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特許7547893単一粒子測定装置、マニピュレーションシステム及び電極プレート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】単一粒子測定装置、マニピュレーションシステム及び電極プレート
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/36 20060101AFI20240903BHJP
   G02B 21/32 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H01M4/36 Z
G02B21/32
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020158479
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052225
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嵯峨山 功幸
(72)【発明者】
【氏名】小口 寿明
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-243951(JP,A)
【文献】特開2002-151063(JP,A)
【文献】特開2017-124452(JP,A)
【文献】特開2017-016896(JP,A)
【文献】特開2019-153469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
G02B21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液で満たされる試料保持部材と、
絶縁基板と、前記絶縁基板上に設けられる第1電極と、前記第1電極の表面を覆う絶縁膜と、前記絶縁膜に覆われず前記第1電極が露出している前記第1電極の一部分であって、かつ単一粒子を載置するための載置部とを含み、前記電解液中に設けられる電極プレートと、
前記試料保持部材の前記電解液中に設けられる第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に電流を流しかつ電位を測定する測定器と、
を備える単一粒子測定装置。
【請求項2】
前記載置部は、前記絶縁膜に周縁を囲まれる凹部である、
請求項1に記載の単一粒子測定装置。
【請求項3】
前記第1電極は、前記絶縁基板上に複数設けられ、前記第1電極が前記測定器と各々接続し、かつ1つの前記第1電極が1つの前記載置部を含む、
請求項1又は2に記載の単一粒子測定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の単一粒子測定装置と、
前記試料保持部材を載置する試料ステージと、
前記試料ステージを垂直方向に平面視する顕微鏡ユニットと、
前記単一粒子を保持する保持治具を備えるマニピュレータと、
前記試料ステージ、前記顕微鏡ユニット、及び前記マニピュレータを制御し、前記測定器による測定結果を取得するコントローラと、
を備える、マニピュレーションシステム。
【請求項5】
前記第1電極は、前記絶縁基板上に複数設けられ、前記第1電極が前記測定器と各々接続し、かつ1つの前記第1電極が1つの前記載置部を含み、
複数の前記載置部は、前記顕微鏡ユニットの視野角内に全て納まるように設けられる、
請求項4に記載のマニピュレーションシステム。
【請求項6】
前記保持治具は、先端に前記単一粒子を保持可能な毛細管であり、
前記毛細管の内部に連通し、前記毛細管の内部圧力を調整可能なポンプ装置を備える、
請求項4又は5に記載のマニピュレーションシステム。
【請求項7】
平面視において前記載置部を覆う蓋部と、平面視において前記載置部よりも小さく、かつ前記蓋部から突出する突起部と、を含み、前記マニピュレータに取り付け可能な押さえ部材を備える、
請求項4から6のいずれか1項に記載のマニピュレーションシステム。
【請求項8】
電解液中に設けられ、第2電極との間に電流を流し、かつ単一粒子の電位を測定するための単一粒子測定装置に用いられる電極プレートであって、
絶縁基板と、
前記絶縁基板上に設けられる第1電極と、
前記第1電極の表面を覆う絶縁膜と、
前記絶縁膜に覆われず前記第1電極が露出している前記第1電極の一部分であって、かつ前記単一粒子を載置するための載置部と、
を含む電極プレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一粒子測定装置、マニピュレーションシステム及び電極プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池等の電極は、活物質、導電助剤及びバインダーが混合された複合物である。この電池特性を決める主要部材である活物質の電池特性を評価する方法として、正極又は負極の一方の電極と、正極又は負極の他方の活物質の単一粒子に接触させた電極との間に電流を流して、活物質の充放電曲線を測定する方法が知られている。