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特許7547918移動体操作装置、移動体操作方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】移動体操作装置、移動体操作方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/10 20120101AFI20240903BHJP
   B60W 40/10 20120101ALI20240903BHJP
   G05G 1/52 20080401ALI20240903BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20240903BHJP
【FI】
B60W50/10
B60W40/10
G05G1/52
B60N2/90
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020174932
(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公開番号】P2022066035
(43)【公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田名網 克周
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康二
(72)【発明者】
【氏名】林 美由希
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-064672(JP,A)
【文献】特開2010-063684(JP,A)
【文献】特開2010-119199(JP,A)
【文献】特開2004-016275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 40/00 ~ 50/16
G05G 1/52
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の操作者が座る座席の下部に取り付ける支持体と、
前記支持体に固定された1又は複数の6軸力覚センサと、
前記6軸力覚センサから取得したセンサ信号に基づいて、前記移動体の操作信号を生成して出力するコントローラと、
を備え
前記コントローラは、ドア開閉操作信号生成部を備え、前記ドア開閉操作信号生成部は、前記センサ信号が前記操作者の重心の左右方向の移動又はひねりに対応する信号であり、前記センサ信号を取得した時点における前記移動体の運行状態が停止中である場合は、前記移動体のドアを開閉する操作信号を生成して出力する、移動体操作装置。
【請求項2】
前記センサ信号は、前記操作者の上体の動きに対応した信号である、
請求項1に記載の移動体操作装置。
【請求項3】
前記コントローラは、走行操作信号生成部を備え、前記走行操作信号生成部は、前記センサ信号と、前記センサ信号を取得した時点における前記移動体の運行状態を示す運行情報と、に基づいて、前記移動体の操作信号を生成して出力する、
請求項1又は2に記載の移動体操作装置。
【請求項4】
前記走行操作信号生成部は、前記センサ信号が前記操作者の重心の左右方向の移動に対応する信号であり、前記センサ信号を取得した時点における前記移動体の運行状態が前進中である場合は、当該移動の方向に旋回する操作信号を生成して出力する、
請求項3に記載の移動体操作装置。
【請求項5】
前記走行操作信号生成部は、前記センサ信号が前記操作者の上体のひねりに対応する信号であり、前記センサ信号を取得した時点における前記移動体の運行状態が前進中である場合は、当該ひねりの方向に旋回する操作信号を生成して出力する、
請求項3に記載の移動体操作装置。
【請求項6】
前記支持体は、前記6軸力覚センサの上部に固定された上部支持板と、前記6軸力覚センサの下部に固定された下部支持板と、を備える、
請求項1からのいずれか1項に記載の移動体操作装置。
【請求項7】
前記上部支持板は、前記座席の構造体の一部である、
請求項に記載の移動体操作装置。
【請求項8】
移動体の操作者が座る座席の下部に取り付けられた6軸力覚センサから出力されたセンサ信号を取得する工程と、
前記センサ信号に基づいて、前記移動体の操作信号を生成して出力する工程と、
を含み、
