側断面視において、前記上流側流路と前記下流側流路との境界縁部のうち前記スパウト本体の基端部側の端部から前記吐水方向に沿って延びる仮想線で前記上流側流路を切断した場合の前記上流側流路の流路断面積と同一である、吐水装置。
【請求項2】
前記突起部は、
前記下流側流路の内周面と同心円状に配置された筒状部と、
前記筒状部の外周面から前記下流側流路の内周面に向かって放射状に延びる複数の隔壁部と
を備える、請求項1に記載の吐水装置。
【請求項3】
前記筒状部は、前記上流側流路から前記水が流入する流入部を有し、
前記流入部の内周面は、前記吐水口に向かって下り傾斜する、請求項2に記載の吐水装置。
【請求項4】
前記突起部は、前記整流部材の外周部よりも内側に設けられ、
前記整流部材の外周部の上流端は、前記上流側流路と前記下流側流路との境界縁部よりも下流に位置する、請求項1~3のいずれか一つに記載の吐水装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一つに記載の吐水装置を備えるトイレ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、吐水装置およびトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水洗大便器のタンクに貯留される水の一部を手洗い用の水として吐水する吐水装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-158951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吐水装置は、種々の事情からスパウト内の流路が狭く設計される場合がある。たとえば、スパウトが金属製である場合、流路を金属で構成すると金属のメッキが剥がれて水に混入してしまうおそれがあるため、金属製のスパウトの内部に樹脂製の流路部材が設けられる場合がある。この場合、流路は、金属製のスパウトの内径よりもひと回り狭くなってしまう。また、デザイン性向上の観点からスパウト自体がスリム化される場合もある。
【0005】
流路が狭く設計された場合であっても、吐水口の開口径は、十分な流径を確保するためにある程度の大きさを確保する必要がある。しかしながら、流路の断面積と吐水口の開口面積との差が大きいと、吐水口から吐出される水に偏りが生じて適切な吐水が行われなくなるおそれがある。
【0006】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、吐水口に比して流路が狭く設計される場合であっても、吐水口から吐出される水に偏りを生じさせ難い吐水装置およびトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る吐水装置は、先端部の下部に吐水口を有するスパウト本体と、前記スパウト本体の内部に設けられ、前記吐水口に水を導く流路とを備え、前記流路は、前記スパウト本体の基端部から前記先端部に前記水を導く上流側流路と、前記上流側流路から屈曲し、前記水の吐水方向に沿って延びて前記上流側流路と前記吐水口とを接続する下流側流路とを備え、前記下流側流路の内周面よりも内側に、前記下流側流路から前記上流側流路に突出する突起部をさらに備える。
【0008】
特許文献1には、上流側流路と下流側流路との境界縁部、言い換えれば、上流側流路から下流側流路への流入口の縁部に突起部が設けられた吐水装置が開示されている。具体的には、特許文献1に記載の突起部は、上記境界縁部のうち、スパウト本体の基端部側に設けられている。これにより、特許文献1に記載の吐水装置では、下流側流路に流入する水がスパウト本体の基端部側に偏ることを抑制している。
【0009】
しかしながら、たとえば上流側流路が狭く設計された場合、特許文献1の構成では、下流側流路に流入する水がスパウト本体の先端部側に偏るおそれがある。これは、上流側流路と下流側流路との境界縁部に設けられた突起部に流速の速い水が衝突して跳ね上がることで、下流側流路のうちスパウト本体の基端部側に水が流入し難くなるためである。
【0010】
これに対し、実施形態の一態様に係る吐水装置では、突起部が、下流側流路の内周面よりも内側に設けられる。このため、実施形態の一態様に係る吐水装置によれば、上流側流路が狭く設計された場合でも、下流側流路に流入する水がスパウト本体の先端部側に偏ることを抑制することができる。
【0011】
このように、実施形態の一態様に係る吐水装置は、下流側流路の内周面よりも内側に、下流側流路から上流側流路に突出する突起部を備えることで、下流側流路内における水の偏りを抑制することができる。したがって、実施形態の一態様に係る吐水装置によれば、吐水口から吐出される水の流れに乱れが生じるなど、適切な吐水が行われなくなることを抑制することができる。
