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特許7547905受信処理器、ソーナーシステム、処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】受信処理器、ソーナーシステム、処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/44 20060101AFI20240903BHJP
   G01S 7/52 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H04R1/44 330
G01S7/52 U
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020164370
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022056560
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181135
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】近藤 秀一
【審査官】松崎 孝大
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-103589(JP,A)
【文献】特開2004-257858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/44
G01S 7/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎密波と一方向の圧力とを含み水中を伝搬する波を電気信号に変換する圧電素子が出力する前記電気信号を、周波数領域で解析する解析手段と、
前記解析手段による解析結果に基づいて、前記疎密波に係る第1情報と、前記一方向の圧力に係る第2情報とを取得する取得手段と、
を備える受信処理器。
【請求項2】
前記電気信号は、
前記疎密波に係る交流の電気信号と、前記一方向の圧力に係る直流の電気信号とが重畳された信号であり、
前記解析手段は、
前記重畳された信号を前記周波数領域で解析する、
請求項1に記載の受信処理器。
【請求項3】
前記電気信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換する変換手段、
を備え、
前記解析手段は、
前記デジタル信号を周波数領域で解析する、
請求項1または請求項2に記載の受信処理器。
【請求項4】
前記疎密波は、音波であり、
前記一方向の圧力は、水圧である、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の受信処理器。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の受信処理器と、
前記第2情報に基づいて前記圧電素子にフィードバックする信号を生成する送信器と、
を備えるソーナーシステム。
【請求項6】
受信処理器が行う処理方法であって、
疎密波と一方向の圧力とを含み水中を伝搬する波を電気信号に変換する圧電素子が出力する前記電気信号を、周波数領域で解析することと、
解析結果に基づいて、前記疎密波に係る第1情報と、前記一方向の圧力に係る第2情報とを取得することと、
を含む処理方法。
【請求項7】
ソーナーシステムが行う処理方法であって、
疎密波と一方向の圧力とを含み水中を伝搬する波を電気信号に変換する圧電素子が出力する前記電気信号を、周波数領域で解析することと、
解析結果に基づいて、前記疎密波に係る第1情報と、前記一方向の圧力に係る第2情報とを取得することと、
前記第2情報に基づいて前記圧電素子にフィードバックする信号を生成することと、
を含む処理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
疎密波と一方向の圧力とを含み水中を伝搬する波を電気信号に変換する圧電素子が出力する前記電気信号を、周波数領域で解析することと、
解析結果に基づいて、前記疎密波に係る第1情報と、前記一方向の圧力に係る第2情報とを取得することと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信処理器、ソーナーシステム、処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ソーナーシステムでは、送受波器が共振現象を利用して大きな振動を得て水中に音波を放出し、その音波を用いて物体が検知される。
