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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】光造形用ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/106 20170101AFI20240903BHJP
   C08F 290/00 20060101ALI20240903BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240903BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20240903BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240903BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240903BHJP
【FI】
B29C64/106
C08F290/00
B33Y70/00
B29C64/264
B33Y80/00
B33Y10/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020158613
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2021075044
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2019199723
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】杉本 睦樹
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 拓郎
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-205686(JP,A)
【文献】特開2019-001939(JP,A)
【文献】特開2017-036383(JP,A)
【文献】特開2015-174426(JP,A)
【文献】特開2009-062510(JP,A)
【文献】特表2017-536265(JP,A)
【文献】国際公開第2018/165090(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/208979(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/119340(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/106
C08F 290/00
B33Y 70/00
B29C 64/264
B33Y 80/00
B33Y 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状ポリマー及びモノマーを含む、光造形用ポリマー組成物であって、
前記液状ポリマーが、(メタ)アクリロイル基を有する液状イソプレン及び(メタ)アクリロイル基を有する液状イソブチレンの少なくとも一方を含み、
前記モノマーは、(メタ)アクリレートを含み、
前記光造形用ポリマー組成物は、吸収帯の異なる光重合開始剤を少なくとも2種以上含み、
前記光造形用ポリマー組成物は、温度25℃、相対湿度50%の環境下、E型粘度計を用いて、コーンプレートφ25mm、せん断速度100秒-1の条件で測定される粘度が、3,000mPa・s以下である、光造形用ポリマー組成物。
【請求項2】
前記液状ポリマーの数平均分子量が、5,000以上500,000以下である、請求項に記載の光造形用ポリマー組成物。
【請求項3】
前記液状ポリマーは、温度25℃、相対湿度50%の環境下、E型粘度計を用いて、コーンプレートφ25mm、せん断速度100秒-1の条件で測定される粘度が、100mPa・s以上1,000,000mPa・s以下である、請求項1又は2に記載の光造形用ポリマー組成物。
【請求項4】
前記光造形用ポリマー組成物を100質量%とした場合に、前記液状ポリマーの含有率が、15質量%以上70質量%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の光造形用ポリマー組成物。
【請求項5】
前記液状ポリマー及び前記モノマーの合計を100質量%とした場合に、前記モノマーの割合が、30質量%以上85質量%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の光造形用ポリマー組成物。
【請求項6】
前記光造形用ポリマー組成物がオリゴマーをさらに含み、
前記液状ポリマー、前記モノマー及び前記オリゴマーの合計を100質量%とした場合に、前記オリゴマーの割合が、30質量%以上90質量%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の光造形用ポリマー組成物。
【請求項7】
前記光造形用ポリマー組成物がオリゴマーをさらに含み、
前記液状ポリマー、前記モノマー及び前記オリゴマーの合計を100質量%とした場合に、前記モノマー及び前記オリゴマーの合計割合が、30質量%以上90質量%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の光造形用ポリマー組成物。