前記出力する工程において、前記センサ信号が前記操作者の重心の左右方向の移動又はひねりに対応する信号であり、前記センサ信号を取得した時点における前記移動体の運行状態が停止中である場合は、前記移動体のドアを開閉する操作信号を生成して出力する、移動体操作方法。
【請求項9】
請求項1に記載の移動体操作装置としてコンピュータを機能させるための移動体操作プログラムであって、前記コントローラとしてコンピュータを機能させるための移動体操作プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体を操作するための移動体操作装置、移動体操作方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人が操作する移動体において、ハンドル、アクセルペダル、又はブレーキペダル等によって操縦する方法に代えて、運転者が乗った操縦ステップの重心位置に応じて移動体を操縦する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、操縦ステップ上での運転者の重心位置を演算し、重心位置に基づいて前方直線走行、旋回走行、又は後方直進走行のいずれかを実現する移動体が開示されている。特許文献1に記載された技術は、さらに第1制御モードと第2制御モードとを、運転者が選択できる運転者入力操作デバイスを備えている。これにより、運転者に操縦負担を与えないで重心移動操縦が可能であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-125191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術は、運転者が立ったまま操作をするものであり、運転者を支持するための支持フレームに運転者がつかまって操縦する必要がある。つまり、ハンドルを操作しなくても操縦が可能であるが、一方で支持フレームにつかまっていなければ運転できないという問題がある。特に、ハンドルを手で素早く操作することが困難な人々にとっては、支持フレーム等につかまって体を支えることが困難な場合も多い。そこで、操作者が座席に座った状態で、かつハンドルを使わないで移動体の操作が可能な移動体操作装置が望まれる。
【0005】
本発明の一態様は、操作者が座席に座った状態で、かつハンドルを使わないで移動体の操作が可能な移動体操作装置、及び移動体操作方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る移動体操作装置は、移動体の操作者が座る座席の下部に取り付ける支持体と、前記支持体に固定された1又は複数の6軸力覚センサと、前記6軸力覚センサから取得したセンサ信号に基づいて、前記移動体の操作信号を生成して出力するコントローラと、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る移動体操作方法は、移動体の操作者が座る座席の下部に取り付けられた6軸力覚センサからのセンサ信号を取得する工程と、前記センサ信号に基づいて、前記移動体の操作信号を生成して出力する工程と、を含む。
【0008】
本発明の各態様に係るコントローラは、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータをコントローラが備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記コントローラをコンピュータにて実現させる移動体操作装置の移動体操作プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、操作者が座席に座った状態で、かつハンドルを使わないで移動体の操作が可能な移動体操作装置、及び移動体操作方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態1に係る移動体操作装置の構成を示す分解鳥瞰図と側面図である。
図2】実施形態1に係る移動体操作装置を座席に取り付ける一例を示す断面図である。
図3】実施形態1に係る移動体操作装置の6軸力覚センサとコントローラのブロック構成図である。
図4】実施形態1に係る移動体操作装置を用いた移動体操作方法を示すフローチャートである。
図5】他の実施形態に係る移動体操作装置の6軸力覚センサの配置図である。
