(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】トレイ収納容器、並びにこれを用いた半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 77/04 20060101AFI20240903BHJP
H01L 21/673 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B65D77/04 A
H01L21/68 T
(21)【出願番号】P 2020180829
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】520422382
【氏名又は名称】アイレー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 耕一
(72)【発明者】
【氏名】大山 桂之
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-337051(JP,A)
【文献】実開昭62-083018(JP,U)
【文献】特開2002-265056(JP,A)
【文献】特開2002-255343(JP,A)
【文献】特開平10-291645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/04
H01L 21/673
B65G 59/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積み重ねられた複数のトレイを収納することが可能なトレイ収納容器であって、
前記トレイを収納するための収納空間であるトレイ収納部(21)を有する筒状の壁材(2)と、
前記壁材の両端に位置し、前記トレイ収納部に繋がる開口部のうち一方を上方開口部(2a)とし、他方を下方開口部(2b)として、前記上方開口部を覆う蓋材(3)と、
一対のストッパー(43)と、一対の前記ストッパーが収納されるストッパー収納部(4a)とを有し、前記壁材の前記下方開口部の側に配置される底部材(4)と、を備え、
一対の前記ストッパーは、外部のアクチュエータの一部が挿入される挿入口(431)を有し、相対移動により、全部が前記ストッパー収納部に収納されることで前記下方開口部のすべてを開放する開状態と、一部が前記ストッパー収納部からはみ出すことで前記下方開口部の一部を塞ぐ閉状態との切り替えが可能、かつ、前記閉状態においては、前記トレイの底面の幅よりも小さい所定の距離を隔てた状態となり、前記トレイの底面の一部が載置されることで前記トレイの支持部となり、
前記底部材は、前記壁材の側に配置される底材(41)と、前記底材に取り付けられるカバー材(42)とを有するとともに、前記挿入口と重なる位置に前記アクチュエータの一部が挿入される貫通溝(412)を有し、
前記ストッパー収納部は、前記底材と前記カバー材との隙間の空間であり、
前記上方開口部と前記下方開口部とを繋ぐ方向を上下方向として、一対の前記ストッパーは、前記上下方向において、前記カバー材よりも前記壁材の側に配置されている、トレイ収納容器。
【請求項2】
前記ストッパー収納部に配置され、一端が一対の前記ストッパーに当接する弾性部材(44)をさらに備え、
一対の前記ストッパーは、前記弾性部材の反発力により前記閉状態となる、請求項1に記載のトレイ収納容器。
【請求項3】
一対の前記ストッパーは、前記底部材に取り付けられる締結部材(452)が挿入される貫通溝(434)を有し、前記締結部材により前記底部材に保持されている、請求項1または2に記載のトレイ収納容器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載のトレイ収納容器を用いた半導体装置の製造方法であって、
複数の半導体チップを載置した複数の前記トレイを積み重ねることと、
積み重ねられた複数の前記トレイの一部または全部を一対の前記ストッパーを介して前記トレイ収納部に収納する、または取り出すことと、
複数の前記トレイが収納された前記トレイ収納容器を搬送することと、を含む半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記トレイの一部または全部を前記トレイ収納部に収納する、または取り出すことにおいては