【請求項8】
前記オリゴマーは、ウレタン(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレートの少なくとも一方である、請求項6又は7に記載の光造形用ポリマー組成物。
【請求項9】
前記モノマーは、単官能から四官能の少なくとも1種である、請求項1~のいずれか1項に記載の光造形用ポリマー組成物。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の光造形用ポリマー組成物の硬化物である、弾性成形体。
【請求項11】
造形テーブル上に、請求項1~のいずれか1項に記載の光造形用ポリマー組成物を供給し、前記光造形用ポリマー組成物に光を照射し、前記光造形用ポリマー組成物を硬化させて1層目の硬化物を形成する工程と、
前記1層目の硬化物の上に、2層目の硬化物を形成する前記光造形用ポリマー組成物を供給し、前記光造形用ポリマー組成物に光を照射し、前記光造形用ポリマー組成物を硬化させて2層目の硬化物を形成する工程と、
前記2層目の硬化物を形成する工程と同様の工程を繰り返してN層まで形成して、3次元形状の弾性成形体を製造する、弾性成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光造形用ポリマー組成物、当該組成物を硬化させてなる弾性成形体、及び当該組成物を用いた弾性成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、三次元構造物の設計データに基づいて、樹脂を積層及び硬化させて三次元構造物を製造する三次元積層造形装置(いわゆる、3Dプリンタ)が実用化されている。三次元積層造形装置によって製造される三次元構造物としては、樹脂製のものが一般に知られている。一方、従来よりも弾性率の温度依存性が低く、圧縮永久歪みも小さい三次元構造物(弾性成形体)が製造できれば、従来とは異なる用途への使用が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/154335号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1には、液状ゴムを含む三次元積層造形用ゴム組成物が開示されており、当該ゴム組成物は、三次元積層造形装置に適用して弾性成形体を好適に製造することができる。
【0005】
しかしながら、例えばSLA方式(光造形レーザ方式:Stereolithography Appratus)、DLP方式(光造形プロジェクタ(面露光)方式:Digital Light Processing)、LCD方式(光造形液状ディスプレイ方式:Liquid Crystal Display)などの光造形法においては、液状の光造形用組成物を0.01~0.5mm程度の厚さで順次積層・硬化させて3次元形状の光造形するため、光造形用組成物は、室温環境(例えば25℃程度)における低粘度特性が要求される。さらに、光造形用組成物の硬化後の弾性成形体には、ゴムの性質を示すことが求められる。
【0006】
このような状況下、本発明は、光造形法によって弾性成形体を好適に製造することができる、新規な光造形用ポリマー組成物を提供することを主な目的とする。さらに、本発明は、光造形用ポリマー組成物を硬化させてなる弾性成形体、及び当該組成物を用いた弾性成形体の製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意検討を重ねた。その結果、液状ポリマー及びモノマーを含むポリマー組成物であって、温度25℃、相対湿度50%の環境下、E型粘度計を用いて、コーンプレートφ25mm、せん断速度100秒-1の条件で測定される粘度が、3,000mPa・s以下であるポリマー組成物は、光造形法によって弾性成形体を好適に製造し得ることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 液状ポリマー及びモノマーを含む、光造形用ポリマー組成物であって、
前記光造形用ポリマー組成物は、温度25℃、相対湿度50%の環境下、E型粘度計を用いて、コーンプレートφ25mm、せん断速度100秒-1の条件で測定される粘度が、3,000mPa・s以下である、光造形用ポリマー組成物。
項2. 前記液状ポリマーは、(メタ)アクリロイル基を有する、項1に記載の光造形用ポリマー組成物。
項3. 前記液状ポリマーが、(メタ)アクリロイル基を有する液状イソプレン及び(メタ)アクリロイル基を有する液状イソブチレンの少なくとも一方を含む、項1又は2に記載の光造形用ポリマー組成物。
項4. 前記液状ポリマーの数平均分子量が、5,000以上500,000以下である、項1~3のいずれか1項に記載の光造形用ポリマー組成物。
項5. 前記液状ポリマーは、温度25℃、相対湿度50%の環境下、E型粘度計を用いて、コーンプレートφ25mm、せん断速度100秒-1の条件で測定される粘度が、100mPa・s以上1,000,000mPa・s以下である、項1~4のいずれか1項に記載の光造形用ポリマー組成物。
項6. 前記液状ポリマーの含有率が、15質量%以上70質量%以下である、項1~5のいずれか1項に記載の光造形用ポリマー組成物。
項7. 前記液状ポリマー及び前記モノマーの合計を100質量%とした場合に、前記モノマーの割合が、30質量%以上85質量%以下である、項1~6のいずれか1項に記載の光造形用ポリマー組成物。