特許文献1には、関連する技術として、アクティブソーナーに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-243733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ソーナーシステムを用いて水中で物体を検知する場合、送受波器に加わる水圧の影響によって共振周波数が変化する。そのため、ソーナーシステムを用いて物体を検知する場合、送受波器の駆動周波数を水中における共振周波数の変化に追従させる必要がある。しかしながら、送受波器の駆動周波数を水中における共振周波数の変化に追従させるためには、水圧の情報が必要となり、一般的には、水圧をリアルタイムに計測するための新たな装置(例えばセンサなど)が必要となる。その結果、一般的には、新たな装置を追加せずに、送受波器による物体の検知の効率が犠牲にされる場合が多い。ここでの効率とは、電気音響変換効率、つまり送受波器が電気信号を音波に変換するエネルギーの割合のことである。つまり、仮に送受波器のまわりの水圧が変化することで送受波器の共振周波数が変化してしまったとしても、一般的にはどれだけ共振周波数が変化したかを知る術がない。そのため、駆動周波数を共振周波数の変化に応じて最適値に変更することができないので、共振周波数と駆動周波数の間に差が生じてしまい、電気音響変換効率が下がってしまう(すなわち、犠牲になる)。
そのため、ソーナーシステムでは、送受波器の効率への悪影響を抑制することのできる技術が求められている。
【0005】
本発明の各態様は、上記の課題を解決することのできる受信処理器、ソーナーシステム、処理方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、受信処理器は、疎密波と一方向の圧力とを含み水中を伝搬する波を電気信号に変換する圧電素子が出力する前記電気信号を、周波数領域で解析する解析手段と、前記解析手段による解析結果に基づいて、前記疎密波に係る第1情報と、前記一方向の圧力に係る第2情報とを取得する取得手段と、を備える。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の別の態様によれば、ソーナーシステムは、上記の受信処理器と、前記第2情報に基づいて前記圧電素子にフィードバックする信号を生成する送信器と、を備える。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の別の態様によれば、処理方法は、受信処理器が行う処理方法であって、疎密波と一方向の圧力とを含み水中を伝搬する波を電気信号に変換する圧電素子が出力する前記電気信号を、周波数領域で解析することと、解析結果に基づいて、前記疎密波に係る第1情報と、前記一方向の圧力に係る第2情報とを取得することと、を含む。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の別の態様によれば、処理方法は、ソーナーシステムが行う処理方法であって、疎密波と一方向の圧力とを含み水中を伝搬する波を電気信号に変換する圧電素子が出力する前記電気信号を、周波数領域で解析することと、解析結果に基づいて、前記疎密波に係る第1情報と、前記一方向の圧力に係る第2情報とを取得することと、前記第2情報に基づいて前記圧電素子にフィードバックする信号を生成することと、を含む。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の別の態様によれば、プログラムは、コンピュータに、疎密波と一方向の圧力とを含み水中を伝搬する波を電気信号に変換する圧電素子が出力する前記電気信号を、周波数領域で解析することと、解析結果に基づいて、前記疎密波に係る第1情報と、前記一方向の圧力に係る第2情報とを取得することと、を実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の各態様によれば、ソーナーシステムにおいて、新たな装置を追加することなく、送受波器の電気音響変換効率への悪影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態によるソーナーシステムの構成の一例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態による水中航走体の構成の一例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態による船舶の構成の一例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態によるソーナーシステムの処理フローの一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態による最小構成の受信処理器の一例を示す図である。
図6】本発明の実施形態による最小構成の受信処理器の処理フローの一例を示す図である。
図7】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
<実施形態>