、
請求項1に記載のトレイ収納容器が取り付けられる係合部(63)と、一部が前記挿入口に挿入され、一対の前記ストッパーの相対移動に用いられるアクチュエータ(72)と、を備える係合装置を用いて行う、請求項
4に記載の半導体装置の製造方法。
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ等を載置したトレイを収納するトレイ収納容器、並びにこれを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、半導体チップを備える半導体装置の製造においては、生産効率の向上の観点からダイシングにより個片化された複数の半導体チップを載置するトレイが用いられている。また、同様の観点からは、このような複数の物品が載置された複数個のトレイを一度に運搬することが好ましい。
【0003】
例えば特許文献1に記載のトレイのように、物品を載置する側の一面の外周部分に設けられた突起部と、当該一面とその反対面である他面とを繋ぐ貫通孔とを備え、複数の当該トレイを積み重ねた際に突起部と貫通孔とが嵌合する構成が提案されている。これにより、複数のトレイを積み重ねることが可能となり、一度に複数のトレイを運搬することで、当該トレイに載置された物品を用いた製品を生産する際における生産効率が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のトレイは、複数個を一度に運搬可能な構造である一方、トレイ自体の費用が高くなり、嵌合された複数のトレイから嵌合状態を解除して1つのトレイを分離する新たな工程が必要となるため、製品コストの増大の原因となりうる。
【0006】
そこで、トレイを収納する収納部と、収納部の壁に沿って設けられ、互いにトレイの厚みよりも大きい隙間を隔てて配置された複数の凸部とを備え、1つの凸部の上に1つのトレイを載置し、複数のトレイを収納可能なトレイ収納容器を用いることも考えられる。
【0007】
しかしながら、この場合、汎用のトレイを用いることで費用を抑制できる一方、複数のトレイを直接積み重ねる段積みの方式に比べて、一度に運搬可能なトレイの数が減少してしまう。また、このようなトレイ収納容器では、1つずつトレイの出し入れを行わなければならず、生産効率が低下してしまう。
【0008】
そのため、生産効率の向上と製品コストの低減とを両立するためには、トレイを特殊な仕様にすることなく段積みしつつ、これらの複数のトレイを一度に収納・運搬を可能とすること、およびトレイの出し入れが容易であることが求められる。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑み、積み重ねられた複数のトレイの収納および運搬を可能としつつ、トレイを特別な仕様とすることなく、トレイの出し入れが容易なトレイ収納容器を提供することを目的とする。また、当該トレイ収納容器を用いることで、生産効率を高めた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のトレイ収納容器は、積み重ねられた複数のトレイを収納することが可能なトレイ収納容器であって、トレイを収納するための収納空間であるトレイ収納部(21)を有する筒状の壁材(2)と、壁材の両端に位置し、トレイ収納部に繋がる開口部のうち一方を上方開口部(2a)とし、他方を下方開口部(2b)として、上方開口部を覆う蓋材(3)と、一対のストッパー(43)と、一対のストッパーが収納されるストッパー収納部(4a)とを有し、壁材の下方開口部の側に配置される底部材(4)と、を備え、一対のストッパーは、外部のアクチュエータの一部が挿入される挿入口(431)を有し、相対移動により、全部がストッパー収納部に収納されることで下方開口部のすべてを開放する開状態と、一部がストッパー収納部からはみ出すことで下方開口部の一部を塞ぐ閉状態との切り替えが可能、かつ、閉状態においては、トレイの底面の幅よりも小さい所定の距離を隔てた状態となり、トレイの底面の一部が載置されることでトレイの支持部となり、底部材は、壁材の側に配置される底材(41)と、底材に取り付けられるカバー材(42)とを有するとともに、挿入口と重なる位置にアクチュエータの一部が挿入される貫通溝(412)を有し、ストッパー収納部は、底材とカバー材との隙間の空間であり、上方開口部と下方開口部とを繋ぐ方向を上下方向として、一対のストッパーは、上下方向において、カバー材よりも壁材の側に配置されている。
