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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F25B 47/02 20060101AFI20240903BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20240903BHJP
   F24F 11/41 20180101ALI20240903BHJP
   F24F 11/61 20180101ALI20240903BHJP
   F24F 110/12 20180101ALN20240903BHJP
   F24F 140/12 20180101ALN20240903BHJP
   F24F 140/20 20180101ALN20240903BHJP
【FI】
F25B47/02 570M
F25B47/02 570D
F25B47/02 570R
F25B49/02 510B
F24F11/41 110
F24F11/41 120
F24F11/41 240
F24F11/61
F24F110:12
F24F140:12
F24F140:20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020178604
(22)【出願日】2020-10-26
(65)【公開番号】P2022069768
(43)【公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】廣内 優
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆志
(72)【発明者】
【氏名】近藤 秀太朗
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-015333(JP,A)
【文献】特開平07-071803(JP,A)
【文献】国際公開第2016/084796(WO,A1)
【文献】特開2009-204168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 47/02
F25B 49/02
F24F 11/41
F24F 11/61
F24F 110/12
F24F 140/12
F24F 140/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、室外熱交換器と、室内熱交換器と、前記室外熱交換器と前記室内熱交換器との間に配置された減圧器と、前記圧縮機から吐出される冷媒の流れ方向を切り替える流路切替器とを有する冷媒回路と、
前記圧縮機に吸入される冷媒の圧力である吸入圧力を検出する圧力センサと、
外気温度を検出する外気温度センサと、
前記室外熱交換器の温度を検出する室外熱交温度センサと、
暖房運転時に、前記室外熱交換器の温度が前記外気温度に応じて予め設定された除霜開始温度よりも高く、前記吸入圧力が第1の圧力以下のときは、前記圧縮機の回転数を低下させる低圧保護運転を実行し、前記低圧保護運転を所定回数連続して実行したときは、前記圧縮機から吐出される冷媒の流れ方向を前記室内熱交換器から前記室外熱交換器へ切り替える除霜運転を実行する制御装置と
を備える空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機であって、
記制御装置は、前記室外熱交換器の温度が前記除霜開始温度以下のとき、前記低圧保護運転の実行回数が前記所定回数未満の場合でも前記除霜運転を実行する
空気調和機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の空気調和機であって、
前記低圧保護運転は、前記圧縮機の回転数を所定の一定値だけ低下させるステップと、前記吸入圧力が前記第1の圧力よりも高い第2の圧力以上のときに前記圧縮機の容量を前記低圧保護運転開始前の容量に復帰させるステップとを有し、
前記制御装置は、前記圧縮機の容量が予め設定された上限値に達したとき、前記低圧保護運転の実行回数のカウントをリセットする
空気調和機。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の空気調和機であって、
前記制御装置は、暖房運転を開始してから所定時間が経過するまで前記除霜運転を実行しない
空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除霜運転モードを有する空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の暖房運転時において、外気温度が低いと、蒸発器として機能する室外熱交換器に霜が発生することがある。室外熱交換器に発生する霜の量が多いと、室外熱交換器による冷媒と外気の熱交換が妨げられ、室外熱交換器における熱交換能力が低下する。このため、空気調和機の暖房運転中には、室外熱交換器に発生した霜を融かすための除霜運転が適宜行われる。
【0003】
除霜運転は、あらかじめ設定された除霜開始条件を満たしたときに実行される。典型的には、室外熱交換器に着霜が発生する温度として予め設定された温度(除霜開始温度)以下にまで室外熱交換器の温度が低下したとき、除霜運転が開始される。除霜が開始される室外熱交換器の温度は、典型的には、外気温度に応じて定められ、外気温度が低いほど除霜開始温度も低くなる。
【0004】
除霜運転を行うときは、室外熱交換器が蒸発器として機能する状態から凝縮器として機能する状態に冷媒回路を切り替え、圧縮機から吐出される高温の冷媒を室外熱交換器に流入させて、室外熱交換器に発生した霜を融かす。そして、除霜運転時間が所定時間(例えば10分)または除霜運転中に室外熱交換器の温度が所定温度(例えば10℃以上)となれば、室外熱交換器に発生した霜が全て融けたと判断して除霜運転を終了し、暖房運転を再開する。
【0005】
上述した除霜運転は、暖房運転を中断して行われるため、除霜運転は適切なタイミングで行われることが要求される。しかし、外気の相対湿度が比較的低い場合などのように、室外熱交換器が除霜開始温度にまで低下しても室外熱交換器が着霜しない場合がある。この場合、除霜の必要がないのに除霜運転が行われることになる結果、単位時間あたりの暖房運転の中断時間が長くなる問題が生じる。