【0012】
また、上記した吐水装置では、前記突起部は、前記下流側流路の内周面と同心円状に配置された筒状部と、前記筒状部の外周面から前記下流側流路の内周面に向かって放射状に延びる複数の隔壁部とを備える。かかる構成とすることにより、突起部に衝突した水を下流側流路へ流入し易くすることができる。
【0013】
また、上記した吐水装置では、前記筒状部は、前記上流側流路から前記水が流入する流入部を有し、前記流入部の内周面は、前記吐水口に向かって下り傾斜する。かかる構成とすることにより、筒状部の流入部付近に空気溜まりが形成されることを抑制することができる。
【0014】
また、上記した吐水装置は、前記下流側流路に設けられ、前記下流側流路における前記水の流れを整える整流部材を備え、前記突起部は、前記整流部材に設けられる。かかる構成とすることにより、突起部を容易に設けることができる。
【0015】
また、上記した吐水装置では、前記突起部は、前記整流部材の外周部よりも内側に設けられ、前記整流部材の外周部の上流端は、前記上流側流路と前記下流側流路との境界縁部よりも下流に位置する。かかる構成とすることにより、吐水口全体に洗浄水がより満遍なく充填されるため、流路を狭くしたとしても十分な手洗性能を確保することができる。
【0016】
また、上記した吐水装置では、前記整流部材を前記吐水方向に沿って上流から下流に見た場合の開口面積は、前記吐水装置の側断面視において、前記上流側流路と前記下流側流路との境界縁部のうち前記スパウト本体の基端部側の端部から前記吐水方向に沿って延びる仮想線で前記上流側流路を切断した場合の前記上流側流路の流路断面積と同一である。
【0017】
上流側流路から下流側流路に水が流入する際に、流路断面積が急激に変化すると、吐水口から吐出される洗浄水に乱れが生じやすくなる。これに対し、整流部材における上流側の開口面積を、整流部材に流入する直前における上流側流路の流路断面積と同等に設計することで、吐水口から吐出される洗浄水に乱れを生じさせ難くすることができる。
【発明の効果】
【0018】
実施形態の一態様によれば、吐水口に比して流路が狭く設計される場合であっても、吐水口から吐出される水に偏りを生じさせ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態に係るトイレ装置の斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るスパウトの側断面図である。
図3図3は、実施形態に係る整流部材の斜視図である。
図4図4は、実施形態に係る整流部材を吐水方向に沿って上流から下流に見た平面図である。
図5図5は、図2における整流部材周辺の拡大図である。
図6図6は、変形例に係る第1筒状部の上流側端部周辺の模式拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する吐水装置およびトイレ装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0021】
<トイレ装置の全体構成>
まず、図1を参照して実施形態に係るトイレ装置の全体構成について説明する。図1は、実施形態に係るトイレ装置の斜視図である。
【0022】
なお、図1には、説明を分かりやすくするために、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系が図示されている。かかる直交座標系は、他の図においても図示される場合がある。また、かかる直交座標系は、Y軸の正方向視を正面と規定し、X軸の正方向視を左側面、Xの負方向視を右側面、Z軸の負方向視を平面(「上面」ともいう)と規定している。このため、以下の説明では、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向(あるいは高さ方向)という場合がある。
【0023】
図1に示すように、実施形態に係るトイレ装置1は、陶器製の便器本体2と、手洗器付洗浄水タンク装置3とを備える。
【0024】
便器本体2は、たとえば、汚物を受けるボウル部、ボウル部の後方(上流側)に形成される導水路と、ボウル部の下部と連通するトラップ管路等を備える。ボウル部の上縁には、リムが形成され、このリムの後方側には、導水路から供給される洗浄水を吐水するリム吐水口が形成される。リム吐水口から吐水された洗浄水は、旋回しながら下降してボウル部を洗浄する。
【0025】
なお、便器本体2は、ボウル部内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す、いわゆる、洗い落し式の水洗大便器であってもよい。また、便器本体2は、サイホン作用を利用してボウル部内の汚物を吸い込んで排水トラップ管路から一気に外部に排出する、いわゆる、サイホン式の水洗大便器であってもよい。