この際、他方の電極の保持にマニピュレータを使用する方法、例えば、電極棒を垂直姿勢にマニピュレータに保持し、ガラスフィルタ上に載置された活物質を上方から押さえる方法がある(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-124452号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】LIBTEC、“単一粒子の電気化学測定評価”、平成27年12月17日、[平成30年12月12日検索]、インターネット<URL:https://www.libtec.or.jp/technology/document/pdfs/battery20151217_01.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、マニピュレータに保持された電極棒と活物質の単一粒子とは、測定が完了するまで接触し続ける必要がある。しかしながら、1個の単一粒子の測定に約6時間から数日を要する上、測定中は、細かい機械振動、温度変化及び気圧変化等の環境変化、充放電による単一粒子の膨張又は収縮が発生する。一方で、活物質の単一粒子の直径は、数μm~数10μm程度であり、電極棒の直径は、20μm程度であるため、単一粒子が電極棒との接触位置に対して僅かに動くだけで、電極棒との接触が外れてしまう恐れがある。また、電極棒と単一粒子とを好適に接触させ続けるためには、使用する電極棒を熟練者の手技によって製作する必要があり、品質のばらつきに課題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、操作者の熟練度及び技術によらず、電極と単一粒子との接触を好適に維持することができる単一粒子測定装置、マニピュレーションシステム及び電極プレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る単一粒子測定装置は、電解液で満たされる試料保持部材と、絶縁基板と、前記絶縁基板上に設けられる第1電極と、前記第1電極の表面を覆う絶縁膜と、前記絶縁膜に覆われず前記第1電極が露出している前記第1電極の一部分であって、かつ単一粒子を載置するための載置部とを含み、前記電解液中に設けられる電極プレートと、前記試料保持部材の前記電解液中に設けられる第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に電流を流しかつ電位を測定する測定器と、を備える。
【0008】
これによれば、第1電極が載置部でのみ電解液に触れており、載置部の上面に単一粒子を載置するので、単一粒子と第1電極との接触は、単一粒子の自重によって維持される。また、電極プレートは、従来の電極棒と異なり、熟練者の手技によって製作する必要がないので、品質が安定する。したがって、操作者の熟練度及び技術によらず、第1電極と単一粒子との接触を好適に維持することができる。
【0009】
本発明の一態様に係る単一粒子測定装置において、前記載置部は、前記絶縁膜に周縁を囲まれる凹部である。これによれば、測定中に単一粒子が載置部の外に転がることを抑制できるので、単一粒子と第1電極との接触が外れることを抑制できる。
【0010】
本発明の一態様に係る単一粒子測定装置において、前記第1電極は、前記絶縁基板上に複数設けられ、前記第1電極が前記測定器と各々接続し、かつ1つの前記第1電極が1つの前記載置部を含む。これによれば、複数の単一粒子を、各々の載置部に載置することにより、各々の単一粒子に接触する各々の第1電極と第2電極との電位を、同時に測定することができる。すなわち、単一粒子測定装置及び設置設備等を増やすことなく、複数の単一粒子の測定に要する時間を短縮することができる。
【0011】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムは、前記単一粒子測定装置と、前記試料保持部材を載置する試料ステージと、前記試料ステージを垂直方向に平面視する顕微鏡ユニットと、前記単一粒子を保持する保持治具を備えるマニピュレータと、前記試料ステージ、前記顕微鏡ユニット、及び前記マニピュレータを制御し、前記測定器による測定結果を取得するコントローラと、を備える。
【0012】
これによれば、微小な単一粒子を、単一粒子に対応する微小な載置部へ搬送して載置する操作を容易に行うことができる。また、マニピュレーションシステムは、顕微鏡ユニットの光軸方向が鉛直方向であり、単一粒子を垂直方向に平面視するものである。顕微鏡ユニットを斜視で使用する場合、電解液による屈折で単一粒子を含む作業領域が視にくいという問題があるが、本発明では、顕微鏡ユニットを垂直方向に平面視で使用できるため、保持治具による単一粒子の保持、搬送、及び載置部での解放操作が容易であるという効果を奏する。
【0013】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムにおいて、前記第1電極は、前記絶縁基板上に複数設けられ、前記第1電極が前記測定器と各々接続し、かつ1つの前記第1電極が1つの前記載置部を含み、複数の前記載置部は、前記顕微鏡ユニットの視野角内に全て納まるように設けられる。これによれば、操作者が、視野角内に全ての載置部を視認できるので、単一粒子を載置部に載置する操作を容易に行うことができる。