図6】コントローラをコンピュータを用いて構成する場合の一構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る移動体操作装置100の構成を示す分解鳥瞰図であり、1001は移動体操作装置100をy軸方向から見た側面図である。移動体操作装置100は、座して操作する移動体の座席に取り付けられる。移動体操作装置100は、座席に座った操作者の動きを検出して、その動きに応じて移動体を操作する信号を出力する。移動体としては、自家用車、貨物車又は輸送車等の業務用車両、及び電動車いす等が考えられるが、これらに限定されない。
【0012】
(移動体操作装置)
移動体操作装置100は、6軸力覚センサ10と、コントローラ20と、支持体30と、を備える。移動体操作装置100は、操作者が座る座席の下部に取り付けられる。6軸力覚センサ10は、直交3次元座標(x、y、z)方向の力Fx、Fy、Fz、x軸回りのモーメントMx、y軸回りのモーメントMy、及びz軸回りのモーメントMzを検出して、センサ信号として出力することができる。なお、図1に示す6軸力覚センサ10の座標軸は、x軸が移動体の前方向、y軸が移動体の前方向に対する直交(左右)方向、z軸が鉛直方向を表す。コントローラ20は、例えば、6軸力覚センサ10から出力されたセンサ信号を取得して、それに基づいて移動体の操作信号を生成して出力する。コントローラ20の詳細については後述する。
【0013】
(6軸力覚センサと支持体)
図1の1001に示すように、6軸力覚センサ10は、支持体30を構成する第1支持板(上部支持板)31と第2支持板(下部支持板)32とにより固定されている。より具体的には、第1支持板31は、6軸力覚センサ10の上部に固定されている。また、第2支持板32は、6軸力覚センサ10の下部に固定されている。より具体的には、例えば第1支持板31は、6軸力覚センサ10のテーブルに固定され、第2支持板32は、6軸力覚センサ10のベースに固定されている。第1支持板31は、移動体の座席の下部に取り付けられ、座席を介して操作者の体重を受け止める。さらに、第1支持板31は、操作者の動きを6軸力覚センサ10に伝達する役割を有する。第2支持板32は、操作者の体重を受けた第1支持板31と6軸力覚センサ10を支持する。支持板32は、操作者の体重を受けた第1支持板31と6軸力覚センサ10を支持して変形しない程度の強度を有する。又は、第2支持板32は、十分な強度を有する移動体の構造部材の上に配置することを前提として、変形しない程度の強度を有するものであればよい。
【0014】
図2は、移動体操作装置100を移動体Vの座席52に取り付ける一例を示す断面図である。移動体操作装置100は、操作者Dが座る座席52の下部に取り付けられる。より具体的には、移動体操作装置100の第1支持板31が、移動体Vのシャーシ40に設けられた架台51に載置され固定される。架台51は、座席52を適切な高さに配置するための架台である。架台51は、座席52を前後に移動可能な構成を備えていてもよい。
【0015】
座席52は、移動体操作装置100の第1支持板31の上に取り付けられる。第1支持板31は、座席52と操作者Dの重量を受けても湾曲しない程度の強度を有する。なお、6軸力覚センサ10を保護するため、第1支持板31と第2支持板32との間に、1つ以上の緩衝体35又は移動制限体36を設けてもよい。緩衝体35は、例えばスプリングであり、座席52の過度の傾きを防止する。移動制限体36は、例えば第1支持板31と第2支持板32との間の距離よりもやや小さい高さを有するスペーサである。移動制限体36も、座席52の過度の傾きを防止する。緩衝体35と移動制限体36の両方を設けてもよい。
【0016】
第1支持板31は、上体の動きによって操作者Dの重心位置が変化することにより、その傾きが変化する。第1支持板31の傾きが変化することで、6軸力覚センサ10に所定の方向の力が加わる。こうして、第1支持板31は6軸力覚センサ10に操作者Dの動きを伝達する役割を有する。このような機能を備える形態であれば、第1支持板31は図1に示す形態に限られない。例えば、第1支持板31は、座席52の構造体の一部であってもよい。例えば、座席52を構成する構造材の底面を第1支持板31とし、第1支持板31に略水平方向に平坦な領域を設け、その平坦な領域に6軸力覚センサ10の上面が当接するように構成してもよい(図示せず)。
【0017】
(コントローラ)
