IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 沖電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-無線装置 図1
  • 特許-無線装置 図2
  • 特許-無線装置 図3
  • 特許-無線装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】無線装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240903BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20240903BHJP
   G08C 19/00 20060101ALI20240903BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J1/00 304H
G08C19/00 G
G08C17/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020150632
(22)【出願日】2020-09-08
(65)【公開番号】P2022045121
(43)【公開日】2022-03-18
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(74)【代理人】
【識別番号】100183162
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 義文
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 友博
(72)【発明者】
【氏名】西川 雅之
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-010519(JP,A)
【文献】特開2017-112754(JP,A)
【文献】特開2018-055793(JP,A)
【文献】特開2017-192180(JP,A)
【文献】特開2015-202012(JP,A)
【文献】特開2017-184302(JP,A)
【文献】特開2011-055186(JP,A)
【文献】特開2001-069608(JP,A)
【文献】特開2018-190103(JP,A)
【文献】特開2017-036964(JP,A)
【文献】国際公開第2019/008707(WO,A1)
【文献】特開2010-033134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 1/00
G08C 19/00
G08C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を用いて、情報を上位装置に無線送信する第1無線部と、
一次電池と二次電池とを切り替え、何れかの電池に蓄えられた直流電力を前記第1無線部に供給するスイッチと、
前記二次電池の温度又は周囲温度に基づき、前記第1無線部を動作させたときの前記二次電池の電圧を推定し、該推定された二次電池の電圧が前記第1無線部の入力電圧下限値を下回ると判定した場合には、前記スイッチを前記二次電池から前記一次電池に切り替える制御部と、
を備え、
前記第1無線部は、前記スイッチが出力する直流電圧を変換する電圧変換部と、
前記電圧変換部が出力する直流電力を用いて、前記情報を無線送信する第2無線部とを備え、
前記制御部は、前記情報を無線送信するときに前記電圧変換部を起動させ、前記電圧変換部の入力電圧下限値を下回るか否かを判定し、前記情報を無線送信しないときに、前記電圧変換部を停止させ、
前記第2無線部は、大出力無線部であり、
前記スイッチから供給される直流電力を用いて、他の無線装置と無線通信を行う小電力無線部をさらに備え、
前記小電力無線部は、前記情報を無線送信しないときでも起動している
ことを特徴とする無線装置。
【請求項2】
直流電力を用いて、情報を上位装置に無線送信する第1無線部と、
一次電池と二次電池とを切り替え、何れかの電池に蓄えられた直流電力を前記第1無線部に供給するスイッチと、
前記二次電池の温度又は周囲温度に基づき、前記第1無線部を動作させているときの前記二次電池の電圧を推定し、該推定された二次電池の電圧が前記第1無線部の入力電圧下限値を下回ると判定した場合には、前記スイッチを前記二次電池から前記一次電池に切り替える制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記推定された二次電池の電圧が前記第1無線部の入力電圧下限値を下回ると判定した場合、次の測定周期まで前記情報の無線送信を見送るか、前記スイッチを前記一次電池に切り替えて、前記情報を無線送信するかを決定することを特徴とする無線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線装に関し、例えば、各種のセンサで取得した情報を上位装置に無線送信する無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会インフラの老朽化が社会問題となっており、センサを活用したモニタリングの必要性が高まっている。太陽光発電による自立電源かつ無線のセンサ端末は、配線工事が不要であり、センサ設置の工事費用を抑えることができる。