【0006】
このような問題を解消するため、例えば特許文献1には、室外熱交換の温度変化に反比例する所定の計時時間が計時されないうちは除霜が開始されないようにし、さらに所定の計時時間の計時終了後であっても室外熱交換器の温度が所定温度低下している状態が所定時間継続しなければ除霜運転が開始されないようにする除霜運転制御装置が開示されている。これにより、着霜していない室外熱交換器の除霜運転(カラ除霜)を防止できるとしている。
【0007】
一方、外気温度の低下に伴い、室外熱交換器における冷媒の圧力も低下する。暖房運転時において蒸発器として機能する室外熱交換器から流出する冷媒の圧力が過度に低下すると、圧縮機に吸入されるガス冷媒の圧力も低下し、圧縮機の運転圧力範囲を逸脱した運転となるおそれがある。そこで、圧縮機を保護するため、冷媒の圧力が所定圧力以下に達したとき、圧縮機の回転数を低下させる低圧保護運転を開始するように圧縮機の動作を制御するのが一般的である(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平1-147245号公報
【文献】特開2018-21732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年における空気調和機は、冷暖房運転が可能な外気の温度範囲の拡大に対する要請に伴い、例えば-20℃以下という低温の室外環境でも安定して暖房運転を行うことが求められている。空気調和機の運転可能温度範囲の拡大に伴い、除霜が開始される室外熱交換器の温度も低温側に引き下げられる。
【0010】
ここで、この引き下げられた温度に室外熱交換器内の冷媒液温度が達すると、圧縮機の低圧側の圧力が過剰に下がる場合がある。その場合、圧縮機は、低圧側の圧力を上げるための低圧保護動作を実施する。圧縮機の低圧保護動作は、圧縮機の回転数を下げることにより低圧側の異常低圧の回避を実現するため、低圧保護動作が開始されると、室外熱交換器の温度、つまり室外熱交換器内の冷媒液温度が上昇する。したがって、室外熱交換器内の冷媒液温度のみで除霜開始の適否を判断しようとすると、本来であれば(低圧保護動作が無ければ)除霜開始条件を満たしているにもかかわらず、圧縮機の低圧保護動作により室外熱交換器内の冷媒液温度が上がってしまい、除霜開始条件を適切に検知できないことが起こり得た。
【0011】
以上のように、本来ならば除霜運転を開始しなければならない状況になった場合でも、圧縮機の低圧保護運転により室外熱交換器の温度が強制的に上昇させられてしまうため、室外熱交換器の温度を基準とする除霜運転開始条件では、適切な除霜開始タイミングを検出することができないという問題がある。
【0012】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、圧縮機の低圧保護動作が実施される状況下においても適切なタイミングで室外熱交換器の除霜運転を開始させることができる空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一形態に係る空気調和機は、冷媒回路と、圧力センサと、制御装置とを備える。
前記冷媒回路は、圧縮機と、室外熱交換器と、室内熱交換器と、前記室外熱交換器と前記室内熱交換器との間に配置された減圧器と、前記圧縮機から吐出される冷媒の流れ方向を切り替える流路切替器とを有する。
前記圧力センサは、前記圧縮機に吸入される冷媒の圧力である吸入圧力を検出する。
前記制御装置は、暖房運転時に、前記吸入圧力が第1の圧力以下のときは、前記圧縮機の回転数を低下させる低圧保護運転を実行し、前記低圧保護運転を所定回数連続して実行したときは、前記圧縮機から吐出される冷媒の流れ方向を前記室内熱交換器から前記室外熱交換器へ切り替える除霜運転を実行する。
【0014】
前記空気調和機は、外気温度を検出する外気温度センサと、前記室外熱交換器の温度を検出する室外熱交温度センサとをさらに備えてもよい。この場合、前記制御装置は、前記室外熱交換器の温度が前記外気温度に応じて予め設定された除霜開始温度以下のとき、前記低圧保護運転の実行回数が前記所定回数未満の場合でも前記除霜運転を実行する。
【0015】
前記低圧保護運転は、前記圧縮機の回転数を所定の一定値だけ低下させるステップと、前記吸入圧力が前記第1の圧力よりも高い第2の圧力以上のときに前記圧縮機の容量を前記低圧保護運転開始前の容量に復帰させるステップとを有してもよい。この場合、前記制御装置は、前記圧縮機の容量が予め設定された上限値に達したとき、前記低圧保護運転の実行回数のカウントをリセットする。
【0016】
前記制御装置は、暖房運転を開始してから所定時間が経過するまで前記除霜運転を実行しないように構成されてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、圧縮機の低圧保護動作が実施される状況下においても適切なタイミングで室外熱交換器の除霜運転を開始させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る空気調和機1の冷媒回路図である。
図2】室外機制御装置91の構成を示すブロック図である。
図3】室内機制御装置92a~92cの構成を示すブロック図である。
図4】室外熱交換器の除霜開始温度と外気温度との関係の一例を示す図である。
図5】上記空気調和機の一作用を示す説明図であって、暖房運転時における圧縮機容量(二点鎖線)と吸入圧力センサの出力(実線)との関係を示すタイミングチャートである。
図6】上記空気調和機における除霜運転開始制御の処理手順を示すフローチャートである。
図7】上記空気調和機における低圧保護運転の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気調和機1の冷媒回路図である。本実施形態では、空気調和機1として、1台の室外機2に3台の室内機5a,5b,5cが接続されたマルチ空気調和機を例に挙げて説明する。なお、室内機の数は3台に限られず、1台、2台あるいは4台以上であってもよい。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の空気調和機1は、屋外に設置される1台の室外機2と、室内に設置され室外機2に3本の液管8a,8b,8cおよび3本のガス管9a,9b,9cで接続された3台の室内機5a,5b,5cを備えている。