図3は、実施形態1に係る移動体操作装置100の6軸力覚センサ10とコントローラ20のブロック構成図である。コントローラ20は、6軸力覚センサ10から取得したセンサ信号に基づいて、移動体の操作信号を出力する。図3に示すように、コントローラ20は、入出力インターフェース(入出力IF)21、上体移動演算部22、走行操作信号生成部23、ドア開閉操作信号生成部24、及び運行情報取得部25を備える。
【0018】
入出力IF21は、6軸力覚センサ10が出力するセンサ信号を取得するための、又は外部(例えば、図示しない移動体Vの運転制御部)から移動体Vの運行情報を取得するためのインターフェースである。センサ信号は、前述のとおりである。運行情報とは、移動体Vの運行状態を示す情報である。具体的には、例えば、移動体Vのエンジンが回転しているか、停止しているか、移動体Vが停車しているか、移動しているか、ブレーキは作動しているか否か、移動体Vが移動(走行)している場合はその走行方向、走行速度、加速度、等のうちの少なくとも1つの情報である。
【0019】
上体移動演算部22は、例えば、取得したセンサ信号から、操作者Dの重心の移動方向、移動量、移動速度、上体のひねり方向、ひねり量、及びひねり速度のうちの少なくとも1つを検出又は演算する。走行操作信号生成部23は、上体移動演算部22の演算結果と、センサ信号を取得した時点における移動体Vの運行情報に基づいて、走行操作信号を生成して出力する。ドア開閉操作信号生成部24は、上体移動演算部22の演算結果と、センサ信号を取得した時点における移動体Vの運行情報に基づいて、ドア開閉操作信号を生成して出力する。運行情報取得部25は、移動体Vの運行情報を取得する。また、入出力IF21は、走行操作信号生成部23が生成した走行操作信号、及びドア開閉操作信号生成部24が生成したドア開閉操作信号を、外部(例えば、図示しない移動体Vの運転制御部)へ出力するインターフェースでもある。
【0020】
コントローラ20の上体移動演算部22、走行操作信号生成部23、ドア開閉操作信号生成部24、及び運行情報取得部25は、それぞれごとにASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はPLD(Programmable Logic Device)等の専用プロセッサで構成してもよい。又は、これらの各部の全体を1つの専用プロセッサで構成してもよい。あるいは、コントローラ20の各部に対応するプログラムを図示しないROM(Read Only Memory)に記憶させておき、これらのプログラムを読み出して図示しないRAM(Random Access Memory)に展開してCPU(Central Processing Unit)が実行することにより、コントローラ20の各部として機能させる構成でもよい。
【0021】
(移動体操作装置の作用)
次に、移動体操作装置100の作用について説明する。6軸力覚センサ10は、第1支持板31から受ける力を、x、y、z方向の各力Fx、Fy、Fz、x軸回りのモーメントMx、y軸回りのモーメントMy、及びz軸回りのモーメントMzに分解し、その大きさに応じたセンサ信号に変換して出力する。コントローラ20は、そのセンサ信号を取得して、第1支持板31からどのような方向に力を受けているかを判断し、その結果に基づいて、操作信号を生成して出力する。操作信号とは、走行操作信号又はドア開閉操作信号である。なお、この際に、コントローラ20は、センサ信号と、センサ信号を取得した時点における移動体Vの運行情報と、に基づいて、操作信号を生成して出力することが好ましい。このような作用により、操作者Dは、座席52に座ったままで、上体を左右又は前後に倒すことにより、または上体を左右にひねることにより、移動体Vを操作することができる。
【0022】
以下、操作者が行う移動体に対する操作を具体的に説明する。例えば、操作者Dは、移動体Vを右折させたい場合は、上体を右側に倒す。また、操作者Dは、移動体Vを左折させたい場合は、上体を左側に倒す。また、操作者Dは、移動体Vを加速させたい場合は、上体を前方に倒す。さらに、操作者Dは、移動体Vを減速又は停車させたい場合は、上体を後方に倒してもよい。このような場合、座席52に座った操作者Dの上体の動きに対応したセンサ信号が、6軸力覚センサ10から出力される。
【0023】