本発明の一実施形態によるソーナーシステム1は、水中で音波を送波及び受波する送受波器に、深度計などの水圧を検知するための新たな装置を追加することなく、リアルタイムで水中における周囲の物体(障害物など)を検知することのできるシステムである。ソーナーシステム1は、図1に示すように、送受波器10、受信処理器20、送信器30を備える。
【0016】
このソーナーシステム1は、例えば、図2に示すような水中航走体100に備えられる。また、このソーナーシステム1は、例えば、図3に示すように水中ケーブル300を介して船舶200などに備えられる。
【0017】
例えば、水中航走体100は、ソーナーシステム1を用いて水中における周囲の障害物を検知する。水中航走体100は、海底探索や水中監視などを目的として、図2に示すように深度を変えながら移動する。
また、例えば、船舶200は、ソーナーシステム1を用いて水中の魚群などの探知を目的として、図3に示すように送受波器10の深度を変えながら移動する。
そのため、送受波器10に加わる水圧は、送受波器10の深度に応じて変化する。本発明は、この水圧の変化による効率の低下を抑制するものである。ここでの効率は、例えば、電気音響変換効率、つまり送受波器が電気信号を音波に変換するエネルギーの割合である。
【0018】
送受波器10は、図1に示すように、圧電素子101、プリアンプ102、トランス103(昇圧手段の一例)を備える。
【0019】
圧電素子101は、圧力と電気を交換する素子である。
具体的には、圧電素子101は、音波などのような圧力が疎密波として伝搬する波を受けると、受けた圧力を交流の電気信号に変換する。また、圧電素子101は、水圧などのような一方向の圧力を受けると、受けた圧力を直流の電気信号に変換する。
圧電素子101は、電気信号をプリアンプ102に出力する。なお、圧電素子101が出力する電気信号は、交流の電気信号と直流の電気信号とが重畳されたアナログの電気信号である。
また、具体的には、トランス103から受ける信号を圧力に変換して、音波として水中に放出する。
【0020】
プリアンプ102は、圧電素子101が出力する電気信号を増幅する。プリアンプ102は、増幅後の電気信号を受信処理器20に出力する。
【0021】
トランス103は、送信器30が出力する信号を昇圧する。トランス103は、昇圧後の信号を圧電素子101に出力する。
【0022】
受信処理器20は、図1に示すように、A/D(Analog to Digital)変換器201(変換手段の一例)、周波数解析処理器202(解析手段の一例、取得手段の一例)を備える。
【0023】
A/D変換器201は、送受波器10から受けたアナログの電気信号をデジタルの電気信号に変換する。A/D変換器201は、デジタルの電気信号を周波数解析処理器202に出力する。
【0024】
周波数解析処理器202は、デジタルの電気信号について周波数解析を行う。
具体的には、周波数解析処理器202は、デジタルの電気信号に含まれる交流の電気信号(第1情報の一例)と直流の電気信号が重畳された電気信号の情報(第2情報の一例)を周波数領域で分析することによって(例えば、高速フーリエ変換を用いた分析を行うことによって)、交流の電気信号についての情報と直流の電気信号についての情報とに分離する。そして、周波数解析処理器202は、分離後の交流の電気信号についての情報を音波情報としてソーナーシステム1の外部に出力する。例えば、音波情報は、音波の振幅や位相などの情報である。この音波情報をもとに、ソーナーシステム1の周囲の障害物との距離、方位の情報が受信処理器20の内部で算出され、これら距離、方位情報がモニタ等に出力される。また、周波数解析処理器202は、分離後の直流の電気信号についての情報を水圧情報として送信器30に出力する。水圧情報には、水圧の値が含まれている。
【0025】
送信器30は、図1に示すように、信号発生器301、パワーアンプ302を備える。
信号発生器301は、送信諸元と水圧情報とに基づいて、送受波器10の駆動周波数にフィードバックする信号を生成する。送信諸元は、電気信号の波形そのものであり、例えば、波の周波数、振幅、周期などの情報である。送信諸元は時間の関数として表される。送信諸元は、例えば、操作者が入力装置(図示せず)を介して送信器30に入力される。
具体的には、例えば、信号発生器301は、絶対値によって示される水圧と送受波器10の共振周波数との対応関係を示すデータテーブルを予め記憶する記憶部を備える。信号発生器301は、受信処理器20から水圧情報を受ける。信号発生器301は、記憶部が記憶するデータテーブルにおいて、受けた水圧情報が示す水圧と同一の水圧を特定する。信号発生器301は、データテーブルにおいて、特定した水圧に対応付けられている共振周波数を特定する。信号発生器301は、特定した共振周波数に対応する送信信号を生成する。この送信信号は、外部入力された送信諸元の周波数を水圧情報をもとに効率の低下を抑制する加工がされた信号である。信号発生器301は、生成した送信信号をパワーアンプ302に出力する。信号発生器301が生成したこの信号を送受波器10の駆動周波数にフィードバックさせることによって、ソーナーシステム1は、リアルタイムに変化する送受波器10の共振周波数に追従することが可能になる。つまり、ソーナーシステム1は、リアルタイムに音波を用いて効率よく物体を検知することができる。すなわち、ソーナーシステム1は、電気音響変換効率の低下を抑制しつつ物体を検知することができる。その結果、例えば、送受波器10に電気信号を供給する電力源に良い影響を与える。具体的には、その電力源が電池である場合には、その良い影響として、電気音響変換効率の低下の抑制により電池が長持ちすることや、必要な電池の容量を少なくすることができるため電池を小型化できることなどが挙げられる。