【0026】
手洗器付洗浄水タンク装置3は、便器本体2の上面に設置される。手洗器付洗浄水タンク装置3は、便器洗浄用の洗浄水を便器本体2の導水路に供給する。
【0027】
手洗器付洗浄水タンク装置3は、陶器製の外装タンク4と、外装タンク4の上部に設置された手洗器5(吐水装置の一例)とを備える。
【0028】
外装タンク4の内部には、図示しない内装タンクが配置される。この内装タンクは、たとえば、水道等の給水源に接続されている給水管から供給される便器洗浄用の洗浄水を貯水する実質的な貯水タンクとして機能する。
【0029】
外装タンク4及び内装タンクの底面には、上述した便器本体2の導水路に連通するタンク排水口が上下方向に貫くように形成されている。タンク排水口の上縁には、弁座が形成されており、この弁座には、内装タンク内の排水弁装置の排水弁体が接触可能に設けられている。すなわち、手洗器付洗浄水タンク装置3の排水弁装置は、排水弁体の上下動によりタンク排水口が開閉されるようになっている。手洗器付洗浄水タンク装置3は、たとえば手動レバー等を含む図示しない操作装置を備えており、排水弁装置は、かかる操作装置によって操作される。
【0030】
また、外装タンク4の内部には、給水装置が配置される。給水装置は、後述する手洗器5のスパウト6に対し、図示しない手洗給水管を介して洗浄水を供給する。具体的には、給水装置は、給水管から供給された洗浄水の大半について内装タンク内に給水するとともに、一部の洗浄水を手洗給水管を介してスパウト6に供給する。スパウト6に供給された洗浄水は、スパウト6から手洗器5のボウル部7内に吐出されることにより、手洗い用の水として利用される。スパウト6からボウル部7に吐出された洗浄水は、ボウル部7の底部に設けられた図示しない排水口から外装タンク4内に流入して内装タンクに貯留されることにより、便器洗浄に利用される。
【0031】
なお、上述した手洗器付洗浄水タンク装置3の給水装置、排水弁装置、及び操作装置のそれぞれの構造については、従来のものと同様のものであるため、具体的な説明は省略する。
【0032】
手洗器5は、上述したようにスパウト6とボウル部7とを備える。スパウト6は、ボウル部7の後方の壁部に設けられており、図示しない給水装置から手洗給水管を介して供給される洗浄水をボウル部7へ吐出する。
【0033】
<スパウトの内部構成>
次に、実施形態に係るスパウト6の内部構成について図2を参照して説明する。図2は、実施形態に係るスパウト6の側断面図である。
【0034】
図2に示すように、スパウト6は、スパウト本体10と、流路部材20と、整流部材30とを備える。
【0035】
スパウト本体10は、スパウト6の外観を構成する部材であり、たとえば金属で形成される。スパウト本体10は、ボウル部7に固定される基端部から上方(Z軸正方向)かつ前方(X軸正方向)に延在する。スパウト本体10における先端部の下部には、吐水口11が形成されている。
【0036】
流路部材20は、たとえば樹脂製であり、中空状のスパウト本体10の内部に配置される。流路部材20は、給水装置から手洗給水管を介して供給される洗浄水を吐水口11へ導くための流路21を有する。かかる流路21は、上流側流路22と、下流側流路23とを備える。
【0037】
上流側流路22は、スパウト本体10の形状に沿うようにスパウト本体10の基端部から上方(Z軸正方向)かつ前方(X軸正方向)に延在する。上流側流路22は、基端部において手洗給水管に接続されており、スパウト本体10の基端部から先端部に洗浄水を導く。上流側流路22は、基端部よりも先端部の方が内径が狭くなっている。
【0038】
下流側流路23は、吐水口11から吐出される洗浄水の吐水方向S(前方かつ下方)に沿って延びる流路であり、上流側流路22から直角に屈曲して上流側流路22と吐水口11とを接続する。
【0039】
下流側流路23は、上流側流路22における先端部側の底面221に開口している。ここで、上流側流路22における先端部側の底面221は、洗浄水の吐水方向Sに対して直交している。言い換えれば、上流側流路22における先端部側の底面221は、下流側流路23に対して直交している。したがって、上流側流路22の底面221に沿って流れる洗浄水は、下流側流路23への流入口(すなわち、上流側流路22と下流側流路23との境界縁部24(図5参照))に対して平行に流れる。
【0040】
整流部材30は、下流側流路23における洗浄水の流れを整える部材であり、下流側流路23に対して着脱可能に嵌め込まれる。かかる整流部材30には、下流側流路23の流入口から上流側流路22の内部に突出する突起部40が設けられている。突起部40は、洗浄水の吐水方向Sに沿って突出する。