【0003】
無線センサ端末は、搭載するセンサによって振動や変位など社会インフラ等対象物の状況を測定し、その情報を無線によってサーバ等の上位装置に送信する。例えば、特許文献1には、太陽電池モジュールを用いた無線センサ端末が開示されている。
【0004】
ここで、一般的に無線送信は消費電力が多く、特に、4Gなどは大きな送信出力が必要となるために非常に電力消費が大きい。また、太陽電池で駆動する無線センサ端末は、不日照時でも動作するように二次電池が使用されるが、不日照が続くと、二次電池の残量が少なくなってしまう。このようなときに、無線通信を行うと送信時の大きな電力消費により二次電池の電圧が瞬間的に降下し、通信モジュールに必要な電源電庄を確保できず、通信が失敗したりする。また、最悪の場合には、通信モジュールが要求するシャットダウン手順を踏まない突然の電源オフにより通信モジュールが壊れることもある。
【0005】
そのため、二次電池の残量が少なくなったときに、二次電池から一次電池に電力供給を切り替えることが考えられる。例えば、特許文献2には、太陽電池と二次電池との並列回路の出力電圧が予め設定された所定電圧以下になったら、二次電池から一次電池に電力供給を切り替える電源方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-097511号公報(請求項10)
【文献】特開2002-10519号公報(請求項8、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、二次電池は、その温度(周囲温度)を低くすると、内部抵抗が高くなり、出力電圧が低下する傾向がある。そのため、二次電池から一次電池に切り替えるときの切替電圧を常温に適合させると、環境温度が極めて低いときには(例えば、-10℃)、二次電池の電圧低下が早まり、一次電池に切り替えられてしまう。これにより、一次電池の使用時間(積算時間)が長くなり、一次電池まで放電が早まってしまう。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、適切な電圧で二次電池から一次電池に切り替えることができる無線装を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、第1発明の無線装置(1,3)は、直流電力を用いて、情報を上位装置(2)に無線送信する第1無線部(9)と、一次電池(13)と二次電池(12)とを切り替え、何れかの電池に蓄えられた直流電力を前記第1無線部に供給するスイッチ(SW)と、前記二次電池の温度又は周囲温度に基づき、前記第1無線部を動作させているときの前記二次電池の電圧を推定し、該推定された二次電池の電圧が前記第1無線部の入力電圧下限値を下回ると判定したときには前記スイッチを前記二次電池から前記一次電池に切り替える制御部(20)とを備え、前記第1無線部は、前記スイッチが出力する直流電圧を変換する電圧変換部と、前記電圧変換部が出力する直流電力を用いて、前記情報を無線送信する第2無線部とを備え、前記制御部は、前記情報を無線送信するときに前記電圧変換部を起動させ、前記電圧変換部の入力電圧下限値を下回るか否かを判定し、前記情報を無線送信しないときに、前記電圧変換部を停止させ、前記第2無線部は、大出力無線部であり、前記スイッチから供給される直流電力を用いて、他の無線装置と無線通信を行う小電力無線部をさらに備え、
前記小電力無線部は、前記情報を無線送信しないときでも起動していることを特徴とする。
また、第2発明の無線装置は、直流電力を用いて、情報を上位装置に無線送信する第1無線部と、一次電池と二次電池とを切り替え、何れかの電池に蓄えられた直流電力を前記第1無線部に供給するスイッチと、前記二次電池の温度又は周囲温度に基づき、前記第1無線部を動作させているときの前記二次電池の電圧を推定し、該推定された二次電池の電圧が前記第1無線部の入力電圧下限値を下回ると判定した場合には、前記スイッチを前記二次電池から前記一次電池に切り替える制御部と、を備え、前記制御部は、前記推定された二次電池の電圧が前記第1無線部の入力電圧下限値を下回ると判定した場合、次の測定周期まで前記情報の無線送信を見送るか、前記スイッチを前記一次電池に切り替えて、前記情報を無線送信するかを決定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の直流電力供給装置は、一次電池(13)と二次電池(12)とを切り替え、何れかの電池に蓄えられた直流電力を負荷回路(9)に供給するスイッチ(SW)と、前記二次電池の温度又は周囲温度に基づき、負荷回路(9)が動作しているときの前記二次電池の電圧を推定し、該推定された二次電池の電圧が前記負荷回路の入力電圧下限値を下回ると判定したときには前記スイッチを前記二次電池から前記一次電池に切り替える制御部(20)とを備えることを特徴とする。なお、括弧内の符号や文字は、実施形態において付した符号等であって、本発明を限定するものではない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、適切な電圧で二次電池から一次電池に切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態である無線センサシステムの構成図である。