項8. 前記光造形用ポリマー組成物がオリゴマーをさらに含み、
前記液状ポリマー、前記モノマー及び前記オリゴマーの合計を100質量%とした場合に、前記モノマーの割合が、30質量%以上90質量%以下である、項1~7のいずれか1項に記載の光造形用ポリマー組成物。
項9. 前記光造形用ポリマー組成物がオリゴマーをさらに含み、
前記液状ポリマー、前記モノマー及び前記オリゴマーの合計を100質量%とした場合に、前記モノマー及び前記オリゴマーの合計割合が、30質量%以上90質量%以下である、項1~8のいずれか1項に記載の光造形用ポリマー組成物。
項10. 前記オリゴマーは、ウレタン(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレートの少なくとも一方である、項8又は9に記載の光造形用ポリマー組成物。
項11. 前記オリゴマーは、(メタ)アクリレートを含む、項8~10のいずれか1項に記載の光造形用ポリマー組成物。
項12. 前記モノマーは、単官能から四官能の少なくとも1種である、項1~11のいずれか1項に記載の光造形用ポリマー組成物。
項13. 前記モノマーは、(メタ)アクリレートを含む、項1~12のいずれか1項に記載の光造形用ポリマー組成物。
項14. 項1~13のいずれか1項に記載の光造形用ポリマー組成物の硬化物である、弾性成形体。
項15. 造形テーブル上に、項1~13のいずれか1項に記載の光造形用ポリマー組成物を供給し、前記光造形用ポリマー組成物に光を照射し、前記光造形用ポリマー組成物を硬化させて1層目の硬化物を形成する工程と、
前記1層目の硬化物の上に、2層目の硬化物を形成する前記光造形用ポリマー組成物を供給し、前記光造形用ポリマー組成物に光を照射し、前記光造形用ポリマー組成物を硬化させて2層目の硬化物を形成する工程と、
前記2層目の硬化物を形成する工程と同様の工程を繰り返してN層まで形成して、3次元形状の弾性成形体を製造する、弾性成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光造形法によって弾性成形体を好適に製造することができる、新規な光造形用ポリマー組成物を提供することができる。また、本発明によれば、当該光造形用ポリマー組成物を硬化させてなる弾性成形体、及び当該組成物を用いた弾性成形体の製造方法を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の光造形用ポリマー組成物は、液状ポリマー及びモノマーを含み、さらに、温度25℃、相対湿度50%の環境下、E型粘度計を用いて、コーンプレートφ25mm、せん断速度100秒-1の条件で測定される粘度が、3,000mPa・s以下であることを特徴としている。本発明の光造形用ポリマー組成物は、このような特徴を備えていることにより、光造形法によって弾性成形体を好適に製造することができる。以下、本発明の光造形用ポリマー組成物、当該組成物を硬化させてなる弾性成形体、及び当該組成物を用いた弾性成形体の製造方法について、詳述する。
【0011】
なお、本発明において、「光造形用ポリマー組成物」とは、光造形法用の三次元積層造形装置(いわゆる、3Dプリンタなど)を用い、例えば三次元構造物の設計データに基づいて、ポリマー組成物の積層及び光硬化を繰り返して三次元構造物を製造する、光造形法に用いられるポリマー組成物を意味する。このような光造形法としては、SLA方式(光造形レーザ方式:Stereolithography Appratus)、DLP方式(光造形プロジェクタ(面露光)方式:Digital Light Processing)、LCD方式(光造形液状ディスプレイ方式:Liquid Crystal Display)などの各種方式が知られており、本発明の光造形用ポリマー組成物は、室温(25℃)での粘度が低く、光照射によって好適に硬化して弾性成形体が形成されることから、光造形法を用いた弾性成形体の製造に好適に用いることができる。
【0012】
また、本発明において「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基またはメタクリロイル基」を意味し、これに類する表現も同様である。また、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。複数の下限値と複数の上限値が別個に記載されている場合、任意の下限値と上限値を選択し、「~」で結ぶことができるものとする。
【0013】
<光造形用ポリマー組成物>
本発明の光造形用ポリマー組成物は、ポリマーとしての液状ポリマーと、モノマーを含み、光照射により光造形用ポリマー組成物が硬化して弾性成形体となる。
【0014】
本発明の光造形用ポリマー組成物は、温度25℃、相対湿度50%の環境下、E型粘度計を用いて、コーンプレートφ25mm、せん断速度100秒-1の条件で測定される粘度が、3,000mPa・s以下である。室温環境における光造形法に適した粘度としつつ、硬化によって得られる弾性成形体に優れた特性を発揮させる観点からは、当該粘度は、好ましくは2,500mPa・s以下、より好ましくは2,000mPa・s以下である。また、当該粘度の下限としては、例えば5mPa・s以上、好ましくは10mPa・s以上、より好ましくは20mPa・s以上、さらに好ましくは30mPa・s以上である。
【0015】