【0041】
突起部40は、上流側流路22の内部を下流側流路23の流入口に対して平行に流れる洗浄水とぶつかることにより、下流側流路23に流入する洗浄水を分散させる。これにより、下流側流路23内に洗浄水の偏りが生じることを抑制することができる。
【0042】
ここで、実施形態に係る突起部40は、下流側流路23の内周面231よりも内側に設けられる。吐水口11に比して流路21が狭く設計される場合であっても、吐水口11から吐出される洗浄水に偏りを生じさせ難くすることができる。以下、この点について説明する。
【0043】
特許文献1には、上流側流路と下流側流路との境界縁部、言い換えれば、上流側流路から下流側流路への流入口の縁部に突起部が設けられた吐水装置が開示されている。具体的には、特許文献1に記載の突起部は、上記境界縁部のうち、スパウト本体の基端部側に設けられている。これにより、特許文献1に記載の吐水装置では、下流側流路に流入する水がスパウト本体の基端部側に偏ることを抑制している。
【0044】
しかしながら、たとえば上流側流路が狭く設計された場合、特許文献1の構成では、下流側流路に流入する水がスパウト本体の先端部側に偏るおそれがある。これは、上流側流路と下流側流路との境界縁部に設けられた突起部に流速の速い水が衝突して跳ね上がることで、下流側流路のうちスパウト本体の基端部側に水が流入し難くなるためである。
【0045】
これに対し、実施形態に係る手洗器5では、突起部40が、下流側流路23の内周面231よりも内側に設けられる。このため、実施形態に係る手洗器5によれば、上流側流路22が狭く設計された場合でも、下流側流路23に流入する洗浄水がスパウト本体10の先端部側に偏ることを抑制することができる。
【0046】
このように、実施形態に係る手洗器5は、下流側流路23の内周面231よりも内側に、下流側流路23から上流側流路22に突出する突起部40を備えることで、下流側流路23内における洗浄水の偏りを抑制することができる。具体的には、実施形態に係る突起部40は、流入する洗浄水の量が少なくなり易いスパウト本体10先端側の下流側流路23に効率よく洗浄水を供給することで、下流側流路23内における洗浄水の偏りを抑制することができる。
【0047】
したがって、実施形態に係る手洗器5によれば、吐水口11から吐出される水の流れに乱れが生じるなど、適切な吐水が行われなくなることを抑制することができる。
【0048】
次に、突起部40が設けられる整流部材30の具体的な構成について図3図5を参照して説明する。図3は、実施形態に係る整流部材30の斜視図である。図4は、実施形態に係る整流部材30を吐水方向Sに沿って上流から下流に見た平面図である。図5は、図2における整流部材30周辺の拡大図である。なお、図5に示す整流部材30の断面は、図4に示すV-V線矢視における断面に相当する。
【0049】
図3および図4に示すように、整流部材30は、円筒状の外周筒部31(整流部材の外周部の一例に相当)を有する。外周筒部31は、下流側流路23の内周面231に当接する。外周筒部31の上流端311(図5参照)は、上流側流路22と下流側流路23との境界縁部24よりも下流に位置する。かかる構成とすることで、吐水口11全体に洗浄水がより満遍なく充填されるため、流路21を狭くしたとしても十分な手洗性能を確保することができる。
【0050】
突起部40は、整流部材30の外周筒部31よりも内側に設けられる。具体的には、突起部40は、第1筒状部41と、複数の第1隔壁部42と、複数の柱状部43とを備える。第1筒状部41、第1隔壁部42および柱状部43は、いずれも上流側流路22に突出している。すなわち、第1筒状部41、第1隔壁部42および柱状部43の各上流側端部は、上流側流路22と下流側流路23との境界縁部24よりも上流側流路22側に位置している。また、整流部材30は、第2筒状部32と、複数の第2隔壁部33,34とを備える。
【0051】
第1筒状部41は、整流部材30の外周筒部31の内側に設けられる筒状の部位である。第1筒状部41は、整流部材30の外周筒部31と同心円状に、言い換えれば、下流側流路23の内周面231と同心円状に配置される。
【0052】
第2筒状部32は、第1筒状部41と外周筒部31との間に、第1筒状部41および外周筒部31と同心円状に設けられる筒状の部位である。第1筒状部41と異なり、第2筒状部32は、上流側流路22に突出していない。すなわち、第2筒状部32の上流側端部は、上流側流路22と下流側流路23との境界縁部24よりも下流側流路23側に位置している。
【0053】
複数(ここでは、8個)の第1隔壁部42は、第1筒状部41と第2筒状部32との間に架け渡された板状の部位であり、第1筒状部41の外周面から下流側流路23の内周面231に向かって放射状に延びている。複数の第1隔壁部42により、第1筒状部41と第2筒状部32との間に形成される流路は、複数(ここでは、8個)の個別流路に区画される。