具体的には、操作者Dが上体を左右方向、又は前後方向に倒すことにより、第1支持板31は全体として左右方向、又は前後方向に傾く。第1支持板31が右方向又は左方向に傾いた場合、上面が第1支持板31に固定された6軸力覚センサ10は、図1に示す座標系において、x軸回りの符号の異なるモーメントMxを出力する。6軸力覚センサ10がx軸回りのモーメントMxを出力した場合(つまり、センサ信号が、操作者Dの重心の左右方向の移動に対応する信号である場合)、走行操作信号生成部23は、モーメントMxの符号に応じて、移動体Vを右方向又は左方向へ旋回させる操作信号を生成し、出力する。
【0024】
また、第1支持板31が前方向又は後方向に傾いた場合、6軸力覚センサ10は、y軸回りの符号の異なるモーメントMyを出力する。6軸力覚センサ10がy軸回りのモーメントMyを出力した場合(つまり、センサ信号が、操作者Dの重心の前後方向の移動に対応する信号である場合)は、走行操作信号生成部23は、モーメントMyの符号に応じて、移動体Vを加速もしくは減速又は停止させる操作信号を生成し、出力する。
【0025】
また、操作者Dは、座席52の上で上体を左右にひねることにより、移動体Vを操作することができる。具体的には、例えば、操作者Dは、移動体Vの操作者D側のドアを開けたい場合は、上体を右側にひねる。また、操作者Dは、移動体Vの操作者D側のドアを閉めたい場合は、上体を左側にひねる。操作者Dが上体を左右方向にひねることにより、第1支持板31はz軸を中心に左右方向に回転する。そのため、6軸力覚センサ10は、z軸回りの符号の異なるモーメントMzを出力する。6軸力覚センサ10がz軸回りのモーメントMyを出力した場合(つまり、センサ信号が、操作者Dの上体のひねりに対応する信号である場合)は、ドア開閉操作信号生成部24は、モーメントMzの符号に応じて、移動体Vのドアを開閉させる操作信号を生成し、出力する。
【0026】
なお、走行操作信号生成部23及びドア開閉操作信号生成部24は、センサ信号と、センサ信号を取得した時点における移動体Vの運行情報と、に基づいて、移動体Vの操作信号を出力することが好ましい。
【0027】
表1は、センサ信号と、センサ信号を取得した時点における移動体Vの運行情報とから生成される操作信号の一例である。
【0028】
【表1】
【0029】
例えば、センサ信号を取得した時点での移動体Vの運行状態が前進中である場合に、センサ信号が、操作者Dの上体の移動方向が前方向であることに対応するものである場合は、走行操作信号生成部23は、加速する操作信号を出力してもよい。なお、速度の閾値を設けて、閾値の速度を超えて加速しないことが安全上好ましい。また、センサ信号を取得した時点での移動体Vの運行状態が前進中である場合に、操作者Dの上体の移動方向が後方向であると判断された場合は、走行操作信号生成部23は、減速又は停止する操作信号を出力してもよい。
【0030】
また、センサ信号を取得した時点での移動体Vの運行状態が前進中である場合に、センサ信号が、操作者Dの上体の移動方向が右方向又は左方向であることに対応するものである場合は、走行操作信号生成部23は、それぞれ右方向又は左方向に旋回する操作信号を出力してもよい。なお、移動方向への移動量を演算し、移動量が大きいほど操舵量を大きくするように構成してもよい。ただし、移動量の閾値を設けて、閾値の移動量を超えても操舵量は大きくしないことが安全上好ましい。
【0031】
また、センサ信号を取得した時点での移動体Vの運行状態が前進中である場合に、センサ信号が、操作者Dの上体のひねり方向が右方向又は左方向であることに対応するものである場合は、走行操作信号生成部23は、それぞれ右方向又は左方向に旋回する操作信号を出力してもよい。また、ひねり量を演算し、ひねり量が大きいほど操舵量を大きくするように構成してもよい。ただし、ひねり量の閾値を設けて、閾値のひねり量を超えても操舵量は大きくしないことが安全上好ましい。
【0032】
また、センサ信号を取得した時点での移動体Vの運行状態が停止中に、操作者Dの上体のひねりがあったと判断された場合は、移動体Vのドアの開閉を決定してもよい。例えば、移動体Vが停止中に、センサ信号が、操作者Dの上体の左方向のひねりであることに対応するものである場合は、操作者Dが乗車して正面を向いたと判断されるため、ドア開閉操作信号生成部24は、移動体Vのドアを閉止する操作信号を出力してもよい。また、移動体Vが停止中に、センサ信号が、操作者の上体の右方向ひねりであることに対応するものである場合は、運転操作を終了して降車するところであると判断されるため、ドア開閉操作信号生成部24は、移動体Vのドアを開放する操作信号を出力してもよい。また、操作者Dの上体の左右方向の移動があったと判断された場合でも、移動体Vのドアの開閉を決定してもよい。上記の場合の「移動体Vの運行状態が停止中」とは、例えばエンジン停止でかつブレーキ操作ありとの条件である。