【0011】
これによれば、一対のストッパーが開閉動作を行うことにより、下方開口部から積み重ねられた複数のトレイの出し入れが容易となると共に、当該ストッパーが閉状態においては当該複数のトレイを載置可能な支持部として機能するトレイ収納容器となる。そのため、汎用のトレイであってもこれを複数積み重ねたものを収納でき、かつその出し入れが容易なため、トレイの上に載置した物品を用いた製品の生産効率の向上とその製品コストの低減とを両立することができる。
【0013】
さらに、請求項4に記載の半導体装置の製造方法のように、複数の半導体チップを載置した複数のトレイを積み重ね、これらの一部または全部を上記トレイ収納容器に収納または取り出し、当該トレイ収納容器を搬送することを含むことで、生産効率が向上する。また、このトレイ収納容器では、収納するトレイを専用の仕様とする必要がなく、トレイ自体の費用が抑えられるため、生産効率の向上と製品コストの低減とが両立する。
【0014】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係るトレイ収納容器を示す斜視展開図である。
【
図2A】
図1のII-II間の断面に相当する図であって、一対のストッパーが開状態を示す断面図である。
【
図2B】
図1のII-II間の断面に相当する図であって、一対のストッパーが閉状態、かつ収納された段積みトレイを支持した状態を示す断面図である。
【
図3】
図1のIII方向から見たトレイ収納容器を示す矢視図である。
【
図4】
図3のIV-IV間の断面を示す断面図である。
【
図6】
図3のVI-VI間の断面を示す断面図である。
【
図7】
図3のVII-VII間の断面を示す断面図である。
【
図8】実施形態に係るトレイ収納容器にIDを付した一例を示す斜視図である。
【
図9】トレイ自体にIDを付した一例を示す図である。
【
図10】実施形態に係るトレイ収納容器が係合される係合装置を示す図である。
【
図12】
図10のXII-XII間の断面を示す断面図である。
【
図13A】係合装置に設置されたトレイ収納容器からのトレイを取り出す一連の工程を説明するための図であって、第1の工程を示す断面図である。
【
図14】他の実施形態に係るトレイ収納容器のうち底部材の他の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0017】
(実施形態)
〔トレイ収納容器〕
実施形態に係るトレイ収納容器1について、
図1~
図7を参照して説明する。トレイ収納容器1は、例えば、半導体チップ等が載置される複数のトレイが積み重ねられた状態のまま収納可能な構成となっており、半導体装置の製造における搬送などに用いられると好適である。
【0018】
図1では、構成および各部材の対応位置を分かりやすくするため、後述する壁材2および底部材4のうち
図1の視点では目視できない一部を破線で示すと共に、壁材2と蓋材3または底部材4との対応位置同士を結ぶ線を一点鎖線で示している。
図3では、構成を分かりやすくするため、底部材4のうち
図3の視点では目視できない後述する凹部411を破線で、後述するストッパー43のうち同視点では目視できない外郭の一部を二点鎖線で示している。また、
図3では、見やすくするため、断面を示すものではないが、後述する弾性部材44にハッチングを施している。
図4~
図7では、見やすくするため、トレイ収納容器1のうち底部材4以外の構成の一部を省略している。
【0019】
トレイ収納容器1は、例えば
図1に示すように、積み重ねられた複数のトレイを収納可能な空間であるトレイ収納部21を有する略筒状の壁材2と、壁材2の開口部2aを覆う蓋材3と、壁材2の開口部2bの側に配置される底部材4とを備える。
【0020】
以下、説明の便宜上、壁材2の両端の開口部2a、2bのうち蓋材3で覆われる開口部2aを「上方開口部2a」と称し、底部材4が配置される側の開口部2bを「下方開口部2b」と称する。また、本明細書では、積み重ねられた複数のトレイを便宜上「段積みトレイ」と称することがある。