【0054】
このように、突起部40は、下流側流路23の内周面231と同心円状に配置された第1筒状部41と、第1筒状部41の外周面から下流側流路23の内周面231に向かって放射状に延びる複数の第1隔壁部42とを備える。かかる構成とすることにより、突起部40に衝突した洗浄水を下流側流路23に対してより効率よく流入させることができる。
【0055】
たとえば、円筒状の第1筒状部41を設けることで、第1筒状部41に衝突した洗浄水を第1筒状部41の内部流路または第1筒状部41と第1隔壁部42との間の流路に流入させることができる。
【0056】
また、たとえば整流部材30の取り付け向き(回転角度)によっては、複数の第1隔壁部42のうち何れかの向きが、上流側流路22を流れる洗浄水の流れに対して平行になる可能性がある。このような場合であっても、複数の第1隔壁部42は放射状に設けられるため、他の第1隔壁部42により洗浄水を下流側流路23へ落とすことができる。すなわち、整流部材30の取り付け向きに関わらず突起部40として適切に機能させることができる。また、整流部材30の取り付け向きによって突起部40としての機能に差が生じることを抑制することができる。
【0057】
実施形態に係る整流部材30は、第2筒状部32の上流側端部が第1筒状部41および第1隔壁部42の上流側端部よりも低く設計される。かかる構成とすることで、第1筒状部41または第1隔壁部42に衝突した洗浄水を下流側流路23に対してさらに流入させ易くすることができる。
【0058】
複数の柱状部43は、第2筒状部32と後述する第2隔壁部34との接続部分に設けられており、かかる接続部分から上流側流路22に向かって突出する。各柱状部43は、隣接する2つの第1隔壁部42の間に配置される。すなわち、第1隔壁部42と柱状部43とは周方向に交互に設けられる。
【0059】
複数の第1隔壁部42は、放射状に延びるため、隣接する2つの第1隔壁部42間の隙間は、径方向外方に向かうにつれて徐々に大きくなる。すなわち、隣接する2つの第1隔壁部42間の隙間は、径方向における内方側端部に相当する第1筒状部41との接続部付近よりも、径方向における外方端に相当する第2筒状部32との接続部付近において大きくなる。そこで、かかる場所に柱状部43を設け、第1隔壁部42と第2筒状部32との接続部付近における突起部40の隙間を小さくすることで、上流側流路22を流れる洗浄水を突起部40により衝突させやすくすることができる。
【0060】
また、柱状部43は、円柱状に形成される。このように、柱状部43を円柱状とすることで、洗浄水が柱状部43に衝突した際に、柱状部43の下流側に空気溜まりが形成されることを抑制することができる。したがって、吐水口11から吐出される洗浄水に空気が混じってしまうことを抑制することができる。
【0061】
複数(ここでは、合計16個)の第2隔壁部33,34は、第2筒状部32と外周筒部31の間に架け渡された板状の部位であり、第2筒状部32の外周面から下流側流路23の内周面231に向かって放射状に延びている。また、第2隔壁部33と第2隔壁部34とは周方向に沿って交互に配置される。具体的には、第2隔壁部33は、第1隔壁部42と第2筒状部32との接続部分から延びており、第2隔壁部34は、柱状部43と第2筒状部32との接続部分から延びている。
【0062】
これら複数の第2隔壁部33,34により、第2筒状部32と外周筒部31との間に形成される流路は、複数(ここでは、16個)の個別流路に区画される。
【0063】
図4および図5に示すように、整流部材30を吐水方向Sに沿って上流から下流に見た場合(図4参照)の整流部材30の開口面積は、スパウト6の側断面視(図5参照)において、上流側流路22と下流側流路23との境界縁部24のうちスパウト本体10の基端部側の端部から吐水方向Sに沿って延びる仮想線L1で上流側流路22を切断した場合の上流側流路22の流路断面積と同一である。
【0064】
上流側流路22から下流側流路23に洗浄水が流入する際に、流路断面積が急激に変化すると、吐水口11から吐出される洗浄水に乱れが生じやすくなる。これに対し、整流部材30における上流側の開口面積を、整流部材30に流入する直前における上流側流路22の流路断面積と同等に設計することで、吐水口11から吐出される洗浄水に乱れを生じさせ難くすることができる。
【0065】