【0022】
詳細には、室外機2の閉鎖弁26aと室内機5aの液管接続部52aが液管8aで接続されており、室外機2の閉鎖弁26bと室内機5bの液管接続部52bが液管8bで接続されており、室外機2の閉鎖弁26cと室内機5cの液管接続部52cが液管8cで接続されている。
【0023】
また、室外機2の閉鎖弁27aと室内機5aのガス管接続部53aがガス管9aで接続されており、室外機2の閉鎖弁27bと室内機5bのガス管接続部53bがガス管9bで接続されており、室外機2の閉鎖弁27cと室内機5cのガス管接続部53cがガス管9cで接続されている。
【0024】
以上により、空気調和機1の冷媒回路10が形成される。続いて、室外機2および室内機5a~5cについて順に説明する。
【0025】
<室外機の構成>
室外機2は、圧縮機21と、四方弁22と、室外熱交換器23と、液管8a~8cが接続された閉鎖弁26a~26cと、ガス管9a~9cが接続された閉鎖弁27a~27cと、室外ファン25と、アキュムレータ24とを備えている。そして、室外ファン25を除くこれら各装置が後述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室外機冷媒回路20を形成している。
【0026】
圧縮機21は、回転数が可変の図示しないモータを有し、図示しないインバータによりモータの回転数が可変制御されることで、運転容量を変えることができる容量可変型圧縮機である。圧縮機21の冷媒吐出口は、四方弁22のポートaと吐出管41で接続されている。また、圧縮機21の冷媒吸入口は、アキュムレータ24の冷媒流出口と吸入管42で接続されている。
【0027】
四方弁22は、冷媒回路10における冷媒の流れる方向を切り替えるための流路切替弁である。具体的には、四方弁22は、冷媒回路10を、圧縮機21から吐出された冷媒を室外熱交換器23、減圧器100、室内熱交換器51a~51c、アキュムレータ24の順で循環させる冷房用冷媒回路と、圧縮機21から吐出された冷媒を室内熱交換器51a~51c、減圧器100、室外熱交換器23、アキュムレータ24の順で循環させる暖房用冷媒回路のいずれか一方に切り替える。
【0028】
四方弁22は、a、b、c、dの4つのポートを備えている。ポートaは、上述したように圧縮機21の冷媒吐出口と吐出管41で接続されている。ポートbは、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と冷媒配管43で接続されている。ポートcは、アキュムレータ24の冷媒流入口と冷媒配管46で接続されている。そして、ポートdは、閉鎖弁27aと接続される分岐管45aと、閉鎖弁27bと接続される分岐管45bと、閉鎖弁27cと接続される分岐管45cとを有する室外機ガス管45で接続されている。
【0029】
室外熱交換器23は、室外ファン25の回転により、冷媒と、室外機2の内部に取り込まれた外気を熱交換させるものである。室外熱交換器23の一方の冷媒出入口は、上述したように四方弁22のポートbと冷媒配管43で接続され、他方の冷媒出入口は、閉鎖弁26aと接続される分岐管44aと、閉鎖弁26bと接続される分岐管44bと、閉鎖弁26cと接続される分岐管44cとを有する室外機液管44で接続されている。室外熱交換器23は、前述した四方弁22の切り替えによって、冷房運転時は凝縮器として機能し、暖房運転時は蒸発器として機能する。
【0030】
室外機液管44には、室外熱交換器23と閉鎖弁26a~26cとの間に膨張弁28が設置される。膨張弁28の開度は、冷房運転時には全開に調整され、暖房運転時には圧縮機21に吸入される冷媒の過熱度が目標値となるように調整される。
【0031】
室外ファン25は樹脂材で形成されており、室外熱交換器23の近傍に配置されている。室外ファン25は、図示しないファンモータによって回転することで、室外機2の図示しない吸込口から室外機2の内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23において冷媒と熱交換した外気を、室外機2の図示しない吹出口から室外機2の外部へ放出する。
【0032】
アキュムレータ24は、流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離し、ガス冷媒のみを吸入管42を介して圧縮機21に吸入させる。アキュムレータ24の冷媒流入口と四方弁22のポートcとが冷媒配管46で接続され、アキュムレータ24の冷媒流出口と圧縮機21の冷媒吸入口とが吸入管42で接続されている。
【0033】
以上説明した構成の他に、室外機2には各種のセンサが設けられる。本実施形態では、図1に示すように、吐出管41には、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力である吐出圧力を検出する吐出圧力センサ31と、圧縮機21から吐出される冷媒の温度である吐出温度を検出する吐出温度センサ33が設けられている。冷媒配管46には、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力である吸入圧力を検出する吸入圧力センサ32と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度である吸入温度を検出する吸入温度センサ34が設けられている。
【0034】
室外熱交換器23には、室外熱交換器23の温度を検出する室外熱交温度センサ35が備えられている。室外熱交温度センサ35は、室外熱交換器23の冷媒流入口から冷媒流出口までの冷媒パスにおける中間部に配置される。これに限られず、室外熱交温度センサ35は、例えば、室外熱交換器23と膨張弁28との間の室外機液管44に配置されてもよい。室外機2の図示しない吸込口付近には、室外機2の図示しない筐体の内部に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ38が備えられている。室外機液管44の各分岐管44a,44b,44cには、これらを流れる冷媒の温度を検出する冷媒温度検出センサ36a,36b,36cがそれぞれ備えられている。