【0033】
また、センサ信号を取得した時点での移動体Vの運行状態が、エンジンは駆動中で停車中に、操作者Dの上体の移動方向が前方向であると判断された場合は、走行操作信号生成部23は、発進する操作信号を出力してもよい。なお、安全のため、発進はブレーキ解除を含めた2段階操作を必要としてもよい。
【0034】
表2は、センサ信号を取得した時点における移動体Vの運行情報が、右旋回中又は左旋回中の場合に生成される操作信号の一例である。
【0035】
【表2】
【0036】
例えば、センサ信号を取得した時点での移動体Vの運行状態が右旋回中、又は左旋回中である場合に、センサ信号が、操作者Dの上体の当該方向の移動量がさらに増加したことに対応する場合は、走行操作信号生成部23は、旋回量を増加する操作信号を出力してもよい。逆に、センサ信号が、操作者Dの上体の移動方向が、座席52の中央に戻る方向であることに対応する場合は、走行操作信号生成部23は、旋回量を減少する操作信号を出力してもよい。
【0037】
また、センサ信号を取得した時点での移動体Vの運行状態が右旋回中、又は左旋回中である場合に、センサ信号が、操作者Dの上体の移動方向が後方向であることに対応する場合は、走行操作信号生成部23は、減速する操作信号を出力してもよい。
【0038】
図4は、実施形態1に係る移動体操作装置100によって実行される移動体操作方法のフローチャートである。図5に示すように、ステップS10において、コントローラ20は、6軸力覚センサ10から出力されたセンサ信号を取得する。次に、ステップS12において、コントローラ20は、取得したセンサ信号に基づいて、移動体の操作信号を生成して出力する。以上の方法により、操作者が座席に座った状態で、かつハンドルを使わないで移動体の操作が可能な移動体操作方法を実現することができる。
【0039】
〔変形例〕
上記で説明した移動体操作装置100の他の構成、又は移動体操作装置100が備えていてもよい機能について、変形例として以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0040】
上記の実施形態1では、6軸力覚センサ10が1つ、支持体30の中央付近に配置されている例を説明した。しかし、6軸力覚センサの数と配置はこれに限られない。例えば、図5に示すように、4つの6軸力覚センサ10A,10B,10C,10Dを、支持体30の四隅に配置してもよい。そして、4つの6軸力覚センサ10A,10B,10C,10Dからのセンサ信号を総合して、第1支持板31にかかる力を演算することにより、コントローラ20は、操作者Dの上体の動きをより精度よく検出することができ、より精度の良い操作信号を出力することができる。
【0041】
上記の実施形態1では、コントローラ20は、主として操作者Dの重心の移動の方向、又はひねりの方向を判断して、操作信号を出力する形態を説明した。しかし、操作者Dの重心の移動の方向、又はひねりの方向だけでなく、移動量、移動速度、ひねり量、又はひねり速度を演算して、これらの値のうちの少なくとも1つに基づいて操作信号を生成、出力してもよい。例えば、移動量、移動速度、ひねり量、又はひねり速度が大きいほど、操作量の大きな操作、又は操作速度の速い操作の操作信号を出力してもよい。ただし、上限閾値を設けることが安全上好ましい。
【0042】
また、6軸力覚センサ10に係る力は、操作者Dの動き、及び移動体Vの動きにより刻々と変化する。従って、6軸力覚センサ10からの出力値は常に変化する。そこで、この出力値を平滑化する処理を行ってもよい。平滑化処理は、例えば、所定の時間ごとの移動平均を取ってもよい。あるいは、出力値の微分値を取り、出力値の変化方向を検出してもよい。そして、平滑化した出力信号、又は出力値の微分値に基づいて、走行操作信号生成部23が操作信号を生成してもよい。
【0043】
また、センサ信号と、センサ信号を取得した時点における移動体Vの運行状態を示す運行情報と、に基づいて、移動体Vの操作信号を出力する場合、運行情報として、実施形態1で説明した運行状態だけでなく、サイドブレーキの有無、フットブレーキの有無、エンジンの停止の有無、操作者Dの体の位置、又はシートベルト着用の有無等の情報を加えて、移動体Vの操作信号を出力してもよい。例えば、操作者Dの体の位置の情報として、操作者の手足の一部が、ドアの閉止位置に存在していないことを追加条件として、ドア閉止の操作信号を出力してもよい。このように、条件を追加することで、移動体の操作における安全性を向上することができる。