なお、整流部材30における下流側の開口面積は、上述した上流側の開口面積よりも大きく形成される。具体的には、図5に示すように、第1筒状部41、複数の第1隔壁部42、第2筒状部32および複数の第2隔壁部33,34の下流側端部は、いずれも外周筒部31の下流側端部よりも上流に位置している。このため、整流部材30における下流側の開口面積は、上述した上流側の開口面積よりも大きい。また、図5に示すように、吐水口11の開口面積は、整流部材30における下流側の開口面積よりも大きい。したがって、実施形態に係るスパウト6は、吐水口11に比して流路21の少なくとも一部が狭く設計されていると言える。
【0066】
図5に示すように、第1筒状部41および第2筒状部32は、上流側端部よりも下流側端部の方が薄く形成されている。これにより、第1筒状部41および第1隔壁部42の外径は、上流側端部から下流側端部に向かうにつれて縮小する。かかる構成とすることにより、整流部材30の流路断面積を上流側から下流側に向かうにつれて徐々に拡大させることができる。したがって、整流部材30の内部において流路断面積が急激に大きくなることを抑制することができる。また、かかる構成とすることで、整流部材30を流れる洗浄水を整流部材30の軸中心に寄せることができる。すなわち、吐水口11から吐出される洗浄水がまとまりやすくなるため、整流効果が高い。
【0067】
また、第1筒状部41、第1隔壁部42、第2筒状部32、第2隔壁部33,34の各上流側端部における周方向側の角部はR状に湾曲している。これにより、第1筒状部41、第1隔壁部42、第2筒状部32、第2隔壁部33,34の上流側端部付近に空気溜まりが形成されることを抑制することができる。
【0068】
また、図4に示すように、第1隔壁部42の上流側端部における径方向外方側の角部は、C面状に傾斜している。かかる形状とすることにより、圧力損失を低減することができる。
【0069】
<変形例>
図6は、変形例に係る第1筒状部の上流側端部周辺の模式拡大図である。図6に示すように、変形例に係る突起部40Aは、第1筒状部41Aを備える。実施形態に係る第1筒状部41と同様、第1筒状部41Aの上流側端部は、上流側流路22から洗浄水が流入する流入部411となっている。
【0070】
かかる流入部411の内周面412は、吐水口11に向かって下り傾斜している。かかる構成とすることにより、上流側流路22から第1筒状部41Aの内部に洗浄水が流入する際に、流入部411付近に空気溜まりが形成されることを抑制することができる。したがって、吐水口11から吐出される洗浄水に空気が混じってしまうことを抑制することができる。
【0071】
<その他の変形例>
上述した実施形態では、スパウト6が整流部材30を備え、かかる整流部材30に突起部40が設けられる場合の例を示した。かかる構成とすることにより、下流側流路23に対して突起部40を容易に設けることができる。しかし、かかる構成に限らず、突起部40は、たとえば下流側流路23に対して直接設けられてもよい。
【0072】
また、上述した実施形態では、手洗器5が設置される便器本体2が水洗大便器である場合の例を示したが、手洗器5は小便器の上部に設置されてもよい。
【0073】
また、上述した実施形態では、トイレ室に設置される手洗器5を例に挙げて説明したが、本開示による吐水装置は、トイレ室に限らず、たとえば洗面所やキッチン等に設置される吐水装置としても適用可能である。
【0074】
上述してきたように、実施形態に係る吐水装置(一例として、手洗器5)は、先端部の下部に吐水口(一例として、吐水口11)を有するスパウト本体(一例として、スパウト本体10)と、スパウト本体の内部に設けられ、吐水口に水を導く流路(一例として、流路21)とを備える。流路は、スパウト本体の基端部から先端部に水を導く上流側流路(一例として、上流側流路22)と、上流側流路から屈曲し、水の吐水方向(一例として、吐水方向S)に沿って延びて上流側流路と吐水口とを接続する下流側流路(一例として、下流側流路23)とを備える。また、実施形態に係る吐水装置は、下流側流路の内周面よりも内側に、下流側流路から上流側流路に突出する突起部(一例として、突起部40)をさらに備える。
【0075】
したがって、実施形態に係る吐水装置によれば、吐水口に比して流路が狭く設計される場合であっても、吐水口から吐出される水に偏りを生じさせ難くすることができる。
【0076】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 トイレ装置
2 便器本体
3 手洗器付洗浄水タンク装置
4 外装タンク
5 手洗器
6 スパウト
7 ボウル部
10 スパウト本体
11 吐水口
20 流路部材
21 流路
22 上流側流路
23 下流側流路
24 境界縁部
30 整流部材
31 外周筒部
32 第2筒状部
33 第2隔壁部
34 第2隔壁部
40 突起部
41 第1筒状部
42 第1隔壁部
43 柱状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6