【0035】
<室内機の構成>
次に、図1を用いて、室内機5a~5cについて説明する。本実施形態において室内機5a~5cは、それぞれ同一の構成を有しており、室内機5a~5cが設置される部屋(空調空間)の天井裏や壁面などに設置される。
【0036】
室内機5aは、室内熱交換器51aと、室内ファン54aと、液管8aの他端が接続された液管接続部52aと、ガス管9aの他端が接続されたガス管接続部53aと、減圧器100aを備えている。同様に、室内機5b,5cは、室内熱交換器51b,51cと、室内ファン54b,54cと、液管8b,8cの他端が接続された液管接続部52b,52cと、ガス管9b,9cの他端が接続されたガス管接続部53b,53cと、減圧器100b,100cを備えている。そして、室内ファン54a~54cを除くこれら各装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室内機冷媒回路50a,50b,50cを形成している。
【0037】
室内機5aの室内熱交換器51aは、室内ファン54aの回転により、冷媒と、室内機5aの図示しない吸込口から室内機5aの内部に取り込まれた室内空気を熱交換させるものである。室内熱交換器51aの一方の冷媒出入口は、液管接続部52aと室内機液管71aで接続されている。室内熱交換器51aの他方の冷媒出入口は、ガス管接続部53aと室内機ガス管72aで接続されている。減圧器100aは、典型的には電子膨張弁であり、室内機液管71aに設けられる。
【0038】
室内機5b,5cについても同様に、室内熱交換器51b,51cは、室内ファン54b,54cの回転により、冷媒と、室内機5b,5cの図示しない吸込口から室内機5b,5cの内部に取り込まれた室内空気を熱交換させるものである。室内熱交換器51b,51cの一方の冷媒出入口は、液管接続部52b,52cと室内機液管71b,71cで接続されている。室内熱交換器51b,51cの他方の冷媒出入口は、ガス管接続部53b,53cと室内機ガス管72b,72cで接続されている。減圧器100b,100cは、典型的には電子膨張弁であり、室内機液管71b,71cに設けられる。
【0039】
室内熱交換器51a~51cは、室内機5a~5cが冷房運転を行う場合は蒸発器として機能し、室内機5a~5cが暖房運転を行う場合は凝縮器として機能する。尚、液管接続部52a~52cやガス管接続部53a~53cでは、各冷媒配管が溶接やフレアナット等により接続されている。
【0040】
室内ファン54a~54cは樹脂材で形成されており、それぞれ室内熱交換器51a~51cの近傍に配置されている。室内ファン54a~54cは、それぞれが図示しないファンモータによって回転することで、室内機5a~5cの図示しない吸込口から室内機5a~5cの内部に室内空気を取り込み、室内熱交換器51a~51cにおいて冷媒と熱交換した室内空気を室内機5a~5cの図示しない吹出口から室内へ吹き出す。
【0041】
以上説明した構成の他に、室内機5a~5cには各種のセンサが設けられる。本実施形態では、図1に示すように、室内熱交換器51a,51b,51cにはそれぞれ、室内熱交換器51a,51b,51cの温度である室内熱交温度を検出する室内熱交温度センサ61a,61b,61cが備えられている。そして、室内機5a,5b,5cの図示しない吸込口付近には、室内機5a,5b,5cの内部に流入する室内空気の温度、すなわち室温を検出する室温センサ62a,62b,62cが備えられている。室内熱交温度センサ61a~61cは、本実施形態では、室内熱交換器51a~51cの冷媒流入口から冷媒流出口までの冷媒パスにおける中間部に設置される。
【0042】
<制御装置>
空気調和機1は、室外機2に備えられた室外機制御装置91と、室内機5a,5b,5cにそれぞれ備えられた室内機制御装置92a,92b,92cとを有する。室外機制御装置91は、室外機2の図示しない電装品箱に格納された制御基板に搭載される。室内機制御装置92a~92cは、それぞれ室内機5a~5cの図示しない電装品箱に格納された制御基板に搭載される。
【0043】
図2は、室外機制御装置91の構成を示すブロック図である。同図に示すように、室外機制御装置91は、CPU71、記憶部72、通信部73、センサ入力部74、回転数検出部75を有する。
【0044】
記憶部72は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリであり、室外機2の制御プログラムや制御パラメータ、各種センサからの検出信号に対応した検出値、圧縮機21や室外ファン25等の制御状態等を記憶している。
【0045】
通信部73は、室内機制御装置92a~92cとの通信を行うインターフェイスである。センサ入力部74は、室外機2の各種センサでの検出結果を取り込んでCPU71に出力する。回転数検出部75は、圧縮機21のモータの回転数を検出してCPU71に出力する。回転数検出部75は、モータの駆動軸に取り付けられたエンコーダ等でモータの回転数を直接検出するように構成されてもよいし、モータに供給される駆動電流に基づいてモータの回転数を検出するように構成されてもよい。以下の説明において、圧縮機21の回転数とは、モータの回転数をいう。
【0046】
CPU71は、記憶部72に格納されたプログラムを実行することで、圧縮機21を含む室外機2の各装置を制御する制御部である。プログラムは、例えば予め室外機制御装置91にインストールされる。あるいは、インターネット等を介してプログラムのインストールや更新が実行されてもよい。
【0047】