【0014】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムにおいて、前記保持治具は、先端に前記単一粒子を保持可能な毛細管であり、前記毛細管の内部に連通し、前記毛細管の内部圧力を調整可能なポンプ装置を備える。これによれば、単一粒子を保持する際は、毛細管の先端に突き刺す、又は毛細管の内部圧力を陰圧にして吸引することによって、容易に保持することができる。また、単一粒子を毛細管の先端から解放する際には、毛細管の内部圧力を陽圧にして内部の流体ごと吐出させることによって、容易に解放することができる。
【0015】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムにおいて、平面視において前記載置部を覆う蓋部と、平面視において前記載置部よりも小さく、かつ前記蓋部から突出する突起部と、を含み、前記マニピュレータに取り付け可能な押さえ部材を備える。測定中の活物質の単一粒子は、細かい機械振動、温度変化及び気圧変化等の環境変化、充放電によって膨張又は収縮が発生する。一方で、測定中の活物質の単一粒子は、電解液に浸されているため浮力を受ける。実施形態のマニピュレーションシステムは、押さえ部材が単一粒子を載置部上に押さえることによって、第1電極の載置部から浮き上がって、第1電極との接触が外れることを抑制することができる。
【0016】
本発明の一態様に係る電極プレートは、電解液中に設けられ、第2電極との間に電流を流し、かつ単一粒子の電位を測定するための単一粒子測定装置に用いられる電極プレートであって、絶縁基板と、前記絶縁基板上に設けられる第1電極と、前記第1電極の表面を覆う絶縁膜と、前記絶縁膜に覆われず前記第1電極が露出している前記第1電極の一部分であって、かつ前記単一粒子を載置するための載置部と、を含む。
【0017】
これによれば、単一粒子の電位の測定中において、第1電極が載置部でのみ電解液に触れており、載置部の上面に単一粒子を載置するので、単一粒子と第1電極との接触は、単一粒子の自重によって維持される。また、電極プレートは、従来の電極棒と異なり、熟練者の手技によって製作する必要がないので、品質が安定する。したがって、操作者の熟練度及び技術によらず、第1電極と単一粒子との接触を好適に維持することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、操作者の熟練度及び技術によらず、電極と単一粒子との接触を好適に維持することができる単一粒子測定装置、マニピュレーションシステム及び電極プレートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態に係る単一粒子測定装置の構成例を模式的に示す図である。
図2図2は、図1に示す単一粒子測定装置の電極プレートの平面図である。
図3図3は、電極プレートの製造工程の一例を示す説明図である。
図4図4は、実施形態に係るマニピュレーションシステムの構成例を模式的に示す図である。
図5図5は、図4に示すマニピュレーションシステムの制御ブロック図である。
図6図6は、図1に示す電極プレートに載置する活物質を搬送する保持治具の一例を示す模式図である。
図7図7は、図1に示す電極プレートに載置する活物質を搬送する保持治具の別の一例を示す模式図である。
図8図8は、図1に示す単一粒子測定装置における測定中の一状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0021】
(実施形態)
[装置の構成]
まず、単一粒子測定装置1および電極プレート40の構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、実施形態に係る単一粒子測定装置1の構成例を模式的に示す図である。図2は、図1に示す単一粒子測定装置1の電極プレート40の平面図である。単一粒子測定装置1は、単一粒子である活物質Mの評価を行うための装置である。実施形態において、活物質Mは、正極活物質としてのコバルト酸リチウム(LiCoO)である。単一粒子測定装置1は、実施形態において、測定器10と、試料保持部材20に収容される対極側電極30及び電極プレート40と、を備える。電極プレート40は、作用極側電極50を含む。
【0022】
測定器10は、電位及び電流の制御、電位の計測等を行い、試料の電気的な性質を計測する装置である。具体的には、測定器10は、対極側電極30と活物質Mに接触する作用極側電極50との間に所定値の電流を流すとともに、対極側電極30と作用極側電極50との電位測定する、ガルバノスタットである。すなわち、測定器10は、作用極側電極50に接触する活物質Mに充電又は放電するとともに、活物質Mの電位を測定する。活物質Mの電位を測定することにより、活物質Mの充放電の特性及びサイクル測定を評価することができる。さらに、周囲の温度を変化させ、かつ活物質Mの電位を測定することにより、活物質Mの温度特性を評価することができる。測定器10は、対極側電極30と作用極側電極50との電位を所定値に保つ機能を有するポテンシオガルバノスタットであってもよい。測定器10は、実施形態において、後述のマニピュレーションシステム100のコントローラ150と通信可能に接続される。
【0023】
試料保持部材20は、実施形態において、シャーレである。試料保持部材20は、後述のマニピュレーションシステム100の試料ステージ120に載置される。試料保持部材20は、電解液22で満たされている。電解液22は、活物質Mと、対極側電極30と、作用極側電極50と、を浸す導電性の溶液である。電解液22は、実施形態において、過塩素酸リチウム(1mol LiClO、EC/PC=1/1(v/v))である。