光造形法は、一般に、光造形装置の造形テーブル(ステージ)と呼ばれる平面に、光造形用ポリマー組成物を順次積層・光硬化させる工程を備えている。このとき、光造形用ポリマー組成物を硬化させる際の1層の厚みは、0.01~0.5mm程の積層厚みにコントロールされ、その後、光(UV)が照射され0.01~0.5mm程の光硬化層(硬化物)が形成される。そして光硬化の後、すぐに造形テーブルが動き、同じ0.01~0.5mm程の隙間を生み出し、そこに光造形用ポリマー組成物が流れ込み、光照射によって光硬化層(硬化物)が形成される。これを繰り返すことで、徐々に光硬化層が積層されて弾性成形体の厚みを増していく。光造形用ポリマー組成物の粘度が3,000mPa・sより高いと0.01~0.5mm程の隙間に光造形用ポリマー組成物が流れにくくなり、光硬化層を好適に形成することができない。また、光造形用ポリマー組成物が十分に流れるまで造形テーブルの移動スピードを遅くすることも出来るが、生産性が低下する。そればかりでなく、造形テーブルが細かく動くことで、光造形用ポリマー組成物に大きなせん断力が加わり、光造形中の構造物に損傷を与えてしまう懸念がある。
【0016】
液状ポリマーとしては、特に制限されず、公知のものを使用することができ、市販品を使用することもできる。液状ポリマーの具体例としては、液状ブタジエン、液状スチレン-ブタジエン共重合体、液状イソプレン-ブタジエン共重合体、液状イソプレン、液状水素化イソプレン、液状イソプレン-スチレン共重合体、液状イソブチレン等が挙げられる。これらの中でも、光造形用に適した粘度としつつ、硬化によって得られる弾性成形体に優れた特性(例えば、後述のショア硬度、引張破断強度、引張破断伸び率、圧縮永久歪み、繰り返し疲労特性など)を発揮させる観点からは、光照射によって架橋する(メタ)アクリロイル基やビニル基などの不飽和結合を有するものや、エポキシ化合物やオキセタン化合物などの環状エーテルなどを有するものが好ましく、特に(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。液状ポリマーは、弾性成形体の引張破断強度、引張破断伸びを向上させる観点から、(メタ)アクリロイル基を有する液状イソプレン及び(メタ)アクリロイル基を有する液状イソブチレンが特に好ましい。液状ポリマーは、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上が含まれていてもよい。
【0017】
本発明の光造形用ポリマー組成物における液状ポリマーの含有量としては、特に制限されないが、室温環境における光造形法に適した粘度としつつ、硬化によって得られる弾性成形体に優れた特性を発揮させる観点からは、例えば5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、特に好ましくは35質量%以上が挙げられる。また、同様の観点から、本発明の光造形用ポリマー組成物における液状ポリマーの含有量の上限については、例えば75質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下が挙げられる。
【0018】
本発明の光造形用ポリマー組成物は、液状ポリマーとは異なるポリマー成分(例えば、希釈ポリマー)を含んでいてもよいが、室温環境における光造形法に適した粘度としつつ、硬化によって得られる弾性成形体に優れた特性を発揮させる観点からは、液状ポリマー以外のポリマー成分の含有量は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは0質量%が挙げられる。
【0019】
また、液状ポリマーの数平均分子量(Mn)としては、特に制限されないが、同様の観点から、好ましくは500以上、より好ましくは5,000~500,000程度、さらに好ましくは5,000~400,000程度、5,000~50,000程度、5,000~40,000程度などが挙げられる。
【0020】
なお、液状ポリマーの数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフを用い、標準ポリスチレンにより換算して測定された値である。
【0021】
液状ポリマーの温度25℃、相対湿度50%の環境下、E型粘度計を用いて、コーンプレートφ25mm、せん断速度100秒-1の条件で測定される粘度としては、同様の観点から、好ましくは100~1,000,000mPa・s、より好ましくは100~500,000mPa・s、さらに好ましくは10,000~450,000mPa・sが挙げられる。
【0022】
本発明の光造形用ポリマー組成物に含まれるモノマーとしては、光照射により硬化する光重合性モノマーであれば、特に制限されないが、例えば単官能モノマー、多官能モノマー(例えば、二官能モノマー、三官能モノマー、四官能モノマーなど)が挙げられ、光造形用に適した粘度としつつ、硬化によって得られる弾性成形体に優れた特性を発揮させる観点からは、好ましくは単官能から四官能のモノマーが挙げられる。単官能モノマーの使用は、光造形用ポリマー組成物の室温環境における粘度を低下させる観点で好ましい。また、多官能モノマーの使用は、弾性成形体に優れた特性を発揮させる観点で好ましい。本発明の光造形用ポリマー組成物に含まれるモノマーは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0023】