【0044】
また、操作者Dの重心の動きに基づいて移動体Vを操作した場合、移動体Vの動きが操作者Dの上体の動きを妨げる動きとなる場合がある。例えば、操作者が前方に上体を倒すことにより移動体Vを前進させると、操作者Dには後方へ引っ張られる慣性力が働く。これにより、操作者Dの上体が後方に倒れる可能性がある。あるいは、操作者が右方向に上体を倒すことにより移動体Vを右方向に旋回させると、操作者Dには左方向へ引っ張られる慣性力が働く。これにより、操作者Dの上体が左方向に倒れる可能性がある。このような慣性力は、前進の加速度を小さくし、又は旋回の角度及び速度を緩やかに変化させることで小さくすることができる。そこで、操作信号は、加速度、旋回角度、旋回速度の上限値を設けて決定してもよい。
【0045】
慣性力による影響を緩和する他の方法として、コントローラ20が移動体Vの加速度又は旋回の角速度等を計算し、それに基づく慣性力によって操作者Dが受ける力を差し引いてもよい。これにより、操作者Dの操作意図に基づく上体の移動方向及び移動量をより正確に求めることができる。
【0046】
〔ソフトウェアによる実現例〕
コントローラ20の制御ブロック(特に上体移動演算部22、走行操作信号生成部23、ドア開閉操作信号生成部24、運行情報取得部25)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。後者の場合、コントローラ20の各機能は、例えば、ソフトウェアであるプログラムPの命令を実行するコンピュータによって実現される。
【0047】
このようなコンピュータの一例(以下、コンピュータCと記載する)を図6に示す。コンピュータCは、少なくとも1つのプロセッサC1と、少なくとも1つのメモリC2と、を備えている。メモリC2には、コンピュータCをコントローラ20として動作させるためのプログラムPが記録されている。コンピュータCにおいて、プロセッサC1は、このプログラムPをメモリC2から読み取って実行することにより、コントローラ20の各機能を実現する。
【0048】
プロセッサC1としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PU(Physics Processing Unit)、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。メモリC2としては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。
【0049】
なお、コンピュータCは、プログラムPを実行時に展開したり、各種データを一時的に記憶したりするためのRAM(Random Access Memory)を更に備えていてもよい。また、コンピュータCは、他の装置との間でデータを送受信するための通信インターフェースを更に備えていてもよい。また、コンピュータCは、キーボードやマウスなどの入力機器、及び/又は、ディスプレイやプリンタなどの出力機器を接続するための入出力インターフェースを更に備えていてもよい。
【0050】
また、プログラムPは、コンピュータCが読み取り可能な、一時的でない有形の記録媒体Mに記録することができる。このような記録媒体Mとしては、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、又はプログラマブルな論理回路などを用いることができる。コンピュータCは、このような記録媒体Mを介してプログラムPを取得することができる。また、プログラムPは、伝送媒体を介して伝送することができる。このような伝送媒体としては、例えば、通信ネットワーク、又は放送波などを用いることができる。コンピュータCは、このような伝送媒体を介してプログラムPを取得することもできる。
【0051】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る移動体操作装置は、移動体の操作者が座る座席の下部に取り付ける支持体と、前記支持体に固定された1又は複数の6軸力覚センサと、前記6軸力覚センサから取得したセンサ信号に基づいて、前記移動体の操作信号を生成して出力するコントローラと、を備える。
【0052】