【0024】
試料保持部材20の内部は、セパレータ24によって底面側と開口側とを隔てられる。セパレータ24は、例えば、PP又はPE等のポリオレフィン系の薄膜、又はガラスフィルタ等である。セパレータ24は、高温になると融解して閉塞する多数の微小な孔を有する多孔質である。セパレータ24の下面側には、支持台26が配置される。支持台26は、セパレータ24の上面側に配置する電極プレート40を、セパレータ24を介して支持する。なお、支持台26を設けず、対極側電極30によってセパレータ24を介して電極プレート40を支持してもよい。
【0025】
対極側電極30は、試料保持部材20の電解液22中において、セパレータ24の下面側に配置される。対極側電極30は、実施形態において、負極としての金属リチウム(Li)である。対極側電極30は、対極側導線32の一方の端部に接続される。対極側導線32の他方の端部は、測定器10の負極チャネルに接続される。対極側導線32は、実施形態において、ニッケル(Ni)線である。
【0026】
電極プレート40は、試料保持部材20の電解液22中において、セパレータ24の上面側に配置される。電極プレート40は、実施形態において、セパレータ24を介して支持台26に支持される。電極プレート40は、絶縁基板42と、複数の作用極側電極50a、50b、50c、50d、50e、50fと、各々の作用極側電極50a、50b、50c、50d、50e、50fに対応する作用極側導線60と、絶縁膜70と、を含む。
【0027】
絶縁基板42は、実施形態において、一辺が約20mmの矩形板状のガラス基板である。図1及び図2に示すように、作用極側電極50a、50b、50c、50d、50e、50fは、絶縁基板42上に設けられる。より詳しくは、絶縁基板42の表面に、板形状の作用極側電極50a、50b、50c、50d、50e、50fの下面側が接合している。平面視において、各々の作用極側電極50a、50b、50c、50d、50e、50fの面積は、全て等しい。なお、以下の説明において、各々の作用極側電極50a、50b、50c、50d、50e、50fを区別する必要がない場合には、作用極側電極50と記載される。作用極側電極50は、実施形態において、6つの作用極側電極50a、50b、50c、50d、50e、50fを含むが、1つ以上かつ測定器10の正極チャネル数以下であればいくつでもよい。
【0028】
作用極側電極50は、例えば、金(Au)又は白金(Pt)等の不活性金属、又はダイヤモンドである。作用極側電極50は、実施形態において、正極としての金である。作用極側電極50の表面には、チタンめっき(Au/Ti)、銅(Au/Cu)めっき又はニッケル(Au/Ni)めっきが施されることが好ましい。
【0029】
各々の作用極側電極50の表面は、上面側に設けられる導線接続部52及び載置部54を除いて、絶縁膜70によって覆われている。すなわち、各々の作用極側電極50は、導線接続部52及び載置部54のみ露出する。絶縁膜70は、実施形態において、エポキシ樹脂である。これにより、作用極側電極50は、導線接続部52及び載置部54を除いて絶縁される。
【0030】
導線接続部52は、作用極側導線60に接続される。作用極側導線60は、実施形態において、銅(Cu)線である。作用極側導線60は、少なくとも電解液22に浸されている部分の表面が、被覆材62で覆われている。被覆材62は、樹脂等の絶縁体である。
【0031】
作用極側導線60の一方の端部は、被覆材62から露出して、作用極側電極50の導線接続部52に接続される。作用極側導線60と導線接続部52との接続部は、導電性接着剤64によって接着される。導電性接着剤64は、実施形態において、銀(Ag)ペーストである。作用極側導線60の一方の端部において被覆材62から露出した部分と、導電性接着剤64と、作用極側電極50の導線接続部52とは、絶縁膜70によって覆われる。作用極側導線60の他方の端部は、測定器10の正極チャネルに接続される。
【0032】
載置部54は、絶縁膜70に覆われず作用極側電極50が露出している作用極側電極50の一部分である。載置部54は、1つの作用極側電極50に対して1つずつ設けられる。単一粒子測定中、載置部54には、活物質Mが載置される。載置部54は、絶縁膜70によって周縁を囲まれることによって、絶縁膜70の上面に対して下方に位置する。すなわち、載置部54は、絶縁膜70の上面に対して凹状に設けられる凹部である。これにより、載置部54に載置される活物質Mは、絶縁膜70によって周囲を囲まれるので、載置部54から外れることを抑制できる。
【0033】
各々の載置部54は、平面視において、電極プレート40の中央部に設けられる円形状の凹部である。より詳しくは、電極プレート40は、全ての載置部54が、後述のマニピュレーションシステム100の顕微鏡112の視野角に納まるように設けられる。載置部54は、実施形態において、0.5mm角に全てが納まるように設けられる。載置部54では、作用極側電極50の上面と絶縁膜70に囲まれた領域に、活物質Mを収容可能である。載置部54は、例えば、直径2μm以上10μm以下に設けられる。
【0034】
[電極プレートの製造工程]
次に、電極プレート40の製造工程について説明する。図3は、電極プレート40の製造工程の一例を示す説明図である。