モノマーは、光造形用に適した粘度としつつ、硬化によって得られる弾性成形体に優れた特性を発揮させ、さらに、光硬化反応性に優れることから、(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
【0024】
好ましい単官能モノマーとしては、単官能アクリレートが挙げられる。単官能モノマーの具体例としては、エトキシ化ノニルフェノールアクリレート、メチル2-アリルオキシメチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、m-フェノキシベンジルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ-2-メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-(2-フェニルフェニル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキシドを反応させたp-クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2-ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4-ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを複数モル変性させたフェノキシ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、t-オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7-アミノ-3,7-ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、ビニルモノマー(例えばN-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン等)が挙げられる。
【0025】
また、多官能モノマーの具体例としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、プロポキシ化ペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ化グリセリルトリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)イソシアヌレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0026】
室温環境における光造形法に適した粘度としつつ、硬化によって得られる弾性成形体に優れた特性を発揮させる観点から、本発明の光造形用ポリマー組成物において、液状ポリマー及びモノマーの合計を100質量%とした場合に、モノマーの割合は、例えば95質量%以下、好ましくは30~85質量%程度、より好ましくは40~80質量%程度、さらに好ましくは50~70質量%程度である。光造形用ポリマー組成物中のモノマー(さらに、後述のオリゴマー)の比率が高くなることにより、弾性成形体の圧縮永久歪みを小さくすることができる。
【0027】
本発明の光造形用ポリマー組成物は、オリゴマーをさらに含んでいてもよく、オリゴマーを含むことが好ましい。オリゴマーとは、例えば10~100個程度のモノマーが結合した重合体である。本発明の光造形用ポリマー組成物に含まれるオリゴマーとしては、光照射により硬化するものであれば、特に制限されない。オリゴマーは、(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート(イソシアネート基とヒドロキシル基を反応させてウレタン結合とアクリル基を有するもの)や、エポキシ(メタ)アクリレート(エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を重合させたもの)などが好適であり、(メタ)アクリレートが付与されたその他のオリゴマーも使用できる。オリゴマーは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
本発明の光造形用ポリマー組成物がオリゴマーを含む場合、室温環境における光造形法に適した粘度としつつ、硬化によって得られる弾性成形体に優れた特性を発揮させる観点から、本発明の光造形用ポリマー組成物において、液状ポリマー、モノマー、及びオリゴマーの合計を100質量%とした場合に、オリゴマーの割合は、好ましくは30~90質量%程度、より好ましくは40~80質量%程度、さらに好ましくは50~70質量%程度である。光造形用ポリマー組成物中にオリゴマーが含まれることにより、弾性成形体の圧縮永久歪みを小さくすることができる。また、本発明の光造形用ポリマー組成物がオリゴマーを含む場合、室温環境における光造形法に適した粘度としつつ、硬化によって得られる弾性成形体に優れた特性を発揮させる観点から、本発明の光造形用ポリマー組成物において、液状ポリマー、モノマー、及びオリゴマーの合計を100質量%とした場合に、モノマー及びオリゴマーの合計割合は、好ましくは30~90質量%程度、より好ましくは40~80質量%程度、さらに好ましくは50~70質量%程度である。前記の通り、光造形用ポリマー組成物中のモノマー及びオリゴマーの比率が高くなることにより、弾性成形体の圧縮永久歪みを小さくすることができる。
【0029】