上記の構成によれば、操作者が座席に座った状態で、かつハンドルを使わないで移動体の操作が可能な移動体操作装置を実現することができる。
【0053】
本発明の態様2に係る移動体操作装置において、前記センサ信号は、前記操作者の上体の動きに対応した信号であってもよい。
【0054】
上記の構成によれば、操作者が上体の動きで移動体を操作することができる。
【0055】
本発明の態様3に係る移動体操作装置において、前記コントローラは、走行操作信号生成部を備え、前記走行操作信号生成部は、前記センサ信号と、前記センサ信号を取得した時点における前記移動体の運行状態を示す運行情報と、に基づいて、前記移動体の操作信号を生成して出力してもよい。
【0056】
上記の構成によれば、移動体操作装置は、移動体の運行状態を考慮して適切な操作信号を生成することができる。
【0057】
本発明の態様4に係る移動体操作装置において、前記走行操作信号生成部は、前記センサ信号が前記操作者の重心の左右方向の移動に対応する信号であり、前記センサ信号を取得した時点における前記移動体の運行状態が前進中である場合は、当該移動の方向に旋回する操作信号を生成して出力してもよい。
【0058】
上記の構成によれば、操作者は、移動体の前進中に上体を右又は左に倒すことにより、移動体を右旋回又は左旋回させることができる。
【0059】
本発明の態様5に係る移動体操作装置において、前記走行操作信号生成部は、前記センサ信号が前記操作者の上体のひねりに対応する信号であり、前記センサ信号を取得した時点における前記移動体の運行状態が前進中である場合は、当該ひねりの方向に旋回する操作信号を生成して出力してもよい。
【0060】
上記の構成によれば、操作者は、移動体の前進中に上体を右又は左にひねることにより、移動体を右旋回又は左旋回させることができる。
【0061】
本発明の態様6に係る移動体操作装置において、前記コントローラは、ドア開閉操作信号生成部を備え、前記ドア開閉操作信号生成部は、前記センサ信号が前記操作者の重心の左右方向の移動又はひねりに対応する信号であり、前記センサ信号を取得した時点における前記移動体の運行状態が停止中である場合は、前記移動体のドアを開閉する操作信号を生成して出力してもよい。
【0062】
上記の構成によれば、操作者は、移動体の停止中に上体を右又は左にひねることにより、移動体のドアを開閉させることができる。
【0063】
本発明の態様7に係る移動体操作装置において、前記支持体は、前記6軸力覚センサの上部に固定された上部支持板と、前記6軸力覚センサの下部に固定された下部支持板と、を備えていてもよい。
【0064】
上記の構成によれば、移動体操作装置を、任意の移動体の座席の下に配置することができる。
【0065】
本発明の態様8に係る移動体操作装置において、前記上部支持板は、前記座席の構造体の一部であってもよい。
【0066】
上記の構成によれば、6軸力覚センサを直接座席の下部構造体に取り付けることができる。
【0067】
本発明の態様9に係る移動体操作方法は、移動体の操作者が座る座席の下部に取り付けられた6軸力覚センサから出力されたセンサ信号を取得する工程と、前記センサ信号に基づいて、前記移動体の操作信号を生成して出力する工程と、を含む。
【0068】
上記の構成によれば、操作者が座席に座った状態で、かつハンドルを使わないで移動体の操作が可能な移動体操作方法を実現することができる。
【0069】
本発明の態様9に係る移動体操作プログラムは、態様1に記載の移動体操作装置としてコンピュータを機能させるための移動体操作プログラムであって、前記コントローラとしてコンピュータを機能させるための移動体操作プログラムである。
【0070】
上記の構成によれば、操作者が座席に座った状態で、かつハンドルを使わないで移動体の操作が可能な移動体操作プログラムを実現することができる。
【0071】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
10…6軸力覚センサ、20…コントローラ、21…入出力IF、22…上体移動演算部、23…走行操作信号生成部、24…ドア開閉操作信号生成部、25…運行情報取得部、30…支持体、31…第1支持板、32…第2支持板、35…緩衝体、36…移動制限体、40…シャーシ、51…架台、52…座席、100…移動体操作装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6