【0035】
まず、ステップS1において、絶縁基板42の上面に、複数の板形状の作用極側電極50を接合させる。絶縁基板42に所定の形状の作用極側電極50を接合させる方法は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)プロセスのように、金属薄膜を積層させた後、フォトリソグラフィ及びエッチング等で成形する等の公知の方法を用いてよい。
【0036】
次に、ステップS2において、導線接続部52及び載置部54を除く作用極側電極50の表面を絶縁膜70によって覆う。例えば、実施形態においては、エポキシ樹脂を導線接続部52及び載置部54を除く作用極側電極50の表面に積層させた後、加熱して硬化させる。
【0037】
次に、ステップS3において、導線接続部52に、作用極側導線60の一端を接続する。具体的には、作用極側導線60の一方の端部において被覆材62から露出した部分と、導線接続部52とを、導電性接着剤64によって接着する。
【0038】
次に、ステップS4において、導線接続部52と、作用極側導線60の一方の端部において被覆材62から露出した部分と、導線接続部52と作用極側導線60とを接着する導電性接着剤64とを、絶縁膜70によって覆う。例えば、実施形態においては、エポキシ樹脂を導線接続部52及びその近傍に積層させた後、加熱して硬化させる。
【0039】
[システムの構成]
次に、マニピュレーションシステム100の物理構成及びシステム構成について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、実施形態に係るマニピュレーションシステム100の構成を模式的に示す図である。図5は、マニピュレーションシステム100の制御ブロック図である。図6は、図1に示す電極プレート40に載置する活物質Mを搬送する保持治具の一例を示す模式図である。
【0040】
図4において、マニピュレーションシステム100は、基台102と、顕微鏡ユニット110と、マニピュレータ130と、ポンプ装置140と、マニピュレーションシステム100を制御するコントローラ(制御装置)150と、を備えている。顕微鏡ユニット110及びマニピュレータ130は、基台102に固定されている。顕微鏡ユニット110は、片側にマニピュレータ130が配置される。
【0041】
顕微鏡ユニット110は、顕微鏡112と、撮像素子を含むカメラ114と、試料ステージ120と、を備える。顕微鏡ユニット110は、顕微鏡112とカメラ114とが一体構造となっている、例えば、マイクロスコープである。実施形態において、顕微鏡112及びカメラ114は、試料保持部材20の直上に配置され、試料保持部材20に収容された試料(不図示)等を平面視可能である。実施形態において、顕微鏡112及びカメラ114の光軸116は、試料等に対して垂直方向に入射する。なお、カメラ114は、顕微鏡112と別体に設けてもよい。
【0042】
試料ステージ120は、顕微鏡112及びカメラ114の下方に配置される台座であり、試料保持部材20を支持可能である。顕微鏡ユニット110は、さらに、試料ステージ120上の試料保持部材20に向けて光を照射する不図示の光源と、焦点合わせ機構118(図5参照)と、を備えている。試料保持部材20の試料に光源から光が照射されると、試料保持部材20の試料で反射した光が顕微鏡112に入射する。試料に関する光学像は、顕微鏡112で拡大された後、カメラ114で撮像される。光学像は、焦点合わせ機構118によって、顕微鏡112及びカメラ114のレンズの位置及びレンズ間の距離を調整して顕微鏡112及びカメラ114の焦点合わせを行うことで明瞭に投影される。顕微鏡ユニット110は、カメラ114で撮像された画像を基に試料の観察が可能となっている。
【0043】
マニピュレータ130は、X軸-Y軸-Z軸の3軸構成のマニピュレータである。なお、実施形態において、水平面内の一方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と交差する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと交差する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。マニピュレータ130は、移動基台132と、駆動装置134と、保持部材136と、を備える。移動基台132は、駆動装置134の駆動により、基台102に対してX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動する。駆動装置134は、コントローラ150に電気的に接続されている。
【0044】
保持部材136は、一方の端部が移動基台132に連結される。保持部材136は、移動基台132の移動に従って、3次元空間を移動領域として移動する。保持部材136は、他方の端部に活物質M等の試料を保持する保持治具が取り付け可能である。保持治具は、実施形態において、先端にスパイク形状を有する毛細管80である。
【0045】
毛細管80は、チューブ等の配管142を介してポンプ装置140と接続する。毛細管80及び配管142の内部は、液体、気体、又は液体と気体との混合流体によって満たすことができる。毛細管80の内部圧力は、ポンプ装置140から供給される圧力により制御される。ポンプ装置140は、コントローラ150に電気的に接続されている。