本発明の光造形用ポリマー組成物において、モノマー及びオリゴマーは、それぞれ、室温環境における粘度を調整しつつ、硬化後の弾性成形体の特性を調整する、反応性希釈剤として機能する。
【0030】
本発明の光造形用ポリマー組成物は、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤を含むことにより、前述の光造形用ポリマー組成物の硬化を促進することができる。光重合開始剤としては、特に制限されず、光照射によってラジカルを発生させる、公知のものを使用することができ、アルキルフェノン系(例えば2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2-(4-(メチルチオ)ベンゾイル)-2-(4-モルホリニル)プロパン、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オンなど)、アシルフォスフィンオキサイド系(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなど)、オキシムエステル系(1,2-オクタンジオン,1-(4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム))、エタノン,1-(9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル)-,1-(O-アセチルオキシム)など)の光重合開始剤が好適である。光造形法では、波長390nm~410nmに光強度のピーク波長を有する光源、特に波長405nmに光強度のピーク波長を有する光源が主に用いられることから、このような光源の光の照射により、光造形用ポリマー組成物のラジカル重合を開始させるものであることが好ましい。光重合開始剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。上記のような光源を用いた光造形法において、光造形用ポリマー組成物を好適に硬化させる観点から、本発明の光造形用ポリマー組成物は、吸収帯の異なる光重合開始剤を少なくとも2種以上含むことが好ましい。例えば、405nmの波長領域に吸収帯を有する光重合開始剤と、300~380nmの波長領域に吸収帯を有する光重合開始剤とを併用することが好ましい。
【0031】
光重合開始剤の含有量としては、液状ポリマー100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部程度が挙げられ、より好ましくは1~7質量部程度である。
【0032】
本発明の光造形用ポリマー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において各種の添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、特に制限されず、例えば、光造形用組成物に添加される公知の添加剤が挙げられ、例えば、希釈ポリマー、光増感剤、フィラー、UV遮断剤、染料、顔料、レべリング剤、流動性調整剤、消泡剤、可塑剤、重合禁止剤、難燃化剤、分散安定化剤、保存安定化剤、酸化防止剤、金属、金属酸化物、金属塩、セラミックスなどが挙げられる。光造形用ポリマー組成物に含まれる添加剤は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。なお、光造形用ポリマー組成物に含まれる添加剤の含有率の合計は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下であり、0質量%であてもよい。
【0033】
本発明の光造形用ポリマー組成物は、液状ポリマーと、モノマーと、必要に応じて含まれるオリゴマー、光重合開始剤、各種添加剤等を混合することにより、容易に製造することができる。
【0034】
<弾性成形体>
本発明の弾性成形体は、前述の光造形用ポリマー組成物の硬化物である。具体的には、光造形用ポリマー組成物に対して光照射することにより、硬化させたものである。
【0035】
本発明の弾性成形体のショアA硬度としては、製品に求められる硬さに応じて適宜設定すればよいが、優れた特性を発揮する観点からは、好ましくは25以上、より好ましくは25~90の範囲が挙げられる。すなわち、本発明の光造形用ポリマー組成物は、DLP方式の光造形法によって、温度25℃、UV波長405nm、積層ピッチ0.05mm、UV照射時間1層当たり20秒間、UV照度5.0mW/cm2の条件で作製した弾性成
形体(JIS K6262:2013のφ29×12.5mmの圧縮玉の形状)が、25以上のショアA硬度を有するものであることが好ましく、25~90のショアA硬度を有するものであることがより好ましい。なお、本発明において、弾性成形体のショアA硬度は、JIS K6253-3:2012に規定された方法に準拠して測定された値である。
【0036】
本発明の弾性成形体の引張破断強度としては、製品に求められる引張破断強度に応じて適宜設定すればよく、好ましくは5.0MPa以上、より好ましくは5.5MPa以上である。すなわち、本発明の光造形用ポリマー組成物は、DLP方式の光造形法によって、温度25℃、UV波長405nm、積層ピッチ0.05mm、UV照射時間1層当たり20秒間、UV照度5.0mW/cm2の条件で作製した弾性成形体(JIS K6251:2017のダンベル状3号試験片の形状)が、5.0MPa以上の引張破断強度を有するものであることが好ましく、5.5MPa以上の引張破断強度を有するものであることがより好ましい。なお、本発明において、弾性成形体の引張破断強度は、JIS K6251:2017に規定された方法に準拠して測定された値である。弾性成形体の引張破断強度の上限としては、例えば、50MPa以下、15.0MPa以下が挙げられる。