【0026】
パワーアンプ302は、信号発生器301が生成した信号を所望の振幅まで増幅する。パワーアンプ302は、増幅後の信号を送受波器10に出力する。
【0027】
次に、ソーナーシステム1の処理について説明する。
ここでは、ソーナーシステム1の処理について図4を参照して説明する。
【0028】
圧電素子101は、受けた圧力を電気信号に交換する(ステップS1)。
具体的には、圧電素子101は、疎密波を受けると、受けた疎密波を交流の電気信号に変換する。また、圧電素子101は、一方向の圧力を受けると、受けた圧力を直流の電気信号に変換する。
圧電素子101は、交流の電気信号と直流の電気信号とが重畳されたアナログの電気信号をプリアンプ102に出力する。
【0029】
プリアンプ102は、圧電素子101から電気信号を受ける。プリアンプ102は、受けた電気信号を増幅する(ステップS2)。プリアンプ102は、増幅後の電気信号を受信処理器20に出力する。
【0030】
A/D変換器201は、送受波器10から電気信号を受ける。A/D変換器201は、受けたアナログの電気信号をデジタルの電気信号に変換する(ステップS3)。A/D変換器201は、デジタルの電気信号を周波数解析処理器202に出力する。
【0031】
周波数解析処理器202は、A/D変換器201から電気信号を受ける。周波数解析処理器202は、デジタルの電気信号について周波数解析を行う(ステップS4)。
具体的には、周波数解析処理器202は、デジタルの電気信号に含まれる交流の電気信号と直流の電気信号が重畳された電気信号の情報を周波数領域で分析することによって、交流の電気信号についての情報と直流の電気信号についての情報とに分離する。そして、周波数解析処理器202は、分離後の交流の電気信号についての情報を音波情報としてソーナーシステム1の外部に出力する。また、周波数解析処理器202は、分離後の直流の電気信号についての情報を水圧情報として送信器30に出力する。
【0032】
信号発生器301は、ソーナーシステム1の外部から送信諸元の情報を受ける。また、信号発生器301は、受信処理器20から水圧情報を受ける。
そして、信号発生器301は、送信諸元と水圧情報とに基づいて、送受波器10の駆動周波数にフィードバックする信号を生成する(ステップS5)。
具体的には、信号発生器301は、予め記憶させておいた水圧と送受波器10の共振周波数の変化の関係の情報をもとに、送信諸元情報を加えて送信信号を生成する。
信号発生器301は、生成した信号をパワーアンプ302に出力する。
【0033】
パワーアンプ302は、信号発生器301から信号を受ける。パワーアンプ302は、受けた信号を所望の振幅まで増幅する(ステップS6)。パワーアンプ302は、増幅後の信号を送受波器10に出力する。
【0034】
トランス103は、送信器30から信号を受ける。トランス103は、受けた信号を昇圧する(ステップS7)。トランス103は、昇圧後の信号を圧電素子101に出力する。
【0035】
圧電素子101は、トランス103から信号を受ける。圧電素子101は、受けた信号を圧力に変換する(ステップS8)。圧電素子101は、変換後の圧力を音波として水中に放出する(ステップS9)。
【0036】
以上、本発明の一実施形態によるソーナーシステム1について説明した。
ソーナーシステム1において、周波数解析処理器202は、デジタルの電気信号について周波数解析を行う。具体的には、周波数解析処理器202は、デジタルの電気信号に含まれる交流の電気信号と直流の電気信号が重畳された電気信号の情報を周波数領域で分析することによって、交流の電気信号についての情報と直流の電気信号についての情報とに分離する。
こうすることにより、ソーナーシステム1は、水中を伝搬し重畳された波として検知される音波と水圧とを、音波と水圧のそれぞれに分離することができる。