図2】二次電池の電圧降下の温度特性を示す図である。
図3】本発明の無線センサシステムの動作を説明するためのフローチャートである。
図4】本発明の第2実施形態である無線センサシステムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態につき詳細に説明する。なお、各図は、実施形態を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態である無線センサシステムの構成図である。
無線センサシステム100は、太陽電池10と、二次電池12と、一次電池13と、無線装置としての無線センサ端末1と、上位装置2とを備えてから構成される。無線センサ端末1は、太陽電池10を電力源とし、上位装置2と無線で遠距離通信可能に接続される。
【0015】
太陽電池10は、光エネルギを電気エネルギに変換する発電部材であり、例えば、アモルファスSi太陽電池である。二次電池12は、太陽電池10が発電した直流電力を蓄電する充放電可能な電池であり、例えば、定格電圧1.2Vのニッケル水素電池を2個直列接続したものである。つまり、二次電池12の電圧V2は、例えば、2.4V(2V~3.1V)である。なお、ニッケル水素電池は、リチウムイオン電池やリチウムポリマ電池よりも電流が小さくても充電可能なので、センサ用の小規模の太陽電池との相性が良い。二次電池12は、内部抵抗を有し、出力電流の増加に伴って、電圧V2が低下する。つまり、二次電池12には、大出力無線部15が送信する瞬間の大きな消費電流により、電圧降下VDが発生する。この内部抵抗は、周囲温度が低いと抵抗値が高くなる傾向があるので、電圧降下VDも大きくなる。なお、大出力無線部15以外の各部は、電力消費が少ないので、電圧降下はほとんど発生しない。
一次電池13は、電圧V1の電池であり、二次電池12が放電したときに使用される。
【0016】
無線センサ端末1は、充電制御部11と、電圧変換部14と、大出力無線部15と、電池電圧監視部16と、電池温度監視部17と、センサ18と、スイッチSWと、制御部20とを備える。なお、電圧変換部14と大出力無線部15とで、負荷回路としての第1無線部9を構成する。
【0017】
充電制御部11は、太陽電池10が発電した直流電力を適切な電圧に変換し、二次電池12を充電する。また、充電制御部11は、出力電流を制御することにより太陽電池を最も効率よく発電する電圧に維持する最大電力点追従(MPPT:Maximum Power Point Tracking)機能を有する。
【0018】
SWは、1回路2接点の電子スイッチであり、制御部20からの制御信号S2により、a端子又はb端子の電圧をc端子に出力する。SW1は、制御部20の制御により、一次電池13又は二次電池12に蓄えられている直流電力を電圧変換部14、電池電圧監視部16、電池温度監視部17、センサ18及び制御部20に供給する。
【0019】
電圧変換部14は、一次電池13又は二次電池12が発生する直流電圧を昇圧するDCDCコンバータである。電圧変換部14は、入力下限電圧があり、入力直流電圧(電池電圧)の低下により、入力直流電圧が入力下限電圧を下回ると、大出力無線部15への電力供給ができなくなる。電圧変換部14の出力電圧V4は、入力電圧V3から入力電圧の2倍までの間の電圧に設定される。言い換えれば、電圧変換部14の入力下限電圧は、例えば、電圧変換部14の最大出力電圧の1/2の値である。なお、電圧変換部14は、制御部20からのEN信号により、駆動制御される。
【0020】
大出力無線部15は、電圧変換部14が昇圧した直流電圧V4を用いて、例えば、4Gを用いて、通信事業者の基地局との間で、制御部20からの信号S1のデータを送信する。大出力無線部15は、その高周波出力が固定されているので、消費電流が略一定となる。また、大出力無線部15の直流入力電圧V4は、リチウムイオン電池やリチウムポリマ電池に好適な電圧(例えば、3.9V(3.4V~4.2V))に設定されている。
【0021】
電池電圧監視部16は、一次電池13又は二次電池12が発生する直流電力を用いて、二次電池12の電圧V2を監視する。電池電圧監視部16は、電圧V2を監視した監視信号WVを制御部20に出力する。電池温度監視部17は、一次電池13又は二次電池12が発生する直流電力を用いて、二次電池12の温度又は二次電池12の周囲温度を監視する。電池温度監視部17は、二次電池12の温度又は周囲温度を監視した監視信号WTを制御部20に出力する。
【0022】
センサ18は、一次電池13又は二次電池12が発生する直流電力を用いて、測定内容に応じたセンサを使用する。例えば、対象物の振動を測定したい場合は加速度センサを使用し、対象物の変位を測定したい場合は変位センサを使用する。センサ18は、制御部20との間で、信号S3を送受信する。
【0023】
制御部20は、CPU(Central Processing Unit)であり、SW、電圧変換部14、大出力無線部15、電池電圧監視部16、電池温度監視部17及びセンサ18を制御する。制御部20は、直流電力供給プログラムを実行することにより、一次電池13又は二次電池12が第1無線部9に直流電力を供給する機能を実現する。