CPU71は、上述した室外機2の各センサでの検出結果を、センサ入力部74を介して取り込む。また、CPU71は、室内機制御装置92a~92cから送信される制御信号を、通信部73を介して取り込む。さらには、CPU71は、前述したように圧縮機21のモータの回転数を回転数検出部75から取り込む。CPU71は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、圧縮機21や室外ファン25の駆動制御を行う。また、CPU71は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、四方弁22や膨張弁28の切り替え制御を行う。さらには、CPU91は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、膨張弁28の開度調整を行う。
【0048】
図3は、室内機制御装置92a~92cの構成を示すブロック図である。室内機制御装置92a~92cはそれぞれ同一の構成を有し、同図に示すように、室内機制御装置92a~92cは、CPU81、記憶部82、通信部83、センサ入力部84を有する。
【0049】
記憶部82は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリであり、室内機5a~5cの制御プログラムや制御パラメータ、各種センサからの検出信号に対応した検出値や室内ファン54a~54cの制御状態等を記憶している。通信部83は、室外機制御装置91との通信を行うインターフェイスである。センサ入力部84は、室内機5a~5cの各種センサでの検出結果を取り込んでCPU81に出力する。
【0050】
CPU81は、記憶部82に格納されたプログラムを実行することで、室内機2の各部の運転を制御する制御部である。プログラムは、例えば予め室内機制御装置92a~92cにインストールされる。あるいは、インターネット等を介してプログラムのインストールが実行されてもよい。CPU81は、上述した室内機5a~5cの各センサでの検出結果を、センサ入力部84を介して取り込む。さらには、CPU81は、室外機制御装置91から送信される制御信号を、通信部83を介して取り込む。CPU81は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、室内ファン54a~54cや風向板の駆動制御、および、減圧器100a~100cの開度調整を行う。
【0051】
<冷媒回路の動作>
次に、本実施形態における空気調和機1の空調運転時の冷媒回路10における冷媒の流れや各部の動作について、図1を用いて説明する。
【0052】
(1.冷房運転)
室内機5a~5cが冷房運転を行う場合、室外機制御装置91のCPU71は、図1に示すように四方弁22を破線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートbとが連通するよう、また、ポートcとポートdとが連通するよう、切り替える。これにより、室外熱交換器23が凝縮器として機能するとともに室内熱交換器51a~51cが蒸発器として機能する冷房サイクルとなる。
【0053】
圧縮機21から吐出された冷媒は、吐出管41を流れて四方弁22に流入し、四方弁22から冷媒配管43を流れて室外熱交換器23に流入する。室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン25の回転により室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って凝縮する。
【0054】
室外熱交換器23から流出した冷媒は、室外機液管44の分岐管44a~44cおよび閉鎖弁26a~26cを介して液管8a~8cに分流され、液管接続部52a~52cを介して室内機5a~5cに流入する。室内機5a~5cに流入した冷媒は、室内機液管71a~71cを流れ、減圧器100a~100cを通過する際に減圧される。各減圧器100a~100cにおける減圧量は、圧縮機21に吸入される冷媒の過熱度が所定の目標温度となるように設定される。
【0055】
減圧器100a~100cを通過した冷媒は、室内熱交換器51a~51cに流入する。室内熱交換器51a~51cに流入した冷媒は、室内ファン54a~54cの回転により室内機5a~5cの内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って蒸発する。このように、室内熱交換器51a~51cが蒸発器として機能し、室内熱交換器51a~51cで冷媒と熱交換を行って冷却された室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることによって、室内機5a~5cが設置された室内の冷房が行われる。
【0056】
室内熱交換器51a~51cから流出した冷媒は、室内機ガス管72a~72cを流れ、ガス管接続部53a~53cを介してガス管9a~9cに流出する。ガス管9a~9cを流れる冷媒は、閉鎖弁27a~27cを介して室外機2に流入し、室外機ガス管45(45a~45c)、四方弁22、冷媒配管46、アキュムレータ24、吸入管42の順に流れ、圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
【0057】
(2.暖房運転)
室内機5a~5cが暖房運転を行う場合、室外機制御装置91のCPU71は、四方弁22を図1に示す実線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートdとが連通するよう、また、ポートbとポートcとが連通するよう、切り替える。これにより、室外熱交換器23が蒸発器として機能するとともに、室内熱交換器51a~51cがそれぞれ凝縮器として機能する暖房サイクルとなる。
【0058】
圧縮機21から吐出された冷媒は、吐出管41を流れて四方弁22に流入し、四方弁22から室外機ガス管45の分岐管45a~45cおよび閉鎖弁27a~27cを介してガス管9a~9cに流入する。ガス管9a~9cを流れる冷媒は、ガス管接続部53a~53cを介して室内機5a~5cに流入する。
【0059】
室内機5a~5cに流入した冷媒は、室内機ガス管72a~72cを流れて室内熱交換器51a~51cに流入し、室内ファン54a~54cの回転により室内機5a~5cの内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って凝縮する。このように、室内熱交換器51a~51cが凝縮器として機能し、室内熱交換器51a~51cで冷媒と熱交換を行って加熱された室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることによって、室内機5a~5cが設置された室内の暖房が行われる。