【0037】
本発明の弾性成形体の引張破断伸び率としては、製品に求められる破断伸び率に応じて適宜設定すればよく、好ましくは30%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは100%以上である。すなわち、本発明の光造形用ポリマー組成物は、DLP方式の光造形法によって、温度25℃、UV波長405nm、積層ピッチ0.05mm、UV照射時間1層当たり20秒間、UV照度5.0mW/cm2の条件で作製した弾性成形体(JIS K6251:2017のダンベル状3号試験片の形状)が、30%以上の引張破断伸び率を有するものであることが好ましく、70%以上の引張破断伸び率を有するものであることがより好ましく、100%以上の引張破断伸び率を有するものであることがさらに好ましい。なお、本発明において、弾性成形体の引張破断伸び率は、JIS K6251:2017に規定された方法に準拠して測定された値である。弾性成形体の引張破断伸び率の上限としては、例えば、1000%以下が挙げられる。
【0038】
本発明の弾性成形体の圧縮永久歪みとしては、製品に求められる圧縮永久歪みに応じて適宜設定すればよいが、優れた特性を発揮する観点からは、JIS K6262:2013に規定された方法に準拠し、温度23℃で、22時間、25%の圧縮を行った後、圧縮を解除してから0.5時間後の圧縮永久歪みが、好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下である。すなわち、本発明の光造形用ポリマー組成物は、DLP方式の光造形法によって、温度25℃、UV波長405nm、積層ピッチ0.05mm、UV照射時間1層当たり20秒間、UV照度5.0mW/cm2の条件で作製した弾性成形体(JIS K6262:2013のφ29×12.5mmの圧縮玉の形状)が、10%以下の前記圧縮永久歪みを有するものであることが好ましく、7%以下の前記圧縮永久歪みを有するものであることがより好ましく、5%以下の前記圧縮永久歪みを有するものであることがさらに好ましい。
【0039】
本発明の弾性成形体の形状としては、特に制限されず、光造形法により所望の形状とすることができる。
【0040】
本発明の弾性成形体の製造方法としては、特に制限されず、前述した光造形用ポリマー組成物を原料として、公知の光造形法により製造することができる。本発明のポリマー成形体の製造方法の詳細については、下記<弾性成形体の製造方法>の項目に記載の通りである。
【0041】
<弾性成形体の製造方法>
本発明の弾性成形体の製造方法は、液状の樹脂を原料に用いた従来公知の光造形法において、液状の樹脂の代わりに本発明の光造形用ポリマー組成物を用いることにより、好適に行うことができる。具体的には、例えば、SLA方式(光造形レーザ方式:Stereolithography Appratus)、DLP方式(光造形プロジェクタ(面露光)方式:Digital Light Processing)、LCD方式(光造形液状ディスプレイ方式:Liquid Crystal Display)などの各種方式の光造形法において、液状の樹脂の代わりに、本発明の光造形用ポリマー組成物を原料として、弾性成形体を製造することができる。
【0042】
本発明の弾性成形体は、例えば、造形テーブル上に、本発明の光造形用ポリマー組成物を供給し、光造形用ポリマー組成物に光を照射し、光造形用ポリマー組成物を硬化させて1層目の硬化物を形成する工程と、1層目の硬化物の上に、2層目の硬化物を形成する光造形用ポリマー組成物を供給し、光造形用ポリマー組成物に光を照射し、光造形用ポリマー組成物を硬化させて2層目の硬化物を形成する工程と、2層目の硬化物を形成する工程と同様の工程を繰り返してN層まで形成して、3次元形状の弾性成形体(光造形物)を製造する方法によって好適に製造される。光造形法には、公知の3Dプリンタを用いることができ、3Dプリンタとしては市販品を用いることもできる。
【0043】
光造形法において、光造形用ポリマー組成物を硬化させる際の1層の厚みは、例えば0.01~0.5mm程度である。また、照射される光は、一般には紫外光であり、波長405nmの光を含むことが好ましい。また、照射される光の照度は、一般には測定波長域405nmにおいて0.1~100mW/cm2程度である。1層の光造形用ポリマー組成物を硬化させる際の光照射時間については、光造形法の方式により異なり、適宜調整する。例えばDLP方式であれば、1~60秒程度である。本発明の弾性成形体は、室温程度(例えば20~30℃)の環境で製造されることが好ましい。
【0044】
また、上記の光造形後に場合によっては追加で高圧水銀ランプ照射、メタルハライドランプ照射、UV-LED照射、加熱等の一般的な2次処理をすることができる。これら2次処理によって造形後の表面を改質したり、強度を改善したり、硬化を促進させることができる。光造形の条件によって不要な場合があるため必ずしも必要なわけではないが、光造形と合わせて2次処理が可能である。
【実施例