【0024】
具体的には、制御部20は、電圧変換部14を制御して大出力無線部15の電源をオン/オフする機能を持つ。制御部20は、センサ18から取得した測定データを、大出力無線部15を介して上位装置2に送信させる。また、制御部20は、電池電圧監視部16及び電池温度監視部17で測定した二次電池12の電圧V2と周囲温度とに基づいて、大出力無線部15を動作させたときに、二次電池12の電圧V2が電圧変換部14の入力下限電圧を下回る恐れがないかを判定する機能を持つ。入力下限電圧を下回る恐れがある場合は、制御部20は、SWを制御して電源を二次電池12から一次電池13に切り替える。
【0025】
制御部20には、センサ18から取得した測定データを一時的に格納するRAM23と、二次電池12の電圧降下の温度特性データをテーブルとして格納するROM24とを有する。
【0026】
図2は、二次電池の電圧降下の温度特性を示す図である。
横軸は、二次電池12の温度又は周囲温度T[℃]であり、縦軸は、電圧降下VD[V]である。第1無線部9(大出力無線部15)で所定の消費電流(一定電流)が流れているとき、例えば、実線で示すように、温度T1での電圧降下がVD1であり、温度T1よりも高い温度T2での電圧降下がVD2(VD2<VD1)まで低下する。また、電圧降下VDは、温度Tだけでなく、二次電池12の電圧V2によっても変化する。ROM24は、温度T1での電圧降下がVD3まで上昇した破線で示す曲線をもテーブルとして格納している。無線センサ端末1は、二次電池12の電圧V2が大きく変わったときに、破線で示すテーブルを使用する。
【0027】
図3は、本発明の無線センサシステムの動作を説明するためのフローチャートである。
このフローは、周期的に実行される。制御部20は、予め設定した時刻又は周期が来ると、センサ18を用いて対象物の状況を測定させ、測定データを取得する(SP1)。SP1の処理後、制御部20は、電池電圧監視部16に二次電池12の電圧を測定させ、電池温度監視部17に二次電池12の温度又は周囲温度を測定させる(SP2)。なお、二次電池12の周囲温度を測定しても、定常的には、二次電池12の温度を測定することになる。
【0028】
SP2の処理後、制御部20は、測定した二次電池12の周囲温度及びテーブルの情報を用いて、第1無線部9(大出力無線部15)を動作させたときの電圧降下VD[V]を求め、測定した電池電圧V2から当該電圧降下VDを減算し、減算した減算電圧(V2-VD)を、第1無線部9が動作しているときの二次電池12の電圧であると推定する。制御部20は、この推定電圧=減算電圧(V2-VD)が電圧変換部14の入力下限電圧を下回るか否かによって、二次電池12を用いた通信が可能か否か判定する(SP3)。
【0029】
二次電池12を用いた通信が不可能であると判定したとき(SP3で不可能)、制御部20は、即時送信の要否を判定する(SP4)。即時送信が必要な場合とは、例えば、センサ18の測定データが急変した場合である。即時送信が不要であれば(SP4で不要)、制御部20は、センサ18での測定結果をRAM23に格納すると共に(SP5)、次回の測定周期まで待機し(SP12)、センサ18を用いた測定を繰り返す(SP1)。
【0030】
一方、即時送信が必要であれば(SP4で必要)、制御部20は、SWを一次電池13が接続されているb側に切り替え(SP6)、一次電池13の使用時間の計測を開始する(SP7)。
【0031】
SP7の処理後、又は、二次電池12を用いた通信が可能であると判定したときには(SP3で可能)、制御部20は、EN信号を用いて電圧変換部14をONにする。これにより、大出力無線部15がONにされる(SP8)。SP8の処理後、センサ測定データ、RAM23内の未送信送信データや、SP15で算出する一次電池13の残量データを大出力無線部15に送り、大出力無線部15からこれらのデータを上位装置2(図1)に無線送信する(SP9)。SP9の処理後、制御部20は、電圧変換部14をOFFする。これにより、大出力無線部15がOFFにされる(SP10)。つまり、第1無線部9が無線送信するときのみ、制御部20は、電圧変換部14をONにする。これにより、無線センサ端末1の消費電力が低減する。
【0032】
SP10の処理後、制御部20は、使用中の電池が二次電池12なのか一次電池13なのかを判定する(SP11)。つまり、制御部20は、SWがa側なのか、b側なのかを判定する。使用中の電池が二次電池12であれば(SP11)で二次電池)、制御部20は、次回測定周期まで待機し(SP12)、センサ18を用いた測定を繰り返す(SP1)。
【0033】