【0021】
トレイ収納容器1は、壁材2のトレイ収納部21に繋がる上方開口部2aが蓋材3で閉塞される一方で、トレイ収納部21に繋がる下方開口部2bが完全に閉塞されておらず、主に下方開口部2bからトレイの出し入れが行われる構成となっている。
【0022】
壁材2は、例えば
図1に示すように、略四角柱状の筒形状となっており、内部がトレイを収納可能なトレイ収納部21となっている。壁材2は、例えば、軽量化や異物付着抑制のための帯電防止の観点からは、ポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂材料により構成されうるが、強度確保や変形抑制等の他の観点から部分的に他の樹脂材料や金属材料が用いられてもよいし、リブ材が設けられてもよい。壁材2は、例えば、限定するものではないが、内部の寸法が収納されるトレイの寸法よりも0.1mm~0.3mm程度の範囲内で大きい寸法とされることが好ましい。これは、収納する段積みトレイにおいて、トレイ同士の位置ズレが生じていたとしても、壁材2の内壁がその位置ズレを所定範囲内に収める役割を果たし、段積みトレイの積み上げ方向における傾きを抑制する効果が期待されるためである。
【0023】
なお、壁材2は、必要に応じて、外部の側壁にトレイ収納容器1の持ち運び用、あるいは後述する係合装置5等の他の設備への取り付け用の取っ手または連結部を有した構成とされてもよい。また、壁材2は、下方開口部2bに加えて、側壁側からもトレイの出し入れを可能とするため、側壁に図示しない扉を有した構成とされてもよい。
【0024】
蓋材3は、例えば、壁材2の上方開口部2aを閉塞する部材であり、トレイ収納部21とは反対側の上面3aにトレイ収納容器1の持ち運び用の取っ手31を有してなる。蓋材3は、例えば、壁材2と同じ樹脂材料で構成されるが、他の任意の材料で構成されてもよい。蓋材3は、図示しないネジ等の任意の連結手段により壁材2に固定されて取り外しできない構成であってもよいし、必要に応じて上方開口部2aを介したトレイの出し入れも可能とするため、壁材2から取り外し可能な構成であってもよい。
【0025】
なお、取っ手31は、形状、サイズ、数などについては任意であり、適宜変更されうる。取っ手31は、例えば、トレイ収納容器1が半導体装置の製造に用いられる場合には、FOUP(Front Opening Unified Podの略)容器などに採用されるフランジを有した形状とされてもよい。これにより、例えば、OHT(Overhead Hoist Transferの略)、AGV(Automated Guided Vehicleの略)その他の機械による任意の自動搬送に適用することも可能となり、半導体装置等の製造工程における自動化、省人化にも対応した構成となる。このように、トレイ収納容器1の取っ手31は、人力での搬送か、機械での自動搬送かに応じて適宜形状が変更されうる。
【0026】
底部材4は、例えば、
図2Aに示すように、凹部411を有する底板41と、底板41に取り付けられるカバー材42と、底板41とカバー材42とによりなる隙間に収納されるストッパー43とを有してなる。底部材4は、例えば
図1に示すように、2つで対をなしており、ストッパー43が互いに離れて対向するように配置されてなる。底部材4は、壁材2の下方開口部2bの側に図示しないネジ等の任意の連結手段により取り付けられると共に、下方開口部2bをすべて塞がないように配置されている。
【0027】
底板41は、例えば
図2Aに示すように、凹部411を備えると共に、凹部411を覆うようにカバー材42が取り付けられることで、ストッパー43を収納するための隙間、すなわちストッパー収納部4aが形成される構成となっている。底板41およびカバー材42は、例えば別体となっているが、これに限定されるものではなく、底部材4がストッパー収納部4aを備える構造となればよく、一つの部材として構成されてもよい。底板41およびカバー材42は、例えば、壁材2と同様の材料で構成されうる。
【0028】
ストッパー43は、例えば
図2A、Bに示すように、2つで対をなすと共に、壁材2の下方開口部2b近傍にある底部材4のストッパー収納部4aに沿ってスライドすることが可能な部材である。すなわち、一対のストッパー43は、壁材2の下方開口部2bの端部において相対移動をすることで開閉動作を行う部材である。