【0046】
コントローラ150は、CPU(Central Processing Unit)等のマイクロプロセッサを有する演算処理装置、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等のメモリを有する記憶装置、及び入出力インターフェース装置等のハードウェア資源を備える。コントローラ150の機能は、記憶装置に格納された所定のプログラムを演算処理装置が実行することで実現される。コントローラ150は、演算処理装置による演算結果に従って、各構成要素に各種機能を実行させる制御信号を出力する。
【0047】
コントローラ150は、顕微鏡ユニット110の焦点合わせ機構118、マニピュレータ130の駆動装置134及びポンプ装置140等を制御し、必要に応じて設けられたドライバやアンプ等(不図示)を介してそれぞれに制御信号を出力する。コントローラ150は、駆動装置134に、駆動信号VXYZ図4参照)を供給する。駆動装置134は、駆動信号VXYZに基づいて、X-Y-Z軸方向に駆動する。コントローラ150は、ポンプ装置140に、毛細管80の内部圧力を調整するための圧力制御信号V図4参照)を供給する。ポンプ装置140は、圧力制御信号Vに基づいて、毛細管80の内部圧力を調整する。
【0048】
コントローラ150は、情報入力手段としてジョイスティック152と、ポンプインターフェース154と、キーボード、マウス又はタッチパネル等の入力部156と、が接続されている。
【0049】
ジョイスティック152には、公知のものを用いることができる。図4に示すように、ジョイスティック152は、基台152aと、基台152aから直立するハンドル部152bとを備えている。ジョイスティック152は、ハンドル部152bを傾斜させるように操作することで駆動装置134のX-Y駆動を行うことができ、ハンドル部152bをねじることで駆動装置134のZ駆動を行うことができる。
【0050】
ポンプインターフェース154は、操作者がポンプ装置140に対する操作情報を入力するためのポンプ操作情報入力部である。ポンプインターフェース154は、操作ノブ154aを備えている。ポンプインターフェース154は、操作ノブ154aを回転させることで、回転変位量に対応してポンプ装置140から供給される圧力を調整することができる。
【0051】
また、コントローラ150は、液晶パネル等の表示部158(図5参照)が接続される。表示部158にはカメラ114で取得した顕微鏡画像や各種制御用画面が表示されるようになっている。なお、入力部156としてタッチパネルが用いられる場合には、表示部158の表示画面にタッチパネルを重ねて用い、操作者が表示部158の表示画像を確認しつつ入力操作を行うようにしてもよい。
【0052】
コントローラ150は、測定器10から測定器情報信号Vを取得する。測定器情報信号Vは、単一粒子測定装置1の測定器10が対極側電極30と活物質Mに接触する作用極側電極50との間に流した電流値情報、及び測定器10によって測定された対極側電極30と作用極側電極50との電位値情報を含む。コントローラ150は、例えば、記憶装置が評価対象の活物質Mの材料情報を記憶していてもよい。この場合、コントローラ150は、測定対象の活物質Mの材料情報を、例えば、操作者による操作される入力部156を介して取得し、記憶装置に記憶させる。
【0053】
[単一粒子の測定方法]
実施形態のマニピュレーションシステム100において活物質Mの単一粒子測定を行う際、測定者は、まず、顕微鏡視野角内に電極プレート40の載置部54が収まるように、試料ステージ120上に試料保持部材20を配置する。測定者は、次に、ジョイスティック152を操作して、マニピュレータ130の駆動装置134を駆動させることによって、所定の容器に収容される活物質Mの1つに毛細管80の先端を位置合わせする。測定者は、さらに、ジョイスティック152を操作して、マニピュレータ130の駆動装置134を駆動させることによって、毛細管80の先端を活物質Mに突き刺す(図6参照)。これにより、マニピュレータ130は、活物質Mを毛細管80の先端に保持することができる。
【0054】
測定者は、さらに、ジョイスティック152を操作して、マニピュレータ130の駆動装置134を駆動させることによって、毛細管80の先端に活物質Mを保持した状態を維持しながら、活物質Mを電極プレート40の載置部54の直上まで搬送する(図6参照)。測定者は、次に、ポンプインターフェース154を操作して、ポンプ装置140によって、毛細管80及び配管142の内部を陽圧にさせる。これにより、ポンプ装置140は、毛細管80の先端から流体を勢いよく吐出させる。毛細管80の先端から吐出した流体が、毛細管80の先端に保持された活物質Mに対して吹き付けられることによって、活物質Mが毛細管80の先端から外れる。毛細管80の先端から解放された活物質Mは、載置部54上に載置される。
【0055】
このように、マニピュレータ130は、活物質Mの保持手段及び搬送手段に用いられる。測定者は、同様に、全ての載置部54に1つずつ活物質Mを載置させると、測定器10によって、対極側電極30と活物質Mに接触する作用極側電極50との間に所定値の電流を流す。対極側電極30と活物質Mに接触する作用極側電極50との間に電流を流すことで、活物質Mに対して充電又は放電が行われる。この際、測定器10は、対極側電極30と作用極側電極50との電位、すなわち活物質Mの電位を測定することが可能である。測定器10が対極側電極30と活物質Mに接触する作用極側電極50との間に流された電流値情報、及び測定器10によって測定された対極側電極30と作用極側電極50との電位値情報を含む測定器情報信号Vは、コントローラ150へ出力される。