その結果、分離後の水圧に係る情報に基づいて、送受波器10の駆動周波数を補正することにより、ソーナーシステム1は、水圧情報を信号発生器301に伝達させてフィードバックさせることにより、リアルタイムに変化する送受波器10の共振周波数に追従することが可能になる。よって、ソーナーシステム1は、送受波器10の電気音響変換効率(送受波器の効率の一例)の低下を抑制することができる。つまり、ソーナーシステム1は、送受波器10の効率への悪影響を抑制することができる。また、取得した水圧情報が示す水圧は送受波器10の深度に1対1で対応した値である。そのため、例えば、コンピュータ等の処理装置が、信号発生器301が取得した水圧情報が示す水圧の値を深度に変換し、その深度(圧力の値に対応する深度の一例)を外部モニタ(表示装置の一例)等に出力する場合には、ソーナーシステム1は深度計の機能を有することになる。その結果、深度計などの水圧を検知するための新たな装置を追加する必要がなく、ソーナーシステム1を小型化することができる。
【0037】
本発明の実施形態による最小構成の受信処理器20について説明する。
本発明の実施形態による最小構成の受信処理器20は、図5に示すように、解析手段201a、取得手段201bを備える。
解析手段201aは、疎密波と一方向の圧力とを含み水中を伝搬する波を電気信号に変換する圧電素子が出力する前記電気信号を、周波数領域で解析する。
取得手段201bは、前記解析手段201aによる解析結果に基づいて、前記疎密波に係る第1情報と、前記一方向の圧力に係る第2情報とを取得する。
【0038】
次に、最小構成の受信処理器20の処理について図6を参照して説明する。
解析手段201aは、疎密波と一方向の圧力とを含み水中を伝搬する波を電気信号に変換する圧電素子が出力する前記電気信号を、周波数領域で解析する(ステップS11)。
取得手段201bは、前記解析手段201aによる解析結果に基づいて、前記疎密波に係る第1情報と、前記一方向の圧力に係る第2情報とを取得する(ステップS12)。
こうすることにより、受信処理器20は、ソーナーシステムにおいて、新たな装置を追加することなく、送受波器10の効率への悪影響を抑制することができる。
【0039】
なお、本発明の実施形態における処理は、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。
【0040】
本発明の実施形態について説明したが、上述の受信処理器20、送信器30、その他の制御装置は内部に、コンピュータ装置を有していてもよい。そして、上述した処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。コンピュータの具体例を以下に示す。
図7は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ5は、図7に示すように、CPU6(ベクトルプロセッサを含む)、メインメモリ7、ストレージ8、インターフェース9を備える。
例えば、上述の受信処理器20、送信器30、その他の制御装置のそれぞれは、コンピュータ5に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ8に記憶されている。CPU6は、プログラムをストレージ8から読み出してメインメモリ7に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU6は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ7に確保する。
【0041】
ストレージ8の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ8は、コンピュータ5のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース9または通信回線を介してコンピュータ5に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ5に配信される場合、配信を受けたコンピュータ5が当該プログラムをメインメモリ7に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ8は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0042】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータ装置にすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例であり、発明の範囲を限定しない。これらの実施形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、省略、置き換え、変更を行ってよい。
【0044】
なお、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0045】
(付記1)
疎密波と一方向の圧力とを含み水中を伝搬する波を電気信号に変換する圧電素子が出力する前記電気信号を、周波数領域で解析する解析手段と、
前記解析手段による解析結果に基づいて、前記疎密波に係る第1情報と、前記一方向の圧力に係る第2情報とを取得する取得手段と、
を備える受信処理器。
【0046】