【0045】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。実施例及び比較例で使用した各材料の詳細を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
<実施例1~31及び比較例1~6>
(光造形用ポリマー組成物の製造)
表2~4に記載の配合割合(質量部)となるように、自転・公転可能な攪拌機で各材料を混合、脱泡して、光造形用ポリマー組成物を作製した。各成分の混合は、各成分が均一になるように行った。表2~4において、「-」は、配合されていないことを示す。
【0048】
(光造形用ポリマー組成物の粘度)
各実施例及び比較例で得られた各光造形用ポリマー組成物について、温度25℃(誤差は±2℃)、相対湿度50%の環境下で、E型粘度計(Anton-Paar社製のMCR301)を用いて、コーンプレートφ25mm、せん断速度100秒-1の条件で粘度を測定した。結果を表2~4に示す。
【0049】
(弾性成形体の製造)
各実施例及び比較例で得られた各光造形用ポリマー組成物を用い、DLP方式の光造形法により、弾性成形体を製造した。具体的には、ピーク波長405nmの光源(UV-LED)を備える3Dプリンタを用い、温度25℃、積層ピッチ0.05mm、照射時間1層当たり20秒間、波長405nmでの照度5.0mW/cm2の条件で、弾性成形体を製造した。弾性成形体として、それぞれ3種類の形状を作製した。1つ目は、後述の引張試験で用いたJIS K6251:2017のダンベル状3号試験片の形状であり、2つ目は、後述の硬度及び圧縮永久歪みの測定で用いたJIS K6262:2013のφ29×12.5mmの圧縮玉の形状であり、3つ目は、後述の繰り返し疲労試験で用いたJIS K6260:2017の試験片(寸法長さ150mm、幅25mm、中心部溝の曲率半径2.38mm、厚さ6.3mm)である。
【0050】
ただし、比較例1~6で得られた各光造形用ポリマー組成物は、粘度が高いため、前記の条件では弾性成形体を製造することができなかった。そのため、組成物の液の温度を40~80℃に高めることで見かけ粘度を下げたり、1層を作製する際のステージ昇降を通常の10倍ほどの距離に変更し、1/10のスピードで層の形成を行うなどして、弾性成形体を得た。なお、市販の3Dプリンタをそのまま用いる場合、このような条件を採用して比較例1~6の弾性成形体を生産することは困難であり、生産できたとしても、生産性が非常に低い。また、市販の3Dプリンタでは、温調の上限値が30℃程度であることから、市販の3Dプリンタを用いて比較例1~6の弾性成形体を製造することは困難である。
【0051】
(弾性成形体の硬度)
実施例及び比較例で得られた弾性成形体(JIS K6262:2013のφ29×12.5mmの圧縮玉の形状)について、JIS K6253-3:2012に規定された方法に準拠してショアA硬度を測定した。結果を表2~4に示す。
【0052】
(弾性成形体の引張試験)
実施例及び比較例で得られた弾性成形体(JIS K6251:2017のダンベル状3号試験片の形状)について、JIS K6251:2017の規定に準拠して引張破断強度及び引張破断伸び率を測定した。結果を表2~4に示す。引張破断強度の値が大きいほど弾性成形体の強度が高く、引張破断伸び率の値が大きいほど伸びやすく、弾性成形体の機械的特性が良好と判断される。
【0053】
(圧縮永久歪み)
実施例及び比較例で得られた弾性成形体(JIS K6262:2013のφ29×12.5mmの圧縮玉の形状)について、JIS K6262:2013の規定に準拠し、温度23℃で22時間、25%の圧縮を行い、圧縮を解除してから0.5時間後の圧縮永久歪を測定した。結果を表2~4に示す。圧縮永久歪みの値が小さい程、弾性成形体の復元力が良好と判断される。
【0054】
(繰り返し疲労試験)
実施例及び比較例で得られた弾性成形体(JIS K6260:2017の試験片(寸法長さ150mm、幅25mm、中心部溝の曲率半径2.38mm、厚さ6.3mm))について、JIS K6260:2017の規定に準拠し、デマッチャ式屈曲試験機を用いて繰り返し疲労試験を行った。試験片の中心部溝に切込みを入れ、5Hz、中心部溝にかかる歪み50%で繰り返し屈曲を与えた時のき裂の成長度合いを測定した。き裂成長性(回/mm)は次式で算出される。き裂が1mm成長する屈曲回数を計測した。結果を表2~4に示す。値が大きい程、き裂が1mm成長するのにより時間がかかり、繰り返し疲労試験の結果(耐屈曲き裂成長性)は良好と判断される。
き裂成長性(回/mm)=屈曲回数(回)/き裂長さ(mm)
【0055】
(弾性成形体の製造時間)
弾性成形体の製造に要した時間(2mm厚のサンプルを作る際の造形時間)を測定した。25分以内を◎、25分超60分以内を〇、60分以上あるいはDLP方式では製造できなかったものを×とし、結果を表2~4に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
表2~4に示されるように、実施例1~31の光造形用ポリマー組成物は、液状ポリマー及びモノマーを含み、温度25℃での粘度が3,000mPa・s以下である。実施例1~31の光造形用ポリマー組成物は、室温での粘度が低く、SLA方式、DLP方式、LCD方式などの光造形法に好適に用いることができ、所望の弾性成形体を製造することができる。また、得られた弾性成形体の硬度、引張破断強度、引張破断伸び率、圧縮永久歪み、及び繰り返し疲労の各種物性も良好である。