【0056】
なお、活物質Mを保持及び搬送する保持治具は、図4及び図6に示す実施形態の先端がスパイク形状である毛細管80に限定されない。図7は、図1に示す電極プレート40に載置する活物質Mを搬送する保持治具の別の一例を示す模式図である。図7に示す保持治具は、内径が活物質Mの直径と同等である毛細管82である。
【0057】
毛細管82は、毛細管80と同様に、チューブ等の配管142を介してポンプ装置140と接続する。毛細管82及び配管142の内部は、電解液22によって満たされている。毛細管82の内部圧力は、ポンプ装置140から供給される圧力により制御される。
【0058】
マニピュレーションシステム100は、マニピュレータ130によって毛細管80の先端を活物質Mに合わせ、ポンプ装置140によって毛細管80及び配管142の内部を陰圧にすることによって、活物質Mを毛細管80の先端に吸引保持することができる。マニピュレーションシステム100は、ポンプ装置140によって毛細管80及び配管142の内部を陽圧にすることによって、活物質Mを毛細管80の先端から解放することができる。
【0059】
また、マニピュレーションシステム100は、マニピュレータ130の保持部材136に、図8に示す押さえ部材90を取り付け可能であってもよい。図8は、図1に示す単一粒子測定装置1における測定中の一状態を示す模式図である。
【0060】
押さえ部材90は、蓋部92と、複数の突起部94と、を含む。蓋部92は、押さえ部材90の先端に設けられる板形状である。蓋部92は、平面視において、全ての載置部54を覆うことができる。突起部94は、蓋部92の下面から下方に向かって突出するように設けられる。突起部94は、平面視において、各々の載置部54に対応する位置に設けられる。各々の突起部94は、平面視において、載置部54より小さい。蓋部92及び突起部94は、ガラス等の透明な素材で形成される。
【0061】
測定中において、マニピュレーションシステム100は、各々の突起部94が載置部54の直上に位置するように押さえ部材90を移動させる。この際、突起部94が、載置部54の開口部を一部塞ぐことによって、活物質Mを載置部54の上面と絶縁膜70とに囲まれた領域に閉じ込めることができる。蓋部92及び突起部94が透明な素材で形成されているため、測定者は、蓋部92及び突起部94越しに、活物質Mを観察することができる。
【0062】
以上説明したように、実施形態の単一粒子測定装置1は、電解液22で満たされる試料保持部材20と、電極プレート40と、第2電極(対極側電極30)と、測定器10と、を備える。電極プレート40は、絶縁基板42と、第1電極(作用極側電極50)と、絶縁膜70と、載置部54と、を含み、電解液22中に設けられる。第1電極は、絶縁基板42上に設けられる。絶縁膜70は、第1電極の表面を覆う。載置部54は、絶縁膜70に覆われず第1電極が露出している第1電極の一部分であって、かつ単一粒子(活物質M)を載置するための部分である。第2電極は、電解液22中に設けられる。測定器10は、第1電極と第2電極との間に電流を流しかつ電位を測定する。
【0063】
これによれば、第1電極(作用極側電極50)が載置部54でのみ電解液22に触れており、載置部54の上面に単一粒子(活物質M)を載置するので、単一粒子と第1電極との接触は、単一粒子の自重によって維持される。また、電極プレート40は、従来の電極棒と異なり、熟練者の手技によって製作する必要がないので、品質が安定する。したがって、操作者の熟練度及び技術によらず、第1電極と単一粒子との接触を好適に維持することができる。
【0064】
また、実施形態の単一粒子測定装置1において、載置部54は、絶縁膜70に周縁を囲まれる凹部である。これによれば、測定中に単一粒子(活物質M)が載置部54の外に転がることを抑制できるので、単一粒子と第1電極(作用極側電極50)との接触が外れることを抑制できる。
【0065】
また、実施形態の単一粒子測定装置1において、第1電極(作用極側電極50)は、絶縁基板42上に複数設けられ、第1電極が測定器10と各々接続し、かつ1つの第1電極が1つの載置部54を含む。これによれば、複数の単一粒子(活物質M)を、各々の載置部54に載置することにより、各々の単一粒子に接触する各々の第1電極と第2電極(対極側電極30)との電位を、同時に測定することができる。すなわち、単一粒子測定装置1及び設置設備等を増やすことなく、複数の単一粒子の測定に要する時間を短縮することができる。
【0066】
また、実施形態のマニピュレーションシステム100は、単一粒子測定装置1と、試料ステージ120と、顕微鏡ユニット110と、マニピュレータ130と、コントローラ150と、を備える。試料ステージ120は、試料保持部材20を載置する。顕微鏡ユニット110は、試料ステージ120を垂直方向に平面視する。マニピュレータ130は、単一粒子(活物質M)を保持する保持治具(例えば、毛細管80、82)を備える。コントローラ150は、試料ステージ120、顕微鏡ユニット110、及びマニピュレータ130を制御し、測定器10による測定結果を取得する。