一方、使用中の電池が一次電池13であれば(SP11で一次電池)、制御部20は、SW(図1)を、一次電池13と接続するa側から二次電池12と接続するb側に切り替える(SP13)。SP13の処理後、制御部20は、SP7で開始した一次電池13の使用時間計測を終了し(SP14)、使用時間(積算時間)に基づいて、一次電池の残量を算出する(SP15)。SP15の処理後、制御部20は、次回測定周期まで待機し(SP12)、センサ18を用いた測定を繰り返す(SP1)。なお、SP15で算出した残量のデータは、次回のSP9でセンサ18の測定データと共に、無線送信される。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の無線センサ端末1は、想定以上の不日照に備えて、一次電池13を併用している。これにより、無線センサ端末1は、不日照が続き二次電池12の電圧V2が低下した状況であっても、センサ18が対象物の異常を検知した場合は、第1無線部9に電力供給する電源を二次電池12から一次電池13に切り替えることによって、上位装置2への送信を確実に行うことができる。そのため、無線センサ端末1は、二次電池12の終止電圧(一般的に、定電流放電を行ったときの放電終了電圧)を高く設定し、電池残量に無理な余裕を持たせることなく、小容量の二次電池12を使用することができる。つまり、無線センサ端末1は、重要な社会インフラをモニタリングする場合において、大容量の二次電池12を用いることなく、低コストで確実な通信を確保することができる。
【0035】
無線センサ端末1は、環境温度が低く、二次電池12の温度又は周囲温度が低いときには、二次電池12の電圧降下VDが増加する。ROM24には、第1無線部9が駆動しているときに二次電池12に流れる電流における電圧降下VDが二次電池12の温度又は周囲温度Tの関数VD(T)で格納されている。そのため、制御部20は、二次電池12の温度又は周囲温度Tを用いて、第1無線部9が駆動しているときの電圧降下VDを推定することができる。さらに、制御部20は、第1無線部9が駆動していないときの二次電池12の電圧V2から推定した電圧降下VDを減算して、第1無線部9が駆動しているときの二次電池12の電圧V2を演算することができる。
【0036】
制御部20は、第1無線部9が駆動しているときの二次電池12の電圧V2が電圧変換部14の入力電圧下限値を下回ると判定すると、SWをa側からb側に切り替えて、一次電池13の直流電力を電圧変換部14に供給する。つまり、無線センサ端末1は、二次電池12の温度又は周囲湿度に応じて、二次電池12から一次電池13に切り替える切替電圧(閾値電圧)を変化させることができる。
【0037】
また、無線センサ端末1は、一次電池13に切り替えた場合において、測定データに応じて、一次電池13を使って即時送信せずに、二次電池12の回復(充電)を待機することにより、極力、一次電池13を使用しない動作を実現し、一次電池の交換頻度を少なくすることができる。
【0038】
(第2実施形態)
前記第1実施形態では、無線センサ端末1の大出力無線部15が上位装置2に対しデータ送信を行っていたが、さらに、小出力無線部19が他の無線センサ端末3b,3c(図4)にデータ送信を行っても構わない。
【0039】
図4は、本発明の第2実施形態である無線センサシステムの構成図である。
無線センサシステム101は、太陽電池10と、二次電池12と、一次電池13と、無線センサ端末3aと、上位装置2と、1以上の無線センサ端末3b,3cとを備える。無線センサ端末3aは、無線センサ端末1(図1)の構成に加えて、さらに小出力無線部19を有している点で相違する。なお、無線センサ端末3b,3cも無線センサ端末3aと同様に、太陽電池10と二次電池12と一次電池13とを有し、上位装置2に通信可能に接続されている。
【0040】
無線センサ端末3aの小出力無線部19は、他の無線センサ端末3b,3cとの間で送受信を行う。例えば、無線センサ端末3aの小出力無線部19は、他の無線センサ端末3bから測定データを受信し、受信した測定データと、センサ18で測定した測定データとの双方を無線センサ端末3cに送信する。無線センサ端末3a、3b、3cは、自動的に品質の良い通信経路を選択して中継するマルチホップ通信を行うことができるので、障害に強い柔軟な無線ネットワークを構築することができる。なお、小出力無線部19の高周波電力は、大出力無線部15の高周波電力よりも少ない。
【0041】
(変形例)
本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形が可能である。
(1)前記第1,2実施形態の無線センサ端末1,3は、センサ18が検出した情報を大出力無線部15が上位装置2に送信していたが、センサ18以外の情報を送信しても構わない。つまり、無線センサ端末1,3は、無線装置として機能する。また、第1無線部9は、二次電池12又は一次電池13の負荷となる負荷回路として機能する。SW、電池電圧監視部16,電池電圧監視部17及び制御部20は、負荷回路に直流電力を供給する直流電力供給装置として機能する。
【0042】
(2)前記第1,2実施形態の無線センサ端末1,3は、太陽電池10(図1)を使用したが、熱電変換素子、圧電素子(例えば、ピエゾ素子)、受信した電波を直流電流に整流変換する発電素子(例えば、レクテナ)等の発電部材であっても構わない。
【符号の説明】
【0043】
1,3a,3b,3c 無線センサ端末(無線装置、直流電力供給装置)
9 第1無線部(負荷回路)
10 太陽電池(発電部材)
12 二次電池
13 一次電池
14 電圧変換部
15 大出力無線部
20 制御部
100,101 無線センサシステム
SW スイッチ
図1
図2
図3
図4