【0060】
室内熱交換器51a~51cから流出した冷媒は、室内機液管71a~71cを流れ、減圧器100a~100cを通過する際に減圧される。各減圧器100a~100cにおける減圧量は、室内熱交換器51a~51cから流出する冷媒の過冷却度が所定の目標温度となるように設定される。
【0061】
減圧器100a~100cを通過した冷媒は、液管接続部52a~52cを介して液管8a~8cに流入する。液管8a~8cに流入した冷媒は、閉鎖弁26a~26cを介して室外機2に流入し、室外機液管44(44a~44c)を流れて室外熱交換器23に流入する。室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン25の回転により室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器23から冷媒配管43に流出した冷媒は、四方弁22、冷媒配管46、アキュムレータ24、吸入管42を流れ、圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
【0062】
空気調和機1が暖房運転を行っているときに外気温度が低いと、蒸発器として機能する室外熱交換器23に霜が発生する。室外熱交換器23に発生する霜の量が多いと、室外熱交換器による冷媒と外気の熱交換が妨げられ、室外熱交換器23における熱交換能力が低下する。そこで、本実施形態の空気調和機1は、後述する除霜開始条件を満たしたとき、以下の除霜運転を実行する。
【0063】
(3.除霜運転)
室外機2が除霜運転を行う場合、室外機制御装置91のCPU71は、図1に示すように四方弁22を破線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートbとが連通するよう、また、ポートcとポートdとが連通するよう、切り替える。これにより、冷媒回路10は、室外熱交換器23が凝縮器として機能するとともに室内熱交換器51a~51cが蒸発器として機能する。このとき、膨張弁28および減圧器100a~100cは全開とされ、室外ファン25および室内ファン54a~54cの運転が停止される。
【0064】
リバース除霜運転は、一定時間(例えば10分)経過後、あるいは、室外熱交換器23の温度が所定温度(例えば10℃以上)になった時点で終了し、上述した暖房運転が再開される。
【0065】
(4.圧縮機の低圧保護運転)
室外機制御装置91は、吸入圧力センサ32の出力に基づき、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力が所定圧力以下にまで低下したとき、圧縮機21の回転数を低下させる低圧保護運転(異常低圧回避動作)を実行する。
【0066】
例えば、暖房運転時において蒸発器として機能する室外熱交換器23から流出する冷媒の圧力が過度に低下すると、圧縮機21に吸入されるガス冷媒の圧力も低下し、圧縮機の運転圧力範囲を逸脱した運転となるおそれがある。このような状態から圧縮機21を保護するため、室外機制御装置91は、吸入圧力センサ32で検出される冷媒の圧力が所定圧力以下に達したとき、圧縮機21の回転数を低下させる低圧保護運転を実行する。
【0067】
上記所定圧力は、特に限定されず、例えば、0.12MPaであり、そのときの冷媒の温度は、-35℃である。圧縮機21が低圧保護運転を実行することにより、圧縮機21の回転数が低下し、それにより圧縮機21が吸入する冷媒量が少なくなることで、蒸発器として機能する室外熱交換器23での冷媒の蒸発圧力(低圧)が上昇する。これにより、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力が上昇し、圧縮機21の安定した動作が維持される。
【0068】
圧縮機21の低圧保護運転は、圧縮機21の回転数を減少させた後、所定条件を満たすことを前提として圧縮機21の回転数を、低圧保護運転の動作前の回転数に徐々に上昇させる。その詳細については、以下の除霜運転開始制御とともに説明する。
【0069】
<除霜運転開始制御>
続いて、本実施形態の空気調和機1における除霜運転開始制御について説明する。
【0070】
近年における空気調和機は、冷暖房運転が可能な外気の温度範囲の拡大に対する要請に伴い、例えば-20℃以下という低温の室外環境でも安定して暖房運転を行うことが求められている。空気調和機の運転可能温度範囲の拡大に伴い、室外熱交換器の除霜開始温度も低温側に引き下げられる。
【0071】
室外熱交換器の除霜開始温度は、典型的には、外気温度に応じて設定される。図4は、本実施形態における室外熱交換器23の除霜開始温度と外気温度との関係を示している。同図に示すように、除霜開始温度は、外気温度が低くなるほど低くなり、例えば、外気温度が7℃の場合は-6℃に設定され、外気温度が-24℃の場合は-31℃に設定され、外気温度が-26℃以下の場合は-33℃に設定される。なお、外気温度は、室外機2に設置された外気温度センサ38(図1参照)により取得される。
【0072】
一方、室外熱交換器23の除霜開始温度が低くなると、室外熱交換器23、室内熱交換器51a~51c、四方弁22等における圧力損失により、圧縮機21の吸入圧力が低圧保護動作領域にまで下がってしまう場合がある。例えば、低下する外気温度に応じて、除霜開始温度が-33℃に設定される場合、圧縮機21の低圧保護運転が開始される吸入圧力センサ32の検出圧力(0.12MPa)に対応する冷媒温度(-35℃)に到達することがある。吸入圧力センサ32の検出圧力が0.12MPaに到達した場合、圧縮機21の低圧保護運転が開始し、圧縮機21の回転数の低下に伴って室外熱交換器23の温度が上昇するため、本来ならば除霜運転を開始しなければならない状況になった場合でも、圧縮機21の低圧保護運転により室外熱交換器23の温度が強制的に上昇させられてしまう。このため、室外熱交換器23の温度を基準とする除霜運転開始条件のみでは、除霜開始温度が圧縮機21の低圧保護動作領域まで下がった場合に適切な除霜開始タイミングを検出することができないという問題がある。