【0029】
具体的には、一対のストッパー43は、例えば
図2Aに示すように、底部材4のストッパー収納部4aにすべて収納され、下方開口部2bがすべて開放された「開状態」をとりうる。この開状態において、トレイ収納容器1は、トレイの出し入れが可能となる。
【0030】
また、一対のストッパー43は、例えば
図2Bに示すように、その一部がストッパー収納部4aからはみ出し、下方開口部2bの一部を塞ぐ「閉状態」をとりうる。一対のストッパー43は、閉状態においては、互いにトレイTの底面寸法よりも小さい距離を隔てた状態となると共に、トレイTの底面の両端を支持可能となっており、トレイTを支持する支持部材としても機能する。一対のストッパー43は、ストッパー収納部4aから最も露出した状態、すなわち、閉状態かつ最も互いに近づいた状態であっても、下方開口部2bの端部付近を覆うのみであり、下方開口部2bを閉塞しない構成となっている。
【0031】
これにより、トレイ収納容器1におけるストッパー収納部4aの占める領域を最低限に抑えることができ、容器の小型化や軽量化が可能となる。また、一対のストッパー43が閉状態でトレイTを支持しているとき、一対のストッパー43とトレイTとの接触面積が最小限となるため、これらが擦れることによる粉塵発生が抑制される。さらに、一対のストッパー43が閉状態であっても、下方開口部2bが完全に閉塞されない構成であるため、トレイ収納部21に何らかの異物が混入したとしても下方開口部2bから外部に落下し、トレイTに載置した物品に異物が付着することを抑制できる。
【0032】
一対のストッパー43は、例えば、
図3に示すように、底板41の貫通溝412と重なる位置に、アクチュエータ素子等によりなる外部の駆動装置の一部が挿入され、ストッパー43の相対移動に用いられる挿入口431が形成されている。具体的には、底板41は、例えば
図4に示すように、凹部411の底部に貫通溝412が形成されており、ストッパー43の挿入口431に挿入された外部のアクチュエータ素子100の一部がスライドすることが可能となっている。これにより、一対のストッパー43は、挿入口431を用いて外部の駆動装置により開状態および閉状態となることが可能となっている。
【0033】
また、一対のストッパー43は、例えば
図3や
図5に示すように、下方開口部2b側の端面とは反対側の端面において、バネ等の任意の弾性体によりなる弾性部材44と当接している。弾性部材44は、一端が任意の手段で底板41に固定されると共に、他端が一対のストッパー43に当接する自由端となっており、一対のストッパー43がストッパー収納部4aに収納され、開状態に近づくほど圧縮される。これにより、一対のストッパー43は、外部の駆動装置により閉状態になるだけでなく、外部の駆動装置によらずに弾性部材44の反発力によっても閉状態になることが可能である。
【0034】
なお、弾性部材44は、例えば
図5に示すように、ストッパー43の端面に形成された溝432に他端側の一部が挿入された状態とされるが、これに限られず、ストッパー43に当接し、反発力がストッパー43に作用する構成であればよい。また、
図5では、1つのストッパー43の両端付近に2つの弾性部材44が当接する構成例を示しているが、弾性部材44の配置や数等については、この例に限定されるものではなく、適宜変更されうる。
【0035】
底板41は、例えば
図3、
図6、
図7に示すように、複数のネジ45によりカバー材42と組付けられている。以下、説明の便宜上、複数のネジ45のうちストッパー43の受けとしても用いられるものを「第1のネジ451」と称し、ストッパー43の保持に用いられるものを「第2のネジ452」と称する。底部材4は、例えば、底板41とカバー材42とがネジ451、452により組付けられた構成であることで、強度が確保されている。これにより、トレイ収納容器1は、より多くのトレイTを収納することができ、収納性や搬送性が向上する。
【0036】
一対のストッパー43は、例えば、
図3や
図6に示すように、端面にネジ受け部433が形成されており、開状態において、第1のネジ451と当接する構成となっている。一対のストッパー43は、例えば、