【0067】
これによれば、微小な単一粒子(活物質M)を、単一粒子に対応する微小な載置部54へ搬送して載置する操作を容易に行うことができる。また、実施形態のマニピュレーションシステム100は、顕微鏡ユニット110の光軸116方向が鉛直方向であり、単一粒子を垂直方向に平面視するものである。顕微鏡ユニット110を斜視で使用する場合、電解液22による屈折で単一粒子を含む作業領域が視にくいという問題があるが、実施形態では、顕微鏡ユニット110を垂直方向に平面視で使用できるため、保持治具(例えば、毛細管80、82)による単一粒子の保持、搬送、及び載置部54での解放操作が容易であるという効果を奏する。
【0068】
また、実施形態のマニピュレーションシステム100において、第1電極(作用極側電極50)は、絶縁基板42上に複数設けられ、第1電極が測定器10と各々接続し、かつ1つの第1電極が1つの載置部54を含む。また、複数の載置部54は、顕微鏡ユニット110の視野角内に全て納まるように設けられる。これによれば、操作者が、視野角内に全ての載置部54を視認できるので、単一粒子(活物質M)を載置部54に載置する操作を容易に行うことができる。
【0069】
また、実施形態のマニピュレーションシステム100において、保持治具は、先端に単一粒子(活物質M)を保持可能な毛細管80である。また、マニピュレーションシステム100は、毛細管80の内部に連通し、毛細管80の内部圧力を調整可能なポンプ装置140を備える。これによれば、単一粒子を保持する際は、毛細管80の先端に突き刺す、又は毛細管82の内部圧力を陰圧にして吸引することによって、容易に保持することができる。また、単一粒子を毛細管80、82の先端から解放する際には、毛細管80、82の内部圧力を陽圧にして内部の流体ごと吐出させることによって、容易に解放することができる。
【0070】
また、実施形態のマニピュレーションシステム100は、マニピュレータ130に取り付け可能な押さえ部材90を備える。押さえ部材90は、平面視において載置部54を覆う蓋部92と、平面視において載置部54よりも小さく、かつ蓋部92から突出する突起部94と、を含む。測定中の活物質Mの単一粒子は、細かい機械振動、温度変化及び気圧変化等の環境変化、充放電によって膨張又は収縮が発生する。一方で、測定中の活物質Mの単一粒子は、電解液22に浸されているため浮力を受ける。実施形態のマニピュレーションシステム100は、押さえ部材90が単一粒子(活物質M)を載置部54上に押さえることによって、第1電極(作用極側電極50)の載置部54から浮き上がって、第1電極との接触が外れることを抑制することができる。
【0071】
また、実施形態の電極プレート40は、電解液22中に設けられ、第2電極(対極側電極30)との間に電流を流し、かつ単一粒子(活物質M)の電位を測定するための単一粒子測定装置1に用いられる。電極プレート40は、絶縁基板42と、第1電極(作用極側電極50)と、絶縁膜70と、載置部54と、を含む。第1電極は、絶縁基板42上に設けられる。絶縁膜70は、第1電極の表面を覆う。載置部54は、絶縁膜70に覆われず第1電極が露出している第1電極の一部分であって、かつ単一粒子を載置するための部分である。
【0072】
これによれば、単一粒子(活物質M)の電位の測定中において、第1電極(作用極側電極50)が載置部54でのみ電解液22に触れており、載置部54の上面に単一粒子を載置するので、単一粒子と第1電極との接触は、単一粒子の自重によって維持される。また、電極プレート40は、従来の電極棒と異なり、熟練者の手技によって製作する必要がないので、品質が安定する。したがって、操作者の熟練度及び技術によらず、第1電極と単一粒子との接触を好適に維持することができる。
【0073】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、実施形態の活物質Mは、正極活物質であるが、負極活物質を測定評価してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 単一粒子測定装置
10 測定器
20 試料保持部材
22 電解液
24 セパレータ
26 支持台
30 対極側電極(第2電極)
32 対極側導線
40 電極プレート
42 絶縁基板
50、50a、50b、50c、50d、50e、50f 作用極側電極(第1電極)
52 導線接続部
54 載置部
60 作用極側導線
62 被覆材
64 導電性接着剤
70 絶縁膜
80、82 毛細管
90 押さえ部材
92 蓋部
94 突起部
100 マニピュレーションシステム
102 基台
110 顕微鏡ユニット
112 顕微鏡
114 カメラ
116 光軸
118 焦点合わせ機構
120 試料ステージ
130 マニピュレータ
132 移動基台
134 駆動装置
136 保持部材
140 ポンプ装置
142 配管
150 コントローラ
152 ジョイスティック
152a 基台
152b ハンドル部
154 ポンプインターフェース
154a 操作ノブ
156 入力部
158 表示部
M 活物質(単一粒子)
XYZ 駆動信号
圧力制御信号
測定器情報信号
S1、S2、S3、S4 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8