(付記2)
前記電気信号は、
前記疎密波に係る交流の電気信号と、前記一方向の圧力に係る直流の電気信号とが重畳された信号であり、
前記解析手段は、
前記重畳された信号を前記周波数領域で解析する、
付記1に記載の受信処理器。
【0047】
(付記3)
前記電気信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換する変換手段、
を備え、
前記解析手段は、
前記デジタル信号を周波数領域で解析する、
付記1または付記2に記載の受信処理器。
【0048】
(付記4)
前記疎密波は、音波であり、
前記一方向の圧力は、水圧である、
付記1から付記3の何れか一に記載の受信処理器。
【0049】
(付記5)
付記1から付記4の何れか一に記載の受信処理器と、
前記第2情報に基づいて前記圧電素子にフィードバックする信号を生成する送信器と、
を備えるソーナーシステム。
【0050】
(付記6)
疎密波と一方向の圧力とを含み水中を伝搬する波を電気信号に変換する圧電素子の出力する前記電気信号が周波数領域で解析され、解析結果に基づいて得られた前記一方向の圧力に係る情報に基づいて、前記圧電素子にフィードバックする信号を生成する送信器。
【0051】
(付記7)
前記圧力の値に対応する深度を表示装置に出力する、
付記6に記載の送信器。
【0052】
(付記8)
疎密波と一方向の圧力とを含み水中を伝搬する波を電気信号に変換し、変換後の電気信号を出力する圧電素子と、
前記電気信号が周波数領域で解析された解析結果に基づいて得られた前記一方向の圧力に係る情報を示す信号を昇圧する昇圧手段と、
を備える送受波器。
【0053】
(付記9)
受信処理器が行う処理方法であって、
疎密波と一方向の圧力とを含み水中を伝搬する波を電気信号に変換する圧電素子が出力する前記電気信号を、周波数領域で解析することと、
解析結果に基づいて、前記疎密波に係る第1情報と、前記一方向の圧力に係る第2情報とを取得することと、
を含む処理方法。
【0054】
(付記10)
ソーナーシステムが行う処理方法であって、
疎密波と一方向の圧力とを含み水中を伝搬する波を電気信号に変換する圧電素子が出力する前記電気信号を、周波数領域で解析することと、
解析結果に基づいて、前記疎密波に係る第1情報と、前記一方向の圧力に係る第2情報とを取得することと、
前記第2情報に基づいて前記圧電素子にフィードバックする信号を生成することと、
を含む処理方法。
【0055】
(付記11)
コンピュータに、
疎密波と一方向の圧力とを含み水中を伝搬する波を電気信号に変換する圧電素子が出力する前記電気信号を、周波数領域で解析することと、
解析結果に基づいて、前記疎密波に係る第1情報と、前記一方向の圧力に係る第2情報とを取得することと、
を実行させるプログラム。
【0056】
(付記12)
送信器が行う処理方法であって、
疎密波と一方向の圧力とを含み水中を伝搬する波を電気信号に変換する圧電素子の出力する前記電気信号が周波数領域で解析され、解析結果に基づいて得られた前記一方向の圧力に係る情報に基づいて、前記圧電素子にフィードバックする信号を生成すること、
を含む処理方法。
【0057】
(付記13)
コンピュータに、
疎密波と一方向の圧力とを含み水中を伝搬する波を電気信号に変換する圧電素子の出力する前記電気信号が周波数領域で解析され、解析結果に基づいて得られた前記一方向の圧力に係る情報に基づいて、前記圧電素子にフィードバックする信号を生成すること、
を実行させるプログラム。
【0058】
(付記14)
疎密波と一方向の圧力とを含み水中を伝搬する波を電気信号に変換し、変換後の電気信号を出力する圧電素子を有する送信器が行う処理方法であって、
前記電気信号が周波数領域で解析された解析結果に基づいて得られた前記一方向の圧力に係る情報を示す信号を昇圧すること、
を含む処理方法。
【0059】
(付記14)
疎密波と一方向の圧力とを含み水中を伝搬する波を電気信号に変換し、変換後の電気信号を出力する圧電素子を有する送信器のコンピュータに、
前記電気信号が周波数領域で解析された解析結果に基づいて得られた前記一方向の圧力に係る情報を示す信号を昇圧すること、
を実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0060】
1・・・ソーナーシステム
5・・・コンピュータ
6・・・CPU
7・・・メインメモリ
8・・・ストレージ
9・・・インターフェース
10・・・送受波器
20・・・受信処理器
30・・・送信器
100・・・水中航走体
101・・・圧電素子
102・・・プリアンプ
103・・・トランス
200・・・船舶
201・・・A/D変換器
201a・・・解析手段
201b・・・取得手段
202・・・周波数解析処理器
300・・・水中ケーブル
301・・・信号発生器
302・・・パワーアンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7