図3や
図7に示すように、複数の貫通溝434が形成されると共に、それぞれの貫通溝434内に第2のネジ452が挿入されることで、ストッパー収納部4aに保持されつつ、スライドが可能となっている。
【0037】
以上が、実施形態に係るトレイ収納容器1の基本的な構成である。
【0038】
このように、トレイ収納容器1は、段積みされた複数のトレイを収納できると共に、閉塞されていない下方開口部2b側に取り付けられた一対のストッパー43を開閉動作させることでトレイの出し入れが容易な構造である。トレイ収納容器1は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistorの略)等を備える半導体装置の製造のように、トレイ上に載置した半導体チップなどの物品の検査工程が多い場合等に用いられると好適である。
【0039】
具体的には、近年の半導体装置のように高精度、高品質が要求される場合には、個片化された多数の物品(例えば半導体チップ)をトレイ上に載置し、組み付け工程に搬送するだけでなく、トレイ上での電気特性検査や外観検査等の多数の工程が行われる。このとき、ダイソーター、電気特性検査、外観検査、組み付け工程等の各種の工程に用いられる設備ごとに、半導体チップを載置したトレイを設置する部分の仕様が異なるのが通常である。そのため、この場合、設備間におけるトレイの搬送や各設備へのトレイの移し替え等の作業については人力で行う必要があり、作業の効率化や省人化による生産効率の向上のためには、複数のトレイを収納・搬送するトレイ収納容器が重要となる。
【0040】
実施形態に係るトレイ収納容器1は、段積みトレイを収納可能であることから、従来の1つのトレイを収納する収納部を複数有するトレイ収納容器に比べて、多くのトレイを収納できるため、収納性に優れ、トレイの搬送効率が高い。また、トレイ収納容器1は、上記のようにトレイの出し入れが容易であり、トレイの移し替え作業の効率を高めることができる構成である。
【0041】
なお、トレイ収納容器1は、例えば
図8に示すように、壁材2の外表面に容器ごとのID情報が記憶されたトレイ情報記憶部22を備える構成とされてもよい。この場合、トレイ収納容器1に収納された段積みのトレイ単位で識別情報を管理でき、製造工程が多い場合であっても、工程ごとの情報管理が容易となり、トレイに載置される物品の追跡性、いわゆるトレサビリティが向上する。
【0042】
また、トレイTに載置される物品のトレサビリティをより向上する観点から、例えば
図9に示すように、トレイTにトレイごとのID情報を記憶したトレイ情報記憶部T3を設けてもよい。この場合、トレイTは、例えば、物品が載置される載置部T1と、その外周部分である外縁部T2とを備え、外縁部T2にトレイ情報記憶部T3を付した構成とすればよい。これにより、トレイ収納容器1の単位に加えて、トレイT単位での情報管理ができ、トレサビリティをより向上することができる。
【0043】
トレイ情報記憶部22およびトレイ情報記憶部T3としては、例えば、QRコード(登録商標)、バーコード等の二次元コードや、RFタグ、ICタグ等の情報記録媒体などの任意の方法が採用されうる。トレイTが樹脂製の場合には、例えば、レーザ加工などによりQRコード(登録商標)等を直接印字することでトレイ情報記憶部T3を形成してもよい。
【0044】
〔係合装置〕
次に、トレイ収納容器1が係合される係合装置5の一例について、
図10~
図12を参照して説明する。
【0045】
図10では、装置全体の構成を分かりやすくするため、各構成部材のうち上面視では見えない部位に位置するものの外郭を破線で示している。また、
図10では、係合装置5に取り付けられるトレイ収納容器1の外郭を二点鎖線で示している。
図11、
図12では、装置の作動を分かりやすくするため、後述するアクチュエータ72、73およびリフター8の移動可能な方向を矢印で示している。
【0046】
係合装置5は、例えば
図10に示すように、第1台座6と、第2台座7と、リフター8とを備え、第1台座6に2つのトレイ収納容器1が係合可能な構成となっている。
【0047】
第1台座6は、例えば、平行配置された2つの平行部61と、2つの平行部61の間であって、これらに対して交差する方向に延設された交差部62と、を備え、これらが一体とされた構成である。第1台座6は、例えば