【0073】
このような問題を解消するため、本実施形態の空気調和機1は、暖房運転時に圧縮機21の低圧保護運転を、除霜運転を挟まずに所定回数連続して実行したときは、除霜運転を実行する。
ここで、「連続して」とは、暖房運転を開始(除霜運転終了後の暖房運転再開を含む)してから最初の除霜運転を開始するまでの期間に、低圧保護運転が複数回実行されることをいう(つまり、除霜運転が開始されると「連続」は途切れる)。低圧保護運転の運転間隔は問われない。
また、上記所定回数は特に限定されず、本実施形態では3回であるが、これに限られず、2回あるいは4回以上であってもよい。
【0074】
圧縮機21の低圧保護運転が連続して複数回実行されるということは、低圧保護運転の実行後、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力が再度、低圧保護運転の開始圧力にまで低下することを意味するため、室外熱交換器23が着霜している可能性が高いと判断できる。つまり、低圧保護運転を実行しなければ、室外熱交換器23の温度が除霜開始温度(-33℃)にまで低下しているとみなすことができる。
そこで本実施形態では、除霜運転開始の判定基準として、室外熱交換器23の温度だけでなく、低圧保護運転の動作回数をも含めて除霜開始タイミングを決定する。以下、その詳細について説明する。
【0075】
図5は、本実施形態の空気調和機1の一作用を示す説明図であって、暖房運転時における圧縮機容量(二点鎖線)と吸入圧力センサ32の出力(実線)との関係を示すタイミングチャートである。圧縮機容量は、圧縮機21からの冷媒の吐出圧に相当し、圧縮機21の回転数に依存する。吸入圧力センサ32の出力は、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力であり、以下の説明では冷媒圧力LPSともいう。
【0076】
図6および図7は、室外機制御装置91のCPU71において実行される処理手順の一例を示すフローチャートであって、図6は除霜運転開始制御の処理手順を示し、図7は低圧保護運転の処理手順を示している。
【0077】
図5において時刻0で暖房運転が開始すると、CPU71は、図6に示すように、マスクタイマTMのカウントを開始する(ステップ101)。暖房運転時間の確保の観点から、暖房運転の開始後、室外熱交換器23の着霜量に関係なく、除霜運転を行わない期間(除霜運転禁止期間T1)が設定される。マスクタイマTMは、この除霜運転禁止期間T1をカウントするためのものである。除霜運転禁止期間T1は特に限定されず、例えば、30分~40分であり、図1の例では34分である。
【0078】
CPU71は、暖房運転の開始後、除霜運転禁止期間T1が経過したか否かを判定する(ステップ102)。除霜運転禁止期間T1の経過後、CPU71は、外気温度センサ38から外気温度を取得して、外気温度に対応する除霜開始温度Thを設定する。そして、CPU71は、室外熱交温度センサ35から室外熱交換器23の温度Teを取得し、室外熱交換器23の温度Teが除霜開始温度Th以下であるか否かを判定する(ステップ103)。
室外熱交換器23の温度Teが除霜開始温度Th以下である場合(ステップ103において「Y」)、CPU71は、除霜運転を開始する(ステップ108)。
【0079】
一方、室外熱交換器23の温度Teが除霜開始温度Thより高い場合(ステップ103において「N」)、CPU71は、吸入圧力センサ32から圧縮機21に吸入される冷媒の圧力(LPS)を取得し、その冷媒の圧力が圧縮機21の低圧保護運転の開始圧力である第1の圧力(X)以下であるか否かを判定する(ステップ104)。
【0080】
第1の圧力(X)は、圧縮機21の種類等に応じて任意に設定可能であり、本実施形態では、0.12MPaである。なお、圧力0.12MPaに対応する冷媒の温度(冷媒配管46を流れる冷媒の温度)は、例えば、-35℃である。
【0081】
なお、上述のように本実施形態では、外気温度が-26℃以下の場合、除霜開始温度Thは、-33℃に設定される(図4参照)。この条件では、室外熱交換器温度Te、つまり、室外熱交換器23を通過する冷媒の配管温度は、圧縮機21の低圧保護動作領域に属する冷媒温度(-35℃)よりも高温であるため、圧縮機21が低圧保護運転を開始する冷媒の温度条件を満たさない。しかし、吸入圧力センサ32で取得される冷媒の圧力は、室外熱交換器23から流出し四方弁22を通過した冷媒の圧力であるため、四方弁22における圧力損失作用により、室外熱交換器23における冷媒の圧力(蒸発圧力)よりも低下する。したがって、ステップ103において、室外熱交換器温度Teが除霜開始温度Thよりも高い場合であっても、ステップ104において、吸入圧力センサ32で取得される冷媒圧力LPSは、第1の圧力(X)以下になる場合がある。
【0082】
CPU71は、冷媒圧力LPSが第1の圧力(X)を超える場合(ステップ104において「N」)、ステップ103に戻って上述の処理を繰り返し実行する。一方、CPU71は、冷媒圧力LPSが第1の圧力以下の場合(ステップ104において「Y」)、圧縮機21の低圧保護運転を開始する(ステップ105)。
【0083】
低圧保護運転では、CPU71は、図7に示すように、圧縮機21の回転数を所定の一定値だけ低下させる(ステップ201)。上記一定値は、例えば、20rpsである。なお、圧縮機21の回転数の下限は予め設定されており、CPU71は、この下限の回転数を下回らない範囲で圧縮機21の回転数を低下させる。
【0084】
圧縮機21の回転数を上記一定値低下させると、圧縮機21の吐出冷媒圧力である圧縮機容量が低下する(図5の時刻T2参照)。これにより、室外熱交換器23における冷媒の蒸発圧力が高くなるため、吸入圧力センサ32で取得される冷媒圧力LPSも高くなる。
【0085】
続いて、CPU71は、吸入圧力センサ32から冷媒圧力LPSを取得し、冷媒圧力LPSの大きさが回転数復帰圧力である第2の圧力(Y)以上であるか否かを判定する(ステップ202)。
第2の圧力(Y)は、第1の圧力(X)よりも高い圧力であり、圧縮機21の回転数を上昇させるか否かを判定するための圧力値であり、その大きさは任意に設定可能である。第1の圧力(X)が0.12MPaの場合、第2の圧力(Y)は、例えば、0.14MPaである。
【0086】
CPU71は、冷媒圧力LPSが第2の圧力(Y)未満の場合(ステップ202において「N」)、図6のステップ106に進んで、低圧保護カウンタCのカウンタ値を1つ増加させる。低圧保護カウンタCは、低圧保護運転の実行回数をカウントするものであり、ステップ202において「N」の判定がされる都度、カウンタ値が1つずつ増加する。なお、圧縮機21の回転数が下限に到達している状態でステップ202において「N」と判定された場合においても、低圧保護カウンタCのカウンタ値が1つ増加する。
【0087】
一方、CPU71は、冷媒圧力LPSが第2の圧力(Y)以上であると判定した場合(ステップ202において「Y」)、圧縮機21の容量を低圧保護運転開始前の容量に復帰(上昇)させる(ステップ203)。これにより、室内熱交換器51a~51cにおける冷媒の凝縮圧力も高まるため、低圧保護動作に伴う室内機5a~5cの暖房能力の低下を回復させることができる。
CPU71は、圧縮機21の容量が予め設定された上限値に達したか否かを判定する(ステップ204)。上限値とは、例えば、圧縮機21の最大回転数をいう。
【0088】
圧縮機21の容量は、所定割合で徐々に上昇させるのが好ましい。これにより、容量の急激な上昇による冷媒圧力LPSの大幅な低下を防ぐことができる。典型的には、1分間に数十回転ずつ圧縮機21の回転数を上昇させることで、冷媒圧力LPSを低圧保護運転開始前の圧力に徐々に回復させることができる。
【0089】
圧縮機21の容量が上限値に達していない場合(ステップ204において「N」)、CPU71は、冷媒圧力LPSが第2の圧力(Y)以上であることを前提に、回転数の上昇制御を継続する(ステップ202,203)。
一方、圧縮機21の容量が上限値に達したとき(ステップ204において「Y」)、この状態ではもはや、室外熱交換器23を流れる冷媒の温度およびその圧力が上昇しているため、圧縮機21の低圧保護運転を継続する必要がない運転状態であると判断でき、室外熱交換器23が着霜している可能性も低い。この場合、除霜運転開始判定にあたり、低圧保護運転の運転回数を考慮する意味がなくなるため、CPU71は、低圧保護カウンタCの値をゼロにリセット(クリア)して図6のステップ103へ戻る(ステップ205)。図5の例では、時刻T2からT3の間の期間に圧縮機21の容量が上限値に達して低圧保護カウンタCがリセットされたときの状態を示す。
【0090】
以上のようにして圧縮機21の低圧保護運転が実行される。低圧保護運転制御は、暖房運転時における除霜運転開始判定処理と並行して(別個の処理として)実行される。図6に示すように、CPU71は、暖房運転開始後、1回目の低圧保護運転を実行した後、低圧保護カウンタをカウントアップする(ステップ106)。CPU71は、低圧保護カウンタのカウンタ値Cが所定値に達するまで、上述したステップ103~106の処理を繰り返し実行する。上記所定値とは、低圧保護運転の運転回数をいい、本実施形態では3(回)である。
なお、2回目以降の低圧保護運転では、制御回転数(ステップ201)は、直前の低圧保護運転の実行時に設定された制御回転数よりも低い回転数に設定されてもよい。
【0091】
一方、図5の時刻T3、T4およびT5において圧縮機21の低圧保護運転が合計3回実行されたとき(ステップ107において「Y」)、CPU71は、除霜開始判定条件を満たすと判定して除霜運転を開始する(ステップ108)。その後、CPU71は、マスクタイマTMおよび低圧保護カウンタCの各カウント値をリセットしてステップ101に戻る(ステップ109)。
【0092】
以上のように本実施形態の空気調和機1においては、室外熱交換器23の温度が除霜開始温度以下に低下した場合だけでなく、圧縮機21の低圧保護運転の実行回数が連続して所定回数以上に達した場合にも除霜運転が開始される。これにより、除霜開始温度のみを基準とする除霜運転開始判定と比較して、低圧保護運転の実行による室外熱交換器23の温度上昇のために室外熱交換器が除霜運転開始温度に達しないという不具合を解消できるとともに、低圧保護運転の実行回数で室外熱交換器23の着霜状態を把握するようにしているため、除霜開始温度が圧縮機21の低圧保護動作領域まで下がっても適切なタイミングで除霜運転を開始することができる。
【0093】
また、除霜運転開始の基準となる低圧保護運転の実行回数を複数(少なくとも2回)とすることにより、除霜開始タイミングの適正化を担保できる。例えば、室内機5a~5cの動作台数の変更直後において、膨張弁28の開度の調整不良等を原因とする圧縮機21の一時的な負荷変動により、圧縮機21が低圧保護運転に遷移する場合がある。この現象は、室外熱交換器23の着霜とは無関係に起こり得る事象であり、通常は、低圧保護運転が連続して複数回行われることは少ない。このため、低圧保護運転が連続して複数回実行された場合を対象とすることで、室外熱交換器23の除霜運転を適切なタイミングで実行することができる。
【0094】
さらに本実施形態においては、低圧保護運転の実行時に圧縮機容量が最大値に達した場合は除霜開始条件の判定要素である低圧保護カウンタCの値をゼロにリセットするため、不必要な除霜運転の開始を防ぐことができる。さらに、暖房運転の開始後、マスクタイマCMの設定時間が経過するまでは除霜運転を実行しないようにしているため、暖房運転1回あたりの除霜時間を短くすることができる。これにより、暖房運転の中断時間が短くなるため、室温の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0095】
1…空気調和機
10…冷媒回路
21…圧縮機
22…四方弁(流路切替器)
23…室外熱交換器
28…膨張弁
32…吸入圧力センサ
35…室外熱交温度センサ
38…外気温度センサ
51a~51c…室内熱交換器
91…室外機制御装置
92a~92c…室内機制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7