図11に示すように、2つの平行部61の間の一部が空隙となっており、トレイ収納容器1が取り付けられたとき、その下方開口部2bの当該空隙に面する形状となっている。第1台座6は、例えば
図12に示すように、交差部62の中心付近が支柱に支えられており、平行部61および交差部62がフランジ部となる形状である。第1台座6は、2つの平行部61のうち交差部62に繋がる部分の外側に位置する部分に配置され、トレイ収納容器1を係合する際における位置合わせ用の複数のガイド63を有してなる。複数のガイド63は、例えば、トレイ収納容器1の底部材4の四隅に対応する位置に配置され、トレイ収納容器1を係合装置5に係合する係合部として機能する。
【0048】
なお、ガイド63は、トレイ収納容器1を平行部61に取り付けできればよく、数、形状や配置についてはトレイ収納容器1に合わせて適宜変更されてもよい。また、ガイド63は、トレイ収納容器1の底部材4の外郭外側に位置する部位に配置され、トレイ収納容器1に当接する例に限定されるものでなく、トレイ収納容器1の底部材4の底板41と直接係合する構成とされてもよい。この場合、例えば、トレイ収納容器1の底板41にガイド63に対応する挿入穴を設け、当該挿入穴にガイド63を挿入して係合すればよい。
【0049】
第2台座7は、例えば
図10に示すように、基部71と、第1アクチュエータ72と、第2アクチュエータ73とを有してなり、第1台座6のうちフランジ部よりも下方に配置されている。第2台座7は、例えば
図11に示すように、第1台座6のうちトレイ収納容器1が係合される部分を容器係合部として、基部71のうち少なくとも容器係合部の直下の領域が開口部711となっている。第2台座7のうち開口部711の内側領域であって、トレイ収納容器1の下方開口部2bの直下に位置する位置には、上下方向に移動する別体のリフター8が配置されている。第2台座7は、基部71のうち開口部711を挟んだ両側に2つの第1アクチュエータ72が配置されており、第1アクチュエータ72によりトレイ収納容器1における一対のストッパー43の開閉を行うことが可能となっている。第2台座7は、例えば
図10や
図12に示すように、基部71のうち開口部711を挟んだ両側であって、2つの第1アクチュエータ72を繋ぐ直線方向と交差する方向に位置する部位に、トレイTの把持用の2つの第2アクチュエータ73が配置されている。第2台座7は、例えば、第1台座6の支柱を囲む筒状の支柱を備え、アクチュエータ72、73が配置されるフランジ部を有した形状となっている。
【0050】
第1アクチュエータ72は、例えば
図11に示すように、その一部が第1台座6にトレイ収納容器1が係合されたときにおける一対のストッパー43の直下領域に配置される。第1アクチュエータ72は、トレイ収納容器1に挿入される部分を挿入部として、挿入部が一対のストッパー43の挿入口に挿入された状態で水平移動をする構成となっている。
【0051】
第2アクチュエータ73は、例えば
図12に示すように、第1台座6にトレイ収納容器1が係合されたときにおける一対のストッパー43の直下領域とは異なる領域に配置される。第2アクチュエータ73は、例えば、2つで一対とされると共に、トレイ収納容器1に収納されたトレイTを把持するための把持部を備え、把持部が水平移動をする構成となっている。
【0052】
リフター8は、トレイ収納容器1に収納されるトレイTの搬送部であり、トレイ収納容器1の上方開口部2aと下方開口部2bとを繋ぐ方向を上下方向として、上下方向に沿って上昇および下降をする。
【0053】
なお、アクチュエータ72、73およびリフター8は、例えば、図示しない制御部に接続され、トレイ収納容器1へのトレイTの出し入れにおいてその作動制御が行われうる。アクチュエータ72、73は、挿入部または把持部を備え、挿入部または把持部が水平移動可能な構成であればよく、任意の駆動装置が用いられうる。また、台座6、7は、例えば、一方または双方が上下方向に上昇および下降が可能な構成とされ、図示しない制御部により、台座6、7のフランジ部同士の距離が調整可能となっている。
【0054】
以上が、係合装置5の基本的な構成であり、係合装置5は、ローダーあるいはアンローダーとも称され得る。上記では、2つのトレイ収納容器1を取り付けることができる構成を代表例として説明したが、これに限定されるものではなく、係合装置5は、1つまたは3つ以上のトレイ収納容器1を取り付け可能な構成であってもよい。
また、代表例では、
図10、
図12で示すように第1台座6がターンテーブルとして機能するよう、上昇および下降が可能な機構を設けた例について説明した。係合装置5は、この第1台座6のガイド63にトレイ収納容器1が係合された際、第1アクチュエータ72がトレイ収納容器1の挿入口431に挿入される機構であってもよい。
【0055】
〔係合装置におけるトレイの出し入れ〕
次に、係合装置5におけるトレイ収納容器1からのトレイTの取り出しについて、
図13A~
図13Gを参照して説明する。
【0056】
図13B~
図13Gでは、係合装置5の作動を分かりやすくするため、アクチュエータ72、73およびリフター8の移動方向を白抜き矢印で示すと共に、アクチュエータ72のうちトレイ収納容器1に挿入される部分を破線で示している。
【0057】
まず、係合装置5に段積みのトレイTが収納されたトレイ収納容器1をガイド63に沿ってセットする。そして、例えば
図13Aに示すように、台座6、7を近づけ、2つの第1アクチュエータ72の挿入部をトレイ収納容器1のうち一対のストッパー43の挿入口に挿入した状態にする。
【0058】
続けて、例えば
図13Bに示すように、リフター8を上昇させ、段積みのトレイTを持ち上げ、一対のストッパー43にトレイTの荷重がかからない状態にした後、第1のアクチュエータ72を作動させ、一対のストッパー43を閉状態から開状態にする。このとき、第2のアクチュエータ73は、例えば
図13Cに示すように、リフター8から離れた状態となっている。
【0059】
次いで、例えば
図13Dに示すように、リフター8を下降させ、トレイ収納容器1から段積みされたトレイTの一部をトレイ収納容器1の外部に露出させる。このとき、例えば
図13Eに示すように、リフター8は、段積みされたトレイTのうちリフター8に当接するトレイTを「最下段のトレイT」として、最下段のトレイTの1つ上にあるトレイTと第2アクチュエータ73との高さが合うまで下降する。
【0060】
そして、例えば
図13Fに示すように、2つの第2アクチュエータ73の把持部を伸展させ、段積みのトレイTの一部に把持部を当接させ、最下段のトレイT以外のトレイTを把持した状態にする。その後、例えば
図13Gに示すように、リフター8をさらに下降させることで、最下段のトレイTのみを外部に取り出すことができる。
【0061】
以上が、係合装置5におけるトレイ収納容器1からのトレイTの取り出しの概要である。一方、トレイ収納容器1へのトレイTの収納については、上記とは逆の順番で、アクチュエータ72、73およびリフター8を作動させればよい。
【0062】
この係合装置5によれば、トレイ収納容器1を係合した状態でトレイTを安定して出し入れすることが容易となり、トレイTの搬送効率が向上し、省人化に対応することが可能となる。
【0063】
(他の実施形態)
本発明は、実施例に準拠して記述されたが、本発明は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本発明は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本発明の範疇や思想範囲に入るものである。
【0064】
例えば、トレイ収納容器1の底部材4は、一対のストッパー43の開閉動作が可能であって、一対のストッパー43が開状態のときに壁材2の下方開口部2bのすべてが開放される構成であればよく、上記の実施形態に限定されるものではない。具体的には、底部材4は、例えば
図14に示すように、開口部413を備わる略枠体状の1つの底板41と、底板41の開口部413の両端に位置する凹部411を覆うカバー材42とを備えた構成とされてもよい。
【符号の説明】
【0065】
2・・・壁材、2a・・・上方開口部、2b・・・下方開口部、21・・・トレイ収納部
3・・・蓋材、4・・・底部材、4a・・・ストッパー収納部、43・・・ストッパー、
431・・・挿入口、412・・・貫通溝、44・・・弾性部材、63・・・係合部、
72・・・アクチュエータ、8・・・リフター